シートパッド補強布の製造方法、製造装置及びシートパッド補強布
【課題】成型品が屈曲される際に生じる異音の発生を抑えることができるシートパッド補強布の製造方法、製造装置及びシートパッド補強布を提供すること。
【解決手段】外面から内部空間26に連通する複数の通気孔25を備える型20に不織布シート1Bを固定し、不織布シート1Bの表面の一部を前面保護カバー70及び側面保護カバー80で覆う。その後、不織布シート1Bと前面保護カバー70と側面保護カバー80とをカバー材40によって覆うことで、型20とカバー材40とにより閉塞空間41を形成し、不織布シート1Bを加熱する。不織布シート1Bを加熱した後に、通気孔25を介して閉塞空間41から空気を排気することで、不織布シート1Bを型20の外形に沿った形状に加工する。不織布シート1Bを加工した後に、カバー材40を外し、不織布シート1B(シートパッド補強布1)を型20から取り外す。
【解決手段】外面から内部空間26に連通する複数の通気孔25を備える型20に不織布シート1Bを固定し、不織布シート1Bの表面の一部を前面保護カバー70及び側面保護カバー80で覆う。その後、不織布シート1Bと前面保護カバー70と側面保護カバー80とをカバー材40によって覆うことで、型20とカバー材40とにより閉塞空間41を形成し、不織布シート1Bを加熱する。不織布シート1Bを加熱した後に、通気孔25を介して閉塞空間41から空気を排気することで、不織布シート1Bを型20の外形に沿った形状に加工する。不織布シート1Bを加工した後に、カバー材40を外し、不織布シート1B(シートパッド補強布1)を型20から取り外す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用座席シートのシートパッド補強布の製造方法、製造装置及びシートパッド補強布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用座席シートには、クッション材となるウレタン樹脂等を発泡させたシートパッドが用いられている。一般的に、シートパッドは、布や皮革などで被覆されており、表面側が乗員を支持する面となり、裏面側がパイプフレーム、スプリングなどの支持部材に対して装着されることで、車両用座席シートを構成する。シートパッドの裏面は、少なくともその一部において、車両の揺動や乗員等の体の動きによって支持部材と擦れ合うため、シートパッドだけでは損傷しやすい。そこで、従来よりシートパッドの裏面には、補強層としてシートパッド補強布が設けられている。
【0003】
シートパッド補強布は、シートパッドを損傷から保護するものであるので、シートパッドに対してずれたり剥離したりすることがないようにシートパッドと一体不可分に形成されている。このため、シートパッドを製造する発泡成形工程において、あらかじめ型内面に補強布をセットした状態で樹脂を型内に注入発泡し、シートパッドの成型及び補強層の形成を同時に行う方法が採用されている。
【0004】
シートパッドの裏面は複雑な形状(例えば、図11及び12に示される回り込み部14,15)を有しているので、これに合わせるために、従来は多数の小片を形状に合わせるように縫製などによって形成したものが補強布として用いられていた。しかしながら、裁断や縫製に多大の労力と時間を要するばかりでなく、所望の形状に精度よく適合する補強布が得られにくいという問題点を有していた。この問題点を解決すべく、本願出願人はシートパッド補強布と略同一の外形を有する型を用いて、荒裁ちされた不織布シートを成型する製造方法を提案している。
【特許文献1】特開2006−281768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているシートパッド補強布の製造方法では、(1)溶融繊維を含有するフェルトシートの荒裁ち、(2)荒裁ちしたシートの金型への固定、(3)耐熱性を有するフィルムで金型を覆った後に、シートの溶融繊維を溶融させるためにフィルム内部を高温の蒸気で加熱、(4)フィルムをシートに密着させて金型形状をシートに転写するためにフィルム内部を減圧、(5)金型を冷却した後に、成型されたシートを脱型、の5つの主なステップを経てシートパッド補強布を得る。
【0006】
この従来の製造方法では、(3)の加熱ステップでフィルム内部のシート全体が加熱蒸気に晒されて、シート全体で溶融繊維が溶融する。これにより、(4)の減圧ステップではフィルムが金型の形状に沿って密着し、シート全体が一様に成型されるため、(5)の冷却脱型ステップの後、シートパッド補強布の全体に剛性が付与されていた。シートパッド補強布がシートパッドの補強層としての機能を発揮するためには、適度な剛性を有する必要があるが、形状によっては、その剛性が原因となって、外部からの力により屈曲した際に異音が発生することがあった。このような異音は、成型されたシートパッド補強布の状態で発生する場合もあれば、シートパッド補強布上にウレタン樹脂等を発泡成形させてシートパッドに形成した状態で発生する場合もあり、車両用座席シートの使用者に違和感を与えるものであった。
【0007】
シートパッドの剛性に起因する異音発生への対策としては、シートパッド補強布の形状変更や溶融繊維の含有量低減による剛性の抑制が考えられる。しかしながら、これらの対策はシートパッド補強布の形状制限や全体の剛性低下に繋がるため、充分なものではなかった。そこで、本発明は、複雑な形状を有するシートパッド補強布を成型する場合であっても、成型品が屈曲される際に生じる異音(屈曲音)の発生を抑えることができるシートパッド補強布の製造方法、製造装置及びシートパッド補強布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシートパッド補強布の製造方法は、シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備える型に、荒裁ちされたシートを被せて固定するステップと、型に固定されたシートの表面に第1のカバーを固定することで、シートの表面の一部を第1のカバーで覆うステップと、型に固定されたシートとシートの表面に固定された第1のカバーとを第2のカバーによって覆うことで、型と第2のカバー材とにより閉塞空間を形成するステップと、シートを加熱するステップと、通気孔を介して閉塞空間から空気を排気することで、加熱されたシートを型の外形に沿った形状に加工するステップと、第1のカバーと第2のカバーを外し、加工されたシートを型から取り外すステップと、を備える。
【0009】
本発明のシートパッド補強布の製造方法によれば、第1のカバーで覆われた部分ではシートが加熱されにくいだけでなく、閉塞空間からの排気により第2のカバーがしぼんで貼り付くことで加わるシートへの圧力も抑えることができる。したがって、シートを型の外形に沿った形状に加工した後も、第1のカバーで覆われた部分の剛性を他の部分よりも低くすることができる。これにより、成型後のシートパッド補強布において異音が発生しやすい部分の成型条件を選択的に変化させて剛性を部分的に低下させることで、屈曲音の発生を抑えることができる。
【0010】
また、上記のシートパッド補強布の製造方法において、第1のカバーの少なくとも一部が磁性を有する材料で構成されており、シートの表面の一部を第1のカバーで覆うステップにおいて、第1のカバーが磁石で固定されるようにしてもよい。このようにすることで、成型後のシートパッド補強布において剛性を部分的に低下させたい位置に第1のカバーを容易かつ確実に固定することができる。
【0011】
また、シートを加熱するステップにおいて、閉塞空間内に加熱空気を導入することによりシートを加熱するようにしてもよい。このようにすることで、第1のカバーで覆われた部分を除いてシートは一様に加熱されるため、選択的に剛性を低くした部分を設けつつも成型後のシートパッド補強布全体の剛性を高めることができる。
【0012】
また、上記のシートパッド補強布の製造方法において、シートは、低融点繊維と高融点繊維とが混合された繊維シートであって、シートを加熱するステップにおいて、低融点繊維が溶融する温度以上であって高融点繊維が溶融する温度以下までシートを加熱するようにしてもよい。このようにすることで、シートを加熱するステップで低融点繊維が溶融してシートが軟化する。そのため、容易にシートを型の形状にあわせるように成型することができる。
【0013】
低融点繊維と高融点繊維とが混合された繊維シートを用いる場合、シートの低融点繊維は、シート全体に対して20〜60重量%混合されていることが好ましい。また、シートの低融点繊維は、シート全体に対して30〜60重量%混合されていることがより好ましい。このような混合率とすることで、第1のカバーで覆われた部分の剛性を他の部分よりも低くするだけでなく、スプリングなどの支持部材から大きい荷重が加わる環境で使用されるシートパッド補強布であっても、そのような荷重に耐えつつ、屈曲音の発生を抑えるために充分な剛性をシートパッド補強布全体に与えることができる。
【0014】
本発明は、上記のようにシートパッド補強布の製造方法に係る発明として記載できる他に、以下のようにシートパッド補強布の製造装置として記述することができる。
【0015】
すなわち、本発明のシートパッド補強布の製造装置は、シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備え、荒裁ちされたシートが固定される型と、型に固定されたシートの表面に固定されることでシートの表面の一部を覆う第1のカバーと、型と第1のカバーとを覆うことで閉塞空間を形成する第2のカバーと、シートを加熱する加熱ユニットと、閉塞空間内の空気を排気する排気ユニットと、を備える。
【0016】
また、上記のシートパッド補強布の製造装置において、型は第1のカバーを固定するための磁石を更に備え、第1のカバーの少なくとも一部が磁性を有する材料で構成されるようにしてもよい。
【0017】
なお、上記のシートパッド補強布の製造装置に係る発明は、シートパッド補強布の製造方法に係る発明と対応する技術的特徴を有し、同様の作用及び効果を奏する発明である。
また、本発明のシートパッド補強布は、座席シートのシートパッドを裏面側から補強するシートパッド補強布であって、不織布に熱可塑性樹脂を溶融固着させて保形しており、第1の剛性を有する部分と、第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する部分とを有することを特徴とする。
