説明

シート材加工装置およびシート材加工方法

【課題】シート材に溝や窪みを効率的かつ精度よく形成することができ、しかも、設備コストおよびランニングコストが比較的安く、さらには、削りカスの処理が不要なシート材加工装置、および、そのシート材加工装置が用いられるシート材加工方法を提供すること。
【解決手段】シート材加工装置1に、シート材7の表面に裂け目の起点となる切れ目16を形成する起点付与部3と、その搬送方向下流側にチャック延伸部5とを設ける。シート材7は、起点付与部3において、その表面に切れ目16が形成された後、チャック延伸部5において、搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向かうに従って、各チャック13により幅方向両外側に向かって引っ張られることにより、次第に幅方向に広がるように延伸される。これによって、切れ目16が、搬送方向に沿って裂ける裂け目となって、シート材7の表面に溝17が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材加工装置およびシート材加工方法に関し、詳しくは、長尺のシート材の表面に溝や窪みを形成するためのシート材加工装置、および、そのシート材加工装置が用いられるシート材加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布、樹脂(プラスチック)材料、ゴム材料あるいは発泡材料などのシート形状の成形材料に、溝または窪みを形成するには、通常、成形材料を軟化または溶融させた後、圧縮成形により溝または窪みを形成するか、あるいは、切削加工により溝または窪みを形成するようにしている。
【0003】
例えば、溝または窪みが表面に形成された遮音材を、圧縮成形や切削加工によって形成することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−202873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、成形材料を軟化または溶融させた後、圧縮成形により溝または窪みを形成する場合には、プレスまたは金型の形状に成形材料が十分に追従せず、溝または窪みが不完全に形成される場合がある。また、成形材料を軟化または溶融させたときにボイドが生じると、そのボイドに起因して欠陥が生じる場合がある。さらには、軟化または溶融のための加熱装置やプレスまたは金型が必要であり、設備コストおよびランニングコストが、比較的高くなる。
【0005】
一方、シート形状の成形材料に、切削加工により溝または窪みを形成する場合には、溝または窪みを精度よく形成することができ、また、設備コストおよびランニングコストも比較的安くなる。しかし、切削加工すると、削りカスが発生するため、削りカスを処理するための作業や設備が必要となり、余分な手間を余儀なくされる。
【0006】
本発明の目的は、シート材に溝や窪みを効率的かつ精度よく形成することができ、しかも、設備コストおよびランニングコストが比較的安く、さらには、削りカスの処理が不要なシート材加工装置、および、そのシート材加工装置が用いられるシート材加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のシート材加工装置は、シート材の表面に、裂け目の起点を付与する起点付与手段と、前記起点付与手段に対して前記シート材の搬送方向下流側に配置され、前記シート材を延伸する延伸手段とを備えていることを特徴としている。
【0008】
このシート材加工装置では、まず、起点付与手段によって、シート材の表面に裂け目の起点を付与した後、次いで、延伸手段によって、シート材を延伸する。すると、起点からシート材が裂けて溝または窪みが形成される。
【0009】
このように溝や窪みを形成すれば、溝または窪みを精度よく確実に形成することができる。また、削りカスの発生もなく、その処理を不要とすることができる。しかも、起点付与手段および延伸手段を設けるのみで、簡易に加工することができ、設備コストおよびランニングコストを安くすることができる。
【0010】
また、本発明のシート材加工装置では、前記延伸手段は、前記シート材を、前記搬送方向と直交する方向に引っ張る幅方向引張手段を含んでいることが好適である。
【0011】
起点付与手段によってシート材の表面に裂け目の起点を付与した後、幅方向引張手段によって、シート材を搬送方向と直交する方向に引っ張れば、溝または窪みを、シート材の長手方向に沿って、確実に形成することができる。
【0012】
また、本発明のシート材加工装置では、前記幅方向引張手段は、前記シート材を、前記搬送方向と直交する方向の両側から掴む複数のチャックと、前記搬送方向と直交する方向において前記シート材を挟んで配置される各前記チャックの間の距離が、前記シート材が搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向かうに従って、広くなるように、各前記チャックを搬送するチャック搬送手段とを備えていることが好適である。
