説明

シート欠陥検出方法及びシート分別方法

【課題】本発明は、シートの欠陥を一連の工程により検出することができ、欠陥を有するシートを分別除去することができるものである。欠陥は数多く存在するが、特に燃料電池用に用いられる電解質、電極基盤、電極において重要な欠陥を選定し、かつ各種の測定装置のうち製造工程に合致したものを選定することで、シート製造工程において、欠陥検出を一連の工程の下に簡便かつ容易に検出することができることで、製造工程をコンパクト化、スピードアップ化を図ることができる。
【解決手段】本発明は、レーザー透過式検出機、CCDカメラ、ならびにレーザー式反射検出機および/または接触式変位検出機により、シートの欠陥を検出することを特徴とするシート欠陥検出方法および当該欠陥検出後に当該シートを分別することを特徴とするシート分別方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの欠陥検出方法及び欠陥検出後におけるシート分別方法である。
【背景技術】
【0002】
シート、特にセラミックスシートを製造する際に欠陥が生じており、製品中に多量の欠陥を有するシートが混入することがあり、かかる混入を防止するに際して目視により分別することが一般的に行われていた。しかし、目視による場合には個人差が大きく十分に欠陥の検出が困難なことが多く見られた。また、欠陥の検出装置を用いることについて、多くの技術が提示されているが、欠陥の種類、大きさ、範囲がバラバラで一度に多数種の欠陥を効率的に検出することは困難であった。また全ての欠陥を検出することは事実上無理がありかつ無駄でもある。一方、欠陥は用途により支障となるものとならないものがあるために一義的に欠陥と検定することにも無理がある。これらの欠陥を特定しかつ連続的に効率よく検出する技術は提案されていなかったのが現状である。
【0003】
なお、ジルコニアシート表面の個々の表面欠陥検出については、特許文献1にCCDカメラによる異物・キズの検査方法や、特許文献2にレーザー光による凹凸、突起、ウネリ、バリの検査方法という技術が提案されるのみであった。
【0004】
【特許文献1】再公表特許 WO1999/55639号公報
【特許文献2】特開2004−198374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、シートの欠陥を検出する方法、特にジルコニアシート、更には燃料電池電解質用ジルコニアシートの欠陥を検出する方法を効率的に行うことができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題は下記の手段を見出すことにより上記課題を解決することができ、発明を完成した。本発明は、レーザー透過式検出機、CCD(チャージ・カップルド・デバイス)カメラ及びレーザー式反射検出機により、シートの欠陥を検出することを特徴とするシート欠陥検出方法である。また、当該シート欠陥検出方法を用いた当該シートの分別方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明を用いることで各種シートの欠陥を一連の工程により検出することができ、欠陥を有するシートを分別除去することができるものである。欠陥は数多く存在するが、特に燃料電池用に用いられる電解質、電極基盤、電極において重要な欠陥を選定し、かつ各種の測定装置のうち製造工程に合致したものを選定することで、シート製造工程において、欠陥検出を一連の工程の下に簡便かつ容易に検出することができることで、製造工程をコンパクト化、スピードアップ化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にかかる第一の発明は、レーザー透過式検出機、CCD(チャージ・カップルド・デバイス)カメラ、ならびにレーザー式反射検出機および/または接触式変位検出機により、シートの欠陥を検出することを特徴とするシート欠陥検出方法である。
【0009】
当該シートはシート状のものであれば何れのものであっても良く、当該シートの形状は平面の面積が1〜1000cm、好ましくは30〜800cm、更に好ましくは50〜600cmである。当該シートの厚さは10〜500μm、好ましくは50〜400μm更に好ましくは100〜300μmである。
【0010】
当該シートの材質はセラミックス製のものが好ましく、更に好ましくはレーザーが透過し易い材質が良く、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア等のものが良く、固体電解質用においてはジルコニア製のシートが良い。当該ジルコニアシートの好ましいジルコニア系酸化物としては、安定化剤としてMgO,CaO,SrO,BaOなどのアルカリ土類金属の酸化物、Y23,La23,CeO2,Pr23,Nd23,Sm23,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Ybなどの希土類元素の酸化物、Sc,Bi,In等から選ばれる1種もしくは2種以上の酸化物を固溶させたもの、あるいは、これらに分散強化剤としてAl23、TiO2、Ta25、Nb25などが添加された分散強化型ジルコニア等が例示される。上に例示したもの中でも、より高度の熱的、機械的、化学的特性を有する電解質シートとして、3〜12モル%の酸化スカンジウム、2〜10モル%の酸化イットリウムもしくは3〜15モル%の酸化イッテルビウムで安定化された正方晶及び/又は立方晶構造のジルコニアが特に好ましい。
【0011】