このようにすれば、シートパッド補強布の全体を均一の剛性にするのではなく、異音が発生しやすい部分の剛性を部分的に低下させることができ、全体の剛性を良好に保ちつつ屈曲音の発生を抑えることができる。
また、座席シートの背もたれ部のシートパッドを裏面側から補強するシートパッド補強布であって、背部と背部の左右から前方に張り出し裏面に回り込む側部とを有し、第2の剛性を有する部分は、側部及び背部の下部の少なくとも一方に設けられるようにしてもよい。背もたれ部のシートパッドを補強するシートパッド補強布では、背部の下部や側部で屈曲音が生じやすい傾向にあるため、この部位で剛性を部分的に低下させることにより、全体の剛性を良好に保ちつつ屈曲音の発生を効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シートを型の外形に沿った形状に加工した後も、第1のカバーで覆われた部分の剛性を他の部分よりも低くすることができる。これにより、成型後のシートパッド補強布において異音が発生しやすい部分の成型条件を選択的に変化させて剛性を部分的に低下させることにより、屈曲音の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明の実施形態として、車両用座席シートの背もたれ部に用いられるシートパッド補強布を取り上げるが、本発明は車両用座席シートの座部やその他のシートパッド補強布を用いる部分に適用することができる。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るシートパッド補強布の製造方法もしくは製造装置によって製造されたシートパッド補強布の一例を示す斜視図である。
【0021】
シートパッド補強布1は、荒裁ちされたシートを後述する型20にて成型したものであり、車両用座席シート(図示せず)に対応した形状を有している。具体的には、使用者の背中に面する表面に対応する背部11と、背部11の左右から使用者(前方)に向かって張り出すことで使用者を左右から保持しつつ裏面に回り込む側部12と、ヘッドレスト等が取付けられる箇所に対応する貫通孔13とを備えている。さらに、図11及び12の断面図に示されるように、成型された補強布1は、回り込み部14,15を備えている。
【0022】
シートパッド補強布1に成型されるシートの材料としては、例えば不織布を用いることができるが、空気に対する通気性を有する材料であれば、特に限定されない。なお、以下の説明では、シートの材料に不織布を用いる場合を取り上げるが、シートパッド補強布1に成型される前の不織布シートを単に「不織布シート」といい、成型後の不織布シートを「シートパッド補強布」という。
【0023】
不織布をシートの材料として用いる場合、低融点繊維と高融点繊維とが混合された不織布シートを用いることが好ましい。このような不織布シートを用いた場合、後述する本発明の実施形態に係る方法における不織布シートの加熱時には、低融点繊維が溶融して、不織布シート全体が軟化することで、シートパッド補強布1の成型が容易になる。また、成型後冷却固化されたシートパッド補強布1は、低融点繊維の熱可塑性樹脂成分が高融点繊維または低融点繊維に溶融固着されることで適度な剛性を有することとなり、形状が良好に保持される。
ここで、シートパッド補強布1は、後述する第1のカバーで覆われる部分(屈曲音が生じやすい部分)の剛性(第2の剛性)が、それ以外の部分の剛性(第1の剛性)よりも低くなっている。より詳細には、側部12及び背部11の下部の少なくとも一方(この実施形態では両方)が、部分的に他の部分より剛性が低くされている。
【0024】
低融点繊維と高融点繊維とが混合されたシートには、次のような材料を用いることができる。
【0025】
まず、低融点繊維としては、高融点繊維よりも融点が低く、特定の軟化点及び溶融粘度を有するものが用いられる。具体的には、高融点繊維と混合して高融点繊維の融点より低い温度で溶融して高融点繊維間を融着することができるホットメルト型の接着性繊維が用いられる。また、使用される繊維の太さは、1.5〜10d(デニール)程度が好ましい。
【0026】
このような低融点繊維としては、例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂繊維があげられる。これらの繊維は単独で用いてもよいし、高融点繊維と組合せることでコンジュゲート型、芯鞘型構造等としたものでもよい。この低融点繊維の繊度、繊維長は特に限定されない。また、低融点繊維の融点は、好ましくは100〜160℃程度(もしくは、軟化点が80〜140℃程度)であることが好ましい。さらに、低融点繊維はスチーム活性を有することが好ましく、不織布シートを加熱する際に加熱蒸気を用いる場合には、特に好適である。
【0027】
一方、高融点繊維としては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン等が用いられる。この高融点繊維の繊度、繊維長も特に限定されない。この高融点繊維の融点は180℃以上(もしくは、軟化点が160℃以上)であればよい。また、低融点繊維と高融点繊維との融点の差(もしくは軟化点の差)が50℃以上あることが好ましい。
【0028】
後述する本発明の実施形態に係る製造方法に用いる不織布シートの場合、低融点繊維と高融点繊維との混合は、不織布シート全体に対して低融点繊維20〜60重量%(高融点繊維80〜40重量%)混合されていることが好ましく、不織布シート全体に対して低融点繊維30〜60重量%(高融点繊維70〜40重量%)混合されていることがより好ましい。このような混合率とすることで、第1のカバーで覆われた部分の剛性を他の部分よりも低くするだけでなく、スプリングなどの支持部材から大きい荷重が加わる環境で使用されるシートパッド補強布であっても、そのような荷重に耐えつつ、屈曲音の発生を抑えるために充分な剛性をシートパッド補強布全体に与えることができる。より具体的には、低融点繊維の混合率が20重量%より少ないと融着部分が少なくなるため、シートパッド補強布として所望の剛性が得られないおそれがある。また、低融点繊維の混合率が30重量%以上とすることで、スプリングなどの支持部材から大きい荷重が加わる環境で使用に適した高い剛性を得ることができる。一方、低融点繊維の混合率が60重量%より大きいと、剛性が顕著に出るため型からの脱型が困難になるだけでなく、脱型後も高すぎる剛性により異音が発生しやすくなり、シート表面がプラスチック化して繊維が残らなくなるためにシートパッド補強布として用いた時にこすれ音が発生しやすくなる。
【0029】
また、シートパッド補強布1の成型に用いられるシートとしては、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートを用いても、低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートと同様の効果を得ることができる。
【0030】
不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートの場合、含有させる熱可塑性樹脂としては、粒状ホットメルト接着樹脂(接着剤)を用いることが好ましい。例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニールクロリド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンビニールアセテート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチラール樹脂等があり、これらの混合物であってもよい。また、融点は70〜100℃のものが好ましい。粒状ホットメルト接着剤の粒径としては200μm以下が好ましく、必要に応じて粒径分布を変えてもよい。
【0031】
また、シートには、樹脂等の液体が浸透しにくい樹脂滲み出し防止シートの少なくとも片面に不織布が積層された2層以上の構造のものを用いることができる。なお、ここでいう樹脂滲み出し防止とは、ウレタン樹脂等のシートパッドの成型に用いる樹脂が浸透しづらい性質を意味する。このような材料を用いることで、シートパッド補強布の成型後に、従来と同様の方法によりウレタン樹脂等を用いてシートパッドの成型及び補強層の形成を行うときに、樹脂が滲み出すことを防止できる。このような低浸透性シートの材料としては、例えばポリウレタンフィルムやウレタン樹脂等の浸透が遅い高密度不織布を用いることができる。
【0032】
次に、図2〜6,11及び12を用いて、本発明に係るシートパッド補強布の製造装置を説明する。
【0033】
図2及び6は、シートパッド補強布の製造装置2を示す斜視図である。シートパッド補強布の製造装置2は、型20と、型20が固定される基部30と、型20を覆いつつ基部30に固定されることで閉塞空間41を形成するカバー材40(第2のカバー)と、閉塞空間41へ空気の給排気を行う給排気ユニット50と、前面保護カバー70(第1のカバー)と、2つの側面保護カバー80(第1のカバー)とを備えている。
【0034】
型20は、シートパッド補強布1と略同一の外形を有し、外面から内部空間26に連通する複数の通気孔25を備えており(図11及び12参照)、荒裁ちされたシート1Bはこの型20に固定される(図4〜6参照)。より詳細には、型20は、前面部21と、側面部22と、筒部23と、後面部24と、複数の通気孔25とを備える(図11及び12参照)。型20の前面部21はシートパッド補強布1の背部11を成型する部分となり、側面部22はシートパッド補強布1の側部12及び回り込み部15を成型する部分となる(図12参照)。また、型20の筒部23はシートパッド補強布1の貫通孔13の周囲を成型する部分となり、後面部24はシートパッド補強布1の回り込み部14を成型する部分となる(図11参照)。
【0035】
通気孔25は、型20の外面から内部空間26に連通するように形成され、給排気ユニット50によって閉塞空間41へ空気の給排気を行う時に、空気の流路となる。通気孔25は、前面部21、側面部22、筒部23及び後面部24の各所に設けられている。なお、シートパッド補強布1を型20に沿った形状とするために、角部(図11のA部及び図12のB部)には通気孔25を他の箇所よりも多く設けることが好ましい。また、型20の材質は特に限定されないが、加工性及び熱伝導性の面からアルミニウムを用いることが好ましい。
【0036】