【0013】
幅方向引張手段が、複数のチャックおよびチャック搬送手段を備えていると、シート材がチャックで掴まれた後に、そのチャックが、チャック搬送手段によって、シート材が搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向かうに従って、シート材を挟んで配置される各チャックの間の距離が広くなるように搬送される。すると、チャックに掴まれているシート材は、シート材が搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向かうに従って、搬送方向と直交する方向に引っ張られ、溝または窪みが、シート材の長手方向に沿って、確実に形成される。そのため、簡易な構成により、溝または窪みをシート材の長手方向に沿って確実に形成することができる。
【0014】
また、本発明のシート材加工装置では、前記延伸手段は、前記シート材の搬送方向における前記起点付与手段と前記幅方向引張手段との間に配置され、前記シート材を、前記搬送方向に沿って圧延する圧延手段を含んでいることを特徴としている。
【0015】
起点付与手段と幅方向引張手段との間に圧延手段を配置すれば、幅方向引張手段によって溝または窪みを形成する前に、シート材を搬送方向に沿って圧延することにより、シート材の厚みを調整することができる。そのため、より精度のよい加工を達成することができる。
【0016】
また、本発明のシート材加工装置では、前記延伸手段は、前記シート材を、前記搬送方向に引っ張る長手方向引張手段を含んでいることが好適である。
【0017】
起点付与手段によってシート材の表面に裂け目の起点を付与した後、長手方向引張手段によって、シート材を搬送方向に引っ張れば、溝または窪みを、シート材の長手方向と直交する方向に沿って、確実に形成することができる。
【0018】
また、本発明のシート材加工方法は、シート材の表面に、裂け目の起点を付与した後、シート材を延伸することを特徴としている。
【0019】
このシート材加工方法では、まず、シート材の表面に裂け目の起点を付与した後、次いで、シート材を延伸する。すると、起点からシート材が裂けて溝または窪みが形成される。
【0020】
このように溝や窪みを形成すれば、溝または窪みを精度よく確実に形成することができる。また、削りカスの発生もなく、その処理を不要とすることができる。しかも、簡易に加工することができ、設備コストおよびランニングコストを安くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシート材加工装置およびシート材加工方法によれば、溝または窪みを精度よく確実に形成することができる。また、削りカスの発生もなく、その処理を不要とすることができる。しかも、簡易に加工することができ、設備コストおよびランニングコストを安くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明のシート材加工装置の一実施形態の概略構成図である。以下、図1を参照して、本発明のシート材加工方法の一実施形態を、シート材加工装置とともに説明する。
【0023】
図1において、このシート材加工装置1Aは、送出ロール2、起点付与手段としての起点付与部3、圧延手段としての圧延ロール4、幅方向引張手段としてのチャック延伸部5および巻取ロール6を備えている。
【0024】
送出ロール2には、その表面に溝や窪みを形成すべきシート材7が巻回されている。送出ロール2からは、送出ロール2の回転によりシート材7が連続的に送り出される。シート材7は、塑性変形可能な工業材料であって、特に制限されないが、例えば、不織布、樹脂(プラスチック)材料、ゴム材料または発泡材料など、シート形状の成形材料などが含まれる。このようなシート材7は、その厚みが、例えば、5〜50mmである。
【0025】
起点付与部3は、送出ロール2に対してシート材7の搬送方向下流側に配置されている。この起点付与部3は、ロータリカッタ8と、ロータリカッタ8とシート材7を挟んで対向配置されるカッタ台9とを備えている。
【0026】
ロータリカッタ8は、円筒形状の回転筒部10と、その回転筒部10の外周面に設けられるリング刃11とを備えている。
【0027】
回転筒部10は、シート材7の長手方向(搬送方向と同一方向、以下同じ。)と直交する方向(以下、幅方向とする。)に沿って配置され、駆動力の入力により回転する。
【0028】
リング刃11は、回転筒部10の外周面に、搬送方向に沿って円環状(鍔状)に設けられている。このリング刃11は、幅方向において互いに等間隔を隔てて複数設けられている。なお、リング刃11の数および配置間隔は、目的および用途により適宜選択される。
