説明

シワ伸ばし接着シートの使用方法およびシワ伸ばし接着シート

【課題】皮膚への接着、固定が確実になされ、シワ伸ばし効果が高いシワ伸ばし接着シートの使用方法およびシワ伸ばし接着シートを提供すること。
【解決手段】本発明のシワ伸ばし接着シートの使用方法は、通気性および可撓性を有する基材層と、水溶性または水膨潤性を有する高分子材料で構成された接着剤層とを積層してなるシワ伸ばし接着シートの使用方法であって、前記接着剤層は、温度35℃および周波数1Hzにおける歪み0.1%での複素弾性率が5×10〜5×10dyne/cmであり、前記接着剤層を水、化粧水または美容液で濡らして粘着性を生じさせ、皮膚のシワを伸ばした状態で皮膚に貼着し、皮膚に接着・固定した状態を所定時間継続した後、前記シワ伸ばし接着シートを水で濡らして皮膚から剥がすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワ伸ばし接着シートの使用方法およびシワ伸ばし接着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚のシワを少なくする方法としては、皮膚を活性化させる方法と物理的にシワを伸ばす方法とが提案されている。
【0003】
皮膚を活性化させる方法としては、次のようなものが知られている。実開昭61−48723号には、皮膚に冷却・加熱を交互に行い、新陳代謝を促進させる方法が開示され、実開昭60−195617号には、ガス不透過性の表面基材を用いたテープにより空気を遮断する方法が開示され、実開昭61−188517号には、柔軟性表面基材にビタミンEを配合した粘着剤を塗布したシートを貼付する方法が開示され、実開昭61−130112号には、コラーゲンをコーティングしたフィルムを貼付する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、実際に皮膚に生じたシワを少なくする為には、皮膚の活性化も必要であるが、物理的にシワを伸ばした状態に保持・固定しておくことが重要である。
【0005】
実開昭62−16882号では、湿潤収縮性不織布に粘着剤を塗布したテープによりシワを伸ばす方法が開示されている。しかし、この方法では、テープを皮膚に長時間保持・固定することが困難であるため、十分なシワ伸ばし効果が得られなかった。
【0006】
【特許文献1】実開昭61−48723号公報
【特許文献2】実開昭60−195617号公報
【特許文献3】実開昭61−130112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、皮膚への接着、固定が確実になされ、シワ伸ばし効果が高いシワ伸ばし接着シートおよびその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(9)の本発明により達成される。
(1) 通気性および可撓性を有する基材層と、水溶性または水膨潤性を有する高分子材料で構成された接着剤層とを積層してなるシワ伸ばし接着シートの使用方法であって、
前記接着剤層は、温度35℃および周波数1Hzにおける歪み0.1%での複素弾性率が5×10〜5×10dyne/cmであり、
前記接着剤層を水、化粧水または美容液で濡らして粘着性を生じさせ、皮膚のシワを伸ばした状態で皮膚に貼着し、皮膚に接着・固定した状態を所定時間継続した後、
前記シワ伸ばし接着シートを水で濡らして皮膚から剥がすことを特徴とするシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【0009】
(2) 前記接着剤層の主成分がN−ビニル−2−ピロリドン−酢酸ビニル共重合体である上記(1)に記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【0010】
(3) 前記接着剤層の主成分がポリビニルピロリドンである上記(1)に記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【0011】
(4) 前記接着剤層の主成分がポリアクリル酸である上記(1)に記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【0012】
(5) 前記接着剤層中に可塑剤を0.01〜30wt%を含有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【0013】
(6) 前記接着剤層中に皮膚活性化剤を含有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【0014】
(7) 前記基材層は、紙類で構成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【0015】
