説明

シート層付き鋸歯形ガスケット

【課題】膨張黒鉛などのシート層を備えたガスケットにおいて、ガスケット圧縮時に破砕して生じるシート層の微粒子が流体通路内に入り込んでしまうのを防止することのできるシート層付き鋸歯形ガスケットを提供する。
【解決手段】膨張黒鉛などのシール層4,4を介して、鋸歯形凹凸部30aが第1の部材22および第2の部材24に食い込むことによりシール力が発揮されるシール層付き鋸歯形ガスケット26であって、
鋸歯形凹凸部30aを構成するとともに流体通路40に最も近い最端部の第1の凸部Xから2番目に近い第2の凸部Yまでの距離をaとし、第2の凸部Yから第3の凸部、第3の凸部から第4の凸部、第4の凸部から第5の凸部、第n−1の凸部から第nの凸部までの距離をbとしたとき、a≧2bであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット本体の表面に形成された鋸歯形の凹凸部が膨張黒鉛などのシート層を介してシール面に食い込まれることにより十分なシール力が発揮されるシート層付き鋸歯形ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
鋸歯形ガスケットは、シール効率を高めるために、例えば、圧延金属板からなるガスケット本体の表面に断面鋸歯形の環状凹凸溝を多数形成して、シール部における有効接触面積を小さくしたものである。このような鋸歯形ガスケットは、バルブのボンネットや管フランジ、圧力容器のカバーガスケットなどに使用されている。そして、特に、高温・高圧の水蒸気などの流体通路に好適である。
【0003】
このような鋸歯形ガスケットとしては、例えば、図4に示した鋸歯形ガスケット10が知られている。
この鋸歯形ガスケット10は、鋸歯形の凹凸部2aが両面に形成されたシール部本体2と、このシール部本体2に一体的に形成された平板状の位置決め部分2bとを有し、シール部本体2の外方には、膨張黒鉛などからなる円盤状の2枚のシート層4、4がそれぞれ貼付されている。
【0004】
このような従来のシール層付き鋸歯形ガスケット10は、鋸歯形の凹凸部2aを形成したステンレス鋼などからなるガスケット本体2より柔軟なシート層4が潰された場合に凹凸部2aの隙間を埋めることにより、極めて有効なシール力を発揮することができる。
【0005】
ところが、このようなシート層付き鋸歯形ガスケット10では、シート層4の内方端面4aが潰されて、それにより発生した膨張黒鉛などの柔軟なシート層の微粒子が、流体通路14内に入り込んでしまうという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、膨張黒鉛などのシート層を備えたガスケットにおいて、ガスケット圧縮時に破砕して生じる膨張黒鉛などのシート層の微粒子が流体通路内に入り込んでしまうのを防止することのできるシート層付き鋸歯形ガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、
同心円状の鋸歯形凹凸部が両面に形成されたガスケット本体と、
前記鋸歯凹凸部を覆うように積層されるシート層とを備え、
前記ガスケット本体および前記シート層が一体化された状態で流体通路の継ぎ手部に装着され、この継ぎ手部を構成する第1の部材と第2の部材との間で締め付けられた場合に、前記シート層を介して前記鋸歯形凹凸部が前記第1の部材および前記第2の部材に食い込むことによりシール力が発揮されるシート層付き鋸歯形ガスケットであって、
前記鋸歯形凹凸部を構成するとともに前記流体通路に最も近い第1の凸部から2番目に近い第2の凸部までの距離をaとし、前記第2の凸部から第3の凸部、第3の凸部から第4の凸部、第4の凸部から第5の凸部、第n−1の凸部から第nの凸部までの距離をbとしたとき、
a≧2bであることを特徴としている。
【0008】
ここで、本発明では、前記第1の凸部の高さをE,前記第2の凸部の高さをFと、前記シート層の厚さをGとしたとき、
F≦E≦(F+G)となるように設定されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明では、前記シート層の径内方側端部は、前記第1の凸部と前記第2の凸部との間に配置されることが好ましい。
このような構成の本発明によれば、凹凸部における流体通路側最内方の第1の凸部が、邪魔板となって微粒子が流体通路の内方に流れ込むことを阻止することができる。
【0010】
さらに、前記シート層の径内方側端部の、前記第2の凸部Yからのはみ出し距離をcとしたとき、
c≦0.5×aであることが好ましい。
【0011】
このような構成であれば、径内方側端部が潰された場合、その微粒子が流体通路内に流れ込むことを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシート層付き鋸歯形ガスケットによれば、流体通路側最内方の第1の凸部より流体通路側ではシール層が潰されることはない。しかも、破砕により発生したシール層の微粒子は、第1の凸部より流体通路外方側の凹部内に留まるので、微粒子が流体通路に入り込むことが阻止される。これにより、コンタミの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施例によるシート層付き鋸歯形ガスケットが装着された管継手の概略図である。
【0014】
この管継手20では、流体通路402を構成する第1の部材22と第2の部材24との間に鋸歯形ガスケット26が装着され、この鋸歯形ガスケット26が複数本のボルト28により締め付けられている。
【0015】
上記鋸歯形ガスケット26は、図2に拡大して示したように、鋸歯形の凹凸部30aが両面に形成されたシール部本体32と、鋸歯形の凹凸部30aを両側からそれぞれ覆うように積層される膨張黒鉛などからなるシート層38、38とを備えている。なお、このシート層38としては、膨張黒鉛が好ましく使用されるが、シート層は膨張黒鉛に限定されるものではなく、耐熱性を有し高圧で使用することが可能であるとともに、高いシール性が得られる材質であれば他の材質を用いることも可能である。
【0016】
