説明

シンチレーション物質(変種)

本発明は、シンチレーション物質に関し、これらは、X線、ガンマー線およびアルファ線の記録および測定;固溶体構造の非破壊試験;三次元陽電子発光断層X線撮影;および、X線コンピュータ断層写真撮影ならびに蛍光X線撮影のために、核物理分野、医学分野および石油業界にて利用することができる。ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートに基づくシンチレーチング物質は、物質の組成が、化学式:CexLu2+2y-xSi1-yO5+y;CexLiq+pLu2-p+2y-x-zAzSi1-yO5+y-p;CexLiq+pLu9.33-x-p-z0.67AzSi6O26-p(式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値であり;zは、0.05f.u.を上回らない値であり;qは、0.2f.u.を上回らない値であり;pは、0.05f.u.を上回らない値である);CexLi1+q+pLu9-x-p-zAzSi6O26-p(式中、zは、8.9f.u.を上回らない値である)によって表される。達成可能な技術的成果は、高密度;高光収率;低い残光;および、三次元X線断層撮影(PET)用のシンチレーチング素子の製造の間の低い損失パーセンテージを有するシンチレーチング物質である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、シンチレーション物質に関し、X線、ガンマー線およびアルファー線の記録および測定;固溶体構造の非破壊試験;三次元陽電子−電子コンピュータ断層X線撮影(PET)およびコンピュータ蛍光X線写真撮影のために、核物理分野、医療分野および石油業界にて使用することができる。本発明は、蛍光透視法、コンピュータ断層X線撮影およびPETにて、新規/改良されたシンチレータの導入が画像品位の有意な改良または/および測定時間の短縮をもたらすことに関する。(“Inorganic scintillators in medical imaging detectors”Carel W.E.van Eijk,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 509(2003) 17-25).
公知のシンチレーション物質は、セリウムをドープさせたルテチウムオキシオルトシリケート粉末Lu1.98Ce0.02SiO5である(A.G. Gomes,A.Bril“Preparation and Cathodoluminescence of Ce3+ activated yttrium silicates and some isostructural compounds”Mat.Res.Bull. Vol.4、1969,pp643-650)。この蛍リン光体は、カソードルミネセンス装置における適用をもたらしたが、しかし、この物質は、X線、ガンマー線およびアルファー線放射記録にも利用することができる。
【0002】
セリウムをドープしたルテチウムオキシオルトシリケートCe2xLu2(1-x)SiO5(式中、xは、2×10-4と3×10-2との範囲の間で可変である)のシンチレーション物質/結晶は、公知である(米国特許4958080号明細書,1990年9月18日)。この組成物の結晶は、Ce2xLu2(1-x)SiO5の組成を有する溶融物から成長させられる。科学文献にて、略称LSO:Ceがこの結晶を表示するために広く使用されている。Ce2-xLu2(1-x)SiO5シンチレーション結晶は、その他の結晶と比較して数多くの利点を有する:高い密度;大きい原子番号;比較的低い屈折率;高い光収率;シンチレーションの短い減衰時間。公知のシンチレーション物質の欠点は、結晶ごとのシンチレーションの重要な特性、つまり、光収率およびエネルギー分解能の大きな散らばりである。CTI Inc.company(Knoxville.USA)による成長させた商業的に製造されるLSO:Ce結晶の系統的な測定の実験結果は、このことを鮮やかに示す(米国特許6413311号明細書,2002年7月2日)。もう1つの欠点は、例えば、石油業界にて、新たな堆積物の探索の間に、試錐孔における岩石組成の分析のために、温度を室温より高くする条件下で、含まれるLSO:Ce結晶装置を作動させる時の光収率の有意な低下である。LSO:Ce結晶のもう1つの欠点は、残光効果、つまり、放射線暴露後の長時間の蛍光、例えば、米国特許4958080号明細書に記載されている試料のルミネセンス強度が10分間の間に数デシベルも低下することである。
【0003】
透明なセラミックス形態のシンチレーション物質、例えば、セリウムを含有するルテチウムオキシオルトシリケートCe:Lu2SiO5も公知である。Lu2SiO5:Ceシンチレータは、Lu2SiO5:Ce粉末の焼結を通してセラミックス物質に形成される。Lu2SiO5:Ceは、立方晶系構造というよりもむしろ単斜晶系構造を有するので、焼結により、透明というよりもむしろ半透明のセラミックスを生ずる。セリウムをドープしたルテチウムオルトシリケートは、シリケートオキシド、ルテチウムオキシド、セリウムオキシド、カリウムオキシドおよびバリウムオキシドを組合わせることによって透明なガラスシンチレータに形成される。粒子間の孔をなくすことによって、シンチレータ物質の圧密を生ずる。その結果、半透明のセラミックスは、医療用の断層X線撮影器にて使用するのに適用可能な透明なセラミックスに変換される(2002年12月24日発行の米国特許6,498,828号明細書)。提案されている特許の欠点は、シンチレーションセラミックスの品位であり、このシンチレーションセラミックスは、いわゆる、ルテチウムオキシオルトシリケート混合物の化学量論的組成からなり、化学量論的組成は、2/1に正確に等しい単位式(Lu+Ce)/Siの比を特徴とする。ルテチウムオキシオルトシリケートの適合組成が化学量論的組成と一致しないので、化学量論的組成のセラミックスは、見かけ上、完全に反応しなかった酸化物成分を含有し、その結果、散乱中心が形成される。光収率は、シンチレータの重要な特性である。散乱中心の存在は、感知しうる程度に光収率を低下させる。セリウムをドープしたガドリニウムオキシオルトシリケートからなる透明なセラミックスは、同様な制限を有する(W.Rossner,R.Breu “Luminescence properties cerium-doped gadolinium oxyorthosillicate ceramics scintillators”Proc.Int.Conf.on Inorganic Scintillators and Their Application,STINT’95,Netherlands,Delft University,1996,p376-379)。透明なセラミックスから製造されるシンチレーション素子は、Ce:Gd2SiO5結晶から製造される素子よりも60%も少ない光収率を有する。
【0004】
残光の存在は、幾つかの用途について、例えば、画像システムについて、非常に望ましくない効果であり、装置の電子部品は、ガンマー線を吸収するシンチレーション素子からの光量子フラックスを示す。残光効果、すなわち、シンチレーション素子からの光量子フラックスをガンマー線に暴露させない効果は、コントラスト範囲、感度および装置の精度を低下させる。残光は、また、陽電子発光同位体の利用に基づく医療装置、例えば、癌疾患診断用の三次元医療用断層X線撮影器(Fully-3D PETカメラ)、特に、新規な薬剤の試験用に設計されたMicroPETシステムについてのパラメータも減損する。三次元医療用断層X線撮影器の作動原理は、顕微鏡的濃度の発光陽電子同位体含有物質が患者の血液に導入されることである。この物質は、患者の癌細胞に蓄積される。放出された陽電子は、電子により即座に消滅し、これにより、反対方向に正確に散乱する2つの511KeVエネルギーガンマー量子の発光を生ずる。断層X線撮影器にて、両ガンマー量子は、その各々が数百の別個の結晶シンチレーション素子を含有する数個の環状検出器により検出される。高Ce:LSO密度は、被検患者の体から放出される全てのガンマー量子を有効に吸収する。患者の体内の放射性同位体原子の配置は、これらのガンマー量子を示すシンチレーション素子のガンマ線と数との両方の時間検出により測定される。患者の体内にて、ガンマー量子の一部は、Compton効果により散乱され、その結果、ガンマー量子は、一列に配列されない結晶シンチレーション素子により検出される。したがって、シンチレーション素子が強い残光を有する場合、指標システムが瞬時の消滅の結果としてそれを認識することができるが、しかし、実際には、この検出は、測定時の一瞬前のガンマー量子線への暴露の結果である。通常の分解能を有する三次元医療用X線断層撮影にて、数千、例えば、6×6×30mm3のシンチレーション素子が使用され、これらは、6×6×6=216mm3体積三次元分解能を維持する。Ce:LSO結晶の強い残光でさえ、比較的厚い6×6mm2断面積の素子が癌疾患の診断に使用される時、大用量の放射性物質の注入によるか、または、断層X線撮影器の環を通る患者の移動速度を低下させることによって、所望される記録精度を達成することができるので、注目に値する結果をもたらさない。
【0005】
しかし、インビボ、特に、ヒト脳でのライフプロセスの研究のために、または、新規な薬剤の試験の間に動物体内(マウス,ラット)での薬剤の分布を測定するために、使用される条件は、MicroPETについて鋭敏に変化する。MicroPETシステムについては、最大限の空間解像度を有する装置を使用することが必要である。1×1mm2に切断されるか、0.8×0.8mm2に切断されるシンチレーション素子でさえ、現在、まさに使用されている。1mm3空間解像度が実現されている。素子の厚さが非常に薄いので、数多くのガンマー量子が数個のシンチレーション素子を異なる角度で直接横切ることができる。したがって、シンチレーション放射線のどの部分が若干またはその他のガンマー量子によって誘発されるかを計算することは、技術的に複雑な作業である。この場合、残光はシステム全体の精度を低下させるので、非常に望ましくない効果となる。
【0006】
残光およびサーモルミネセンス現象は、Ce:LSO結晶について詳しく研究されている(P.Dorenbost,C.van Eijekt,A.Bost,Melcher “Afterglow and thermoluminescence properties of Lu2SiO5:Ce scintilation crystal”,J.Phys.Condens.Matter 6(1994),pp.4167-4180)。この文献によれば、残光は、高い光収率を有する結晶と低い光収率を有する結晶のいずれにおいても観測され、残光は、Ce:LSO物質に内在的な特性であると結論づけられる。
【0007】
物質、セリウムをドープしたガドリニウムオキシオルトシリケートCe2yGd2(1-x-y)A2xSiO5[式中、Aは、La(ランタン)およびY(イットリウム)からなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、xおよびyの値は、範囲0<x<0.5および1×10-3<y<0.1の範囲で可変である]は、公知である(米国特許4,647,781号明細書、1987年3月3日)。シンチレーション結晶のこの群の主要な制限は、上記したCeをドープしたルテチウムオキシオルトシリケートCe2xLu2(1-x)SiO5と比較して光収率が低いことである。
【0008】
サイズの大きいCeをドープしたルテチウムオキシオルトシリケートCe:LSOの結晶を成長させる公知の方法は、米国特許6,413,311号明細書に記載されており、ここで、60mm径および20cm長さまでのCe:LSOブール(boule)は、Czochralski技術によって成長させられる。これらサイズの大きいCe:LSOブールの容易に判断できる短所は、ブール内でさえ、光収率が非常に異なり、ブールの頂部から底部に至るまでに30%〜40%減少することである。さらに、シンチレーション減衰時間(ルミネセンス時間)は、29ナノ秒〜46ナノ秒の広範な値にわたって変化し得ることであり、その点で、エネルギー分解能の値は、12%〜20%の限度内で変動し得ることである。性能におけるこのような大きい散らばりは、工業的な製造の間に、Czochalski法により多数のブールを成長させ、それらを部分部分(パック)に切断し、各パックを試験し、このような試験に基づき、医療用X線断層撮影用のシンチレーション素子の製造のために、恐らくは、利用されうるパックを選択することが必要になる。
【0009】
シンチレーション結晶LU2(1-x)Me2xSi2O7[式中、LUは、Sc、Yb、In、La、Gdのうちの1つ以上をも含みうるルテチウム系合金であり;式中、Meは、ルテチウムを除くランタニド系列の1つ以上の元素で一部置換されたセリウムまたはCeであり;式中、xは、ルテチウムピロシリケート構造の単斜晶系結晶にて、Meに代わる限られた範囲のLU置換によって定義される]は、公知である(米国特許6,437,336号明細書)。結晶は、Lu2(1-x)M2xSi2O7の一致組成溶融物から結晶化によって形成され、一致組成は、初期溶融物の80%まで使用することが可能であり、結晶は、ガンマー線に対して再現可能なシンチレーション応答を示し、ブールの体積全体にわたる光収率の散らばりは、20%を上回らず、この商業的パラメータは、Ce:LSO結晶についてよりも有意に良好であった。しかし、Lu2(1-x)M2xSi2O7結晶は、基本的なシンチレーションパラメータ、すなわち、光収率および密度にて、Lu2SiO5結晶であると容易に判断できるほど符合する。かくして、ルテチウムオキシオルトシリケート結晶Ce:LSOは、これら結晶に基づく断層X線撮影がさらに鋭敏であり、したがって、癌の早期段階で患者の血液中へ添加する放射性薬剤の投与量が少なくてよいので、三次元陽電子−電子断層X線撮影での利用がさらに好ましいシンチレータである。
【0010】
化学式LiYSiO4で表されるセリウムをドープしたイットリウムシリケートのリチウム含有シンチレーション物質は、公知である(M.E.Globus,B.V.Grinev“Inorganic scintillators”,publishing house ‘AKTA’ Kharkov,(2000) p.51)。5%Ce3+をドープしたLiYSiO4結晶は、410nmにルミネセンスピークを有し、ルミネセンス時間定数は38nsに等しく、ガンマー量子の検出での最大光収率は10000フォトン/Mevであり、この値は公知のルテチウムオキシオルトシリケートシンチレーチング結晶Ce2-xLu2(1-x)SiO5についてよりも2.5倍少ない。ガンマー線の低い有効検出は、3.8g/cm3に等しいシンチレータの低い密度から生ずる。この物質は、中性子線の検出のために利用することができるが、しかし、この物質はガンマー線については効率が低い。
【0011】
化学式LiLuSiO4で表されるセリウムをドープしたルテチウムシリケートのリチウム含有シンチレーション物質は、公知である(M.E.Globus,B.V.Grinev“Inorganic scintillators”,publishing house ‘AKTA’ Kharkov,(2000) p.51)。1%Ce3+をドープしたLiLuSO4結晶は420nmにルミネセンスピークを有し、ルミネセンス時間定数は42nsに等しく、ガンマー線の検出での最大光収率は約30000フォトン/Mevであり、この値は公知のルテチウムオキシオルトシリケートシンチレーチング結晶Ce2-xLu2(1-x)SiO5についてよりも10%高い。しかし、本結晶の本質的な限界は、5.5g/cm3に等しい低密度である。このように低い密度は、三次元断層X線撮影(Fully-3D PETカメラ)にて、特に、MicroPETシステムについてこれらの結晶を使用することができない。何故ならば、これら用途のためのシンチレーチング結晶についての基本的な要件はガンマー線の減衰長さであり、これは、1.5cm未満である必要があるからである(W.M.Moses,S.E.Derenzo“Scintillators for positron emission tomography”Conference SCINT’95,Delft,The Netherlands (1995),LBL-37720)。このパラメータは、密度5.5g/cm3を有する結晶について減衰長さは2.67cmに等しいのに対し、他方、7.4g/cm3密度を有するCe2-xLu2(1-x)SiO5結晶については減衰長さは1.14cmに等しい。
【0012】
