説明

シリコーン水中油型エマルジョン

3〜90体積%のシリコーン油相を含むシリコーン水中油型エマルジョンであって、該エマルジョンの0.25〜20質量%で存在するタンパク質および/またはペプチドによりエマルジョンを安定化することを特徴とする。エマルジョンはタンパク質またはペプチドの質量に対し25質量%未満、好適には0質量%の非ポリマー性の両親媒性界面活性剤を含有する。エマルジョンの製造方法についても記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続水相中に分散したシリコーン油の液滴を含むシリコーン水中油型エマルジョンに関する。かかるエマルジョンを多くの製品に用いて、シリコーンの利点で該製品を向上させる。例えば、シリコーン(オルガノポリシロキサン)が多くのヘアシャンプーおよび他のヘアケア製品中に存在して、髪のつやおよび健康的な外観を向上させ、またシャワージェルのようなスキンケア製品中に存在して、皮膚の滑らかな感触を向上させる。シリコーンはまた、すすぎサイクルの織物柔軟剤のような洗濯製品中にも存在し、織物に柔軟な手触りをもたらす。
【背景技術】
【0002】
シリコーン水中油型エマルジョンは、エマルジョンを安定させる、すなわちシリコーン油の液滴が連続油相中へ溶け込むのを防ぐための添加剤を必要とする。用いる添加剤は界面活性剤、すなわち疎水性部分および親水性部分を含む両親媒性分子である。界面活性剤は、通常非ポリマー性であり、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性であってもよい。かかるシリコーン水中油型エマルジョンに適した界面活性剤の例は、多くの特許文献、例えば国際公開第02/42360−A2号に記載されている。
【0003】
しかしながら、いくつかの製品では通常の両親媒性界面活性剤が問題となり得る。とくに、ますます多くの末端使用者がアレルギーを発現させており、従って、界面活性剤として潜在的に刺激性および感作性分子を含有しない製品を必要としている。これはとくに幼い子ども用に設計したおしり拭きまたはベビーシャンプーのような製剤についてそうである。両親媒性界面活性剤はまた、下水に廃棄すると泡を多く発生させる場合があり、水中生物に優しくない。食品および化粧品のようないくつかの用途では、界面活性剤の処方自由度および選択が法律により制限されている。
【0004】
英国特許第1154256号には、スキムミルク粉末の水溶液中に液体アルキルポリシロキサンを含むエマルジョンから調製した錠剤化可能なアルキルポリシロキサン組成物が記載されている。
【0005】
特開昭58−063750号公報には、タンパク質、タンパク質加水分解物および1つ以上の非ポリマー性両親媒性界面活性剤により安定させたポリジメチルシロキサンの水エマルジョンが記載されている。すべての場合における水相は、ポリヒドロキシ化合物を含有する。しかしながら、界面活性剤がより表面活性であるので、界面上で優先的に吸着し、よって界面からタンパク質を移動させる傾向がある。タンパク質を安定剤として単独で用い、水相がポリヒドロキシ化合物(例えばプロピレングリコール、ソルビトールまたはグルコース)を含有する場合、ポリヒドロキシ化合物は溶剤性質をタンパク質(ポリマー)について修飾し、よってエマルジョン形成を促進することが期待される。例えばプロピレングリコールの場合、水の表面張力が72mN/mであるのに対し、プロピレングリコールの表面張力は室温で約40mN/mである。プロピレングリコールのより低い表面張力はまた、乳化を促進すると考えられる。
【発明の概要】
【0006】
3〜90体積%のシリコーン油相を含むシリコーン水中油型エマルジョンであって、該エマルジョンの0.25〜20質量%で存在するタンパク質および/またはペプチドによりエマルジョンを安定化し、またエマルジョンがタンパク質またはペプチドの質量に対して25質量%未満の非ポリマー性の両親媒性界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0007】
かかるエマルジョンの製造方法においては、シリコーン油およびタンパク質またはペプチドを高せん断下で機械的に混合する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
シリコーン油相は、通常流体オルガノポリシロキサン組成物を含む。流体オルガノポリシロキサン組成物は、例えば少なくとも1または5〜1000000センチストークまたはさらに20000000センチストーク(1または5mm/秒〜1またはさらに20m/秒)のバルク粘度を有することができる。流体オルガノポリシロキサンは、例えばポリジメチルシロキサンのような100〜60000センチストークの粘度を有する実質的に線状のポリジオルガノシロキサンとすることができるが、分岐および/または環状ポリシロキサンを乳化することもできる。オルガノポリシロキサン流体は非反応性流体、例えば末端にトリメチルシロキシ単位を有する線状ポリジメチルシロキサンであってもよく、または反応性基を有するオルガノポリシロキサン流体であってもよい。
【0009】
シリコーン油相は、2つ以上のオルガノポリシロキサンの混合物とすることができる。例えば、シリコーン油相は、低粘度オルガノポリシロキサン流体における固体オルガノポリシロキサンゴムもしくは樹脂、または高粘度オルガノポリシロキサンゴムの溶液とすることができる。オルガノポリシロキサンゴムは、例えば1000cm/sより高い、またはさらに100000cm/sより高い粘度を有することができる。低粘度オルガノポリシロキサン流体は、例えば1〜1000センチストーク(1〜1000mm/s)の範囲内の粘度を有することができる。低粘度オルガノポリシロキサン流体は、デカメチルシクロペンタシロキサンのような環状ポリジオルガノシロキサンおよび/または末端にトリメチルシロキシ単位を有する線状ポリジメチルシロキサンのような線状ポリジオルガノシロキサンとすることができる。
