説明

シートおよび車椅子

【課題】着座者の体圧分布の検出精度が高く、当該体圧分布を基に着座者の姿勢を判別可能であり、姿勢の判別結果に応じて警報を発生可能なシートおよび車椅子を提供することを課題とする。
【解決手段】シート93は、体圧センサユニット10と警報装置48とを備える。体圧センサユニット10は、体圧センサ5と制御部4とを備える。体圧センサ5は、体圧用センサ薄膜51と体圧用電極01X〜16X、01Y〜16Yと体圧用検出部A0101〜A1616とを有する。体圧センサ5は、着座者Mの体圧を電気量として検出可能である。制御部4は、当該電気量から着座者Mの体圧分布を演算し、体圧分布から着座者Mの姿勢を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者の姿勢を判別するシート、および当該シートが装着された車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の運転者の疲労を判断する姿勢認識装置が開示されている。同文献記載の姿勢認識装置は、複数のエアマットと、単一の圧力センサと、ポンプと、制御部と、を備えている。複数のエアマットは、運転席のシートクッション内部に配置されている。複数のエアマットと圧力センサとの間には、電磁バルブが介装されている。電磁バルブを切り替えることにより、複数のエアマットは、選択的に圧力センサに接続される。このため、複数のエアマットの内圧は、交互に測定可能である。
【0003】
制御部は、複数のエアマットの内圧パターンが予め決められた疲労状態認定パターンと一致した場合に、運転者が疲労したと判断する。そして、ディスプレイに警報画面を表示する。また、制御部は、運転者の疲労部位に対応したシート形状になるように、ポンプを駆動し、エアマットの内圧を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−55577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の姿勢認識装置の場合、複数のエアマットの内圧パターンを測定する際、電磁バルブを開閉制御して、複数のエアマットを単一の圧力センサに切り替えて接続する必要がある。電磁バルブの切替制御には時間がかかる。このため、実際の内圧パターンと制御部により検出される内圧パターンとの間に、タイムラグによる誤差が発生しやすい。
【0006】
また、エアマットAからエアマットBに圧力センサを繋ぎ換える際、エアマットAの残圧が残った状態で、エアマットBの内圧が測定されるおそれがある。このため、実際の内圧パターンと制御部により検出される内圧パターンとの間に、残圧による誤差が発生しやすい。また、残圧の影響を排除しようとすると、前記タイムラグによる誤差が大きくなってしまう。
【0007】
特許文献1の姿勢認識装置の場合、複数のエアマットが、運転者の体圧分布を認識するためのセンサと、運転者の体圧分布を調整するためのアクチュエータと、して兼用されている。このため、姿勢認識装置の部品点数を削減できる一方、上述したように検出精度が低下するという弊害が不可避的に発生してしまう。
【0008】
本発明のシートおよび車椅子は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、着座者の体圧分布の検出精度が高く、当該体圧分布を基に着座者の姿勢を判別可能であり、姿勢の判別結果に応じて警報を発生可能なシートおよび車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明のシート(seat)は、着座者が着座する座面の下側に配置され、ポリマーを含み該着座者の体圧により弾性的に変形可能な体圧用センサ薄膜と、該体圧用センサ薄膜に直接あるいは間接的に接続される複数の体圧用電極と、複数の該体圧用電極間に形成される複数の体圧用検出部と、を有し、該体圧用検出部に加わる体圧を電気量として検出可能なシート(sheet)状の体圧センサと、該電気量から該着座者の体圧分布を演算し、該体圧分布から該着座者の姿勢を判別する制御部と、を備える体圧センサユニットと、該着座者の姿勢に関する警報を発生する警報装置と、を備え、該制御部は、該着座者の姿勢の基準となる基準体圧分布と、該着座者の実際の体圧分布と、を格納する記憶部と、実際の該体圧分布と該基準体圧分布との較差に応じて、該警報装置を駆動する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、「直接あるいは間接的に」とは、体圧用電極と体圧用センサ薄膜とが接合されているかいないかによらず体圧用電極が体圧用センサ薄膜に直接接続されている場合と、体圧用電極と体圧用センサ薄膜との間に少なくとも一つの別の層(例えば電極保護層など)が介装されている場合と、を含む。
【0011】
本発明のシートは、体圧センサユニットと警報装置とを備えている。体圧センサユニットは、体圧センサと制御部とを備えている。制御部は、記憶部と演算部とを備えている。記憶部には、基準体圧分布と実際の体圧分布とが格納される。基準体圧分布は、着座者の姿勢の基準となる体圧分布(着座者の好適な姿勢をとったときの体圧分布)である。また、複数の着座者がシートを共用する場合は(勿論、シートは単一の着座者専用であってもよい)、基準体圧分布は、着座者毎の姿勢の基準となる体圧分布(着座者毎の好適な姿勢をとったときの体圧分布)である。実際の体圧分布は、体圧センサにより測定される。制御部は、実際の体圧分布と基準体圧分布との較差に応じて、警報装置を駆動する。本発明のシートによると、着座者の姿勢の崩れの程度に応じて、警報を発生することができる。
【0012】
また、体圧センサの体圧用センサ薄膜は、着座者の体圧により弾性的に変形可能である。このため、体圧センサは、柔軟であり、伸縮性および屈曲性を有している。したがって、体圧センサが、着座者の体に沿って変形しやすい。よって、体圧センサが、着座者の近く、例えば座面の真下に配置されている場合であっても、着座者は、硬さ、ごわつきなどの違和感を感じにくい。また、体圧センサは、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。このため、体圧分布の検出精度が高い。
【0013】
また、特許文献1の姿勢認識装置のように、電磁バルブを切替制御して、複数のエアマットを単一の圧力センサに交互に接続する必要がない。このため、実際の体圧分布と制御部により検出される体圧分布との間に、タイムラグによる誤差が発生しにくい。また、特許文献1の姿勢認識装置のように、エアマットの内圧を測定する必要がない。このため、実際の体圧分布と制御部により検出される体圧分布との間に、残圧による誤差が発生しない。したがって、体圧分布の検出精度が高い。
【0014】
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、前記シートは、介護用シートである構成とする方がよい。従来、着座者の姿勢は、介護者の目視により、定期的に確認されていた。このため、介護者の技量や確認の頻度によっては、着座者の姿勢の変化が判りにくい場合があった。この点、本構成によると、着座者の姿勢の変化を、着座者の体圧分布から測定することができる。このため、介護者の技量によらず、着座者の姿勢の変化を客観的にデータとして定量的に把握することができる。また、制御部を調整することにより、簡単に、測定の頻度を多くすることができる。このため、確実に、着座者の姿勢の変化を把握することができる。
【0015】
また、例えば、介護者が目視で判別しにくいような姿勢の崩れであっても、警報を発生することにより、当該姿勢の崩れを介護者に通知することができる。また、着座者が声を発することができない場合、着座者の声が小さい場合、認知症患者や知的障害者などが音声で異常を伝えられない場合であっても、姿勢の崩れを介護者に通知することができる。
【0016】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記体圧センサにおいて、複数の前記体圧用電極は、前記体圧用センサ薄膜の上側に配置される帯状の体圧用上側電極と、該体圧用センサ薄膜の下側に配置される帯状の体圧用下側電極と、からなり、複数の前記体圧用検出部は、該体圧用上側電極と該体圧用下側電極とが、上側または下側から見て、交差することにより形成され、前記体圧により該体圧用検出部の静電容量が変化する構成とする方がよい。
【0017】
つまり、本構成は、本発明のシートの体圧センサユニットの体圧センサとして、静電容量型センサを用いるものである。本構成によると、体圧用検出部の静電容量の変化を基に、体圧分布を測定することができる。
【0018】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記体圧用上側電極および前記体圧用下側電極は、ポリマーと、該ポリマーに充填される導電性フィラーと、を含んで形成される構成とする方がよい。