(8) 前記基材層は、クラフト紙で構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【0016】
(9) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法において使用されるシワ伸ばし接着シート。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れたシワ伸ばし効果が得られる。また、皮膚への刺激も少なく、安全性が極めて高い。
【0018】
また、シワ伸ばし接着シートの製造も容易である。特に、接着剤層を均一に形成することができるとともに、接着剤層の複素弾性率等の特性や厚さ等の条件を容易にコントロールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について、添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に適用されるシワ伸ばし接着シートの構成を示す斜視図、図2は、図1中のA−A線断面図である。なお、図1、図2は、シワ伸ばし接着シートの厚さ方向を誇張して示している。これらの図に示すように、本発明に適用されるシワ伸ばし接着シート1は、基材層2と接着剤層3とを積層したものである。さらに、本実施例では、接着剤層3に剥離シート4を接合している。以下、各層の構成について説明する。
【0020】
基材層2は、所定の通気性および可撓性(柔軟性)を有するものである。このような基材層2としては、多孔質材で構成されたものが挙げられる。多孔質材料としては、非繊維性または繊維性の多孔質材が挙げられる。
【0021】
非繊維性多孔質材としては、例えば、メンブランフィルター、発泡体(発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン等)、各種多孔質フィルム、メッシュ等が挙げられる。
【0022】
繊維性多孔質材としては、例えば、織編物、不織布、紙類、短繊維の集合体等が挙げられる。ここで、織編物とは、織布のような織物や編物またはこれに類するものを含む。織物組織としては、実用に供されている全ての種類のもの、例えば、平織、斜文織、朱子織が使用可能である。また、編物組織についても特に限定はなく、例えば、よこ編み(平編み)、たて編み(トリコット編み)、丸編み、平打ち、メリヤス編み等が挙げられる。不織布を用いる場合、繊維の充填密度(嵩密度)等は特に限定されない。
【0023】
紙類としては、通常の紙材(洋紙、和紙)またはその積層体や、各種合成紙を用いることができる。特に好ましい具体例としては、上質紙、クラフト紙、コート紙、含浸紙等が挙げられる。
【0024】
このような繊維性多孔質材を構成する繊維としては、例えば、木材パルプ、セルロース繊維、綿、リンター、カポック、亜麻、大麻、ラミー、絹、羊毛等の天然繊維、ナイロン(ポリアミド)、テトロン、レーヨン、キュプラ、アセテート、ビニロン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリプロピレン等の化学繊維、またはこれら天然および化学繊維のうちの2以上の組み合わせ(混紡等)を挙げることができる。
【0025】
このような基材層2は、それ自体通気性を有するものであるのが好ましい。その理由は、後述する接着剤層3を皮膚に貼着した際に、接着剤層3中に含浸された水分等の溶媒が基材層2を透過して蒸発し、接着剤層3の乾燥(接着力の発生)を迅速にするとともに、発汗してもむれることなく粘着感を良好にするためである。
【0026】
また、基材層2は、可撓性を有するものである。その理由は、シワ伸ばし接着シート1を例えば顔面の湾曲部分(例えば、目や鼻の周囲)に対して貼着する場合に、その湾曲面に対する追従性、密着性を確保するためである。これにより、後述する接着剤層3の組成、特性と相まって、優れたシワ伸ばしが得られる。
【0027】
基材層2の厚さは、その材質等に応じて適宜決定されるが、通常は、50〜1000μm程度であるのが好ましく、100〜500μm程度であるのがより好ましい。なお、基材層2には、印刷や染色等を施すこともできる。
【0028】
接着剤層3は、主に、水溶性または水膨潤性を有する高分子材料で構成されており、再湿性を有している。
【0029】
この接着剤層3は、温度35℃および周波数1Hzにおける歪み0.1%での複素弾性率が5×10〜5×10dyne/cmであるという特性を持ち、さらには、複素弾性率が1×10〜5×10dyne/cmであるという特性を持つのが好ましい。
【0030】
ここで、複素弾性率とは、粘弾性を表す指標として用いられ、温度および周波数に対する依存性を有している。
【0031】
前記複素弾性率が5×10dyne/cm未満であると、接着剤層3の皮膚への接着・固定が不十分となり、長時間シワを伸ばした状態を維持することができない場合が生じ易くなる。