【0010】
反応性オルガノポリシロキサン流体は、例えばヒドロキシル(Si−OHまたはアルコール基のいずれか)、アミノ、ビニルまたはSi−H基のような反応性基を含有することができる。オルガノポリシロキサン流体は、例えばシラノール末端ポリジメチルシロキサンとすることができる。反応性オルガノポリシロキサン流体を、非反応性オルガノポリシロキサン流体と混合することができる。アミノ官能オルガノポリシロキサンは、アミノ官能オルガノポリシロキサンの重量に対し少なくとも30%、より好適には少なくとも50%の末端にトリメチルシロキシ単位を有する線状ポリジメチルシロキサンのような非反応性オルガノポリシロキサン流体と混合するのが好ましい。
【0011】
シリコーン油相は、一般にエマルジョンの少なくとも3体積%で存在し、通常少なくとも10または20%で存在し、シリコーンエマルジョンの効率的な分散を可能にする。シリコーン油相は、エマルジョンの最大90体積%、さらに通常は最大85または86%を形成することができる。パーソナルケア製品中に組み入れやすい好適なエマルジョンは、25〜65体積%のシリコーン油相、例えば45〜55%のシリコーン油相を含有することができる。
【0012】
本発明者らは、広範囲のタンパク質およびペプチドがシリコーン水中油型エマルジョンを安定させるのに効果的であることを見出した。タンパク質は、例えばカゼインまたはホエータンパク質のような牛乳由来のタンパク質とすることができる。植物性タンパク質、とくに小麦タンパク質(グルテン)のような穀物タンパク質も効果的であることが見出された。アーモンドのようなナッツもしくは他の豆類由来のタンパク質、または大豆たんぱく質も効果的であり得る。タンパク質は塩のような誘導体の形態とすることができ、例えばカゼインはカゼイン酸ナトリウムの形態とすることができる。適切なカゼイン酸ナトリウムは商標「Lactalis」で販売されている。タンパク質は部分的に加水分解することができる。牛乳タンパク質は加水分解なしで非常に効果的なエマルジョン安定剤であるが、植物性タンパク質は部分的に加水分解した形態でより効果的であり得る。かかる加水分解タンパク質の例としては、Tate & Lyle社より商標「Meripro 705」および「Meripro 711」で販売される部分加水分解グルテン製品、ならびにCognis社より商標「Gluadin Almond」で販売されるアーモンド抽出タンパク質加水分解物がある。
【0013】
すべてのタンパク質およびペプチドがシリコーン水中油型エマルジョンを安定させるのに効果的であるわけではない。ケラチン、毛髪および羊毛の主要構造タンパク質のようなその天然機能が構造タンパク質としてのものであるタンパク質は、一般にシリコーンを乳化するのに効果的ではない。タンパク質ではなくセルロースが主要天然構造物質である植物からの植物性タンパク質が、牛乳タンパク質のような天然エマルジョンからのタンパク質と同様に、通常シリコーンの乳化をもたらす。候補タンパク質の有効性は、等量のジメチコーンおよびタンパク質の2%水溶液を高せん断ミキサーで混合し、混合後エマルジョンが形成されるかまたはジメチコーンが水相から分離するかを観察することにより試験することができる。エマルジョンが形成され、平均粒径および分散の90パーセンタイルは少なくとも2週間維持される場合、タンパク質は効果的であるが、エマルジョンの粒径および安定性の向上はおそらく物質の割合を変えるかまたはより高性能な乳化装置を用いることにより達成することができる。
【0014】
シリコーンを乳化するのに効果的であるタンパク質でも、時間とともにエマルジョンの安定化の度合いが違う場合がある。例えば、小麦タンパク質加水分解物「Meripro 705」およびより広範に加水分解した「Meripro 711」はともにシリコーンを乳化するが、「Meripro 705」を用いて形成したエマルジョンは長期保存に対してより安定である。「Meripro 705」を用いて形成したエマルジョンは、「Gluadin Almond」を用いて形成したエマルジョンより長期保存に対して一層安定である。カゼインのような牛乳タンパク質を用いて形成した油中シリコーン型エマルジョンは一般に良好な長期安定性を有する。
【0015】
タンパク質の混合物、例えば牛乳タンパク質と植物性タンパク質または部分加水分解植物性タンパク質のような異なる供給源からのタンパク質の混合物を用いてエマルジョンを安定させることができる。
【0016】
エマルジョン中のタンパク質の量は、エマルジョンの安定化を達成するため、通常エマルジョンの少なくとも0.25質量%であり、好適には少なくとも0.5〜0.75%である。エマルジョン中のタンパク質の量は、エマルジョンの最大20質量%とすることができ、10〜20%のタンパク質濃度が最小粒径エマルジョンをもたらすことができるが、0.5〜7%、とくに0.75〜2.5%のタンパク質濃度が一般的には好ましく、1〜30μmの範囲内の平均粒径のシリコーン水中油型エマルジョンを効果的に安定化させる。一般に、存在する安定剤の累積量(例えば重量:重量)は常にシリコーン油の量より少ない、すなわち、タンパク質またはペプチドはエマルジョン中にシリコーン油相の質量以下の量で存在する。
【0017】
