シート状の材料の溶着加工装置および方法
【課題】
本発明は、配管と配管の間隙にウレタンゴム製等のジョイント部を装着するにあたり、原材料のシートからジョイント部を汎用のプレス機によって加熱した後プレスする溶着法によって製作するのに際して、口出し部を設けざるを得ないために搬送する粉体等がそのジョイント部から漏れるという課題を解決するものである。
【解決手段】
本発明は前記の状況に鑑み、汎用のプレス機ではなく専用のプレス機を用いて、口出し部を設けずに、溶着する部分をオーバラップさせた後に加熱した後プレスすることにより口出し部を除去し、前記のウレタンゴム製等のジョイント部の欠点を除去したことに特徴を持つ。
本発明は、配管と配管の間隙にウレタンゴム製等のジョイント部を装着するにあたり、原材料のシートからジョイント部を汎用のプレス機によって加熱した後プレスする溶着法によって製作するのに際して、口出し部を設けざるを得ないために搬送する粉体等がそのジョイント部から漏れるという課題を解決するものである。
【解決手段】
本発明は前記の状況に鑑み、汎用のプレス機ではなく専用のプレス機を用いて、口出し部を設けずに、溶着する部分をオーバラップさせた後に加熱した後プレスすることにより口出し部を除去し、前記のウレタンゴム製等のジョイント部の欠点を除去したことに特徴を持つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明が対象とする被加工物は、ウレタンゴムを代表とする弾性と柔軟性との双方を兼ね備え、かつ接着剤による接着が困難なため、その熱可塑性を利用して加熱による溶着を行なっている物質で、その厚みの代表例は1mmである。
【背景技術】
【0002】
薬品工場や食品工場において、粉体となっている原材料や製品を搬送するのには工場内に設置された配管を経由するのが通常である。この配管は金属のパイプであり、その直径は例えば200mmとなっている。しかし、配管と配管との接続部をも金属で接続することは、管内のクリーニングを実施する際にその作業が極めて困難となるため、薬品工場や食品工場のようにその内部を搬送される原材料や製品が高温高圧でない場合は弾性と柔軟性を兼ね備えた合成ゴムで作られたジョイント部を製作して接続することが通常である。図1にこの状況を例示する。
【0003】
図1は前記の配管と配管との接続部であるジョイント部の例を示すものである。図1に示すように二つの配管11と12との接続部分の間隙にジョイント部13を設け、そのジョイント部を固定するために前記の二つの配管部を覆うようにバンド14および15にて囲ってクランプする。管内のクリーニングを実施する際には前記のバンド14および15を取り外し、ジョイント部13は弾性を有するため適宜力を加えて引き抜くことが出来る。また再度ジョイント部13を設置するときにはこのジョイント部13に適宜力を加えて拡げ、配管部を覆ってバンド14および15にて囲ってクランプする。
【0004】
このジョイント部13として使用される代表的な材料は合成ゴムであるシリコンゴムとウレタンゴムである。粉体に対する常温での耐摩耗性においてはシリコンゴムに勝り、かつシリコンゴムよりも安価である点では、ウレタンゴムが好ましい。特に粉体に対する耐摩耗性が高いという特徴によって、搬送される粉体にジョイント部が磨耗して異物として混入することがほとんどなく、この点でも極めて好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−22663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしウレタンゴムの問題点として、接着剤による接合が困難なことが挙げられる。このためウレタンゴムの接合には約150℃に加熱してシートの両側を溶着する方法が適用される。例えば図1に示すジョイント部13に使用するためには、例えば厚み1mmのウレタンゴムのシートを丸めて両端を溶着することによってウレタンジョイントを製作することが出来るが、従来はこの製作方法に課題があった。
【0007】
即ち、シートを丸めて溶着するためには、
工程1:シートを丸めてパイプ状にする工程、
工程2:丸めたシートを支持する工程、
工程3:溶着部の口出しをする工程、
工程4:溶着部をプレスおよび加熱して溶着する工程、
の4工程を経由する必要があるが、前記の
工程3:溶着部の口出しをする工程、
に課題があった。ウレタンゴムの溶着をする専用機が存在しないため、汎用の加熱プレス機の熱板を利用していたが、パイプの外側に口出し部を作って溶着する方法しかなかったからである。
【0008】
この状況を図2によって説明する。図1における前記ジョイント部13を前記汎用の加熱プレス機を利用して製作する状況を表す断面図を図2に示す。図1における前記ジョイント部13を製作するためには、図2に示すように丸められた被加工物であるシート21から上下に接する口出し部22を生成し、前記口出し部22を前記汎用の加熱プレス機に装荷される上側の熱板23と下側の熱板24で挟んでプレスすることにより図1における前記ジョイント部13が製作出来る。
【0009】