基部30は、基台31と、基台31から立設されると共にそれぞれ型20に取付けられた給気支脚32及び排気支脚33とを備えている。給気支脚32及び排気支脚33は中空であり、型20の内部空間26と連通されることで、図示しない基台31内部の給気路及び排気路と共に閉塞空間41と給排気ユニット50とをつなぐ空気の流路となる。
【0037】
第2のカバーであるカバー材40は、型20と後述する第1のカバー(前面保護カバー70及び側面保護カバー80)とを覆うことで閉塞空間41を形成する。このカバー材40は、不織布シートが固定された型20、前面保護カバー70及び側面保護カバー80を覆うことができるものであれば、特に形状及び大きさは限定されないが、取り扱いやすさを考慮して、例えば袋状フィルムを用いることができる。また、図6に示される形態では、カバー材40は基台31に対して固定されているが、不織布シート1B等を覆う閉塞空間41を形成するように固定されていれば良く、例えば、給気支脚32及び排気支脚33に固定するようにしてもよい。
【0038】
カバー材40の材料は、加熱され、且つ、給排気ユニット50の給排気により膨張と不織布シート1B及び型20への密着が繰り返し行われるため、これを満足するような性能を有するものが選定される。
【0039】
図1のような車両用座席シートの背もたれ部に用いられるシートパッド補強布を成型する場合には、カバー材40の材料は、伸度が300%以上あるものが好ましく、厚さは30〜100μm程度が好ましい。なお、車両用座席シートにおける座部用のシートパッド補強布のように、比較的形状が単純なものを成型する場合には、カバー材の伸度は300%よりも低いものであってもよい。これらの点を考慮して、袋状のフィルムであるカバー材40の材料としては、例えば、伸度300%、厚み50μmのポリウレタンを用いることができる。
【0040】
図2に示されるように、給排気ユニット50は、給気ユニット51(加熱ユニット)と、給気ユニット51と基部30内部の給気路とを接続する給気管52と、排気ユニット54と、排気ユニット54と基部30内部の排気路とを接続する排気管53とを備えている。
【0041】
給気ユニット51は、給気管52、基部30内部の給気路及び給気支脚32を介して型20の内部空間26に加熱空気を供給するユニットであり、型20及び不織布シート1Bを加熱する加熱ユニットとしての機能を有する。この給気ユニット51から供給される加熱空気は型20の内部空間26を経由して、通気孔25を介して閉塞空間41に供給されるため、加熱空気の供給に伴ってカバー材40が膨らむ。なお、加熱空気には、単に加熱された空気だけでなく加熱蒸気を含む。加熱蒸気を用いた場合、不織布シート1B(特に、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートや、低融点繊維と高融点繊維とを混合させたシート)が溶融固化する時間、すなわち補強布の成型時間を短縮することができる。
【0042】
排気ユニット54は、閉塞空間41内の空気を排気するユニットであり、通気孔25、型20の内部空間26、排気支脚33、基部30内部の排気路(図示せず)及び排気管53を介して閉塞空間41の空気を排気することができる。
【0043】
前面保護カバー70(第1のカバー)及び2つの側面保護カバー80(第1のカバー)は、型20に固定されたシート1Bの表面に固定されることでシート1Bの表面の一部を覆う。
【0044】
図3及び図6に示される前面保護カバー70は、型20の形状に沿う縁部71aを有するカバー部71と、縁部71aに取り付けられた磁石72と、2つのカバー部71を連結する連結部73とを備えている。図6では、連結部73に取り付けられた紐90によって型20から吊るされた前面保護カバー70が、磁石72を介して型20の前面下部に固定された状態を示している。これにより、型20に固定されたシート1Bの前面下部の一部が覆われる。また、本実施形態では、前面保護カバー70の磁石72を縁部71aに取り付けて、前面保護カバー70の少なくとも一部が磁性を有する材料で構成している。このように構成することで、磁性を有する材料で全体を構成する場合と比べて前面保護カバー70を作業者が意図した位置に簡単に固定することができる。図示しないが、型20の内部には、前面保護カバー70が固定されるべき位置に磁石が設けられている。なお、型20内部の磁石に代えて、型20に磁石または鉄ねじを埋め込んでもよい。また、前面保護カバー70の固定手段は磁石以外のものであってもよい。
【0045】
前面保護カバー70が覆うべきシート1Bの表面の一部は、成型品であるシートパッド補強布1が屈曲される際に生じる異音(屈曲音)の発生を抑えるために適切な位置であれば、特に限定されない。カバー部71も、屈曲音の発生を抑えるために適切な数や形状とされるべきものであり、1つのカバー部で前面保護カバーを構成する場合には連結部73が不要となることは言うまでもない。
【0046】
また、図6に示される側面保護カバー80は直方体状の箱型であり、型20の側面の下半分においてシート1Bの表面の一部を覆うように固定されている。しかしながら、本発明はこの態様に限定されるものではなく、シートパッド補強布1が屈曲される際に生じる異音(屈曲音)の発生を抑えるために適切な形状とし、適切な位置に固定すればよい。また、側面保護カバー80の固定手段は磁石以外のものであってもよい。
【0047】
ここまでで説明したように、本実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置は、プレス加工装置ではないため凹凸両面の型は不要である。さらに、図11や図12に示されるような複雑な形状を有する回り込み部14,15の成型にもスライドコア型といった特別な型も不要である。そのため、型製作の費用と時間を節約することができる。
【0048】
次に、図4から図13を用いて、本発明のシートパッド補強布の製造方法を説明する。なお、以下の説明では、本発明の実施形態に係る製造装置を用いてシートパッド補強布を製造する場合を説明する。
【0049】
図4に示されるように、本発明に用いられる不織布シート1B(すなわち、成型前のシートパッド補強布1)は、使用される車両用シートパッド補強布の形状を展開した形に予め荒裁ちして供給される。このように裁断することでシートパッド補強布の成型後に不要部分を切除する手間をなくすことができる。
【0050】
裁断された不織布シート1Bは、図5に示されるように型20に被せられた後に、図示しない磁石で固定される。磁石は型20の内面に予め取付けられており、型20に被せた不織布シート1Bの上に別の磁石を置くことで、不織布シート1Bを固定する。または、磁石または鉄ねじを型20に埋め込み、不織布シート1Bを外部から抑える部材に磁石を用いて固定するようにしてもよい。このように不織布シート1Bを固定することで、給排気ユニット50による加熱空気の給排気時に不織布シートが外れることを防止できる。このようにして、シートパッド補強布1と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔25を備える型20に、荒裁ちされたシート1Bを被せて固定する。なお、図5では、説明のため、不織布シート1Bを透明として示している。
【0051】
不織布シート1Bを型20に固定した後、図6に示されるように、前面保護カバー70及び2つの側面保護カバー80を磁石で所定の位置に固定する。これにより、型20に固定された不織布シート1Bの表面に前面保護カバー70及び2つの側面保護カバー80を第1のカバーとして固定することで、不織布シート1Bの表面の一部を当該第1のカバーで覆う。さらに、型20に固定された不織布シート1Bと、不織布シート1Bの表面に固定された前面保護カバー70及び側面保護カバー80とをカバー材40によって覆うことで、型20とカバー材40とにより閉塞空間を形成する
【0052】
なお、必須のステップではないが、不織布シート1Bをカバー材40によって覆うことで閉塞空間41を形成した後に(換言すれば、後述する不織布シート1Bを加熱するステップの前に)、図7に示されるように、型20の通気孔25を介して閉塞空間41内の空気を排気する予備排気を実施するとよい。この予備排気を実施することで、閉塞空間41内の空気が一旦排気されるため、カバー材40によって不織布シート1Bを型20に密着させることができ、不織布シート1Bを型20の外面の形状に合わせて成型しやすくなる。
【0053】
つづいて、図8に示されるように、型20とカバー材40とにより閉塞空間41を形成した後に(もしくは、上述の予備排気の後に)、給排気ユニット50の給気ユニット51(加熱ユニット)から型20の内部に加熱蒸気(又は加熱空気)を供給することで、不織布シート1B及び型20を加熱する。このとき、加熱蒸気は型20の通気孔25を介して閉塞空間41まで供給されるため、カバー材40が膨らむ。
【0054】
不織布シート1Bを加熱した後、排気ユニット54を動作させて、図9に示されるように閉塞空間41から空気を排気する。排気ユニット54が動作することで、閉塞空間41の空気は、通気性を有する不織布シート1B及び型20の通気孔25を介して型20の内部に流入する。そして、型20の内部は、排気支脚33、基台31の排気路、排気管53を介して、排気ユニット54と連通しているため、閉塞空間41の空気を排気することができる。図10の概念図で示されるように、空気の排気によって、膨らんでいたカバー材40は型20に吸い寄せられるように収縮し、加熱されて可塑性が高くなっている不織布シート1Bはカバー材40の収縮にあわせて型20に吸い寄せられるように変形する。このようにして、型20の通気孔25を介して閉塞空間41から空気が排気され、加熱された不織布シート1Bは型20に密着し、型20の外形に沿った形状に加工される。
【0055】
なお、加熱された不織布シート1Bにおいて前面保護カバー70及び側面保護カバー80で覆われた部分は、カバー材40によって押し付けられることがないため、シートが加熱されにくいだけでなく、閉塞空間41からの排気によりカバー材40がしぼんで貼り付くことで加わるシートへの圧力も抑えることができる。したがって、前面保護カバー70及び側面保護カバー80で覆われた部分では、それ以外の部分のように溶融した樹脂がカバー材40によりしっかりと固められるのが抑えられるため、シートを型の外形に沿った形状に加工した後も、前面保護カバー70及び側面保護カバー80で覆われた部分の剛性を他の部分よりも低くすることができる。これにより、成型後のシートパッド補強布1において異音が発生しやすい部分の成型条件を選択的に変化させて剛性を部分的に低下させることによって、屈曲音の発生を抑えることができる。