【0029】
カッタ台9は、平板形状をなし、ロータリカッタ8の下方に間隔を隔てて配置されている。
【0030】
送出ロール2から搬送されてくるシート材7は、起点付与部3において、ロータリカッタ8とカッタ台9との間を通過するときに、ロータリカッタ8のリング刃11により、その表面に搬送方向に沿う複数の筋状の切れ目16が形成される。この切れ目16が、後述するように裂け目の起点となって溝17を形成する。
【0031】
なお、この切れ目16は、好ましくは、シート材7の厚みに対して50%以下のハーフカットにより形成される。
【0032】
なお、起点付与部3では、シート材7の搬送速度に対応して、回転筒部10が回転することにより、シート材7の表面に、上記した複数の切れ目16が連続的に形成される。
【0033】
圧延ロール4は、起点付与部3に対してシート材7の搬送方向下流側に配置されている。この圧延ロール4は、シート材7を挟んで対向配置される1対のプレッシャロール12を備えている。
【0034】
起点付与部3から搬送されてくるシート材7は、圧延ロール4において、1対のプレッシャロール12の間を通過するときに、それらプレッシャロール12により、予め設定された厚み(例えば、3〜30mm、好ましくは、1.5〜15mm)に搬送方向に沿って連続的に圧延される。
【0035】
チャック延伸部5は、圧延ロール4に対してシート材7の搬送方向下流側に配置され、複数のチャック13と、各チャック13を搬送するチャック搬送手段としてのプーリ機構部14とを備えている。
【0036】
プーリ機構部14は、シート材7の幅方向両外側にそれぞれ設けられている。各プーリ機構部14は、複数(2つ)のプーリ18と、それらプーリ18の間に掛け回されるエンドレスベルト15とを備えている。
【0037】
各プーリ18は、搬送方向に沿って間隔を隔てて配置されており、かつ、下流側のプーリ18が上流側のプーリ18に対して幅方向外側に配置されている。そして、エンドレスベルト15は、そのように配置された各プーリ18の間に掛け回されている。
【0038】
これによって、各プーリ機構部14のエンドレスベルト15は、シート材7の幅方向両外側において、搬送方向に沿い、かつ、搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向かうに従って、互いの幅方向対向距離が幅広となる傾斜状(ハの字状)に配置される。
【0039】
なお、各エンドレスベルト15の配置角度(ハの字状の角度)は、その加工目的やシート材7の種類などにより適宜設定される。
【0040】
各チャック13は、エンドレスベルト15の外周面に、互いに等間隔を隔てて固定されている。各チャック13は、例えば、圧空などによってシート材7の幅方向端部を掴むことができるように設けられている。
【0041】
圧延ロール4から搬送されてくるシート材7は、チャック延伸部5において、その幅方向両端部が各チャック13によって掴まれる。そして、シート材7の幅方向両端部を掴んだ各チャック13は、各プーリ18の回転駆動により、各プーリ18の間を矢印方向へ周回移動するエンドレスベルト15によって、シート材7を幅方向に挟んで配置される各チャック13の間の距離が、シート材7が搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向かうに従って、広くなるように連続的に搬送される。
【0042】
すると、シート材7は、搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向かうに従って、各チャック13により幅方向両外側に向かって引っ張られることにより、次第に幅方向に広がるように延伸される。そうすると、シート材7に形成された切れ目16は、搬送方向に沿って裂ける裂け目となって、溝17が形成される。
【0043】
なお、各プーリ18の回転速度、つまり、エンドレスベルト15の周回移動速度は、シート材7の種類に応じて適宜設定される。
【0044】
巻取ロール6は、チャック延伸部5に対してシート材7の搬送方向下流側に配置されている。巻取ロール6では、溝17が形成されたシート材7が連続的に巻き取られる。
【0045】
巻取ロール6に巻き取られたシート材7には、図2(a)に示すように、幅方向に間隔を隔てて複数の溝17が形成されている。各溝17は、搬送方向に沿って直線状に形成されており、チャック延伸部5にて幅方向へ引っ張られることによって、その断面形状が、図2(b)に示すように、略凹状に形成される。
【0046】
つまり、このシート材加工装置1Aでは、まず、起点付与部3において、シート材7の表面に裂け目の起点となる切れ目16を形成した後、次いで、チャック延伸部5において、シート材7を幅方向に引っ張る(延伸する)。すると、切れ目16からシート材7が裂けて、搬送方向に沿う溝17が形成される。
