説明

シートディスプレイ

【課題】 開口率を高く維持できると共に、高品位な表示が可能で、しかも曲げが可能なシートディスプレイを提供する。
【解決手段】 有機エレクトロルミネセンス素子16がマトリクス状に配列された可撓性のある第1基板40と、前記有機エレクトロルミネセンス素子16を駆動するための少なくとも2つの有機トランジスタ素子20Aを含む画素駆動回路がマトリクス状に配列された可撓性のある第2基板42とを、前記エレクトロルミネセンス素子16と前記画素駆動回路18とが対向するよう配置すると共に、前記画素駆動回路と前記エレクトロルミネセンス素子16とが電気的に接続されるように前記第1基板40と前記第2基板42とを接合して一体化し、シートディスプレイを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス素子と、これを駆動する有機トランジスタ素子アレイを含む画素駆動回路とを積層してフレキシブルな基板で挟み込むようにしたシートディスプレイに係り、特に柔軟な有機半導体材料の特性を活かした集積回路、発光画素を作製することができる有機電界効果トランジスタで駆動する有機エレクトロルミネセンス素子からなるシートディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、柔軟性があり、軽量で薄い表示装置としてシートディスプレイが注目されている。このシートディスプレイは次世代の大画面テレビ、壁掛けテレビ、モバイル用表示装置等々に応用が期待されて久しい。このシートディスプレイを実現するために様々な技術が組み合わされ、また新たに開発されている。先に述べた用途から、シートディスプレイには文字情報の表示だけではなく、ハイディフィニションで高精細な静止画、動画表示を行うことが要求されている。このような要求に応えられるシートディスプレイに用いられる表示素子として有機エレクトロルミネセンス(以下、「有機EL」とも称す)素子がある。この有機EL素子は、電極間に形成された発光性有機層にホールと電子のキャリアを注入して再結合エネルギーを分子励起状態へと導き発光する機構である。この有機EL素子は自発光で、フルカラー表示が可能で、薄型固体膜、高速応答性、視野角依存性無し等の優れた特徴がある。
【0003】
この有機EL素子をRGBの発光色毎にアレイを形成すればフルカラーテレビが実現し、またこの駆動回路としてはアクティブマトリクス駆動回路が低消費電力、長素子寿命の点から有利である。
ここで有機EL素子の駆動方式は電流駆動であることから、これを駆動するアクティブマトリクス駆動回路はこれまでキャリア移動度に優れ、大電流のとれるポリシリコンを半導体に用いる薄膜トランジスタを用いていた(例えば非特許文献1)。しかし、最近では有機EL素子の発光効率が向上してきたことから、より移動度の小さいアモルファスシリコン半導体や有機半導体を用いた電界効果トランジスタを採用しても十分駆動が出来るように技術が進歩してきた。
【0004】
ここで用いられる電界効果トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極を配線した半導体層、ゲート絶縁層及びゲート電極を積層したような多層構造から形成される。それぞれの積層構造の違いにより大きく分けて、ボトムコンタクト型とトップコンタクト型が知られており、微細加工性、トランジスタ特性に一長一短はあるもののいずれも用いられている。
例えば図7は有機半導体を用いたボトムコンタクト型の電界効果トランジスタの一例を示す断面図である。この電界効果トランジスタは、透明な基板2上にゲート電極4を有し、このゲート電極4を含む表面全体にゲート絶縁膜6を形成している。そして、上記ゲート電極4を挟むようにして、上記ゲート絶縁膜6上にソース電極8とドレイン電極10とを配置し、更に、上記ソース電極8とドレイン電極10とを跨ぐようにして両電極8、10上に有機半導体12を形成し、これにより電界効果トランジスタを構成している。
【0005】
そして、無機半導体を用いた場合には、シリコン等の材料を用いるために製造工程におけるプロセス温度が高く、トランジスタの形成にプラスチック等のフレキシブルな基板を用いることができないが、上記のように有機半導体を用いた場合においては、無機半導体の製造工程と同様の加工技術を利用して電極回路を作製することができる。また電極間ギャップを被覆するよう有機半導体材料を蒸着又は塗布することができる。しかも、有機半導体を用いる場合には絶縁膜に有機材料を用いることが出来、かつ、成膜プロセス中の温度が低いため、作製する基板にフレキシブルなプラスチックを用いることができる、という利点を有する。
