説明

シートベルトを備えた育児器具

【課題】 座席をベッド状の形態にしたときには自動的にその形態に適したバックルの高さになり、また椅子状の形態にしたときには自動的にその形態に適したバックルの高さになる育児器具を提供する。
【解決手段】 座部11を通過する股ベルト14は、その下端が固定部材13に固定されており、その上端にバックル15を含む。背もたれ部12を起立状態から水平に近い後傾状態にまで倒すと、座部11が連動して固定部材13上を前方に移動する。座部11の前方への移動に伴い、下端が固定部材13に固定された股ベルト14の突出長さが小さくなり、バックル15が相対的に低くて前方に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用子供座席、乳母車、育児椅子等の育児器具に関し、特にシートベルトを備えた育児器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第3288002公報(特許文献1)は、シートベルトを備えた自動車用年少者安全座席を備えている。この公報に開示された座席は、座部と、座部の後方端に回動可能に連結された背もたれ部と、子供の身体を拘束するシートベルトとを備える。座席は、椅子状の形態とベッド状の形態とに切換え可能である。すなわち、座席の座部は、起立状態から、水平に近い位置にまで後傾可能になっている。座席は、子供の身体が小さい段階ではベッド状の形態で使用され、成長して子供の身体が大きくなった段階では椅子状の形態で使用される。
【0003】
特許第3288002号公報に開示された自動車用年少者安全座席では、座部がベース上を前後に移動可能に設けられている。背もたれ部が起立状態にあるときには、座部は相対的に後方に位置し、背もたれ部が水平に近い位置にまで後傾した状態では、座部は相対的に前方に位置する。
【0004】
特許第3288002号公報に開示された座席のシートベルトは、股ベルトと、一対の腰ベルトと、一対の肩ベルトとを備え、それらは股ベルトの上端に取付けられたバックルを介して着脱可能に連結されている。バックルの高さは一定である。そのため、バックルの高さを小さな身体の時期に合わせると、成長して大きくなった身体には不適切に低くなり、窮屈なものとなる。一方、バックルの高さを大きな身体の時期に合わせると、小さな身体の時期には不適切に高くなる。
【0005】
特開2000−313306号公報(特許文献2)は、バックルの位置を上下に調節することができるシートベルトの調節装置を開示している。この公報に開示された装置では、前方拘束ベルトの下端取付手段を座席内において座席の前後方向に移動自在に設けている。下端取付手段を座席の前方位置にまで動かすと、前方拘束ベルトの長さが大きくなり、下端取付手段を座席の後方位置にまで動かすと、前方拘束ベルトの長さが小さくなる。
【特許文献1】特許第3288002号公報
【特許文献2】特開2000−313306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2000−313306号公報に開示されたシートベルト調節装置では、前方拘束ベルトの下端取付手段の位置を調節することによってバックルの高さを変えている。このようなシートベルト調節装置を特許第3288002号公報に開示された自動車用年少者安全座席に適用したとすると、身体の小さい子供に適したベッド状の形態の時には下端取付手段を座席の後方位置にまで動かして前方拘束ベルトの長さを小さくし、身体の大きい子供に適した椅子状の形態のときには下端取付手段を座席の前方位置にまで動かして前方拘束ベルトの長さを大きくするといった作業が必要になる。このような下端取付手段の位置変更作業は使用者にとって煩わしい。
【0007】
この発明の目的は、座席をベッド状の形態にしたときには自動的にその形態に適したバックルの高さになり、また椅子状の形態にしたときには自動的にその形態に適したバックルの高さになる育児器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、固定部材と、この固定部材上に設置される座席と、座席内の子供の身体を拘束するシートベルトとを備えた育児器具を前提とし、次のことを特徴とする。
【0009】
座席は、起立状態から後傾状態にまでリクライニング動作可能な背もたれ部と、座部とを含む。座部は、固定部材上を前後に移動可能であり、背もたれ部が起立状態にあるとき後方に位置し、背もたれ部が後傾状態にあるとき前方に位置する。シートベルトは、座部を上下に通過する股ベルトを含む。股ベルトは、その下端が固定部材に固定され、その上端にバックルを含む。座部の前後の動きに伴って、座部から突出する股ベルト部分の長さが変化し、背もたれ部が起立状態にあるときバックルは相対的に高くて後方に位置し、背もたれ部が後傾状態にあるときバックルは相対的に低くて前方に位置する。
【0010】
