説明

シート枚数の検知装置及びその方法

【課題】 簡単な構造で、ダブルブランクの誤検出を防止することができるとともに、シート供給速度の低下を防止することができるシート供給枚数の検知装置及びその方法を提供する。
【解決手段】 プレス加工ラインに供給されるシートSの重量を計測するシート供給枚数の検知装置10を、シート搬入ラインとプレス加工ラインにおいて初工程を行うプレス加工機の間に配設されたアイドルステージ11と、アイドルステージ11に設けられシートSの重量を計測する計測手段15と、シートSを記憶する記憶手段と計測手段15で計測されたシートSの重量と記憶手段に記憶されたシートSの単位重量とを比較演算する比較手段とを備えた制御装置20とを有する。そして、計測手段15で計測されたシートSの計測値が上記単位重量を越えた時、アイドルステージ11上に供給されたシートSが1枚より多いと判断し、シートSの供給を停止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のプレス加工機が配設されたプレス加工ラインに供給される金属製のシートを1枚ずつ計測するシート供給枚数の検知装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプレス加工において、複数台のプレス加工機を並べて配置しておき、それぞれのプレス加工機によりシート(通常、金属板)を順次プレス加工を行って製品とするタンデムプレスによる加工が知られている。
このプレス加工方法においは、シートが1枚ずつ供給されることが必要であり、そのため、シートを供給する際、1枚ずつ取り出されて供給されているか否かの検出が行われている。
【0003】
このプレス加工方法では、最初のプレス加工機、つまり初工程を行うプレス加工機、に供給するプレス加工用のシートが、シート供給用の搬送ラインにより、順次、その近くまで搬送されてくる。
そしてその搬送ラインから供給ロボットにより上記最初のプレス加工機に供給されることとなる。
この場合、当然ながら、シートは搬送ラインから1枚ずつ供給されるようになっている。
【0004】
そして、シートが1枚ずつ供給されているか否かを検出する一例として、レーザセンサ90を用いる方法がある(図7参照)。
この方法では、シート供給装置94によりシートSをアイドルステージ91に供給しており、このシート搬送中にレーザセンサ90でシートSの板厚を測定することでシートSの枚数を検知している。
【0005】
このようなレーザセンサ90でシートSの板厚を測定する方法では、搬送中に生じるシートSの振動が測定時にも残るため、レーザセンサ90がうまく対応できず、誤検出が生じ、例えば2枚のシート(ダブルブランク)を適切として検出したり、或いは、まったく検出できなかったりするという問題がある。
【0006】
上記シートSの振動による誤検出や、未検出を解決するために、シート搬送中にシートSの枚数測定を行う場合、シート搬送ラインの速度を下げるか、又は停止して測定することが必要となる。
そうすると、シート供給速度が上がらず、生産効率が悪くなるという問題が生じる。
【0007】
さらに、上記のシートSの板厚を測定する方法では、シートSの重なり具合によっては、レーザセンサ90による計測が正確にできず、その結果、誤検出が発生するおそれが多い。
【0008】
上記シートの重なり具合によって生じる誤検出を防止するには、一点ではなく多点での測定が必要になり、そうすると、センサが増えることによる測定結果のばらつきを抑える補正装置が必要となり、検出方法が複雑になるという問題がある。
【0009】
一方では、上記プレス加工以外でも、例えば、バルクパレット方式の梱包等に用いられるシートを1枚ずつ供給する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1のシート枚数検知装置では、先端にバキュームパッドを装備したシートリフタで、シートマガジンからシートを取り出し、バルクに順次積層するようになっている。
そして、シートが1枚ずつ取り出されているかを検知する構造として、検出体に設けられシートを挟みこむ挟持部と、シートの厚みに対応する挟持部の変位を検知するセンサとして渦電流方式のセンサからなる検知手段が設けられ、挟持部の変位が増幅されて検知手段で検知されるようになっている。
【0010】
上記挟持部は、シート挟み込み上部、シート挟み込み下部から構成され、バキュームパッドで吸着したシートをシート挟み込み上部に当接させた後、シリンダで検出体を引張ってシート挟み込み下部を上方に揺動させ、挟み込み上下部でシートを挟み込み、挟み込み下部の略反対側に設けてあるセンサでシートの厚さを検出している。
