説明

シート材料を安定化させるための加熱装置、システムおよび方法

近接場浮揚によって1枚のシート材料を安定化させるための装置は、1個の加熱素子および一つの放射面を備えた1個のヒーター・プレートを有し、上記放射面は上記ヒーター・プレートが音波を受けたときに振動する。この装置は、上記ヒーター・プレートに結合され、かつこのヒーター・プレートに音波を伝送するように動作可能な少なくとも一つの振動発生源をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本願は、その全内容が引用されて本明細書に組み入れられる2008年3月31日付けで提出された米国特許出願第12/080041号の優先権を主張した出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、非拘束部分を有するシート材料の加熱および安定化の分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
その内容が引用されて本明細書に組み入れられる特許文献1および2に記載されているフュージョン・ドロー法は、火仕上げ品質の清純な表面を備えたシート材料の形成に用いられる。典型的なフュージョン・ドロー法は、堰仕掛けの輪郭を有する溝内に溶融材料を供給することを含む。この溶融材料は上記堰仕掛けを乗り越えかつ分岐されて堰仕掛けの両側壁を流れ下る。この分岐された流れは堰仕掛けの底部において収束して、火仕上げ品質の清純な表面を備えた一条のシートを形成する。この一条のシートは一連の加熱ゾーンを通って移動せしめられかつ牽引されて、最終的な所望の厚さになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,338,696号明細書
【特許文献2】米国特許第3,682,609号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フュージョン・ドロー法は、ラッピング仕上げまたは研磨仕上げ等の形成後の仕上げ作業を必要としない、フラットパネル・ディスプレイ等の進化した用途のためのシート材料を送出することができる。しかしながらこの方法は、シート牽引時におけるシート内部の応力レベルおよび応力変化をコントロールすることが困難であり、牽引されているシート内部の高い応力レベルおよび応力変化は、最終製品における永久歪みとなり得る。シート内部の応力および応力変化に寄与すると考えられる一つの要因は、シートの動作にある。典型的には、シートの高品質領域を最大にするために、牽引中はシートが両エッジにおいて、またはそれらの近傍において物理的に拘束されているのみである。その結果、シートが牽引されている間、シートの大部分は自由に動く。このようなシートの動きは、シート内部の応力レベルおよび応力変化に対し悪影響を与える。堰仕掛けの底部において行なわれる、シート分割工程等のシートに力を与えることを含む工程もまた、シートの動きを増幅させる可能性がある。シート内部の高い応力レベルおよび応力変化に寄与する他の要因は、フュージョン・ドロー装置のアニーリング・ゾーンにおける雑な温度コントロール、または不適切な直列アニーリング、および煙突効果による管理されていない空気の流れである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、本発明は、1枚のシート材料を安定化させるための加熱装置に関し、この装置は、1個の加熱素子および一つの放射面を備えた1個のヒーター・プレートを有し、上記放射面は上記ヒーター・プレートが音波を受けたときに振動する。この加熱装置は、上記ヒーター・プレートに結合されかつこのヒーター・プレートに音波を伝送するように動作し得る少なくとも一つの振動発生源を備えている。
【0007】
別の態様において、1枚のシート材料を安定化させるためのシステムは、上記シート材料を受容するための通路を画成する一対の側壁を備え、上記通路の両側には複数のヒーター・プレートが配列されている。上記複数のヒーター・プレートのそれぞれは、1個の加熱素子と、上記ヒーター・プレートが音波を受けたときに振動する一つの放射面を備えている。このシステムは、上記ヒーター・プレートに結合されかつこのヒーター・プレートに音波を伝送するように動作することが可能な複数の振動発生源をさらに備えている。
【0008】
さらに別の態様において、本発明はシート材料を安定化させるための方法に関し、この方法は、一つの通路の両側に配置された複数のヒーター・プレートの間に上記シート材料の非拘束部分を受容するステップを含み、上記複数のヒーター・プレートのそれぞれは、1個の加熱素子を備えかつこのヒーター・プレートが音波を受けたときに振動する一つの放射面を有する。この方法は、上記複数のヒーター・プレートに音波を伝送するステップ、および上記複数の放射面と前記非拘束部分との間に定在波を発生させるステップをさらに含み、これらの定在波が上記非拘束部分を浮揚させかつこの非拘束部分を選択された面内に保つ。
【0009】
本発明の他の特徴および効果は、下記の説明および添付された図面から明らかになるであろう。
【0010】