このような有機半導体を用いた有機トランジスタ素子と有機EL素子とよりなるシートディスプレイとしては、例えば特許文献1等に示されている。特許文献1には、有機トランジスタ素子と有機EL素子とを同一平面に並列に配置したボトムエミッション構造のシートディスプレイが開示されている。
【0006】
【非特許文献1】「24.4L:Late−News Paper:A13.0−inch AM−OLED Display with Top Emitting Structure and Adaptive Current Mode Programmed Pixel Circuit(TAC)」 SID 01 DiGEST(2001)P384〜386(Tatuya Sadaoka等)
【0007】
【特許文献1】特開2003−255857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、通常は有機トランジスタ素子と有機EL素子は同一画素内に作製されるため、上記特許文献1のシートディスプレイでは有機トランジスタ素子の大きさや数が大きくなると、その影響を受けて有機EL素子の表示面積を小さくしなければならなかった。このため、特許文献1のシートディスプレイでは開口率が小さくなり、充分な輝度を得るには有機トランジスタ素子や有機EL素子に高い電流を流す必要があり、この結果、消費電力が増加するのみならず、素子寿命が短くなる、という問題があった。この場合、非特許文献1に示すように、駆動回路を有機EL素子の下部に形成し、上部に形成した有機EL素子の陰極側から発光光を取り出すトップエミッション構造とすることも考えられる。しかし、このトップエミッション構造では、駆動回路に高温プロセスが必要なポリシリコンを用いているので、前述のように有機半導体や樹脂フィルムを用いることができないのみならず、有機EL素子上に高温プロセスを必要とする無機物の透明電極の薄膜を形成する必要があり、採用することができない。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものであり、その目的は、開口率を高く維持できると共に、高品位な表示が可能で、しかも曲げが可能なシートディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、第1のフレキシブル基板の一方の面に有機EL素子を形成し、第2のフレキシブル基板の一方の面に有機トランジスタ素子等よりなる画素駆動回路を形成し、両基板を有機EL素子と画素駆動回路とが対向して積層されるように接合することにより高開口率なボトムエミッション型のシートディスプレイを形成することができる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
【0010】
請求項1に係る発明は、有機エレクトロルミネセンス素子がマトリクス状に配列された可撓性のある第1基板と、前記有機エレクトロルミネセンス素子を駆動するための少なくとも2つの有機トランジスタ素子を含む画素駆動回路がマトリクス状に配列された可撓性のある第2基板とを、前記エレクトロルミネセンス素子と前記画素駆動回路とが対向するよう配置すると共に、前記画素駆動回路と前記エレクトロルミネセンス素子とが電気的に接続されるように前記第1基板と前記第2基板とを接合して一体化してなることを特徴とするシートディスプレイである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るシートディスプレイによれば、開口率を高く維持できると共に、高品位な表示ができ、しかも曲げが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係るシートディスプレイの一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明のシートディスプレイの1画素分の回路構成を示す図、図2はシートディスプレイの1画素の断面を示す模式図、図3は1画素の内の1つの有機トランジスタ素子と有機EL素子とを代表して示す断面図、図4は有機EL素子の断面を示す拡大図、図5はシートディスプレイの製造方法を示す工程である。
【0013】
まず、図1に示すように、ここでは本発明のシートディスプレイの1つのが素Pxの回路構成が示されており、このような画素Pxが縦横に多数個、マトリクス状(アレイ状)に平面的な配列されている。そして、この画素Pxの配列に沿って選択配線14Aとデータ配線14B及び電力配線14Cとが互いに直交するように設けられる。この場合、データ配線14Bと電力配線14Cとは互いに同じ方向に並列に設けられている。上記選択配線14Aには、図示しない駆動回路から選択信号が供給されて、当該画素を選択するようになっている。上記データ配線14Bには、図示しない駆動回路より画像信号であるデータ信号が供給される。また、上記電力配線14Cからは有機EL素子を駆動する電力が供給される。
