説明

シートバック取付部の補強構造

【課題】リヤシートバック取付部を補強することによる質量増加と高コスト化を抑制しつつ、リヤシートバック取付部を十分に補強することができるリヤシートバック取付部の補強構造を提供する。
【解決手段】自動車のセンタフロアトンネル7の前後方向中央を跨ぐように配設される断面凸状の補強プレート8と、補強プレート8と共に前下部9aがリヤフロアパネル6に対して共締めされ、後下部9dがリヤフロアパネル6の後端に位置するリヤクロスメンバ5bに対して締結されるリクライニングブラケット9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のリクライニング式シートバックの取付部の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のシートにおいては、シートバックがシートクッションから独立してリクライニング可能に構成されたものが多い。この種のリヤシートバックは、車体の一部であるフロアパネルに固定された、リクライニングブラケットと呼ばれる、シートバックを軸支するためのシャフトを支持する支持部材によって、前倒及び後倒し得るように軸支されて構成されている。例えば、リクライニングブラケットは、図2に示すように、リヤシートバックにおいて、車幅方向の左右両端にそれぞれ一つずつ、中央部左右に一つずつの合計四個が適宜間隔を存して配設されるというように複数個併設され、左右のリヤシートバックを独立にリクライニングできるように構成される。
【0003】
ところで、自動車の急停止時などにおいては、積荷が車室最後部の荷室から前進して、リヤシートバックの後方に衝突する場合がある。また、このとき、シートベルトの引っ張り荷重がリヤシートバックに掛かる。この場合、リヤシートバックを支持するリクライニングブラケットには、リクライニングブラケットを前転させるような力が掛かる。このような場合には、リクライニングブラケットを支持するリヤフロアパネルに対して強い下向きの入力が起こる。
【0004】
そのため、従来、この種のリヤシートバック102の取付部103は、図3に示すように、リヤシートバック102下部後方において車幅方向に延びたクロスメンバ105からリヤフロアパネル106前端部にかけて架橋された、センタフロアトンネル107に沿って車両前後方向に延びた断面略矩形状のシートリインフォース108上に、リクライニングブラケット109の一つが固定された補強構造を採り、自動車の急減速時などにおいてリヤシートバック102に掛かる荷重をクロスメンバ105a,105bなどに分散させて、リヤフロアパネル106への入力を抑制するように構成されている。
このような従来のシートバックの取付部構造が特許文献1〜3に開示されている。
【特許文献1】特開2008−268810号公報
【特許文献2】特開平10−129534号公報
【特許文献3】特開平07−144662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のリヤシートバック取付部の補強構造101では、シートリインフォース108が断面コ字状の上側部材108aと下側部材108bとが組み合わされた構成となっていることから、構成部品点数が多く重量も大きくなる。また、組み合わせにはアーク溶接108cによる接合が必要で、コスト高となるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みて創作されたものであり、シートバック取付部を補強することによる質量増加と高コスト化を抑制しつつ、シートバック取付部を十分に補強することができるシートバック取付部の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、リクライニング式シートバックの車体に対する取付部の補強構造であって、車体のセンタフロアトンネルの前後方向中央部には、センタフロアトンネルの凸状の断面形状に沿って形成された補強プレートが、センタフロアトンネルを跨ぐようにフロアパネルに配設されたことを特徴としている。
【0008】
シートバックを軸支するためのシャフトを支持するリクライニングブラケットは、補強プレートを介してフロアパネルに固定されることが望ましい。
【0009】
リクライニングブラケットは、前下部が補強プレートを介してフロアパネルに、後下部がシートバックの下部後方の車幅方向に延びたクロスメンバに対して固定されることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シートバック取付部の補強構造において、断面凸状に形成されたセンタフロアトンネルの前後方向中央部に、このセンタフロアトンネルに沿って形成された補強プレートを該センタフロアトンネルを跨ぐように配設し、車幅方向における中央付近に位置するリクライニングブラケットの前下部をセンタフロアトンネルを介してフロアパネルに対して固定すると共に、該リクライニングブラケットの後下部を、シートバックの下部下方において車幅方向に延びたクロスメンバに対して固定したことにより、低コストで軽量でありながら、シートバックに掛かる荷重がリクライニングブラケットを前転させるように該リクライニングブラケット前下部を下方に押し込む入力となるとき、リクライニングブラケットの前下部の変形が始まると同時に、補強プレートがセンタフロアトンネルの前後方向中央部の外形全体に当接することによって、荷重をより広い面積で受けさせ、センタフロアトンネルに分散させて、フロアパネルやシートバック全体の変形や移動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図1を参照しながら詳細に説明する。図示の実施形態のリヤシートバック取付部の補強構造1は、運転席(図示省略)と助手席(図示省略)とから成るフロントシート(図示省略)と、このフロントシートの後方に配設されるリヤシート(一部図示省略)と、リヤシートの後方に位置する荷室とを有する自動車(図示省略)において、リヤシートを構成するリヤシートバック2を車両(一部図示省略)に対してリクライニング可能に取り付ける部分の補強のためのものである。
