説明

シートベルト変位検出装置

【課題】検出手段を容易に設置する。
【解決手段】シートベルト装置14では、乗員16にシートベルト24が装着された際に、乗員16の呼吸や心拍によってシートベルト24が変位されてスリップジョイント26が回動されることで、圧電フィルムセンサが変形される。圧電フィルムセンサは変形速度が大きくなるに従い出力電圧が大きくなるため、圧電フィルムセンサの出力電圧に基づいてスリップジョイント26の回動速度が測定されて、乗員16の生体状態が検出される。ここで、スリップジョイント26に圧電フィルムセンサが接続されるため、圧電フィルムセンサを容易にシートベルト装置14に設置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員に装着されるシートベルトの変位を検出して乗員の生体状態を検出するシートベルト変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された生体状態判断装置では、シートベルトのドライバと接触する面又はシートベルトの内部に人体用センサ(圧電ケーブルセンサ)が設けられており、ドライバの呼吸や心拍によって人体用センサの形状が変化することで、人体用センサがシートベルトの微小な変位(振動)を検出して、ドライバの生体状態が判断される。
【0003】
しかしながら、この生体状態判断装置では、シートベルトに人体用センサが設けられている。このため、人体用センサに設けられるハーネスをシートベルトに沿って設置する必要があり、人体用センサ(ハーネスを含む)の設置が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−95408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、検出手段を容易に設置できるシートベルト変位検出装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のシートベルト変位検出装置は、車両に設けられるシートベルトと、前記シートベルトが折り返された状態で支持されると共に長手方向一側へ付勢された状態で長手方向へ移動可能に通過され、前記シートベルトが変位されることで回動可能にされた支持部材と、前記シートベルトが前記支持部材より長手方向他側において車両の乗員の胸部に装着された際に前記シートベルトの変位に伴い前記支持部材が回動する速度を測定することで乗員の呼吸及び心拍の少なくとも一方を検出して乗員の生体状態を検出する検出手段と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載のシートベルト変位検出装置は、車両に設けられるシートベルトと、前記シートベルトが折り返された状態で支持されると共に長手方向一側へ付勢された状態で長手方向へ移動可能に通過され、前記シートベルトが変位されることで回動可能にされた支持部材と、前記シートベルトが前記支持部材より長手方向他側において車両の乗員の胸部に装着された際に前記シートベルトの変位に伴い前記支持部材が回動する加速度を測定することで乗員の呼吸及び心拍の少なくとも一方を検出して乗員の生体状態を検出する検出手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載のシートベルト変位検出装置では、車両に設けられるシートベルトが、折り返された状態で支持部材に支持されると共に、長手方向一側へ付勢された状態で支持部材を長手方向へ移動可能に通過されており、シートベルトが変位されることで、支持部材が回動可能にされている。
【0009】
ここで、シートベルトが支持部材より長手方向他側において車両の乗員の胸部に装着された際に、検出手段が、シートベルトの変位に伴い支持部材が回動する速度を測定することで、乗員の呼吸及び心拍の少なくとも一方を検出して、乗員の生体状態を検出する。
【0010】
このように、検出手段が支持部材の回動速度を測定するため、支持部材に対して検出手段を設置すればよい。これにより、検出手段を容易に設置できる。
【0011】
さらに、検出手段が支持部材の回動速度を直接測定するため、乗員の生体状態を高精度に検出できる。
【0012】
請求項2に記載のシートベルト変位検出装置では、車両に設けられるシートベルトが、折り返された状態で支持部材に支持されると共に、長手方向一側へ付勢された状態で支持部材を長手方向へ移動可能に通過されており、シートベルトが変位されることで、支持部材が回動可能にされている。
【0013】
ここで、シートベルトが支持部材より長手方向他側において車両の乗員の胸部に装着された際に、検出手段が、シートベルトの変位に伴い支持部材が回動する加速度を測定することで、乗員の呼吸及び心拍の少なくとも一方を検出して、乗員の生体状態(例えば呼吸や心拍)を検出する。
【0014】
このように、検出手段が支持部材の回動加速度を測定するため、支持部材に対して検出手段を設置すればよい。これにより、検出手段を容易に設置できる。
【0015】
