説明

シリコーンエラストマー複合粉末、および化粧料

【課題】高吸油量を有し、ギラツキやテカリを抑制し、化粧崩れしにくく持続性があり、流動性および分散性に優れ、さらにソフトフォーカス効果が得られるシリコーンエラストマー複合粉末を提供し、シリコーンゴムエラストマー特有の柔らかい使用感触の良い化粧料を提供する。
【解決手段】板状粒子とシリコーンエラストマーを混合し、周速70m/秒以上、遠心効果2000G以上の条件で処理し、シリコーンエラストマー粉末の表面に、板状粒子を放射状に打ち込まれた状態で被覆されたシリコーンエラストマー粉末からなり、吸油量が200g/100g以上である化粧料用シリコーンエラストマー複合粉末を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に新規な化粧料用シリコーンエラストマー複合粉末に関する。さらに詳しくは、シリコーンエラストマー粉末の表面に、板状粒子を放射状に打ち込まれた状態で被覆されたシリコーンエラストマー複合粉末からなり、高吸油量で、ギラツキが少なくテカリを抑制し、化粧崩れしにくく持続性があり、流動性および分散性に優れ、さらにソフトフォーカス効果が得られる化粧料用シリコーンエラストマー複合粉末である。
【背景技術】
【0002】
シリコーンエラストマー粉末の主成分は、シリコーン弾性体であるためにシリコーンゴムの特性を有し、これを化粧料に配合すると、ゴムエラストマー特有の柔らかい感触が得られると、特許文献1、特許文献2に提案されている。
【0003】
シリコーンエラストマー粉末は、形状が球状で、一次粒子が2〜15μmである。通常、シリコーンエラストマー粉末は、一次粒子の状態で存在していなく、ブドウの房状に高次に数100μm以上に凝集した状態で存在する。
【0004】
シリコーンエラストマー粉末の吸油量は、300〜350g/100gと高吸油性である。このような高吸油性は、一次粒子がブドウの房状に凝集して数100μm以上の高次凝集粒子となり、この凝集した粒子空間内にも多量に油が抱き込まれた状態で含まれていることも大きな要因の一つである。
【0005】
この凝集したシリコーンエラストマー粉末をそのまま、化粧料に配合し、化粧料を通常の化粧品製造装置で製造しても、一次粒子までに解砕させることが困難であり、化粧料中に凝集体も残存する。その結果、残存した凝集体が異物のような挙動を示し、伸びやすべりなどの感触が悪いという問題があった。
【0006】
凝集体が残存しているシリコーンエラストマー粉末を化粧品に配合した場合、凝集体の割合が一定でないために、シリコーンエラストマー粉末の吸油量も安定しない。製造時に規定の油を投入した場合、配合したシリコーンエラストマー粉末の吸油量が低すぎると、過剰の油が残り、べとべとした化粧料になり、吸油量が多すぎると、配合した油がシリコーンエラストマーに吸収され、かさかさした化粧料になり、安定した化粧料が製造できないという問題があった。
【0007】
また、凝集体が残存しているシリコーンエラストマー粉末をプレスパウダーなどの固形状の化粧品に配合した場合は、プレスの成形圧の初期段階では、プレス時の成形圧で規定の化粧品の形状に成形されるが、成形後、時間の経過と共に、残存しているエラストマー凝集体が元の形状に戻ろうとする作用で、成形した化粧料に割れが発生するという問題があった。
【0008】
上述したシリコーンエラストマー粉末の凝集を解砕するために、機械的な方法として粉砕機類の改良、プロセス的な方法として、無機粉末をシリコーンエラストマー粉末に被覆させる方法、さらに機械的な方法とプロセス的な方法の両方を組み合わせた方法など、種々の方法が提案されている。
【0009】
例えば、乳鉢、擂潰機、ボールミル、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、レディゲミキサー、V型ミキサーなどで攪拌・混合する方法が、ハンマーミル、ピンミルなどで衝撃力を用いる方法が、特許文献3、特許文献4、特許文献5に提案されている。
【0010】
しかしながら、乳鉢、擂潰機、ボールミルを用いる方法は、せん断力が小さく、長時間混合により静電気が発生して再凝集し、また後者のハンマーミル、ピンミルなどで衝撃を用いる方法は、シリコーンエラストマー粉末のゴム弾性が衝撃力を吸収し、解砕が不十分であるという問題点があった。
【0011】
これらを改良するために、密閉型多段ずり式せん断押し出し機で、シリコンーンエラストマー粉末を密閉した空間に閉じ込め、せん断力をかけ、ずり応力によって凝集を分散させる方法が、特許文献6、特許文献7に提案されている。
【0012】
しかしながら、この方法は、操作性が煩雑であり、工業的規模の生産では生産性が低く、生産コストが高くなるという問題点があった。
【0013】
そこで、生産性を改良する方法として、せん断機構と分級機構を併せもつカッターミル、ターボミル、インペラーミルなどの乾式粉砕機が、特許文献8に提案されている。
【0014】