Ce:LiYSiO4およびCe:LiLuSiO4結晶は、それらが結晶密度を規定する結晶構造および化学式のいずれとも異なるので、本発明のいずれかの変種についての原型とは認識することができない。高い結晶密度は、本発明の目的である用途についての基本的なパラメータである。
【0013】
本発明の化学式は、セリウムCeを含有するシリケート結晶に基づく固溶体の多数の結晶であり、単斜晶系シンゴニー(syngony)空間群B2/b,Z=4にて結晶化させ、空間群P63/m,Z=1を有するアパタイト構造タイプの六角形シンゴニーにて結晶化させる。
【0014】
アパタイト−ブリトライト(apatite-brytolite)構造タイプCe9.330.67(SiO4)6O2[式中、□は、カチオン空位である]にて結晶化させるモノカチオンセリウムシリケート(A.M.Korovkin,T.I.Merkulyaeva,L.G.Morozova,I.A.Pechanskaya,M.V.Petrov,I.R.Savinova“Optical and spectral-luminescence properties of the orthosilicate crystals of lanthanide”Optics and Spectroscopy,value 58,issue 6(1985) p.1266-1269)およびセリウムの複シリケート(double silicate)LiCe9(SiO4)6O2(I.A.Bondar,N.V.Vinogradova,L.N.Dem’yanets et al.“Silicates, germanates,phosphates,arsenates,and vanadates.Chemistry of rare elements”monograph M.Nauka,(1983) 288p)は公知である。セリウムはCe9.330.67Si6O26結晶およびLiCe9Si6O26結晶中に存在するが、しかし、ルミネセンスはそれらの中で完全にクエンチされ、これは結晶中の高濃度のセリウムイオンゆえの濃度消光(concentration quenching)によって説明される。これら結晶は、シンチレータとしての利用に適用できない。本発明の請求項16、17、18にて請求されている物質の類縁体は、それが同一の対称性P63/m,Z=1を有し、かつ、前記引用した変種に非常に近い組成を有するので、モノカチオンセリウムシリケートCe9.330.67Si6O26の結晶である。本発明の請求項19、20、21にて請求されている物質の類縁体は、それが同一の対称性P63/m,Z=1を有し、前記引用した変種に非常に近い組成を有するので、複セリウムシリケートLiCe9Si6O26の結晶である。Ce9.330.67Si6O26結晶およびLiCe9Si6O26結晶の両方とも、それらがシンチレーション物質ではない、すなわち、これら結晶が目的を反映する本発明の一般的な特性を有しないので、本発明のシンチレーション物質の各変種についての原型として受け入れることができない。
【0015】
インターナショナルX線ライブラリーズデータベース(PDF Database International Center for Diffraction Data,Newton Square,PA,USA)における薬品化合物のコンピュータサーチは、それぞれ、モノカチオンおよび複シリケートR9.330.67(SiO4)6O2およびLiR9Si6O26(式中、R=La、Sm、Nd、Gd、Ce)に基づく個々の薬品化合物が公知であることを示す。しかし、我々の知るところによると、これら化合物がシンチレーション特性のイニシエーションに必要とされるセリウムをさらにドープしたという特許または刊行物は、存在しない。したがって、R9.330.67(SiO4)6O2およびLiR9Si6O26(式中、R=La、Gd)物質またはそれらの混合物は、公知物質の新規目的への利用と考えることが必要である。
【0016】
特許請求するシンチレーション物質の全ての変種についての原型として選択される最も近い類似体は、ロシア特許2157552号および米国特許6,278,832号のシンチレーション物質(変種)である。本発明の化学式は、セリウムCeを含み、空間群B2/b,Z=4を有するLu2SiO5構造タイプにて結晶化するオキシオルトシリケート結晶の固溶体の数多くの結晶を表し、この組成は、化学式CexLu1A1-xSiO5(式中、Aは、Lu;および、Gd、Sc、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybからなる群より選択される少なくとも1つの元素である)によって表される。周期表のその他の元素は、結晶中に出発酸化物の不純物として現れ得るか、あるいは、結晶成長の間または特殊な雰囲気中でのアニーリングの結果、組成物中に導入され得る。部分的には、同様の結果は、米国特許6,323,489号明細書にて実現される。この特許は、化学式CezLu2-x-zYxSiO5(式中、0.05<x<1.95および0.001<z<0.02)を有する組成のルテチウム−イットリウムオキシオルトシリケート結晶を保護する。上記した発明の主要な欠点は、全ての特許されたシンチレーション物質について出発酸化物の50%Lu2O3/50%SiO2=1に等しいモル比のみの使用であり、これは、Lu2SiO5構造の化学量論的組成にまさしく対応する。数種の稀土類イオンを同時に含有する全ての混合結晶について、異種の元素の50%ミックスと50%SiO2との比が使用されている。この組成は、あらゆる大きさのブールについて非常に均一なシンチレーションパラメータを有するルテチウムおよびCeドープド結晶を含有する多数の市販品(径80〜100mmより大)をCzochralski法によっては成長させることができない。また、化学量論的組成の結晶は、シンチレーション素子を、例えば、0.8×0.8×10mm3のサイズに引き切る時、亀裂を生じた。特異なシンチレーション物質のもう1つの本質的な欠点は、光の出力を増加させ、引き切る時のブールの亀裂の発生の可能性を低下させる酸素空位の存在であるが、しかし、同時に、2〜4倍の酸素空位の存在は、シンチレーション物質のガンマー線の放射後、残光(サーモルミネセンス)の強さを増加させる。
【0017】
酸化物のモル比50%Lu2O3/50%SiO2を特徴とする組成の基本的な欠点のもう1つの立証は、米国特許5,660,627号明細書に記載されている情報である。この米国特許は、化学式Ce2xLu2(1-x)SiO5(式中、2×10-4<x<6×10-2)を有する溶融物からCzochralski法により結晶化のプレーンフロント(plane front)でルテチウムオルトシリケートの結晶を成長させる方法を保護する。結晶化のコニカルフロント(conical front)と結晶化のプレーンフロントとで成長させる結晶のガンマールミネセンススペクトルは、形状およびルミネセンス最高の位置の両方にて、強力で、基本的な差を有する。かくして、容易に判断しうる差が、主成分のモル比50%Lu2O3/50%SiO2を有する初期溶融物の組成から生ずる。この溶融物から成長する結晶は、溶融物の組成とは異なる組成を有し、濃度勾配が結晶断面に沿って観測され、真のCe2xLu2(1-x)/Siイオンの比は、2/1=2式単位の比とは異なる。米国特許5,660,627号明細書にて表明された目的を立証するために、径26mmの結晶を0.5mm/時および1mm/時の速度で成長させたが、しかし、これらの非常に有益な成長パラメータでさえ、コニカル結晶化フロントを伴い成長させられる結晶は、亀裂の発生およびシンチレーション性能の広がりにより、市販用途については使用することができない。
【0018】
長年の間、Czochralski法による平面結晶溶融物界面を有する結晶の成長が光学および圧電材料の商業的な生産のために使用されており、そのことは、科学雑誌および書籍の何百もの論文に詳細に記載されている。周知の市販リチウムメタニオベート結晶(R.L.Byer,J.F.Young“Growth of High-Quality LiNbO3 Crystals from the Congruent Melt”Journal of Appl.Phys.N6,(1970),p.320-2325)は、Li2O/Nb2O5=0.946に等しい初期酸化物の比を有する一致組成Li0.946NbO2.973の溶融物からCzochralski法によって成長させられ、一致組成は、リチウムメタニオベートLiNbO3(式中、成分の比は、50%LiO/50%Nb2O5=1に等しい)の通常の化学量論的組成とは異なる。(P.Lerner,C.Legras,J.Dumas“Stoechiometrie des mohocristaux de metaniobate de lithium”Journal of Crystal Growth,3,4(1968) p.231-235).非化学量論的化合物の存在は、まさしく、真の結晶の構造に関わり、この構造では、空格子部位が存在し、1つの元素の過剰原子が結晶格子間部位に位置する。(P.V.Geld,F.A.Sidorenko“Dpendence of physical-chemical properties of non-stoichiometric compounds on structure of short-range order”Izuvestia AN SSSR,seria Inorganic materials,1979,v15, #6,p.1042-1048).その結果、構造を形成する成分の比は、整数の指数に対応せず、このような化合物の化学式は、分数によって記載される。溶融物の組成がこの溶融物から成長する結晶の組成に符合する場合に、化学組成は一致組成と称される。一致組成の溶融物から成長させられる結晶の全ての物理的および機械的特性は、全ての量のブールにわたって一定な値を維持する。幾つかの用途について、化学量論量に近い組成Li2O/Nb2O5=1が、好ましくは、使用される(2002年10月15日付けの米国特許6,464,777B2号明細書).この特許は、結晶組成の少しの変動が結晶の物理的特性の容易に評価しうる変性を導き出し、これが実際の用途について重要であることを示している。
【0019】
光学および電子工学的に興味深い複雑な酸化物系、例えば、ガーネットおよびスピネルが一致組成溶融物に対応しないので、過剰の成分が界面から拡散するための時間を与えるためには、非常に遅い速度でのみ成長を誘発する必要があることは公知である(書籍D.T.J.Hurle“Crystal Pulling from the Melt”Springer -Verlag,Berlin,Heidelberg,New-York,London,Paris,Tokyo,Hong Kong,Budapest,1993,p. 21)。これを遂行するのに失敗すると、構造上の超冷却の発生により完全無欠な結晶にて劇的な分解をもたらす。一致組成または一致組成に非常に近い組成のサーチは、全ての光学材料の商業的生産の開発の重要な段階であるが、しかし、本発明の著者は、科学雑誌または特許にて刊行されたルテチウムオルトシリケートの一致組成(または一致組成に近い組成)についてのデータを知らない。公知の刊行物は、全て、式単位(Ce2x+Lu2(1-x))/Siの比が正確に2/1に等しい結晶に関わる。
【0020】
上記考察を一般化して推論することにより、我々は、ルテチウムオルトシリケートCexLu2-xSiO5および原型結晶に基づく公知のシンチレーション結晶およびこれら結晶を製造する方法の両方に内在する基本的な技術的欠点は、成長させられる結晶の光学的品質の長手方向の不均質性;Czochralski法によって成長させられるブール塊の両方における基本的なシンチレーションパラメータの不均質性;および、同様の条件およびやっとの思いで遅い成長速度で成長させたブールごとの不均質性であると結論づけることができる。これらの欠点は、正確に2/1に等しい式単位(Ce+Lu)/Siの比を特徴とする組成を有する溶融物をCzochralski法で使用することから、実質的に生ずる、すなわち、これら欠点の理由は、溶融物の不一致組成に存在する。一致点の存在にて、化学量論的組成からの結晶成長は、ホスト結晶成分Lu、Siの両方およびさらなる成分Ceの析出係数が単位により異なることを導き、さらに、結晶組成は、結晶を引き上げるにつれて、一致点からシフトし、それにより、極めて遅い成長速度に基づくにもかかわらず、結晶特性の劇的な分解を生ずる。成分の析出係数は、結晶中の成分量対溶融物中の成分量の比である。ルテチウムオルトシリケートに基づくシンチレーション結晶のもう1つの共通の技術的な欠点は、大きい60mm径までのブールを1mm厚さの片にスライスし、ひいては、これをロッドにカットして、1つの断層X線撮影器を組み立てるために必要とされる数十〜数千量の片にて、1×1×10mm3寸法の素子を製造する間の、亀裂による結晶物質の多大な損失である。
【0021】
発明の本質
本発明の課題は、新規なシンチレーション物質およびその製造方法の創造である。本発明は、直接結晶化法によって成長させられるシンチレーション物質の大きい結晶ブールの大量生産の課題の解決に係る。シンチレーション物質は、大きな密度;高い光収率;および、大量生産でのシンチレーション特性の均質性を有し;機械的処理で結晶物質の少ない損失による最終シンチレーション素子の製造コストを削減し;結晶の最適化学組成を有する素子の残光強さと時間とを減ずるものであるべきである。Stepanov法は、四角い形の断面を有する素子を含め特定のサイズを有する結晶ロッドの形のシンチレーション物質を製造可能とし、したがって、大きな塊からなる結晶の広範囲なスライシングを含まない。矩形のロッドおよびプレートの形のシンチレーション半透明または透明セラミックスを製造する方法は、また、結晶ブールの切断の間にシンチレーション物質の拡大的な損失をもなくすことを可能とする。かくして、本発明は、複数の発明群を提供し、高い密度を有し、かつ、異なる化学式を有する稀土類シリケートを表す結晶およびセラミックスの両方のシンチレーション物質の種々の変種に基づく幾つかの技術的な成果の達成を提供する。
【0022】
提供される一群の本発明によって解決される技術的課題は、あらゆる量のルミネセンスの高い光出力を有し、直接結晶化法、特に、Kyropoulas法およびCzochralski法によって成長させられる大きな結晶ブールの製造であり、また、本発明の課題は、大量生産で成長させられる単結晶のシンチレーション特性の再現性である。
【0023】
特定の形態での第1の技術的課題は、公知のルテチウムオキシオルトシリケート結晶が有するより小さな強度および短い残光を有するシンチレーション物質の組成であり、提供される物質の光出力は、ルテチウムオキシオルトシリケートが有するのに匹敵するか、あるいは、高い。
【0024】
特定の形態での第2の技術的課題は、シンチレーション素子を三次元陽電子発光断層X線撮影器用に引き切り製造する間の亀裂による貴重なシンチレーション素子の損失が少量パーセントである。特に、高空間解像度医療装置用、例えば、生きた状態の生物対象に配置された陽電子発光同位体を記録するため(micro-tomographs-microPET)には、1×1×20mm3または0.8×0.8×10mm3寸法が要求される。
【0025】
特定の形態の第3の技術的課題は、直接結晶化法によりシンチレーション単結晶を成長させる方法である。“直接結晶化”という用語は、Czochraski法、Kyropoulas法、Bridman法およびその他の公知の方法を含め、いずれかの単結晶成長法を表す。
【0026】
前記課題の解決は、共通の構造タイプ、化学式およびこれら物質の製造方法によって統合される物質の10の変種に基づく組成を有する結晶およびセラミックスの両方のシンチレーション物質の使用により達成される。
【0027】
変種#1:ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートを基体とする公知のシンチレーション物質は、本発明の第1の変形例にて、物質の組成が、新規であり、化学式:
CexLu2+2y-xSi1-yO5+y
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値である。]
によって表される。
【0028】
技術的成果−大きな密度;高い光収率;および、大量生産の間のシンチレーション特性の均質性を有するシンチレーション物質の創製は、基本的な成分の一致組成を有するシリケートに基づく物質の使用により達成される。
【0029】
実施の特定の形態における技術的な成果は、単結晶の形の物質の組成が、化学式:
CexLu2.076-xSi0.962O5.038