【0014】
この1つの画素Pxは、1つの有機エレクトロルミネセンス素子16と、この素子16を駆動する1つの画素駆動回路18とにより構成される。この画素駆動回路18は、同じ構造になされた2つの有機トランジスタ素子20A、20Bと1つの容量素子(コンデンサ)22とにより構成される。
具体的には、上記2つの有機トランジスタ素子20A、20Bの内の一方の有機トランジスタ素子20Bは選択用トランジスタ素子として機能し、この選択用トランジスタ素子20Bのゲート電極24は上記選択配線14Aに接続されてこれをオン・オフし、ソース電極26は上記データ配線14Bに接続され、ドレイン電極28は他方の有機トランジスタ素子20Aのゲート電極30に接続される。
【0015】
また他方の有機トランジスタ素子20Aは駆動用トランジスタ素子として機能し、この駆動用トランジスタ素子20Aのソース電極32は上記電力配線14Cに接続され、ドレイン電極34は有機EL素子16の陽極と陰極の内のいずれか一方の電極に接続される。この有機EL素子16の他方の電極は接地される。また、上記容量素子22は、データ保持機能を有し、上記駆動用トランジスタ素子20Aのゲート電極30と電力配線14Cとの間に接続されている。
【0016】
上記1つの画素Pxの断面構造の模式図は図2に示されている、このシートディスプレイ38において、例えばフレキシブルな可撓性を有する透明な第1の基板40上に上記有機EL素子16が形成されており、他方、フレキシブルな可撓性を有する第2の基板42上には上記駆動用トランジスタ素子20Aと選択用トランジスタ素子20Bと容量素子22とが例えば平面的に並列に配列されて画素駆動回路18を構成している。そして、上記両基板40、42は、これらに設けられる上記有機EL素子16と画素駆動回路18とが対向するように重ね合わせて接合されて一体化される。この時、上記有機EL素子16と画素駆動回路18とが電気的に接合される。尚、上記各素子が形成された箇所以外の部分には絶縁材が形成されている。
【0017】
ここで上記図2に示す構造をより詳しく図3を参照して説明する。この図3では、画素駆動回路18の構成を代表して駆動用トランジスタ素子20Aを示しており、他の選択用トランジスタ素子20Bや容量素子22や各種の配線等の記載は省略している。
図3に示すように、透明な可撓性のある第1基板40上には、有機EL素子16が形成され、この周辺部は層間絶縁膜44により囲まれている。この有機EL素子16は、陽極45と陰極46との間に有機EL層47を介在して構成されている。これにより、図3中において下方に向けて光Lを放射するボトムエミッション型の有機EL素子となる。
【0018】
また可撓性のある第2基板42上(図中では下方)には、画素駆動回路18を代表して、前述したように有機トランジスタ素子よりなる駆動用トランジスタ素子20Aが形成されている。この駆動用トランジスタ素子20Aは、基本的には図7を参照して説明したように構成されている。尚、図3中においては、上下方向が図7の場合とは逆になっている。すなわち、第2基板42上にゲート電極30を有し、このゲート電極30の表面全体を覆うようにしてゲート絶縁膜48を形成している。そして、上記ゲート電極30を挟むようにして、上記ゲート絶縁膜48上にソース電極32とドレイン電極34とを配置し、更に、上記ソース電極32とドレイン電極34とを跨ぐようにして両電極32、34上に有機半導体50を形成し、これにより電界効果トランジスタとなる有機トランジスタ素子20Aを構成している。
【0019】
そして、この有機トランジスタ素子20Aの表面を含む全体は層間絶縁膜52で覆われている。この層間絶縁膜52の一部にドレイン34に通じる開口部が形成されて、この開口部にドレイン34に接続された引き出し電極54が埋め込まれている。
そして、上記引き出し電極54と有機EL素子16の陰極46とを電気的に接続するようにして両基板40、42は接合されて一体化されている。この場合、上記有機EL素子16と駆動用トランジスタ素子20A(画素駆動回路18)は互いに対向するように重ね合わされて積層され、両基板40、42により挟み込まれた構造となっている。尚、上記の場合、陰極46に代えて陽極45とドレイン34からの引き出し電極54とを接続するようにしてもよい。
【0020】
次に、上記シートディスプレイ38の製造方法について図4及び図5も参照して説明する。尚、図4中には、有機EL素子16を簡単化して示した模式図も併記されている。