上記の構成によれば、背もたれ部の後傾動作に連動して座部が前方に移動し、この座部の移動に連動してバックルの高さが低くなるので、非常に使い易い育児器具となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1および図2は、この発明の一実施形態に係る育児器具の座席を図解的に示している。この育児器具は、例えば自動車用子供座席、乳母車、育児椅子等である。図1では、座席が椅子状の形態になっており、比較的大きな身体の子供が着座している。図2では、座席がベッド状の形態になっており、比較的小さな身体の子供が寝かされている。
【0012】
固定部材13上に設置された座席10は、座部11と、背もたれ部12と、子供の身体を拘束するシートベルトとを備える。背もたれ部12は、図1に示す起立状態から図2に示す後傾状態にまでリクライニング動作可能である。座部11は、固定部材13上を前後に移動可能であり、背もたれ部12の後傾動作に連動して固定部材上を前方に移動する。すなわち、座部11は、背もたれ部12が起立状態にあるときには後方に位置し、背もたれ部12が後傾状態にあるときには前方に位置する。背もたれ部12のリクライニング動作に連動して座部11が前後に動くようにする構造は、例えば、特許第3288002号公報に記載されており、公知である。
【0013】
子供の身体を拘束するシートベルトは、股ベルト14と、腰ベルトと、肩ベルトとを備える。図1および図2においては、腰ベルトおよび肩ベルトの図示を省略している。なお、肩ベルトを有しないシートベルトであってもよい。
【0014】
股ベルト14は、座部11の貫通穴16を通過しており、その下端が固定部材13に固定され、その上端にバックル15を含む。貫通穴16の壁面と股ベルト14との間の隙間は小さくされているので、座部11が図1に示す後方位置から図2に示す前方位置にまで移動すると、座部11から上に突出する股ベルト部分の長さが小さくなる。
【0015】
成長して身体が大きくなった子供は、図1に示す椅子状の形態とされた座席10上に座る。図1に示すように、背もたれ部12が起立状態にあるときには、バックル15は相対的に高くて後方に位置する。このバックル15の位置は、身体が大きくて着座した姿勢の子供に対して適切である。
【0016】
身体が小さい時期の子供に対しては、座席10は、図2に示すベッド状の形態とされる。図2に示すように背もたれ部12を起立状態から後傾状態にまで倒すと、連動して座部11が固定部材13上を前方に移動する。この座部11の前方への移動に伴って、股ベルト14を通過させている貫通穴16も前方に移動するので、下端が固定部材13に固定されている股ベルト14の突出長さが小さくなり、バックル15は相対的に低くて前方に位置する。このバックル15の位置は、身体が小さくて寝た姿勢の子供に対して適切である。図2において、椅子状の形態の時のバックルの位置を想像線で示している。
【0017】
背もたれ部12を図2の後傾状態から図1の起立状態にまで起こすと、座部11が連動して後方に移動し、それに伴いバックル15が相対的に高くて後方に位置するようになる。
【0018】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、自動車用子供座席、乳母車、育児椅子等のシートベルトを備えた育児器具に有利に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】椅子状の形態の座席を示す図解図である。
【図2】ベッド状の形態の座席を示す図解図である。
【符号の説明】
【0021】
10 座席、11 座部、12 背もたれ部、13 固定部材、14 股ベルト、15 バックル、16 貫通穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、前記固定部材上に設置される座席と、前記座席内の子供の身体を拘束するシートベルトとを備えた育児器具において、
前記座席は、起立状態から後傾状態にまでリクライニング動作可能な背もたれ部と、前記固定部材上を前後に移動可能であり、前記背もたれ部が起立状態にあるとき後方に位置し、前記背もたれ部が後傾状態にあるとき前方に位置する座部とを含み、
前記シートベルトは、前記座部を上下に通過する股ベルトを含み、
前記股ベルトは、その下端が前記固定部材に固定され、その上端にバックルを含み、
前記座部の前後の動きに伴って、座部から突出する前記股ベルト部分の長さが変化し、前記背もたれ部が起立状態にあるとき前記バックルは相対的に高くて後方に位置し、前記背もたれ部が後傾状態にあるとき前記バックルは相対的に低くて前方に位置することを特徴とする、シートベルトを備えた育児器具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−248487(P2006−248487A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71619(P2005−71619)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】