【0032】
また、前記複素弾性率が5×10dyne/cmを超えると、シワ伸ばし接着シート1の保存時において、接着剤層3の表面にひび割れ(クラック)等の欠陥が生じ易くなる。
【0033】
なお、このような接着剤層3の複素弾性率は、接着剤層3を構成する高分子材料の組成や平均分子量(重合度)、可塑剤の添加量、含水量等の諸条件の選択により適宜調整される。
【0034】
接着剤層3を構成する接着剤(高分子材料)は、水溶性または水膨潤性を有するものであればいかなるものでもよいが、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アセトアミド基、水酸基、アンモニウム基、スルホン酸基を有する単量体の単独重合体または共重合体等を用いることができ、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミド、アルギン酸、セルロースおよびその誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)が挙げられる。その中でも、N−ビニル−2−ピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸が好ましく、さらにN−ビニル−2−ピロリドン−酢酸ビニル共重合体を主成分とするものが特に好ましい。これらを用いた場合、接着剤層3の形成が容易(加工適性に優れる)であり、また、皮膚に対する刺激が少なく、安全性が極めて高いからである。
【0035】
また、N−ビニル−2−ピロリドン−酢酸ビニル共重合体における共重合比は、任意の範囲で選択できるが、5:95〜95:5の範囲が好ましく、15:85〜85:15の範囲がより好ましく、30:70〜70:30の範囲がさらに好ましい。このような範囲において、特に良好なシワ伸ばし効果を発揮する。
【0036】
なお、N−ビニル−2−ピロリドン−酢酸ビニル共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの共重合体であってもよい。
【0037】
また、N−ビニル−2−ピロリドン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする場合、さらに酢酸ビニルの単独重合体、N−ビニル−2−ピロリドンの単独重合体のいずれか一方または双方を含んでいてもよい。
【0038】
このようなN−ビニル−2−ピロリドン−酢酸ビニル共重合体に代表される高分子材料の平均分子量は、特に限定されないが、1万〜50万程度であるのが好ましく、2万〜20万程度であるのがより好ましい。この平均分子量が小さ過ぎると、皮膚への接着性が低下する。また、平均分子量が大き過ぎると、水に対する溶解性が低くなり、皮膚への十分な接着強度を得るのに、長時間を要する傾向を示す。
【0039】
また、接着剤層3中には、以下に述べるような種々の可塑剤が必要に応じ添加されていてもよい。この可塑剤としては、以下のような物質が好適に使用される。
【0040】
すなわち、可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、それ以上のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、それ以上のポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等のブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、それ以上のポリグリセリン等の多価アルコール類、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤を用いることができる。
【0041】
接着剤層3中における可塑剤の含有量は、0.01〜30wt%程度が好ましく、1〜20wt%程度がより好ましい。可塑剤の含有量が少な過ぎると、前記高分子材料の組成、平均分子量、含有量等によっては、接着剤層3が硬化し、ひび割れ等を生じて、取り扱い性が悪くなることがあり、また、可塑剤の含有量が多過ぎると、前記高分子材料の組成、平均分子量、含有量等によっては、接着剤層3が軟化し、皮膚への接着力が低下し、シワ伸ばし効果が不十分となる。
【0042】
また、接着剤層3中には、以下に述べるような種々の皮膚活性化剤が必要に応じ添加されてもよい。
【0043】
皮膚活性化剤としては、例えば、コラーゲン、酵母エキス等の各種タンパク類、ビタミンA、B、C、D、E、K等の各種ビタミン類、各種アミノ酸類、ニンジンエキス、アロエエキス等の各種天然物抽出エキスや胎盤エキス等が挙げられ、これらを1種または2種以上混合して添加することができる。
【0044】