【0056】
閉塞空間41の空気を排気して、不織布シート1Bが形状を保持する温度まで冷却させた後、図13に示されるように、カバー材40を外し、さらに前面保護カバー70及び側面保護カバー80を外して、成型された不織布シート1B(すなわち、シートパッド補強布1)を型20から取り外す。なお、冷却させた不織布シート1Bは、ある程度の剛性を有しているが、型20から外す上での支障となるものではないため、容易に取り外すことができる。
【0057】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置では加熱蒸気(又は加熱空気)を利用して不織布シート1Bを加熱しているが、型20そのものをヒーター等によって加熱することで不織布シート1Bを加熱してもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明に係るシートパッド補強布の製造方法及び製造装置によって製造されたシートパッド補強布の実施例及び比較例を、それらの評価結果及び測定結果とあわせて説明する。
【0059】
シートパッド補強布の製造に用いるシートには、下記の低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートにニードルパンチを施したフェルトを用いた。
・低融点繊維: ポリエステル100%、繊維長38mm、繊維太さ4.4D(デシテックス)、融点110℃(軟化点90℃)
・高融点繊維: ポリエステル100%、繊維長51mm、繊維太さ1.7D(デシテックス)、融点200℃(軟化点180℃)
【0060】
また、成型に用いる加熱蒸気の温度は、低融点繊維の融点より高く、且つ高融点繊維の融点より低い温度として、具体的には次のような成型条件とした。
・加熱蒸気温度(スチーム温度):100℃
・加熱蒸気供給時間:12秒
【0061】
まず、低融点繊維の含有量と保護カバーの有無が成型後のバネ受け材(シートパッド補強布)の剛性及び屈曲音に与える影響を検討するため、実施例1〜4及び比較例1〜4に係るフェルト(不織布シート)を用意した。実施例1〜4及び比較例1〜4に係るフェルトの仕様及びバネ受け材の成型条件は表1の通りである。なお、成型条件における「カバー有」とは前面保護カバー70及び/又は側面保護カバー80でフェルトの表面における特定部分(従来の製造方法では屈曲音が発生する部分)を覆ってバネ受け材を成型した場合を示し、「カバー無」とは従来通りに保護カバーを用いずにバネ受け材を成型した場合を示す。
【表1】
【0062】
上述したシートパッド補強布の製造装置及び製造方法にて上記実施例及び比較例に係るバネ受け材を作成し、バネ受け剛性、バネ受け屈曲音及びシートパッド屈曲音を評価した。その結果を表2に示す。表2において、○はバネ受け材として「良好」、△はバネ受け材として「合格」、×はバネ受け材として「不具合あり」を意味する。ここで、バネ受け剛性が良好とは、具体的には、JIS L1069に規定された剛性(スティフネス)の測定法であるハンドルオメーター法による測定結果に基づく評価であり、成型後のバネ受け材において保護カバーで覆わなかった部分の数値が0.2N以上であったことを意味する。また、バネ受け屈曲音が良好とは、成型後のバネ受け材を屈曲させた時に音の発生がなかったことを意味し、シートパッド屈曲音が良好とは、バネ受け材上にウレタン樹脂等を発泡成形させてシートパッドとした状態で屈曲させた時に音の発生がなかったことを意味する。
【表2】
【0063】
表2に示される評価結果からわかるように、低融点繊維の含有量を30〜60重量%としたとき、成型後のバネ受け材(シートパッド補強布)は充分な剛性を有しつつ、バネ受け屈曲音及びシートパッド屈曲音の発生が抑えられていることが確認された。
【0064】
次に、保護カバー(前面保護カバー70及び/又は側面保護カバー80)が成型後のバネ受け材(シートパッド補強布)における剛性分布に与える影響を比較するため、実施例5〜8及び比較例5に係るフェルト(不織布シート)を用意した。実施例5〜8及び比較例5におけるフェルトの仕様及びバネ受け材の成型条件は表3の通りである。
【表3】
【0065】
実施例1〜4及び比較例1〜4の場合と同様に、上述したシートパッド補強布の製造装置及び製造方法にて上記実施例及び比較例に係るバネ受け材を作成し、JIS L1069のハンドルオメーター法にて、保護カバーで覆わなかった部分と保護カバーで覆った部分との剛性を測定した。その結果を表4に示す。
【表4】
【0066】
表4に示される測定結果からわかるように、低融点繊維の含有量を20〜60重量%としたとき、保護カバーで覆わなかった部分には0.2N以上の高い剛性が付与され、保護カバーで覆った部分には相対的に低い剛性を付与されている。この測定結果より、成型後のバネ受け材(シートパッド補強布)において、保護カバーで覆った部分の剛性を他の部分よりも低くすることで屈曲音の発生を抑えつつ、スプリングなどの支持部材から大きい荷重が加わる部分については屈曲音の発生を抑えるために充分な剛性を付与することが可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】シートパッド補強布の斜視図である。
【図2】シートパッド補強布の製造に用いる製造装置の斜視図であって、前面保護カバーを取り除いた状態を示す図である。
【図3】シートパッド補強布の製造に用いる製造装置の一部である前面保護カバーの斜視図である。
【図4】加工前のシートパッド補強布である荒裁ちされた不織布シートを示す図である。
【図5】荒裁ちされた不織布シートを型に固定するステップを説明する図である。
【図6】不織布シート、前面保護カバー及び側面保護カバーが固定された型をカバー材で覆うステップを説明する図である。
【図7】カバー材で覆った後に、型とカバー材で形成される閉塞空間から空気を排気するステップを説明する図である。
【図8】型の内部空間に加熱蒸気(加熱空気)を供給するステップを説明する図である。
【図9】型とカバー材で形成される閉塞空間から空気を排気することで、不織布シートを型の外形に沿った形状に加工するステップを説明する図である。
【図10】不織布シートを型の外形に沿った形状に加工するステップを説明するための概念図である。
【図11】図9のXI−XI線に沿ったシートパッド補強布、型及び前面保護カバーの縦断面図である。
【図12】図9のXII−XII線に沿ったシートパッド補強布及び型の横断面図である。
【図13】カバー材を外し、不織布シートを加工してなるシートパッド補強布を型から取り外すステップを説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
1…シートパッド補強布、1B…不織布シート、11…背部、12…側部、13…貫通孔、20…型、21…前面部、22…側面部、23…筒部、24…後面部、25…通気孔、26…内部空間、30…基部、31…基台、32…給気支脚、33…排気支脚、40…カバー材(第2のカバー)、41…閉塞空間、50…給排気ユニット、51…給気ユニット(加熱ユニット)、52…給気管、53…排気管、54…排気ユニット、70…前面保護カバー、80…側面保護カバー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用座席シートのシートパッド補強布の製造方法、製造装置及びシートパッド補強布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用座席シートには、クッション材となるウレタン樹脂等を発泡させたシートパッドが用いられている。一般的に、シートパッドは、布や皮革などで被覆されており、表面側が乗員を支持する面となり、裏面側がパイプフレーム、スプリングなどの支持部材に対して装着されることで、車両用座席シートを構成する。シートパッドの裏面は、少なくともその一部において、車両の揺動や乗員等の体の動きによって支持部材と擦れ合うため、シートパッドだけでは損傷しやすい。そこで、従来よりシートパッドの裏面には、補強層としてシートパッド補強布が設けられている。
【0003】
シートパッド補強布は、シートパッドを損傷から保護するものであるので、シートパッドに対してずれたり剥離したりすることがないようにシートパッドと一体不可分に形成されている。このため、シートパッドを製造する発泡成形工程において、あらかじめ型内面に補強布をセットした状態で樹脂を型内に注入発泡し、シートパッドの成型及び補強層の形成を同時に行う方法が採用されている。
【0004】
シートパッドの裏面は複雑な形状(例えば、図11及び12に示される回り込み部14,15)を有しているので、これに合わせるために、従来は多数の小片を形状に合わせるように縫製などによって形成したものが補強布として用いられていた。しかしながら、裁断や縫製に多大の労力と時間を要するばかりでなく、所望の形状に精度よく適合する補強布が得られにくいという問題点を有していた。この問題点を解決すべく、本願出願人はシートパッド補強布と略同一の外形を有する型を用いて、荒裁ちされた不織布シートを成型する製造方法を提案している。
【特許文献1】特開2006−281768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているシートパッド補強布の製造方法では、(1)溶融繊維を含有するフェルトシートの荒裁ち、(2)荒裁ちしたシートの金型への固定、(3)耐熱性を有するフィルムで金型を覆った後に、シートの溶融繊維を溶融させるためにフィルム内部を高温の蒸気で加熱、(4)フィルムをシートに密着させて金型形状をシートに転写するためにフィルム内部を減圧、(5)金型を冷却した後に、成型されたシートを脱型、の5つの主なステップを経てシートパッド補強布を得る。
【0006】
この従来の製造方法では、(3)の加熱ステップでフィルム内部のシート全体が加熱蒸気に晒されて、シート全体で溶融繊維が溶融する。これにより、(4)の減圧ステップではフィルムが金型の形状に沿って密着し、シート全体が一様に成型されるため、(5)の冷却脱型ステップの後、シートパッド補強布の全体に剛性が付与されていた。シートパッド補強布がシートパッドの補強層としての機能を発揮するためには、適度な剛性を有する必要があるが、形状によっては、その剛性が原因となって、外部からの力により屈曲した際に異音が発生することがあった。このような異音は、成型されたシートパッド補強布の状態で発生する場合もあれば、シートパッド補強布上にウレタン樹脂等を発泡成形させてシートパッドに形成した状態で発生する場合もあり、車両用座席シートの使用者に違和感を与えるものであった。
