説明

シリンダ装置及びその製造方法

【課題】シリンダチューブに対するエンドキャップの緩み(回転)を確実に規制し得るシリンダ装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】このシリンダ装置は、軸方向端部の内周面に雌ねじ部12を有するシリンダチューブ11と、前記雌ねじ部に対応する雄ねじ部15を外周面に有し、シリンダチューブの軸方向一端部に螺着されるエンドキャップ14と、を備えている。そして、前記シリンダチューブの周壁における雌ねじ部の軸方向ほぼ中央位置に径方向に沿って貫通孔13を形成すると共に、前記エンドキャップがシリンダチューブに螺着された状態で、前記貫通孔を介して前記雄ねじ部のねじ山15aを治具により圧潰して該雄ねじ部の一部に塑性変形部21を形成した。これによって、エンドキャップの回転移動を不能にし、シリンダチューブに螺着されたエンドキャップの緩み(回転)防止を図った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のパワーステアリング装置に適用され、シリンダチューブの端部にラック軸の軸方向の移動範囲を規制するエンドキャップを備えたシリンダ装置及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両のパワーステアリング装置に適用される従来のシリンダ装置としては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
このシリンダ装置は、円筒状のシリンダチューブと、該シリンダチューブ内に貫通状態に配設されたラック軸と、該ラック軸の外周側に設けられると共にシリンダチューブ内に摺動自在に収容された円環状のピストンと、該ピストンによってシリンダチューブ内が複数の圧力室に隔成される一方、ラック軸に挿通され、前記各圧力室をそれぞれシールするオイルシールと、シリンダチューブの端部に設けられ、ラック軸の進出量(ストローク量)を規制するエンドキャップと、を備えている。
【0004】
前記エンドキャップは、内周側に、前記各圧力室の一端側をシールするシール部材と、ラック軸の一端側を支持するブッシュと、該エンドキャップの外周面とシリンダチューブの内周面の間をシールするOリングとを備えている。また、このエンドキャップの外周面には、シリンダチューブの端部内周面に形成された雌ねじに対応する雄ねじが形成され、該エンドキャップはシリンダチューブの端部に螺着されている。
【0005】
そして、前記エンドキャップとシリンダチューブとの結合部の外周面には、該エンドキャップの外周面とシリンダチューブの外周面に跨るように径方向内側に凹状に窪んだ塑性変形部が形成されて、エンドキャップがシリンダチューブに対してかしめ固定されている。これによって、シリンダチューブに対するエンドキャップの緩み止めが図られている。
【特許文献1】特開2005−35311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のシリンダ装置にあっては、前記エンドキャップとシリンダチューブとが径方向に重複する部位において、径方向外側のシリンダチューブの周壁を径方向内側に塑性変形させて径方向内側のエンドキャップの周壁に食い込ませることにより、シリンダチューブに対するエンドキャップの回転移動を規制している。
【0007】
しかしながら、製造工程において前記塑性変形部を形成する際に、シリンダチューブの周壁を構成する材料がエンドキャップ側に充分に移動されずに、エンドキャップの周壁に対するシリンダチューブの周壁の食い込み具合が不足してしまうことがある。
【0008】
しかも、前記塑性変形部におけるシリンダチューブとエンドキャップとの係合強度、すなわち前記かしめ固定の強度は、破壊試験などを行わなければ確認できず、外観からかしめ強度を判定することは非常に困難である。
【0009】
そこで、前記かしめ固定の強度が不充分であると、例えば他の装置に対する該シリンダ装置の組み付け時などにおいてエンドキャップに回転方向の力が付与された場合などに、前記かしめ状態が緩んでエンドキャップが不用意に回転してしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、このような技術的課題に着目して案出されたものであって、シリンダチューブに対するエンドキャップの緩み(回転)を確実に規制し得るシリンダ装置及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、軸方向端部の内周面に雌ねじ部を有するシリンダチューブと、前記雌ねじ部に対応する雄ねじ部を外周面に有し、前記シリンダチューブの軸方向端部に螺着されるエンドキャップと、を備えたシリンダ装置であって、前記シリンダチューブの周壁における前記雌ねじ部の形成位置に径方向に沿って穿設された貫通孔と、前記エンドキャップが前記シリンダチューブに螺