本発明に用いるレーザー透過式検出機とは、光源たるレーザーの透過により欠陥を測定するものであり、具体的にはレーザー投光部、受光部、受光信号を画像処理するコントロールユニット、およびコントロールユニットからの画像信号を欠陥ビューとして処理する画像処理コンピューターから構成される。その測定原理は、投光部からレーザー光(赤色可視光)をシートに照射し、該シートを透過する光を光電子増倍管からなる受光部に入光する。このとき、該シートにある欠陥によってレーザー光の散乱や透過率の変化が生じるため、受光部への入光量が通常時とは変化し、この変化量を欠陥として検出するものである。検出できる欠陥としては異物、付着物、クラック及びヘコミがある。異物(シートの材質とは異なる黒色や白色の材質、白色物の状態は表面にある透明な膜状のもの)、付着物(シートの材質と同一材質で多くは針状や線状のもの)がシート内に含まれればレーザー光が遮断され透過光の減少となって測定され、特に異物であれば付着物に比べ著しく透過光の減少が生じる。一方、当該シートにクラック、ヘコミがあるときは透過光が欠陥のない部分より増加して測定されることになる。
【0012】
一般的には、異物はシート製造装置より生じる磨耗、空気中の浮遊物であり、付着物はグリーンシート打抜き時の打抜きカスやバリが脱落してグリーンシートに付着したもの等であり、クラックはシートの乾燥時、焼成時、焼結時に生じる割れ、ヒビであり形状としてはスジ状や点状であり、ヘコミはシート表面、外周端面およびシート内部の円孔まわりにある窪みであり、製造時の衝突等の損傷が原因と考えられる。
【0013】
レーザー透過式検出機により検出できる欠陥は11μm以上であれば測定することができ、通常、燃料電池用に用いられるシートでは、異物の場合には相当直径が100μm以上、好ましくは140μm以上、更に好ましくは170μm以上であり、付着物の場合には相当直径が15μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上、最も好ましくは50μm以上であり、その高さは11μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上、最も好ましくは50μm以上であり、クラックの場合には相当長は11μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上、最も好ましくは50μm以上であり、ヘコミの場合には相当直径が11μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上、最も好ましくは50μm以上、その深さは11μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上、最も好ましくは50μm以上の欠陥が有効に検出できる。これらの数値を上回る大きさであれば導電性が落ち、深さが大きくなるとシート強度が低下し、高さが高くなると強度、導電性にムラが生じるため燃料電池用のシートとして用いるには好ましくないからである。
【0014】
本発明に用いるCCD(チャージ・カップルド・デバイス)カメラは、物体から反射される光の強弱を電気信号に変換する半導体素子で構成させるカメラであり、当該シートの異物、カケを検出でき、欠陥は14μm以上であれば測定することができる。カケとはシートにおいての欠落部分をいい、製造時の他のものとの衝突、焼成時の熱収縮による剥がれ等により生じるものと考えられる。異物(シートの材質とは異なる茶色材質)の場合には相当直径が200μm以下、好ましくは170μm以下であり、カケの場合には無欠陥と比較して平面面積が0.025〜2.25mm、好ましくは0.0625〜1.0mmである。大きなカケはシートの強度を低下させ、また新たな欠陥を生じさせる原因となる。
【0015】
本発明に用いるレーザー式反射検出機は、レーザー投光部、受光部、受光信号を画像処理するコントロールユニット、およびコントロールユニットからの画像信号を欠陥ビューとして処理する画像処理コンピューターから構成される。その測定原理は、投光部(赤色発光ダイオード)から出力されたレーザー光は検査対象物表面を正反射し受光部に入光するが、欠陥部ではレーザー光の散乱や反射率の変化が生じるために受光部への入光量が通常時と比べ変化するので、この変化量を欠陥として検出するものであり、当該シートのウネリ、変形、隆起を検出することができる。ウネリはシート製造時の焼成段階での温度ムラや収縮ムラ等によりシートの外周辺にある波状の変形をいい、特に燃料電池用のシートにおいてウネリは100mmの長さに対して11μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上のものに対して有効に検出できる。変形とはシート周縁部以外の箇所で多く発生する富士山状の突起であり、相当直径が15μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上、最も好ましくは50μm以上であり、その高さは11μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上、最も好ましくは50μm以上の欠陥を有効に検出できる。また、隆起とは一方のシート端面から他方のシート端面までほぼ直線状につらなる山脈のような盛り上がりであり、100mmの長さに対して11μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上のものに対して有効に検出できる。これら、ウネリ、変形および隆起はシートの強度を低下させるために好ましくはないからである。
【0016】
また、本発明ではレーザー式反射検出機の代わりに接触式変位検出機を用いて、ウネリ、変形および隆起を検出することも可能である。接触式変位検出機は、20μmピッチの目盛りを持つメインスケール、インデックススケールを挟んで光源(LED)と受光素子が向かい合って構成されている。その測定原理はスケールが検出部に対して移動するとインデックススケールの窓を通過する光は明暗を繰り返し、同じ周期で90°の位相差を持つ2つの正弦波信号が出力され、この信号を増幅して電気的に分割(内挿)し、特定波長のパルスで出力され、接触式で超低測定力でZ軸方向(シート厚さ方向)の高低差を変位として検出するものである。Z軸方向に対して1μm以上の変位を計測でき精度はレーザー反射式検出機より優れているが、検出作業性は若干劣るので、レーザー式反射検出機と適宜使い分けることが好ましい。
