説明

シリコーンゴム部材の接着方法

【課題】接着剤層の発泡が抑制され、接着剤層硬化工程時間が短縮された、炭酸カルシウム粉末を含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物を用いたシリコーンゴム部材の接着方法を提供する。
【解決手段】シリコーンゴム部材間に、炭酸カルシウム粉末を2〜50質量%含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物からなる接着剤層を設け、該接着剤層に高周波またはマイクロ波を照射することを特徴とするシリコーンゴム部材の接着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム粉末を含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物を用いたシリコーンゴム部材の接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物として、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、炭酸カルシウム粉末、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、白金族金属系触媒からなるシリコーンゴム組成物(特許文献1〜3参照)などが知られており、これらのシリコーンゴム組成物がシリコーンゴムに対して良好な接着性を示し、伸びなどの物理特性も優れることが知られている。
【0003】
しかし、上記のようなシリコーンゴム組成物を用いてシリコーンゴム部材同士を接着させる場合、室温で10時間から24時間の硬化時間を要し、作業効率が悪いという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−038016号公報
【特許文献2】特開2002−285130号公報
【特許文献3】特開2005−082661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、熱風加硫炉やオーブンなどを用いた加熱により上記シリコーンゴム組成物からなる接着剤層の硬化時間短縮を試みたところ、接着剤層に顕著な発泡が認められることがわかった。また、シリコーンゴム部材の形状や大きさによっては、シリコーンゴム組成物の硬化中に加熱によりシリコーンゴム部材が熱膨張して製品が変形することがあることもわかった。
【0006】
そこで本発明は、接着剤層の発泡が抑制され、接着剤層硬化工程時間が短縮された、炭酸カルシウム粉末を含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物を用いたシリコーンゴム部材の接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、シリコーンゴム部材間に、炭酸カルシウム粉末を2〜50質量%含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物からなる接着剤層を設け、該接着剤層に高周波またはマイクロ波を照射することを特徴とするシリコーンゴム部材の接着方法によって達成される。
【0008】
シリコーンゴム部材としては、シリコーンゴム被覆合成繊維織物が好ましく、シリコーンゴム被覆合成繊維織物のシリコーンゴム被覆処理面を重ね合わせ、重ね合わせ部位に炭酸カルシウム粉末を2〜50質量%含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物からなる接着剤層を設け、しかる後に高周波またはマイクロ波を照射することでエアバッグを製造することができる。
【0009】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物は、(A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン 100質量部、(B)一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜5となる量}、(C)炭酸カルシウム粉末 5〜100質量部、および(D)ヒドロシリル化反応用触媒(本発明のシリコーンゴム組成物の硬化を促進する量)から少なくともなることが好ましい。
【0010】
上記ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物は、さらに、(E)シリカ粉末{(A)成分100質量部に対して1〜100質量部}および/または(F)平均粒子径0.01〜3.0μmの石英粉末{(A)成分100質量部に対して5〜100質量部}を含有することが好ましい。
【0011】
上記ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物は、さらに、(G)磁性金属酸化物微粒子、カーボンブラック、および誘電性物質微粒子からなる群から選択される微粒子{(A)成分100質量部に対して1〜50質量部}を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法は、炭酸カルシウム粉末を含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物を用いたシリコーンゴム部材の接着工程時間を、接着剤層の発泡などの不良を抑制しつつ短縮することができるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の方法において、シリコーンゴム部材は、シリコーンゴム成形体、シリコーンゴムが各種基材と一体となった複合化一体化物であってもよい。シリコーンゴム部材が複合化一体化物である場合、基材としては、金属、ガラス、合成繊維織物、熱可塑性樹脂成形体、熱硬化性樹脂成形体が例示される。複合化一体化物としては、例えばシリコーンゴム被覆合成繊維織物が挙げられる。シリコーンゴム被覆合成繊維織物とは、合成繊維織物を硬化性シリコーンゴム組成物に含浸するか、合成繊維織物上に硬化性シリコーンゴム組成物をコーティングするなどして被覆するか、またはこの両方を行った後、硬化性入りコーンゴム組成物を硬化させてシリコーンゴム被覆処理されたものである。この処理は、合成繊維織物の表面のみに行っても合成繊維織物の内部にまで行ってもよく、合成繊維織物の片面のみに行っても、両面に行ってもよい。