【0019】
本構成によると、体圧用上側電極、体圧用下側電極が、体圧用センサ薄膜と共に変形することができる。したがって、体圧用センサ薄膜の伸縮を、体圧用上側電極、体圧用下側電極が規制するおそれは小さい。また、体圧センサ全体の伸縮性がより大きくなる。このため、体圧センサが、着座者の体に沿って変形しやすい。また、体圧センサが、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。
【0020】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記演算部は、前記較差の程度に応じて、段階的に前記警報装置を駆動する構成とする方がよい。本構成によると、着座者の姿勢が異常になる一歩手前の状態(以下、「異常前兆状態」と称す。)や、着座者の姿勢が異常になった状態(以下、「異常状態」と称す。)の場合に、随時、警報を発生することができる。このため、着座者本人や第三者に、姿勢の崩れを段階的に通知することができる。
【0021】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記演算部は、前記警報装置が所定時間以上駆動されない場合、該警報装置を駆動する構成とする方がよい。
【0022】
本構成によると、体圧分布の経時的な変化が小さい場合、つまり着座者の姿勢の経時的な変化が小さい場合に、警報を発生することができる。このため、床ずれやエコノミークラス症候群などの発生を抑制することができる。
【0023】
(6)上記課題を解決するため、本発明の車椅子は、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成のシートを備えることを特徴とする。本発明の車椅子は、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成のシートを有している。このため、着座者の姿勢の崩れに応じて、警報を発生することができる。
【0024】
また、着座者の姿勢の変化を、着座者の体圧分布から測定することができる。このため、介護者の技量によらず、着座者の姿勢の変化を客観的にデータとして定量的に把握することができる。また、制御部を調整することにより、簡単に、測定の頻度を多くすることができる。このため、確実に、着座者の姿勢の変化を把握することができる。
【0025】
また、着座者の姿勢つまり体圧分布を、制御部の記憶部に格納することができる。このため、着座者の姿勢を定量化したデータを、保存することができる。したがって、着座者の着座方法などを、熟練の介護者が新人に教育する場合であっても、指導や訓練を簡単に行うことができる。すなわち、介護スキルの伝授が簡単である。また、着座者の姿勢を定量化したデータは、着座者の症状の把握や研究などにも有効利用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、着座者の体圧分布の検出精度が高く、当該体圧分布を基に着座者の姿勢を判別可能であり、姿勢の判別結果に応じて警報を発生可能なシートおよび車椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第一実施形態の車椅子の左側面図である。
【図2】同車椅子の上面図である。
【図3】同車椅子のシートの分解斜視図である。
【図4】同シートの体圧センサユニットの透過上面図である。
【図5】図4のV−V断面図である。
【図6】図4の体圧センサユニットの模式図である。
【図7】傾動時の警報発生方法のフローチャートである。
【図8】仙骨座り時の警報発生方法のフローチャートである。
【図9】立ち上がり兆候検出方法のフローチャートである。
【図10】動き度合検出方法のフローチャートである。
【図11】第二実施形態の車椅子のシートの体圧センサの上面図である。
【図12】第三実施形態の車椅子の座面付近の部分斜視図である。
【図13】切り取り線入りの体圧センサの斜視図である。
【図14】ダミー枠部材付きの体圧センサの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の車椅子の実施の形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明のシートの実施の形態についての説明を含むものである。
【0029】
<第一実施形態>
[車椅子の構成]
まず、本実施形態の車椅子の構成について簡単に説明する。図1に、本実施形態の車椅子の左側面図を示す。図2に、同車椅子の上面図を示す。なお、図中、左右方向は、後側から前側を見た場合を基準に、定義されている。また、図2においては、着座者Mを透過して示す。
【0030】
図1、図2に示すように、本実施形態の車椅子9は、フレーム90と、主輪91L、91Rと、キャスター92L、92Rと、シート93と、バックサポート94と、フットサポート95L、95Rと、アームサポート96L、96Rと、ハンドル97L、97Rと、を備えている。
【0031】
主輪91L、91Rは、フレーム90の左右両側に配置されている。主輪91L、91Rは、前後方向に回転可能である。キャスター92L、92Rは、フレーム90の左右両側であって、主輪91L、91Rの前側に配置されている。キャスター92L、92Rは、前後方向に回転可能である。また、キャスター92L、92Rは、左右方向に揺動可能である。
【0032】
シート93は、長方形板状を呈している。シート93は、フレーム90に固定されている。シート93は、シート本体930と、クッションカバー932と、クッション(図略)と、体圧センサユニット(図略)と、警報装置(図略)と、を備えている。クッションカバー932は、シート本体930の上側に配置されている。着座者Mは、クッションカバー932の上面(座面932c)に着座している。
【0033】
バックサポート94は、フレーム90に固定されている。バックサポート94は、いわゆる「背もたれ」である。着座者Mの背中は、バックサポート94により支持されている。フットサポート95L、95Rは、フレーム90の前端に固定されている。着座者Mの左足裏はフットサポート95Lにより、右足裏はフットサポート95Rにより、それぞれ支持されている。アームサポート96L、96Rは、フレーム90に固定されている。着座者Mの左前腕部はアームサポート96Lにより、右前腕部はアームサポート96Rにより、それぞれ支持されている。ハンドル97L、97Rは、フレーム90の後端に固定されている。車椅子9を移動させる際、ハンドル97L、97Rは介護者(図略)により把持される。
【0034】
[シートの構成]
次に、本実施形態のシートの構成について説明する。図3に、本実施形態のシートの分解斜視図を示す。なお、クッションカバー932を透過して示す。
【0035】
図3に示すように、本実施形態のシート93は、シート本体930と、クッション931と、クッションカバー932と、体圧センサユニット10と、警報装置48と、を備えている。クッションカバー932は、織布製であって、長方形袋状を呈している。クッションカバー932は、シート本体930の上面に配置されている。クッションカバー932の上面は、座面932cである。クッションカバー932は、蓋部932dを備えている。蓋部932dは、面ファスナー932aにより開閉可能である。また、蓋部932dには、窓部932bが開設されている。クッション931は、発泡ウレタン製であって、長方形板状を呈している。クッション931は、クッションカバー932の内部に収容されている。
【0036】
[体圧センサユニット、警報装置の構成]
次に、体圧センサユニット、警報装置の構成について説明する。体圧センサユニット10は、長方形のシート状を呈している。体圧センサユニット10は、クッションカバー932の内部に収容されている。また、体圧センサユニット10は、クッション931の下方に配置されている。
【0037】
体圧センサユニット10は、体圧センサ5と制御部4とを備えている。図4に、本実施形態の車椅子のシートの体圧センサユニットの透過上面図を示す。図5に、図4のV−V断面図を示す。なお、図4においては、上側基板52を省略して示す。また、体圧用下側電極01Y〜16Y、体圧用下側配線01y〜16yを細線で示す。また、体圧用検出部A0101〜A1616にハッチングを施して示す。図5においては、体圧用上側配線01x〜16x、体圧用下側配線01y〜16y、制御部4を省略して示す。
【0038】
(体圧センサ5)