しかし図2において明らかなように、前記口出し部の裏側には陥没部25が発生することは必然的である。この陥没部25は、溶着部すなわち前記口出し部22を図1において前記ジョイント部13として前記二つの配管部11と12とを覆うように前記バンド14および15にて囲ってクランプしたときに溶着部に隙間が出来る原因として作用し、そのため搬送する粉体等がその隙間から漏れる事態となり、広くウレタンゴム製のジョイントが使用されるには至っていなかった。さらに、接続する前記二つの配管部11と12と直径が同一でない場合はジョイント部を構成することがきわめて困難であった。本発明は、ウレタンゴム製等のジョイントを適用するにあたり、溶着による製作をせざるを得ないために搬送する粉体等がジョイント部から漏れるという課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記の状況に鑑み、汎用の加熱プレス機ではなく専用の溶着加工装置を用いて、前記のウレタンゴム製等のジョイントの欠点を除去したことにある。この工程は、従来の工程中にある前記の
工程3:溶着部の口出しをする工程、
に替えて、
工程3A:溶着部をオーバラップさせる工程、
を導入し、口出し部の存在による搬送粉体等の漏れを除去したことにある。さらに、前記工程3Aとその後に続く
工程4:溶着部をプレスおよび加熱して溶着する工程、
とを円滑に実行するためにプレスおよび加熱部の形状を改良したことにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶着部を予めオーバラップさせることによって、口出し部が存在することによる搬送粉体等の漏れを除去し、耐磨耗性に優れ、かつ比較的安価なウレタンゴムを前記ジョイント部に適用することを容易ならしめることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】配管と配管との接続部であるジョイント部の例である。
【図2】ジョイント部を汎用の加熱プレス機を利用して製作する状況を表す断面図である。
【図3】本発明による溶着方法の概念を断面形状として示す。
【図4】本発明による溶着部の加熱およびプレス方法の原理を示す断面図である。
【図5】本発明の最終的な実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明による下部の熱板とそれに接する下部シート支持板とを単独に取り出して並置した見取図である。
【図7】本発明による溶着の準備作業の形態を前記被加工物である丸められたシート21の上部から見た見取図である。
【図8】本発明による溶着作業をするための溶着加工装置の全体的な構成を示す。
【図9】本発明の別の実施形態を示す。
【図10】本発明の別の実施形態を示す。
【図11】本発明を可搬形にした実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
図3は本発明による溶着方法の概念を断面形状として示すものである。図3に示すように、本発明では溶着される被加工物であるウレタンゴムシート21を丸めた後に、図2に示す口出し部22に代えてオーバラップ部31を設ける。
【0014】
また、本発明による溶着部のプレスおよび加熱方法の原理を図3の前記オーバラップ部31の付近の断面図として図4に示す。口出し部を設けずにシートをオーバラップさせ、そのラップ幅と熱板の幅とをほぼ等しくすることにより、溶着部がほとんど平坦となり、円形に近いジョイント部13を製作することが出来、従来の製作方法による欠点が解消できたのであった。
【0015】
すなわち、図4において、前記オーバラップ部31の上下に加熱およびプレスを行なう熱板41および42を設け、また図4に示すように前記オーバラップ部31の幅を前記熱板41および42の幅に合わせてほぼ等しくし、この前記熱板41と42によって被加工物である丸めたウレタンゴムシートの左端である21−1と右端21−2のオーバラップ部31を加熱およびプレスして溶着することによって、この溶着部がほとんど平坦となり、所望のジョイント部13が得られる。なお、図示しないが、前記オーバラップ部31をその上面から観察すれば、その形状が帯状となることが理解出来るであろう。
【0016】
しかし、図4に示す原理によって製作するときには実施上の問題があった。それは、オーバラップさせる幅と熱板の幅とは溶着強度が確保できる範囲で小さい方が望ましいが、小さくするとシートの支持が困難になることであった。このため、最終的な実施のためには、オーバラップ幅および熱板の幅は可能な範囲で小さくし、かつシートを支持するためには十分な幅とするためにシート支持板を追加して設置することが必要であった。この断面図を図5に示す。
【0017】
図5に示すように、加熱およびプレスを行なう熱板41および42の断面形状を凸形とし、被加工物のオーバラップ部31の幅を前記熱板の凸部41−1および41−2の幅とほぼ同じくするとともに、オーバラップ部に接しない熱板の部分は加熱用のヒータを収納するのに十分な幅とする。次に上部の熱板41の凸部41−1を取り囲む上部シート支持板51を設置する。図5は断面形状を示すので前記シート支持板51が2個の部分に分かれているが、これらは同一物の左断面と右断面であり、その関係は次に示す見取図である図6にて明らかである。同様に下部の熱板42の凸部42−1を取り囲むように下部シート支持板52を設置する。