本発明のエマルジョンは、一般に水、シリコーン油およびタンパク質またはペプチドを高せん断下で混合することにより生成することができる。好都合なことに、タンパク質またはペプチドはシリコーン油と混合する前に水に溶解することができる。高せん断混合装置はシリコーン水中油型生成で知られるもののいずれかとすることができる。例えば、タンパク質水溶液およびシリコーン油を、「Ultra Turrax」(商標)のようなローター/ステーター混合装置で混合することができる。必要に応じて、増大したせん断を印加してより小さい粒径のエマルジョンをもたらす装置、例えばホモジナイザー、とくにRannie(商標)ホモジナイザーのような2段加圧式ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、またはソノレーター(超音波ミキサー)でさらなる混合を行うことができる。
【0018】
高い割合のシリコーン油相、例えば60%より多いシリコーンを含有するエマルジョンを調製する場合、シリコーンをタンパク質またはペプチドおよび少量の水と高い機械的せん断下で混合して、低せん断速度で非常に高い粘度を有する(低せん断速度でシリコーンポリマー単独よりもさらにより粘性である)非ニュートン性の「高粘性相」を形成することができる。この場合、高せん断混合を、歯科用ミキサーのような高粘性ペーストを扱うために設計されたミキサーで行う。混合を継続して、「高粘性相」は水中油型エマルジョンに転化し、これを必要に応じて任意でさらなるタンパク質またはペプチドを含有するさらなる水で希釈することができる。
【0019】
乳化をバッチ式でまたは連続的に行うことができ、例えばタンパク質水溶液およびシリコーン油を国際公開第02/42360−A2号に記載されたような連続乳化装置に供給することができる。いずれの混合装置でも、混合具を水性シリコーン油混合物中に浸漬させて空気の取り込みおよび泡形成を最小化するのが好ましい。
【0020】
乳化を0〜60℃、好適には15〜50℃の範囲内の温度で行う。高温はタンパク質を変性、すなわちタンパク質を不可逆的に凝集させ得るので、エマルジョンをその生成中に60℃より高い温度で加熱すべきではない。
【0021】
エマルジョンの粒径はタンパク質乳化剤の量およびタイプ、シリコーン油の量およびタイプならびに混合中に印加するせん断度のような多くの因子によって決まる。エマルジョン中のシリコーン油液滴の平均粒径は一般に0.2μmより大きく、通常0.4μmより大きく、最大100μmとすることができるが、好適には70μm未満であり、通常30または50μm未満である。
【0022】
本発明のエマルジョンは、エマルジョン中での細菌増殖を回避するため、殺生物剤、とくに殺菌剤を含有することができる。細菌増殖はカビ形成を引き起こし、またエマルジョンの長期安定性を低下させ得るタンパク質またはペプチドの変性を引き起こし得る。適当な殺菌剤の1つの例は「Glycacil L」(Lonza社による商標)である。殺菌剤は、例えばエマルジョンの0.01〜0.25質量%で存在することができる。
【0023】
エマルジョンが非ポリマー性両親媒性界面活性剤を含有しないこと(タンパク質またはペプチドの0質量%)が一般的に好ましい。こうした従来の界面活性剤は、タンパク質乳化剤と好ましくない方法で競合する場合がある。任意の非ポリマー性の両親媒性界面活性剤がエマルジョン中に存在する場合、これはタンパク質またはペプチドの質量に対し25質量%未満、好適には10%未満、またエマルジョンの質量に対し0.1質量%未満、より好適には0.02%未満で存在していなければならない。
【0024】
本発明のエマルジョンは、シリコーン水中油型エマルジョンで既知の1つ以上の他の添加剤を含有することができ、ただしかかる添加剤はタンパク質および/またはペプチドと不利に相互作用しない。固体添加剤が少量で存在することができる;例えばシリコーン消泡エマルジョンを形成する場合、微細な疎水性シリカを乳化前にポリジオルガノシロキサン流体と混合することができる。存在し得る他の添加剤としては、UV安定剤、抗酸化剤、香料、皮膚軟化剤または医薬もしくは化粧品活性物質が挙げられる。ポリヒドロキシ化合物(例えばプロピレングリコール、ソルビトールまたはグルコース)の必要性は本願において想定していないが、必要に応じて連続(水)相に添加することができる。しかしながら、本願はかかるポリヒドロキシ化合物を含まないのが好ましい。
【実施例】
【0025】
実施例は本発明を当業者に例示することを意図し、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。すべての測定および実験は、とくに指示のない限り、23℃で行った。部およびパーセントはとくに指示のない限り質量による。粒径測定は、英国のMalvern Instruments社からの「Mastersizer 2000」を用いるレーザー回析法により行った。とくに指示のない限り、本願中に示したすべての粒径はD(v,0.5)による平均粒径である。
【0026】
(実施例1)
3.59%の「Meripro 705」部分加水分解小麦タンパク質を68.18%の水に溶解した。この溶液を、Ultra Turrax高せん断ミキサー中で350mm/s(cSt)の粘度を有する28.23%のジメチコーン(トリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン)と混合した。安定なエマルジョンを形成した。
【0027】
(実施例2〜13)
これら実施例のそれぞれにおいて、部分加水分解小麦タンパク質を水に溶解し、生成した溶液を歯科用ミキサー(Hauschild社のDAC 150 FZK SpeedMixer(商標))でシリコーン油と混合して、まず高粘性ペーストを形成し、さらに混合すると安定な粘性クリーム状エマルジョンになる。用いた成分の割合を以下の表1に示す。
【0028】
用いた部分加水分解小麦タンパク質乳化剤は、高加水分解度を有する「Meripro 705」および「Meripro 711」とした。用いたシリコーン油は、異なる粘度を有する2つのジメチコーン、またはジメチコノール(シラノール末端ポリジメチルシロキサン)のいずれかとした。
【0029】
【表1】