【0014】
合成繊維織物としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などのポリアミド繊維織物;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維織物;ポリアクリロニトリル繊維織物、アラミド繊維織物、ポリエーテルイミド繊維織物、ポリサルフォン系繊維織物、炭素繊維織物、レーヨン繊維織物、ポリエチレン繊維織物あるいはこれらの繊維からなる不織布が例示される。中でも、経済性や強度の面から、ポリアミド繊維織物またはポリエステル繊維織物が好ましい。織物組織は特に限定されず、生産性や厚みの点から平織物であることが一般的である。
【0015】
炭酸カルシウム粉末を2〜50質量%含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物からなる接着剤層は、上記シリコーンゴム部材間に設けられる。シリコーンゴム部材がシリコーンゴム被覆合成繊維織物などの複合化一体化物である場合は、シリコーンゴム層表面の少なくとも一部が上記接着剤層を介して他方のシリコーンゴム層表面の少なくとも一部に接触している必要がある。
【0016】
接着剤層の形状、幅、厚さなどは接合部位の形状、必要とされる接合強度などに応じて選定すればよい。接着剤層は、例えば、一方のシリコーンゴム部材表面に炭酸カルシウム粉末を2〜50質量%含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物を塗布し、他方のシリコーンゴム部材を重ね合わせ、接着剤層厚さに応じた厚みゲージを用いてシリコーンゴム部材同士の間隙を調整したり、一定の間隔に調整した2枚の平板やロール間を通して押圧したりすることで設けることができる。
【0017】
上記ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物は、炭酸カルシウム粉末を2〜50質量%、好ましくは15〜40質量%含有することを特徴とする。炭酸カルシウム粉末は、シリコーンゴム部材への接着性を発現させるために必須の成分であり、同時に上記ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物に高伸度などの優れた物理特性を付与する。上記ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物は、常温で液状であり、溶剤を含まないことが接着剤層の調整や維持などの取扱い作業性の点から好ましい。上記ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物の25℃に於ける粘度は、特に限定されないが、150〜2,000Pa・sの範囲であることが好ましく、特に好ましくは200〜1,000Pa・sの範囲であり、さらに好ましくは300〜1,000Pa・sの範囲である。
【0018】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物としては、下記(A)〜(D)成分からなるシリコーンゴム組成物であることが好ましい。
(A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン
100質量部、
(B)一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜5となる量}
(C)炭酸カルシウム粉末 5〜100質量部、および
(D)ヒドロシリル化反応用触媒(シリコーンゴム組成物の硬化を促進する量)
【0019】
(A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物の主剤である。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。アルケニル基は分子鎖末端に存在しても、分子鎖側鎖に存在してもよく、その両方に存在してもよい。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。(A)成分の分子構造は実質的に直鎖状であるが、本発明の目的を損なわない範囲で分子鎖の一部が多少分岐していてもよい。(A)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、100〜1,000,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、100〜500,000mPa・sの範囲内である。
【0020】