[式中xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質の使用によって達成される。
【0030】
もう1つの技術的成果、つまり、ブール量全体にわたるルミネセンスの高い光出力;単結晶のシンチレーション特性の再現性を有する大きい結晶ブールの大量生産は、シンチレーション物質を製造する方法によって達成される。単結晶は、51.9%(Lu2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2酸化物モル比によって定義される組成の仕込みから作られる溶融物からの指向性結晶化法によって成長させられる。
【0031】
本発明の実施の特に具体的な形態、シンチレーション素子の生産コストの低減および大量生産でのブールごとの試料の物理的特性の再現性で表される技術的成果は、Czochralski法による単結晶の成長およびKyropoulas法による結晶の成長によって達成される。本方法の新規性は、51.9%(Lu2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2=1.079酸化物モル比によって定義される組成、つまり、一致組成と称される組成の仕込みから作られる溶融物からCzochralski法およびまたKyropoulas法によって成長させられる単結晶である。そのような酸化物比にて、成長される結晶の組成は、溶融物の組成に等しく、この状況は、化学量論的な組成、50%( Lu2O3+Ce2O3)/50%SiO2=1の溶融物から成長させられる結晶よりも組成および物理的特性にて、より均質な結晶を成長させることが可能である。一致組成溶融物からの結晶の成長は、溶融物の80%より多くを使用可能とし、これにより、シンチレーション素子のコストをかなりの程度安価にすることができる。
【0032】
変種#2:ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートに基づく公知のシンチレーション物質は、本発明の第2の変形例にて、物質の組成が、新規であり、化学式:
CexLu2+2y-x-zAzSi1-yO5+y
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tb、Caからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値であり;
zは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表される。
【0033】
技術的成果−比較的低いコスト;高い光収率;および、シンチレーション特性の均質性を有するシンチレーション物質の創製は、合計基本成分(Lu+A+Ce)とSiとの一致組成を有するシリケートに基づく物質の使用により達成される。重金属であり、高価なルテチウムをGd、Sc、Y、La、Eu、Tb、Ca群から選択される少なくとも1つの匹敵しうる光素子で置換することは、製造コストを低下させ、成長アニーリングおよび切断の間の結晶亀裂の発生を低下させ、光収率を増加させ、密度の些細な減少を生ずるに過ぎない。安価なシンチレーション結晶は、7.2〜7.4g/cm3の小さな密度および原子番号Z=58〜63を有するが、高い光収率は、数多くの用途、例えば、原子核工業にて有用である。
【0034】
実施の特定の形態における技術的成果は、単結晶の形の物質の組成が、化学式:
CexLu2.076-x-zAzSi0.962O5.038
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tb、Caからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
zは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質の使用によって達成される。
【0035】
実施の特定な形態にて、詳細な技術的成果は、光収率の増加、続く、密度のわずかばかりの減少にて表され、単結晶の形の物質の組成が、化学式:
CexLu2.076-x-m-nLamYnSi0.962O5.038
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
mは、0.05f.u.を上回らない値であり;
nは、1×10-4f.u.と2.0f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質の成長によって達成される。
【0036】
別の技術的成果−ブール量全体にわたるルミネセンスの高い光出力;大量生産の間に成長させられる単結晶のシンチレーション特性の再現性を有する大きい結晶ブールの大量生産は、51.9%(Lu2O3+A2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2(式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素である)の酸化物モル比によって定義される組成の仕込みから作られる溶融物から直接結晶化法によってシンチレーション単結晶を成長させることによって達成される。
【0037】
本発明の実施の特に具体的な形態、シンチレーション素子の生産コストの低減;成長アニーリングおよび切断の間および後の結晶亀裂の減少;および、大量生産でのブールごとの試料の物理的特性の再現性で表される技術的成果は、Czochralski法による単結晶の成長およびKyropoulas法による結晶の成長によって達成される。本発明の新規性は、51.9%(Lu2O3+A2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2(式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tb、Caからなる群より選択される少なくとも1つの元素である)の酸化物モル比によって定義される組成の仕込みから作られる溶融物からCzochralski法およびまたKyropoulas法によって成長させられる単結晶である。
【0038】
変種#3:ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートを基体とする公知のシンチレーション物質は、本発明の第3の変形例にて、0.25f.u.を上回らない量のリチウムLiを含有する点が新規であり、物質の組成は、化学式:
CexLiq+pLu2-p+2y-xSi1-yO5+y-p
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.2f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表される。
【0039】
技術的成果−高い光収率;大きい密度;大量生産の間の均質性および再現性を有するシンチレーション物質の創製は、リチウムを含有するシリケートに基づき、基本成分の一致組成を有する物質の使用により達成される。
【0040】
実施の特定の形態における技術的成果は、シンチレーション素子の製造コストの減少および大量生産でのブールごとの試料の物理的特性の再現性にて表され、0.25f.u.を上回らない量のリチウムLiを含有する単結晶の形態の物質の組成が、化学式:
CexLiq+pLu2.076-p-xSi0962O5.038-p
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.2f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質の使用により達成される。
【0041】
別の技術的成果−ブール量全体にわたるルミネセンスの高い光出力;大量生産の間に成長させられる単結晶のシンチレーション特性の再現性を有する大きい結晶ブールの大量生産は、51.9%(Lu2O3+Li2O+Ce2O3)/48.1%SiO2の酸化物モル比によって定義される組成の仕込みからなる溶融物から直接結晶化法によって成長させられるシンチレーチング単結晶を成長させることによって達成される。
【0042】
変種#4:ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートに基づく公知のシンチレーション物質は、本発明の第4の変形例にて、0.25f.u.を上回らない量のリチウムLiを含有する点が新規であり、その組成は、化学式:
CexLiq+pLu2-p+2y-x-zAzSi1-yO5+y-p
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値であり;
zは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間であり;
qは、1×10-4f.u.と0.2f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表される。
【0043】
技術的成果−比較的低いコストを有し;成長アニーリングおよび切断の間の結晶亀裂の発生を減少させ、高い光収率およびシンチレーション特性の均質性を有するシンチレーション物質の創製は、合計基本的成分(Lu+Li+A+Ce)およびSiの一致組成を有するシリケートに基づく物質の使用により達成される。重金属であり、高価なルテチウムをGd、Sc、Y、La、Eu、Tb群から選択される少なくとも1つの匹敵しうる光素子で置換することは、製造コストを低下させ、光収率を増加させ、密度の些細な減少を生ずるに過ぎない。安価なシンチレーション結晶は、7.2〜7.4g/cm3の小さな密度および原子番号Z=58〜63を有するが、高い光収率は、数多くの用途、例えば、原子核工業にて有用である。
【0044】
実施の特定の形態における技術的成果は、0.25f.u.を上回らない量のリチウムLiを含有する単結晶の形の物質の組成が、化学式:
CexLiq+pLu2.076-p-x-zAzSi0.962O5.038-p
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
zは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間であり;
qは、1×10-4f.u.と0.2f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質の使用によって達成される。
【0045】
別の技術的成果−低いコスト;ブール量全体にわたるルミネセンスの高い光出力;大量生産の間に成長させられる単結晶のシンチレーション特性の再現性を有する大きい結晶ブールの大量生産は、51.9%(Lu2O3+Li2O+A2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2の酸化物モル比によって定義される組成の仕込みから作られる溶融物から直接結晶化法によって単結晶を成長させることによって達成される。
【0046】
変種#5:ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートに基づく公知のシンチレーション物質は、本発明の第5の変形例にて、化学式:
CexLu9.33-x0.67Si6O26
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値である。]
によって表される物質の組成が新規である。
【0047】
技術的成果−大きい密度、高い光収率を有するシンチレーション物質の創製は、アパタイト空間群P63/m=1、Z=1の六角形シンゴニーにて、物質中のCe3+イオンの有益な量を費やして、結晶化されるモノカチオンシリケートを製造することにより達成される。
【0048】
変種#6:ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートに基づく公知のシンチレーション物質は、本発明の第6の変形例にて、リチウムLiを含有する点が新規であり、物質の組成は、化学式:
CexLiq+pLu9.33-x-p0.67Si6O26-p
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間の値である。]
によって表される。
【0049】
技術的成果−大きい密度、高い光収率を有するシンチレーション物質の創製は、アパタイト空間群P63/m=1、Z=1の六角形シンゴニーにて、物質中のCe3+イオンの有益な量を費やして、結晶化されるモノカチオンシリケートを製造することにより達成される。
【0050】
変種#7:ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートに基づく公知のシンチレーション物質は、本発明の第7の変形例にて、リチウムLiを含有する点が新規であり、物質の組成は、化学式:
CexLiq+pLu9.33-x-p-z0.67Si6O26-p
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間の値であり;
zは、5×10-4f.u.と8.9f.u.との間である。]
によって表される。
【0051】
技術的成果−大きい密度を有し、成長アニーリングおよび切断の間および後の結晶亀裂の発生を減少させ、高い光収率を有するシンチレーション物質の創製は、物質中のCe3+イオンの有益な量(advantageous content)を費やして、アパタイト空間群P63/m=1、Z=1の六角形シンゴニーにて結晶化されるモノカチオンシリケートを製造することにより達成される。
【0052】
変種#8:ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートに基づく公知のシンチレーション物質は、本発明の第8の変形例にて、1つの式単位に1のリチウムLiを含有する点が新規であり、物質の組成は、化学式:
CexLiLu9-xSi6O26
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値である。]
によって表される。
【0053】
技術的成果−大きい密度、高い光収率を有するシンチレーション物質の創製は、物質中のCe3+イオンの有益な量(advantageous content)を費やして、アパタイト空間群P63/m=1、Z=1の六角形シンゴニーにて結晶化される複シリケートを製造することにより達成される。
【0054】
変種#9:ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートに基づく公知のシンチレーション物質は、本発明の第9の変形例にて、1.0f.u.を上回る量にてリチウムLiを含有する点が新規であり、物質の組成は、化学式:
CexLi1+q+pLu9-x-pSi6O26-p
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間の値である。]
によって表される。
【0055】
技術的成果−大きい密度、高い光収率を有するシンチレーション物質の創製は、物質中のCe3+イオンの有益な量(advantageous content)を費やして、アパタイト空間群P63/m=1、Z=1の六角形シンゴニーにて結晶化される複シリケートを製造することにより達成される。
【0056】
変種#10:ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートに基づく公知のシンチレーション物質は、本発明の第10の変形例にて、1.0f.u.を上回る量にてリチウムLiを含有する点が新規であり、物質の組成は、化学式:
CexLi1+q+pLu9-x-p-zAzSi6O26-p
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間の値であり;
zは、5×10-4f.u.と8.9f.u.との間である。]
によって表される。
【0057】
技術的成果−大きい密度を有し、成長アニーリングおよび切断の間および後の結晶亀裂の発生を減少させ、高い光収率を有するシンチレーション物質の創造は、物質中のCe3+イオンの有益な量(advantageous content)を費やして、アパタイト空間群P63/m=1、Z=1の六角形シンゴニーにて結晶化される複シリケートを製造することにより達成される。
【0058】