下記に説明する添付図面は、本発明の典型的な実施の形態を示し、本発明が他の均等な効果的な実施の形態を許容することにより、この実施の形態が本発明の範囲を限定するものであると考えてはならない。明瞭さおよび簡潔さのために、図面は必ずしも等寸ではなく、特徴または図面の視る角度によっては尺度が誇張されて、または概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】単一の振動発生源を備えた、シート材料を安定化させるための加熱装置の斜視図
【図1B】図1Aの加熱装置の一対の間に浮遊せしめられた対象物を示す図
【図2A】複数の振動発生源を備えた、シート材料を安定化させるための加熱装置の斜視図
【図2B】図2Aの加熱装置の一対の間に浮遊せしめられた対象物を示す図
【図3】図1Aまたは図2Aのヒーター・プレートの3−3線に沿った断面図
【図4】図2Aの加熱装置の複数を組み込んだ、シート材料を安定化させるためのシステムの平面図
【図5】図4システムの5−5線に沿った垂直断面図
【図6】図2Aの加熱装置の複数の水平配列を組み込んだ、シート材料を安定化させるためのシステムの垂直断面図
【図7】図2Aの加熱装置の複数の水平配列および垂直配列を組み込んだ、シート材料を安定化させるためのシステムの垂直断面図
【図8】図8A〜図8Dは、1枚のシート材料の幅方向に沿った図2Aの加熱装置の配列例を示す図
【図9】曲線をなす両側壁を有しかつ図2Aの加熱装置の複数を組み込んだ、シート材料を安定化させるためのシステムの垂直断面図
【図10】曲線をなす放射面に変更された図2Aの加熱装置の複数を組み込んだ図9のシステムの垂直断面図
【図11】図10のシステムの一部分の拡大図
【図12】ヒンジを用いて動く部分を有する曲線をなす側壁を備えた図9のシステムを示す図
【図13】シート材料を安定化させるためのシステムの壁に図2Aの加熱装置を調整可能に取り付けるための機構を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に示されているいくつかの実施の形態を参照して、本発明を詳細に説明する。好ましい実施の形態の説明においては、本発明を完全に理解して貰うために、多くの具体的な詳細内容が説明されている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細のうちのいくつかまたは全てを用いなくとも実施が可能であることは、当業者には明らかであろう。その他の場合では、本発明を不必要に曖昧にしないために、周知の特徴および/または工程については詳細に説明されていない。さらに、共通または類似の要素には同様のまたは類似の参照番号が用いられている。
【0013】
図1Aおよび図2Aは、シート材料を安定化するための加熱装置100の異なる実施例を示す。加熱装置100は、シート材料の拘束されていない部分に物理的に接触することなしに、シート材料の拘束されていない部分の動きを制御することによってこのシート材料を安定化させる。シート材料の拘束されていない部分の両側に複数の加熱装置100が配置されて、垂直面、水平面、傾斜面または曲面であり得る選択された面内に上記拘束されていない部分を維持する近接場浮揚を生じさせるように動作する。上記拘束されていない部分を浮揚させている間に、加熱装置100は上記拘束されていない部分を加熱することもできる。熱は局部的かつ上記シート材料の数百マイクロメートル以内において加えられ、これにより、シート材料全体に亘って細かい温度制御が可能になる。
【0014】
ここで図1Aを参照すると、装置100は、ヒーター・プレート104の背面118に結合された縦振動発生源102を備えている。この振動発生源102は、圧電素子、磁歪素子、または超磁歪素子等の何れかの適当なトランスデューサ素子を含むトランスデューサ112を備えている。振動発生源102は、音響伝播管116によってトランスデューサ112に結合されたホーン114をさらに備えている。振動発生源102の音響伝播軸線は、ヒーター・プレート104に対して(すなわちヒーター・プレート104の背面118に対して)ほぼ垂直である。上記トランスデューサ112は、励起されると音波を発生させ、この音波は音響伝播管116およびホーン114を通じてヒーター・プレート104に伝送される。音波は超音波であってもよい。ホーン114は音波の振幅を増幅して、この音波をヒーター・プレート104全体に拡散させる。本実施例においては、ホーン114が円錐台形状を有して音波を円形に拡散させる。ヒーター・プレート104は、ホーン114によって与えられた円形に拡散する音波を効率的に利用するために円盤形状を有する。一般的に、ホーン114およびヒーター・プレート104の形状は、音波がヒーター・プレート104全体に亘って均等に拡散するように選択される。ヒーター・プレート104は、音波がヒーター・プレート104全体に亘って拡散するときに振動する放射面144を有する。一つの実施例において、放射面144は平坦面である。別の実施例においては、放射面144が、浮揚目的の形状に良く適合するように曲線形状等の異なる形状を有する。図1Bに示されているように、シート材料の拘束されていない部分等の対象物115が振動放射面144に対向する関係で近接場領域内に配置されている場合には、振動放射面144と対象物115との間に定在波が形成され、この定在波が対象物115を浮揚させる。浮揚距離は一般に数十から数百マイクロメートル以内である。上記近接場領域は、放射面144から測定して例えば750μm以内と一般に放射面144の数百マイクロメートル以内にある。上記対象物115が、対向する一対の加熱装置100の間に配置されている場合には、加熱装置100に対して対向関係にある対象物115の両面に浮揚力が印加される。浮揚力が釣り合っていれば、浮揚力が対象物115を所望の平面内に保つことができ、対象物115の歪みを阻止または最少化する。