【0011】
【特許文献1】特開2003−192185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記特許文献1に記載のシート枚数検知装置では、シートの枚数検知に際して、先ず、シリンダの駆動により検出体を移動させてシート挟み込み下部をシートの移動範囲から対比させておき、シートがシート挟み込み上部に当接した後、再度シリンダを駆動させて検出体を移動させる構造となっていることから、構造が複雑なためシリンダの誤作動が生じ易い。
また、バキュームパッドで吸着したシートとシート挟み込み上部および下部との位置関係の調整等も困難である。
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、しかも確実にダブルブランクの誤検出を防止することができるとともに、シート供給速度の低下を防止することができるシート枚数の検知装置及びその方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、供給されるシートを、その重量を計測することにより、上記の諸問題を解決することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0015】
すなわち、本発明は、(1)、複数台のプレス加工機が配設されたプレス加工ラインに供給される金属製のシートの重量を計測しシート枚数を検知する検知装置であって、シート供給源と上記プレス加工ラインにおける初工程を行うプレス加工機の間に配設されたアイドルステージにシートの重量を計測する計測手段を備えたシート枚数の検知装置に存する。
【0016】
また、本発明は、(2)、複数台のプレス加工機が配設されたプレス加工ラインに供給されるシートの重量を計測しシート枚数を検知する検知装置であって、シート供給源と上記プレス加工ラインにおける初工程を行うプレス加工機の間に配設されたアイドルステージと、このアイドルステージに設けられ上記シート供給源から供給される定形サイズのシートの重量を計測する計測手段と、プレス加工の対象となるシートの単位重量を記憶する記憶手段および上記計測手段で計測された特定厚みのシートの重量と上記記憶手段に記憶された当該シートの単位重量とを比較演算する比較手段を含む制御装置とを有し、上記計測手段で計測された当該シートの重量の計測値が上記単位重量を越えた時上記アイドルステージ上に供給されたシートが1枚より多いと判断し、シートの供給を停止するようにしたシート枚数の検知装置に存する。
【0017】
また、本発明は、(3)、上記計測手段は、上記アイドルステージ上に供給されるシートを平行に支持する昇降台と、該昇降台を昇降移動させる駆動手段と、上記昇降台上に支持されたシートを計測するディジタル重量計測器とを備えて構成されているシート枚数の検知装置に存する。
【0018】
また、本発明は、(4)、上記計測手段は、上記アイドルステージ上に供給されるシートを平行に支持する昇降台と、該昇降台に連結されるとともにその昇降台を移動させる4本のボールネジと、これらの4本のボールネジを駆動する駆動モータとを備えて構成され、上記駆動モータの負荷を電流値として計測し、その電流値が上記シートの重量計測値とされるシート枚数の検知装置に存する。
【0019】
また、本発明は、(5)、上記計測手段は、上記アイドルステージ上に供給されるシートを平行に支持する昇降台と、該昇降台に連結されるとともにその昇降台を移動させる4本のリニアアクチュエータとを備えて構成され、該リニアアクチュエータの推力を電流値として計測し、その電流値が上記シートの重量計測値とされるシート枚数の検知装置に存する。
【0020】
また、本発明は、(6)、複数台のプレス加工機が配設されたプレス加工ラインに供給される金属製のシートの重量を計測しシート枚数を検知するシート供給枚数の検知方法であって、シート供給源と上記加工ラインにおける初工程を遂行するプレス加工機の間に配設されたアイドルステージ上に上記シート供給源から供給される定形サイズのシートの重量を計測する計測手段を有し、プレス加工の対象となるシートの単位重量を制御装置の記憶手段に厚み単位で記憶させ、上記計測手段で計測された特定厚みのシートの重量と上記記憶手段に記憶されたシートの単位重量を上記制御装置の比較手段で比較演算し、計測されたシートの計測値が上記単位重量を越えた時、上記アイドルステージ上に供給されたシートが1枚より多いと判断してシートの供給を停止するようにしたシート枚数の検知方法に存する。