【0007】
シートパッドの剛性に起因する異音発生への対策としては、シートパッド補強布の形状変更や溶融繊維の含有量低減による剛性の抑制が考えられる。しかしながら、これらの対策はシートパッド補強布の形状制限や全体の剛性低下に繋がるため、充分なものではなかった。そこで、本発明は、複雑な形状を有するシートパッド補強布を成型する場合であっても、成型品が屈曲される際に生じる異音(屈曲音)の発生を抑えることができるシートパッド補強布の製造方法、製造装置及びシートパッド補強布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシートパッド補強布の製造方法は、シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備える型に、荒裁ちされたシートを被せて固定するステップと、型に固定されたシートの表面に第1のカバーを固定することで、シートの表面の一部を第1のカバーで覆うステップと、型に固定されたシートとシートの表面に固定された第1のカバーとを第2のカバーによって覆うことで、型と第2のカバー材とにより閉塞空間を形成するステップと、シートを加熱するステップと、通気孔を介して閉塞空間から空気を排気することで、加熱されたシートを型の外形に沿った形状に加工するステップと、第1のカバーと第2のカバーを外し、加工されたシートを型から取り外すステップと、を備える。
【0009】
本発明のシートパッド補強布の製造方法によれば、第1のカバーで覆われた部分ではシートが加熱されにくいだけでなく、閉塞空間からの排気により第2のカバーがしぼんで貼り付くことで加わるシートへの圧力も抑えることができる。したがって、シートを型の外形に沿った形状に加工した後も、第1のカバーで覆われた部分の剛性を他の部分よりも低くすることができる。これにより、成型後のシートパッド補強布において異音が発生しやすい部分の成型条件を選択的に変化させて剛性を部分的に低下させることで、屈曲音の発生を抑えることができる。
【0010】
また、上記のシートパッド補強布の製造方法において、第1のカバーの少なくとも一部が磁性を有する材料で構成されており、シートの表面の一部を第1のカバーで覆うステップにおいて、第1のカバーが磁石で固定されるようにしてもよい。このようにすることで、成型後のシートパッド補強布において剛性を部分的に低下させたい位置に第1のカバーを容易かつ確実に固定することができる。
【0011】
また、シートを加熱するステップにおいて、閉塞空間内に加熱空気を導入することによりシートを加熱するようにしてもよい。このようにすることで、第1のカバーで覆われた部分を除いてシートは一様に加熱されるため、選択的に剛性を低くした部分を設けつつも成型後のシートパッド補強布全体の剛性を高めることができる。
【0012】
また、上記のシートパッド補強布の製造方法において、シートは、低融点繊維と高融点繊維とが混合された繊維シートであって、シートを加熱するステップにおいて、低融点繊維が溶融する温度以上であって高融点繊維が溶融する温度以下までシートを加熱するようにしてもよい。このようにすることで、シートを加熱するステップで低融点繊維が溶融してシートが軟化する。そのため、容易にシートを型の形状にあわせるように成型することができる。
【0013】
低融点繊維と高融点繊維とが混合された繊維シートを用いる場合、シートの低融点繊維は、シート全体に対して20〜60重量%混合されていることが好ましい。また、シートの低融点繊維は、シート全体に対して30〜60重量%混合されていることがより好ましい。このような混合率とすることで、第1のカバーで覆われた部分の剛性を他の部分よりも低くするだけでなく、スプリングなどの支持部材から大きい荷重が加わる環境で使用されるシートパッド補強布であっても、そのような荷重に耐えつつ、屈曲音の発生を抑えるために充分な剛性をシートパッド補強布全体に与えることができる。
【0014】
本発明は、上記のようにシートパッド補強布の製造方法に係る発明として記載できる他に、以下のようにシートパッド補強布の製造装置として記述することができる。
【0015】
すなわち、本発明のシートパッド補強布の製造装置は、シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備え、荒裁ちされたシートが固定される型と、型に固定されたシートの表面に固定されることでシートの表面の一部を覆う第1のカバーと、型と第1のカバーとを覆うことで閉塞空間を形成する第2のカバーと、シートを加熱する加熱ユニットと、閉塞空間内の空気を排気する排気ユニットと、を備える。
【0016】
また、上記のシートパッド補強布の製造装置において、型は第1のカバーを固定するための磁石を更に備え、第1のカバーの少なくとも一部が磁性を有する材料で構成されるようにしてもよい。
【0017】
なお、上記のシートパッド補強布の製造装置に係る発明は、シートパッド補強布の製造方法に係る発明と対応する技術的特徴を有し、同様の作用及び効果を奏する発明である。
また、本発明のシートパッド補強布は、座席シートのシートパッドを裏面側から補強するシートパッド補強布であって、不織布に熱可塑性樹脂を溶融固着させて保形しており、第1の剛性を有する部分と、第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する部分とを有することを特徴とする。
このようにすれば、シートパッド補強布の全体を均一の剛性にするのではなく、異音が発生しやすい部分の剛性を部分的に低下させることができ、全体の剛性を良好に保ちつつ屈曲音の発生を抑えることができる。
また、座席シートの背もたれ部のシートパッドを裏面側から補強するシートパッド補強布であって、背部と背部の左右から前方に張り出し裏面に回り込む側部とを有し、第2の剛性を有する部分は、側部及び背部の下部の少なくとも一方に設けられるようにしてもよい。背もたれ部のシートパッドを補強するシートパッド補強布では、背部の下部や側部で屈曲音が生じやすい傾向にあるため、この部位で剛性を部分的に低下させることにより、全体の剛性を良好に保ちつつ屈曲音の発生を効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シートを型の外形に沿った形状に加工した後も、第1のカバーで覆われた部分の剛性を他の部分よりも低くすることができる。これにより、成型後のシートパッド補強布において異音が発生しやすい部分の成型条件を選択的に変化させて剛性を部分的に低下させることにより、屈曲音の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明の実施形態として、車両用座席シートの背もたれ部に用いられるシートパッド補強布を取り上げるが、本発明は車両用座席シートの座部やその他のシートパッド補強布を用いる部分に適用することができる。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るシートパッド補強布の製造方法もしくは製造装置によって製造されたシートパッド補強布の一例を示す斜視図である。
【0021】
シートパッド補強布1は、荒裁ちされたシートを後述する型20にて成型したものであり、車両用座席シート(図示せず)に対応した形状を有している。具体的には、使用者の背中に面する表面に対応する背部11と、背部11の左右から使用者(前方)に向かって張り出すことで使用者を左右から保持しつつ裏面に回り込む側部12と、ヘッドレスト等が取付けられる箇所に対応する貫通孔13とを備えている。さらに、図11及び12の断面図に示されるように、成型された補強布1は、回り込み部14,15を備えている。
【0022】
シートパッド補強布1に成型されるシートの材料としては、例えば不織布を用いることができるが、空気に対する通気性を有する材料であれば、特に限定されない。なお、以下の説明では、シートの材料に不織布を用いる場合を取り上げるが、シートパッド補強布1に成型される前の不織布シートを単に「不織布シート」といい、成型後の不織布シートを「シートパッド補強布」という。
【0023】
不織布をシートの材料として用いる場合、低融点繊維と高融点繊維とが混合された不織布シートを用いることが好ましい。このような不織布シートを用いた場合、後述する本発明の実施形態に係る方法における不織布シートの加熱時には、低融点繊維が溶融して、不織布シート全体が軟化することで、シートパッド補強布1の成型が容易になる。また、成型後冷却固化されたシートパッド補強布1は、低融点繊維の熱可塑性樹脂成分が高融点繊維または低融点繊維に溶融固着されることで適度な剛性を有することとなり、形状が良好に保持される。
ここで、シートパッド補強布1は、後述する第1のカバーで覆われる部分(屈曲音が生じやすい部分)の剛性(第2の剛性)が、それ以外の部分の剛性(第1の剛性)よりも低くなっている。より詳細には、側部12及び背部11の下部の少なくとも一方(この実施形態では両方)が、部分的に他の部分より剛性が低くされている。
【0024】
低融点繊維と高融点繊維とが混合されたシートには、次のような材料を用いることができる。
【0025】
まず、低融点繊維としては、高融点繊維よりも融点が低く、特定の軟化点及び溶融粘度を有するものが用いられる。具体的には、高融点繊維と混合して高融点繊維の融点より低い温度で溶融して高融点繊維間を融着することができるホットメルト型の接着性繊維が用いられる。また、使用される繊維の太さは、1.5〜10d(デニール)程度が好ましい。
【0026】
このような低融点繊維としては、例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂繊維があげられる。これらの繊維は単独で用いてもよいし、高融点繊維と組合せることでコンジュゲート型、芯鞘型構造等としたものでもよい。この低融点繊維の繊度、繊維長は特に限定されない。また、低融点繊維の融点は、好ましくは100〜160℃程度(もしくは、軟化点が80〜140℃程度)であることが好ましい。さらに、低融点繊維はスチーム活性を有することが好ましく、不織布シートを加熱する際に加熱蒸気を用いる場合には、特に好適である。