(B)一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンは、後記する(D)ヒドロシリル化反応触媒の存在下、(A)成分と反応、架橋するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物の硬化剤である。(B)成分の分子構造は特に限定されないが、例えば、直鎖状、分岐状、環状、または三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。(B)成分中のケイ素原子に結合している有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基である。このような(B)成分の25℃における粘度は限定されないが、1〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0021】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物において(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜5の範囲内となる量であり、好ましくは、0.6〜3の範囲内となる量であり、特に好ましくは、0.6〜2の範囲内となる量である。
【0022】
(C)炭酸カルシウム粉末は、ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物のシリコーンゴムに対する接着性を向上させ、上記ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物に高伸度などの優れた物理特性を付与するための成分である。(C)成分のBET比表面積は特に限定されないが、好ましくは5〜50m2/gであり、特に好ましくは10〜50m2/gである。(C)成分の平均粒子径は、物理的強度とシリコーンゴムへの接着性の点から、0.01〜2.0μmであることが好ましく、0.05〜2.0μmであることがより好ましい。(C)成分の平均粒子径は、例えば、BET法比表面積より換算して求めることができる。このような(C)成分の炭酸カルシウム粉末としては、重質(または乾式粉砕)炭酸カルシウム粉末、軽質(または沈降)炭酸カルシウム粉末、これらの炭酸カルシウム粉末を脂肪酸や樹脂酸等の有機酸で表面処理した粉末が例示され、好ましくは、軽質(または沈降)炭酸カルシウム粉末であり、特に好ましくは、脂肪酸や樹脂酸等の有機酸で表面処理した軽質(または沈降)炭酸カルシウム粉末である。
【0023】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物において(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜100質量部の範囲内であり、好ましくは、5〜60質量部の範囲内であり、さらに好ましくは15〜60質量部である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、シリコーンゴム組成物のシリコーンゴムに対する接着性が低下する傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、均一なシリコーンゴム組成物を調製することが困難となるからである。
【0024】
(D)ヒドロシリル化反応触媒はヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物の硬化を促進するための硬化触媒である。このような(D)成分としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、イリジウム系触媒、パラジウム系触媒、ルテニウム系触媒が例示される。好ましくは、白金系触媒であり、具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末が例示される。
【0025】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物において(D)成分の含有量は本発明のシリコーンゴム組成物の硬化を促進する量であれば特に限定されないが、好ましくは、(A)成分100万質量部に対して(D)成分中の白金金属が0.5〜100質量部の範囲内となる量であり、特に好ましくは、1〜60質量部の範囲内となる量である。
【0026】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物には、硬化して得られるシリコーンゴムの物理的強度を向上させるため、さらに(E)シリカ粉末を含有してもよい。この(E)成分としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、焼成シリカ、およびこれらのシリカ粉末を有機ケイ素化合物や環状ジオルガノシロキサンオリゴマーで表面処理した粉末が挙げられる。特に、得られる接着剤硬化物の物理的強度を十分に向上させるためには、(E)成分として、BET比表面積が50m2/g以上であるシリカ粉末を用いることが好ましい。
【0027】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物において(E)成分の含有量は任意であるが、得られるシリコーンゴムの物理的強度を向上させるためには、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部の範囲内であることが好ましく、さらには、1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。