全ての列挙した変種について、セリウムイオンCe3+の存在は、ガンマー線およびX線放射下のシンチレーションがCe3+イオン5d→2F5/2移動より生ずるルミネセンスと合わさるので、必須の要件である。物質の全ての変種について、最高のCe3+イオンルミネセンスは、スペクトルの青色410〜450nm領域にある。このバンドは、光増倍管と半導体放射線検出器との両方での放射線検出用に最適である。その領域における測定については、安価なガラス入力ウインドウを有する通常の市販されている光増倍管が使用され、これにより、スペクトルの紫外領域に発光ピークを有するシンチレーション結晶を使用する装置と比較して、医用装置のコストが低下する。セリウムイオンルミネセンスの高い量子収率は、また、上記した化学式を有する全ての結晶の典型的な表示である。5%〜9%の量子収率は、ガンマー量子エネルギーのその一部がCe3+イオン発光に変換され、エネルギーのその一部(91%〜95%)が格子原子の熱振動で消失することを特徴とする。本質的なシンチレーションパラメータである光収率は、物質/結晶中のセリウムCe3+イオンの濃度に直接依存する。
【0059】
全ての変種について、セリウムイオンについての下限は、1×10-4f.u.の量のCe3+の含有量にて、Ce3+のシンチレーションルミネセンス有効性が低濃度ゆえに些細なものとなることによって決定される。上記下限より低いセリウムの濃度では、技術的課題の実施は、達成されず、つまり、実用的な利用に十分な光収率を実現することが不可能である。
【0060】
実用的な用途について、高いセリウムイオン濃度を有する結晶は、このような結晶が容易に判断しうるほどの高い光収率を有するので、必要とされる。しかし、非常に高いセリウム濃度は、いくつかの負の成果を導きだす。第1に、高いセリウム濃度を有する結晶は、光学特性が悪く、散乱中心が結晶中に存在する。第2に、光収率の低下は、光学特性の低下および量子効率の減少の両方により生じ、これは、隣接のセリウムイオンの相互作用、いわゆる、ルミネセンスをクエンチする濃縮効果により生じる。したがって、セリウムイオンの上限は、本発明の全ての物質について、0.02f.u.に設定され、これは単斜晶系シンゴニーにて、空間群B2/b,Z=4を有する構造タイプCexLn2-xSiO5で結晶化される。上限の0.1f.u.は、CexLn9.33-x0.67SiO26およびCexLiLn9-xSiO26について設定され、物質は、六角形シンゴニーにて、空間群P63/m,Z=1を有するアパタイト構造タイプで結晶化される。これらの限界は、実験的に定義される。濃度が示した限界より高い時、数多い光散乱中心の形成は、結晶化の間に生じ、したがって、このような欠点のある結晶の医学装置および技術的装置における実装は、不可能である。
【0061】
技術的成果、つまり、全ての量にわたってルミネセンスの高い光出力;大量生産にて成長させられる単結晶のシンチレーション特性の再現性;シンチレーション素子の引き切りおよび製造の間の亀裂の発生により貴重なシンチレーション素子の少量パーセントの損失を有する大きい結晶ブールの製造は、一致組成のシンチレーション結晶の成長により達成される。変種#1、#2、#3および#4についての共通の改善の徴候は、物質の化学的組成における稀土類イオンとケイ素イオンとの比の値、すなわち式単位(Lu2-x+2y+Cex)/Si1-yと(Lu2-x+2y-z+Cex+Az)/Si1-yの比により特徴付けられる物質における希土類イオンと珪素イオンとの比が、オルトシリケートに基づく全ての公知のシンチレーション物質について必ず正確に2に等しい1/2比とは異なることである。本発明の物質について、式単位(Lu2-x+2y+Cex)/Si1-yおよび(Lu2-x+2y-z+Cex+Az)/Si1-yの比は、51.2%(Lu2O3+Ce2O3+A2O3)/48.8%SiO2=1.049と54.5%(Lu2O3+Ce2O3+A2O3)/45.5%SiO2=1.198に、それぞれ等しい酸化物モル比に対応する限界2.077〜2.396の範囲内で変動する。これらの大きさは、物質CexLu2+2y-xSi1-yO5+y、CexLu2+2y-x-zAzSi1-yO5+y、CexLiq+pLu2+2y-x-z-pAzSi1-yO5+y-p(式中、可変数yは、0.024f.u.〜0.09f.u.の範囲内で変化する)の組成に対応する。我々は、電子マイクロ分析用の市販装置(Camera Camebax SX-50,20kv,50mAと10ミクロンのビーム径で作動)を使用し、具体的な大きさを測定したところ、組成物の測定の精度は±0.003f.u.であり、精度はモル%にて±0.15mol%であった。測定用に機械的に研磨した試料は、1.77〜2.44の限度内にて (Lu2-x+Cex)/Siおよび(Lu2-x-y+Cex+Az)/Si成分のモル比を有する溶融物から直接結晶化法によって成長させられた結晶から切り出した。一連の粉末化した組成物の融点の測定およびX線相分析に基づき、本発明の著者は、Lu2O3-SiO2系におけるルテチウムオキシオルトシリケートの存在領域についての相ダイヤグラムの一部を定義した(図1)。溶融物の組成に依存するルテチウムオキシオルトシリケート結晶(相“S”)の固溶体の組成の変化プロセスを図1に示す。従来表記に従えば、液相は、このダイヤグラム上“L”によって表される。固溶体“S”の融点の最高は、組成ダイヤグラム上、51.9mol%Lu2O3+48.1mol%SiO2の組成に対応する。相“S”の存在領域は、2相平衡L+S、Lu2O3+SおよびS+Lu2Si2O7の領域によって取り囲まれている。
【0062】
相ダイヤグラム(図1)は、異なる化学組成を有する溶融物からの結晶成長の間の凝固に近い平衡条件について詳細を表す。初期溶融物の組成をそれから成長させられる結晶の組成と比較すると、図1に示した液体−固体線に従い、凝固が生ずることが決定される。溶融物の組成は、初期化学物質の秤量時に設定され、溶融物の温度も実験の間に考慮に入れられる。成長中の結晶は、0.3mm/時近傍の結晶引張速度を伴う低い温度勾配条件で行われ、平衡に近い条件での溶融物と成長結晶との間のLu3+およびSi4+イオンの効率的な析出係数の実現を維持する。
【0063】
図1の液体−固体線は、ルテチウムオキシオルトシリケート結晶が初期Lu2O3とSiO2との異なる酸化物比、すなわち、化学物質の含有量が、SiO2について44.5〜50.5mol%およびLu2O3について55.5〜49.5mol%の範囲内であることを特徴とする組成を有し得ることを示す。しかし、実用目的に対しては、組成の具体的な範囲は、部分的にのみ重要であり、溶融物の3つの組成は、これを示す1、2および3と番号を付された矢印によって表される。矢印1は、初期溶融物の50%Lu2O3+50%SiO2組成を表す。この溶融物から成長する結晶の組成は、50.9mol%Lu2O3/49mol%SiO2=1.037未満の基本成分の比を有することを指摘しておく必要がある。50mol%Lu2O3/50mol%SiO2=1に正確に等しい基本成分の比を有する組成の結晶を成長させるためには、矢印2によって表される組成の溶融物を使用する必要がある、すなわち、溶融物における基本的な成分の比が46mol%Lu2O3+54mol%SiO2=0.852にほぼ等しい。
【0064】
低い温度勾配(大径のるつぼ)の条件にての高品位のシンチレーション結晶を成長させるための酸化物混合物(仕込み)の最適組成は、矢印3によって表される組成である。この場合、基本成分の析出係数は、1(unity)に等しく、溶融物の仕込み組成は、成長中の結晶の組成と一致し、仕込み組成と成長させられた結晶の組成とは、両方とも、モル比51.9%Lu2O3+48.1%SiO2=1.079を特徴とする基本成分の含有量を有する。
【0065】
したがって、図1は、モル比51.9%(Lu2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2を有する初期酸化物の最適組成を利用するKyropoulos法による過大サイズの結晶の成長のためおよびCzochralski法による大きい単結晶の成長のためのシンチレーション物質を説明する第1、第2、第3および第4の実施の特定の形態の技術的課題の独特の解決法を示し、溶融物の仕込み組成および成長させられる結晶の組成が一致し、化学式:
CexLu2.076−xSi0.962O5.038
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.01f.u.との間の値である。]
によって表される。
【0066】
変種#1、#2、#3および#4の物質についての初期Lu2O3とSiO2との酸化物比の範囲の低い値および高い値の選択の証拠を図1に示す。ルテチウムに対する結晶中の成分含有量の下限は、酸化物モル比51.2%(Lu2O3+Ce2O3)/48.8%SiO2=1.049によって決定され、これは、シンチレーション物質の化学式の可変数y=0.024の値に相当する。下方の境界は、結晶中のルテチウムおよびケイ素の化学的および物理的実験測定法の精度によって決定される。このような精度は、成分のモル比50%(Lu2O3+Ce2O3)/50%SiO2を有する公知のルテチウムオルトシリケートシンチレーション結晶の組成と本発明の物質/結晶化学組成とを独特の態様で識別可能とする。
【0067】
ルテチウムに対する結晶中の成分含有量の上方境界は、酸化物モル比54.5%(Lu2O3+Ce2O3)/45.5%SiO2=1.198によって決定され、これは、シンチレーション物質の化学式にて、可変数y=0.09の値に相当する。この境界は、実験的に決定される。初期溶融物中のLu2O3含有量がさらに増加する場合、したがって、結晶中に散乱中心が生ずる場合、光収率が減少し、その結果、本発明の技術的成果を達成することができない。下方および上方境界の組成の値を#1、#2、#3および#4変種についての式単位に変換した後、(Lu2-x+Cex)/Siおよび(Lu2-x-y+Cex+Az)/Siの比によって定義される式単位の組成の範囲は、2.077〜2.396の限度内にある。これらの値は、化学式CexLu2+2y-xSi1-yO5+y、CexLu2+2y-x-zAzSi1-yO5+yおよびLiqCexLu2+2y-x-zAzSi1-yO5+y(式中、yは、0.024f.u.〜0.09f.u.の限度内で変化する)によって表される組成に相当する。
【0068】
ルテチウムオキシオルトシリケート固溶体結晶の組成、すなわち、組成物を指摘するとしたら、それは、図1のそれらの最高融点の最大から右側に当る。これは、SiO2の最大溶解度によって限られる右側に横たわる結晶組成の領域であり、モル比49.5%Lu2O3/50.5%SiO2=0.980を有する固溶体に相当し、値50.9%Lu2O3/49.1%SiO2=1.037を有する結晶組成の左境界は、図1の溶融物の50%Lu2O3+50%SiO2組成によって決定される。
【0069】
図1の矢印1によって表される化学量論的組成50%Lu2O3/50%SiO2=1.000の仕込みから得られる溶融物から直接結晶化法によって成長しうる結晶の組成を決定しよう。技術特性、すなわち、結晶の径によって決まる成長の熱的条件、溶融物−結晶の界面の温度勾配に応じて、成分析出係数は、1〜平衡値で変動してもよく、これは、ひいては、図1の組成ダイヤグラムに従い、決定される。その結果、化学量論的組成50%Lu2O3/50%SiO2の仕込みから、49.5%Lu2O3/50.5%SiO2=0.980より大きい成分比の下限および50.9%Lu2O3/49.1%SiO2=1.037未満の成分比の上限によって限られる範囲内にある組成の結晶が成長しうる。式単位にて、これは、可変数yが(-0.01)±0.003f.u.より大きいが0.018±0.003f.u.未満である値の範囲に対応する。結晶組成のこの範囲は、公知の特許にはない。しかし、この範囲は、この範囲の組成を有する結晶が従来技術のコンセプトによってカバーされるので、新規な発明の対象とはなりえない。これらの結晶は、公知物質との比較にて技術的性能の改良を保持しない。高品位のルテチウムオキシオルトシリケート結晶の成長は、溶融物の一致組成を使用する必要があり、これは、この溶融物から成長する結晶の組成とは異なることが容易に判断されうる。化学量論的な組成を有する溶融物から成長させられる結晶は、長手方向に沿って化学的な組成の容易に判断されうる変種を有し、また、ケイ素とルテチウムとの析出係数が1とは異なるので、長手方向および径方向の両方に沿って全ての物理的およびシンチレーションパラメータの極めて大きい変動を有する。このような結晶は、科学的リサーチ用に利用されるが、しかし、同様の組成を有する結晶の商業的生産は、化学的な酸化物からのシンチレーション素子の収率パーセントが低く、製造コストが極めて高いので、興味を引かないでいる。
【0070】
実施の特定の形態にて、第1〜第4を含め、変種にて特許請求したシンチレーション物質は、多結晶/セラミックスおよび単結晶の両方の形にて実現される。
ホットプレス法によるセラミックスの製造法、例えば、Gd2O(SiO4):Ceシンチレーションセラミックスの製造法が、例えば、論文に記載されている(W.Rossner,R.Breu“Luminescence propertieas cerium-doped gadolinium oxyorthosilicate ceramics scintillators”Proc.Int.Conf.on Inorganic Scintillators and Their Application,STINT’95,Netherlands,Delft University,1996,p.376-379)。高い光学特性セラミックス-シンチレータのもう1つの製造方法にて、Lu-Ce-Aクロライド(式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tb群の元素の少なくとも1つである)の水溶液およびSiCl4液体が仕込み調製用の初期物質として使用される。前記成分の混合物に、炭酸水素アンモニウムの水溶液を加える。ついで、溶液を洗浄し、濾過し、乾燥させる。1400℃で焼成した酸化物混合物を溶媒(dissolvent)および溶融可能なドーパントと一緒に攪拌し、最終高温アニーリング工程で粒界に沿った原子の拡散を促進する。混和物として、セリウムCe3+イオンのルミネセンスに影響を及ぼさない数多くの化合物を使用することができる。有機成分と痕跡量の水とを除去した後、改質された混合物は、静水圧プレスにて2000気圧にプレスされる。ついで、数時間の間、プレスされたセラミックバー(矩形または他の形)は、本セラミック組成物の融点より70℃〜150℃低い温度にて真空でアニールされる。着色中心を除き、光学特性を改良するために、焼結したバーは、最終処理工程で、酸素含有雰囲気中、アニールされる。このようにして、半透明なセラミック−シンチレータおよび高い光学特性のセラミックスが製造される。セラミックスシンチレーション物質は、単結晶と比較して一連の利点を有する:すなわち、シンチレータ製造の明らかに安価な技術;インゴットからシンチレション素子へ(ingot-to-scintillation)の高い生成物収率(クラックなし);微細表面のシンチレーション素子の製造技術からの切断の排除によるシンチレーション物質の20%〜50%の節約;多結晶体中のセリウムCeイオンの均一な分布;シンチレーション素子加工時間の短縮;シンチレーション素子の任意所望の造形。
【0071】
実施の特定の形態にて、直接結晶化法を使用して、単結晶の形のシンチレーション物質が製造される。提案する方法の新規性は、単結晶が一致組成の仕込みから作られる溶融物から直接結晶化法によって成長させられ、その組成は変種#1について51.9%(Lu2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2;変種#2について51.9%(Lu2O3+A2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2;変種#3について51.9%(Lu2O3+Li2O+Ce2O3)/48.1%SiO2;変種#4について51.9%(Lu2O3+Li2O+A2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2の酸化物モル比を特徴とする。
【0072】
直接結晶化法、特に、Czochralski法についての化学量論的組成の稀土類シリケートの具体的な特性および成長パラメータは、論文にて表されている(C.D.Brandle,A.J.Valentino,G.W.Berkstresser“Czochralski growth of rare-earth orthosilicates(Ln2SiO5),J.Crystal Growth 79(1986),pp.308-315)。この論文にて、結晶径(d)対るつぼの径(D)の比は、d/D=0.4の大きさを有し、これは、Czochralski法について最適値である。Czochralski法についてのるつぼの最適寸法の条件は、その径に等しいるつぼの高さである(D=H)。