上述した方法で、無機粉末をシリコーンエラストマーに被覆し、シリコーンエラストマーの凝集を解砕し、安定した吸油量の複合粉末が製造できるようになったが、板状粉末が、シリコーンエラストマー粉末の表面を覆うように密着して被覆されているために、吸油量が200g/100g以下であり、高吸油性のシリコーンエラストマー複合粉末が得られず、化粧料として配合するとギラツキのためにテカリなどの問題があった。
【0015】
【特許文献1】特開昭63−77942号公報
【特許文献2】特開昭64−70558号公報
【特許文献3】特許第3273573号明細書
【特許文献4】特開平9−208709号公報
【特許文献5】特開平10−36219号公報
【特許文献6】特開平5−305223号公報
【特許文献7】特許第3126553号明細書
【特許文献8】特許第3442698号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した従来の技術は、機械的な方法として粉砕機類の改良、プロセス的な方法として、無機粉末をシリコーンエラストマー粉末の表面に被覆させる方法、さらに機械的な方法とプロセス的な方法の両方の方法によって、板状粉末をシリコーンエラストマー粉末の表面に被覆し、シリコーンエラストマーの解砕は改良されたが、吸油量、ギラツキおよびテカリなどについては着目されていなかった。さらに、シリコーンエラストマー粉末に被覆する板状粒子の形状や粒子径の選定、被覆量などの検討が十分でなかった。
【0017】
本発明は、高吸油性のシリコーンエラストマー粉末を提供することを目的とし、さらに
高吸油量でギラツキが少なくテカリを抑制し、化粧崩れしにくく持続性があり、流動性および分散性に優れた化粧料用シリコーンエラストマー特有の柔らかい使用感触の良い化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した従来の技術の問題点を解決するために鋭意研究を行った結果、シリコーンエラストマー粉末の表面に、板状粒子を、立体的に放射状に打ち込んだ状態で被覆して、凝集したシリコーンエラストマー粉末を解砕し、さらに、安定した高吸油量を有し、例えば、ギラツキやテカリを抑制し、化粧崩れしにくく持続性があり、流動性および分散性に優れたシリコーンエラストマー複合粉末を提供し、元来のゴムエラストマー特有の柔らかい使用感触の良い化粧料を製造することを見出した。以下本発明を詳述する。
【0019】
本発明は、シリコーンエラストマー粉末の表面に、板状粒子を、立体的に放射状に打ち込んだ状態で被覆させたシリコーンエラストマー複合粒子からなり、吸油量が200g/100g以上であり、特にギラツキやテカリを抑制し、化粧崩れしにくく持続性があることを特徴とする。
【0020】
上記シリコーンエラストマー複合粉末の製造方法は、次の3段階の工程を経る。まず、予め板状粒子とシリコーンエラストマーに周速40m/秒以下で、混合・撹拌し、凝集したシリコーンエラストマーの表面に板状粒子を分散・付着した処理物が得られる。次に、この板状粒子が凝集したシリコーンエラストマーに付着した処理物に、周速70m/秒以上で、且つ遠心効果2000G以上の物理的エネルギーを、継続して与え、凝集したシリコーンパウダーの凝集を解砕し、無機粒子で直接被覆する。この工程で、処理物にエネルギーを与えられるため処理物の温度が上がることから、上記工程において、水などの冷媒を用いて処理物を冷却する。最後に、処理物に周速20m/秒以下で混合・撹拌して、室温までに冷却し、回収する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、凝集したシリコーンエラストマー粉末を解砕し、且つ、シリコーンエラストマー粉末の表面に、板状粒子を、立体的に放射状に打ち込んだ状態で被覆させることにより、高吸油性があり、ギラツキやテカリを抑制し、化粧崩れしにくく持続性があり、流動性および分散性に優れた化粧料用シリコーンエラストマー複合粉末を提供することができる。
【0022】
また、本発明のシリコーンエラストマー複合粉末を化粧料に配合することにより、シリコーンエラストマー粉末が元来有するべとつき感がなく、化粧品に潤滑性やひろがり性などの特性を生かした化粧料とすることができる点で非常に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の最良の実施の形態について説明する。
【0024】
(シリコーンエラストマー粉末)
本実施の形態で用いるシリコーンエラストマー粉末は、付加反応硬化、縮合反応硬化、有機過酸化物によるラジカル反応硬化、及び紫外線照射硬化によって合成されるシリコーンゴムであり、特に、付加反応硬化または縮合反応硬化したシリコーン組成物を硬化させて形成したものが好ましい。シリコーンエラストマーに非架橋のオイルを含んでも、含まなくても良い。これらのシリコーンエラストマー粉末に関する詳細は、特許第3535389号に記載されている。
【0025】