接着剤層3中における皮膚活性化剤の含有量は、特に限定されないが、0.01〜8wt%程度が好ましく、0.1〜4wt%程度がより好ましい。皮膚活性化剤含有量が少な過ぎると、皮膚活性化の効果が十分に得られず、また、皮膚活性化剤の含有量が多過ぎると、皮膚への接着力が低下し、シワ取り効果が不充分となる。
【0045】
また、接着剤層3中には、充填剤が必要に応じ添加されてもよい。充填剤の典型的なものとしては、顔料が挙げられる。この顔料としては、例えば、タルク、セリサイト、炭酸カルシウム、カオリン、無水ケイ酸、含水ケイ酸、酸化チタン、マイカチタン等の無機顔料や、ポリアミド、ポリエチレン、セルロース、ポリメタクリル酸メチル等の粉末(特に球状粉末)等の有機顔料、これらを金属石けん、エステル、シリコーン等で疎水処理したものが挙げられる。
【0046】
また、その他の添加剤としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗酸化剤、消炎剤、保湿剤、香料等が挙げられ、これらは、接着剤層3の接着機能を阻害しない範囲の量で添加することができる。
【0047】
また、接着剤層3中には、例えば接着剤を調製する過程で添加された溶媒(または分散媒)が含まれていてもよい。このような溶媒(または分散媒)としては、水(無機溶媒)や、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール(有機溶媒)が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
【0048】
接着剤層3中の溶媒、特に水の含有量は、25wt%以下であるのが好ましく、15wt%以下であるのがより好ましい。特に、このような溶媒の含有量は、極微量であってもよい。
【0049】
接着剤層3の厚さは、特に限定されないが、通常、10〜300μmであるのが好ましく、20〜140μm程度であるのがより好ましい。接着剤層3の厚さが薄過ぎると、接着剤層3の形成方法や形成条件等によっては、接着強度が不均一となり、シワ伸ばし効果が減少するおそれがあり、また、接着剤層3の厚さが厚過ぎると、接着剤層3を形成する際、乾燥に要する時間が長くなり、発泡等も生じ易くなる。
【0050】
以上のような基材層2と接着剤層3とは、所定の接着力をもって接合(接着)されている。
【0051】
本発明では、接着剤層3の構成物質である接着剤が基材層3の一部(厚さ方向の一部)に含浸または埋入しているような構成とするのが好ましい。これにより、簡易な層構成(簡易な製造工程)で、基材層2と接着剤層3との高い接着力を得ることができ、シワ伸ばし接着シート1を皮膚から剥したときの接着剤の皮膚への残存が抑制される。
【0052】
剥離シート4としては、公知のいずれのものを使用してもよく、例えば、剥離シート4の基材の接着剤層3との接合面に、剥離コート層(例えばシリコーン層)の形成等の剥離処理を施したものを用いることができる。剥離シート4の基材としては、例えば、グラシン紙のような紙材、合成紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等よりなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0053】
図1および図2に示す本実施例では、基材層2および接着剤層3は、ほぼ菱形に打ち抜かれており、その中央には、ミシン目5が形成され、これらを容易に複数に分割することができるようになっている。使用時には、基材層2および接着剤層3をミシン目5で2分割し、それらを例えば両目の目尻や眉の上にそれぞれ貼着することができる。また、分割せず、一体として使用することもできる。
【0054】
このようなシワ伸ばし接着シート1の製造方法(特に、接着剤層3の形成方法)は、特に限定されないが、形成の容易性、安定性、生産性等の理由から、接着剤層3が直接法または転写法により形成されるのが好ましい。
【0055】
直接法、転写法は、接着剤層3の形成を容易かつ適正に行うことができるとともに、基材層2と接着剤層3との高い接着力を得易く、また、その層構成をコントロールし易いという利点を持つ。両方法による製造方法の例を以下に詳述する。
【0056】
直接法の製造方法としては、まず、接着剤層3を形成するための接着剤塗布液を調製する。接着剤塗布液の調製は、前述した高分子材料、その他必要に応じて添加される添加剤、無機および/または有機溶媒(分散媒)を各々所定量混合し、撹拌することによりなされる。接着剤塗布液の粘度は、例えば100〜5000cps程度とされる。
【0057】
次に、この接着剤塗布液を基材層2の片面に塗布し、乾燥する。これにより、基材層2と接着剤層3との積層体が得られる。塗布の方法としては、例えば、ロール、エアナイフ、ナイフ、ロールナイフ、グラビア、マイヤーバー、ファウンテンダイ等を用いたコート、スプレーコート、はけ塗り、ディッピング等いかなる方法でもよい。