【0073】
低い温度勾配は、直接結晶化法;特に、径100mm〜180mmを有するイリジウムるつぼを用い及び結晶径対るつぼの径の最適比がd/D=0.7〜0.9であるKyropoulos法によって成長する大きい(80mm〜150mm径の)結晶のキーとなる特性である。Kyropoulos法は、大きな塊のサファイア結晶(Al2O3)および若干のアルカリ-ハライドシンチレーション結晶の商業的生産に広く利用されている。しかし、本発明の著者は、Kyropoulos法による稀土類シリケートの成長についての刊行物を知らない。Kyropoulos法およびCzochralski法の技術および特性は、書籍に詳細に説明されている(K.Th.Wilke“Kristallzuchtungen”,VEB Deutcher Verlag der Wissennschaften,Berlin,1973の独英翻訳であるK.T.Wilke“A growing of crystals”Leningrad,Publisher<Nedra>,1977,600p.)。
【0074】
Kyropoulos法による変種#1、#2、#3および#4に相当するシンチレーション物質成長の図面は、図2および図3にて表される。種結晶5としてルテチウムオキシオルトシリケート結晶を使用する結晶成長は、断面の大きいイリジウムるつぼ4で実行される。大きい断面の寸法は、低い温度勾配とるつぼ側表面上方部分から加熱する強力な光との条件で結晶成長を確実に開始させる。結晶成長プロセスの開始時に、溶融物はるつぼの容積の一部のみを占め、Hmは溶融物の最適高さである。結晶成長の開始相にて、コーン6が成長し、ショルダリング(shouldering)後、結晶7は、径が変化することなく成長させられる。100%結晶化される初期溶融物の場合についてのKyropoulos法による結晶成長のフローチャートを図2に示す。未使用の物質9の少量がるつぼに残される際に部分的に(70%〜90%)結晶化される溶融物の場合についての結晶成長のフローチャートは、図3にて表される。るつぼの径(D)と高さ(H)との最適値、るつぼ中の溶融物の初期レベル(Hm)、結晶の径(d)および結晶の円筒状部分の長さ(h)は、関係式:
h=H+y
[式中、yは、ほとんど0.1D;(d/D)は、ほとんど0.7÷0.9;Hmは、ほとんど(d/D)2hである。]
によって示される。最適比(d/D)ほとんど0.8にて、成長した結晶を冷却中にるつぼ内に置くことは、成長後のアニーリングの間にブール量の全体にわたって温度を均一に低下させるための重要な条件である。るつぼに対する結晶のこのような配置は、Kyropoulos法とCzochchralski法との間の主要な相違であり、成長した結晶は、アニーリングプロセスを開始するために融液を分離した後、るつぼの上方に位置している。Czochralski法におけるるつぼに対する結晶の異なる位置は、ある条件を生じさせ、この条件下で結晶ブールの頂部は、高温るつぼの近くに位置する底部よりも明らかに低温を有する。この条件は、結晶の全長にわたり異なる含量の酸素空位および異なるCe3+/Ce4+イオン比を導き、これが、シンチレートするルテチウムオキシオルトシリケート結晶のCzochralski法によって成長させられるブールごとのパラメータの強い広がりの追加の原因である。Czochralski法によって成長させられる全てのブールは、結晶長手方向およびその径にわたる特性の相違を有し、大きい温度勾配下でアニーリングとの組み合わせにて、これにより、ブールの異なる部分から製造されるシンチレーション素子のパラメータのかなりの広がりを生ずる。逆に、アニーリングプロセス中の結晶における低い温度勾配は、図2および図3に示すように、るつぼ内にブールが配置される場合に、達成される。実際、このような製造方法は、ほぼ等温条件で結晶を冷却可能とする。これは、Kyropoulos法で成長させた大きな結晶の異なる部分からの光収率の不変性を実現するための基礎である。
【0075】
変形例#2、#4、#7および#10に記載したシンチレーション物質にて、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tb群のイオンの少なくとも1つに対するルテチウムイオンの同形置換は、おそらく本発明にて特許請求するよりもさらに広い範囲で置換を行いうるであろう。しかし、ルテチウムイオンの置換範囲をあまりに広げすぎることの欠点は、結晶密度の減少;および、したがって、ガンマー量子吸収効率の鋭い減少であり、これにより、光収率の減少を生ずる。その上、EuおよびTbイオンは、再分配によりエネルギーの一部がユーロピウム置換でスペクトルの赤色領域で発光し、テルビウム置換でスペクトルの緑色領域で発光するので、スペクトルの青色領域のルミネセンス強度が減少する。セリウム、テルビウムおよびユーロピウムイオンの正確に選択された濃度の場合に、シンチレーション結晶は、白色光、すなわち、スペクトルの全ての可視領域で発光する。このような発光スペクトルを有するシンチレーション物質は、安価なケイ素/ゲルマニウム半導体検出器がスペクトルの緑色領域、さらにスペクトルの赤色領域と比較してスペクトルの青色領域にて2〜3倍低い感度を有するので、半導体検出器でより有効に作動する。光学的に不活性なGd、Sc、YおよびLaイオンでLuイオンを置換すると、格子パラメータを制御し、機械的応力なく結晶成長を可能とし、成長アニーリングおよび切断の間および後の結晶の亀裂を低下させる。その上、高価なルテチウムの安価なLa、GdおよびYによる部分的な置換は、シンチレーション物質のコストを低下させる。
【0076】
Y(1.016Å)、La(1.190Å)、Eu(1.073Å)、Gd(1.061Å)、Tb(1.044Å)のイオン半径は、Lu(0.72Å)のイオン半径よりも明らかに大きい。ガンマー量子と格子との相互作用にて、多量の遊離電子と、これらの電子がガンマー量子によって奪われることによる正孔の形成が生じる。電子と正孔との再結合の結果、格子の励起が生じ、このエネルギーは、セリウムイオンに伝達され、セリウムイオンはスペクトルの青色領域で発光する。特に、再結合は、非常に識別可能な半径を有する原子がそばにある光学中心で有効である。例えば、ルテチウムイオンの一部を有意に大きい径を有するランタンイオンで置換すると、鋭い光収率の増加を生じ、このことは、本発明の確認的な物質の実施例で立証されるであろう。電子−正孔の再結合が最大の効果を有するためには、低濃度の同形置換ドーパントを使用することが必要である。高濃度では、濃度消光が生じ、効率が低下し、これは、光収率の低下をもたらす。上記推論と実験データとに基づき、可変数zの範囲は、物質CexLu2+2y-x-zAzSi1-yO5+yおよびCexLiq+pLu2-p+2y-x-zAzSi1-yO5+y-p(式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tb群の少なくとも1つの元素である)の変種について1×10-4f.u.と0.05f.u.との間で選択される。しかし、この範囲は、YおよびLa元素については容易に判断されるように拡張することができ、拡大された光収率が高濃度でさえも保持され、他方、結晶密度は減少する。かくして、実施の特定の形態における技術的成果は、シンチレーション物質CexLu2.076-x-m-nLamYnSi0.962O5.038(式中、可変数mの値は、0.05f.u.を上回ることがなく、可変数nの範囲は、1×10-4f.u.と2f.u.との間の値である)によって達成される。
【0077】
したがって、化学式CexLiq+pLu9.33-x-p-z0.67AzSi6O26-pおよびCexLi1+q+pLu9-x-p-zAzSi6O26-pを有する#6および#10変種の物質については、可変数zの範囲は、1×10-4f.u.と8.9f.u.との間に設定される。大きい密度と高い光収率とを保持するためには、上記したように、低濃度が好ましい。にもかかわらず、上限を8.9f.u.に設定すると、この場合に、結晶は、低密度と、比較的小さな光収率とを有し、初期薬品コスト、したがって、結晶コストが急激に低下する。このような結晶は、重要なパラメータが高い放射性抵抗性と化学抵抗性であり、低コストと両立する原子力プラントにおけるセンサーとしての利用に興味がもたれるかもしれない。同様のセンサーは、ヒトが存在することなく、放射線レベルを測定するためのプラントの部屋ごとに配置される必要がある。アルカリハライド結晶に基づく既存のセンサーは、緊急の場合に潜在的な高い放射線レベルで作動することができないので信頼性に欠ける。
【0078】
ルテチウムシリケートに基づくシンチレーション物質の#3および#4変種について、共通の識別特徴は、0.25f.u.を上回らない量のリチウムイオンの存在であり、リチウムが、q式単位(formula units)量で、結晶格子間サイトに置かれ、リチウムイオンの別の部分が、pの式単位量でルテチウムイオンを置換する格子サイトに置かれる点である。構造の格子間サイトへのリチウムイオンのインターカレーションの正の効果は、
(a) インターカレーションが物質の結晶構造における最小の変化に続き;
(b) リチウムイオンのインターカレーションがLiqCeの還元相の形成を生じさせ、すなわち、シンチレーション物質CexLiq+pLu2-p-2y-xSi1-yO5+y-pおよびCexLiq+pLu2-p+2y-x-zAzSi1-yO5+y-p中のリチウムイオンの存在がCe3+原子化状態でのセリウムイオンの安定化を促進して、容易に判断しうるほどに光収率を増加させ;
(c) リチウムイオンのインターカレーションが伝導の変化を生じさせ(A.A.Veshman,K.I.Petrov,“A functional inorganic lithium compounds”Moscow,Energoizdat,(1996),208p.)、Table 1の物質の残光時間を短くする;
ことにより達成される。
【0079】
物質の#3および#4変種については、リチウム含有量の低いpおよびq境界は、これが残光を低下させる効果および光収率を増加させる効果を観測することができる時のリチウム含有量の限界であるので、1×10-4f.u.に等しくなるように設定される。シンチレーション物質のリチウム含有量の上限は、0.25f.u.を上回るリチウムイオンの合計含有量で実験により決定され、光収率の強度は、過剰に生ずる物質の伝導により急激に降下し、このようなシンチレーション物質は、その直接的な目的、Table 1に示すX線、ガンマー線およびアルファー線の位置合わせのための工業的用途に適用不能となる。
【0080】
#1〜#4変種にて特許請求するシリケートに基づく全てのシンチレーション物質は、包括的に、単斜晶系シンゴニー空間群B2/bと称す。第5〜第10の変種にて特許請求するシリケートに基づくシンチレーション物質は、包括的に、別の構造タイプ、すなわち、空間群P63/m、Z=1を有するアパタイト-ブリトライトに属する。#6および#7変種にて特許請求する物質は、重要な共通の識別特徴を有し、すなわち、これらは、0.55f.u.を上回らない合計量(p+q)(式中、qは格子間部位にインターカレーションされたリチウムの量を表し、pは稀土類イオンを置換するリチウムの量を表す)のリチウムイオンを含有する。qの上限は0.3f.u.に等しく、実験により決定される。インターカレーションされたリチウムの量が指標限度より高い時、構造タイプP63/mの破壊およびその他の相の包括的な形成が生じ、これが、光の散乱およびシンチレートする結晶の透明性の低下を決定する。0.25f.u.に等しいpの上限は、大きな9つの配位サイトに位置する稀土類原子の置換が生ずる時、このようなサイトのみが理想的な対称からゆがみかつ逸脱するので、その場合にのみ、稀土類原子のリチウムによる置換でアパタイト類似の構造が保持されるという事実によって決定される。これが7つの配位サイトを有する場合、構造中の稀土類イオンに対する第2位は、常に稀土類元素によって占められる。リチウムイオンpとqとの含有量についての下方境界は、5×10-4f.u.限界より低い量にて光収率の増加およびシンチレーション残光の減少という技術的成果に到達しえない事実により決定される。
【0081】
変種#9および#10について、リチウムの含有量の上限は、アパタイト−ブリトライト構造がリチウムイオンについての第1位の元素の広い置換範囲にわたって安定に保持されるので、1.55f.u.までと決定される。大量の塩基形成セリウムイオンのモノカチオンおよび複セリウムシリケートの両方におけるルテチウムとセリウムとによる置換は、類似し、セリウムルミネセンスのクエンチ効果を低下させ、新しい物質が、シンチレーション特性を獲得する。
【0082】
我々の実験によるリサーチは、Czochralski法によって成長させたCexLiR9-xSi6O26およびR9.330.67Si6O26(式中、R=La、Gd)結晶は高い光学的特性を有するが、しかし、これらは密度および光収率の両方にてルテチウムオキシオルトシリケート結晶に劣る。最も重要なシンチレーションパラメータを改良するために、我々は、以下の結晶を成長させた:Ce0.015LiGd2.985Lu6Si6O26;Ce0.015LiLa2.985Lu6Si6O26;Ce0.015LiGd5.985Lu3SiO6O26;Ce0.015LiLu8.985Si6O26;Ce0.015Li0.45Lu8.935Si6O26;Ce0.015Li0.12Gd2.985Lu6.330.67Si6O26;Ce0.015Li0.33Eu1.985Lu6.330.67Si6O26;Ce0.015Li0.25Gd2.985Lu6.280.67Si6O26;Ce0.011Li0.25Y6.989Lu2.230.67Si6O25.9;Ce0.011Li0.35Y3.989La0.9Lu3.330.67Si6O25.9;Ce0.012Li0.05La3.988Lu5.330.67Si6O26。異なる成長条件での数多くの実験により、多結晶形のみでこの物質を獲得する。Ce0.015LiLu8.985Si6O26組成の多結晶を試験すると、この新たなシンチレーション物質が公知のCe:LSO結晶に近い密度、光収率および減衰時間を有することが立証された。
【0083】
単結晶形で成長するであろう変種#6および#7のシンチレーション物質の組成の境界を決定するために、我々は、溶融物の初期組成:Ce0.012Li0.1Lu5.33La3.9880.67Si6O26;Ce0.012Li0.2Lu2.33La6.9880.67Si6O26;Ce0.012Li0.1Lu5.33La3.9880.67Si6O26;Ce0.015Li0.45Lu2.115Gd70.67Si6O25.8;Ce0.015Li0.1Lu7.31Y20.67Si6O25.95;Ce0.015Li0.28Lu7.815Eu1.50.67Si6O26を有する物質を試験した。これらの組成物は、全て、単結晶、あるいは半透明または白色不透明な多結晶インゴットの形で得られた。例えば、Ce0.015Li0.55Lu1.065La80.67Si6O25.75の化学組成を有する溶融物を使用し、成長中の結晶の引張速度2.5mm/時にて、この溶融物からCe0.003Li0.55Lu1.327La80.67Si6O26化学組成の結晶を成長させる。溶融物-結晶界面の引張速度および勾配の増加は、Ce0.003Li0.55Lu1.077La80.67Si6O25.75〜Ce0.015Li0.55Lu1.065La80.67Si6O25.75の組成範囲にわたって新規な結晶シンチレーション物質を得ることを可能とする。一般化した形にて、この新規なシンチレーション物質(変種#6および#7)は、以下の化学式:CexLiq+pLu9.33-x-p-zAz0.67Si6O26-p(式中、可変数qおよびpは、それぞれ、0.3f.u.および0.25f.u.の値を上回らず、可変数zは、5×10-4f.u.〜8.9f.u.の範囲内で変化する)を有する。
【0084】