【0017】
検出方法の手順は上記検出工程を適宜組み合わせて行うことができ、当該欠陥がシートの平面上に生じることは表面、裏面を測定することが必要となる。また欠陥の検出はシートの一端から始め他端まで行うことを要し、シートを固定し検出装置を移動することも、検出装置を固定しシートを移動することによっても行うことができる。通常、一軸方向の測定で足りるが、シートの形状によっては二軸(X軸、Y軸)、三軸(X軸、Y軸、Z軸)の測定も必要となる。上記移動を伴って測定する場合には、30〜300mm/分、好ましくは50〜200mm/分である。
【0018】
本発明にかかる第一の発明は、上記欠陥の検出方法を行った後、当該シートを分別する方法である。上記の各欠陥の大きさを超える欠陥が発見されたときは当該シートを、それら以外のシートと分別するものである。欠陥の生じたシートは再度シート原料として再利用することも可能である。
【実施例】
【0019】
以下に実施例により本発明を、図面を用いて詳細に説明するが本発明の趣旨に反しない限り当該実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1のシート欠陥検出システムの模式図に示すように、まず、披検査体であるシートがローラーコンベア上を進みCCDカメラ検出機内に導入される。投光部はシート上側に位置し、投光部から斜め下方向にシートに照射された光は反射して同じくシート上側に位置する受光部に入りCCDでシートの茶斑点状の異物・欠けを検出する。なお、シートは一般的な製法で作製した8モル%イットリア安定化ジルコニアシートを用いた。
続いて、シートはレーザー透過式検出機に導入される。投光部はシート上側に位置し、投光部から斜め下方向にシートに照射されたレーザー光(波長660nm、スポット径40μm)はそのままシート内を透過してローラーコンベアの間を通ってコンベアの下側にある受光部でその入光量が検出され、異物・付着物・クラック・へこみを検出する。なお、ローラーは30mmφ、長さ300mmであり、その間隔は60mmに設定し、シート移動速度は85mm/秒である。
レーザー透過式検出機を出たシートはベルトコンベア上に移り、そのまま移動して、レーザー反射式検出機に導入される。投光部はシート上側に位置し、赤色発光ダイオードを光源とする投光部から斜め下方向にシートに照射された光(700nm)は反射して同じくシート上側に位置する受光部でその入光量が検出され、ウネリを検出する。なお、ベルトはゴム製で幅は250mmであり、シート移動速度は同じく85mm/秒である。
上記欠陥が検出されたシートはベルトコンベアでシート分別部に移動し、自動的に合格品と不合格品に分別される。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明はシート、特にセラミックスシートの欠陥の検出に用いることができる。更に当該方法を用いシート欠陥の有無を分別することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のシート欠陥検出システム基本構成の模式図
【符号の説明】
【0022】
A.シート
B.CCDカメラ検出機
C.レーザー透過式検出機
D.レーザー反射式検出機
1.ローラーコンベア
2.ベルトコンベア
3.シート分別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー透過式検出機、CCDカメラ、ならびにレーザー式反射検出機および/または接触式変位検出機により、シートの欠陥を検出することを特徴とするシート欠陥検出方法。
【請求項2】
シートが厚さ10〜500μmかつ平面面積が1〜1000cmのジルコニアシートであることを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
当該ジルコニアシートが燃料電池用の固体電解質に用いられることを特徴とする請求項2記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
レーザー式透過式検出機により当該シートにおける異物、付着物、クラック及びヘコミを検出することを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項5】
CCDカメラにより異物、カケを検出することを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項6】
レーザー式反射検出機によりウネリ、変形及び隆起を検出することを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項7】
当該検出が30〜300mm/分でなされることを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項8】
請求項1〜6記載の欠陥検出後に、当該シートを分別することを特徴とするシート分別方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−216404(P2009−216404A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57273(P2008−57273)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】