さらに、検出手段が支持部材の回動加速度を直接測定するため、乗員の生体状態を高精度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置が設けられた車両の主要部を示す車両前斜め左方から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置におけるスリップジョイントを示す車両左方から見た正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るシートベルト変位検出装置におけるスリップジョイントを示す車両左方から見た正面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置におけるスリップジョイントを示す車両左方から見た正面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置におけるスリップジョイントを示す車両左方から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置10が設けられた車両12の主要部が車両前斜め左方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両右方)を矢印WOで示し、上方を矢印UPで示している。
【0018】
図1に示す如く、本実施の形態に係るシートベルト変位検出装置10は、車両12のシートベルト装置14に適用されており、シートベルト装置14は、車室内において、乗員16(例えば運転手)が着座するシート18(例えば運転席)に装備されている。シート18の車幅方向外側かつ車両後側には、固定部材としてのセンタピラー20が設けられており、センタピラー20は、車体を構成して、上下方向へ延伸されている。
【0019】
シートベルト装置14は、巻取装置22(リトラクタ)を備えており、巻取装置22は、センタピラー20の下部に固定されている。巻取装置22には、長尺帯状のシートベルト24(ウェビング)が基端側(長手方向一側)から巻取られている。巻取装置22には、付勢機構(図示省略)が設けられており、付勢機構は、シートベルト24に基端側(巻取装置22への巻取側)への付勢力を付与している。
【0020】
シートベルト24は、支持部材としての板状のスリップジョイント26(ショルダアンカ)の下部に挿通(通過)されており、シートベルト24は、スリップジョイント26に対し長手方向へ移動(スライド)可能にされている。スリップジョイント26は、上部において、センタピラー20の上部に取り付けられた支軸28に支持されており、スリップジョイント26は、支軸28を中心として車両前後方向へ回動可能にされている。シートベルト24は、スリップジョイント26に支持されており、シートベルト24は、巻取装置22からスリップジョイント26へ向けて、センタピラー20に沿って上側へ延伸されている。
【0021】
シートベルト24の先端(長手方向他側端)は、係止部材としてのアンカプレート30に係止されており、アンカプレート30は、シート18のセンタピラー20側(車幅方向外側)かつ下側の車体に固定されている。シートベルト24は、スリップジョイント26とアンカプレート30との間において、追加支持部材としてのタング32に挿通(通過)されており、シートベルト24は、タング32に対し長手方向へ移動(スライド)可能にされている。
【0022】
シート18のセンタピラー20とは反対側(車幅方向内側)かつ下側には、係止手段としてのバックル装置34が配置されている。バックル装置34は、可撓部材としての長尺板状の支持板36の上端に固定されており、支持板36の下端は、車体に固定されている。支持板36は、可撓性を有しており、支持板36が弾性的に撓むことで、バックル装置34が特に車幅方向へ移動(支持板36の下端を中心として回動)可能にされている。
【0023】
ここで、タング32がバックル装置34に係止されることで、シート18に着座した乗員16にシートベルト24が装着される。これにより、シートベルト24が、巻取装置22の付勢機構の付勢力によって張られた状態で、スリップジョイント26とタング32との間のショルダベルト部24Aにおいて乗員16の肩部16Aと腰部16Bとの間に斜め方向へ架け渡されると共に、タング32とアンカプレート30との間のラップベルト部24Bにおいて乗員16の腰部16Bに横方向へ架け渡される。このため、ショルダベルト部24Aは、付勢機構の付勢力によって乗員16の肩部16A、胸部16C及び上腹部16Dに前側から接触されると共に、ラップベルト部24Bは、付勢機構の付勢力によって乗員16の下腹部16Eに前側から接触される。
【0024】
また、乗員16にシートベルト24が装着された際には、ショルダベルト部24Aがスリップジョイント26に対して車両前側に配置されることで、スリップジョイント26が車両前側かつ上側へ回動される。
【0025】
図2に示す如く、スリップジョイント26の下部には、通過部としてのU字状の挿通孔38が貫通形成されており、シートベルト24は、挿通孔38の下部に長手方向へ移動可能に挿通されて、スリップジョイント26に折り返された状態で支持されている。挿通孔38の下部の長手方向(スリップジョイント26横方向)寸法は、シートベルト24の幅方向寸法に比し、僅かに大きくされており、挿通孔38下部の長手方向へのシートベルト24の移動が抑制されている。