【0021】
また、本発明は、(7)、上記計測手段による計測は、シート供給源から上記アイドルステージ上に供給されるシートを、駆動手段により駆動して昇降移動させる昇降台上に平行に支持し、上記昇降台上に支持されたシートをディジタル重量計測器により計測するようにしたシート枚数の検知方法に存する。
【0022】
また、本発明は、(8)、上記計測手段による計測は、シート供給源から上記アイドルステージ上に供給されるシートを昇降台上に平行に支持し、該昇降台を4本のボールネジにより保持して、該ボールネジの駆動モータの負荷を電流値として計測し、その電流値を上記シートの重量計測値としたシート枚数の検知方法に存する。
【0023】
また、本発明は、(9)、上記計測手段による計測は、シート供給源から上記アイドルステージ上に供給されるシートを昇降台上に平行に支持し、該昇降台を4本のリニアアクチュエータにより保持させ、該リニアアクチュエータの推力を電流値として計測し、その電流値を上記シートの重量計測値としたシート枚数の検知方法に存する。
【0024】
また、本発明は、(10)、上記アイドルステージ上で上記シートの重量を計測する計測時間が、上記プレス加工ラインに配設された各プレス加工機のプレス加工時間を含むタクト以内であるシート枚数の検知方法に存する。
【0025】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)から(5)を及び(6)から(10)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【0026】
本発明によれば、アイドルステージに設けられた計測手段によりシート供給源から供給されたシートが計測され、制御装置により、そのシートがダブルブランクであるか否かの判断がなされ、1枚より多いと判断したとき、シートの供給が停止される。
【0027】
ここで、制御装置において記憶手段がシートの単位重量を記憶しており、計測手段で計測されたシートの重量は、記憶手段に記憶されたシートの重量とを比較手段により比較演算され、その結果に基づいてシートの枚数が検知される。
【発明の効果】
【0028】
本発明のシート枚数の検知装置は、シート供給源と上記プレス加工ラインにおける初工程を行うプレス加工機の間に配設されたアイドルステージにシートの重量を計測する計測手段を備えているので、簡単な構造で、確実にシートの枚数をチェックできる。
【0029】
以上説明したように本発明のシート枚数の検知装置によれば、シート供給源とプレス加工ラインの初工程を行うプレス加工機の間に配設されたアイドルステージに計測手段が設けられ、当該計測手段で計測されたシートが制御装置によりダブルブランクであるか否かの判断がなされた後、適宜な処理を採られる。
【0030】
従って、簡単な構造で、振動などに影響されずにダブルブランクの誤検出を防止することができるとともに、シート供給速度の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は本発明のシート枚数の検知装置を装備したプレス加工装置を示す全体平面図、図2はシート枚数の検知装置とシート供給装置との関係を示す概略全体図、図3はシート枚数の検知装置(以下、単に検知装置という)を示す正面図である。
【0032】
図1に示すように、プレス加工装置1のプレス加工ラインR2は、複数台(本実施形態では4台)のプレス加工機2A、2B、2C、2Dを所定間隔で並設して構成されており、このプレス加工ラインR2では、例えば深絞り加工が行われる。
【0033】
上記プレス加工ラインR2には、シート供給源であるシート搬入ラインR1から前記検知装置10を介してシートSが供給されるようになっている。
このシートSは、通常、薄板鉄板や薄板アルミ等の金属板であり、本実施形態では、例えば0.5〜4mmの板厚で2000mm×4000mm程度の大きさのシートSが使用されている。
【0034】
したがって、ロットにおけるシートSの重量は、外形寸法が同じでも、板厚によっても異なるので、板厚ごとの単位重量を確実に把握しておくことが、特定厚さのシートSの重量検知を行う際に必要である。
【0035】
また、ここではシート搬入ラインR1は、プレス加工ラインR2と略直交する方向が搬送方向となっており、シートSは、以上のようなシート搬入ラインR1上を連続して送り出されるようになっている。
さらに、プレス加工ラインR2の最後の工程を行うプレス加工機2Dの流れの後方には、プレス加工されたプレス製品を搬出するシート搬出ラインR3が設けられている。