図4に示すように、第1基板40上にはボトムエミッション型の有機EL素子16を形成する場合、有機物としては低分子型、高分子型いずれの材料も使用可能である。このボトムエミッション型の有機EL素子においても上述したように画素駆動回路18が別基板に形成されているため開口率を大きく設計することができ、高効率な有機EL素子を最も簡便な方法で作製できることが有利な点である。まず、第1基板40上には共通電極として陽極45、さらにホール注入層56、ホール輸送層58を積層し、その上に発光層60を成膜する。
【0021】
この発光層60はホスト材料と発光材料(ドーパント)を共蒸着して形成する。さらにホールブロック層62、電子輸送層64、電子注入層66を順次積層して設け、この上に陰極46を形成する。この陰極46の形成後に不要な部分は絶縁および平坦化のための層間絶縁膜44で被覆する。ここで、上記陽極45と陰極46との間の各層56〜66の積層構造が有機EL層47を構成する。この第1基板40の両面には後述する第2基板42と同様に単層或いは積層した無機膜、有機膜からなる保護膜を形成するのが望ましい。
【0022】
次に、第2基板42上には有機トランジスタ素子20Aとして高精細に形成し易いボトムコンタクト型の電界効果トランジスタ(FET)を形成する。そのトランジスタ素子の作製方法の一例は以下のようになる。まず、第2基板42にレジストを塗布し、フォトマスクを通じて露光現像するフォトリソグラフィ工程を通してレジストパターンを作製する。このレジストパターン上にゲート電極用の金属膜を真空蒸着により成膜し、その後フォトレジストを除去して電極膜をリフトオフしゲート電極30を得る(図5(A)参照)。
【0023】
次に、図5(B)に示すように、このゲート電極30上にゲート絶縁膜48を形成する。このゲート絶縁膜48の形成方法は種々の方法が用いられ、例えばゲート電極30を陽極酸化して陽極酸化膜よりなるゲート絶縁膜48を形成する方法や、高分子絶縁膜を塗布や印刷によりゲート電極30上に被覆してゲート絶縁膜48を形成する方法がある。図5(B)では陽極酸化によりゲート絶縁膜48が形成されている。ついで図5(C)に示すように、上記ゲート絶縁膜48上へソース電極32及びドレイン電極34を形成する。両電極32、34のパターン化方法はゲート電極30の場合と同様にフォトリソグラフィ技術を用いる。ついで図5(D)に示すように、ソース−ドレイン間へ有機半導体50を成膜する。ここでより高性能なトランジスタを得るためにゲート絶縁膜48とソース−ドレイン電極32、34との間に表面処理膜や、ソース−ドレイン電極32、34と有機半導体50との間に別な種類の表面処理膜を形成する場合もある。
【0024】
そして、図5(E)に示すように、上記有機半導体50の表面全体を含んでこれを埋め込んで不要部分を絶縁、平坦化するために層間絶縁膜52で被覆し、そして、この層間絶縁膜52にドレイン34に通じる開口部を形成すると共に、この開口部を引き出し電極54で埋め込んでドレイン34に対する導通を図る。ここで上記駆動用トランジスタ素子20Aの形成と同時平行的に他の選択用トランジスタ素子20Bや容量素子22、各種の配線14A、14B、14C等も適宜工程に応じて作製し画素駆動回路18が作製される。
【0025】
この第1基板42の表面には有機トランジスタ素子、有機EL素子を外部の水分および酸素から保護するため保護膜を形成しておくのが好ましく、この保護膜に無機膜、有機膜の単層もしくは積層膜であって水分、酸素の透過量を極めて低く抑える働きを持たせる。
ここで第1及び第2基板40、42の材質は、フレキシブル性、電気絶縁性、成型加工性、熱安定性、寸法安定性、低透湿性、低脱ガス性等が求められ、さらにトランジスタ工程におけるフォトリソグラフィ工程中のプロセス環境に耐性が必要である。具体的には、この基板40、42の材質としては、熱可塑性や熱硬化性の樹脂、エラストマー、ゴム等が用いられ、ポリイミド樹脂とポリイミド誘導体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド誘導体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリジメチルシリコーン樹脂等の高分子化合物からなるフィルムが主として用いられる。また、樹脂と無機成分を混合した基板も用いられる。また、表面に必要に応じて有機下地層を介した後、無機表面保護膜を形成しても良い。熱安定性であるガラス転移点温度は高いことが望ましく100℃以上であればプロセス上問題はない。中には250℃を越える材料もあり、特に好適である。
【0026】
