説明

シリコーンゴム組成物

【課題】 炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物であって、長期に保管しても、当初設計の通りのシリコーンゴムの物理的特性やシリコーンゴムに対する接着性を得ることができるシリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】 (A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、(B)一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、(C)炭酸カルシウム粉末、(D)アルケニル基およびケイ素原子結合水素原子を有さない分子鎖両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサン、および(E)白金系触媒から少なくともなるシリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物は、炭酸カルシウム粉末が不純物としてアルカリ成分を含むため、貯蔵中に前記組成物の硬化剤として含まれているケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと反応して水素ガスを発生するという問題があるため、例えば、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、白金族金属系触媒、テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物で表面処理された炭酸カルシウム粉末からなるシリコーンゴム組成物(特許文献1参照)、あるいは、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、実質的にジオルガノポリシロキサンで表面処理された炭酸カルシウム粉末、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、白金族金属系触媒からなるシリコーンゴム組成物(特許文献2、3参照)が提案されている。また、シリコーンゴムの物理的特性、特に、伸びを向上させるために、これらの組成物の硬化剤として、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンと分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体を併用することも知られている。
【0003】
しかし、このような組成物は、シリコーンゴムに対する接着性が十分ではなく、また、この組成物中のアルケニル基に対するケイ素原子結合水素原子のモル比が低くなる(ケイ素原子結合水素原子の絶対量が少なくなる)と、長期の保存安定性が乏しくなり、接着性や物理的特性の低下を引き起こすという問題がある。
【特許文献1】特開平10−60281号公報
【特許文献2】特開2002−38016号公報
【特許文献3】特開2002−285130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物であって、長期に保管しても、当初設計の通りのシリコーンゴムの物理的特性やシリコーンゴムに対する接着性を得ることができるシリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のシリコーンゴム組成物は、
(A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン
100質量部、
(B)一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20となる量}、
(C)炭酸カルシウム粉末 1〜200質量部、
(D)アルケニル基およびケイ素原子結合水素原子を有さない分子鎖両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサン 0.01〜20質量部、および
(E)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物を硬化を促進する量)
から少なくともなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシリコーンゴム組成物は、炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物であって、長期に保管しても、当初設計の通りのシリコーンゴムの物理的特性やシリコーンゴムに対する接着性を得ることができるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のシリコーンゴム組成物を詳細に説明する。
(A)成分は本組成物の主剤であり、一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンである。(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。(A)成分の分子構造は実質的に直鎖状であるが、本発明の目的を損なわない範囲で分子鎖の一部が多少分岐していてもよい。(A)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、100〜1,000,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、100〜500,000mPa・sの範囲内である。
【0008】
このような(A)成分のジオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、これらのジオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換したジオルガノポリシロキサン、これらのジオルガノポリシロキサンのビニル基の一部または全部をアリル基、ヘキセニル基等のアルケニル基で置換したジオルガノポリシロキサン、およびこれらのジオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。
【0009】
(B)成分は本組成物の硬化剤であり、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。(B)成分の分子構造は特に限定されないが、例えば、直鎖状、分岐状、環状、または三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。(B)成分中のケイ素原子に結合している有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基である。このような(B)成分の25℃における粘度は限定されないが、1〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0010】
このような(B)成分のオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、およびこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上の混合物が例示される。
【0011】