図3に示すように、体圧センサ5は、クッション931とシート本体930との間に配置されている。体圧センサ5は、静電容量型センサである。図4、図5に示すように、体圧センサ5は、体圧用センサ薄膜51と、体圧用上側電極01X〜16Xと、体圧用下側電極01Y〜16Yと、体圧用検出部A0101〜A1616と、体圧用上側配線01x〜16xと、体圧用下側配線01y〜16yと、上側基板52と、下側基板53と、を備えている。なお、体圧用検出部の符号「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、体圧用上側電極01X〜16Xに対応している。下二桁の「△△」は、体圧用下側電極01Y〜16Yに対応している。
【0039】
体圧用センサ薄膜51は、発泡ウレタン製であって、長方形のシート(sheet)状を呈している。発泡ウレタンは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。
【0040】
上側基板52は、体圧用センサ薄膜51の上側に配置されている。上側基板52は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製である。上側基板52は、長方形板状を呈している。体圧用上側電極01X〜16Xは、上側基板52の下面に、合計16本配置されている。体圧用上側電極01X〜16Xは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。アクリルゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。導電性カーボンブラックは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。体圧用上側電極01X〜16Xは、各々、帯状を呈している。体圧用上側電極01X〜16Xは、各々、左右方向に延在している。体圧用上側電極01X〜16Xは、前後方向に、所定間隔毎に離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0041】
体圧用上側配線01x〜16xは、上側基板52の下面に、合計16本配置されている。体圧用上側配線01x〜16xは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。体圧用上側配線01x〜16xは、各々、線状を呈している。体圧用上側配線01x〜16xは、各々、体圧用上側電極01X〜16Xの右端と、制御部4と、を接続している。
【0042】
下側基板53は、体圧用センサ薄膜51の下側に配置されている。下側基板53は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製である。下側基板53は、長方形板状を呈している。体圧用下側電極01Y〜16Yは、下側基板53の上面に、合計16本配置されている。体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。アクリルゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。導電性カーボンブラックは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、帯状を呈している。体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、前後方向に延在している。体圧用下側電極01Y〜16Yは、左右方向に、所定間隔毎に離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0043】
体圧用下側配線01y〜16yは、下側基板53の上面に、合計16本配置されている。体圧用下側配線01y〜16yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。体圧用下側配線01y〜16yは、各々、線状を呈している。体圧用下側配線01y〜16yは、各々、体圧用下側電極01Y〜16Yの前端と、制御部4と、を接続している。
【0044】
体圧用検出部A0101〜A1616は、図4にハッチングで示すように、体圧用上側電極01X〜16Xと、体圧用下側電極01Y〜16Yと、が上側または下側から見て、交差する部分(重複する部分)に配置されている。体圧用検出部A0101〜A1616は、各々、体圧用上側電極01X〜16Xの一部と、体圧用下側電極01Y〜16Yの一部と、体圧用センサ薄膜51の一部と、を備えている。体圧用検出部A0101〜A1616は、合計256個(=16個×16個)配置されている。体圧用検出部A0101〜A1616は、体圧センサ5の略全面に亘って配置されている。
【0045】
(制御部4、警報装置48)
図3に示すように、制御部4は、着座者Mに干渉しないように(殊に着座者Mの臀部の丸みと干渉しないように)、体圧センサ5の右後隅に、一体的に配置されている。制御部4は、電池ケース46と、コネクタ47と、を備えている。警報装置48は、制御部4に一体的に配置されている。電池ケース46の内部には、ボタン型の電池(図略)が収容されている。コネクタ47には、ケーブル940を介して、外部端末941が接続可能である。蓋部932dが閉じている場合であっても、コネクタ47および警報装置48は、窓部932bから外部に露出している。
【0046】
外部端末941は、コネクタ47に常時接続されている訳ではない。外部端末941により、制御部4のRAM43、EEP−ROM44の内容を書き出すことができる。また、外部端末941により、制御部4のEEP−ROM44の内容を書き換えることができる。また、複数の車椅子の体圧センサユニット10の設定を揃えることができる。
【0047】
図4に示すように、制御部4は、電源回路41と、CPU(Central Processing Unit)42と、RAM(Random Access Memory)43と、EEP−ROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)44と、前記コネクタ47と、を備えている。CPU42は、本発明の「演算部」の概念に含まれる。RAM43、EEP−ROM44は、本発明の「記憶部」の概念に含まれる。
【0048】
電源回路41は、体圧用検出部A0101〜A1616に、正弦波状の交流電圧を印加する。交流電圧は、体圧用検出部A0101〜A1616に、走査的に順番に印加される。EEP−ROM44には、予め、体圧用検出部A0101〜A1616における静電容量と荷重(体圧)との対応を示すマップなどが、格納されている。RAM43には、体圧用上側配線01x〜16x、体圧用下側配線01y〜16yから入力されるインピーダンス、位相などが、一時的に格納される。
【0049】
CPU42は、RAM43に格納されたインピーダンス、位相を基に、体圧用検出部A0101〜A1616の静電容量を抽出する。そして、静電容量から、体圧センサ5における体圧分布を算出する。
【0050】
[傾動時の警報発生方法]
次に、本実施形態の車椅子における傾動時の警報発生方法について説明する。図6に、図4の体圧センサユニットの模式図を示す。なお、説明の便宜上、体圧用検出部A0101〜A1616を「・」で示す。また、体圧用上側電極01X〜16X、体圧用上側配線01x〜16x、体圧用下側電極01Y〜16Y、体圧用下側配線01y〜16yを省略して示す。図7に、傾動時の警報発生方法のフローチャートを示す。
【0051】
シート93上の着座者Mが傾動する場合のフローチャートは、傾動方向によらず、前後左右同様である。図7では、代表して、シート93上の着座者Mが左側に傾動する場合のフローチャートを示す。なお、図中、添字「0」は初期状態を、添字「1」は現在状態を、それぞれ示す。
【0052】
(ステップ1(S1))
ステップ1においては、着座者Mの初期状態(シート93に着座した直後)の体圧データがサンプリングされる。介護者は、着座者Mを、理想的な姿勢で車椅子9に着座させる。制御部4は、まず、この状態の体圧用検出部A0101〜A1616の体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)を、体圧センサ5を用いてサンプリングする。体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)は、本発明の「基準体圧分布」の概念に含まれる。
【0053】
次に、CPU42は、図6に示すように、シート93の左前部分1LFに対応する体圧用検出部(A0901→A0908→A1608→A1601で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり左前合計値DLF0を算出する。同様に、シート93の右前部分1RFに対応する体圧用検出部(A0909→A0916→A1616→A1609で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり右前合計値DRF0を算出する。同様に、シート93の左後部分1LBに対応する体圧用検出部(A0101→A0108→A0808→A0801で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり左後合計値DLB0を算出する。同様に、シート93の右後部分1RBに対応する体圧用検出部(A0109→A0116→A0816→A0809で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり右後合計値DRB0を算出する。