【0027】
一方、高融点繊維としては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン等が用いられる。この高融点繊維の繊度、繊維長も特に限定されない。この高融点繊維の融点は180℃以上(もしくは、軟化点が160℃以上)であればよい。また、低融点繊維と高融点繊維との融点の差(もしくは軟化点の差)が50℃以上あることが好ましい。
【0028】
後述する本発明の実施形態に係る製造方法に用いる不織布シートの場合、低融点繊維と高融点繊維との混合は、不織布シート全体に対して低融点繊維20〜60重量%(高融点繊維80〜40重量%)混合されていることが好ましく、不織布シート全体に対して低融点繊維30〜60重量%(高融点繊維70〜40重量%)混合されていることがより好ましい。このような混合率とすることで、第1のカバーで覆われた部分の剛性を他の部分よりも低くするだけでなく、スプリングなどの支持部材から大きい荷重が加わる環境で使用されるシートパッド補強布であっても、そのような荷重に耐えつつ、屈曲音の発生を抑えるために充分な剛性をシートパッド補強布全体に与えることができる。より具体的には、低融点繊維の混合率が20重量%より少ないと融着部分が少なくなるため、シートパッド補強布として所望の剛性が得られないおそれがある。また、低融点繊維の混合率が30重量%以上とすることで、スプリングなどの支持部材から大きい荷重が加わる環境で使用に適した高い剛性を得ることができる。一方、低融点繊維の混合率が60重量%より大きいと、剛性が顕著に出るため型からの脱型が困難になるだけでなく、脱型後も高すぎる剛性により異音が発生しやすくなり、シート表面がプラスチック化して繊維が残らなくなるためにシートパッド補強布として用いた時にこすれ音が発生しやすくなる。
【0029】
また、シートパッド補強布1の成型に用いられるシートとしては、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートを用いても、低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートと同様の効果を得ることができる。
【0030】
不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートの場合、含有させる熱可塑性樹脂としては、粒状ホットメルト接着樹脂(接着剤)を用いることが好ましい。例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニールクロリド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンビニールアセテート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチラール樹脂等があり、これらの混合物であってもよい。また、融点は70〜100℃のものが好ましい。粒状ホットメルト接着剤の粒径としては200μm以下が好ましく、必要に応じて粒径分布を変えてもよい。
【0031】
また、シートには、樹脂等の液体が浸透しにくい樹脂滲み出し防止シートの少なくとも片面に不織布が積層された2層以上の構造のものを用いることができる。なお、ここでいう樹脂滲み出し防止とは、ウレタン樹脂等のシートパッドの成型に用いる樹脂が浸透しづらい性質を意味する。このような材料を用いることで、シートパッド補強布の成型後に、従来と同様の方法によりウレタン樹脂等を用いてシートパッドの成型及び補強層の形成を行うときに、樹脂が滲み出すことを防止できる。このような低浸透性シートの材料としては、例えばポリウレタンフィルムやウレタン樹脂等の浸透が遅い高密度不織布を用いることができる。
【0032】
次に、図2〜6,11及び12を用いて、本発明に係るシートパッド補強布の製造装置を説明する。
【0033】
図2及び6は、シートパッド補強布の製造装置2を示す斜視図である。シートパッド補強布の製造装置2は、型20と、型20が固定される基部30と、型20を覆いつつ基部30に固定されることで閉塞空間41を形成するカバー材40(第2のカバー)と、閉塞空間41へ空気の給排気を行う給排気ユニット50と、前面保護カバー70(第1のカバー)と、2つの側面保護カバー80(第1のカバー)とを備えている。
【0034】
型20は、シートパッド補強布1と略同一の外形を有し、外面から内部空間26に連通する複数の通気孔25を備えており(図11及び12参照)、荒裁ちされたシート1Bはこの型20に固定される(図4〜6参照)。より詳細には、型20は、前面部21と、側面部22と、筒部23と、後面部24と、複数の通気孔25とを備える(図11及び12参照)。型20の前面部21はシートパッド補強布1の背部11を成型する部分となり、側面部22はシートパッド補強布1の側部12及び回り込み部15を成型する部分となる(図12参照)。また、型20の筒部23はシートパッド補強布1の貫通孔13の周囲を成型する部分となり、後面部24はシートパッド補強布1の回り込み部14を成型する部分となる(図11参照)。
【0035】
通気孔25は、型20の外面から内部空間26に連通するように形成され、給排気ユニット50によって閉塞空間41へ空気の給排気を行う時に、空気の流路となる。通気孔25は、前面部21、側面部22、筒部23及び後面部24の各所に設けられている。なお、シートパッド補強布1を型20に沿った形状とするために、角部(図11のA部及び図12のB部)には通気孔25を他の箇所よりも多く設けることが好ましい。また、型20の材質は特に限定されないが、加工性及び熱伝導性の面からアルミニウムを用いることが好ましい。
【0036】
基部30は、基台31と、基台31から立設されると共にそれぞれ型20に取付けられた給気支脚32及び排気支脚33とを備えている。給気支脚32及び排気支脚33は中空であり、型20の内部空間26と連通されることで、図示しない基台31内部の給気路及び排気路と共に閉塞空間41と給排気ユニット50とをつなぐ空気の流路となる。
【0037】
第2のカバーであるカバー材40は、型20と後述する第1のカバー(前面保護カバー70及び側面保護カバー80)とを覆うことで閉塞空間41を形成する。このカバー材40は、不織布シートが固定された型20、前面保護カバー70及び側面保護カバー80を覆うことができるものであれば、特に形状及び大きさは限定されないが、取り扱いやすさを考慮して、例えば袋状フィルムを用いることができる。また、図6に示される形態では、カバー材40は基台31に対して固定されているが、不織布シート1B等を覆う閉塞空間41を形成するように固定されていれば良く、例えば、給気支脚32及び排気支脚33に固定するようにしてもよい。
【0038】
カバー材40の材料は、加熱され、且つ、給排気ユニット50の給排気により膨張と不織布シート1B及び型20への密着が繰り返し行われるため、これを満足するような性能を有するものが選定される。
【0039】
図1のような車両用座席シートの背もたれ部に用いられるシートパッド補強布を成型する場合には、カバー材40の材料は、伸度が300%以上あるものが好ましく、厚さは30〜100μm程度が好ましい。なお、車両用座席シートにおける座部用のシートパッド補強布のように、比較的形状が単純なものを成型する場合には、カバー材の伸度は300%よりも低いものであってもよい。これらの点を考慮して、袋状のフィルムであるカバー材40の材料としては、例えば、伸度300%、厚み50μmのポリウレタンを用いることができる。
【0040】
図2に示されるように、給排気ユニット50は、給気ユニット51(加熱ユニット)と、給気ユニット51と基部30内部の給気路とを接続する給気管52と、排気ユニット54と、排気ユニット54と基部30内部の排気路とを接続する排気管53とを備えている。
【0041】
給気ユニット51は、給気管52、基部30内部の給気路及び給気支脚32を介して型20の内部空間26に加熱空気を供給するユニットであり、型20及び不織布シート1Bを加熱する加熱ユニットとしての機能を有する。この給気ユニット51から供給される加熱空気は型20の内部空間26を経由して、通気孔25を介して閉塞空間41に供給されるため、加熱空気の供給に伴ってカバー材40が膨らむ。なお、加熱空気には、単に加熱された空気だけでなく加熱蒸気を含む。加熱蒸気を用いた場合、不織布シート1B(特に、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートや、低融点繊維と高融点繊維とを混合させたシート)が溶融固化する時間、すなわち補強布の成型時間を短縮することができる。
【0042】
排気ユニット54は、閉塞空間41内の空気を排気するユニットであり、通気孔25、型20の内部空間26、排気支脚33、基部30内部の排気路(図示せず)及び排気管53を介して閉塞空間41の空気を排気することができる。
【0043】
前面保護カバー70(第1のカバー)及び2つの側面保護カバー80(第1のカバー)は、型20に固定されたシート1Bの表面に固定されることでシート1Bの表面の一部を覆う。
【0044】
図3及び図6に示される前面保護カバー70は、型20の形状に沿う縁部71aを有するカバー部71と、縁部71aに取り付けられた磁石72と、2つのカバー部71を連結する連結部73とを備えている。図6では、連結部73に取り付けられた紐90によって型20から吊るされた前面保護カバー70が、磁石72を介して型20の前面下部に固定された状態を示している。これにより、型20に固定されたシート1Bの前面下部の一部が覆われる。また、本実施形態では、前面保護カバー70の磁石72を縁部71aに取り付けて、前面保護カバー70の少なくとも一部が磁性を有する材料で構成している。このように構成することで、磁性を有する材料で全体を構成する場合と比べて前面保護カバー70を作業者が意図した位置に簡単に固定することができる。図示しないが、型20の内部には、前面保護カバー70が固定されるべき位置に磁石が設けられている。なお、型20内部の磁石に代えて、型20に磁石または鉄ねじを埋め込んでもよい。また、前面保護カバー70の固定手段は磁石以外のものであってもよい。
【0045】
前面保護カバー70が覆うべきシート1Bの表面の一部は、成型品であるシートパッド補強布1が屈曲される際に生じる異音(屈曲音)の発生を抑えるために適切な位置であれば、特に限定されない。カバー部71も、屈曲音の発生を抑えるために適切な数や形状とされるべきものであり、1つのカバー部で前面保護カバーを構成する場合には連結部73が不要となることは言うまでもない。