着された状態で、前記貫通孔を介して前記雄ねじ部のねじ山を治具により圧潰して形成された塑性変形部と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、前記貫通孔を介して前記雄ねじ部のねじ山を例えばポンチなどの治具により圧潰して該雄ねじ部のねじ山の一部を塑性変形させたことによって、前記塑性変形部は前記雌ねじ部と螺合できず前記エンドキャップが回転不能となるため、前記シリンダチューブに螺着された前記エンドキャップの緩み(回転)を確実に防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、軸方向端部の内周面に雌ねじ部を有するシリンダチューブにおける前記雌ねじ部の形成位置に、径方向に沿って貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、外周面に雄ねじ部を有するエンドキャップを、前記雌ねじ部を介して前記シリンダチューブに螺着するエンドキャップ組み付け工程と、前記エンドキャップ組み付け工程の後に、前記貫通孔を介して前記雄ねじ部のねじ山を治具により圧潰して塑性変形させる緩み止め処置工程と、を有することを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、この製造方法の発明であっても、前記請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るシリンダ装置の実施の形態を図面に基づいて詳述する。なお、本実施の形態は、このシリンダ装置を、例えば車両のラックピニオン式パワーステアリング装置に適用したものを示している。
【0016】
すなわち、このパワーステアリング装置は、図2に示すように、一端側が図外のステアリングホイールに連係され、このステアリングホイールが操舵されることによって回転する操舵軸1と、該操舵軸1の他端側が収容され、車体の幅方向一端側に偏倚して設けられたギヤボックス2と、該ギヤボックス2の下端部に設けられ、車体の幅方向に延設されたラックハウジング3と、該ラックハウジング3の軸方向に接合されたパワーシリンダ4と、をそれぞれ備えている。
【0017】
前記ギヤボックス2は、一端側が前記操舵軸1と連結する棒状のトーションバー5と、該トーションバー5を囲繞するように設けられた図外のロータリバルブと、一端側が前記トーションバー5を介して操舵軸1と連結する図外のピニオン軸と、を内部に収容している。前記ロータリバルブは、前記操舵軸1の回転に伴ってトーションバー5が捩られ、この捩れ量に伴い内部の油路が開閉することによって、前記パワーシリンダ4に供給する作動油の油量を制御している。
【0018】
前記ラックハウジング3には、前記ピニオン軸の他端部と、該ピニオン軸の他端部に噛合して前記ステアリングホイールの回転に応じて軸方向に進退自在に移動するほぼ円筒状のラック軸6とが収容され、このラック軸6は該ラックハウジング3と前記パワーシリンダ4とに跨って設けられている。そして、前記ラック軸6の両端部にはボールジョイント7,7を介してタイロッド8,8がそれぞれ連結され、このタイロッド8,8の外端部に接続される図外のナックルを介して左右の各車輪に連係されている。
【0019】
このような構成から、前記パワーステアリング装置は、前記ステアリングホイールの回転角に応じてラック軸6が軸方向に移動し、タイロッド8,8を介して前記ナックルが左右に引っ張られることによって両車輪の向きが変更され、車両の走行方向を変更するようになっている。
【0020】
前記パワーシリンダ4は、アルミニウム合金材料からなるほぼ円筒状のシリンダチューブ11の内周側に前記ラック軸6が貫通状態に収容され、該ラック軸6の外周側に設けられた図外のピストンによって図3中右側の第1油圧室10aと図3中左側の第2油圧室10bの二つの圧力室に隔成されている。そして、前記パワーシリンダ4は、前記ギヤハウジング2に接続された第1油路配管9a及び第2油路配管9bを介して前記各圧力室10a,10bにそれぞれ供給された油圧がラック軸6の軸方向の移動を補助することにより、運転者の操舵力をアシストしている。
【0021】
また、前記シリンダチューブ11の一端部には、図2及び図3に示すように、該シリンダチューブ11の内径が若干段差状に拡径した拡径部11aが軸方向外側に向かって延設され、この拡径部11aの外端部内周面には雌ねじ部12が形成されている。さらに、この雌ねじ部12と重複する拡径部11aの周壁の軸方向ほぼ中央位置には、径方向に沿って貫通孔13が穿設されている。
【0022】
そして、前記パワーシリンダ4の一端部(図2中の右端部)には、前記ボールジョイント7を当接させてラック軸6のストローク量を規制するエンドキャップ14が設けられている。
【0023】