【0036】
シート搬入ラインR1とアイドルステージとなる検知装置10との間には、シート搬入ラインR1で送られてくるシートSを把持して検知装置10上に供給するシート供給装置4が配置されている。
また、検知装置10と初工程を行うプレス加工機2Aとの間には、検知装置10上の枚数検知済みのシートSをプレス加工機2Aに受け渡す第1受け渡しロボット5Aが配置されている。
【0037】
さらに、プレス加工機2Aとプレス加工機2B、プレス加工機2Bとプレス加工機2C、プレス加工機2Cとプレス加工機2Dとの間には、それぞれ、前の工程でプレス加工されたシートSを次の工程に受け渡す第2受け渡しロボット5B、第3受け渡しロボット5C、および第4受け渡しロボット5Dが配置され、プレス加工機2Dとシート搬出ラインR3との間には、プレス処理を完了したシートSをシート搬出ラインR3に受け渡す第5受け渡しロボット5Eが配置されている。
【0038】
前記検知装置10は、シート供給装置4によりシート搬入ラインR1から取り出されたシートSがダブルブランクでないかの状態、すなわち1枚であるか否かを検出するようになっている。
すなわち、プレス加工装置1において、シート搬入ラインR1上を搬送されるシートSは、先ず、所定の位置でシート供給装置4により把持されて検知装置10上に受け渡され、かつその検知装置10によりシートSの枚数が検出される。
【0039】
シートSが1枚であることが検出され、確認されたら、そのシートSが第1受け渡しロボット5Aで、例えば深絞り加工の初工程を行うプレス加工機2Aに受け渡されて、当該プレス加工機2Aで初工程のプレス処理が行われる。
次いで、プレス加工機2B、プレス加工機2C、プレス加工機2Dにより、それぞれ第2工程、第3工程、第4工程のプレス加工が順次行われ、最終プレス加工が終了した後、前述のように、最後尾の第5受け渡しロボット5Eによりプレス加工機2Dから取り出され、シート搬出ラインR3に受け渡される。
【0040】
そして、以上のような工程は間断なく連続される。すなわち、プレス加工機2Aで初工程が終了し、シートSが次の工程を行うプレス加工機2Bに受け渡された直後に、プレス加工機2Aには、検知装置10から次のシートSが送り込まれ、引き続きそのシートSの初工程が行われるようになっている。
このようにして、各プレス加工機2A、プレス加工機2B、プレス加工機2C、プレス加工機2Dにより、それぞれ工程別のプレス加工が連続的に行われ、これにより、効率のよい生産が行われる。
【0041】
さて図2は本発明の第1実施形態に係る前記検知装置10とシート供給装置4との関係を示す全体概略図、図3は検知装置10の正面図である。
【0042】
先ず、図2に示すように、シート供給装置4は、シート搬入ラインR1上を送られてくるシートSを把持した後、アーム部4A等を反転させて、シートSを検知装置10上に移送できるようになっている。
【0043】
アーム部4Aの先端には、直線状の支持部材4Bが固着されており、この支持部材4Bには当該支持部材4Bの長手方向と直交する方向に、略等間隔をおいて4本の取り付け部材4Cが設けられている。
そして、これらの取り付け部材4Cには、下方向きのバキュームパッド4Dが一対ずつそれぞれ装備されている。
すなわち、全体としてバキュームパッド4Dは合計8個設けられており、これらのバキュームパッド4Dにより、定形サイズのシートSをバランスよく吸着できるような配置となっている。
もっとも、これらの取り付け部材4C、バキュームパッド4D等の数はこれに限るものではない。
【0044】
図2或いは図3に詳細を示すように、検知装置10は、アイドルステージ11と、アイドルステージ11上に供給されたシートSの重量を計測する計測手段15と、計測されたシートSが1枚であるか否かを判断する制御装置20とを備えて構成されている。
【0045】
アイドルステージ11は、L形鋼等を組み合わせて枠組み状に形成された架台12を備えている。
この架台12の上面は天板13で形成されている。
計測手段15は、アイドルステージ11上に供給されるシートSを平行に支持する昇降台16と、この昇降台16の下面に取着されたボールネジ用のナットNに螺挿して当該昇降台16を昇降移動させる駆動手段である2組のボールねじ17と、これらのボールねじ17を駆動させる駆動手段であるサーボモータ18と、昇降台16の下降移動により当該昇降台16上に支持されたシートSを計測する例えば4個のディジタル重量計測器(以下、単に計測器という)19とを備えて構成されている。