シリコーンエラストマー粉末として、東レ・ダウコーニング株式会社製のトレフィルEシリーズや信越化学工業株式会社製のシリコーンゴムパウダーが市販されている。東レ・ダウコーニング株式会社製のトレフィルEシリーズにはトレフィルE−505C、トレフィルE−506S、トレフィルE−507、トレフィルE−508などがある。一方、信越化学工業株式会社製のシリコーンゴムパウダーにはKMP−597、KMP−598、KMP−594及びKMP−X−52−875などがある。化粧品用途としては、東レ・ダウコーニング株式会社製のトレフィルEシリーズが好適である。
【0026】
シリコーンエラストマーの平均1次粒子径は、好ましくは0.1〜100μmであり、さらに好ましくは2〜15μmである。シリコーン硬さは好ましくはJIS硬さで90未満であり、さらに好ましくはJIS硬度5〜80である。
【0027】
(板状粒子)
また、板状粒子としては、マイカ、合成マイカ、雲母、雲母チタン、合成金雲母、タルク、セリサイト、板状アルミナ、板状硫酸バリウム、板状酸化チタン、窒化ホウ素などが挙げられるが、特に、マイカ、合成マイカ、雲母、雲母チタン、合成金雲母などが好ましい。また、これらの板状粉末は、シリコーンやフッ素などで、表面処理をされたものも含まれる。これらの板状粒子を1種類以上組み合わせても良い。
【0028】
板状粒子の平均一次粒子径は好ましくは1〜30μmであり、さらに好ましくは2〜20μmである。板状粒子の平均一次粒子径が小さすぎると、立体的に放射状に打ちこまれた板状粒子間の空間が狭くなり、高い吸油量が得られない。また、板状粒子の平均一次粒子径が大きすぎると、板状粒子が、シリコーンエラストマーに立体的に放射状に突き刺さらずに、板状粒子の平面がタイル状にシリコーンエラストマーに被覆される状態になる。さらに板状粒子の平均一次粒子径が大きくなると、シリコーンエラストマーに複合化されなくなる。
【0029】
板状粒子のアスペクト比は好ましくは10〜100であり、さらに好ましくは25〜60である。板状粒子のアスペクト比が小さすぎると、板状粒子は、シリコーンエラストマーに立体的に放射状に突き刺さらずに、板状粒子の平面がタイル状にシリコーンエラストマーに被覆される。また、板状粒子のアスペクト比が大きすぎると、複合化工程中に受ける物理エネルギーで、板状粒子が壊れてしまう結果となる。
【0030】
板状粒子とシリコーンエラストマー粉末との質量比は、好ましくは板状粒子:シリコーンエラストマー粉末=10:90〜80:20であり、さらに好ましくは板状粒子:シリコーンエラストマー=20:80〜70:30である。板状粒子がシリコーンエラストマー粉末に対して少なすぎるとシリコーンエラストマーの巨大凝集体を十分に解砕できにくく、また逆に少なすぎるとシリコーンエラストマーに複合化されない板状粒子が残存し、板状粒子の粉っぽい特性が強く出て、元来のゴムエラストマー特有の潤滑性やひろがり性を持つ柔らかい使用感触が損なわれる結果となる。
【0031】
(吸油量)
本実施の形態のシリコーンエラストマー複合粉末の吸油量は200g/100g以上であり、好ましくは、200〜350g/100gである。吸油量が少なすぎると、シリコーンエラストマー複合粉末を化粧品に配合した場合、かさかさした感触の化粧料となり、また多すぎると、べとべとした油っぽい感触の化粧料となり、いずれの場合も、元来のゴムエラストマー特有の潤滑性やひろがり性を持つ柔らかい使用感触が損なわれる結果となる。
【0032】
吸油量の測定方法は、JIS K−5101に準じた。流動化の状態をより明確に観察するために、JIS K−5101に記載されているアマニ油に代えてジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製SH200C−5CS)を用いた。具体的測定方法は、シリコーンエラストマー複合粉末1gを精密に秤り、ガラス板上に採る。ジメチルシリコーンオイルを、少量ずつ複合粉末の中心に、添加し、その都度ヘラで均一になるように練り合わせる。そして全体がペースト状になり、流動化する直前を終点とし、次式により算出する。
(数1)
吸油量(g/100g)=(SH200C−5CS(g)/試料の量(g))×100
【0033】
(シリコーンエラストマー複合粉末の製造方法)
本実施の形態の、凝集したシリコーンエラストマー粉末を解砕し、且つ、シリコーンエラストマー粉末の表面に、板状粒子を、立体的に放射状に打ち込んだ状態で被覆させることにより、高吸油性があり、ギラツキやテカリを抑制し、化粧崩れしにくく持続性があり、流動性および分散性に優れた化粧料用シリコーンエラストマー複合粉末を得るために、次に説明する混合・撹拌、複合化、冷却の3工程を経て製造される。まず、予め板状粒子とシリコーンエラストマーに周速40m/秒以下で、混合・撹拌し、凝集したシリコーンエラストマーの表面に板状粒子が付着した処理物が得られる。
【0034】
この段階では、数100μmの凝集したシリコーンエラストマーの表面に板状粒子が付着している状態である。目視では、さらさらしており凝集体が解砕されたような状態であるが、走査型電子顕微鏡で観察すると、シリコーンエラストマーの凝集が解砕されていない。
【0035】