【0030】
(実施例14)
商標「Emulac NA」で販売される1.0%のカゼインを50.0%の水に溶解した。この溶液をUltra Turrax高せん断ミキサーで1000cStの粘度を有する49.0%のジメチコノールと混合して初期エマルジョンを形成した。次いで、エマルジョンに700および360バールの2段階圧力で作動するRannie2段加圧ホモジナイザーで高せん断混合を施した。安定なエマルジョンを形成した。粒径を分析し、平均粒径D05ならびに10番目に大きなパーセンタイルD01および9番目に大きなパーセンタイルD09の粒径を以下の表2に示す。
【0031】
(実施例15〜18)
実施例14の手順に従って、「Emulac NA」カゼインまたは商標「Globulan」で販売されるホエータンパク質分離物の水溶液およびジメチコノールまたはジメチコーンシリコーン油からエマルジョンを形成した。成分の割合を表2に示す。表2に示す粒径を有する安定なエマルジョンを生成した。
【0032】
【表2】

【0033】
実施例14〜18のエマルジョンの保存安定性を試験した。0.25%の「Glycacil L」殺菌剤を各エマルジョンに添加し、エマルジョンを周囲温度で密封容器中に保存した。各エマルジョンは少なくとも400日間は安定しているように見えた。エマルジョンの粒径を保存試験の初期、および少なくとも400日後に再度試験した。結果を以下の表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
(実施例19)
2.0%のカゼインを48.0%の水に溶解した。この溶液を50.0%のシリコーンとUltra Turrax高せん断ミキサーで混合してシリコーン水中油型エマルジョンを形成した。シリコーンは商標「Dow Corning DC1503」で販売され、1500mm/sの粘度を有する12%の超高粘度ジメチコノールゴムのジメチコーン溶液とした。粒径を分析し、結果を以下の表4に示す。
【0036】
(実施例20〜22)
実施例19のエマルジョンに200、400または700バールの圧力で作動する高圧ホモジナイザーで高せん断混合を施した。生成した各エマルジョンの粒径を分析し、結果を以下の表4に示す。
【0037】
(実施例23〜26)
「Dow Corning DC1503」を商標「Dow Corning DC1501」で販売され、6000mm/sの粘度を有する15%の超高粘度ジメチコノールゴムのデカメチルシクロペンタシロキサン(シクロメチコーン)溶液で置き換えることにより、実施例19〜22を繰り返した。生成した各エマルジョンの粒径を分析し、結果を以下の表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
(実施例27〜29)
さまざまな濃度の「Meripro 705」部分加水分解小麦タンパク質を水に溶解し、Ultra Turrax高せん断ミキサーで350cStの粘度を有するジメチコーンと以下の表4に示す割合で混合した。各エマルジョンに700バールで作動する高圧ホモジナイザーで高せん断混合を施した。生成した各エマルジョンの粒径を分析し、結果を以下の表5に示す。
【0040】
【表5】