【0046】
昇降台16は、平面矩形状に形成され、シートSを載置した際その重みで撓まない程度の所定厚さの例えば鋼板で形成されている。
そして、昇降台16の表面には、前記4個の計測器19を通過可能とする角形の貫通孔16Aが形成されている。
【0047】
2組のボールねじ17は、それぞれガイド部材14により回転自在に外周が案内支持されている。
これらのガイド部材14ないしサーボモータ18は、架台12の対向する側面の両方に横方向(図3において紙面直交方向)に所定間隔をおいて、かつ外側に突出して設けられている。
そして、これらのボールねじ17の下端には当該ボールねじ17を回転駆動させる前記サーボモータ18の出力軸が図示しないカップリングにより連結されている。
【0048】
前記計測器19は、架台12を構成する天板13の上面に配置されている。これらの計測器19は、例えば10kgのシートSを±0.1kgの範囲で計測できる精度のものが使用されている。
この場合、4個の計測器19で10kgのシートSを支持するので、1個あたりの計測器19では、2.5kgの表示がなされるようになっている。
そして、これら4個の計測器19で計測した合計の重量(10kg)は、オペレータが容易に視認できるように架台12の側面に設けられた表示目盛りに表示されるようになっている。
【0049】
また、架台12の側面には前記制御装置20が設けられている。
この制御装置20は、図示しないが、プレス加工の対象となるシートの単位重量を(厚み単位で)記憶する記憶手段と、上記計測手段15で計測された(特定厚みの)シートSの重量と記憶手段に記憶されたシートSの単位重量とを比較演算する比較手段とを備えている。
【0050】
これにより、昇降台16にシートSが載置された後、その重量を計測するためにサーボモータ18を駆動させてボールねじ17を回転させると、このボールねじ17が螺挿しているナットNを介して昇降台16が下降する。
昇降台16が計測器19に接近しさらに下降すると、昇降台16の貫通孔16Aを計測器19が通過し、昇降台16上のシートSが計測器19上に受け渡されることとなる。
【0051】
そのため、シート供給装置4からシートSが供給されるとき、計測器19上に直接載置されないので、計測器19にかかる急激な負荷を吸収することができる。また、昇降台16の上面4隅には、略L字形状の位置決め部材22が、L字の曲がり部先端をそれぞれ外側に向けて取り付けられている。
【0052】
次に、上記のように構成された検知装置10における検知方法に付き説明する。
【0053】
先ず、シート搬入ラインR1上を送られてくるシートSを、シート供給装置4におけるアーム部4Aの先端のバキュームパッド4Dで吸着、把持した後、アーム部4Aを反転させて、シートSをアイドルステージ11の昇降台16上に供給する。
【0054】
それと同時に、サーボモータ18を駆動させてボールねじ17を回転させて
昇降台16を下降させる。
すると、昇降台16の貫通孔16Aを計測器19が通過し、昇降台16上のシートSのみが計測器19上にソフトタッチで受け渡される。そのため、前述のように、計測器19にかかる急激な負荷を吸収することができる。
【0055】
計測器19では、その上に載せられたシートSの重量を計測する。
この際、制御装置20における記憶手段で記憶されているシートSの重量と、計測手段15で計測された(特定厚みの)シートSの重量とが制御手段20に備わった比較手段により比較演算される。
【0056】
制御装置20では、計測手段15で計測されたシートSの計測値が、記憶手段に予め記憶された単位重量を越えた時、アイドルステージ11上に供給されたシートSが1枚より多いと判断し、異常信号を発信するようになっている。
そして、制御手段20からの指令によりシートSの供給が停止される。
【0057】
アイドルステージ11上に供給されたシートSが1枚より多いと判断された場合は、直ちにアイドルステージ11上から初工程のプレス加工機2AへのシートSの供給が停止される。
そこで、この異常枚数が検知されたシートを取り除くことで、シート供給作業が再開される。
シート搬入ラインR1から次のシートSがシート供給装置4により空になったアイドルステージ11上に再び供給され、供給されるシートSの重量が検知装置10によって計測される。
【0058】
上記検知装置10の計測によって1枚のシートSであることが確認されると、アイドルステージ11上のシートSを前記第1のロボット5Aで把持して、初工程のプレス加工機2Aに供給する。