【0046】
また、図6に示される側面保護カバー80は直方体状の箱型であり、型20の側面の下半分においてシート1Bの表面の一部を覆うように固定されている。しかしながら、本発明はこの態様に限定されるものではなく、シートパッド補強布1が屈曲される際に生じる異音(屈曲音)の発生を抑えるために適切な形状とし、適切な位置に固定すればよい。また、側面保護カバー80の固定手段は磁石以外のものであってもよい。
【0047】
ここまでで説明したように、本実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置は、プレス加工装置ではないため凹凸両面の型は不要である。さらに、図11や図12に示されるような複雑な形状を有する回り込み部14,15の成型にもスライドコア型といった特別な型も不要である。そのため、型製作の費用と時間を節約することができる。
【0048】
次に、図4から図13を用いて、本発明のシートパッド補強布の製造方法を説明する。なお、以下の説明では、本発明の実施形態に係る製造装置を用いてシートパッド補強布を製造する場合を説明する。
【0049】
図4に示されるように、本発明に用いられる不織布シート1B(すなわち、成型前のシートパッド補強布1)は、使用される車両用シートパッド補強布の形状を展開した形に予め荒裁ちして供給される。このように裁断することでシートパッド補強布の成型後に不要部分を切除する手間をなくすことができる。
【0050】
裁断された不織布シート1Bは、図5に示されるように型20に被せられた後に、図示しない磁石で固定される。磁石は型20の内面に予め取付けられており、型20に被せた不織布シート1Bの上に別の磁石を置くことで、不織布シート1Bを固定する。または、磁石または鉄ねじを型20に埋め込み、不織布シート1Bを外部から抑える部材に磁石を用いて固定するようにしてもよい。このように不織布シート1Bを固定することで、給排気ユニット50による加熱空気の給排気時に不織布シートが外れることを防止できる。このようにして、シートパッド補強布1と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔25を備える型20に、荒裁ちされたシート1Bを被せて固定する。なお、図5では、説明のため、不織布シート1Bを透明として示している。
【0051】
不織布シート1Bを型20に固定した後、図6に示されるように、前面保護カバー70及び2つの側面保護カバー80を磁石で所定の位置に固定する。これにより、型20に固定された不織布シート1Bの表面に前面保護カバー70及び2つの側面保護カバー80を第1のカバーとして固定することで、不織布シート1Bの表面の一部を当該第1のカバーで覆う。さらに、型20に固定された不織布シート1Bと、不織布シート1Bの表面に固定された前面保護カバー70及び側面保護カバー80とをカバー材40によって覆うことで、型20とカバー材40とにより閉塞空間を形成する
【0052】
なお、必須のステップではないが、不織布シート1Bをカバー材40によって覆うことで閉塞空間41を形成した後に(換言すれば、後述する不織布シート1Bを加熱するステップの前に)、図7に示されるように、型20の通気孔25を介して閉塞空間41内の空気を排気する予備排気を実施するとよい。この予備排気を実施することで、閉塞空間41内の空気が一旦排気されるため、カバー材40によって不織布シート1Bを型20に密着させることができ、不織布シート1Bを型20の外面の形状に合わせて成型しやすくなる。
【0053】
つづいて、図8に示されるように、型20とカバー材40とにより閉塞空間41を形成した後に(もしくは、上述の予備排気の後に)、給排気ユニット50の給気ユニット51(加熱ユニット)から型20の内部に加熱蒸気(又は加熱空気)を供給することで、不織布シート1B及び型20を加熱する。このとき、加熱蒸気は型20の通気孔25を介して閉塞空間41まで供給されるため、カバー材40が膨らむ。
【0054】
不織布シート1Bを加熱した後、排気ユニット54を動作させて、図9に示されるように閉塞空間41から空気を排気する。排気ユニット54が動作することで、閉塞空間41の空気は、通気性を有する不織布シート1B及び型20の通気孔25を介して型20の内部に流入する。そして、型20の内部は、排気支脚33、基台31の排気路、排気管53を介して、排気ユニット54と連通しているため、閉塞空間41の空気を排気することができる。図10の概念図で示されるように、空気の排気によって、膨らんでいたカバー材40は型20に吸い寄せられるように収縮し、加熱されて可塑性が高くなっている不織布シート1Bはカバー材40の収縮にあわせて型20に吸い寄せられるように変形する。このようにして、型20の通気孔25を介して閉塞空間41から空気が排気され、加熱された不織布シート1Bは型20に密着し、型20の外形に沿った形状に加工される。
【0055】
なお、加熱された不織布シート1Bにおいて前面保護カバー70及び側面保護カバー80で覆われた部分は、カバー材40によって押し付けられることがないため、シートが加熱されにくいだけでなく、閉塞空間41からの排気によりカバー材40がしぼんで貼り付くことで加わるシートへの圧力も抑えることができる。したがって、前面保護カバー70及び側面保護カバー80で覆われた部分では、それ以外の部分のように溶融した樹脂がカバー材40によりしっかりと固められるのが抑えられるため、シートを型の外形に沿った形状に加工した後も、前面保護カバー70及び側面保護カバー80で覆われた部分の剛性を他の部分よりも低くすることができる。これにより、成型後のシートパッド補強布1において異音が発生しやすい部分の成型条件を選択的に変化させて剛性を部分的に低下させることによって、屈曲音の発生を抑えることができる。
【0056】
閉塞空間41の空気を排気して、不織布シート1Bが形状を保持する温度まで冷却させた後、図13に示されるように、カバー材40を外し、さらに前面保護カバー70及び側面保護カバー80を外して、成型された不織布シート1B(すなわち、シートパッド補強布1)を型20から取り外す。なお、冷却させた不織布シート1Bは、ある程度の剛性を有しているが、型20から外す上での支障となるものではないため、容易に取り外すことができる。
【0057】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置では加熱蒸気(又は加熱空気)を利用して不織布シート1Bを加熱しているが、型20そのものをヒーター等によって加熱することで不織布シート1Bを加熱してもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明に係るシートパッド補強布の製造方法及び製造装置によって製造されたシートパッド補強布の実施例及び比較例を、それらの評価結果及び測定結果とあわせて説明する。
【0059】
シートパッド補強布の製造に用いるシートには、下記の低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートにニードルパンチを施したフェルトを用いた。
・低融点繊維: ポリエステル100%、繊維長38mm、繊維太さ4.4D(デシテックス)、融点110℃(軟化点90℃)
・高融点繊維: ポリエステル100%、繊維長51mm、繊維太さ1.7D(デシテックス)、融点200℃(軟化点180℃)
【0060】
また、成型に用いる加熱蒸気の温度は、低融点繊維の融点より高く、且つ高融点繊維の融点より低い温度として、具体的には次のような成型条件とした。
・加熱蒸気温度(スチーム温度):100℃
・加熱蒸気供給時間:12秒
【0061】
まず、低融点繊維の含有量と保護カバーの有無が成型後のバネ受け材(シートパッド補強布)の剛性及び屈曲音に与える影響を検討するため、実施例1〜4及び比較例1〜4に係るフェルト(不織布シート)を用意した。実施例1〜4及び比較例1〜4に係るフェルトの仕様及びバネ受け材の成型条件は表1の通りである。なお、成型条件における「カバー有」とは前面保護カバー70及び/又は側面保護カバー80でフェルトの表面における特定部分(従来の製造方法では屈曲音が発生する部分)を覆ってバネ受け材を成型した場合を示し、「カバー無」とは従来通りに保護カバーを用いずにバネ受け材を成型した場合を示す。
【表1】
【0062】
上述したシートパッド補強布の製造装置及び製造方法にて上記実施例及び比較例に係るバネ受け材を作成し、バネ受け剛性、バネ受け屈曲音及びシートパッド屈曲音を評価した。その結果を表2に示す。表2において、○はバネ受け材として「良好」、△はバネ受け材として「合格」、×はバネ受け材として「不具合あり」を意味する。ここで、バネ受け剛性が良好とは、具体的には、JIS L1069に規定された剛性(スティフネス)の測定法であるハンドルオメーター法による測定結果に基づく評価であり、成型後のバネ受け材において保護カバーで覆わなかった部分の数値が0.2N以上であったことを意味する。また、バネ受け屈曲音が良好とは、成型後のバネ受け材を屈曲させた時に音の発生がなかったことを意味し、シートパッド屈曲音が良好とは、バネ受け材上にウレタン樹脂等を発泡成形させてシートパッドとした状態で屈曲させた時に音の発生がなかったことを意味する。
【表2】
【0063】
表2に示される評価結果からわかるように、低融点繊維の含有量を30〜60重量%としたとき、成型後のバネ受け材(シートパッド補強布)は充分な剛性を有しつつ、バネ受け屈曲音及びシートパッド屈曲音の発生が抑えられていることが確認された。
【0064】
次に、保護カバー(前面保護カバー70及び/又は側面保護カバー80)が成型後のバネ受け材(シートパッド補強布)における剛性分布に与える影響を比較するため、実施例5〜8及び比較例5に係るフェルト(不織布シート)を用意した。実施例5〜8及び比較例5におけるフェルトの仕様及びバネ受け材の成型条件は表3の通りである。
【表3】
【0065】
実施例1〜4及び比較例1〜4の場合と同様に、上述したシートパッド補強布の製造装置及び製造方法にて上記実施例及び比較例に係るバネ受け材を作成し、JIS L1069のハンドルオメーター法にて、保護カバーで覆わなかった部分と保護カバーで覆った部分との剛性を測定した。その結果を表4に示す。
【表4】
【0066】