#9および#10変種に従い単結晶の形で恐らくは成長するシンチレーション物質の組成の境界を決定するために、溶融物の初期組成を有する以下の物質を試験した:Ce0.015LiLu8.985Si6O26;Ce0.015Li1.55Lu8.735Si6O25.75;Ce0.015Li1.05Lu8.985Si6O26;Ce0.015Li1.3Lu1.785La7Si6O25.8;Ce0.015Li1.4Lu6.885Y2Si6O25.9;Ce0.015Li1.2Lu2.885Gd6Si6O25.9。これら組成の全ては、単結晶あるいは半透明もしくは白色不透明な多結晶インゴットの形で得られた。例えば、Ce0.015LiLu8.997Si6O26化学組成の溶融物を使用し、成長中の結晶の引張速度0.5mm/時にて、この溶融物からCe0.003LiLu8.997Si6O26化学組成の単結晶を成長させる。溶融物-結晶界面での引張速度および勾配の増加は、Ce0.003LiLu8.997Si6O26〜Ce0.015Li1.55Lu8.735Si6O25.75の組成範囲にわたって新規な結晶シンチレーション物質を得ることを可能とする。一般化した形にて、この新規なシンチレーション物質(変種#9および#10)は、以下の化学式:CexLi1+q+pLu9−x-pAzSi6O26-p(式中、可変数qおよびpは、それぞれ、0.3f.u.および0.25f.u.の値を上回らず、可変数zは、5×10-4f.u.〜8.9f.u.の範囲内で変化する)を有する。
【0085】
我々は、X線回折計を使用し、粉末化したCexLiq+pLu9-x-pSi6O26-p結晶試料のスカイアグラム分析(sciagram analysis:レントゲン写真撮影分析)を行った。分析は、CexLiq+pLu9-x-pSi6O26-p単結晶が六角形シンゴニーにて結晶化され、空間群P63/m,Z=1を有するアパタイト-ブリトライト構造タイプに分類することができることを示す。Ce0.003LiLu8.997Si6O26結晶のインデキシング(indexing)X線回折パターンを図4に示す。15°〜60°の範囲にわたる反射の2θ角での平面から全部で35反射することを考慮して、我々は、a=11.66Åおよびc=21.58Åに等しい結晶格子パラメータを計算した。
【0086】
結晶密度の測定は、静水圧秤量の標準的な処理法に従い行い、この方法は、10年の間、地質学の研究に利用されている。これらの実験にて、我々は、約8〜15グラム重量の嵩高い研磨した試料を使用した。測定は、予め20分間沸騰させた蒸留水中で行い、酸素を除去して、室温まで冷却させた。水の温度は、精度0.1℃で測定した。誤差を最小とするために、各試料は、5回秤量し、この場合に、結晶試料密度の測定の誤差は、0.001グラム/cm3を上回らなかった。測定の結果は、Table 1に示す。
【0087】
シンチレーション減衰時間および410〜450nmのスペクトル範囲での光収率の結晶の化学的組成への依存度の実験的な研究は、論文に記載されているように、放射性核種60Coの発光を利用して行った(E.G.Devitsin,V.A.Kozlov,S.Yu.Potashov,A.I.Zagumennyi,Yu.D.Zavartsev“Luminescent properties of Lu3Al5O12crystal doped with Ce”Proceeding of International Conference“Inorganic scintillators and their applications”(SCINT95),Delft,the Netherlands,Aug.20-Sep.01,1995)。測定の結果は、Table 1に示す。
【0088】
ルミネセンス強度および残光時間の測定は、8〜15グラム重量の研磨した試料で行った。参照試料の強度および残光は、系統的測定UV励起セットを使用する限り、ガンマー線と紫外(UV)線暴露後、同等であった。試料のルミネセンスは、60分間標準12W UVランプ暴露により励起され、ランプのスイッチを切った後、コンピュータに接続したオシロスコープTekronix TDS 3052またはマルチメータAgilent 34401Aと連結した光電子増倍管FEU-100または光検出器FD-24Kにより、蛍光の減少を120分間記録した。強い残光効果を有する試料の強度の変動は、約25〜35分の一定時間を有する指数依存性を特徴とし、これら試料は、180分より長い間、強い蛍光を維持する。低い残光効果を有する試料は、約数十秒の一定時間を有する依存性を特徴とする。幾つかの試料については、ランプのスイッチを切った後、残光効果が観測されなかった。異なる試料についての残光効果の測定結果は、Table 1に示す。
【0089】
Table 1は、合成したシンチレーチング物質の試験の結果を示す。光収率、シンチレーションの減衰時間、残光時間、密度、原子番号(Zeff)の値を種々の化合物について比較する。光収率の値は、“参照”Ce0.0024Lu1.998SiO5試料の光収率に対する相対単位にて示す。
【0090】
本発明の実施の間に製造し調べた結晶は、全て、イリジウムるつぼから成長させ、源試薬として、99.99%と99.999%との超純度の薬品を使用した。
発明の詳細な説明
実施例1 Lu/Si=2の比を有する公知の“参照”Ce:Lu2SiO5結晶の成長及び本発明の変種No1の組成の範囲外である式単位の比(Lu+Ce)/Si=2.061(y=0.015)を有する結晶の成長
種々の刊行物にて公開されている結晶パラメータについての強いデータの広がりゆえに、市販のCe:Lu2SiO5結晶のパラメータが最も信頼できるデータとして許容可能である。0.12at.%(または約0.002f.u.)に等しいセリウムイオンの濃度を有するLSO結晶によって示される光出力が高いほど、参照結晶の化学式は、Ce0.002Lu1.998SiO5である。溶融物と成長中の結晶との間のセリウムイオンの析出係数がおよそk=0.2に等しいことを考慮すると、セリウム濃度約0.6at.%(または式単位:0.012f.u.)を有する出発物質をるつぼに仕込む必要がある。Lu2O3およびSiO2酸化物の比は、直接結晶化法(Czochralski法、Stepanov法、Bridgman法または直接結晶化のいずれかその他の方法)の特性を考慮に入れて計算する必要がある。我々は、低い温度勾配(実験#1)条件と高い温度勾配(実験#2および#3)の条件とにて、Czochralski法により、“参照”Ce:Lu2SiO5結晶を成長させた。
【0091】
実験#1 (非平衡条件、50%(Lu2O3+Ce2O3)/50%SiO2の仕込み組成)
結晶の成長は、保護アルゴン雰囲気(100vol%アルゴン)中、弱い断熱下で、40mm径のイリジウムるつぼから、引張速度3.5mmh-1、回転速度15rpmで行った。溶融物の初期仕込みは、化学式:Ce0.012Lu1.998SiO5によって表される組成を有していた。これらの条件にて、ほぼ16mm径および54mm長さの結晶を成長させ、ブールの頂部は無色であり、微細な散乱含有物を有していなかったが、ブールの底部は亀裂を有していた。セリウム、ルテチウムおよびケイ素イオンの含有量は、市販のCameca Camebax SX-50スペクトロメータを使用する電子マイクロプローブ分析により結晶内で決定した。結晶の頂部コニカル部分の組成は、正確には2に等しい(Lu+Ce)/Siの比を有する化学式:Ce0.002Lu1.998SiO5を特徴とし、それは、恐らく、平衡から離れた結晶化の条件にて可能である。しかし、結晶の底部にて、(Lu+Ce)/Siの比は2未満となる。“参照”試料を製造するためには、ブールのコニカル部分の頂部を使用した。“参照”試料のパラメータは、Table 1にて示す。
【0092】
実験#2 (平衡条件、50%(Lu2O3+Ce2O3)/50%SiO2の仕込み組成)
結晶の成長は、保護アルゴン雰囲気(99.5vol%のアルゴンと0.5vol%の酸素)中良好な断熱条件下、40mm径のイリジウムるつぼから、引張速度2mmh-1、回転速度15rpmで行った。溶融物の初期仕込みは、化学式:Ce0.012Lu1.998SiO5によって表される組成を有していた。これらの成長条件にて、ほぼ18mm径および45mm長さの結晶を成長させ、結晶は、微細な散乱含有物を含有せず、無色であった。セリウム、ルテチウムおよびケイ素イオンの含有量は、市販のスペクトロメータを使用する電子マイクロプローブ分析によって結晶内で決定した。結晶のコニカル部分の組成は、(Lu+Ce)/Si=2.061の比を有する化学式:Ce0.003Lu2.027Si0.985O5.015を特徴とする。結晶の底部に向かって、セリウムイオンの濃度は増加し、(Lu+Ce)/Siの比は2.061より低くなる。自明なことに、このような結晶は、その組成が公知のLu2-xCexSiO5結晶の組成とは異なるので、“参照”試料としては、使用することができない。
【0093】
実験#3 (仕込み組成は、46%(Lu2O3+Ce2O3)/54%SiO2である)
結晶の成長は、保護アルゴン雰囲気(99.5vol%のアルゴンと0.5vol%の酸素)中良好な断熱条件下で、40mm径のイリジウムるつぼから、引張速度2mmh-1、回転速度1分間当り15回転(15rpm)で行った。図1の矢印2によって表される組成に従い、本来の仕込み組成46%(Lu2O3+Ce2O3)/54%SiO2を使用する必要があり、これは、Ce0.012Lu1.828Si1.080O4.920の化学組成を有する溶融物に相当する。これらの条件にて、52mm長さおよび16mm径の結晶を成長させた。結晶は無色であるが、微細な散乱含有物を含み、その量はブールの頂部から底部へと増加した。セリウム、ルテチウムおよびケイ素イオンの含有量は、市販のスペクトロメータを使用する電子マイクロプローブ分析によって、結晶の頂部にて決定した。結晶の組成は、Ce0.0022Lu1.997Si1.0O5(ブールの頂部)とCe0.0028Lu1.968Si1.010O4.98(ブールの底部)との間の組成範囲内にある。
【0094】
実験#1および#3にて製造した一対の試料のシンチレーションパラメータの比較は、それらがガンマー線励起下でほぼ同等の光出力を有することを示し、両試料は、ほぼ同等の減衰時間τ=43nsを示した。
【0095】
実施例2 実施の特定の形態−シンチレーション物質の製造方法における本発明の確認
変種#1、#2、#3および#4に基づいてKyropoulos法によって大きい単結晶を成長させるために、51.9%(Ce2O3+Lu2O3+A2O3+Li2O)/48.1%SiO2の酸化物モル比を特徴とする仕込み組成を有する最適なシンチレーション物質を選択した。このような酸化物比にて、溶融物および結晶の組成は、化学式:CexLiq+pLu2.076-p-x-zAzSi0.962O5.038-p(式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;zは、0.05f.u.を上回らない値であり;q+pは、0.025f.u.を上回らない値である)を特徴とする。
【0096】
78mm径の結晶の成長は、成長する結晶の秤量システムを備えたコンピュータ制御装備を使用して、96mm内径および約112mm高さのイリジウムるつぼから行った。最適な断熱るつぼ内に配置し、混合薬品試薬を満たし、結晶成長は、流動保護窒素雰囲気(窒素99.7vol%および酸素0.3vol%)にて行った。るつぼの出発仕込みの重量は、4400グラムであった。初期仕込みは化学組成:CexLu2.076-xSi0.962O5.038を有し、酸化物モル比51.9%(Lu2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2を特徴とした。12×12mm2断片の単結晶ロッドを種結晶として使用した。結晶ブールの引張速度は、プロセスの種々の工程にて、1mm/時〜8mm/時で変化させた。種寸法からの結晶のショルダリング(shouldering)は、ほぼ75〜78mmの径サイズが結晶長さ5mm〜25mmに沿って実現されるまで行い、その後、ブールを一定のシリンダー状の径75〜78mmで成長させた。成長の仕上げは、ブール重量が仕込み量の約90%の所望値を達成する時(結晶化された溶融物フラクションが90%である)、引張速度の増加によって行われる。結晶が溶融物から外れる瞬間は、秤量システムによって固定される。結晶のアニーリングおよび室温までの冷却は、30時間の間行った。これらの条件で成長させると、結晶は、重量3910グラム、長さ12.5cmを有していた。このような技術により、るつぼ膨張の効果を排除する。溶融物の冷却の間のイリジウムるつぼの拡大/膨張は、残留溶融物の量がるつぼの容積の20%より大を占める場合に生ずる。るつぼの拡大および膨張は、非常に高価なイリジウムるつぼの寿命を短縮し、したがって、結晶ブールの生産コストが増加する。
【0097】
得られた結晶ブールは、スライス、ブールの薄い素子への引き切り、破片、破壊された素子および小さな亀裂を有する素子のスクリーニングおよび排出後、結晶物質のパーセンテージ損失の測定のために使用した。損失の第2の種類は、ダイヤモンドのこぎりの厚さに依存するが、しかし、これら損失は、のこぎりの厚さを考慮して容易に計算することができるので、これらは、本実施例では考慮しない。
【0098】
78mm径および11mm長さのパックにてのブールの引き切りは、0.6mm厚さを有する内部切断エッジを備えたダイヤモンドのこぎりによって行った。この工程の後、9枚の厚板(slab)が得られ、これは、亀裂および破片を有していなかった。製造のこの工程にて、損失は0%であった。第2の工程の間、パックは、垂直方向に、厚さ1mmのプレート(plats)に切断され、内部切断エッジ0.2mm厚さを有するダイヤモンドのこぎりを使用した。亀裂の結果、損失はほとんど1%未満であった。次の工程にて、プレート(plats)を一緒に接着し、1×1×11mm3寸法のロッドに切り取った。亀裂の結果、達成される損失はほとんど3%未満であった。最終工程にて、各々ロッドをほぼ30×30ロッドを含有するブロックに接着し、ブロックをシンチレーチング素子の片面または両面から機械的に研磨した。この処理の間、損失は0.1%以下であった。かくして、亀裂の結果、合計損失は、約4%に達した。
【0099】
比較のために、50mm径および105mm長さの公知のCe:Lu2SiO5を100mm径および100mm高さのるつぼを使用して、Czochralski法によって成長させ、結晶を化学式:Ce0.012Lu1.998SiO5を特徴とする初期組成の溶融物から成長させた。ブールを50mm径および11mm長さのパックにて切断後、合計8枚の厚板(slab)中3枚の厚板(slab)に亀裂が観測された。1つの機械的に研磨した面を有する寸法1×1×11mm3のロッドの製造の間、亀裂および破片の結果として結晶物質の損失は、合計約32%にも達した。
【0100】
同様の技術的スキームを、組成:CexLi0.08Lu2.026-xSi0.962O5.008-p;CexLi0.02Lu2.072-xSi0.962O5.034;CexLu2.066-x-zLa0.01Si0.962O5.038;CexLu2.036-xY0.04Si0.962O5.038;CexLi2Lu2.006-xGd0.04Si0.962O5.018;CexLi0.15Lu2.071-x-zTbzSi0.962O4.988(ここで、セリウムの含量は異なり、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値である)を有する結晶の成長および切断のために使用した。
【0101】
本発明にて提供される溶融物の化学組成およびKyropoulas法による結晶の成長は、大きなブールの切断工程にて結晶シンチレーション物質の損失を急激に低下させる。
実施例3 ランタンとルテチウムオキシオルトシリケートに基づくシンチレーチングセラミックスの形のシンチレーション物質を製造する方法は、51.9%(Lu2O3+La2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2の酸化物モル比を特徴とする組成の仕込みを調製するための出発物質として、Lu、La、Ceの塩化物水溶液と液体SiCl4の混合物を使用する点で相違した。炭酸アンモニウム水溶液を前記混合物に加えた。ついで、この混合物を濾過し、排水し、乾燥させた。1400℃での焼成後、得られる酸化物混合物を攪拌しつつ、溶剤および低溶融不純物を加え、これにより、最終の高温アニーリングの間に、粒子の境界を通しての原子拡散が促進された。低溶融不純物としては、Ce3+イオンの発光に影響を及ぼさない数多くの化合物を使用することができる。我々の研究では、Li、Na、K、Cs、Be、B、F、Al、S、Cl、Zn、Sc、Ga、Ge、Se、Br、I、SnおよびInイオンの少量の添加がシンチレーチングセラミックスの光出力の低下をもたらさないことを示した。Mg、P、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、As、Sr、Zr、Nb、Mo、Cd、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Pb、Biイオンの焼結助剤は、Ce3+イオンの発光を低下させるかまたは完全に抑制する。リチウム化合物の焼結助剤、例えば、LiCl、Li2GeF6、Li2GeO3、Li3BO3は、良好な光学的特性を有するシンチレーションセラミックスの生成を促進する。痕跡量の水と有機成分との除去後、セラミック合成の2つの方法が可能である。