【0054】
並びに、CPU42は、図6に示すように、シート93の左横部分1SLに対応する体圧用検出部(A0101→A0105→A1605→A1601で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり左横合計値DSL0を算出する。また、CPU42は、シート93の右横部分1SRに対応する体圧用検出部(A0112→A0116→A1616→A1612で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり右横合計値DSR0を算出する。また、CPU42は、シート93の中央部分1Cに対応する体圧用検出部(A0106→A0111→A1611→A1606で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり中央合計値DC0を算出する。
【0055】
続いて、CPU42は、以下の式(1)から、総合計値DT0を算出する。
DT0=DLF0+DRF0+DLB0+DRB0・・・・・式(1)
また、CPU42は、以下の式(2)から、左合計値DL0を算出する。
DL0=DLF0+DLB0・・・・・式(2)
また、CPU42は、以下の式(3)から、右合計値DR0を算出する。
DR0=DRF0+DRB0・・・・・式(3)
また、CPU42は、以下の式(4)から、前合計値DF0を算出する。
DF0=DLF0+DRF0・・・・・式(4)
また、CPU42は、以下の式(5)から、後合計値DB0を算出する。
DB0=DLB0+DRB0・・・・・式(5)
それから、CPU42は、以下の式(6)から、左傾斜率PL0(%)を算出する。
PL0=(DL0/DT0)×100・・・・・式(6)
また、CPU42は、以下の式(7)から、右傾斜率PR0(%)を算出する。
PR0=(DR0/DT0)×100・・・・・式(7)
また、CPU42は、以下の式(8)から、前傾斜率PF0(%)を算出する。
PF0=(DF0/DT0)×100・・・・・式(8)
また、CPU42は、以下の式(9)から、後傾斜率PB0(%)を算出する。
PB0=(DB0/DT0)×100・・・・・式(9)
また、CPU42は、以下の式(10)から、両側合計値DS0を算出する。
DS0=DSL0+DSR0・・・・・式(10)
また、CPU42は、以下の式(11)から、中央集中率PC0(%)を算出する。
PC0=(DC0/DS0)×100・・・・・式(11)
体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)、左前合計値DLF0、右前合計値DRF0、左後合計値DLB0、右後合計値DRB0、左横合計値DSL0、右横合計値DSR0、中央合計値DC0、総合計値DT0、左合計値DL0、右合計値DR0、前合計値DF0、後合計値DB0、両側合計値DS0、左傾斜率PL0、右傾斜率PR0、前傾斜率PF0、後傾斜率PB0、中央集中率PC0は、RAM43に格納される。
【0056】
(ステップ2(S2))
ステップ2においては、着座者Mの現在の状態の体圧データがサンプリングされる。制御部4は、まず、現在の体圧用検出部A0101〜A1616の体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)を、体圧センサ5を用いてサンプリングする。体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)は、本発明の「実際の体圧分布」の概念に含まれる。
【0057】
次に、CPU42は、左前合計値DLF1、右前合計値DRF1、左後合計値DLB1、右後合計値DRB1、左横合計値DSL1、右横合計値DSR1、中央合計値DC1、総合計値DT1、左合計値DL1、右合計値DR1、前合計値DF1、後合計値DB1、両側合計値DS1、左傾斜率PL1、右傾斜率PR1、前傾斜率PF1、後傾斜率PB1、中央集中率PC1を算出する。なお、算出方法は、ステップ1同様(添字「0」が「1」に代わっただけ)である。これらのデータは、RAM43に格納される。
【0058】
(ステップ3(S3))
ステップ3においては、CPU42は、以下の式(12)から、左傾動率dPL(%)を算出する。なお、式(12)中、「ABS」は「絶対値」を示す。
dPL=ABS(PL0−PL1)・・・・・式(12)
【0059】
(ステップ4(S4))
ステップ4においては、CPU42は、左傾動率dPLと、しきい値SL1(=4%)と、を比較する。なお、しきい値SL1は、EEP−ROM44に格納されている。左傾動率dPLがしきい値SL1以下の場合は、後述するステップ9に進む。一方、左傾動率dPLがしきい値SL1超過の場合、つまり着座者Mが左側に倒れ込む兆候が確認できる場合は、ステップ5に進む。
【0060】
(ステップ5(S5))
ステップ5においては、図4に示すように、制御部4が警報装置48を駆動する。警報により、着座者M本人や介護者は、着座者Mが左側に倒れ込む可能性があることに気付くことができる。
【0061】
(ステップ6(S6))
ステップ6においては、CPU42は、左傾動率dPLと、しきい値SL2(=6%)と、を比較する。なお、しきい値SL2は、EEP−ROM44に格納されている。左傾動率dPLがしきい値SL2以下の場合は、特にアクションを行わず、ステップ2に戻る。左傾動率dPLがしきい値SL2超過の場合は、ステップ7に進む。
【0062】
(ステップ7(S7))
ステップ7においては、制御部4が、左傾動率dPLがしきい値SL2を超過している状態の経過時間Tを、カウントする。経過時間Tがしきい値T1(=5秒)以下の場合は、ステップ2に戻る。一方、経過時間Tがしきい値T1超過の場合、つまり着座者Mが左側に倒れ込む直前の状態にある場合は、ステップ8に進む。
【0063】
(ステップ8(S8))
ステップ8においては、図4に示すように、制御部4が警報装置48を駆動する。警報により、着座者M本人や介護者は、着座者Mが今にも左側に倒れ込んでしまいそうな状態にあることに気付くことができる。
【0064】
(ステップ9(S9)
ステップ4において、左傾動率dPLがしきい値SL1以下の場合は、ステップ9に進む。ステップ9においては、制御部4が、左傾動率dPLがしきい値SL1以下の状態の経過時間Tを、カウントする。経過時間Tがしきい値T2(=900秒)以下の場合は、特にアクションを行わず、ステップ2に戻る。制御部4は、ステップ2→ステップ3→ステップ4→ステップ9→再びステップ2という処理を、0.5秒毎に繰り返している。一方、経過時間Tがしきい値T2超過の場合、つまり着座者Mの姿勢の変化が極めて小さい場合は、ステップ10に進む。
【0065】
(ステップ10(S10))
ステップ10においては、図4に示すように、制御部4が警報装置48を駆動する。警報により、着座者M本人や介護者は、着座者Mの姿勢の変化が小さいことに気付くことができる。なお、制御部4は、着座者Mの立ち上がり兆候を検出すると、警報をリセットする。立ち上がり兆候の検出方法については後述する。
【0066】
[仙骨座り時の警報発生方法]
次に、本実施形態の車椅子における仙骨座り時の警報発生方法について説明する。すなわち、初期状態においては、着座者Mはシート93に比較的深く腰掛けている。このため、体圧センサ5において、左右両側の大腿骨の付け根付近の面圧が大きくなる。
【0067】
これに対して、現在状態において、着座者Mがシート93に浅く腰掛けている場合、言い換えると着座者Mが「仙骨座り」をしている場合、体圧センサ5において、臀部中央の仙骨付近の面圧が大きくなる。着座者Mが仙骨座りをしていると、仙骨付近に体重が集中するため、床ずれを起こすおそれがある。また、着座者Mがシート93から前方に滑り落ちるおそれがある。本実施形態の車椅子によると、このような仙骨座りの場合に、警報を発生することができる。
【0068】
図8に、仙骨座り時の警報発生方法のフローチャートを示す。なお、図中、添字「0」は初期状態を、添字「1」は現在状態を、それぞれ示す。また、ステップ1(S1)、ステップ2(S2)は、傾動時の警報発生方法と同様である。
【0069】
(ステップ32(S32))
ステップ32においては、CPU42は、以下の式(13)から、仙骨座り率dPC(%)を算出する。なお、式(13)中、「ABS」は「絶対値」を示す。
dPC=ABS(PC0−PC1)・・・・・式(13)
【0070】
(ステップ42(S42)以降)