【0026】
スリップジョイント26には、挿通孔38の下側において、支持部としてのピース40が設けられており、ピース40の上側面は、断面円状に湾曲されている。ピース40の上側面は、挿通孔38下部の下側面を構成しており、ピース40の上側面は、シートベルト24が巻き付けられた状態で接触されて円滑に移動可能にされている。
【0027】
スリップジョイント26には、ピース40の下側全体において、凹部42が形成されており、ピース40は、凹部42に対し、スリップジョイント26の肉厚方向外側(車幅方向)へ突出されている。
【0028】
スリップジョイント26には、凹部42において、接続部材としての長尺帯状の接続体44の長手方向一側端が接続されており、接続体44にシートベルト24が接触することが抑制又は防止されている。スリップジョイント26における接続体44の接続位置は、スリップジョイント26の回動径方向外端にされており、接続体44は、可撓性を有すると共に、長手方向へ伸縮不能にされている。
【0029】
接続体44の長手方向他側端には、検出手段を構成する測定手段としての長尺帯状の圧電フィルムセンサ46(圧電センサ)の長手方向一側端が接続されており、圧電フィルムセンサ46の長手方向他側端は、巻取軸48に接続されている。巻取軸48は、スリップジョイント26の車両後側における車体(例えばセンタピラー20)に回転可能に支持されており、巻取軸48は、付勢手段としての付勢装置50に接続されて、付勢装置50によって回転方向一側への付勢力が付与されている。これにより、圧電フィルムセンサ46が、長手方向他側から巻取軸48に付勢装置50の付勢力によって巻取られた状態で、スリップジョイント26の凹部42と巻取軸48との間に接続体44を介して架け渡されている。
【0030】
圧電フィルムセンサ46は、変形(伸縮や張り又は撓み等の形状変化)されることで、電荷を発生可能にされており、圧電フィルムセンサ46は、変形速度が大きくなるに従い発生電荷が多くなって出力電圧が大きくなる性質を有している。
【0031】
圧電フィルムセンサ46は、検出手段を構成する制御手段としての制御装置52に電気的に接続されており、制御装置52には、圧電フィルムセンサ46の出力電圧が入力される。
【0032】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0033】
以上の構成のシートベルト装置14では、タング32がバックル装置34に係止されることで、シート18に着座した乗員16にシートベルト24が装着される。これにより、シートベルト24が、巻取装置22の付勢機構によって基端側(巻取装置22への巻取側)へ付勢された状態で、ショルダベルト部24Aにおいて乗員16の肩部16A、胸部16C及び上腹部16Dに接触される。
【0034】
このため、乗員16の呼吸や心拍による肩部16A、胸部16C及び上腹部16Dの少なくとも1つの前面の前側及び後側への微小な移動によって、シートベルト24のショルダベルト部24Aが乗員16の前側及び後側へ微小に変位(振動)される。これにより、スリップジョイント26が、シートベルト24への付勢機構の付勢力に抗して車両前側かつ上側へ微小に回動されると共に、シートベルト24への付勢機構の付勢力によって車両後側かつ下側へ微小に回動される。また、乗員16の呼吸速度や心拍速度が大きくなるに従い、スリップジョイント26の回動速度が大きくなる。
【0035】
スリップジョイント26が車両前側かつ上側へ微小に回動されると、圧電フィルムセンサ46が、巻取軸48から付勢装置50の付勢力に抗して微小に引出されて、変形される。一方、スリップジョイント26が車両後側かつ下側へ微小に回動されると、圧電フィルムセンサ46が、巻取軸48に付勢装置50の付勢力によって微小に巻取られて、変形される。また、スリップジョイント26の回動速度が大きくなるに従い、圧電フィルムセンサ46の変形速度が大きくなる。
【0036】
圧電フィルムセンサ46が変形されると、圧電フィルムセンサ46が電荷を発生する。また、圧電フィルムセンサ46は、変形速度が大きくなるに従い、制御装置52への出力電圧が大きくなる。これにより、制御装置52が、圧電フィルムセンサ46からの入力電圧に基づいて、圧電フィルムセンサ46の変形速度、スリップジョイント26の回動速度、ひいては、乗員16の呼吸速度や心拍速度を算出(測定)する。
【0037】
このため、制御装置52が、圧電フィルムセンサ46からの入力電圧に基づき、乗員16の生体状態(呼吸速度や心拍速度)を検出できて、乗員16の緊張状態、覚醒状態、疲労状態等の体調を的確に検出するシステムのための生体情報センサの1つとして生体情報を出力する。
【0038】