【0047】
このように溝17を形成すれば、溝17を精度よく確実かつ連続的に形成することができる。また、削りカスの発生もなく、その処理を不要とすることができる。しかも、主要構成として、起点付与部3およびチャック延伸部5を設けるのみで、簡易に加工することができるので、例えば、加熱設備などが不要である。そのため、設備コストおよびランニングコストを安くすることができる。
【0048】
また、このシート材加工装置1Aでは、起点付与部3とチャック延伸部5との間に、圧延ロール4が設けられているので、起点付与部3においてシート材7の表面に切れ目16を形成した後、チャック延伸部5において切れ目16からシート材7を裂いて溝17を形成する前に、1対のプレッシャロール12によってシート材7を搬送方向に沿って圧延することにより、シート材7の厚みを調整することができる。そのため、より精度のよい加工を達成することができる。
【0049】
なお、上記の説明では、起点付与部3において、ロータリカッタ8を装備したが、シート材7に、上記した裂け目の起点を付与できれば、ロータリカッタ8に限らず、公知の金型または刃物類を装備することができ、例えば、ダイセット、ダイシング、トムソン刃、直線刃などが例示される。
【0050】
また、上記のシート材加工装置1Aでは、シート材7を幅方向のみに延伸したが、シート材7を幅方向および搬送方向の両方向に延伸することもできる。
【0051】
図3は、そのような両方向に延伸できる、本発明のシート材加工装置の他の実施形態の概略構成図である。なお、図3に示すシート材加工装置1Bにおいて、図1に示すシート材加工装置1Aと同様の部材には、同一の参照符号を付し、その説明は省略する。
【0052】
図3において、このシート材加工装置1Bは、図1に示すシート材加工装置1Aと同様に、送出ロール2、起点付与手段としての起点付与部3、幅方向引張手段としてのチャック延伸部5および巻取ロール6を備えており、圧延手段としての圧延ロール4に代替して、長手方向引張手段としての引張ロール28を備えている。
【0053】
シート材加工装置1Bにおいて、起点付与部3は、ポンチ板19およびダイ20を備えている。
【0054】
ポンチ板19は、シート材7に対して上方に配置され、シート材7の表面と対向する表面には、裏返した斜視図に示すように、下方に向かって角錐形状に突出する複数のポンチ21が設けられている。各ポンチ21は、搬送方向および幅方向において互いに等間隔を隔てて整列配置されている。このポンチ板19は、矢印に示すように上下動される。
【0055】
ダイ20は、シート材7に対して下方であって、ポンチ板19に対して上方方向に対向配置されている。
【0056】
送出ロール2から搬送されてくるシート材7は、起点付与部3において、ポンチ板19とダイ20との間を通過するときに、ポンチ板19が降下して、その表面に各ポンチ21が圧接されることにより、平面視略正方形の複数の押圧痕22が形成される。この押圧痕22が、後述するように裂け目の起点となって窪み23を形成する。
【0057】
なお、この押圧痕22は、好ましくは、シート材7の厚みに対して50%以下の凹みにより形成される。
【0058】
また、起点付与部3では、シート材7の搬送速度に対応して、ポンチ板19が上下動(降下および上昇)を繰り返すことにより、シート材7の表面に、上記した複数の押圧痕22が連続的に形成される。
【0059】
引張ロール28は、シート材7の搬送方向において、起点付与部3とチャック延伸部5との間に配置され、低速ロール24および高速ロール25を備えている。
【0060】
低速ロール24は、起点付与部3の下流側かつ高速ロール25の上流側であって、側面視において起点付与部3とチャック延伸部5とを結ぶ水平方向線に対して、下方に配置されている。この低速ロール24は、送出ロール2と同一速度で回転する。
【0061】
なお、起点付与部3と低速ロール24との間には、上流側ガイドロール26が設けられている。
【0062】
高速ロール25は、低速ロール24の下流側かつチャック延伸部5の上流側であって、側面視において起点付与部3とチャック延伸部5とを結ぶ水平方向線に対して、上方に配置されている。この高速ロール25は、低速ロール24よりも高速で回転し、例えば、低速ロール24の回転速度を100%としたときに、101〜600%、好ましくは、101〜300%で回転する。
【0063】
なお、高速ロール25とチャック延伸部5との間には、下流側ガイドロール27が設けられている。
【0064】
起点付与部3から搬送されてくるシート材7は、上流側ガイドロール26によって、低速ロール24へ案内され、さらに、低速ロール24から高速ロール25へ搬送される。このとき、高速ロール25の回転速度が低速ロール24の回転速度よりも高速であるため、シート材7は、低速ロール24から高速ロール25へ搬送される途中で、高速ロール25によって搬送方向上流側へ引っ張られる。