ステップ42以降は、傾動時の警報発生方法のステップ4以降と同様である。以下、簡単に説明する。なお、以下のステップは、いずれも制御部4の指示により実行される。
【0071】
まず、仙骨座り率dPCとしきい値SL3(=4%)とを比較する(S42)。仙骨座り率dPCがしきい値SL3超過の場合、つまり着座者Mが仙骨座りをする兆候が確認できる場合は、警報装置48を駆動する(S52)。警報により、着座者M本人や介護者は、着座者Mが仙骨座りをする可能性があることに気付くことができる。
【0072】
次に、仙骨座り率dPCとしきい値SL4(=6%)とを比較する(S62)。仙骨座り率dPCがしきい値SL4超過の場合は、当該超過状態の経過時間Tをカウントする(S72)。経過時間Tがしきい値T3(=5秒)超過の場合、つまり着座者Mが仙骨座りの状態にある場合は、警報装置48を駆動する(S82)。警報により、着座者M本人や介護者は、着座者Mが仙骨座りをしていることに気付くことができる。
【0073】
一方、仙骨座り率dPCとしきい値SL3との比較の結果(S42)、仙骨座り率dPCがしきい値SL3以下の場合は、経過時間Tをカウントする(S92)。経過時間Tがしきい値T4(=900秒)超過の場合、つまり着座者Mの姿勢の変化が極めて小さい場合は、警報装置48を駆動する(S102)。警報により、着座者M本人や介護者は、着座者Mの姿勢の変化が小さいことに気付くことができる。
【0074】
[立ち上がり兆候検出方法]
次に、本実施形態の車椅子における、着座者の立ち上がり兆候検出方法について説明する。図9に、立ち上がり兆候検出方法のフローチャートを示す。なお、図中、添字「0」は初期状態を、添字「1」は現在状態を、それぞれ示す。また、ステップ1(S1)、ステップ2(S2)、ステップ5(S5)は、傾動時の警報発生方法と同様である。
【0075】
(ステップ30(S30))
ステップ30においては、CPU42は、以下の式(14)から、立ち上がり兆候度PS(%)を算出する。
PS={(DT0−DT1)/DT0}×100・・・・・式(14)
【0076】
(ステップ40(S40))
ステップ40においては、CPU42は、立ち上がり兆候度PSと、しきい値SL5(=40%)と、を比較する。なお、しきい値SL5は、EEP−ROM44に格納されている。立ち上がり兆候度PSがしきい値SL5以下の場合は、特にアクションを行わず、ステップ2に戻る。一方、立ち上がり兆候度PSがしきい値SL5超過の場合、着座者Mが、車椅子9から立ち上がろうとしているおそれがある。このため、ステップ5に進み、警報装置48を駆動する。警報により、着座者M本人や介護者は、着座者Mが車椅子9から立ち上がろうとしていることに気付くことができる。
【0077】
[動き度合検出方法]
次に、本実施形態の車椅子における、着座者の動き度合検出方法について説明する。図10に、動き度合検出方法のフローチャートを示す。なお、図中、添字「0」は初期状態を、添字「1」は現在状態を、それぞれ示す。また、ステップ1(S1)、ステップ2(S2)、ステップ5(S5)は、傾動時の警報発生方法と同様である。
【0078】
(ステップ50(S50))
ステップ50においては、CPU42は、まず、体圧用検出部A0101〜A1616毎に、所定時間T5(=3秒)前の体圧データDA2(0101)〜DA2(1616)と、現在の体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)と、の差分を算出する。
【0079】
一例として、A0101の場合は、以下の式(15)から、差分ΔA0101を算出する。なお、式(15)中、「ABS」は「絶対値」を示す。
ΔA0101=ABS{DA2(0101)−DA1(0101)}・・・・・式(15)
CPU42は、次に、ΔA0101〜ΔA1616を合計して、差分合計値dDsを算出する。
【0080】
(ステップ60(S60))
ステップ60においては、CPU42は、以下の式(16)から、動き度合PMを算出する。
PM=(dDs/DT1)×100・・・・・式(16)
【0081】
(ステップ70(S70))
ステップ70においては、CPU42は、動き度合PMと、しきい値SL6(=15%)と、を比較する。なお、しきい値SL6は、EEP−ROM44に格納されている。動き度合PMがしきい値SL6以下の場合は、特にアクションを行わず、ステップ2に戻る。一方、動き度合PMがしきい値SL6超過の場合、車椅子9上での着座者Mの動きが激しいおそれがある。このため、ステップ5に進み、警報装置48を駆動する。警報により、着座者M本人や介護者は、着座者Mの不意な離床、転落・転倒事故を予知(予防)することができる。また、警報により、介護者は、着座者Mの不快や苦痛などの非言語的メッセージの表出(訴え)を、早期に気付くことができる。
【0082】
[作用効果]
次に、本実施形態の車椅子の作用効果について簡単に説明する。本実施形態の車椅子9のシート93によると、着座者Mの姿勢の崩れの程度に応じて、警報を発生することができる。また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、介護者が目視で判別しにくいような姿勢の崩れであっても、警報を発生することにより、当該姿勢の崩れを着座者M本人や介護者に通知することができる(図7のS5、図8のS52)。また、着座者Mが声を発することができない場合、着座者Mの声が小さい場合、認知症患者や知的障害者などが音声で異常を伝えられない場合であっても、姿勢の崩れを介護者に通知することができる。
【0083】
また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、異常前兆状態(例えば、着座者Mが前後左右に倒れ込む兆候がある状態、着座者Mが仙骨座りをする兆候がある状態)の場合に、警報を発生することができる(図7のS5、図8のS52)。また、異常状態(例えば、着座者Mが前後左右に倒れ込む直前の状態にある状態、着座者Mが仙骨座りをしている状態)の場合に、警報を発生することができる(図7のS8、図8のS82)。このため、着座者M本人や介護者に、姿勢の崩れを二段階に通知することができる。
【0084】
また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、体圧分布の経時的な変化が小さい場合、つまり着座者Mの姿勢の経時的な変化が小さい場合に、警報を発生することができる(図7のS10、図8のS102)。このため、床ずれやエコノミークラス症候群などの発生を抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、着座者Mの姿勢の変化を、着座者Mの体圧分布から測定することができる。このため、介護者の技量によらず、着座者Mの姿勢の変化を客観的にデータとして定量的に把握することができる。また、制御部4を調整することにより、簡単に、測定の頻度を多くすることができる。このため、確実に、着座者Mの姿勢の変化を把握することができる。
【0086】
また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、着座者Mの姿勢つまり体圧分布を、制御部4に格納することができる。このため、着座者Mの姿勢を定量化したデータを、保存することができる。したがって、着座者Mの着座方法などを、熟練の介護者が新人に教育する場合であっても、指導や訓練を簡単に行うことができる。すなわち、介護スキルの伝授が簡単である。
【0087】
また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、着座者Mの姿勢を定量化したデータを、外部端末941により持ち出すことができる。このため、着座者Mの症状の把握や研究などにも有効利用することができる。また、反対に、外部端末941により、他の車椅子9のシート93のデータを制御部4に書き込むこともできる。このため、着座者Mが、車椅子9やシート93を交換した場合、あるいは車椅子9やシート93を複数保有している場合などに便利である。
【0088】
また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、体圧センサユニット10において、体圧センサ5と制御部4とが一体化されている。このため、体圧センサ5と制御部4とをケーブルで繋ぐ場合と比較して、ケーブルに着座者Mや介護者が干渉するおそれがない。したがって、車椅子9に対して着座者Mを着座、離座させる作業の際、体圧センサユニット10が邪魔になりにくい。また、制御部4は、体圧センサユニット10の右後隅に配置されている。このため、着座者Mの臀部が制御部4に干渉しにくい。
【0089】