ここで、スリップジョイント26と車体側との間に、接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)が設置されている。このため、接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)を容易にシートベルト装置14に設置できる。しかも、スリップジョイント26と車体側との間に接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)を設置する作業以外は、シートベルト装置14を車両12に通常と同様に設置すれば、接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)を車両12に設置できるため、接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)を容易に車両12に設置できる。
【0039】
さらに、乗員16が通常と同様にシートベルト24を装着するのみで、乗員16の生体状態を検出できる。このため、乗員16に煩わしさを与えることを防止できる。
【0040】
また、圧電フィルムセンサ46がスリップジョイント26の回動速度に基づき乗員16の呼吸速度や心拍速度を直接測定する。このため、乗員16の呼吸や心拍による微小な移動を高分解能で(高精度に)検出できる。しかも、測定したスリップジョイント26の回動距離を時間微分してスリップジョイント26の回動速度を算出する場合に、乗員16の生体状態の検出処理を早くするために測定時間間隔を短くすると、測定時間間隔において当該回動距離が大きい際に当該回動速度情報がノイズとみなされて削除されることがあるため、本実施の形態では、乗員16の呼吸速度や心拍速度をノイズに強い状態で(高精度に)検出できる。
【0041】
さらに、シートベルト24が、巻取装置22の付勢機構によって基端側へ付勢された状態でスリップジョイント26を長手方向へ移動可能に挿通されると共に、スリップジョイント26より先端側のショルダベルト部24Aにおいて乗員16の肩部16A、胸部16C及び上腹部16Dに装着される。このため、乗員の呼吸や心拍に伴いスリップジョイント26が十分に回動でき、乗員16の生体状態を一層高精度に検出できる。
【0042】
しかも、圧電フィルムセンサ46が接続体44を介してスリップジョイント26の回動径方向外端に接続されている。このため、スリップジョイント26の回動に伴い圧電フィルムセンサ46が十分に変形でき、乗員16の生体状態を一層高精度に検出できる。
【0043】
(変形例)
図3には、本発明の第1の実施の形態の変形例に係るシートベルト変位検出装置60におけるスリップジョイント26が車両左方から見た正面図にて示されている。
【0044】
図3に示す如く、本変形例に係るシートベルト変位検出装置60では、スリップジョイント26に、凹部42(スリップジョイント26の回動径方向外端)において、巻取軸48(付勢装置50を含む)が接続されており、巻取軸48及び付勢装置50にシートベルト24が接触することが抑制又は防止されている。また、接続体44の長手方向一側端は、スリップジョイント26の車両後側における車体(例えばセンタピラー20)に接続されている。
【0045】
ここで、本変形例でも、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0046】
なお、上記第1の実施の形態(変形例を含む)では、スリップジョイント26の凹部42に接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)を接続した構成としたが、スリップジョイント26の凹部42以外の部位に接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)を接続した構成としてもよい。この場合、スリップジョイント26の回動径方向外端に接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)を接続するのが好ましい。
【0047】
さらに、上記第1の実施の形態(変形例を含む)では、スリップジョイント26の車両後側に接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)を配置した構成としたが、スリップジョイント26の車両後側以外の側(車両前側、上側及び下側等)に接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)を配置した構成としてもよい。
【0048】
[第2の実施の形態]
図4には、本発明の第2の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置70におけるスリップジョイント26が車両左方から見た正面図にて示されている。
【0049】
本実施の形態に係るシートベルト変位検出装置70は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0050】
図4に示す如く、本実施の形態に係るシートベルト変位検出装置70では、上記第1の実施の形態における接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)が設けられていない。
【0051】
スリップジョイント26の車両後側端には、測定対象としての板状の反射体72(ターゲット)が設けられており、反射体72にシートベルト24が接触することが抑制又は防止されている。反射体72は、スリップジョイント26と一体に回動可能にされると共に、マイクロ波を反射可能にされている。