次に、この板状粒子がシリコーンエラストマー凝集体に付着した処理物に、周速70m/秒以上で、且つ遠心効果2000G以上の物理的エネルギーを、継続して与えることにより、数100μmの凝集したシリコーンエラストマーの表面に付着している板状粒子が、凝集しているシリコーンエラストマーの凝集を引き裂き、さらにシリコーンエラストマーに直接突き刺さった状態の複合化が始まる。時間の経過と共に、上記の挙動を繰り返し、複合化が進行し、板状粒子が全て被覆された段階で複合化処理は終結する。
【0036】
複合化処理の終結は、経時的に処理物を採取して、走査型電子顕微鏡で、複合状態を観察する。このような方法で複合状態の終結を定めるのは、煩雑な操作であるが、一度条件が定まれば、同一の条件で製造すれば良い。
【0037】
複合化工程で、処理物に外部から高いエネルギーを与えられるので処理物の温度が上がるので、水などの冷媒を用いて、冷却しながら複合化処理を行う。
【0038】
処理が終了したら、処理物を周速20m/秒以下で混合・撹拌して、室温までに冷却し、製品として処理物を回収する。
【0039】
本実施の形態で複合粉末を製造するために用いる主な装置は、混合・撹拌装置、複合化装置及び冷却装置である。混合・撹拌装置は、板状粒子とシリコーンエラストマーを、撹拌・混合し、凝集したシリコーンエラストマーの表面に板状粒子を分散・付着させることができる機能を有することが必要である。
【0040】
混合・撹拌装置の製造条件として、周速40m/秒以下であり、1000〜2000ppmの回転速度を有する装置が必要である。例えば、通常のヘンシェルミキサーが好適である。
【0041】
複合化装置は、数100μmの凝集したシリコーンエラストマーの表面に付着している板状粒子が、凝集しているシリコーンエラストマーの凝集を引き裂き、さらにシリコーンエラストマーに直接突き刺さった複合粉末を得ることができる機能を有することが必要である。
【0042】
複合化装置は、周速70m/秒以上で、且つ遠心効果2000G以上の機能を有し、さらに、複合化装置により製造時に発生するエネルギーによって引き起こされる発熱を冷却可能な冷却設備を備える必要があり、本実施の形態では、ヘンシェルミキサーの機能を向上させた高速ヘンシェルミキサーを用いた。この装置では、最高周速120m/秒、最高遠心効果5000Gの能力があり、1回の処理量は10kgである。
【0043】
また、上記高速ヘンシェルミキサーを用いれば、上記複合化装置のみならず、混合・撹拌装置も兼用が可能である。
【0044】
冷却装置は、製品である複合化された処理物を室温まで冷却し、回収する機能が必要である。さらに、冷却装置は、周速20m/秒以下で混合・撹拌と冷却機能を備えていることが好ましく、かかる機能を有するものは複合化装置を兼用することができる。
【0045】
本実施の形態では、高速ヘンシェルミキサーを用いたが、最高周速120m/秒、最高遠心効果5000Gの能力があり、処理物を冷却できる機能があれば、特に、この高速ヘンシェルミキサーにこだわらない。高速ヘンシェルミキサーの形状は、竪型円筒状、横型円筒状、球状などである。複合化にはどのような形状でも構わないが、製品取出しには、縦型円筒状、球状などが好適である。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。配合量は特に断わらない限り重量部、質量%である。
【0047】
実施例1:合成金雲母−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子として合成金雲母(トピー工業株式会社製PDM−5L(S)、平均粒子径5.0〜8.5μm、アスペクト比30〜40)40部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、60部を用いた。
【0048】
これらの原料を計量し高速ヘンシェルミキサーに投入する。装置のジャケット部に冷却水を流入させ、周速度40m/秒の低速で3分間回転し、処理物を混合する。
【0049】
次いで、周速92m/秒、遠心効果4,000Gの条件で高速回転させ、60分間処理した。高速回転になると、処理粉末の温度が急激に上昇し、5分後に60℃で一定になる。60分後に高速回転を止め、周速度20m/秒以下の低速で回転させ、複合化物を室温まで冷却させ、回収した。槽内には、ほとんど付着物はなかった。複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0050】
実施例2:合成金雲母−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子として合成金雲母(トピー工業株式会社製PDM−5L(S)、平均粒子径5.0〜8.5μm、アスペクト比30〜40)60部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、40部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0051】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0052】