尚、検知装置10によるシートSの重量を計測する計測時間は、本実施例では、例えば0.3秒で行われ前記プレス加工ラインR2に配設された各プレス加工機2A、2B、2C、2Dのプレス加工時間を含むタクト(例えば4秒)以内で行われる。
これにより各プレス加工ラインR2にシートSを供給する供給速度を高めることができる。
【0059】
次に、図4に基づいて、本発明の第2実施形態を説明する。
尚、この第2実施形態および以下の各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成部分については同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0060】
本第2実施形態の検知装置30は、前記アイドルステージ11と、シートSの重量を計測する計測手段35と、この計測手段35で計測したシートSがダブルブランクであるか否かを判断する制御装置40とを備えて構成されている。
計測手段35は、シートSを載置する昇降台36と、この昇降台36を昇降移動させる駆動手段である4本の前記ボールねじ17と、これらのボールねじ17を回転駆動する前記サーボモータ18とを含み構成されている。
【0061】
そして、前記シートSが昇降台36上に載置されていない時をゼロに設定して、昇降台36にシートSが載置されたときサーボモータ18にかかる負荷を電流値として計測し、その電流値をシートSの重量に換算してシートSの重量とするように構成されている。
そして、昇降台36の下降時に重量が計測されたシートSは、昇降台36と共にアイドルステージ11の僅か上方に位置決めされるようになっている。
【0062】
この際、制御装置40では、予め記憶されたシートSの重量と、実際に昇降台36に載置されたシートSの重量とを比較手段で比較し、計測手段35で計測されたシートSの計測値が、記憶手段に予め記憶された単位重量を越えた時、アイドルステージ11上に供給されたシートSが1枚より多いと判断し、例えば信号を発信するようになっている。
そして、これにより、シートSの供給が停止されるようになっている。
【0063】
尚、昇降台36は、ボールねじ17が螺挿するナットNを昇降台36にそれ自体の回転を拘束した状態で上下移動可能に保持し、このナットNと昇降台36の間にスプリング38(不図示)を介在させてもよい。
このようにすることで、昇降台36の上にシートSが載せられたとき、スプリング38が緩衝材となり、ボールねじ17、ひいてはサーボモータ18にかかる急激な負荷を吸収することができる。
【0064】
また、第2実施形態では、前記第1実施形態のような計測器19が設けられていないので、昇降台36に、前記第1実施形態の昇降台16のような貫通孔16Aを形成しなくてもよい。
【0065】
以上のような第2実施形態の検知装置30では、第1実施形態と同様の動作により、シート供給装置4からシートSがアイドルステージ11の昇降台36に載置され、計測手段35によりシートSの重量が計測され、かつ制御装置40で判断される。
そして、その後は第1実施形態と同様の動作が行なわれる。
【0066】
次に、図5に基づいて、本発明の第3実施形態の検知装置50を説明する。
本第3実施形態の検知装置50は、前記アイドルステージ11と、シートSの重量を計測する計測手段55と、この計測手段55で計測したシートSがダブルブランクであるか否かを判断する制御装置60とを備えて構成されている。
【0067】
計測手段55は、シートSを載置する昇降台56と、この昇降台56を昇降移動させる駆動手段である4本のリニアアクチュエータ57とを含み構成されている。
このリニアアクチュエータ57は支持部材58により支持されている。
そして、当該リニアアクチュエータ57の推力を電流値として計測し、その電流値をシートSの重量に換算してシートSの重量とするように構成されている。
【0068】
この際、制御装置60では、予め記憶されたシートSの重量と、実際に昇降台56に載置されたシートSの重量とを比較手段で比較し、計測手段55で計測されたシートSの計測値が、記憶手段に予め記憶された単位重量を越えた時、アイドルステージ11上に供給されたシートSが1枚より多いと判断し、例えば異常信号を発信するようになっている。
そして、これにより、シートSの供給が停止されるようになっている。
【0069】
尚、リニアアクチュエータ57と昇降台56とを連結させる際、両者の間に前記スプリング38を介在させてもよい。
このようにすることで、昇降台56の上にシートSが載せられたとき、スプリング38が緩衝材となり、リニアアクチュエータ57にかかる急激な負荷を吸収することができる。