【0052】
スリップジョイント26の車両後側の車体(例えばセンタピラー20)には、検出手段を構成する測定手段としてのドップラーセンサ74が固定されており、ドップラーセンサ74は、反射体72へ向けてマイクロ波を発射可能にされると共に、反射体72によって反射されたマイクロ波が入射可能にされている。ドップラーセンサ74は、反射体72に向けて発射したマイクロ波の周波数と、反射体72によって反射されて入射したマイクロ波の周波数と、のドップラー効果によるズレを測定して、当該ズレを信号として出力可能にされている。
【0053】
ドップラーセンサ74は、制御装置52に電気的に接続されており、制御装置52は、ドップラーセンサ74を制御可能にされると共に、ドップラーセンサ74の出力信号が入力される。
【0054】
ここで、乗員16の呼吸や心拍によってスリップジョイント26が微小に回動されると、スリップジョイント26と一体に反射体72が微小に回動される。さらに、制御装置52の制御によりドップラーセンサ74が反射体72へ向けてマイクロ波を発射する。これにより、ドップラーセンサ74が反射体72に向けて発射するマイクロ波の周波数と反射体72によって反射されてドップラーセンサ74に入射するマイクロ波の周波数とに、ドップラー効果によりズレが発生する。また、スリップジョイント26の回動速度(反射体72の回動速度)が大きくなるに従い、当該ズレが大きくなる。
【0055】
さらに、ドップラーセンサ74が、当該ズレを測定して信号として制御装置52へ出力する。これにより、制御装置52が、ドップラーセンサ74からの入力信号に基づいて、スリップジョイント26の回動速度、ひいては、乗員16の呼吸速度や心拍速度を算出(測定)する。
【0056】
このため、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0057】
特に、スリップジョイント26に反射体72が設置されると共に、車体側にドップラーセンサ74が設置されている。このため、反射体72及びドップラーセンサ74を容易にシートベルト装置14に設置できる。しかも、車体側にドップラーセンサ74を設置する作業以外は、シートベルト装置14を車両12に通常と同様に設置すれば、反射体72及びドップラーセンサ74を車両12に設置できるため、反射体72及びドップラーセンサ74を容易に車両12に設置できる。
【0058】
さらに、ドップラーセンサ74が、反射体72と接触しない状態で、スリップジョイント26の回動速度を測定できる。このため、ドップラーセンサ74及び反射体72の耐久性を高くすることができる。
【0059】
なお、上記第2の実施の形態では、スリップジョイント26に反射体72を設けると共に、車体側にドップラーセンサ74を設けた構成としたが、スリップジョイント26にドップラーセンサ74を設けると共に、車体側に反射体72を設けた構成としてもよい。
【0060】
また、上記第2の実施の形態では、スリップジョイント26の車両後側端に反射体72又はドップラーセンサ74を設けた構成としたが、スリップジョイント26の車両後側端以外の部位に反射体72又はドップラーセンサ74を設けた構成としてもよい。この場合、スリップジョイント26の回動径方向外端に反射体72又はドップラーセンサ74を設けるのが好ましい。
【0061】
さらに、上記第2の実施の形態では、スリップジョイント26の車両後側の車体にドップラーセンサ74又は反射体72を配置した構成としたが、スリップジョイント26の車両後側以外の側(車両前側、上側及び下側等)の車体にドップラーセンサ74又は反射体72を配置した構成としてもよい。
【0062】
[第3の実施の形態]
図5には、本発明の第3の実施の形態に係るシートベルト変位検出装置80におけるスリップジョイント26が車両左方から見た正面図にて示されている。
【0063】
本実施の形態に係るシートベルト変位検出装置80は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0064】
図5に示す如く、本実施の形態に係るシートベルト変位検出装置80では、上記第1の実施の形態における接続体44、圧電フィルムセンサ46及び巻取軸48(付勢装置50を含む)が設けられていない。
【0065】
スリップジョイント26には、凹部42において、検出手段を構成する測定手段としての加速度センサ82(2軸Gセンサ)が設けられており、加速度センサ82にシートベルト24が接触することが抑制又は防止されている。スリップジョイント26における加速度センサ82の設置位置は、スリップジョイント26の回動径方向外端にされると共に、加速度センサ82は、スリップジョイント26と一体に回動可能にされている。
【0066】
加速度センサ82は、第1センサ82Aと第2センサ82Bとを有しており、第1センサ82Aは、スリップジョイント26の上下方向への加速度を測定可能にされると共に、第2センサ82Bは、スリップジョイント26の車両前後方向への加速度を測定可能にされている。
【0067】
加速度センサ82(第1センサ82A及び第2センサ82B)は、制御装置52に電気的に接続されており、制御装置52は、加速度センサ82を制御可能にされると共に、加速度センサ82の出力信号が入力される。