このエンドキャップ14は、図2及び図4に示すように、アルミニウム合金材料からなる中空のほぼボルト状に形成され、大径状の頭部14aと、該頭部14aに対して小径状に形成された軸部14bとを有している。そして、前記軸部14bの外周面における頭部14a側の軸方向の所定範囲には、前記シリンダチューブ11の雌ねじ部12に螺合する雄ねじ部15が形成されている。なお、前記エンドキャップ14の内径は、ラック軸6の外径とほぼ同じ大きさに設定されている。
【0024】
すなわち、前記エンドキャップ14は、図2に示すように、前記軸部14bを介して軸方向外側からシリンダチューブ11の一端部に螺着して、前記頭部14aの軸部14b側の端面とシリンダチューブ11の端面とが当接状態にねじ止め固定され、ラック軸6を貫通状態に支持しつつシリンダチューブ11の一端部開口を閉塞している。
【0025】
また、前記軸部14bの内周端部には、図4に示すように、エンドキャップ14の内径よりも拡径した段差状のシール挿入溝16が形成され、このシール挿入溝16内には、第1油圧室10aの外側端部をシールする円環状のオイルシール17が圧入固定されている。
【0026】
さらに、前記軸部14bの内周部には、前記シール挿入溝16に隣接して設けられ、該シール挿入溝16から軸方向内側に向かって段差状に縮径した縦断面ほぼL字形状のブッシュ挿入溝18が形成されている。そして、このブッシュ挿入溝18内には、ラック軸6が挿通されて該ラック軸6を摺動自在に支持するブッシュ19が配設されている。
【0027】
このブッシュ19は、薄肉の弾性材料(例えば合成樹脂)によって形成され、前記ブッシュ挿入溝18を型の一部として射出成形されて成形と同時にエンドキャップ14内に固定されていると共に、ラック軸6の外端部をがたつきなく支持している。
【0028】
また、前記軸部14bの先端側の外周面に形成された円環状のシール保持溝内には、シリンダチューブ11の内周面とエンドキャップ14の軸部14bの外周面との間をシールする円環状のシール部材であるOリング20が嵌着されている。
【0029】
そして、前記雄ねじ部15には、図1に示すように、エンドキャップ14がシリンダチューブ11にねじ止め固定された後、前記シリンダチューブ11の貫通孔13に対応する位置に塑性変形部21が形成されている。
【0030】
すなわち、この塑性変形部21は、図6に示すように、ほぼ棒状に形成されたポンチなどの治具22の細い先端部22aを貫通孔13から挿入し、該治具22の先端部22aによって前記雄ねじ部15を外周側から押圧することで、図1に示すように、該雄ねじ部15のねじ山15aを押し潰すように塑性変形させることによって形成される。これにより、シリンダチューブ11に螺着されたエンドキャップ14の緩み止めがなされている。
【0031】
次に、前記パワーシリンダ4の製造方法について、図1及び図3〜図6に基づいて説明する。
【0032】
まず、貫通孔形成工程として、図3に示すように、予め前記雌ねじ部12が形成されたシリンダチューブ11における一端部の周壁に、雌ねじ部12の軸方向ほぼ中央位置を通過するように径方向に沿って例えばドリルなどで貫通孔13を形成する。
【0033】
続いて、シール組み付け工程として、図4に示すように、シリンダチューブ11内にラック軸6を挿通して該ラック軸6にオイルシール17を組み付ける一方、予めブッシュ19が組み付けられたエンドキャップ14にOリング20を組み付け、ラック軸6を軸部14b側からエンドキャップ14に挿通させつつオイルシール17を前記シール挿入溝16内に嵌挿することによって、該オイルシール17をエンドキャップ14に組み付ける。
【0034】
その後、エンドキャップ組み付け工程として、図5に示すように、エンドキャップ14をシリンダチューブ11の一端部に螺着させ、頭部14aの軸部14b側の端面がシリンダチューブ11の一端面に当接するまでねじ込むことによって、エンドキャップ14をシリンダチューブ11にねじ止め固定する。
【0035】
続いて、エンドキャップ組み付け工程の後に緩み止め処置工程として、図6に示すように、前記治具22をシリンダチューブ11の径方向外側から前記貫通孔13内に挿入して該治具22の先端部22aの端面を前記雄ねじ部15のねじ山15aの外面に当接させる。そして、この状態から前記治具22をシリンダチューブ11の径方向内側へ押圧して押し込むことによって、図1に示すように、前記雄ねじ部15のねじ山15aを潰すように塑性変形させ、該雄ねじ部15aの一部に前記塑性変形部21を形成する。これによって、シリンダチューブ11に螺着されたエンドキャップ14の緩み止めが施されて、前記パワーシリンダ4の組み付けが完了する。
【0036】
そして、前記パワーシリンダ4の組み付けが終了した後に、該パワーシリンダ4の品質を保証するために前記各圧力室10a,10bの気密性の試験を行う。この気密性確認試験では、まず、空気圧導入工程として、前記シリンダチューブ11の各圧力室10a,10b内にそれぞれ圧縮された空気を充填させる。
【0037】