【0012】
リヤシートバック取付部3は、前端に位置するほぼ垂直に立ち上がった車幅方向に長い段部4と、後端に位置する車幅方向に長いリヤクロスメンバ5bとの間に、ほぼ水平に配設されるリヤフロアパネル6の後部に位置する。リヤフロアパネル6の車幅方向における中央には、車両前後方向に延びたセンタフロアトンネル7が設けられ、リヤフロアパネル6の上面から断面凸状に突出している。
【0013】
リヤシートバック取付部の補強構造1は、補強プレート8とリクライニングブラケット9,10,11,12とを備える。
【0014】
補強プレート8は、金属板を屈曲させてなり、センタフロアトンネル7の凸形状に沿って断面凸状に形成され、車幅方向における両端側にそれぞれ水平部8a,8bを有し、左右の水平部8a,8bの車幅方向における内側がほぼ垂直に立ち上がった立上部8c,8dを有し、左右の立上部8c,8dの上端間に亘る上面部8eを有する。補強プレート8の車幅方向における両端には、ボルト(図示省略)を挿通するための締結穴8f,8gが穿設される。左側の水平部8aには、リクライニングブラケット9の前下部9aをリヤフロアパネル6に共締めするためのボルト(図示省略)を挿通する共締穴(図示省略)が穿設される。
【0015】
このように構成された補強プレート8は、センタフロアトンネル7の車両前後方向におけるほぼ中央部において、センタフロアトンネル7を車幅方向に向かって跨るように配設され、締結穴8f,8gを介してボルト/ナット(図示省略)でリヤフロアパネル6に対して固定され、更に、共締穴にリクライニングブラケット9の前下部9aに形成された共締穴9bが合わされ、これらの共締穴を介してボルト/ナット(図示省略)でリヤフロアパネル6に対して固定される。
【0016】
リクライニングブラケット9,10,11,12は、リヤクロスメンバ5bの直前位置のリヤフロアパネル6上における左右両端のそれぞれに一つずつと、リヤクロスメンバ5bの直前位置のリヤフロアパネル6上におけるセンタフロアトンネル7の右側部位置に一つと、リヤクロスメンバ5bから補強プレート8の左端側の水平部8aまでのセンタフロアトンネル7の左側部位置に一つの三種類合計四つある。
【0017】
左右両端に位置するリクライニングブラケット10,11は、略鉛直に立ち上がった鉛直面部10a,11aと、下端部が車幅方向外方に向かって折り曲げられた水平面部10b,11bと、を有し、全体の断面形状として略L字形を成すL字プレート状に形成される。鉛直面部10a,11aの上端付近には、リヤシートバック2を軸支するシャフト(図示省略)を通すための表裏に貫通したシャフト穴10c,11cが穿設される。水平面部10b,11bの幅方向、即ち車両前後方向における両端には、ボルト締結用の貫通孔10d,11dがそれぞれ穿設される。このように構成されたリクライニングブラケット10,11は、リヤクロスメンバ5bの直前位置におけるリヤフロアパネル6の左右両端に対して、鉛直面部10a,11aの面方向が車幅方向と一致するように、リヤフロアパネル6に対して貫通孔10d,11dを介してボルト/ナット(図示省略)で固定される。
【0018】
センタフロアトンネル7の右側部に位置するリクライニングブラケット12は、車両後方に向かって斜め方向に略鉛直に立ち上がった傾斜鉛直面部12aと、下端部が車幅方向内側に向かって折り曲げられて成る水平面部12bとを有し、全体の断面形状として略L字形を成すL字プレート状に形成される。傾斜鉛直面部12aの上端付近には、シャフトを通すための表裏に貫通したシャフト穴12cが穿設される。水平面部12bの幅方向、即ち車両前後方向における両端には、補強プレート8と共にリヤフロアパネル6に対してボルト締結するための共締穴12dが穿設される。このように構成されたリクライニングブラケット12は、傾斜鉛直面部12aの面方向が車幅方向と一致し、且つ、車幅方向における左右両端に配設されたリクライニングブラケット10,11のシャフト穴10c,11cの穴位置とシャフト穴12cの穴位置とが一致するように、リヤフロアパネル6に対して、補強プレート8の右側の水平部8bの共締穴と共に共締穴12dを介してボルト/ナット(図示省略)で固定される。
【0019】
センタフロアトンネル7の左側部に位置するリクライニングブラケット9は、車両後方に向かって斜め方向に略鉛直に立ち上がった傾斜鉛直面部9cと、この傾斜鉛直面部9cの前下端部が車幅方向内側に向かって折り曲げられて成る前下部9aと、傾斜鉛直面部9cの後下端部が車幅方向外側に向かって折り曲げられて成る後下部9dとを有する。傾斜鉛直面部9cの上端付近には、シャフトを通すための表裏に貫通したシャフト穴9eが穿設される。前下部9aには、ボルト(図示省略)を挿通するための共締穴9bが貫穿される。後下部9dには、リヤクロスメンバ5bに対してボルト/ナット締結されるボルト穴9fが貫穿される。なお、リヤクロスメンバ5bの締結部位の内部には、バルク5aを配設して補強することが好ましい。このように構成されたリクライニングブラケット9は、前下部9aに穿設された共締穴9bを介して、補強プレート8の左側の水平部8aに穿設された共締穴と共にリヤフロアパネル6に対してボルト/ナット締結され、後下部9dに穿設されたボルト穴9fを介してリヤクロスメンバ5bに対してボルト/ナット締結される。