【0015】
一般に、加熱装置100は、ヒーター・プレートの背面に結合された1個または複数個の縦振動発生源を備えることができる。図2Aにおいては、加熱装置100が、ヒーター・プレート106の背面132に結合された縦振動発生源108,110を備えている。これらの縦振動発生源108,110は、圧電素子、磁歪素子、または超磁歪素子等の如何なる適当なトランスデューサ素子をも含むトランスデューサ素子をそれぞれ備えている。振動発生源108,110は、音響伝播管128,130によってそれぞれトランスデューサ120,122に結合されたホーン124,126をさらに備えている。振動発生源108.110の音響伝播軸線は、ヒーター・プレート106に対して(すなわちヒーター・プレート106の背面132に対して)ほぼ垂直である。
【0016】
一つの実施例において、トランスデューサ120,122は、音波送信機として機能する。トランスデューサ120,122は、励起されると、音響伝播管128,130およびホーン124,126をそれぞれ通じて音波をヒーター・プレート106に伝送する。音波は超音波であってもよい。ホーン124,126は、ヒーター・プレート106全体に亘って音響エネルギーを長方形または楕円形に拡散させる直方体形状を有する。ヒーター・プレート106は、図示のような長方形またはその他の細長い形状を有する。ヒーター・プレート106は、音波がヒーター・プレート106全体に亘って拡散するときに振動する放射面146を備えている。図2Bに示されているように、対象物115が振動放射面146に対向する関係で近接場領域内に配置されている場合には、振動放射面146と対象物との間に定在波が形成され、この定在波が対象物を浮揚させる。浮揚距離は数十から数百マイクロメートル以内である。上記近接場領域は、放射面146から測定して例えば750μm以内、好ましくは600μm以内と一般に放射面146の数百マイクロメートル以内にある。一つの実施例において、放射面146は平坦面を有する。別の実施例においては、音波放射面146が、浮揚目的の形状に良く適合するように曲線形状等の異なる形状を有する。
【0017】
別の実施例においては、トランスデューサ120が音波送信機として機能し、かつトランスデューサ122が音波受信機として機能する。トランスデューサ120は、上述のように放射面146を振動させて、放射面146に対して対向する関係の一にある対象物を浮揚させる。一方、トランスデューサ122は、振動放射面146からの振動をホーン126および音響伝播管130を通じて受信する。この場合は、トランスデューサ122に伝送するために、ホーン126がこのホーン126の近傍の音波を集める。その内容が引用されて本明細書に組み入れられる米国特許第6,802,220号明細書、ならびにその内容が引用されて本明細書に組み入れられる、上羽貞行等著「近接場音響浮揚を用いた非接触搬送(non-contact transportation using near-field acoustic levitation)」Ultrasonics 38(2000年)26-32頁に記載されているように、トランスデューサ120が送信機として機能し、かつトランスデューサ122が受信機として機能する場合には、ヒーター・プレート106に沿って進行波が発生し、この進行波は、ヒーター・プレート106の近接場領域内にある対象物115をヒーター・プレート106に沿って搬送するのに有用である。
【0018】
動作時には、例えば電流の印加によってトランスデューサ(図1Bにおける112、図2Bにおける120,122)が励起される。トランスデューサが励起されると、音響伝播管(図1Bにおける116、図2Bにおける128,130)およびホーン(図1Bにおける114、図2Bにおける124,126)を通じて音波がヒーター・プレート(図1Bにおける104、図2Bにおける106)に伝送される。放射面(図1Bにおける144、図2Bにおける146)は、ヒーター・プレートにおいて受容した音波に応答して振動する。この音波は、約15kHzから100kHzまでの範囲内の、すなわち超音波の範囲内の動作周波数を有する。上記対象物115が音波放射面(図1Bにおける144、図2Bにおける146)の近接場領域内に位置している場合には、対象物115は浮揚せしめられる。近接場領域は音波放射面(図1Bにおける144、図2Bにおける146)の好ましくは750μm以内、より好ましくは600μm以内である。対象物がもしこの近接場領域の外にある場合でも、対象物は浮揚可能である。しかしながら、もし対象物が放射面から遠過ぎると、対象物を浮揚させるのに用いるためには浮揚力が弱過ぎる。トランスデューサが、上述のようにヒーター・プレートに沿って進行波を伝播させるように構成されている場合には、対象物は浮揚に加えて搬送される。近接場浮揚力は、10cm×10cmmの対象物に対して10kgfまでであろう。