【0070】
以上のような第3実施形態の検知装置50では、第1実施形態と同様の動作により、シート供給装置4からシートSがアイドルステージ11の昇降台56に載置され、制御装置60によりシートSの重量が計測される。
そして、その後は第1実施形態と同様の動作が行なわれる。
【0071】
尚、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形等が可能である。
例えば、前記第1〜3実施形態の検知装置10,30,50の計測手段15,35,55に代えて、図6に示すような構成の計測手段75としてもよい。
すなわち、この変形形態の検知装置70は、前記アイドルステージ11と、シートSを計測する計測手段75と、この計測手段75で計測したシートSがダブルブランクであるか否かを判断する制御装置80とを備えて構成されている。
【0072】
計測手段75は、前記計測器19と、シートSを載置する昇降台76と、この昇降台76を支持する支持部材78とを含み構成されている。
【0073】
支持部材78は、筒部材78Aとその内部に収容されるばね材78Bとで形成され、筒部材78Aが前記天板13に固着され、ばね材78Bが昇降台76の裏面に固着されている。
筒部材78Aの上面高さは計測器19の上面高さよりわずかに(S1)低くなっており、ばね材78Bの上面高さは計測器19の上面高さよりわずかに高くなっている。
尚、ばね材78Bのばね力は、シートSが昇降台76に載せられたとき初めて、シートSと昇降台76とが下降する強さに設定されている。
【0074】
したがって、シートSが昇降台76の上面に載置されていないときは、昇降台76が計測器19の上面より所定寸法高い位置に設定され、シートSが昇降台76の上面に載置されたときは、昇降台76がばね材78Bの付勢力に抗して下降し、昇降台76が計測器19の上面に載置された状態となり、重量が計測される。
この際、制御装置80の記憶手段には、昇降台76の重量と予め記憶されるシートSの重量とを合計した重量が記憶されている。
【0075】
また、前記第1実施形態では、計測手段15を構成する計測器19が4個配置されているが、必ずしも4個配置する必要はなく、シートSを載置したときそのシートSがバランスを保てる程度の平面を有していれば、比較的大きな計測器を1個、あるいは2個配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態におけるプレス加工装置の概略構成を示す全体平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるプレス加工設備のシート供給装置と検知装置との位置関係を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態の検知装置を示す正面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の検知装置を示す正面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の検知装置を示す正面図である。
【図6】本発明の変形例としての検知装置を示す正面図である。
【図7】従来の枚数検知装置とシート供給装置との関係を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
2A、2B、2C、2D…プレス加工機
10,30,50…枚数検知装置
11…アイドルステージ
15,35,55…計測手段
16,36,56…昇降台
17…計測手段を構成するボールねじ
18…計測手段を構成するサーボモータ(駆動モータ)
19…計測手段を構成するディジタル重量計測器
20,40,60…制御装置
S…シート
R1…シート搬入ライン
R2…プレス加工ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のプレス加工機が配設されたプレス加工ラインに供給されるシートの重量を計測しシート枚数を検知する検知装置であって、
シート供給源と上記プレス加工ラインにおける初工程を行うプレス加工機の間に配設されたアイドルステージにシートの重量を計測する計測手段を備えたことを特徴とするシート枚数の検知装置。
【請求項2】
複数台のプレス加工機が配設されたプレス加工ラインに供給されるシートの重量を計測しシート供給枚数を検知する検知装置であって、