また本発明において有機トランジスタ素子20A、20Bに用いられる電極材料としては、金、銅、アルミニウム、白金、クロム、パラジウム、インジウム、タンタル、モリブテン、ニッケル、マグネシウム、銀、鉄、ガリウム等の金属やこれらの合金あるいは積層構造、さらに、スズ・インジウム酸化物、ポリシリコン、アモルファスシリコン、スズ酸化物、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン等の酸化物、ポリチオフェンとその誘導体、ポリエチレンジオキシチオフェンとその誘導体、ポリアニリンとその誘導体、ポリアセチレンとその誘導体等にドーピングを行った導電性高分子が挙げられる。
また本発明に係る有機トランジスタ素子20A、20Bのソース電極及びドレイン電極の電極回路の線幅は、好ましくは0.1μm〜1000μm、より好ましくは1〜50μmである。ここで、線幅が1μmより小さくなるにつれ、電気抵抗が大きくなり、同時に断線が起こり易くなり、逆に50μmより大きくなるにつれ、回路の集積率が低くなる。両電極間のチャネル形成部の距離は50nm〜100μmであり、チャネル長が小さく、チャネル幅が大きい方がドレイン電流は大きくとれ、特に電流駆動させる有機EL素子16には有利であるため、作製方法をも考慮すると1μm〜10μmが好適である。チャネル幅を大きくするには画素面積を有効に使い櫛形形状等も用いられる。
【0027】
また有機トランジスタ素子20A、20Bのゲート絶縁膜48は、金属酸化物、金属窒化物等の金属化合物あるいは高分子材料が用いられる。具体的には、SiO 、Si 、SiON、Al 、アモルファスシリコン、Ta 、TiO 、ZrO 、Nb 、HfO 、ポリイミド樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリフェノール誘導体、ポリ尿素、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリシリコーンやその誘導体のポリジメチルシロキサン等のポリマー薄膜等が用いられる。通常、ゲート絶縁膜の比誘電率が大きい方がドレイン電流は大きくなるが、リーク電流も大きくなることも知られている。これら金属酸化物の内いくつかの種類はゲート電極膜の作製後にホウ酸アンモニウム溶液中等で陽極酸化により形成される。好適な膜厚は20nm〜200nmであるが膜厚がリーク電流等のトランジスタ特性に大きく効くことがわかる。
【0028】
有機半導体50を積層する方法としては、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、引き上げ法、ラングミュアブロジェット法、スプレイ法、インクジェット法、シルクスクリーン法、加熱転写法等が挙げられる。本発明に係る有機半導体50の材料としては、p型材料として、ペンタセン、アントラセン、ピレン等のアレーン類及びそれらのオリゴマーあるいはポリマー、チオフェン、ピロール、フラン等のヘテロ環化合物及びそれらのオリゴマーあるいはポリマー、トリフェニルアミン誘導体やフタロシアニン誘導体とその銅、金、白金、バナジウム、ルテニウム等の錯体、キノリノールやビピリジンオキサゾール等の各誘導体とアルミニウム、亜鉛、ホウ素、イリジウム、白金、ルテニウム等の金属錯体、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、ポリチオフェン等のπ共役ポリマーの誘導体等が挙げられる。またn型材料としてはそれらのパーフルオロ化合物等が用いられる。特に、安定性やキャリア移動度の大きさの点から、テトラセン、ペンタセン、ルブレン、オリゴチオフェン、ポリチオフェンが好適に用いられる。
【0029】
有機半導体50は、ゲート絶縁膜48、ソース電極32、ドレイン電極34上に形成されることになるが、この際、各層間の接合を欠陥無く行わないとトランジスタ特性が得られないことがある。このため、金属酸化物上の金属電極、金属酸化物上の有機半導体、有機半導体上の金属電極といった、有機−無機間の接合状態が大きく影響する。こうした場合、各層間に表面処理を行うと良い。これには、分子鎖に極性基を有する界面活性剤が用いられる。この種類としてはシランカップリング剤、飽和あるいは不飽和炭化水素鎖片方あるいは両方の端部にチオール、アルコール、カルボニル、アルキル、アルコキシ等の極性基が結合した分子が用いられる。これを自己組織化手法や単分子膜吸着法により結合させることが出来る。
【0030】