【0068】
ここで、乗員16の呼吸や心拍によってスリップジョイント26が微小に回動されると、スリップジョイント26と一体に加速度センサ82(第1センサ82A及び第2センサ82B)が微小に回動される。さらに、制御装置52の制御により、加速度センサ82の第1センサ82Aがスリップジョイント26の上下方向への加速度を測定すると共に、加速度センサ82の第2センサ82Bがスリップジョイント26の車両前後方向への加速度を測定する。
【0069】
これにより、制御装置52が、加速度センサ82(第1センサ82A及び第2センサ82B)からの入力信号に基づいて、スリップジョイント26の回動加速度(スリップジョイント26の上下方向への加速度と車両前後方向への加速度との合成加速度)、ひいては、乗員16の呼吸加速度や心拍加速度を算出(測定)する。さらに、制御装置52が、スリップジョイント26の回動加速度を時間積分して、乗員16の呼吸速度や心拍速度を算出する。
【0070】
このため、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0071】
特に、スリップジョイント26に加速度センサ82が設置されている。このため、加速度センサ82を容易にシートベルト装置14に設置できる。しかも、シートベルト装置14を車両12に通常と同様に設置すれば、加速度センサ82を車両12に設置できるため、加速度センサ82を容易に車両12に設置できる。
【0072】
また、制御装置52がスリップジョイント26の回動加速度に基づき乗員16の呼吸速度や心拍速度を算出する。このため、乗員16の呼吸や心拍による微小な移動を高分解能で(高精度に)検出できる。しかも、加速度センサ82が測定したスリップジョイント26の回動加速度を時間積分してスリップジョイント26の回動速度を算出する際には、測定時間毎の当該回動加速度が加算されたものが時間平均化されるため、当該回動速度情報が極端に大きくなってノイズとみなされ削除されることが抑制されることで、乗員16の呼吸速度や心拍速度をノイズに強い状態で(高精度に)検出できる。
【0073】
さらに、加速度センサ82が、シートベルト24及び車体側と接触しない状態で、スリップジョイント26の回動加速度を測定できる。このため、加速度センサ82の耐久性を高くすることができる。
【0074】
なお、上記第3の実施の形態では、スリップジョイント26の凹部42に加速度センサ82を設けた構成としたが、スリップジョイント26の凹部42以外の部位に加速度センサ82を設けた構成としてもよい。この場合、スリップジョイント26の回動径方向外端に加速度センサ82を設けるのが好ましい。
【0075】
また、上記第3の実施の形態では、加速度センサ82がスリップジョイント26の回動加速度を測定する構成としたが、角速度センサ(ジャイロセンサ、ピッチレートセンサ等)又は角加速度センサがそれぞれ例えば車両前後方向に対するスリップジョイント26の回動角速度又は回動角加速度を測定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 シートベルト変位検出装置
12 車両
16 乗員
16C 胸部
24 シートベルト
26 スリップジョイント(支持部材)
46 圧電フィルムセンサ(検出手段)
52 制御装置(検出手段)
60 シートベルト変位検出装置
70 シートベルト変位検出装置
74 ドップラーセンサ(検出手段)
80 シートベルト変位検出装置
82 加速度センサ(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるシートベルトと、
前記シートベルトが折り返された状態で支持されると共に長手方向一側へ付勢された状態で長手方向へ移動可能に通過され、前記シートベルトが変位されることで回動可能にされた支持部材と、
前記シートベルトが前記支持部材より長手方向他側において車両の乗員の胸部に装着された際に前記シートベルトの変位に伴い前記支持部材が回動する速度を測定することで乗員の呼吸及び心拍の少なくとも一方を検出して乗員の生体状態を検出する検出手段と、
を備えたシートベルト変位検出装置。
【請求項2】
車両に設けられるシートベルトと、
前記シートベルトが折り返された状態で支持されると共に長手方向一側へ付勢された状態で長手方向へ移動可能に通過され、前記シートベルトが変位されることで回動可能にされた支持部材と、
前記シートベルトが前記支持部材より長手方向他側において車両の乗員の胸部に装着された際に前記シートベルトの変位に伴い前記支持部材が回動する加速度を測定することで乗員の呼吸及び心拍の少なくとも一方を検出して乗員の生体状態を検出する検出手段と、
を備えたシートベルト変位検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−182825(P2011−182825A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48201(P2010−48201)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】