その後、気密性確認工程として、前記第1圧力室10aにおいては、前記貫通孔13を通してシリンダチューブ11の内周面とエンドキャップ14の外周面との間から前記空気圧が漏洩するか否かを確認する。つまり、密閉された空間である第1圧力室10aからの空気圧の漏洩が前記貫通孔13を介して確認できることから、これによって前記Oリング20の損傷、組み付け不良及びOリング20自体の欠品などを検知することができる。この結果、前記パワーシリンダ4の品質保証が図れると共に、該パワーシリンダ4の歩留まりを向上させることができる。以上で、前記パワーシリンダ4の製造工程が完了となる。
【0038】
したがって、この実施の形態によれば、前記貫通孔13を介して前記雄ねじ部15のねじ山15aを前記治具22により圧潰して塑性変形させたことにより、前記塑性変形部21は前記雌ねじ部12と螺合できなくなり、エンドキャップ14の回転移動が不能となることから、シリンダチューブ11に螺着されたエンドキャップ14の緩みを確実に防止することができる。しかも、前記塑性変形部21は、前記雄ねじ部15の軸方向ほぼ中央位置に形成されていることから、シリンダチューブ11に螺着されたエンドキャップ14の緩み止めがより確実に防止される。
【0039】
また、前記貫通孔13を前記シール保持溝20、すなわちOリング20の取付位置よりも軸方向外側に形成したことによって、シリンダチューブ11内に空気圧を導入して第1圧力室10aの気密性確認試験を行う際に、シリンダチューブ11の内周面とエンドキャップ14の外周面との間から漏洩する前記空気圧を、貫通孔13を介して検出することが可能となっている。これにより、Oリング20の損傷、組み付け不良及びOリング20自体の欠品などを確認することができ、前記パワーシリンダ4の歩留まりを向上させることができる。
【0040】
さらに、シリンダチューブ11とエンドキャップ14とを共に軟性のアルミニウム合金材料によって形成した場合、シリンダチューブ11の外周面を圧潰して緩み止めを防止する従来の方法では、軟性の材料特性によりシリンダチューブ11の周壁のみが潰れてしまい、この塑性変形がエンドキャップ14まで及ばないおそれがあったが、この実施の形態によれば、前記雄ねじ部15のねじ山15aを直接塑性変形させることから、エンドキャップ14の緩み止め防止効果がより効果的に作用する。
【0041】
前記実施形態から把握される前記請求項に記載した発明以外の技術的思想について以下に説明する。
【0042】
請求項(1) 前記エンドキャップの外周側であって該エンドキャップが前記シリンダチューブに螺着された状態において前記雄ねじ部よりも軸方向内側となる位置に設けられ、前記シリンダチューブの内周面と前記エンドキャップの外周面との間をシールするシール部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【0043】
この発明によれば、前記貫通孔よりも軸方向内側に前記シール部材を設けたことによって、前記シリンダチューブ内に空気圧を導入して該シリンダチューブの気密性試験を行う際に、前記貫通孔によって前記シリンダチューブの内周面と前記エンドキャップの外周面との間から漏洩する前記空気圧を検出することが可能となっている。これによって、前記シール部材の損傷、組み付け不良及び前記シール部材自体の欠品などを確認することができ、前記シリンダ装置の歩留まりを向上させることができる。
【0044】
請求項(2) 前記貫通孔を、前記エンドキャップが前記シリンダチューブに螺着された状態において前記雄ねじ部の軸方向ほぼ中央位置に形成したことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【0045】
この発明によれば、前記塑性変形部を前記雄ねじ部に確実に形成することができ、前記シリンダチューブに螺着された前記エンドキャップの緩み止めをより確実に防止することができる。
【0046】
請求項(3) 軸方向端部の内周面に雌ねじ部を有するシリンダチューブと、
該シリンダチューブ内に軸方向に沿って貫通状態に配設されたピストンロッドと、
該ピストンロッドに固定され、前記シリンダチューブ内を複数の圧力室に隔成しつつ軸方向へ摺動可能なピストンと、
前記雌ねじ部に対応する雄ねじ部を外周面に有し、前記シリンダチューブの軸方向端部に螺着されるエンドキャップと、
該エンドキャップの外周部に設けられ、前記シリンダチューブの内周面と前記エンドキャップの外周面との間をシールするシール部材と、
該シール部材よりも軸方向外側であって、前記シリンダチューブの周壁における前記雌ねじ部の形成位置に径方向に沿って穿設された貫通孔と、
前記エンドキャップが前記シリンダチューブに螺着された状態で、前記貫通孔を介して前記雄ねじ部のねじ山を治具により圧潰して形成された塑性変形部と、
を備えたことを特徴とするシリンダ装置。
【0047】