【0102】
第1の方法 添加剤Li2GeO3、Li3BO3を有する酸化物物質を白金ソフトカプセルに仕込み、ついで、カプセルをポンプで減圧とし、ガスジェットを使用して、孔を半田付けした。カプセル内で、セラミックを合成させ続けた後、これを大きなプレス形下に置いて1000気圧下、温度1300℃で、2時間加圧した。
【0103】
第2の方法 添加剤Li2GeO3、Li3BO3を含む酸化物物質を2000気圧下でプレスした。その後、2〜3時間かけて、(正方形またはその他の形状に)プレスされたペレットを約1700〜1840℃の温度にて真空中でアニールした。紫色の中心を排除して光学的特性を改良するために、ペレットを空気中最終工程にて温度約1300℃で24時間アニールした。これらの動作の結果、薄い白色の塗膜により全ての側面が覆われたシンチレーションセラミック生成物が得られた。この技術によって製造される素子は、コンピュータ断層X線撮影システムのために使用することができる。
【0104】
実施例4 ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケートに基づくシンチレーション物質において、単結晶の形の物質の組成が、化学式:CexLu2+2y-x-zAzSi1-yO5+y(式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tb、Caからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値であり;zは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である)によって表されることを特徴とするシンチレーション物質
Czochralski法によって、組成:Ce0.002Lu2.044Tb0.03Si0.962O5.038を有するルテチウム−テルビウム−セリウムオルトシリケートを成長させるために、純度99.995%を有する酸化物薬品(Lu2O3、Tb2O3、CeO2、SiO2)を使用した。結晶の成長は、酸化物のモル比51.9%(Ce2O3+Lu2O3+Tb2O3)/48.1%SiO2を特徴とする溶融物を入れた54mm径および54mm高さを有するイリジウムるつぼから行った。引張速度は2mm/時であり、回転速度は15rpmであった。結晶化は、保護アルゴン雰囲気(アルゴン99.5vol%および酸素0.5vol%)にて行った。55mm長さおよび26mm径を有する結晶は、高い光学的特性を有し、微細な散乱含有物を含まなかった。この結晶から研磨した試料をTable 1にて示すパラメータの測定のために使用した。
【0105】
組成:Lu2.1La0.02Ce0.0015Si0.94O5.06を有するルテチウム-ランタン-セリウムオルトシリケートのCzochralski技術による成長は、酸化物モル比51.9%(Ce2O3+Lu2O3+La2O3)/48.1%SiO2を特徴とする溶融物を入れた38mm径および38mm高さを有するイリジウムるつぼから行った。引張速度は3mm/時であり、回転速度は10rpmであった。結晶化は、保護アルゴン雰囲気(アルゴン99.5vol%および酸素0.5vol%)にて行った。17mm径および20mm長さを有する結晶は、高い光学的特性を有し、微細な散乱含有物を含まなかった。この結晶から研磨した試料をTable 1にて示すパラメータの測定のために使用した。類似した成長条件を使用して多くの試料を生成させたが、これらのパラメータは、Table 1に示す。
【0106】
実施例5 本発明の変種#2についての実施の特定の形態における本発明の確認は、化学式:CexLu2.076-x-m-nLamYnSi0.962O5.038(式中、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;mは、0.05f.u.を上回らない値であり;nは、1×10-4f.u.と2.0f.u.との間の値である)を有する単結晶の形のシンチレーション物質である。
【0107】
化学組成:Ce0.002Lu1.324Y0.7La0.05Si0.962O5.038を有するルテチウム−イットリウム−ランタン−セリウムオルトシリケートのCzochralski技術による成長は、38mm径および38mm高さを有するイリジウムるつぼから行われ、引張速度は3mm/時であり、回転速度は15rpmであった。結晶化は、保護アルゴン雰囲気(アルゴン99.5vol%および酸素0.5vol%)にて、酸化物のモル比51.9%(Lu2O3+Y2O3+Ce2O3+La2O3)/48.1%SiO2を特徴とする溶融物から行った。16mm径および60mm長さの結晶は無色であり、成長プロセスの間に亀裂を有していなかったが、24時間冷却工程の間に、結晶ブールの中央部分に亀裂が現れた。結晶の頂部は、微細な散乱含有物を含有していなかったが、ブールの底部には数多くの散乱含有物が存在していた。ガンマー線励起の下、結晶の頂部からの試料は、実施例1に記載した“参照”Ce:Lu2SiO5結晶の光出力の約1.3倍高い光出力を示した。
【0108】
実施例6 化学式:CexLiq+pLu2-p+2y-x-zAzSi1-yO5+y-p(式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値であり;qは、1×10-4f.u.と0.2f.u.との間の値であり;pは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値であり;zは、0.05f.u.を上回らない値である)によって表される組成物を有する本発明の変種#3および#4に従うリチウム(Li)イオンを含有するシンチレーション物質
Ce0.003Li0.005Lu2.049La0.02Si0.962O5.038結晶を得るために、試料を製造する以下の方法を使用した:酸化物51.9%(Lu2O3+Li2O+Ce2O3+A2O3)/48.1%SiO2のモル関係によって決定される量の酸化ルテチウム、酸化ケイ素および炭酸リチウムの初期薬品を完全に混合し、プレスしてペレットとし、白金るつぼ中、1250℃にて10時間合成した。ついで、誘導加熱により、保護窒素雰囲気(窒素99.7vol%および酸素0.3vol%)中密封するようにシールしたチャンバ内のイリジウムるつぼ内で、ペレットを溶融させた。結晶を成長させる前に、セリウム酸化物を溶融物に加えた。60mm径および45mm長さの円筒状部分を有する結晶を76mm径および78mm高さのイリジウムるつぼから、Kyropoulas法によって成長させた。初期溶融物の体積は290cm3に等しかった。結晶ブールの引張速度は、成長の異なる段階で1mm/時〜8mm/時で変動し、回転速度は10rpmであった。ブールが成長した時、溶融物からちぎり取られ、室温まで30時間で冷却した。このブールから研磨した試料をTable 1に示したパラメータの測定のために使用した。
【0109】
リチウムを含有し、化学組成:CexLi0.08Lu2.026−xSi0.962O5.008-pを有するルテチウム−セリウム−オルトシリケートに基づくシンチレーション物質のCzochralski技術による成長は、36mm径および38mm高さを有するイリジウムるつぼから、引張速度2.7mm/時および回転速度14rpmで行った。結晶化は、保護アルゴン雰囲気(アルゴン99.7vol%および酸素0.3vol%)にて、酸化物モル比51.9%(Lu2O3+Ce2O3+Li2O)/48.1%SiO2によって決定される組成の溶融物から行った。19mm径および60mm長さの結晶は無色であり、成長プロセスの間および22時間の冷却工程中、亀裂を生じなかった。頂部のように、結晶の底部は、厚さ約0.5〜0.7mmの量の周辺部分を除いて、微細な散乱含有物を含有していなかった。ガンマー線励起の下、結晶の頂部からの試料は、実施例1にて記載した“参照”Ce:Lu2SiO5結晶の光出力とほぼ同様の光出力の値を示した。同様の技術的スキームを使用して、組成:CexLi0.02Lu2.072-xSi0.962O5.034;CexLu2.036-xY0.04Si0.962O5.038;CexLi0.2Lu2.006-xGd0.04Si0.962O5.018;CexLi0.15Lu2.071-x-zTbzSi0.962O4.988(ここで、セリウムの含量は異なり、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値である)を有する結晶の成長および切断を行った。
【0110】
実施例7 カチオン空位を含有し、化学式:CexLu9.33-x0.67Si6O26(式中、xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値である)によって表される組成を有するルテチウム-セリウムシリケートに基づく変種#5に従うシンチレーション物質
化学組成:Ce0.002Lu9.3280.67Si6O26を有するモノカチオンルテチウム−セリウムシリケートに基づくシンチレーション物質のCzochralski技術による成長を、内径37mmおよび高さ40mmを有するイリジウムるつぼから、引張速度2.7mm/時と回転速度14rpmとで行った。結晶化は、保護アルゴン雰囲気(アルゴン99.7vol%および酸素0.3vol%)にて、化学量論的組成の溶融物から行った。22mm径および58mm長さの結晶は無色であり、成長プロセスの間および12時間冷却工程中に亀裂を生じなかった。結晶の嵩高い体積は、若干の微細な散乱含有物を含有し、含有物の密度はブールの底部に向かって増加した。実施例1にて記載した技術に従いシンチレーション試料を製造した。
【0111】
同様の技術的スキームを使用して、組成:Ce0.04Lu9.290.67Si6O26を有する結晶の成長および切断を行った。セリウムイオン濃度の増加は、散乱含有物の量を低下させることに注意する必要がある。
【0112】
実施例8 リチウムとカチオン空位とを含有し、化学式:CexLiq+pLu9.33-x-p0.67Si6O26-p(式中、xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり;qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間である)によって表される組成を有するルテチウム-セリウムシリケートに基づく変種#5に従うシンチレーション物質
リチウムとカチオン空位とを含有し、化学式:CexLiq+pLu9.33-x-p0.67Si6O26-pによって表される組成を有するモノカチオンルテチウム−セリウムシリケートに基づくシンチレーション物質のCzochralski技術による成長を、37mm径および40mm高さを有するイリジウムるつぼから、引張速度2.7mm/時と回転速度12rpmとで行った。結晶化は、保護窒素雰囲気(窒素99.7vol%および酸素0.3vol%)にて、化学量論的組成の溶融物から行った。22mm径および52mm長さの結晶は無色であり、成長の間および12時間冷却工程中に亀裂を生じなかった。結晶の嵩高い体積は、若干量の微細な散乱含有物を含有していた。実施例1にて記載した技術に従いシンチレーション試料を製造した。
【0113】
同様の技術的スキームを使用して、組成:Ce0.001Li0.12Lu9.2790.67Si6O25.95;Ce0.05Li0.4Lu9.080.67Si6O25.8を有する結晶の成長および切断を行った。
実施例9 リチウムとカチオン空位とを含有し、化学式:CexLiq+pLu9.33-x-p-z0.67AzSi6O26-p(式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり; qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間の値であり;zは、5×10-4f.u.と8.9f.u.との間の値である)によって表される組成を有するルテチウム−セリウムシリケートに基づく変種#7に従うシンチレーション物質
リチウムとカチオン空位とを含有し、化学式:Ce0.002Li0.2Lu7.228-p0.67La2Si6O25.9によって表される組成を有するモノカチオンルテチウム−セリウムシリケートに基づくシンチレーション物質のCzochralski技術による成長を37mm径および40mm高さを有するイリジウムるつぼから、引張速度2.7mm/時と回転速度12rpmとで行った。結晶化は、保護窒素雰囲気(窒素99.8vol%および酸素0.2vol%)にて、化学量論的組成の溶融物から行った。22mm径および52mm長さの結晶は無色であり、成長の間および12時間冷却工程中に亀裂を生じなかった。結晶の嵩高い体積は、若干量の微細な散乱含有物を含有していた。実施例1にて記載した技術に従い、シンチレーション試料を製造した。
【0114】
同様の技術的スキームを使用して、組成:Ce0.002Li0.2Lu1.228-p0.67Y8Si6O25.9;Ce0.001Li0.1Lu8.3240.67YSi6O25.995;Ce0.001Li0.15Lu4.2790.67Gd5Si6O25.95;Ce0.001Li0.35Lu9.1090.67Tb0.2Si6O25.8;Ce0.002Li0.1Lu0.4230.67La8.9Si6O25.95を有する結晶の成長および切断を行った。
【0115】
実施例10 リチウム(Li)を1.0f.u.以上の量含有し、化学式:CexLi1+q+pLu9-x-pSi6O26-p(式中、xは1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり; qは0.3f.u.を上回らない量の値であり;pは0.25f.u.を上回らない量の値である)によって表される組成を有するルテチウム−セリウムシリケートに基づく変種#8および#9に従うシンチレーション物質
本シンチレーション物質の重要な識別技術の目安は、それらの融点であり、融点は、1700℃よりも少し高く、それは、ルテチウムオキシオルトシリケートの構造タイプにて結晶化される結晶についてよりも300℃以上低い。低い溶融温度は、Czochralski技術の場合、イリジウムるつぼの操作時間が10倍にも増加するので、Czochralski技術によって成長させられる結晶についての本質的な利点である。結晶成長がStepanov法によって行われる場合、長い使用時間がさらに重要である。Stepanov法の利用は、例えば、寸法2×2×100mm3または寸法1×1×50mm3を有する数種のシンチレーチング結晶を同時に成長させる可能性を開き、大きいブールを薄いロッドへ切断する費用のかかる工程をなくすことが可能である。切断の間に、恐らくは、単結晶物質の20%〜50%が失われ、これにより、医療用マイクロ陽電子発光コンピュータX線断層撮影(MicroPET)のためのシンチレーチング素子の製造コストがかなり高くなる。
【0116】
溶融物から輪郭を有する結晶を成長させるプロセスにて、結晶断面は、溶融物カラムの形によって決まる。溶融物を造形するためには、種々の物理的効果が使用される。正方形断面溶融物カラムの形成は、イリジウム成形機によって行われる。成形機のデザインおよび最適成長条件の計算法は、書籍に記載されている(P.I.Antonov,L.M.Zatulovski,A.S.Kostygov and others“An obtaining of profiled single crystal and products by Stepanov’s method ”,L.,“Nauka”,1981,page 280)。
【0117】
Stepanov法による輪郭を有する結晶の成長は、イリジウム成形機を備えたイリジウムるつぼから行われ、2×2mm2の外形エッジ断面を有し、これが、引張結晶の断面を決定する。六角形の構造タイプにて結晶化するCe0.045Li1.300Lu8.905Si6O25.995結晶を得るために、化学式:Ce0.045Li1.300Lu8.905Si6O25.995を有する化学量論的な組成の仕込みを使用した。高炉装入原料の調製のために、以下の方法を使用した。炭酸リチウム、酸化ルテチウムおよび酸化ケイ素の源試薬を完全に混合し、白金るつぼ内で1300℃で10時間かけて一部合成した。ついで、誘導加熱することにより、流動保護窒素雰囲気(99.7vol%の窒素と0.3vol%の酸素)中イリジウムつるぼ内で、粉末を溶融した。結晶を成長させる前に、溶融物に、酸化セリウムを加えた。成形機は、1〜9個の輪郭を有する結晶を同時に成長させることが可能であった。Czochralski技術により得られる結晶に、接種を行った。種結晶を六次の軸の結晶学的な方向に沿って切断した。輪郭を有する結晶を、回転させることなく、3〜20mm/時の速度で溶融物から引張った。結晶が長さ50mmに到達したら、引張速度を急激に増加させて成形機から引き離し、30分後、装置から取出した。