【0041】
0.25%の「Glycacil L」殺菌剤を実施例27〜29の各エマルジョンに添加し、エマルジョンを上記実施例14〜18について記載したように保存し、試験した。各エマルジョンは少なくとも400日間は安定しているように見えた。粒径の結果を以下の表6に示す。
【0042】
【表6】

【0043】
(実施例30)
2.5%の「Meripro 705」部分加水分解小麦タンパク質を47.5%の水に溶解した。商標「Dow Corning 8040」で販売される0.8〜5.0mm/sの粘度を有する25%のジアミノ官能性オルガノポリシロキサンを1000cSt(mm/s)の粘度を有する25%のジメチコーンに溶解した。2つの溶液をUltra Turrax高せん断ミキサーで混合して、シリコーン水中油型エマルジョンを形成した。粒径を分析し、結果を以下の表7に示す。
【0044】
(実施例31〜33)
実施例30で調製したエマルジョンにさまざまな圧力で作動する高圧ホモジナイザーで高せん断混合を施した。生成した各エマルジョンの粒径を分析し、結果を以下の表7に示す。
【0045】
(実施例34〜39)
実施例30に用いた「Meripro 705」の溶液および「Dow Corning 8040」ジアミノ官能性オルガノポリシロキサンおよび1000cStの粘度を有するジメチコーンの混合物から表7に示すようなさまざまな割合でさらなるエマルジョンを調製した。乳化処理は実施例30で用いたようなUltra Turraxミキサーまたは実施例31〜33で用いたような高圧ホモジナイザーのいずれかであり、表7に示す。生成した各エマルジョンの粒径を分析し、結果を表7に示す。
【0046】
(実施例40〜43)
「Dow Corning 8040」ジアミノ官能性オルガノポリシロキサンを商標「Dow Corning 8630」で販売される3500mm/sの粘度を有する異なるアミノ官能性オルガノポリシロキサンで置き換え、実施例30〜33を繰り返した。生成した各エマルジョンの粒径を分析し、結果を表7に示す。
【0047】
【表7】