【0028】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物には、さらに(F)石英粉末を配合してもよい。(F)成分の平均粒子径は0.01〜3.0μmであることが好ましく、0.1〜2.0μmであることが更に好ましい。(F)成分の形状は特に限定されず、例えば、球状、平板状、針状、不定形状が挙げられる。なお、本発明において、平均粒子径は、例えばレーザー光回折法等の分析手段を使用した粒度分布計により重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができる。
【0029】
上記シリコーンゴム組成物において、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜100質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、5〜60質量部の範囲内である。これは、(F)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、シリコーンゴムに接着硬化させた本発明のシリコーンゴム組成物の凝集破壊率が十分改善されなくなる場合があり、一方、上記範囲の上限を超えると、均一なシリコーンゴム組成物を調製することが困難となる場合があるからである。
【0030】
また、ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物には、さらに、(G)磁性金属酸化物微粒子、カーボンブラック、および誘電性物質微粒子からなる群から選択される微粒子を配合してもよい。磁性金属酸化物微粒子としては、γ―三酸化二鉄、四酸化三鉄、マグネタイト、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライトなどの酸化鉄系磁性金属酸化物微粒子が例示され、カーボンブラックとしては、アセチレンブラックが例示され、誘電性物質微粒子としてはチタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウムなどの強誘電性物質微粒子;チタン酸ストロンチウムなどの常誘電性物質微粒子が例示される。着色がほとんど無い点から、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウムなどの誘電性物質微粒子が好ましい。(G)成分の比表面積は35m/g以上であることが好ましく、より好ましくは50m/g以上である。(G)成分の比表面積が上記下限以上であると、平均粒子径が十分に小さく、ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物への分散性が良好であり、その物理特性を損なわないからである。(G)成分の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましい。
【0031】
(G)成分の含有量は任意であるが、(A)成分100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましい。
【0032】
また、ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物には、その他任意の成分として、例えば、ヒュームド酸化チタン、ケイ藻土、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、銀、ニッケル等の無機質充填剤;これらの充填剤の表面を前記の有機ケイ素化合物または環状ジオルガノシロキサンオリゴマーで処理した充填剤を含有してもよい。
【0033】
また、ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物には、その接着性を向上させるための接着付与剤として、シランカップリング剤、チタン化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物などを含有してもよい。これらの接着付与剤の含有量は限定されないが、好ましくは、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内である。
【0034】
さらに、ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物には、その貯蔵安定性を向上させたり、取扱作業性を向上させたりするためにアセチレン系化合物、エンイン化合物、1分子中にビニル基を5質量%以上持つオルガノシロキサン化合物、トリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、ヒドラジン類等の硬化抑制剤を含有することが好ましい。これらの硬化抑制剤の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0035】
また、ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物には、長期保存安定性を向上させるために(H)分子鎖両末端が水酸基で封鎖された25℃における粘度が5〜200mPa・sのジオルガノポリシロキサンを配合してもよい。好ましい(H)成分としては、分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端水酸基封鎖メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端水酸基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体が例示される。(H)成分は(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0036】