【0118】
輪郭を有する結晶ロッドを寸法2×2×10mm3を有する数個のシンチレーチング素子に切断した。Ce0.045Li1.300Lu8.905Si6O25.995結晶の研磨した試料を使用して、Table 1に示すパラメータの測定を行った。
【0119】
同様の技術的スキームを使用して、組成:Ce0.001LiLu8.998Si6O26;Ce0.04LiLu8.98Si6O26;Ce0.1LiLu8.9Si6O26;Ce0.002Li1.45Lu8.798-pSi6O25.8;Ce0.0015Li1.3Lu8.8985-pSi6O25.9を有する結晶の成長および切断を行った。
【0120】
実施例11 ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含有し、1.0f.u.を上回る量のリチウムLiを含有し、その組成が化学式:CexLi1+q+pLu9-x-p-zAzSi6O26-p(式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり; qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間の値であり;zは、5×10-4f.u.と8.9f.u.との間の値である)によって表されることを特徴とするシリケートに基づく変種#10に従うシンチレーション物質
六角形シンゴニーにて結晶化するCe0.045Li1.1Lu0.08La0.02Y8.755Si6O26の組成のシンチレーション物質を得るために、化学式:Ce0.045Li1.1Lu0.08La0.02Gd8.755Si6O26を有する化学量論的組成の仕込みを使用した。結晶の成長は、保護雰囲気(窒素99.5vol%および酸素0.5vol%)にて、40mm径のイリジウムるつぼから行い、引張速度は、5mm/時および10mm/時であり、回転速度は11rpmであった。これらの成長条件にて、ほぼ35mm長さおよび18mm径の結晶が成長し、ブールは白色〜黄色を有し、10mm/時の引張速度でさえ微細な散乱含有物を有していなかった。この結晶のガンマー線励起下での研磨した試料は、実施例1に記載した製造技術の“参照”Ce:Lu2SiO5結晶の光出力よりも約10倍低い光出力を示した。これに基づき、化学式:CexLi1+q+pLu9-x-p-zAzSi6O26-pを有する変種#10物質のその他の元素によるルテチウムイオンの置換の上限をz=8.9f.u.の値に設定した。この場合、結晶は、有意に低い密度および光出力を有するが、仕込み試薬のコスト、したがって、シンチレーション結晶の製造コストは明らかに減少した。このような結晶はセンサーに利用することに興味がもたれ、そのためにさらに重要なパラメータは、低価格及び例えばガンマー線量計を破壊しかねない外部暴露、例えば、高温、高湿、非常に高いレベルの放射線に対するシンチレータの高い抵抗性である。
【0121】
同様の技術的スキームを組成:Ce0.001Li1.2Lu3.898Gd5.1Si6O26;Ce0.04Li1.2Lu8.66Eu0.2Si6O25.9;Ce0.1Li1.2Lu7.9Sc0.8Si6O25.8;Ce0.002Li1.45Lu6.298Y2.5Si6O25.8;Ce0.0015Li1.3Lu8.3985La0.5Si6O25.9を有する結晶の成長のために使用した。
【0122】
前述の記載は本発明の好ましい実施態様を表すが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の付加および/または置換をなしうることが理解されよう。当業者であれば、本発明が、本発明の実施にて使用される構造、形態、配置、量比、物質および成分の多くの変形例を使用することができ、本発明の原則から逸脱することなく、特定の環境および作動条件に特に適合することが理解されるであろう。したがって、ここで開示した実施態様は、あらゆる点で、本発明を例示するものであり、本発明を何等限定するものではないと考えられる。
【0123】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、Lu2O3−SiO2系の相ダイヤグラムのフラグメントを示す。
【図2】図2は、Kyropoulos法によって成長させられた結晶の場合についての結晶およびるつぼの最適寸法のスキームを示す。
【図3】図3は、一部結晶化した溶融物の場合についてのKyropoulos法による結晶成長のフローチャートを示す。
【図4】図4は、Ce0.003Li1.08Lu8.947Si6O25.95結晶のX線粉末回折パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケート系シンチレーション物質において、その物質の組成が、化学式:
CexLu2+2y-xSi1-yO5+y
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質。
【請求項2】
単結晶の形の物質の組成が、化学式:
CexLu2.076-xSi0.962O5.038
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とする、請求項1に記載のシンチレーション物質。
【請求項3】
単結晶が、51.9%(Lu2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2の酸化物モル比によって定義される組成の仕込みからなる溶融物から方向性結晶化法によって成長させられることを特徴とする、請求項1に記載のシンチレーション物質を製造する方法。
【請求項4】
単結晶が、51.9%(Lu2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2の酸化物モル比によって定義される組成の仕込みからなる溶融物からCzochralski法によって成長させられることを特徴とする、請求項1に記載のシンチレーション物質を製造する方法。
【請求項5】
ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケート系シンチレーション物質において、単結晶の形の物質の組成が、化学式:
CexLu2+2y-x-zAzSi1-yO5+y
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tb、Caからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値であり;
zは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質。
【請求項6】
単結晶の形の物質の組成が、化学式:
CexLu2.076-x-zAzSi0.962O5.038
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tb、Caからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
zは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とする、請求項5に記載のシンチレーション物質。
【請求項7】
単結晶の形の物質の組成が、化学式:
CexLu2.076-x-m-nLamYnSi0.962O5.038
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
mは、0.05f.u.を上回らない値であり;
nは、1×10-4f.u.と2.0f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とする、請求項5に記載のシンチレーション物質。
【請求項8】
単結晶が、51.9%(Lu2O3+A2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2の酸化物モル比によって定義される組成の仕込みからなる溶融物からの方向性結晶化法によって成長させられ;ここで、Aが、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であることを特徴とする、請求項5に記載のシチンチレーション物質を製造する方法。
【請求項9】
過大の単結晶が、51.9%(Lu2O3+A2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2の酸化物モル比によって定義される組成の仕込みからなる溶融物からKyropoulos法によって成長させられ;ここで、Aが、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であることを特徴とする、請求項5に記載のシチンチレーション物質を製造する方法。
【請求項10】
ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケート系シンチレーション物質において、0.25f.u.を上回らない量のリチウムLiを含有し、組成が化学式:
CexLiq+pLu2-p+2y-xSi1-yO5+y-p
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.2f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質。
【請求項11】
0.25f.u.を上回らない量のリチウムLiを含有する単結晶の形の物質の組成が、化学式:
CexLiq+pLu2.076-p-xSi0.962O5.038-p
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.2f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とする、請求項10に記載のシンチレーション物質。
【請求項12】
単結晶が、51.9%(Lu2O3+Li2O+Ce2O3)/48.1%SiO2の酸化物モル比によって定義される組成の仕込みからなる溶融物から方向性結晶化法によって成長させられることを特徴とする、請求項10に記載のシチンチレーション物質を製造する方法。
【請求項13】
ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケート系シンチレーション物質において、0.25f.u.を上回らない量のリチウムLiを含有し、組成が化学式:
CexLiq+pLu2-p+2y-x-zAzSi1-yO5+y-p
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
yは、0.024f.u.と0.09f.u.との間の値であり;
zは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.2f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質。
【請求項14】
0.25f.u.を上回らない量のリチウムLiを含有する単結晶の形の物質の組成が、化学式:
CexLiq+pLu2.076-p-x-zAzSi0.962O5.038-p
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.02f.u.との間の値であり;
zは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.2f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.05f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とする、請求項13に記載のシンチレーション物質。
【請求項15】
単結晶が、51.9%(Lu2O3+Li2O+A2O3+Ce2O3)/48.1%SiO2の酸化物モル比によって定義される組成の仕込みからなる溶融物から方向性結晶化法によって成長させられることを特徴とする、請求項13に記載のシチンチレーション物質を製造する方法。
【請求項16】
ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケート系シンチレーション物質において、その物質の組成が、化学式:
CexLu9.33-x0.67Si6O26
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質。
【請求項17】
ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケート系シンチレーション物質において、リチウムLiを含有し、組成が化学式:
CexLiq+pLu9.33-x-p0.67Si6O26-p
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質。
【請求項18】
ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケート系シンチレーション物質において、リチウムLiを含有し、組成が化学式:
CexLiq+pLu9.33-x-p-z0.67AzSi6O26-p
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間の値であり;
zは、5×10-4f.u.と8.9f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質。
【請求項19】
ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケート系シンチレーション物質において、リチウムLiを含有し、組成が化学式:
CexLiLu9-xSi6O26
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質。
【請求項20】
ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケート系シンチレーション物質において、1.0f.u.を上回る量のリチウムLiを含有し、組成が化学式:
CexLi1+q+pLu9-x-pSi6O26-p
[式中、xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間の値である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質。
【請求項21】
ルテチウム(Lu)とセリウム(Ce)とを含むシリケート系シンチレーション物質において、1.0f.u.を上回る量のリチウムLiを含有し、組成が化学式:
CexLi1+q+pLu9-x-p-zAzSi6O26-p
[式中、Aは、Gd、Sc、Y、La、Eu、Tbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;
xは、1×10-4f.u.と0.1f.u.との間の値であり;
qは、1×10-4f.u.と0.3f.u.との間の値であり;
pは、1×10-4f.u.と0.25f.u.との間の値であり;
zは、5×10-4f.u.と8.9f.u.との間である。]
によって表されることを特徴とするシンチレーション物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−514631(P2007−514631A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539423(P2006−539423)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/RU2004/000094
【国際公開番号】WO2005/042812
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(506322916)ゼコテック・メディカル・システムズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】