【0019】
ヒーター・プレート(図1Aにおける104、図2Aにおける106)は、浮揚せしめられた対象物に熱を提供するように配備される。一つの実施例においては、図3に示されているように、ヒーター・プレート104,106は、金属ケース136内に挿入された、しかしながら絶縁材料138によって金属ケース136から絶縁された抵抗性素子等の加熱素子134を備えている。この抵抗性素子134は、ニッケル・クローム、インコネル、白金、およびセラミック等の材料から作製することができる。上記金属ケース136は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、インコネル、および白金等の材料から作製することができる。上記絶縁材料138は、酸化マグネシウムおよび雲母等の材料から作製することができる。金属ケース136は、放射による熱伝導性を高めかつ酸化を遅らせるための表面処理がなされる。ヒーター・プレート(図1Aにおける104、図2Aにおける106)の動作温度は室温から約1000℃までである。図1Aに示された実施例においては、ヒーター・プレート104の背面118上の電気入力端子140を通じて、ヒーター・プレート104内の加熱素子に対して電力が供給される。図2Aに示された実施例においては、ヒーター・プレート106の背面132上の電気入力端子142を通じて、ヒーター・プレート106内の加熱素子に対して電力が供給される。電気入力端子は、ステンレレス鋼ポスト等の金属製ポストの形態が良い。図1Aおよび図2Aには示されていないが、ヒーター・プレートの温度出力をモニターするための温度監視センサをヒーター・プレート(図1Aにおける104、図2Aにおける106)上に取り付けることが可能である。
【0020】
図4はシート材料162を安定化させるためのシステム150の平面図を示す。このシステム150は、牽引装置として用いられ、またはシート材料の安定化が必要な他のシステムとともに用いられる。システム150は、炉壁すなわち耐熱性材料からなる側壁152,154,156および158を備えている。上記シート材料162を収容するための通路160が対向する側壁152と154との間に画成されている。シート材料162は、例えば堰仕掛け(不図示)から下降しかつ清純な両表面163,165を有するシートガラスである。このシート材料162の両エッジは、側壁156,158の長さ方向に沿って配置された一対のローラ等のエッジ案内手段164の間を通過する。通路160の両側に対向するように配置されたヒーター・プレート106を備えた複数の加熱装置100が側壁152,154に取り付けられている。複数のヒーター・プレート106の放射面146は、シート材料162の表面163,165に対向する関係にある。後述するように、放射面146と表面163,165との間のギャップは、シート材料162の表面163,165における圧力分布および温度分布をコントロールするのに必要なように調整される。図4のシステムにおいては、複数の加熱装置100のそれぞれが、図2Aについて説明したような2個の振動発生源を有する。しかしながら、図1Aについて説明したような単一の振動発生源を有する加熱装置100、または3個以上の振動発生源を有する加熱装置100を用いることもできる。
【0021】
図5はシステム150の断面図である。この実施例においては、側壁152,154が垂直である。加熱装置100は、通路160内において垂直の向きに配列されており、かつ前述したように、シート材料162の表面163,165に対して対向する関係にある。別の実施例においては、図6に示されているように、複数の加熱装置100が通路160に対して水平の向きに配列されている。さらに別の実施例においては、図7に示されているように、通路160内において一部の加熱装置100が垂直の向きに配列され、他の加熱装置100が水平の向きに配列されていてもよい。図8A〜図8Dは、シート材料162の表面に対する加熱装置100の種々の配列を示す。図8Aにおいては、複数の加熱装置100がシート材料162の幅方向に沿って水平の向きに配列されている。図8Bにおいては、複数の加熱装置100がシート材料162の幅方向に沿って水平の向きに千鳥状に配列されている。図8Cにおいては、複数の加熱装置100がシート材料162の幅方向に沿って垂直の向きに配列されている。図8Dにおいては、複数の加熱装置100がシート材料162の幅方向に沿って斜めの向きに配列されている。シート材料162の幅方向および厚さ方向の所望の圧力分布および温度分布を得るためには、シート材料162の両面に対する複数の加熱装置100を何れの適当な向きに配列してもよい。
【0022】