本発明のシリコーンゴム組成物を調製する方法は限定されず、(A)成分〜(D)成分、および必要に応じてその他任意の成分を混合することにより調製することができるが、本発明のシリコーンゴム組成物が(E)成分を含有する場合には、予め(A)成分と(E)成分を加熱混合して調製したベースコンパウンドに、(B)成分〜(D)成分、および残余の成分を添加することが好ましい。なお、その他任意の成分を添加する必要がある場合、ベースコンパウンドを調製する際に添加してもよく、また、これが加熱混合により変質する場合には、(B)成分〜(D)成分を添加する際に添加することが好ましい。また、このベースコンパウンドを調製する際、前記の有機ケイ素化合物を添加して、(E)成分の表面をin-situ処理してもよい。本発明のシリコーンゴム組成物を調製する際、2本ロール、ニーダーミキサー、ロスミキサー等の周知の混練装置を用いることができる。
【0037】
シリコーン部材間に設けた接着剤層は、高周波またはマイクロ波の照射により硬化し、シリコーン部材が接着される。高周波としては、0.3MHz以上300MHz未満の周波数が使用可能であり、マイクロ波としてはUHF帯、SHF帯を含む300MHz〜300,000MHzの周波数が使用可能である。中でも、900MHz〜4,000MHzの周波数のマイクロ波が一般的に用いられる。
【0038】
高周波またはマイクロ波の照射強度は、シリコーン部材の種類や接着剤層の硬化工程時間に応じて適宜選択できる。高周波またはマイクロ波の照射強度が高いほど接着剤層の硬化工程時間が短縮される傾向にある。好ましくは、JIS C9250で規定された方法に準じた定格高周波出力で100W〜1500W、更に好ましくは、150W〜800Wの範囲である。高周波またはマイクロ波の照射時間は、高周波またはマイクロ波の照射強度、シリコーン部材の種類や接着剤層の硬化工程時間に応じて適宜選択できる。接着するシリコーン部材が、合成繊維織物、熱可塑性樹脂成形体、熱硬化性樹脂成形体などを基材とする複合化一体化物の場合は、これらの基材が損傷しないように、高周波またはマイクロ波の照射時間や照射強度を適宜調整することが好ましい。
【実施例】
【0039】
本発明を実施例、比較例により詳細に説明する。なお、実施例中の粘度は25℃における値である。
【0040】
[調製例1]
粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 100質量部、BET比表面積225m/gのヒュームドシリカ 40質量部、シリカの表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザン 7質量部および水 2質量部を均一に混合した後、減圧下、170℃で2時間加熱混合してベースコンパウンドを調製した。
次に、このベースコンパウンド 15質量部に、表面が脂肪酸で処理されたBET比表面積18m2/gの沈降炭酸カルシウム粉末(白石工業株式会社製の白艶化CCR;平均粒子径0.12μm(BET比表面積換算値)) 45質量部、粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン84.4質量部、粘度40mPa・sの分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルポリシロキサン 1.5質量部、粘度13mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(一分子中に平均3個のケイ素原子結合水素原子を有する。) 0.95質量部(本発明のシリコーンゴム組成物に含まれているジメチルポリシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.62となる量)、粘度9.5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 1.91質量部(本発明のシリコーンゴム組成物に含まれているジメチルポリシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.93となる量)、および白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100万質量部に対して本触媒中の白金金属が45質量部となる量)を混合してシリコーンゴム組成物(1)を調製した。
【0041】
[調製例2]
調製例1において、ベースコンパウンドにさらに平均粒子径1.5μmの石英粉末(株式会社龍森製のクリスタライト5X) 20質量部(ベースコンパウンド 15質量部に対して)を配合した以外は同様にしてシリコーンゴム組成物(2)を調製した。
【0042】
[調製例3]
調製例2において、さらにチタン酸バリウム 8.50質量部(ベースコンパウンド 15質量部に対して)を配合した以外は同様にしてシリコーンゴム組成物(3)を調製した。
【0043】
[調製例4]
調製例2において、さらにアセチレンブラック 8.50質量部(ベースコンパウンド 15質量部に対して)を配合した以外は同様にしてシリコーンゴム組成物(4)を調製した。
【0044】
[調製例5]
粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 100質量部、BET比表面積225m/gのヒュームドシリカ 40質量部、シリカの表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザン 7質量部および水 2質量部を均一に混合した後、減圧下、170℃で2時間加熱混合してベースコンパウンドを調製した。