シール部本体32の径外方側すなわち流体通路40から遠い方に位置する端部は、フランジ状に延出され、これにより、第1の部材22と第2の部材24との間に位置決め部34が構成されている。そして、図1に示したように、鋸歯形ガスケット26が第1の部材22と第2の部材24との間に装着された場合に、位置決め部34の外周面34aがボルト28に当接されることにより、第1の部材22と第2の部材24との間で位置決めがなされる。これにより、ガスケットの装着時に不用意に位置ずれしてしまうことが防止される。
【0017】
本発明の特徴をなすシール部本体32の凹凸部30aは、図3に示したように形成されている。
すなわち、シール部本体32の両面に形成された凹凸部30aは、全体として同心円状
に形成されているが、流体通路40に最も近い端部の第1の凸部Xから2番目に近い第2の凸部Yまでの距離をa、他の隣接しあう凸部間の距離は同一であり、この同一位置の距離をbとしたとき、a≧2bであるように設定されている。このように、本実施例では、最内方の第1の凸部Xから次の第2の凸部Yまでの間が最も広くなるように設定されている。
【0018】
また、第1の凸部Xの高さをE、第2の凸部Yの高さをF、シール層38の厚さをGとしたとき、F≦E≦(F+G)となるように設定されている。このように設定することにより、第1の凸部Xにおいて、第2の凸部Yよりも強いシール力を作用させることができる。
【0019】
一方、シート層38の内側端部38aは、図2に示したように第1の凸部Xと第2の凸部Yとの間に配置されている。
ここで、内側端部の第2の凸部Yからのはみ出し長さをcとしたとき、
c≦0.5×aの範囲に配置されている。
【0020】
第1の凸部Xと第2の凸部Yとの間隔が上記のように設定され、かつシート層38の内側端部38aが上記の位置に配置されることにより、流体通路40のシール部分では、以下のような作用効果を奏することになる。
【0021】
すなわち、図1に示したように、第1の部材22と第2の部材24との間で鋸歯形ガスケット26が締め付けられると、先ず、シート層38,38が、鋸歯形の凹凸部30aにより押圧され、これにより潰されることになる。これにより、シート層38は、凸部30a間の隙間に入り込むため、シール性が良好になり、特に高温、高圧になる部分でも良好なシール性が確保される。
【0022】
また、このとき、シート層38の一部が粉体または粒状物となって本体側から破砕される虞があるが、その破砕により離れ落ちた部分は、第1の凸部Xによって流体通路40内
に入り込むことが可及的に防止される。
【0023】
このようにして、本実施例の鋸歯形ガスケット26を使用すれば、コンタミの発生を抑制することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、この実施例に何ら限定されない。
【0024】
例えば、上記実施例では、ガスケット本体32の径外方側に位置決め部34が延出されているが、このような位置決め部34が外方に延出されていない鋸歯形ガスケットにも本発明を適用することができる。また、位置決め部34と同様なフランジが径内方側に形成されたものであっても良い。さらに、鋸歯の形状や寸法、ガスケット自体の寸法や材質、凹凸部30aの最大個数n、膨張黒鉛などのシート層38の厚みなどは特に制限されない。要は、最内方側の第1の凸部Xと第2の凸部Yとの間に通常の2倍以上の間隔が確保されていれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る鋸歯形ガスケットの概略断面図である。
【図2】図2は図1に示した鋸歯形ガスケットの拡大断面図である。
【図3】図3は図1に示した鋸歯形ガスケットの寸法構成を示した概略図である。
【図4】図4は従来の鋸歯形ガスケットの断面図である。
【符号の説明】
【0026】
22 第1部材
24 第2部材
26 鋸歯形ガスケット
30a 凹凸部
32 ガスケット本体
38 シート層(膨張黒鉛層)
40 流体通路
E 第1の凸部の高さ
F 第2の凸部の高さ
G シート層の厚さ
X 第1の凸部
Y 第2の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心円状の鋸歯形凹凸部が両面に形成されたガスケット本体と、
前記鋸歯凹凸部を覆うように積層されるシート層とを備え、
前記ガスケット本体および前記シート層が一体化された状態で流体通路の継ぎ手部に装着され、この継ぎ手部を構成する第1の部材と第2の部材との間で締め付けられた場合に、前記シート層を介して前記鋸歯形凹凸部が前記第1の部材および前記第2の部材に食い込むことによりシール力が発揮されるシート層付き鋸歯形ガスケットであって、
前記鋸歯形凹凸部を構成するとともに前記流体通路に最も近い第1の凸部から2番目に近い第2の凸部までの距離をaとし、前記第2の凸部から第3の凸部、第3の凸部から第4の凸部、第4の凸部から第5の凸部、第n−1の凸部から第nの凸部までの距離をbとしたとき、
a≧2bであることを特徴とするシート層付き鋸歯形ガスケット。
【請求項2】
前記第1の凸部の高さをE,前記第2の凸部の高さをFと、前記シート層の厚さをGとしたとき、
F≦E≦(F+G)となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のシート層付き鋸歯形ガスケット。
【請求項3】
前記シート層の径内方側端部は、前記第1の凸部と前記第2の凸部との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のシート層付き鋸歯形ガスケット。
【請求項4】
前記シート層の径内方側端部の、前記第2の凸部からのはみ出し距離をcとしたとき、c≦0.5×aであることを特徴とする請求項1に記載のシート層付き鋸歯形ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−261437(P2008−261437A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104862(P2007−104862)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【出願人】(000235358)飯田パッキン工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】