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20の範囲内となる量であり、好ましくは、0.1〜10の範囲内となる量であり、特に好ましくは、0.1〜5の範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーンゴム組成物が十分に硬化しなくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られるシリコーンゴムの物理的特性が低下する傾向があるからである。
【0012】
(C)成分は本組成物のシリコーンゴムに対する接着性を向上させるための炭酸カルシウム粉末である。(C)成分のBET比表面積は特に限定されないが、好ましくは、5〜50m2/gの範囲内であり、特に好ましくは、10〜50m2/gの範囲内である。このような(C)成分の炭酸カルシウム粉末としては、乾式粉砕(または重質)炭酸カルシウム粉末、沈降(または軽質)炭酸カルシウム粉末、これらの炭酸カルシウム粉末を脂肪酸や樹脂酸等の有機酸で表面処理した粉末が例示され、好ましくは、沈降(または軽質)炭酸カルシウム粉末であり、特に好ましくは、脂肪酸や樹脂酸等の有機酸で表面処理した沈降(または軽質)炭酸カルシウム粉末である。
【0013】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜200質量部の範囲内であり、好ましくは、5〜200質量部の範囲内であり、特に好ましくは、10〜100質量部の範囲内である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーンゴム組成物のシリコーンゴムに対する接着性が低下する傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、均一なシリコーンゴム組成物を調製することが困難となるからである。
【0014】
(D)成分は本組成物の長期保存安定性を向上させるための成分であり、アルケニル基およびケイ素原子結合水素原子を有さない分子鎖両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンである。(D)成分中のケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。(D)成分の分子構造は実質的に直鎖状であるが、本発明の目的を損なわない範囲で分子鎖の一部が多少分岐していてもよい。また、(D)成分の25℃における粘度は特に限定されないが、好ましくは、1〜1,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、5〜200mPa・sの範囲内である。
【0015】
このような(D)成分のジオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体が例示される。
【0016】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜20質量部の範囲内であり、好ましくは、0.1〜10質量部の範囲内である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーンゴム組成物の長期保存安定性が低下する傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られるシリコーンゴムの物理的特性が低下するからである。
【0017】
(E)成分は本組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒である。(E)成分のヒドロシリル化反応用触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、イリジウム系触媒、パラジウム系触媒、ルテニウム系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。このような(E)成分として、具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末等の白金系触媒;式:[Rh(O2CCH3)2]2、Rh(O2CCH3)3、Rh2(C8152)4、Rh(C572)3、Rh(C572)(CO)2、Rh(CO)[Ph3P](C572)、RhX3[(R)2S]3、(R23P)2Rh(CO)X、(R23P)2Rh(CO)H、Rh224、HaRhb(En)cCld、またはRh[O(CO)R]3-n(OH)nで表されるロジウム系触媒(式中、Xは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であり、Yはメチル基、エチル基等のアルキル基、CO、C814、または0.5C812であり、Rはアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基であり、R2はアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、またはアリールオキシ基であり、Enはオレフィンであり、aは0または1であり、bは1または2であり、cは1〜4の整数であり、dは2、3、または4であり、nは0または1である。);式:Ir(OOCCH3)3、Ir(C572)3、[Ir(Z)(En)2]2、または[Ir(Z)(Dien)]2で表されるイリジウム系触媒(式中、Zは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはアルコキシ基であり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである。)が例示される。
【0018】
(E)成分の含有量は、本組成物の硬化を促進する量であれば特に限定されないが、好ましくは、(A)成分100万質量部に対して(E)成分中の金属原子が0.01〜1,000質量部の範囲内となる量であり、特に好ましくは、0.1〜500質量部の範囲内となる量である。
【0019】
本組成物には、硬化して得られるシリコーンゴムの機械的強度を向上させるため、さらに(F)シリカ粉末を含有してもよい。この(F)成分としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、焼成シリカ、粉砕石英、およびこれらのシリカ粉末をオルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物で表面処理した粉末が挙げられる。特に、得られる接着剤硬化物の機械的強度を十分に向上させるためには、(F)成分として、BET比表面積が50m2/g以上であるシリカ粉末を用いることが好ましい。
【0020】
(F)成分の含有量は任意であるが、得られるシリコーンゴムの機械的強度を向上させるためには、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部の範囲内であることが好ましく、さらには、1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。
【0021】
また、本組成物には、その他任意の成分として、例えば、ウォラストナイト;タルク;アルミナイト;硫酸カルシウム;硫酸バリウム;炭酸マグネシウム;カオリン等のクレー;水酸化アルミニウム;水酸化マグネシウム;グラファイト;バライト;マラカイト等の炭酸銅;ザラカイト等の炭酸ニッケル;ウィザライト等の炭酸バリウム;ストロンチアナイト等の炭酸ストロンチウム;フォーステライト、シリマナイト、ムライト、パイロフィライト、カオリナイト、バーミキュライト等のケイ酸塩;ケイ藻土;銀、ニッケル等の金属粉末等の非補強性の充填剤;これらの充填剤の表面を前記の有機ケイ素化合物で処理したもの;ベンガラ、酸化チタン等の顔料を含んでいてもよい。