表4に示される測定結果からわかるように、低融点繊維の含有量を20〜60重量%としたとき、保護カバーで覆わなかった部分には0.2N以上の高い剛性が付与され、保護カバーで覆った部分には相対的に低い剛性を付与されている。この測定結果より、成型後のバネ受け材(シートパッド補強布)において、保護カバーで覆った部分の剛性を他の部分よりも低くすることで屈曲音の発生を抑えつつ、スプリングなどの支持部材から大きい荷重が加わる部分については屈曲音の発生を抑えるために充分な剛性を付与することが可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】シートパッド補強布の斜視図である。
【図2】シートパッド補強布の製造に用いる製造装置の斜視図であって、前面保護カバーを取り除いた状態を示す図である。
【図3】シートパッド補強布の製造に用いる製造装置の一部である前面保護カバーの斜視図である。
【図4】加工前のシートパッド補強布である荒裁ちされた不織布シートを示す図である。
【図5】荒裁ちされた不織布シートを型に固定するステップを説明する図である。
【図6】不織布シート、前面保護カバー及び側面保護カバーが固定された型をカバー材で覆うステップを説明する図である。
【図7】カバー材で覆った後に、型とカバー材で形成される閉塞空間から空気を排気するステップを説明する図である。
【図8】型の内部空間に加熱蒸気(加熱空気)を供給するステップを説明する図である。
【図9】型とカバー材で形成される閉塞空間から空気を排気することで、不織布シートを型の外形に沿った形状に加工するステップを説明する図である。
【図10】不織布シートを型の外形に沿った形状に加工するステップを説明するための概念図である。
【図11】図9のXI−XI線に沿ったシートパッド補強布、型及び前面保護カバーの縦断面図である。
【図12】図9のXII−XII線に沿ったシートパッド補強布及び型の横断面図である。
【図13】カバー材を外し、不織布シートを加工してなるシートパッド補強布を型から取り外すステップを説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
1…シートパッド補強布、1B…不織布シート、11…背部、12…側部、13…貫通孔、20…型、21…前面部、22…側面部、23…筒部、24…後面部、25…通気孔、26…内部空間、30…基部、31…基台、32…給気支脚、33…排気支脚、40…カバー材(第2のカバー)、41…閉塞空間、50…給排気ユニット、51…給気ユニット(加熱ユニット)、52…給気管、53…排気管、54…排気ユニット、70…前面保護カバー、80…側面保護カバー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備える型に、荒裁ちされたシートを被せて固定するステップと、
前記型に固定された前記シートの表面に第1のカバーを固定することで、前記シートの表面の一部を前記第1のカバーで覆うステップと、
前記型に固定された前記シートと前記シートの表面に固定された前記第1のカバーとを第2のカバーによって覆うことで、前記型と前記第2のカバーとにより閉塞空間を形成するステップと、
前記シートを加熱するステップと、
前記通気孔を介して前記閉塞空間から空気を排気することで、加熱された前記シートを前記型の外形に沿った形状に加工するステップと、
前記第1のカバーと前記第2のカバーを外し、加工された前記シートを前記型から取り外すステップと、を備えるシートパッド補強布の製造方法。
【請求項2】
前記第1のカバーの少なくとも一部が磁性を有する材料で構成されており、
前記シートの表面の一部を前記第1のカバーで覆うステップにおいて、前記第1のカバーが磁石で固定されることを特徴とする請求項1に記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項3】
前記シートを加熱するステップにおいて、前記閉塞空間内に加熱空気を導入することにより前記シートを加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項4】
前記シートは、低融点繊維と高融点繊維とが混合された繊維シートであって、
前記シートを加熱するステップにおいて、前記低融点繊維が溶融する温度以上であって前記高融点繊維が溶融する温度以下まで前記シートを加熱することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項5】
シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備え、荒裁ちされたシートが固定される型と、
前記型に固定された前記シートの表面に固定されることで前記シートの表面の一部を覆う第1のカバーと、
前記型と前記第1のカバーとを覆うことで閉塞空間を形成する第2のカバーと、
前記シートを加熱する加熱ユニットと、
前記閉塞空間内の空気を排気する排気ユニットと、を備えるシートパッド補強布の製造装置。
【請求項6】
前記型は前記第1のカバーを固定するための磁石を更に備え、
前記第1のカバーの少なくとも一部が磁性を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項5に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項7】
座席シートのシートパッドを裏面側から補強するシートパッド補強布であって、
不織布に熱可塑性樹脂を溶融固着させて保形しており、
第1の剛性を有する部分と、前記第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する部分とを有することを特徴とするシートパッド補強布。
【請求項8】
座席シートの背もたれ部のシートパッドを裏面側から補強するシートパッド補強布であって、
背部と該背部の左右から前方に張り出し裏面に回り込む側部とを有し、
前記第2の剛性を有する部分は、前記側部及び前記背部の下部の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のシートパッド補強布。
【請求項1】
シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備える型に、荒裁ちされたシートを被せて固定するステップと、
前記型に固定された前記シートの表面に第1のカバーを固定することで、前記シートの表面の一部を前記第1のカバーで覆うステップと、
前記型に固定された前記シートと前記シートの表面に固定された前記第1のカバーとを第2のカバーによって覆うことで、前記型と前記第2のカバーとにより閉塞空間を形成するステップと、
前記シートを加熱するステップと、
前記通気孔を介して前記閉塞空間から空気を排気することで、加熱された前記シートを前記型の外形に沿った形状に加工するステップと、
前記第1のカバーと前記第2のカバーを外し、加工された前記シートを前記型から取り外すステップと、を備えるシートパッド補強布の製造方法。
【請求項2】
前記第1のカバーの少なくとも一部が磁性を有する材料で構成されており、
前記シートの表面の一部を前記第1のカバーで覆うステップにおいて、前記第1のカバーが磁石で固定されることを特徴とする請求項1に記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項3】
前記シートを加熱するステップにおいて、前記閉塞空間内に加熱空気を導入することにより前記シートを加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項4】
前記シートは、低融点繊維と高融点繊維とが混合された繊維シートであって、
前記シートを加熱するステップにおいて、前記低融点繊維が溶融する温度以上であって前記高融点繊維が溶融する温度以下まで前記シートを加熱することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項5】
シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備え、荒裁ちされたシートが固定される型と、
前記型に固定された前記シートの表面に固定されることで前記シートの表面の一部を覆う第1のカバーと、
前記型と前記第1のカバーとを覆うことで閉塞空間を形成する第2のカバーと、
前記シートを加熱する加熱ユニットと、
前記閉塞空間内の空気を排気する排気ユニットと、を備えるシートパッド補強布の製造装置。
【請求項6】
前記型は前記第1のカバーを固定するための磁石を更に備え、
前記第1のカバーの少なくとも一部が磁性を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項5に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項7】
座席シートのシートパッドを裏面側から補強するシートパッド補強布であって、
不織布に熱可塑性樹脂を溶融固着させて保形しており、
第1の剛性を有する部分と、前記第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する部分とを有することを特徴とするシートパッド補強布。
【請求項8】
座席シートの背もたれ部のシートパッドを裏面側から補強するシートパッド補強布であって、
背部と該背部の左右から前方に張り出し裏面に回り込む側部とを有し、
前記第2の剛性を有する部分は、前記側部及び前記背部の下部の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のシートパッド補強布。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−220445(P2009−220445A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68249(P2008−68249)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)
【出願人】(505084044)株式会社型技術事務所モート (3)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)
【出願人】(505084044)株式会社型技術事務所モート (3)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]