【0020】
図1中において二点鎖線で示すリヤシートバック2は、下部にリヤシートクッション(図示省略)から独立して構成され、リヤフロアパネル6に固設された四つのリクライニングブラケット9,10,11,12と、これらのリクライニングブラケット9,10,11,12に挿通されたシャフトとを介してリクライニング可能に車両に対して枢着されるものである。
【0021】
以上説明したように、本発明のリヤシートバック取付部の補強構造1は、センタフロアトンネル7の前後方向の中央において、センタフロアトンネル7を跨ぐように配設される断面凸状の補強プレート8と、この補強プレート8の左側の水平部8aと共に前下部9aがリヤフロアパネル6に対して共締めされ後下部9dがリヤフロアパネル6の後端に位置するリヤクロスメンバ5bに対して締結されるリクライニングブラケット9と、補強プレート8の右側の水平部8bと共に水平面部12bがリヤフロアパネル6に締結されるリクライニングブラケット12と、リヤフロアパネル6の左右両端においてそれぞれ水平面部10b,11bがリヤフロアパネル6に対して締結されるリクライニングブラケット10,11と、を備え、自動車の急減速時等において、シートベルト(図示省略)による引っ張り荷重やリヤシートバック2後方の荷室13中に配置された積荷14が前進してリヤシートバック2に衝突することによる衝突荷重等によって、リヤシートバック2に対して前方向きの大きな荷重が掛かり、リクライニングブラケット9,10,11,12、特にリクライニングブラケット9,12を前転させるような入力があった際に、センタフロアトンネル7の左右の側部に位置するリクライニングブラケット9,12の前下部9a及び前下端が矢印で示すように下方へ付勢し、補強プレート8がセンタフロアトンネル7の外形に沿って当接することで、荷重がセンタフロアトンネル7に分散し、また、後下部9dがリヤクロスメンバ5bに固定されたリクライニングブラケット9の存在によって、荷重をリヤクロスメンバ5bに分散させ、リヤフロアパネル6及びリヤシートバック2全体の変形を抑制することが出来るように構成されたものである。よって、本発明の主旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、例えば、リヤシートバックのみならずフロントシート等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るリヤシートバック取付部の補強構造の構成を示す斜視図である。
【図2】従来のリヤシートバック取付部の補強構造の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)は図2におけるシートリインフォースの構成を示す斜視図で、(b)は(a)のA−A断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 リヤシートバック取付部の補強構造
2 リヤシートバック
3 リヤシートバック取付部
4 段部
5 クロスメンバ
5a バルク
6 リヤフロアパネル
7 センタフロアトンネル
8 補強プレート
8a 水平部
8b 水平部
8c 立上部
8d 立上部
8e 上面部
8f 締結穴
8g 締結穴
9 リクライニングブラケット
9a 前下部
9b 共締穴
9c 傾斜鉛直面部
9d 後下部
9e シャフト穴
9f ボルト穴
10 リクライニングブラケット
10a 鉛直面部
10b 水平面部
10c シャフト穴
10d 貫通孔
11 リクライニングブラケット
11a 鉛直面部
11b 水平面部
11c シャフト穴
11d 貫通孔
12 リクライニングブラケット
12a 傾斜鉛直面部
12b 水平面部
12c シャフト穴
12d 共締穴
13 荷室
14 積荷
101 リヤシートバック取付部の補強構造
102 リヤシートバック
103 リヤシートバックの取付部
105 クロスメンバ
106 リヤフロアパネル
107 センタフロアトンネル
108 シートリインフォース
108a 上側部材
108b 下側部材
108c アーク溶接
109 リクライニングブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニング式シートバックの車体に対する取付部の補強構造であって、
上記車体のセンタフロアトンネルの前後方向中央部には、上記センタフロアトンネルの凸状の断面形状に沿って形成された補強プレートが、上記センタフロアトンネルを跨ぐようにフロアパネルに配設されたことを特徴とする、シートバック取付部の補強構造。
【請求項2】
前記シートバックを軸支するためのシャフトを支持するリクライニングブラケットが、前記補強プレートを介して前記フロアパネルに固定されたことを特徴とする、請求項1に記載のシートバック取付部の補強構造。
【請求項3】
前記リクライニングブラケットは、前下部が前記補強プレートを介して前記フロアパネルに、後下部が前記シートバックの下部後方の車幅方向に延びたクロスメンバに対して固定されたことを特徴とする、請求項2に記載のシートバック取付部の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−126105(P2010−126105A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305692(P2008−305692)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】