また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、制御部4には、体圧センサユニット10を駆動する電源として、電池が収容されている。このため、外部電源と体圧センサユニット10とをケーブルで繋ぐ場合と比較して、ケーブルに着座者Mや介護者が干渉するおそれがない。この点においても、車椅子9に対して着座者Mを着座、離座させる作業の際、体圧センサユニット10が邪魔になりにくい。
【0090】
また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、体圧センサ5が静電容量型センサである。このため、体圧用検出部A0101〜A1616の静電容量の変化を基に、体圧分布を測定することができる。また、体圧用上側電極01X〜16Xおよび体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。このため、体圧用上側電極01X〜16Xが上側基板52と、体圧用下側電極01Y〜16Yが下側基板53と、共に屈曲することができる。したがって、上側基板52、下側基板53の屈曲を、体圧用上側電極01X〜16X、体圧用下側電極01Y〜16Yが規制するおそれは小さい。また、体圧センサ5全体の屈曲性がより大きくなる。このため、体圧センサ5が、着座者Mの体に沿って変形しやすい。また、体圧センサ5が、着座者Mの体の動きに対しても、追従して変形しやすい。
【0091】
また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、着座者Mの姿勢の崩れだけでなく、着座者Mの立ち上がり兆候や、着座者Mの動き度合を検出することができる。このため、介護者の負担を軽減することができる。
【0092】
また、本実施形態の車椅子9のシート93によると、既存の車椅子9に体圧センサユニット10をアドオンするだけで(クッションカバー932に体圧センサユニット10を入れるだけで)、車椅子9に、警報発生機能、立ち上がり兆候検出機能、動き度合検出機能を追加することができる。すなわち、車椅子9のグレードによらず、介護者にとって重要な上記機能を追加することができる。このため、汎用性が高い。
【0093】
<第二実施形態>
本実施形態の車椅子と第一実施形態の車椅子との相違点は、体圧センサユニットの体圧センサの構成が異なる点である。ここでは相違点についてのみ説明する。図11に、本実施形態の車椅子のシートの体圧センサの上面図を示す。図11に示すように、体圧センサ7は、体圧用基板76と、体圧用センサ薄膜77と、体圧用コネクタ78と、体圧用電極01a〜16a、01b〜16b、01c〜16c、01d〜16dと、体圧用配線79と、を備えている。
【0094】
体圧用基板76は、エラストマー製であって、長方形板状を呈している。体圧用基板76は、弾性変形可能である。体圧用センサ薄膜77は、体圧用基板76の上面に配置されている。体圧用センサ薄膜77は、導電性フィラーが配合されたエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)製であって、長方形膜状を呈している。体圧用センサ薄膜77における導電性フィラーの含有割合は、体圧用センサ薄膜77の体積を100vol%とした場合の約45vol%である。無荷重状態において、体圧用センサ薄膜77は、高い導電性を有する。一方、荷重が加わり体圧用センサ薄膜77が変形すると、導電性フィラー同士の接触状態が変化する。これにより、三次元的な導電パスが崩壊し、体圧用センサ薄膜77の電気抵抗は増加する。つまり、体圧用センサ薄膜77の電気抵抗は、弾性変形量が増加するのに従って増加する。体圧用コネクタ78は、正方形板状を呈している。体圧用コネクタ78は、体圧用基板76の上面の右後隅に配置されている。
【0095】
体圧用電極01a〜16aは、体圧用センサ薄膜77の左辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01b〜16bは、体圧用センサ薄膜77の右辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01a〜16aと体圧用電極01b〜16bとは、図11に一点鎖線で示すように、各々、左右方向に対向している。
【0096】
体圧用電極01c〜16cは、体圧用センサ薄膜77の後辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01d〜16dは、体圧用センサ薄膜77の前辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01c〜16cと体圧用電極01d〜16dとは、図11に一点鎖線で示すように、各々、前後方向に対向している。これら一点鎖線の交点(合計256=16×16)が、体圧用検出部である。体圧用電極01a〜16a、01b〜16b、01c〜16c、01d〜16dと、体圧用コネクタ78とは、各々、体圧用配線79により接続されている。
【0097】
制御部8は、電源回路81と、CPU82と、RAM83と、EEP−ROM84と、を備えている。CPU82は、本発明の「演算部」の概念に含まれる。RAM83、EEP−ROM84は、本発明の「記憶部」の概念に含まれる。制御部8は、体圧用コネクタ78と電気的に接続されている。EEP−ROM84には、予め、体圧用検出部における電気抵抗と体圧(荷重)との対応を示すマップが、格納されている。電源回路81は体圧用検出部に直流電圧を印加する。直流電圧は、合計256点の体圧用検出部に、走査的に順番に印加される。各体圧用検出部の電気抵抗は、RAM83に一時的に格納される。CPU82は、RAM83に格納された電気抵抗から、体圧用センサ薄膜77の荷重分布を算出する。警報装置85は、ケーブルを介して、制御部8に接続されている。
【0098】
本実施形態の車椅子は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の車椅子と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の車椅子によると、体圧センサ7の電気抵抗の変化から体圧分布を算出することができる。
【0099】
<第三実施形態>
本実施形態の車椅子と第一実施形態の車椅子との相違点は、スリングシートに体圧センサが組み込まれている点である。ここでは相違点についてのみ説明する。図12に、本実施形態の車椅子の座面付近の部分斜視図を示す。なお、図1、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0100】
図12に示すように、シート93は、いわゆるスリングシートである。シート93は、下層部933と上層部934とを備えている。下層部933は、織布製であって、車椅子の左右一対のフレーム90間に張設されている。下層部933の上面前縁には、左右一対の面ファスナー933aが取り付けられている。
【0101】
上層部934は、織布製であって、下層部933の上方に積層されている。上層部934は、下層部933よりも、伸縮しやすいように縫製されている。上層部934の上面には、座面934bが配置されている。上層部934の後縁は、下層部933に縫い付けられている。上層部934の下面前縁には、左右一対の面ファスナー934aが取り付けられている。上層部934の面ファスナー934aと下層部933の面ファスナー933aとは、上下方向に対向している。
【0102】
面ファスナー934aと面ファスナー933aとを係合させることにより、上層部934前縁と下層部933前縁との間の開口を、封止することができる。体圧センサ5は、当該開口を介して、上層部934と下層部933との間に介装されている。
【0103】
本実施形態の車椅子は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の車椅子と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の車椅子によると、体圧センサ5が、シート93に対して脱着自在である。
【0104】
<その他>
以上、本発明の車椅子の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0105】
体圧センサ5、7の構成、形状、大きさなどは、特に限定しない。また、体圧センサ5、7から出力される電気量についても、電気抵抗、静電容量などのいずれであってもよい。
【0106】
また、体圧センサ5、7において、体圧用センサ薄膜51、77のポリマーの種類は、特に限定しない。例えば、第一実施形態の静電容量型の体圧センサ5では、伸縮や屈曲の繰り返しに対する耐久性、および静電容量を大きくするという観点から、伸び、強度、および比誘電率が大きいエラストマーを用いることが望ましい。例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、およびこれらの発泡体や、ウレタンフォームなどが好適である。