【0022】
また、本組成物には、シリコーンゴムの接着性を向上させるための接着付与剤として、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン等のアルキルアルケニルジアルコキシシラン;メチルビニルジオキシムシラン、エチルビニルジオキシムシラン等のアルキルアルケニルジオキシムシラン;メチルビニルジアセトキシシラン、エチルビニルジアセトキシシラン等のアルキルアルケニルジアセトキシシラン;メチルビニルジヒドロキシシラン、エチルビニルジヒドロキシシラン等のアルケニルアルキルジヒドロキシシラン;メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等のオルガノトリアルコキシシラン;トリアリルイソシアヌレート、ジアリル(3−トリメトキシシリル)イソシアヌレート、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリプロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート化合物;テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンエチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート等のチタン化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウム化合物;ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等のジルコニウム化合物を含んでいてもよい。これらの接着付与剤の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0023】
さらに、本組成物には、シリコーンゴム組成物の硬化速度を調整し、取扱扱作業性を向上させるために、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアセチレン系化合物;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、ヒドラジン類等の硬化抑制剤を含有することが好ましい。これらの硬化抑制剤の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0024】
本組成物を調製する方法は限定されず、(A)成分〜(E)成分、および必要に応じてその他任意の成分を混合することにより調製することができるが、(F)成分を含有する場合には、予め(A)成分と(F)成分を加熱混合して調製したベースコンパウンドに、(B)成分〜(E)成分を添加することが好ましい。なお、その他任意の成分を添加する必要がある場合、ベースコンパウンドを調製する際に添加してもよく、また、これが加熱混合により変質する場合には、(B)成分〜(E)成分を添加する際に添加することが好ましい。また、このベースコンパウンドを調製する際、前記の有機ケイ素化合物を添加して、(F)成分の表面をin−situ処理してもよい。本接着剤を調製する際、2本ロール、ニーダーミキサー、ロスミキサー等の周知の混練装置を用いることができる。
【実施例】
【0025】
本発明のシリコーンゴム組成物を実施例、比較例により詳細に説明する。なお、実施例中の粘度は25℃における値であり、シリコーンゴムの特性は次にようにして測定した値である。
【0026】
[シリコーンゴムの物理的特性]
2液型シリコーンゴム組成物の2液を混合してシリコーンゴム組成物を調製し、これを25℃で1日間静置して硬化させることによりシリコーンゴムを作製した。このシリコーンゴムの硬さ(デュロメータ硬さ)をJIS K 6253-1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に規定のタイプAデュロメータにより測定した。また、このシリコーンゴム組成物を25℃で1日間静置することによりJIS K 6251-1993「加硫ゴムの引張試験方法」に規定のダンベル状7号形に準じた形状で試験片つかみ部を広くしたダンベル状試験片を作製した。このダンベル状試験片の引張強さ、および伸びをJIS K 6251-1993に規定の方法により測定した。
【0027】
[シリコーンゴムに対する接着力]
2液型シリコーンゴム組成物の2液を混合してシリコーンゴム組成物を調製し、このシリコーンゴムに対する接着力をJIS K 6854−3:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第3部:T形はく離」に規定の方法に準じて、次のようにして測定した。
すなわち、2液型シリコーンゴム組成物の2液を混合してシリコーンゴム組成物を調製し、これを幅50mmで、30g/m2のシリコーンゴムによって被覆されたナイロン基布上に塗布し、前記組成物の厚さが0.7mmとなるように前記シリコーンゴム被覆面同士を貼り合わせ、25℃で1日間放置することにより前記組成物を硬化させて試験片を作製した。次に、その試験片を200mm/分の引張速度でT形はく離試験することにより、シリコーンゴムに対する接着力を測定した。
【0028】
[実施例1]
粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100質量部、およびBET比表面積200m2/gのヒュームドシリカ粉末41質量部を均一に混合した後、ヘキサメチルジシラザン7質量部、および水2.5質量部をロスミキサーで均一に混合しさらに減圧下で170℃で60分間混合して液状シリコーンゴムベースを調製した減圧下、170℃で2時間加熱混合してベースコンパウンドを調製した。
【0029】
次に、このベースコンパウンド61.1質量部に、表面が脂肪酸で処理されたBET比表面積18m2/gの沈降炭酸カルシウム粉末(白石工業株式会社製の白艶化CCR)40質量部、粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン67.4質量部、および白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液{本組成物(I)中のジメチルポリシロキサン100万質量部に対して本触媒中の白金金属が30質量部となる量)、および粘度10,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン60質量部にベンガラ40質量部を配合した顔料ペースト2.0質量部を混合して組成物(I)を調製した。
【0030】
また、上記ベースコンパウンド61.1質量部に表面が脂肪酸で処理されたBET比表面積18m2/gの沈降炭酸カルシウム粉末(白石工業株式会社製の白艶化CCR)40質量部、粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン40.9質量部、粘度40mPa・sの分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン3.0質量部を混合した後、減圧下170℃で2時間加熱混合した。室温まで冷却した後、さらに粘度120mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン25.5質量部{前記組成物(I)と本組成物(II)を質量比1:1で混合して得られるシリコーンゴム組成物に含まれるジメチルポリシロキサン中のビニル基に対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.64となる量}、粘度170mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(一分子中に平均7個のケイ素原子結合水素原子を有する。)2.2質量部{前記組成物(I)と本組成物(II)を質量比1:1で混合して得られるシリコーンゴム組成物に含まれるジメチルポリシロキサン中のビニル基に対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.14となる量}を混合して組成物(II)を調製した。