【0065】
すると、シート材7は、搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向かうに従って、高速ロール25によって搬送方向上流側へ引っ張られることにより、次第に長手方向に広がるように延伸される。そうすると、シート材7に形成された押圧痕22は、幅方向に沿って裂ける裂け目となって、搬送方向に長い平面視略矩形状の窪み23が形成される。
【0066】
そして、搬送方向に長い平面視略矩形状の窪み23が形成されたシート材7は、高速ロール25から下流側ガイドロール27に案内されて、チャック延伸部5へ搬送される。
【0067】
チャック延伸部5では、上記と同様に、シート材7の幅方向両端部が各チャック13によって掴まれて、シート材7は、搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向かうに従って、各チャック13により幅方向両外側に向かって引っ張られることにより、次第に幅方向に広がるように延伸される。そうすると、搬送方向に長い平面視略矩形状の窪み23が、さらに、搬送方向に沿って裂ける裂け目となって、平面視略正方形状の窪み23が形成される。
【0068】
なお、各プーリ18の回転速度、つまり、エンドレスベルト15の周回移動速度は、高速ロール25の回転速度やシート材7の種類に応じて適宜設定される。
【0069】
また、チャック延伸部5では、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いと、同程度の延伸度合いで幅方向へ延伸する。
【0070】
そして、平面視略正方形状の窪み23が形成されたシート材7は、巻取ロール6によって連続的に巻き取られる。
【0071】
巻取ロール6に巻き取られたシート材7には、図4(a)に示すように、長手方向および幅方向に等間隔を隔てて複数の窪み23が形成されている。各窪み23は、引張ロール28にて搬送方向へ引っ張られた後、チャック延伸部5にて、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いと、同程度の延伸度合いで幅方向へ引っ張られることによって、平面視略正方形状に形成され、その断面形状が、図4(b)に示すように、略凹状に形成される。
【0072】
なお、上記の説明では、図3に示すシート材加工装置1Bにおいて、ポンチ板19に設けられる各ポンチ21を、角錐形状に形成することにより、平面視略正方形状の窪み23を形成したが、例えば、ポンチ板19に設けられる各ポンチ21を、円錐形状に形成すれば、図5に示すように、平面視略円形状の窪み23を形成することもできる。
【0073】
すなわち、図5において、シート材7には、図5(a)に示すように、長手方向および幅方向に等間隔を隔てて複数の窪み23が形成されている。各窪み23は、引張ロール28にて搬送方向へ引っ張られた後、チャック延伸部5にて、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いと、同程度の延伸度合いで幅方向へ引っ張られることによって、平面視略円形状に形成され、その断面形状が、図5(b)に示すように、略凹状に形成される。
【0074】
また、上記の説明では、図3に示すシート材加工装置1Bにおいて、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いと、チャック延伸部5での幅方向への延伸度合いとを同程度とすることにより、長手方向および幅方向に対して均等な平面視正方形の窪み23を形成したが、例えば、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いに対して、チャック延伸部5での幅方向への延伸度合いを小さくすれば、図6に示すように、長手方向に長い平面視矩形状(長方形状)の窪み23を形成することもできる。
【0075】
すなわち、図6において、シート材7には、図6(a)に示すように、長手方向および幅方向に等間隔を隔てて複数の窪み23が形成されている。各窪み23は、引張ロール28にて搬送方向へ引っ張られた後、チャック延伸部5にて、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いよりも小さい延伸度合いで幅方向へ引っ張られることによって、長手方向に長い平面視矩形状に形成され、その断面形状が、図6(b)に示すように、略凹状に形成される。
【0076】
さらに、例えば、ポンチ板19に設けられる各ポンチ21を、円錐形状に形成して、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いに対して、チャック延伸部5での幅方向への延伸度合いを大きくすれば、図7に示すように、幅方向に長い平面視楕円形状の窪み23を形成することもできる。