【0107】
また、体圧用センサ薄膜51は、エラストマー以外の他のポリマー製、例えば伸縮性や屈曲性を有する布製であってもよい。この場合、体圧用センサ薄膜51に荷重が加わると、布を構成する繊維間の隙間が潰されて、布の厚さは小さくなる。つまり、体圧用センサ薄膜51の厚さが小さくなる。これにより、電極間距離は小さくなる。その結果、静電容量が大きくなり、荷重が検出される。
【0108】
布は、伸縮性、屈曲性を有するものであれば、織布、編み布、不織布のいずれであってもよい。布を使用することにより、伸縮柔軟性に優れた体圧用センサ薄膜51を、比較的低コストに実現することができる。また、布を構成する繊維間には隙間がある。このため、小さな荷重で押圧された場合でも、隙間が潰れることにより、布の厚さは変化しやすい。したがって、体圧用センサ薄膜51は、高い検出感度を有し、応答性に優れる。体圧用センサ薄膜51は、単層であっても、複層であってもよい。複層の場合、異なる材質の誘電層を用いてもよい。
【0109】
また、クッションカバー932に入れるクッション931としては、発泡ウレタン以外のエラストマー、樹脂の発泡体を用いてもよい。また、綿、羽毛、羊毛、パイプ材、ビーズ、そば殻、エラストマーなどを用いてもよい。また、金属製のばねや、液体、気体、ゲル状物質などの流動体を用いてもよい。すなわち、クッションや枕や布団やベッドなどに用いられる材料をクッション931として用いてもよい。
【0110】
また、体圧センサ5においては、上側基板52の下面に、体圧用上側電極01X〜16X、体圧用上側配線01x〜16xを下側から覆う、上側電極保護層を配置してもよい。同様に、下側基板53の上面に、体圧用下側電極01Y〜16Y、体圧用下側配線01y〜16yを上側から覆う、下側電極保護層を配置してもよい。すなわち、体圧用センサ薄膜51に、体圧用上側電極01X〜16Xと、体圧用下側電極01Y〜16Yと、が「間接的に」接続されていてもよい。こうすると、体圧用センサ薄膜51に電極、配線を配置しにくい場合(例えば体圧用センサ薄膜51が発泡体製の場合)であっても、上側基板52、下側基板53に電極、配線を配置することができる。
【0111】
また、第二実施形態の抵抗変化型の体圧センサ7では、導電性フィラーとの相溶性などを考慮して、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴムなどが好適である。なお、第二実施形態では、体圧用センサ薄膜77の電気抵抗は、弾性変形量(荷重)が増加するのに従って増加した。しかし、荷重が増加するのに従って、電気抵抗が低下するような体圧用センサ薄膜77を使用してもよい。体圧用センサ薄膜77の電気抵抗の挙動については、母材のエラストマーの種類、導電性フィラーの種類および配合量などにより、調整することができる。
【0112】
また、上側基板52、下側基板53の材質は、特に限定しない。絶縁性を有する樹脂、エラストマーを用いればよい。例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン共重合体ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンゴム、ブチルゴムを用いてもよい。なお、電極、配線は、上側基板52、下側基板53に印刷してもよい。
【0113】
また、第一実施形態の体圧センサ5においては、電極および配線を、エラストマーを含んで形成した。この場合、電極および配線が伸縮するため、上側基板52、下側基板53と一体となって変形することができる、という利点がある。電極および配線は、例えば印刷などを用いて、上側基板52、62、下側基板53、63、あるいは体圧用センサ薄膜51に直接形成してもよい。
【0114】
電極および配線に用いられるポリマーの材質は特に限定しない。ポリマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどのエラストマーであってもよい。また、ポリマーは、ポリエステル、エポキシ、ポリウレタンなどの樹脂であってもよい。こうすると、電極の伸縮性が高くなる。このため、電極と体圧用センサ薄膜51とが一体的に屈曲、伸縮しやすい。
【0115】
電極および配線に用いられる導電性フィラーの材質は特に限定しない。導電性フィラーは、炭素材料および金属から選ばれる一種以上からなるものであってもよい。金属としては、導電性の高い銀、銅等が好適である。よって、導電性フィラーとして、銀、銅等の微粒子、あるいは表面に銀等のめっきを施した微粒子を使用することができる。また、炭素材料は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、炭素材料からなる導電性フィラーを用いると、体圧センサ5、7の製造コストを低減することができる。炭素材料としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの誘導体、グラファイト、導電性炭素繊維などが挙げられる。特に、導電性カーボンブラック、グラファイト、導電性炭素繊維は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、これらの材料を用いると、体圧センサ5、7延いてはシート93の製造コストを削減することができる。また、電極、配線を、金属材料や、有機繊維の表面に金属めっきを施した材料などで形成してもよい。また、電極および配線を同じ材料製にすると、一度に印刷等で電極および配線を作製することができる。このため、体圧センサ5、7延いてはシート93の製造コストを削減することができる。
【0116】
また、上記実施形態においては、電極の数、配置場所については、特に限定しない。例えば、第一実施形態の体圧センサ5において、帯状の体圧用上側電極01X〜16X、体圧用下側電極01Y〜16Yの数、幅、長さについては、適宜決定すればよい。例えば、幅が大きいものと小さいものとを混合して、配置してもよい。また、体圧用上側電極01X〜16X、体圧用下側電極01Y〜16Yの配置形態を変えることにより、体圧用検出部A0101〜A1616の数、配置を調整すればよい。
【0117】
例えば、着座者Mの臀部対応部分に密に、脚部対応部分に粗に、体圧用検出部A0101〜A1616を配置してもよい。こうすると、体圧用検出部A0101〜A1616の配置数が少なくなる。このため、前後方向に並べられた、体圧用上側電極01X〜16Xの配置数が少なくなる。
【0118】
上記実施形態では、一層の体圧センサ5、7により、体圧分布を検出した。しかし、二層以上の体圧センサ5、7を使用して、体圧分布を検出してもよい。
【0119】
また、各種しきい値SL1〜SL6、T1〜T4、差分算出時間T5を設定可能な数値範囲は、特に限定しない。例えば、SL1、SL3を0%超過2%以下としてもよい。SL2、SL4を3%以上5%以下としてもよい。T1、T3を5秒以上10秒以下としてもよい。T2、T4を600秒以上1800秒以下としてもよい。T5を1秒以上5秒以下としてもよい。
【0120】
また、各種しきい値SL1〜SL6は、着座者Mによって個人差がある。このため、着座者MのADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)を定量化して各種しきい値SL1〜SL6を決定することにより、各種しきい値SL1〜SL6を用いる際の処理の判別精度を、より向上させることができる。
【0121】
また、本発明のシートは車椅子9のみならず、ソファー、オフィスチェアーなど他の椅子、自動車、電車、航空機、船舶などの乗物のシートに用いることができる。
【0122】
また、図3に示すように、シート93の構成は限定しない。クッションカバー932が配置されていなくてもよい。また、クッション931の上方、下方、内部のうち、少なくとも一箇所に、体圧センサユニット10が配置されていてもよい。また、クッション931が配置されていなくてもよい。また、車椅子のシート内部に一体的に体圧センサユニット10を組み込んでもよい。また、体圧センサ5と制御部4とがケーブル(例えば、フレキシブルケーブル、フラットケーブルなど)を介して接続されていてもよい。
【0123】
また、図3に示すように、座面932cから体圧用センサ薄膜51までの間に介装される部材が弾性を有し柔軟である場合(例えばエラストマー製の場合)、体圧センサユニット10は、着座者の着衣(ズボンやスカートなど)のシワを、体圧分布から検出することができる。このため、当該シワに基づく床ずれなどの発生を抑制することができる。
【0124】
また、図6に示すように、体圧用検出部A0101〜A1616の分割数は、四つ(左後部分1LB、左前部分1LF、右後部分1RB、右前部分1RF)、三つ(中央部分1C、左横部分1SL、右横部分1SR)に限定しない。基準体圧分布と実際の体圧分布との比較が容易なように、分割数を設定すればよい。あるいは、分割しなくてもよい。