他方、上記有機EL素子16は陽極45が基板貫通孔(図示せず)の導電体と接続されて例えば接地される。この陽極45としては仕事関数が大きな材料が必要とされる。例えばインジウムスズ酸化物(ITO)の他に金属電極としてクロム、ニッケル、金、白金、銀、銅、アルミニウム等の仕事関数が大きな金属が用いられる。ホール注入層56、ホール輸送層58はホール移動度の高い、トリアリールアミン系、スターバーストアミン系、カルバゾール系高分子、ポリチオフェン化合物等の芳香族へテロ環化合物が好適に用いられる。発光層60は蛍光発光材料、燐光発光材料いずれの発光材料も、低分子、高分子材料共用いることが出来る。高効率な発光効率を有するリン光材料としてはイリジウムを中心金属とする芳香族ヘテロ複素環との有機金属錯体が用いられる。
【0031】
ホールブロック層62は特にリン光発光材料を高効率で発光させるために効果的であり、フェナントロリン化合物、オキサジアゾール化合物等が用いられる。電子輸送層64は電子移動度の高いトリスキノリノラトアルミニウム、シロール化合物等が用いられる。電子注入層66はLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg等低仕事関数金属、及びそれらの酸化物、窒化物、フッ化物、硫化物等の薄膜が用いられる。陰極46としては仕事関数の小さい金属が用いられLi、Na、K、Rb、Cs、Ca、Baのアルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al等を用いることが出来る。またこれらの金属と組み合わせて、ITO、IZO等の透明電極も使用できる。
【0032】
また第1及び第2基板40、42を通して進入する外部からの水、水蒸気、酸素と素子を遮蔽するために前述したように保護膜を用いるのがよく、これは基板の両面に形成される。この保護膜としては、Si、Al等の金属酸化物、窒化物、酸化窒化物等の無機化合物単体あるいは紫外線硬化型、熱硬化型のエポキシ、ウレタン、アクリル、ポリイミド、ポリアミド等から構成される高分子材料単体あるいは両者の無機化合物と有機化合物との積層膜が用いられる。無機化合物の成膜方法はCVD、スパッタリング等が主として用いられ、有機化合物は塗布型やモノマー蒸着後重合法が用いられる。
また層間絶縁膜44、52は通常の層間絶縁膜や高分子材料が用いられる。この材料としてはポリイミド、ポリアミド、アクリル、エポキシ、ウレタン等の高分子材料が工程上も簡便に用いることができ、感光性基を有していればパターニングが可能であり、更に適している。
【0033】
<実施例>
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
(1)厚さ100μmの5cm×5cm高耐熱ポリカーボネート(PC)基板を第1及び第2基板40、42として用い、保護膜としてSi 膜を厚さ100nmで両面に形成した。そして、16個×16個の画素Pxを2mmピッチ、画素エリアを1mm×1mmに配列するよう以下に示すようなパターン形成を行った。
(2)上記第2基板42を用い、これにレジスト塗布を行い、ゲート電極パターンのフォトマスクを介して露光し、ついで現像を行ってゲート電極、ゲート絶縁膜を形成するパターンを開口させた。これに電極用金属としてTa膜をパターン線幅50μm厚さ200nmで作製した。そして、ゲート絶縁膜を形成する箇所以外をレジストパターンで露光現像して被覆した後にTa膜をホウ酸アンモニウム溶液中に浸積し、70V(ボルト)の電圧印加で陽極酸化を行いTa 膜よりなるゲート絶縁膜48を130nmの厚さで作製した。結果としてゲート電極30の膜厚は70nmとなった。
【0034】
(3)次いでソース電極32及びドレイン電極34としてCr5nm/Au30nmの2層膜を、パターン形成済みフォトマスクを介してレジストの露光現像を行った後、レジストパターン上に成膜してリフトオフによりソース電極32及びドレイン電極34のパターンを形成した。さらに蒸着により有機半導体50として、p型材料であるペンタセンをメタルマスクを通じて50nmの厚さで成膜した。ここまでの工程でもう一つの有機トランジスタ素子20B、及び容量素子22も同時に作製された。さらに各種の配線14A、14B、14C等をAlでパターンに沿って形成した。
【0035】
この方法で作製した1個の有機トランジスタ素子のトランジスタ特性の一例を図6に示す。ソース−ドレイン間電圧Vdsが−10V、ゲート電圧Vgが−15Vにおいてドレイン電流Idsは100μA以上が得られている。発光画素面積を1mm×1mm、有機EL素子16の発光における輝度電流効率を10cd/Aとすると、1000cd/m の発光輝度が得られることになり、有機EL素子16の駆動に十分な電流量が得られていることが確認できた。