【0077】
すなわち、図7において、シート材7には、図7(a)に示すように、長手方向および幅方向に等間隔を隔てて複数の窪み23が形成されている。各窪み23は、引張ロール28にて搬送方向へ引っ張られた後、チャック延伸部5にて、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いよりも大きい延伸度合いで幅方向へ引っ張られることによって、幅方向に長い平面視楕円形状に形成され、その断面形状が、図7(b)に示すように、略凹状に形成される。
【0078】
さらにまた、例えば、ポンチ板19に設けられる各ポンチ21を、角筒形状に形成して、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いに対して、チャック延伸部5での幅方向への延伸度合いを同程度にすれば、図8(a)および(b)に示すように、平面視正方形の枠体の溝17を形成することもできる。
【0079】
すなわち、シート材7には、図8(a)に示すように、長手方向および幅方向に等間隔を隔てて複数の溝17が形成されている。各溝17は、引張ロール28にて搬送方向へ引っ張られた後、チャック延伸部5にて、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いと同程度の延伸度合いで幅方向へ引っ張られることによって、平面視正方形の枠体に形成され、その断面形状が、図8(b)に示すように、略凹状に形成される。
【0080】
また、例えば、ポンチ板19に設けられる各ポンチ21を、円筒形状に形成して、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いに対して、チャック延伸部5での幅方向への延伸度合いを同程度にすれば、図8(c)および(d)に示すように、平面視リング形状の溝17を形成することもできる。
【0081】
すなわち、シート材7には、図8(c)に示すように、長手方向および幅方向に等間隔を隔てて複数の溝17が形成されている。各溝17は、引張ロール28にて搬送方向へ引っ張られた後、チャック延伸部5にて、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いと同程度の延伸度合いで幅方向へ引っ張られることによって、平面視リング形状に形成され、その断面形状が、図8(d)に示すように、略凹状に形成される。
【0082】
また、例えば、ポンチ板19に設けられる各ポンチ21を、角筒形状に形成して、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いに対して、チャック延伸部5での幅方向への延伸度合いを小さくすれば、図8(e)および(f)に示すように、長手方向に長い平面視矩形状の枠体の溝17を形成することもできる。
【0083】
すなわち、シート材7には、図8(e)に示すように、長手方向および幅方向に等間隔を隔てて複数の溝17が形成されている。各溝17は、引張ロール28にて搬送方向へ引っ張られた後、チャック延伸部5にて、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いより小さい延伸度合いで幅方向へ引っ張られることによって、長手方向に長い平面視矩形状の枠体に形成され、その断面形状が、図8(f)に示すように、略凹状に形成される。
【0084】
また、例えば、ポンチ板19に設けられる各ポンチ21を、円筒形状に形成して、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いに対して、チャック延伸部5での幅方向への延伸度合いを大きくすれば、図8(g)および(h)に示すように、幅方向に長い平面視楕円形状の枠体の溝17を形成することもできる。
【0085】
すなわち、シート材7には、図8(g)に示すように、長手方向および幅方向に等間隔を隔てて複数の溝17が形成されている。各溝17は、引張ロール28にて搬送方向へ引っ張られた後、チャック延伸部5にて、引張ロール28での搬送方向への延伸度合いより大きい延伸度合いで幅方向へ引っ張られることによって、幅方向に長い平面視楕円形状の枠体に形成され、その断面形状が、図8(h)に示すように、略凹状に形成される。
【0086】
さらに、上記した図1に示すシート材加工装置1Aにおいて、ロータリカッタ8の刃形状を、碁盤目形状にするか、あるいは、図3に示すシート材加工装置1Bにおいて、ポンチ板19に設けられる各ポンチ21を、碁盤目形状にすれば、図9に示すように、シート材7に、長手方向および幅方向に沿う碁盤目形状の溝17を形成することもできる。
【0087】