【0125】
また、体圧用検出部A0101〜A1616を等分に分割しなくてもよい。すなわち、隣り合う分割領域間の境界線は、基準体圧分布と実際の体圧分布との比較が容易なように、適宜変更してもよい。
【0126】
また、図4に示すように、警報装置48の種類は特に限定しない。例えば、介護者の携帯電話に警報(声、警告音、メールなど)を送信してもよい。また、介護センターやナースステーションなどのディスプレイなどに警報を送信してもよい。また、警報の送信経路は、有線でも無線でもよい。
【0127】
また、制御部4が体圧用検出部A0101〜A1616からデータを検出するサンプリング頻度は特に限定しない。着座者の姿勢に異常が検出されない状態がある程度継続したら、サンプリング間隔を長くしてもよい。こうすると、制御部4の電源の消費電力が小さくなる。特に、体圧センサユニット10に静電容量型センサを用いる場合、静電容量型センサが本質的に省電力である(本質的に、荷重が入力されないと電流が流れない。)ことと相俟って、制御部4の電源の消費電力を一層小さくすることができる。
【0128】
図3に示すように、体圧センサ5をクッションカバー932に入れて使用する場合、クッション931よりも体圧センサ5の方が大きいと、体圧センサ5がクッションカバー932に入りにくくなる。また、クッション931よりも体圧センサ5の方が小さいと、クッション931に対して体圧センサ5が位置ずれを起こしやすくなる。このため、クッション931と体圧センサ5とは、大きさが揃っている方が好ましい。
【0129】
また、図12に示すように、第三実施形態においては、下層部933と上層部934との間の開口を、面ファスナー934aおよび面ファスナー933aにより、開閉可能にした。しかしながら、下層部933と上層部934との間に体圧センサ5を介装させた状態で、下層部933の外縁と上層部934の外縁とを全周的に接合してもよい。すなわち、下層部933と上層部934とを袋状に形成し、その中に体圧センサ5を封入してもよい。
【0130】
図13に、切り取り線入りの体圧センサの斜視図を示す。図14にダミー枠部材付きの体圧センサの斜視図を示す。なお、図13、図14において、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0131】
図13に示すように、体圧センサ5には、切り取り線56が記入されている。切り取り線56は、左右方向、前後方向に延在している。切り取り線56は、汎用のクッションの複数のサイズに対応している。図13の体圧センサ5によると、クッションよりも体圧センサ5の方が大きい場合に、適当な切り取り線56に沿って体圧センサ5を裁断することで、クッションと体圧センサ5との大きさを揃えることができる。
【0132】
図14に示すように、体圧センサ5の左右両縁には、スリット58が穿設されている。ダミー枠部材57は、当該スリット58に爪部57aが係合することにより、体圧センサ5の左右両縁に着脱可能に取り付けられている。ダミー枠部材57は、汎用のクッションの複数のサイズに応じて、複数用意されている。図14の体圧センサ5によると、クッションよりも体圧センサ5の方が小さい場合に、適当なダミー枠部材57を体圧センサ5に取り付けることで、クッションと体圧センサ5との大きさを揃えることができる。
【符号の説明】
【0133】
1LB:左後部分、1LF:左前部分、1RB:右後部分、1RF:右前部分、1C:中央部分、1SL:左横部分、1SR:右横部分、4:制御部、5:体圧センサ、7:体圧センサ、8:制御部、9:車椅子、10:体圧センサユニット。
01X〜16X:体圧用上側電極、01Y〜16Y:体圧用下側電極、01a〜16a:体圧用電極、01b〜16b:体圧用電極、01c〜16c:体圧用電極、01d〜16d:体圧用電極、01x〜16x:体圧用上側配線、01y〜16y:体圧用下側配線、41:電源回路、42:CPU(演算部)、43:RAM(記憶部)、44:EEP−ROM(記憶部)、46:電池ケース、47:コネクタ、48:警報装置、51:体圧用センサ薄膜、52:上側基板、53:下側基板、56:切り取り線、57:ダミー枠部材、57a:爪部、58:スリット、76:体圧用基板、77:体圧用センサ薄膜、78:体圧用コネクタ、79:体圧用配線、81:電源回路、82:CPU(演算部)、83:RAM(記憶部)、84:EEP−ROM(記憶部)、85:警報装置、90:フレーム、93:シート、94:バックサポート。
91L:主輪、91R:主輪、92L:キャスター、92R:キャスター、95L:フットサポート、95R:フットサポート、96L:アームサポート、96R:アームサポート、97L:ハンドル、97R:ハンドル。
930:シート本体、931:クッション、932:クッションカバー、932a:面ファスナー、932b:窓部、932c:座面、932d:蓋部、933:下層部、933a:面ファスナー、934:上層部、934a:面ファスナー、934b:座面、940:ケーブル、941:外部端末。
A0101〜A1616:体圧用検出部、DA0(0101)〜DA0(1616):体圧データ(基準体圧分布)、DA1(0101)〜DA1(1616):体圧データ(実際の体圧分布)、DB0:後合計値、DB1:後合計値、DC0:中央合計値、DC1:中央合計値、DF0:前合計値、DF1:前合計値、DL0:左合計値、DL1:左合計値、DR0:右合計値、DR1:右合計値、DS0:両側合計値、DS1:両側合計値、DSL0:左横合計値、DSL1:左横合計値、DSR0:右横合計値、DSR1:右横合計値、DT0:総合計値、DT1:総合計値、DLB0:左後合計値、DLB1:左後合計値、DLF0:左前合計値、DLF1:左前合計値、DRB0:右後合計値、DRB1:右後合計値、DRF0:右前合計値、DRF1:右前合計値、M:着座者、PB0:後傾斜率、PB1:後傾斜率、PC0:中央集中率、PC1:中央集中率、PF0:前傾斜率、PF1:前傾斜率、PL0:左傾斜率、PL1:左傾斜率、PR0:右傾斜率、PR1:右傾斜率、PM:動き度合、PS:立ち上がり兆候度、SL1〜SL6:しきい値、T:経過時間、T1〜T4:しきい値、dDs:差分合計値、dPL:左傾動率、dPC:仙骨座り率。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が着座する座面の下側に配置され、ポリマーを含み該着座者の体圧により弾性的に変形可能な体圧用センサ薄膜と、該体圧用センサ薄膜に直接あるいは間接的に接続される複数の体圧用電極と、複数の該体圧用電極間に形成される複数の体圧用検出部と、を有し、該体圧用検出部に加わる体圧を電気量として検出可能なシート状の体圧センサと、該電気量から該着座者の体圧分布を演算し、該体圧分布から該着座者の姿勢を判別する制御部と、を備える体圧センサユニットと、
該着座者の姿勢に関する警報を発生する警報装置と、
を備え、
該制御部は、該着座者の姿勢の基準となる基準体圧分布と、該着座者の実際の体圧分布と、を格納する記憶部と、実際の該体圧分布と該基準体圧分布との較差に応じて、該警報装置を駆動する演算部と、を備えるシート。
【請求項2】
前記体圧センサにおいて、複数の前記体圧用電極は、前記体圧用センサ薄膜の上側に配置される帯状の体圧用上側電極と、該体圧用センサ薄膜の下側に配置される帯状の体圧用下側電極と、からなり、
複数の前記体圧用検出部は、該体圧用上側電極と該体圧用下側電極とが、上側または下側から見て、交差することにより形成され、
前記体圧により該体圧用検出部の静電容量が変化する請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記体圧用上側電極および前記体圧用下側電極は、ポリマーと、該ポリマーに充填される導電性フィラーと、を含んで形成される請求項2に記載のシート。
【請求項4】
前記演算部は、前記較差の程度に応じて、段階的に前記警報装置を駆動する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシート。
【請求項5】
前記演算部は、前記警報装置が所定時間以上駆動されない場合、該警報装置を駆動する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のシート。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のシートを備える車椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−71098(P2012−71098A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101139(P2011−101139)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】