【0058】
なお、基材層2には、予め、親水化処理、または疎水(撥水)化処理等を、その構成材料や面に応じて行っておくことができる。
【0059】
また、転写法の製造方法としては、前記と同様にして接着剤塗布液を調製し、この接着剤塗布液をフィルム、シート等の転写体の表面に塗布、乾燥し、接着剤層3を形成する。
【0060】
次に、この接着剤層3を基材層2に重ね、転写体を除去して、基材層2の表面に転写する。これにより、基材層2と接着剤層3との積層体が得られる。転写体が、剥離シート4である場合には、接着剤層3を基材層2に重ねた後、転写体を除去せず、そのまま本発明の前記好適実施例のシワ伸ばし接着シートとなる。
【0061】
なお、接着剤層3の基材層2上への転写に際しては、基材層2と接着剤層3との間に、別途接着剤層等の中間層を介在させてもよい。
基材層2に対する親水化処理、疎水(撥水)化処理については、前記と同様である。
【0062】
以上のようなシワ伸ばし接着シートの製造方法によれば、優れたシワ伸ばし効果を持つシワ伸ばし接着シートを容易に製造することができる。特に、接着剤層3の特性(複素弾性率等)や厚さ等の条件を容易にコントロールすることができ、接着剤層3を均一な厚さに形成することができる。また、生産性も高く、量産にも適する。
【0063】
次に、シワ伸ばし接着シート1の使用方法(本発明のシワ伸ばし接着シートの使用方法)について説明する。
まず、接着剤層3から剥離シート4を剥離、除去する。
【0064】
次いで、接着剤層3を水(または化粧水、美容液等)で濡らす。接着剤層3は、通常は乾燥状態(含水量が25wt%以下)であるが、水で濡らすと(湿潤状態となると)、吸水して粘着性を生じ、皮膚への貼着が可能となる。
【0065】
前述した吸水した接着剤層3を、洗顔後の顔面等の皮膚に貼着する。このとき、マッサージ等により皮膚のシワを伸ばしておく。
【0066】
シワ伸ばし接着シート1を貼着後、所定時間放置すると、水分がある程度蒸発し、強固な接着力が生じる。これにより、シワ伸ばし接着シート1が皮膚に接着・固定され、この状態を所定時間(例えば1〜8時間)継続することにより、優れたシワ伸ばし効果が発揮される。
【0067】
シワ伸ばし接着シート1を皮膚から剥すときは、基材層2側から水で濡らす。基材層2は、透湿性を有するため、接着剤層3は再び吸水して軟化し、これにより、シワ伸ばし接着シート1を容易に皮膚から剥すことができる。
【実施例】
【0068】
以下、具体的実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
N−ビニル−2−ピロリドン−酢酸ビニル共重合体(共重合比60:40、平均分子量44000)100g、グリセリン(可塑剤)10gおよび水100gを均一に混合・撹拌し、接着剤水溶液(粘度約1000cps)を調製した。
【0069】
一方、基材層として、秤量80g/m(厚さ105μm)のクラフト紙を用意し、その片面に前記接着剤水溶液を接着剤層の残留水分が5%で厚さが50μmとなるように塗布し、乾燥した。
【0070】
その後、この接着剤層を、シリコーン層の形成による片面剥離処理したポリエステルフィルム(厚さ:38μm)よりなる剥離シートと貼合せ、シワ伸ばし接着シートを完成した。
【0071】
(実施例2)
実施例1において、接着剤水溶液中のグリセリン量を20gとした以外は、実施例1と同様にして接着剤水溶液を調製し、この接着剤水溶液を実施例1と同一の剥離シートの剥離処理面上に、接着剤層の残留水分が5%で厚さが50μmとなるように塗布し、乾燥した後、これをポリエステル製不織布(500μm)よりなる基材層と積層し、シワ伸ばし接着シートを完成した。
【0072】
(実施例3)
実施例1において、接着剤水溶液中にビタミンE1.0g、加水分解コラーゲン0.5g、エタノール50gを添加した以外は、実施例1と同様にしてシワ伸ばし接着シートを完成した。
【0073】
(実施例4)
実施例1において、接着剤水溶液として、ポリビニルピロリドン(平均分子量45000)100g、グリセリン20g、水100gを均一に混合・撹拌したものを用いた以外は、実施例1と同様にしてシワ伸ばし接着シートを完成した。
【0074】
(実施例5)
実施例1において、接着剤水溶液として、ポリアクリル酸(平均分子量150000)100g、グリセリン10g、水400gを均一に混合・撹拌したものを用いた以外は、実施例1と同様にしてシワ伸ばし接着シートを完成した。
【0075】
(比較例)
実施例5において、接着剤水溶液中のグリセリン量を50gとした以外は、実施例5と同様にしてシワ伸ばし接着シートを完成した。
【0076】