図9は、側壁152,154がそれぞれ一次曲線部分170,172を備えて、シート材料162を収容するための一次曲線通路174を形成していることを示す。この一次曲線通路174においては、シート材料162が一次曲線輪郭を呈している。システム150のこの部分における加熱装置100は、シート材料162の長さ方向に沿って一次曲線輪郭に配列されている。シート材料162の幅方向に亘っては、図8A〜図8Dに示されているような加熱装置配列の何れかを用いればよい。図10に示されているように、シート材料162の一次曲線輪郭に良く整合することができるように、いくつかの、または全ての加熱装置100の放射面146が湾曲して(すなわち、一次曲線輪郭を有して)いてもよい。加熱装置100は、シート材料162の長さ方向に沿って、互いに著しく近接して配列されているのがよい。しかしながら、隣接する加熱装置100の間は、図11に示されているように、離れていることが好ましい。
【0023】
図9を参照すると、フュージョン・ドロー法において、側壁152,154が一次曲線部分170,172を備えていることには種々の利点がある。システム150が垂直の側壁152,154のみを備えている場合には、高さが制約され、ライン内アニーリングを行なうことを困難にする。垂直の側壁のみを備えたシステムにおいては、シート材料162が極めて速やかに冷却されなければならず、材料内部に高い応力が誘発されて、シート材料の高い収縮および歪みの原因となる。上記一次曲線部分170,172は側壁を水平方向に延長して、フュージョン・ドロー法においてライン内アニーリングを行なうことを可能にする。一次曲線配列はまた、牽引の底部における分離工程によって発生するシートの乱れが牽引の上方部分に伝播するのを阻止するのにも役立つ。一次曲線配列はまた、煙突効果を低減して牽引の上部における温度安定性を高め、かつガラス表面の汚染を低減する。図12は、ヒンジを用いて動く部分176が側壁170に設けられていてもよいことを示す。工程が混乱した場合には、ヒンジを用いて動く部分176が開かれて、混乱によって生じたごみを側壁170の下方のリサイクル容器178内に落下させることができる。
【0024】
図4を参照すると、各加熱装置100は、シート材料162の表面163,165に対して(すなわち、通路160の両側に対して)位置調整が可能なように側壁152,154に取付けられている。この位置調整は種々の方法で実現することができる。一つの実施例においては、図13に示されているように、側壁152に開口部180が形成され、かつこの開口部180に案内板182が取り付けられている。案内板182は、振動発生源108,110の音響伝播管128,130を収容する開口部184,186を有する。案内板182はまた、電気端子142に接続される電気配線が通される開口部188をも備えている。基板189がトランスデューサ120,122の背面に固定されている。この基板189は、スペーサ192内の孔内に収容されたスクリュー190によって案内板182に結合されている。スペーサ192は、基板189内の開口部内に取り付けられ、かつ案内板182に向かって延びている。スペーサ192は、基板189に対して調整されるのに適しており、案内板182と基板189との間の間隔を調節することができる。一つの実施例において、スペーサ192は、それらの回転によって基板189に対する調節を可能にするねじ溝を外表面に備えている。スペーサ192の位置が調節された後、スクリュー190が締め付けられ、これにより、案内板182と基板189との間に所望の間隔が保たれる。
【0025】
上述の構成において、ヒーター・プレート106の放射面146とシート材料162の対向面163との間の間隔は、案内板182と基板189との間の間隔の増減につれて増減する。したがって、加熱装置100は、スペーサ192の適切な調節によって、シート材料162の対向面163に対して進退される。シート材料162の表面に対して加熱装置100を進退させるための別の機構を用いてもよい。例えば、加熱装置100の位置の調節にスクリュー190を用いる代わりに、リニアアクチュエータを用いてもよい。このリニアアクチュエータは基板189に固定されて、両板182,189の間に配置される。基板上にリニアアクチュエータを導入すると、このリニアアクチュエータを取り巻く余分な物理的空間が必要となり、この物理的空隙は内部のエア洩れの原因となる。この場合、駆動シリンダまたは駆動システムは、シート取扱い装置の内部からのエア洩れの危険性を低減しかつシート取扱い装置内の熱から駆動システムを防護するために、耐熱ベローズで覆われる。
【0026】
加熱装置100は、シート材料が、フュージョン・ドロー装置内、または一般的にアニーリング・システム、検査システム、またはシート操作システム等のその他のシステム内で取り扱われている間におけるシート材料の安定化に用いられる。加熱装置100は、シート材料を安定化させることによって、シート材料の応力および応力変化を最少化することができる。加熱装置100は、フュージョン・ドロー装置内に配置され、シート材料の安定化およびライン内アニーリングのために用いられる。加熱装置100は、フュージョン・ドロー装置の底部(すなわち終端部)に配置されてもよい。この場合、加熱装置100は、フュージョン・ドロー装置の底部において行なわれる処理によるシートの動きが、フュージョン・ドロー装置内のシート材料の他の部分へ伝播するのを防止するのに効果的である。加熱装置100はシート材料に対して極めて接近して配置されることが可能なために、シート材料における温度分布を細かくコントロールすることが可能になり、このことは、シート材料内の応力および応力変化の低減を意味する。