ついで有機トランジスタ素子上にSi 保護膜を形成した。さらにその上部に層間絶縁膜52として感光性ポリイミド前駆体を塗布してドレイン電極34に対応する部分にフォトリソグラフィにより開口部を形成した後200℃で加熱を行い絶縁用ポリイミド膜を形成した。そして、開口部には引き出し電極54としてAlを用いて充填するよう形成した。
【0036】
(4)ついで第1基板40を用いて有機EL素子16を成膜した。この陽極45としてITO、ホール注入層56として銅フタロシアニン、ホール輸送層58としてα―NPD、発光層60としてホスト54aCBPとゲスト54b6wt%―Ir(ppy)3の共蒸着膜、ホールブロック層62としてBCP、電子輸送層64としてAlq3、電子注入層66としてLiF、陰極46としてAlをそれぞれ用い、それぞれ100、40、40、35、10、0.5、100nmの厚さでメタルマスク蒸着により成膜した。
(5)両基板40、42をドレイン電極34の引き出し電極54と有機EL素子16の陰極46とが接合するよう位置合わせを行い加圧して貼り合わせた。両基板40、42で素子が形成されていない部分には封止用熱硬化性接着剤を形成し、貼り合わせ後80℃で1時間硬化させた。この場合、上記各金属膜の成膜を真空雰囲気中で成膜し、N ガスやHeガス等の不活性ガス中に保持すれば、引き出し電極54や陰極46の表面は共に活性状態が維持されているので、加圧により容易に接合される。尚、この場合、機械的接合を強固にするためにハンダボールや異方性導電フィルム(ACF)等を用いてもよい。
【0037】
上記のように形成したシートディスプレイにおいて、引き出し電極54より駆動信号(画像信号)を印加して画素数16×16個を形成した有機EL素子が発光し有機トランジスタ素子によりアクティブマトリクス駆動していることを確認した。
上述のように形成した本発明のシートディスプレイは、低消費電力、高速なスイッチング素子である有機トランジスタ素子を用いており、高品位表示画質、低消費電力、薄型軽量等の利点を有するアクティブマトリクス駆動のシートディスプレイとして、薄型据え置きテレビ、壁掛けテレビ、パソコン用モニタ、携帯電話表示画面、携帯情報端末機器表示画面、携帯オーディオ/ビデオ視聴端末機器、電子広告、電子書籍、ウェアラブルディスプレイ等に広く利用され汎用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のシートディスプレイの1画素分の回路構成を示す図である。
【図2】シートディスプレイの1画素の断面を示す模式図である。
【図3】1画素の内の1つの有機トランジスタ素子と有機EL素子とを代表して示す断面図である。
【図4】有機EL素子の断面を示す拡大図である。
【図5】シートディスプレイの製造方法を示す工程である。
【図6】有機トランジスタ素子のトランジスタ特性の一例を示グラフである。
【図7】有機半導体を用いたボトムコンタクト型の電界効果トランジスタの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
14A…選択配線、14B…データ配線、14C…電力配線、16…有機EL素子、18…画素駆動回路、20A…駆動用トランジスタ素子(有機トランジスタ素子)、20B…選択用トランジスタ素子(有機トランジスタ素子)、22…容量素子、24…ゲート電極、26…ソース電極、28…ドレイン電極、30…ゲート電極、32…ソース電極、34…ドレイン電極、38…シートディスプレイ、40…第1基板、42…第2基板、45…陽極、46…陰極、47…有機El層、48…ゲート絶縁膜、50…有機半導体、54…引き出し電極、Px…画素。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エレクトロルミネセンス素子がマトリクス状に配列された可撓性のある第1基板と、前記有機エレクトロルミネセンス素子を駆動するための少なくとも2つの有機トランジスタ素子を含む画素駆動回路がマトリクス状に配列された可撓性のある第2基板とを、前記エレクトロルミネセンス素子と前記画素駆動回路とが対向するよう配置すると共に、前記画素駆動回路と前記エレクトロルミネセンス素子とが電気的に接続されるように前記第1基板と前記第2基板とを接合して一体化してなることを特徴とするシートディスプレイ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−243127(P2006−243127A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55682(P2005−55682)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】