実施例3:合成金雲母−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子として合成金雲母(トピー工業株式会社製PDM−10L(S)、平均粒子径10〜13μm、アスペクト比40〜50)40部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、60部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0053】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0054】
実施例4:合成金雲母−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子として合成金雲母(トピー工業株式会社製PDM−10L(S)、平均粒子径10〜13μm、アスペクト比40〜50)60部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、40部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0055】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0056】
実施例5:合成マイカ−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子として合成マイカ(コープケミカル株式会社製MK−100、平均粒子径3〜5μm、アスペクト比20〜30)40部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、60部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0057】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0058】
実施例6:合成マイカ−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子として合成マイカ(コープケミカル株式会社製MK−100、平均粒子径3〜5μm、アスペクト比20〜30)60部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、40部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0059】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0060】
実施例7:合成マイカ−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子として合成マイカ(コープケミカル株式会社製MK−200、平均粒子径5〜8μm、アスペクト比20〜30)40部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、60部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0061】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0062】
実施例8:合成マイカ−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子として合成マイカ(コープケミカル株式会社製MK−200、平均粒子径5〜8μm、アスペクト比20〜30)60部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、40部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0063】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0064】
比較例1:セリサイト−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子としてセリサイト(三信鉱工株式会社製FSE、平均粒子径11.8μm、アスペクト比10〜20)40部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、60部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。セリサイトのアスペクト比は、三信鉱工株式会社の特性値に記載がないので、SEM写真から算出した。
【0065】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0066】