【0027】
以上、限られた数の実施の形態について本発明を説明したが、ここに説明されている本発明の範囲から離れることなしにその他の実施の形態を実施することが可能なことは、本明細書の恩恵を受ける当業者であれば理解されるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付されている請求項によってのみ限定されるべきものである。
【符号の説明】
【0028】
100 加熱装置
102,108,110 縦振動発生源
104,106 ヒーター・プレート
112,120,122 トランスデューサ
114,124,126 ホーン
116,128,130 音響伝播管
118,132 ヒーター・プレートの背面
134 加熱素子(抵抗性素子)
136 金属ケース
138 絶縁材料
144,146 ヒーター・プレートの放射面
150 シート材料安定化システム
152,154,156,158 側壁
160 通路
162 シート材料
163,165 シート材料の表面
164 エッジ案内手段
170,172 側壁の一次曲線部分
174 一次曲線部分通路
176 側壁のヒンジを用いて動く部分
178 リサイクル容器
180 側壁の開口部
182 案内板
184,186,188 案内板の開口部
189 基板
190 スクリュー
192 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のシート材料を安定化させるための加熱装置であって、
1個の加熱素子および一つの放射面を備えた1個のヒーター・プレートであって、前記放射面は前記ヒーター・プレートが音波を受けたときに振動するものであるヒータ・プレート、および
前記ヒーター・プレートに結合されかつ該ヒーター・プレートに音波を伝送するように動作することが可能な少なくとも一つの振動発生源、
を備えてなることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つの振動発生源が、前記ヒーター・プレートに伝送される音波を発生させることが可能なトランスデューサを備えていることを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの振動発生源が、音響伝播管によって前記トランスデューサに結合されたホーンをさらに備え、該ホーンは前記ヒーター・プレートに固定され、かつ前記トランスデューサによって発生せしめられた音波の拡散を可能にするものであることを特徴とする請求項2記載の加熱装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの振動発生源が、前記ヒーター・プレートにほぼ直交する音響伝播軸線を有することを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項5】
シート材料を安定化させるための方法であって、
一つの通路の両側に配置された複数のヒーター・プレートの間に前記シート材料の非拘束部分を受容するステップであって、前記複数のヒーター・プレートのそれぞれが、1個の加熱素子を備えかつ該ヒーター・プレートが音波を受けたときに振動する一つの放射面を備えているステップ、
前記複数のヒーター・プレートに音波を伝送するステップ、および
前記複数の放射面と前記非拘束部分との間に定在波を発生させ、該定在波が、前記非拘束部分を浮揚させかつ該非拘束部分を選択された面内に保つステップ、
を有してなることを特徴とする、シート材料を安定化させるための方法。
【請求項6】
前記複数の放射面と前記非拘束部分との間に進行波を発生させるステップをさらに含み、該進行波が非拘束部分を前記複数放射面に沿って搬送することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記非拘束部分が前記複数の放射面の約750μm以内にあるように、前記複数のヒーター・プレートを前記通路の両側に配置するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項5記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−522764(P2011−522764A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502942(P2011−502942)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/001960
【国際公開番号】WO2009/145817
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】