次に、このベースコンパウンド 40.7質量部に、表面が脂肪酸で処理されたBET比表面積18m2/gの沈降炭酸カルシウム粉末(白石工業株式会社製の白艶化CCR;平均粒子径0.12μm(BET比表面積換算値)) 20質量部、平均粒子径1.5μmの石英粉末(株式会社龍森製のクリスタライト5X) 20質量部、粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン84.4質量部、粘度40mPa・sの分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルポリシロキサン 1.5質量部、粘度13mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(一分子中に平均3個のケイ素原子結合水素原子を有する。) 0.93質量部(本発明のシリコーンゴム組成物に含まれているジメチルポリシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.56となる量)、粘度9.5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 1.81質量部(本発明のシリコーンゴム組成物に含まれているジメチルポリシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.81となる量)、および白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100万質量部に対して本触媒中の白金金属が45質量部となる量)を混合してシリコーンゴム組成物(5)を調製した。
【0045】
[シリコーンゴムの物理的特性]
調製例1〜5で調製したシリコーンゴム組成物(1)〜(5)を25℃で1日間静置して硬化させることによりシリコーンゴムを作製した。このシリコーンゴムの硬さをJIS K 6253に規定のタイプAデュロメータにより測定した。また、このシリコーンゴム組成物を25℃で1日間静置することによりJIS K 6251に規定のダンベル状3号形ダンベル状試験片を作製した。このダンベル状試験片の引張強さ、および伸びをJIS K 6251に規定の方法により測定した。これらの結果を表1にまとめた。
【0046】
【表1】

【0047】
[実施例1〜5]
調製例1〜5で調製したシリコーンゴム組成物(1)〜(5)それぞれを、35g/mの量のシリコーンゴムによって被覆された幅50mmのシリコーンゴム被覆ナイロン基布のシリコーンゴム被覆処理面上に塗布し、前記組成物の幅が50mm、長さが10mm、厚さが0.7mmとなるようにシリコーンゴム被覆ナイロン基布のシリコーンゴム被覆処理面同士を貼り合わせた。次いで、2,450MHzのマイクロ波を定格高周波出力500W(JIS C9250に準じる)で3分間照射後、25℃で2時間放置することにより前記シリコーンゴム組成物を硬化させて試験片を作製した。なお、シリコーンゴム組成物はマイクロ波照射後には、内部まで硬化していた。
次に、JIS K6854に規定の方法に準じて、シリコーンゴム被覆ナイロン基布を200mm/分の引張速度でT形剥離試験することにより、接着力を測定した。
上記接着力測定後にシリコーンゴムの剥離面を目視で観察し、凝集破壊を起こしている面積の剥離面全体に占める割合を凝集破壊率として%で評価した。また、シリコーンゴム剥離面に肉眼で認められる直径0.1〜0.3mmの気泡の数を目視で数え;0個の場合を1;1〜20個を2(許容範囲内);20〜40個を3;40個を超える場合を4と評価した。これらの結果を表2に示した。
【0048】
【表2】

【0049】
[比較例1〜5]
調製例1〜5で調製したシリコーンゴム組成物(1)〜(5)それぞれを、35g/mの量のシリコーンゴムによって被覆された幅50mmのシリコーンゴム被覆ナイロン基布のシリコーンゴム被覆処理面上に塗布し、前記組成物の幅が10mm、厚さが0.7mmとなるようにシリコーンゴム被覆ナイロン基布のシリコーンゴム被覆処理面同士を貼り合わせた。次いで、80℃の循環式熱風オーブン中に3分間投入後、25℃で2時間放置することにより前記シリコーンゴム組成物を硬化させて試験片を作製した。次に、JIS K6854に規定の方法に準じて、シリコーンゴム被覆ナイロン基布を200mm/分の引張速度でT形剥離試験することにより、接着力を測定した。
上記接着力測定後にシリコーンゴムの剥離面を目視で観察し、凝集破壊を起こしている面積の剥離面全体に占める割合を凝集破壊率として%で評価した。また、シリコーンゴム剥離面に肉眼で認められる直径0.1〜0.3mmの気泡の数を目視で数え;0個の場合を1;1〜20個を2(許容範囲内);20〜40個を3;40個を超える場合を4と評価した。これらの結果を表3に示した。
【0050】
【表3】

【0051】
[実施例6、7]
調製例3、4で調製したシリコーンゴム組成物(3)、(4)それぞれを、35g/mの量のシリコーンゴムによって被覆された幅50mmのシリコーンゴム被覆ナイロン基布のシリコーンゴム被覆処理面上に塗布し、前記組成物の幅が10mm、厚さが0.7mmとなるようにシリコーンゴム被覆ナイロン基布のシリコーンゴム被覆処理面同士を貼り合わせた。次いで、2,450MHzのマイクロ波を定格高周波出力700W(JIS C9250に準じる)で1分間照射後、25℃で2時間放置することにより前記シリコーンゴム組成物を硬化させて試験片を作製した。なお、シリコーンゴム組成物はマイクロ波照射後には、内部まで硬化していた。