比較例2:セリサイト−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子としてセリサイト(三信鉱工株式会社製FSE、平均粒子径11.8μm、アスペクト比10〜20)60部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、40部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。セリサイトのアスペクト比は、三信鉱工株式会社の特性値に記載がないので、SEM写真から算出した。
【0067】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0068】
実施例9:合成金雲母−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子として合成金雲母(トピー工業株式会社製PDM−20L(S)、平均粒子径17〜22μm、アスペクト比60〜80)40部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、60部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0069】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0070】
実施例10:合成金雲母−シリコーンエラストマー複合粉末の製造
板状粒子として合成金雲母(トピー工業株式会社製PDM−20L(S)、平均粒子径17〜22μm、アスペクト比60〜80)60部を用い、シリコーンエラストマー粉末として東レ・ダウコーニング株式会社製トレフィルE−506S、40部を用いた以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0071】
複合化物の複合化状態を走査型電子顕微鏡で観察し、吸油量測定を評価した。
【0072】
複合状態を走査型電子顕微鏡で観察した。板状粒子がシリコーンエラストマーに複合されているかを複合状態A、さらにその板状粒子がシリコーンエラストマーに放射状に突き刺さって複合されているかを複合状態Bの2つの状態に分けた。そしてそれぞれの複合粒子の状態を下記の3段階にて評価し、その結果を表1に示した。
【0073】
[評価基準]
複合状態A(複合されているか否かの状態評価)
◎:シリコーンエラストマーの凝集が2〜20μmに解砕され、板状粒子がほぼ均一にシリコーンエラストマー粉末に被覆されている。
○:シリコーンエラストマーの凝集が2〜20μmに解砕され、板状粒子がシリコーンエラストマー粉末に被覆されている。
△:シリコーンエラストマーの凝集が2〜20μmに解砕されているものもあるが、一部シリコーンエラストマーの凝集体も残っている。板状粒子はシリコーンエラストマー粉末に被覆されている。
×:シリコーンエラストマー粉末の凝集がほとんど解砕されていない。板状粒子はシリコーンエラストマー粉末に被覆されていない。
【0074】
複合状態B(板状粒子がシリコーンエラストマーに放射状に突き刺さって複合されているか否かの状態評価)
◎:ほぼ全部の板状粒子がシリコーンエラストマーに放射状に突き刺さって複合されている。
〇:ほとんどの板状粒子がシリコーンエラストマーに放射状に突き刺さって複合されている。
△:板状粒子がシリコーンエラストマーに放射状に突き刺さって複合されているものもあるが、そうでない板状粒子もある。
×:板状粒子がシリコーンエラストマーに放射状に突き刺さっていない。
【0075】
【表1】

【0076】
走査型電子顕微鏡による複合粉末の状態が(複合状態A:◎、複合状態B:◎)に相当する実施例1の走査型電子顕微鏡写真を図1、図2に、複合粉末の状態が(複合状態A:○、複合状態B:○)に相当する実施例5の走査型電子顕微鏡写真を図3、図4に、複合粉末の状態が(複合状態A:×、複合状態B:×)に相当する比較例2の走査型電子顕微鏡写真を図7、図8に、複合粉末の状態が(複合状態A:△、複合状態B:△)に相当する実施例9の走査型電子顕微鏡写真を図5、図6に、それぞれ示す。
【0077】
(化粧料の製造)
次に処方実施例をあげて本発明をより詳細に説明する。なお本発明はこれら処方実施例のみ限定されるものではない。
【0078】
(水乾両用ファンデーション)
処方実施例として実施例2によって得られた合成金雲母被覆シリコーンエラストマーを配合した水乾両用ファンデーションを製造した。
【0079】
下記の処方成分中(1)〜(7)をヘンシェルミキサーで混合した後、粉砕し混合分散し、これに成分(8)〜(12)を加熱溶解混合したものを添加混合後粉砕した。得られた混合物を、トレー中に入れ、プレス成形した。
【0080】
一方処方比較例として、合成金雲母被覆シリコーンエラストマー成分の代わりに、ソフトフォーカス効果を有している粉末として市販されている無水ケイ酸被覆セリサイトを配合して、水乾両用ファンデーションを製造した。
【0081】
【表2】

【0082】
(ルース型おしろい)
処方実施例として実施例2によって得られた合成金雲母被覆シリコーンエラストマーを配合したルース型おしろいを製造した。
【0083】
下記の処方成分中(1)〜(7)をヘンシェルミキサーで混合した後、粉砕し、ルースおしろいを製造した。
【0084】