【0048】
(実施例44)
6.24%の「Lactalis」カゼイン酸ナトリウムを43.76%の水に溶解し、Ultra Turraxミキサーで1000cStの粘度を有する50.0%のジメチコーンと混合した後、3回の連続した均質化運転を700バールで行った。0.683μmの平均粒径(D05)を有する安定なエマルジョンを形成した。
【0049】
(実施例45および46)
実施例1の処理に従って、高シリコーン濃度を有するエマルジョンを乳化剤として「Emulac NA」カゼインを用いて調製した。安定なエマルジョンを形成し、これを注意深く希釈することができた。用いた処方および生成したエマルジョンの平均粒径を以下の表8に示す。
【0050】
【表8】

【0051】
(実施例47〜50)
1.25%のカゼイン酸ナトリウムおよび1.25%のホエータンパク質を47.43%の水に溶解し、0.07%のGlycacil Lを添加した。次にこの溶液を、異なる混合装置および圧力を用い、350cStを有する50%のジメチコーンと混合した。製剤の平均粒径を表9に示す。
【0052】
【表9】

【0053】
(実施例51〜54)
1.25%のカゼイン酸ナトリウム(Lactalis)および1.25%のMeripro 705を47.42%の水に溶解し、0.08%のGlycacil Lを添加した。次にこの溶液を、異なる混合装置および圧力を用い、350cStを有する50%のジメチコーンと混合した。製剤の平均粒径を表10に示す。
【0054】
【表10】

【0055】
(実施例55〜58)
1.25%のホエータンパク質および1.25%のMeripro 705を47.41%の水に溶解し、0.09%のGlycacil Lを添加した。次にこの溶液を、異なる混合装置および圧力を用い、350cStを有する50%のジメチコーンと混合した。製剤の平均粒径を表11に示す。
【0056】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3〜90体積%のシリコーン油相を含むシリコーン水中油型エマルジョンであって、該エマルジョンの0.25〜20質量%で存在するタンパク質またはペプチドによりエマルジョンを安定化し、またエマルジョンがタンパク質またはペプチドの質量に対し25質量%未満の非ポリマー性の両親媒性界面活性剤を含有することを特徴とするシリコーン水中油型エマルジョン。
【請求項2】
前記タンパク質がカゼインおよび/もしくはカゼイン酸ナトリウムのようなカゼインの誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記タンパク質がホエータンパク質であることを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項4】
前記タンパク質が小麦タンパク質であることを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項5】
前記タンパク質を部分加水分解することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項6】
前記タンパク質が異なる供給源からのタンパク質混合物からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項7】
前記タンパク質がエマルジョンの0.5〜7質量%で存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項8】
前記シリコーン油相が5〜60000センチストークの粘度を有するポリジオルガノシロキサン油を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項9】
前記シリコーン油相が、1〜1000センチストークの粘度を有する流体ポリジオルガノシロキサンにおけるオルガノポリシロキサンゴムの溶液を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項10】
前記シリコーン油相が、アミノ官能性オルガノポリシロキサンと、有機官能基を含有しないポリジオルガノシロキサン油との混合物を含むことを特徴とする請求項8に記載のエマルジョン。
【請求項11】
前記シリコーン油相が、エマルジョンの25〜65体積%で存在することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項12】
前記エマルジョンが、殺菌剤を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項13】
前記エマルジョンが、タンパク質またはペプチドの質量に対して0%の非ポリマー性の両親媒性界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項14】
前記タンパク質またはペプチドが、エマルジョン中に前記シリコーン油相の質量以下の量で存在することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項15】
前記水、シリコーン油およびタンパク質またはペプチドを高せん断下0〜60℃の範囲内の温度で機械的に混合することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のエマルジョンの製造方法。
【請求項16】
前記タンパク質またはペプチドの水溶液を前記シリコーン油と混合することを特徴とする請求項15に記載の方法。


【公表番号】特表2012−512150(P2012−512150A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540142(P2011−540142)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067147
【国際公開番号】WO2010/079054
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】