シート供給源と上記プレス加工ラインにおける初工程を行うプレス加工機の間に配設されたアイドルステージと、このアイドルステージに設けられ上記シート供給源から供給される定形サイズのシートの重量を計測する計測手段と、プレス加工の対象となるシートの単位重量を記憶する記憶手段および上記計測手段で計測された特定厚みのシートの重量と上記記憶手段に記憶された当該シートの単位重量とを比較演算する比較手段を含む制御装置とを有し、上記計測手段で計測された当該シートの重量の計測値が上記単位重量を越えた時上記アイドルステージ上に供給されたシートが1枚より多いと判断し、シートの供給を停止するようにしたことを特徴とするシート枚数の検知装置。
【請求項3】
上記計測手段は、上記アイドルステージ上に供給されるシートを平行に支持する昇降台と、該昇降台を昇降移動させる駆動手段と、上記昇降台上に支持されたシートを計測するディジタル重量計測器とを備えて構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシート枚数の検知装置。
【請求項4】
上記計測手段は、上記アイドルステージ上に供給されるシートを平行に支持する昇降台と、該昇降台に連結されるとともにその昇降台を移動させる4本のボールネジと、これらの4本のボールネジを駆動する駆動モータとを備えて構成され、上記駆動モータの負荷を電流値として計測し、その電流値が上記シートの重量計測値とされることを特徴とする請求項2に記載のシート枚数の検知装置。
【請求項5】
上記計測手段は、上記アイドルステージ上に供給されるシートを平行に支持する昇降台と、該昇降台に連結されるとともにその昇降台を移動させる4本のリニアアクチュエータとを備えて構成され、該リニアアクチュエータの推力を電流値として計測し、その電流値が上記シートの重量計測値とされることを特徴とする請求項2に記載のシート枚数の検知装置。
【請求項6】
複数台のプレス加工機が配設されたプレス加工ラインに供給される金属製のシートの重量を計測しシート枚数を検知するシート供給枚数の検知方法であって、
シート供給源と上記加工ラインにおける初工程を遂行するプレス加工機の間に配設されたアイドルステージ上に上記シート供給源から供給される定形サイズのシートの重量を計測する計測手段を有し、プレス加工の対象となるシートの単位重量を制御装置の記憶手段に厚み単位で記憶させ、上記計測手段で計測された特定厚みのシートの重量と上記記憶手段に記憶されたシートの単位重量を上記制御装置の比較手段で比較演算し、計測されたシートの計測値が上記単位重量を越えた時、上記アイドルステージ上に供給されたシートが1枚より多いと判断してシートの供給を停止するようにしたことを特徴とするシート枚数の検知方法。
【請求項7】
上記計測手段による計測は、シート供給源から上記アイドルステージ上に供給されるシートを、駆動手段により駆動して昇降移動させる昇降台上に平行に支持し、上記昇降台上に支持されたシートをディジタル重量計測器により計測するようにしたことを特徴とする請求項6に記載のシート枚数の検知方法。
【請求項8】
上記計測手段による計測は、シート供給源から上記アイドルステージ上に供給されるシートを昇降台上に平行に支持し、該昇降台を4本のボールネジにより保持して、該ボールネジの駆動モータの負荷を電流値として計測し、その電流値を上記シートの重量計測値としたことを特徴とする請求項6に記載のシート枚数の検知方法。
【請求項9】
上記計測手段による計測は、シート供給源から上記アイドルステージ上に供給されるシートを昇降台上に平行に支持し、該昇降台を4本のリニアアクチュエータにより保持させ、該リニアアクチュエータの推力を電流値として計測し、その電流値を上記シートの重量計測値としたことを特徴とする請求項6に記載のシート枚数の検知方法。
【請求項10】
上記アイドルステージ上で上記シートの重量を計測する計測時間が、上記プレス加工ラインに配設された各プレス加工機のプレス加工時間を含むタクト以内であることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか一つに記載のシート枚数の検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−56384(P2008−56384A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232949(P2006−232949)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000238946)株式会社エイチアンドエフ (57)
【Fターム(参考)】