一方処方比較例として、合成金雲母被覆シリコーンエラストマー成分の代わりに、通常使用される無水ケイ酸被覆セリサイトを配合して、ルース型おしろいを製造した。
【0085】
【表3】

【0086】
(乳化ファンデーション)
処方実施例として実施例2によって得られた合成金雲母被覆シリコーンエラストマーを配合した乳化ファンデーションを製造した。
【0087】
下記の処方成分中(1)〜(13)を85℃に加熱溶解混合し、これに成分(14)〜(16)を85℃に加熱溶解混合した混合物を徐々に添加し乳化した。乳化時の温度を10分間保持して攪拌した後、攪拌冷却して30℃にて取り出し容器に充填し乳化ファンデーションを製造した。
【0088】
一方処方比較例として、合成金雲母被覆シリコーンエラストマー成分の代わりに、通常使用される無水ケイ酸被覆セリサイトを配合して、乳化ファンデーションを製造した。
【0089】
【表4】

【0090】
[化粧料の実用評価]
(実用特性評価)
官能評価専門のパネラー10名に試料を塗布し、肌に対するのび、付着性、ギラツキ・テカリ感、ソフトフォーカス効果、仕上がり感、化粧品としての総合性について、1〜5の5段階の官能評価を行い、全員の平均値を下記の記号で表示した。
【0091】
(評価基準)
◎・・・4.5〜5.0
○・・・3.5〜4.4
△・・・2.5〜3.4
×・・・1.5〜2.4
××・・・1.0〜1.4
【0092】
【表5】

【0093】
[素材評価]
(ぼかし効果)
試料とクリアーラッカーを2:8の割合で混合し、ソニックを用い分散させる。次いで、この分散品を、ドクターブレードにて12.5μmの膜厚でガラス板上に塗布する。破線を記した紙上にガラス板を載せてソフトフォーカス効果(ぼかし効果)を観察した。その結果を図9,10に示す。合成金雲母被覆シリコーンエラストマーは、無水ケイ酸被覆セリサイトに比べ、ソフトフォーカス効果(ぼかし効果)が高いことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のシリコーンエラストマー複合粉末は、特に化粧料に好適に配合可能であるが、これに限るものではなく、高吸油量の粉末を必要とする用途であれば如何なる用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】シリコーンエラストマー複合粉末の実施例1の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】シリコーンエラストマー複合粉末の実施例1の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】シリコーンエラストマー複合粉末の実施例5の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】シリコーンエラストマー複合粉末の実施例5の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】シリコーンエラストマー複合粉末の実施例9の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】シリコーンエラストマー複合粉末の実施例9の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】シリコーンエラストマー複合粉末の比較例2の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】シリコーンエラストマー複合粉末の比較例2の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】無水ケイ酸被覆セリサイトを用いた場合のソフトフォーカス効果(ぼかし効果)の観察状態を示す図である。
【図10】合成金雲母被覆シリコーンエラストマーを用いた場合のソフトフォーカス効果(ぼかし効果)の観察状態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンエラストマー粉末の表面に、板状粒子を放射状に打ち込まれた状態で被覆させたことを特徴とするシリコーンエラストマー複合粉末。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコーンエラストマー粉末において、
前記シリコーンエラストマー粉末の吸油量が200g/100g以上であることを特徴とするシリコーンエラストマー複合粉末。
【請求項3】
請求項1に記載のシリコーンエラストマー複合粉末を配合してなることを特徴とする化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−242292(P2009−242292A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90414(P2008−90414)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(591236884)日精株式会社 (2)
【Fターム(参考)】