この発明によれば、前記雄ねじ部の一部に前記塑性変形部を形成したことから、前記シリンダチューブに螺着された前記エンドキャップの緩み止めを確実に防止することができると共に、前記貫通孔を前記シール部材の取付位置よりも軸方向外側に形成したことから、前記貫通孔を通じて前記圧力室内の気密性不良を検知することができる。
【0048】
請求項(4) 前記シリンダチューブと前記エンドキャップとをそれぞれアルミニウム合金材料によって形成したことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【0049】
この発明によれば、前記シリンダチューブと前記エンドキャップとを共に軟性のアルミニウム合金材料によって形成した場合であっても、前記雄ねじ部のねじ山を直接塑性変形させるため、前記シリンダチューブに螺着された前記エンドキャップの緩み止め不良が発生するおそれがない。
【0050】
請求項(5) 前記エンドキャップを前記シリンダチューブに螺着する前に、前記エンドキャップの外周側であって該エンドキャップが前記シリンダチューブに螺着された状態において前記雄ねじ部よりも軸方向内側となる位置に、前記シリンダチューブの内周面と前記エンドキャップの外周面との間をシールするシール部材を配置するシール組み付け工程と、
前記エンドキャップに緩み止め処置をした後に、前記シリンダチューブ内に空気圧を導入する空気圧導入工程と、
該空気圧導入工程の後に、前記空気圧が前記圧力室から前記貫通孔を通じて漏洩するか否かを確認する気密性確認工程と、
を有することを特徴とする請求項2に記載のシリンダ装置の製造方法。
【0051】
この発明によれば、前記シリンダチューブ内に空気圧を導入して前記空気圧が前記圧力室から前記貫通孔を通じて漏洩するか否かを確認することによって、前記シール部材の損傷、組み付け不良及び前記シール部材自体の欠品などを検知することができる。
【0052】
本発明は、前記実施の形態の構成に限定されるものではなく、例えば前記シリンダチューブ11やエンドカバー14の形状及び大きさを、シリンダ装置の仕様や大きさなどによってそれぞれ自由に変更することができる。
【0053】
また、前記貫通孔13及び塑性変形部21は、周方向に複数形成することも可能であり、この場合、シリンダチューブ11に螺着したエンドキャップ14の緩みをより一層確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るパワーシリンダの実施の形態を示し、本発明の主要部分を説明するパワーシリンダの一端部を拡大した部分断面図である。
【図2】同実施の形態を示すパワーシリンダの全体図である。
【図3】同実施の形態を示すシリンダチューブの一端部の縦断面図である。
【図4】同実施の形態を示すエンドキャップの縦断面図である。
【図5】本発明に係るパワーシリンダの製造方法を示し、エンドキャップ組み付け工程を説明するパワーシリンダの一端部を拡大した部分断面図である。
【図6】同製造方法を示し、緩み止め処置工程を説明するパワーシリンダの一端部を拡大した部分断面図である。
【符号の説明】
【0055】
11…シリンダチューブ
12…雌ねじ部
13…貫通孔
14…エンドキャップ
15…雄ねじ部
15a…ねじ山
22…塑性変形部
23…治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向端部の内周面に雌ねじ部を有するシリンダチューブと、前記雌ねじ部に対応する雄ねじ部を外周面に有し、前記シリンダチューブの軸方向端部に螺着されるエンドキャップと、を備えたシリンダ装置であって、
前記シリンダチューブの周壁における前記雌ねじ部の形成位置に径方向に沿って穿設された貫通孔と、
前記エンドキャップが前記シリンダチューブに螺着された状態で、前記貫通孔を介して前記雄ねじ部のねじ山を治具により圧潰して形成された塑性変形部と、
を備えたことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
軸方向端部の内周面に雌ねじ部を有するシリンダチューブにおける前記雌ねじ部の形成位置に、径方向に沿って貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
外周面に雄ねじ部を有するエンドキャップを、前記雌ねじ部を介して前記シリンダチューブに螺着するエンドキャップ組み付け工程と、
前記エンドキャップ組み付け工程の後に、前記貫通孔を介して前記雄ねじ部のねじ山を治具により圧潰して塑性変形させる緩み止め処置工程と、
を有することを特徴とするシリンダ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−32032(P2008−32032A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202732(P2006−202732)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】