以上、実施例1〜5および比較例における接着剤層の組成を下記表1に示す。なお、表1中、数字は塗布液である接着剤水溶液の組成(仕込み量)を示し、その単位は[重量部]、( )内の数字は接着剤層乾燥後の組成を示し、その単位は[wt%]である。
【0077】
【表1】

【0078】
[複素弾性率の測定]
実施例1〜5および比較例のシワ伸ばし接着シートにおける接着剤層について、温度35℃および周波数1Hzにおける歪み0.1%での測定条件下において、粘弾性測定装置(RDS−II ダイナミック・スペクトロメータ、レオメトリックスファーイースト株式会社製)を使用し、歪み0.1%における複素弾性率を求めた。その結果を下記表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
[シワ伸ばし効果の確認テスト]
実施例1〜5および比較例のシワ伸ばし接着シートから剥離シートを除去し、接着剤層表面を水で濡らした後、洗顔後の額のシワ部を伸ばした状態で貼付(床寝中、6時間以上)し、朝起床したら水を付けて剥がすという作業を、被試験者(女性10名、年齢35才〜52才)に対し2週間に渡り毎日行った。
【0081】
2週間の貼付テスト終了後、被試験者の主観により、シワ伸ばし効果有り(シワが浅くなった、シワが薄くなった)または効果無しを聞いた。その集計結果を下記表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
表3に示すように、実施例1〜5のシワ伸ばし接着シートは、いずれも、優れたシワ伸ばし効果を発揮することが確認された。また、シワ伸ばし接着シートを使用後、かぶれ、湿疹等の異常が現れる者もいなかった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に適用されるシワ伸ばし接着シートの構成例を示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性および可撓性を有する基材層と、水溶性または水膨潤性を有する高分子材料で構成された接着剤層とを積層してなるシワ伸ばし接着シートの使用方法であって、
前記接着剤層は、温度35℃および周波数1Hzにおける歪み0.1%での複素弾性率が5×10〜5×10dyne/cmであり、
前記接着剤層を水、化粧水または美容液で濡らして粘着性を生じさせ、皮膚のシワを伸ばした状態で皮膚に貼着し、皮膚に接着・固定した状態を所定時間継続した後、
前記シワ伸ばし接着シートを水で濡らして皮膚から剥がすことを特徴とするシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【請求項2】
前記接着剤層の主成分がN−ビニル−2−ピロリドン−酢酸ビニル共重合体である請求項1に記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【請求項3】
前記接着剤層の主成分がポリビニルピロリドンである請求項1に記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【請求項4】
前記接着剤層の主成分がポリアクリル酸である請求項1に記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【請求項5】
前記接着剤層中に可塑剤を0.01〜30wt%を含有する請求項1ないし4のいずれかに記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【請求項6】
前記接着剤層中に皮膚活性化剤を含有する請求項1ないし5のいずれかに記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【請求項7】
前記基材層は、紙類で構成されている請求項1ないし6のいずれかに記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【請求項8】
前記基材層は、クラフト紙で構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のシワ伸ばし接着シートの使用方法において使用されるシワ伸ばし接着シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−91371(P2009−91371A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7313(P2009−7313)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【分割の表示】特願平9−340688の分割
【原出願日】平成9年11月26日(1997.11.26)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】