【0031】
前記組成物(I)と前記組成物(II)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。また、前記組成物(I)と前記組成物(II)をそれぞれ50℃で4週間加熱エージングした。次に、加熱エージング後の組成物(I)と組成物(II)を質量比も1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0032】
[実施例2]
実施例1の組成物(II)において、表面が脂肪酸で処理されたBET比表面積18m2/gの沈降炭酸カルシウム粉末(白石工業株式会社製の白艶化CCR)の代わりに石英粉末(株式会社龍森製のCRYSTALITE 5X)40質量部を用いた以外は実施例1と同様にして組成物(III)を調製した。実施例1で調製した組成物(I)と前記組成物(III)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。また、前記組成物(I)と前記組成物(III)をそれぞれ50℃で4週間加熱エージングした。次に、加熱エージング後の組成物(I)と組成物(III)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0033】
[実施例3]
実施例1の組成物(II)において、表面が脂肪酸で処理されたBET比表面積18m2/gの沈降炭酸カルシウム粉末(白石工業株式会社製の白艶化CCR)の代わりに水酸化アルミニウム粉末(昭和電工株式会社製のH−42M)40質量部を用いた以外は実施例1と同様にして組成物(IV)を調製した。実施例1で調製した組成物(I)と前記組成物(IV)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。また、前記組成物(I)と前記組成物(IV)をそれぞれ50℃で4週間加熱エージングした。次に、加熱エージング後の組成物(I)と組成物(IV)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0034】
[比較例1]
実施例1の組成物(II)において、粘度40mPa・sの分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン3.0質量部を添加しない以外は実施例1と同様にして組成物(V)を調製した。実施例1で調製した組成物(I)と前記組成物(V)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。また、前記組成物(I)と前記組成物(V)をそれぞれ50℃で4週間加熱エージングした。次に、加熱エージング後の組成物(I)と組成物(V)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0035】
[比較例2]
実施例2の組成物(III)において、粘度40mPa・sの分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン3.0質量部を添加しない以外は実施例2と同様にして組成物(VI)を調製した。実施例1で調製した組成物(I)と前記組成物(VI)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。また、前記組成物(I)と前記組成物(VI)をそれぞれ50℃で4週間加熱エージングした。次に、加熱エージング後の組成物(I)と組成物(VI)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0036】
[比較例3]
実施例3の組成物(IV)において、粘度40mPa・sの分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン3.0質量部を添加しない以外は実施例3と同様にして組成物(VII)を調製した。実施例1で調製した組成物(I)と前記組成物(VII)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。また、前記組成物(I)と前記組成物(VI)をそれぞれ50℃で4週間加熱エージングした。次に、加熱エージング後の組成物(I)と組成物(VII)を質量比が1:1となるように混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のシリコーンゴム組成物は、炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物であって、長期に保管しても、当初設計の通りのシリコーンゴムの物理的特性やシリコーンゴムに対する接着性を得ることができるので、例えば、シリコーンゴムが含浸および/または被覆された基布の被覆面同士を重ね合わせ、周縁部相互を接着あるいは縫製して袋状に形成されるエアバッグにおいて、その基布同士を重ね合わせ、接着または縫製する箇所の接着剤または目止め剤として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン
100質量部、
(B)一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20となる量}、
(C)炭酸カルシウム粉末 1〜200質量部、
(D)アルケニル基およびケイ素原子結合水素原子を有さない分子鎖両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサン 0.01〜20質量部、および
(E)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物を硬化を促進する量)
から少なくともなるシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(C)成分が沈降(または軽質)炭酸カルシウム粉末である、請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(C)成分が脂肪酸または樹脂酸で表面処理された炭酸カルシウム粉末である、請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項4】
さらに、(F)非晶質シリカ粉末{(A)成分100質量部に対して0.1〜100質量部}を含む、請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(F)成分が、(A)成分中に予め加熱混合されている、請求項4記載のシリコーンゴム組成物。


【公開番号】特開2006−335872(P2006−335872A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162076(P2005−162076)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】