また、図1に示すシート材加工装置1Aにおけるロータリカッタ8の刃形状や、図3に示すシート材加工装置1Bにおけるポンチ板19に設けられる各ポンチ21の形状を傾斜状の碁盤目形状にすれば、図10に示すように、長手方向および幅方向に対して交差する碁盤目形状の溝17を形成することもできる。
【0088】
なお、上記の説明では、図3に示すシート材加工装置1Bにおいて、チャック延伸部5の上流側に引張ロール28を配置したが、この逆、すなわち、チャック延伸部5の下流側に引張ロール28を配置することもできる。
【0089】
さらに、図3に示すシート材加工装置1Bにおいて、チャック延伸部5および引張ロール28を両方設けずとも、いずれか一方、例えば、引張ロール28のみを設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明のシート材加工装置の一実施形態の概略構成図であって、(a)は、側面図、(b)は、平面図を示す。
【図2】図1に示すシート材加工装置によって加工されたシート材の、(a)は、平面図、(b)は、幅方向断面図を示す。
【図3】本発明のシート材加工装置の他の実施形態の概略構成図であって、(a)は、側面図、(b)は、平面図を示す。
【図4】図3に示すシート材加工装置によって加工されたシート材の、(a)は、平面図、(b)は、幅方向断面図を示す。
【図5】図3に示すシート材加工装置(ポンチ:円錐形状)によって加工されたシート材の、(a)は、平面図、(b)は、幅方向断面図を示す。
【図6】図4に示すシート材の他の実施形態(搬送方向延伸大)であって、(a)は、平面図、(b)は、幅方向断面図を示す。
【図7】図5に示すシート材の他の実施形態(幅方向延伸大)であって、(a)は、平面図、(b)は、幅方向断面図を示す。
【図8】シート材の各種実施形態であって、(a)は、平面視正方形の枠体の溝の実施形態の平面図、(b)は、その長手方向断面図、(c)は、平面視リング形状の溝の実施形態の平面図、(d)は、その長手方向断面図、(e)は、長手方向に長い平面視矩形状の枠体の溝の実施形態の平面図、(f)は、その長手方向断面図、(g)は、幅方向に長い平面視楕円形状の枠体の溝の実施形態の平面図、(h)は、その長手方向断面図である。
【図9】シート材の他の実施形態であって、長手方向および幅方向に沿う碁盤目形状の溝の実施形態の平面図である。
【図10】シート材の他の実施形態であって、長手方向および幅方向に対して交差する碁盤目形状の溝の実施形態の平面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 シート材加工装置
3 起点付与部
4 圧延ロール
5 チャック延伸部
7 シート材
13 チャック
14 プーリ機構部
28 引張ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材の表面に、裂け目の起点を付与する起点付与手段と、
前記起点付与手段に対して前記シート材の搬送方向下流側に配置され、前記シート材を延伸する延伸手段と
を備えていることを特徴とする、シート材加工装置。
【請求項2】
前記延伸手段は、前記シート材を、前記搬送方向と直交する方向に引っ張る幅方向引張手段を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のシート材加工装置。
【請求項3】
前記幅方向引張手段は、
前記シート材を、前記搬送方向と直交する方向の両側から掴む複数のチャックと、
前記搬送方向と直交する方向において前記シート材を挟んで配置される各前記チャックの間の距離が、前記シート材が搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向かうに従って、広くなるように、各前記チャックを搬送するチャック搬送手段と
を備えていることを特徴とする、請求項2に記載のシート材加工装置。
【請求項4】
前記延伸手段は、前記シート材の搬送方向における前記起点付与手段と前記幅方向引張手段との間に配置され、前記シート材を、前記搬送方向に沿って圧延する圧延手段を含んでいることを特徴とする、請求項2または3に記載のシート材加工装置。
【請求項5】
前記延伸手段は、前記シート材を、前記搬送方向に引っ張る長手方向引張手段を含んでいることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のシート材加工装置。
【請求項6】
シート材の表面に、裂け目の起点を付与した後、シート材を延伸することを特徴とする、シート材加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−290209(P2007−290209A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119464(P2006−119464)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】