次に、JIS K6854に規定の方法に準じて、シリコーンゴム被覆ナイロン基布を200mm/分の引張速度でT形剥離試験することにより、接着力を測定した。
上記接着力測定後にシリコーンゴムの剥離面を目視で観察し、凝集破壊を起こしている面積の剥離面全体に占める割合を凝集破壊率として%で評価した。また、シリコーンゴム剥離面に肉眼で認められる直径0.1〜0.3mmの気泡の数を目視で数え;0個の場合を1;1〜20個を2(許容範囲内);20〜40個を3;40個を超える場合を4と評価した。これらの結果を表4に示した。
【0052】
【表4】

【0053】
[実施例8]
調製例5で調製したシリコーンゴム組成物(5)を、35g/mの量のシリコーンゴムによって被覆された幅50mmのシリコーンゴム被覆ナイロン基布のシリコーンゴム被覆処理面上に塗布し、前記組成物の幅が10mm、厚さが0.7mmとなるようにシリコーンゴム被覆ナイロン基布のシリコーンゴム被覆処理面同士を貼り合わせた。次いで、2,450MHzのマイクロ波を、表5に記載の定格高周波出力(JIS C9250に準じる)および照射時間で照射後、25℃で2時間放置することにより前記シリコーンゴム組成物を硬化させて試験片を作製した。なお、シリコーンゴム組成物はマイクロ波照射後には、内部まで硬化していた。
次に、JIS K6854に規定の方法に準じて、シリコーンゴム被覆ナイロン基布を200mm/分の引張速度でT形剥離試験することにより、接着力を測定した。
上記接着力測定後にシリコーンゴムの剥離面を目視で観察し、凝集破壊を起こしている面積の剥離面全体に占める割合を凝集破壊率として%で評価した。また、シリコーンゴム剥離面に肉眼で認められる直径0.1〜0.3mmの気泡の数を目視で数え;0個の場合を1;1〜20個を2(許容範囲内);20〜40個を3;40個を超える場合を4と評価した。これらの結果を表5に示した。
【0054】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えば、シリコーンゴムが含浸および/または被覆された合成繊維織物のシリコーンゴム被覆処理面同士を重ね合わせ、シリコーンゴム組成物で接着することで、あるいは、シリコーンゴム組成物で接着または目止めした箇所を縫製することで袋状に形成されるエアバッグの製造方法として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム部材間に、炭酸カルシウム粉末を2〜50質量%含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物からなる接着剤層を設け、該接着剤層に高周波またはマイクロ波を照射することを特徴とするシリコーンゴム部材の接着方法。
【請求項2】
シリコーンゴム被覆合成繊維織物のシリコーンゴム被覆処理面を重ね合わせ、重ね合わせ部位に炭酸カルシウム粉末を2〜50質量%含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物からなる接着剤層を設け、しかる後に高周波またはマイクロ波を照射することを特徴とするシリコーンゴム被覆合成繊維織物の接着方法。
【請求項3】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物が(A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン 100質量部、(B)一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜5となる量}、(C)炭酸カルシウム粉末 5〜100質量部、および(D)ヒドロシリル化反応用触媒(本発明のシリコーンゴム組成物の硬化を促進する量)から少なくともなることを特徴とする請求項1記載のシリコーンゴム部材の接着方法。
【請求項4】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物が、さらに、(E)シリカ粉末{(A)成分100質量部に対して1〜100質量部}を含有することを特徴とする、請求項3記載のシリコーンゴム部材の接着方法。
【請求項5】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物が、さらに、(F)平均粒子径0.01〜3.0μmの石英粉末{(A)成分100質量部に対して5〜100質量部}を含有することを特徴とする、請求項3または請求項4記載のシリコーンゴム部材の接着方法。
【請求項6】
ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物が、さらに、(G)磁性金属酸化物微粒子、カーボンブラック、および誘電性物質微粒子からなる群から選択される微粒子{(A)成分100質量部に対して1〜50質量部}を含有することを特徴とする請求項3〜5の何れか1項記載のシリコーンゴム部材の接着方法。
【請求項7】
シリコーンゴム被覆合成繊維織物のシリコーンゴム被覆処理面を重ね合わせ、重ね合わせ部位に炭酸カルシウム粉末を2〜50質量%含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物からなる接着剤層を設け、しかる後に高周波またはマイクロ波を照射することを特徴とするエアバッグの製造方法。

【公開番号】特開2009−120829(P2009−120829A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274283(P2008−274283)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】