【0018】
図6は前記熱板の片方である下部の熱板42とそれに接する下部シート支持板52とを単独に取り出して並置した見取図である。図示するように前記下部シート支持板52は前記下部の熱板である42の凸部42−1にほぼ嵌合するように穴52−1が開けられており、実際の使用に当たっては前記下部シート支持板52を前記熱板42に載荷することによって、前記図5にその断面を示すように被加工物21の左端21−1と右端21−2とを前記下部シート支持板52とが支持する。なお、図6においてロッド61−2は溶着加工に際して前記熱板42を支持するために設けられる。またダイヤルゲージ61−3は前記熱板42に収納される電熱ヒータの温度の設定および表示をする機能を持っている。
【0019】
被加工物である21の左端21−1と右端21−2とを溶着するためには、前記図5に示すように被加工物21を上下方向から支持しなければならない。このためには準備作業が必要であり、その形態を前記被加工物である丸められたシート21の上部からの見取図として図7に示す。前記被加工物である丸められたシート21は、前記下部シート支持板52に金属製の定規71−1および71−2とクリップ72−1ないし72−4によって支持される。前記オーバラップ部31はこの下部シート支持板52の上部に示されている。
【0020】
準備作業は図7上の作業台73上を利用して実施される。前記作業台73上に前記被加工物である丸められたシート21を置き、前記オーバラップ部31を上にして置く。前記オーバラップ部31は、前記下部シート支持板52、定規71−1および71−2によって支持されるが、前記下部熱板42の凸部42−1の幅とほぼ等しい幅の帯状の形とする。この時点でシートは丸められて支持されており、以後に図8によって示す溶着作業によって前記オーバラップ部31を溶着すれば所望のジョイント部13が得られる。準備作業の最終段階において、前記オーバラップ部31を上にしたまま図示しないスペーサと前記ロッド61−2を操作者が持つこととによって浮かせた下部熱板42がその中に挿入されるように移動する。図7はこの準備作業の最終段階を示すものであって、前記シート支持板が前記下部熱板の凸部に嵌合された状態を示し、前記凸部42−1の一部が図7において観察できる。
【0021】
最終的な溶着作業をするための溶着加工装置の全体的な構成を図8に示す。図8において、前記上部熱板41と下部熱板42とは、支持ポール81の周囲に自由に回転するように設置されたアーム82−1および82−2によって支点83−1および83−2を介して前記支持ポール82に結合されている。前記上部熱板41と下部熱板42との高さの調整は適宜準備した図示しないスペーサの上に前記アーム81−1および81−2を載荷してこれを行なう。84は前記上部熱板41と下部熱板42に電熱ヒータ用の電力を供給するリード線であり、85はこの加熱温度を制御するためのコントローラである。また前記図7にて示した形態は下部熱板42に前記被加工物である丸められたシート21が挿入されたものであることが理解できよう。
【0022】
最終的な溶着作業は前記図7の状態において上部より前記上部熱板41を操作者が下降させて前記オーバラップ部31に接近させ、その後前記上部熱板41に前記上部シート支持板51を装着してロッド61−1を操作して前記オーバラップ部31を操作者がプレスして溶着させる。溶着後に前記上部熱板41を上昇させた後、前記被加工物である丸められたシート21を引抜くことによって溶着作業が完了する。
【実施例2】
【0023】
前記実施例は円筒状のジョイント部13を製作する場合を示しているが、本発明の実施は単なる円筒状のジョンイント部のみならず、従来の口出し部を用いた方法では極めて困難であったテーパ状のジョイント部の製作も可能である。すなわち、前記図1において配管11と配管12との直径が同一でなく径差がある場合にも本発明を容易に実施することが出来る。従って、実開平5−22663号公報のような複雑な構造によることなくジョイント部13の製作が出来る。
【実施例3】
【0024】
また、前記実施例等によれば、溶着後の用途は前記ジョイント部13、すなわち円筒形に被加工物を加工するものである。しかし本発明は円筒形に被加工物を加工するのみにはとどまらないことはいうまでもない。図9は被加工材が平坦なシートの場合の本発明の実施形態を示し、左側のシート材91と右側のシート材92をオーバラップ部31で溶着する形態を示す。この場合にも前記図2に示したような口出し部が存在しないため、溶着部の段差が少なく、種々の効果が得られることが期待される。
【0025】
また、図10は図9と比較すれば明らかなように、オーバラップ部31がシートの左右方向と直角ではなく、斜めになっている状況を示す。この方式は前記ジョイント部13の製作にも適用できるが、この場合はオーバラップ部31により発生する僅かな段差が円周方向の一箇所のみでなく、ある範囲にわたって分布するので、特に搬送物の粒径が小さい場合でも漏れが軽減されることが期待される。
【実施例4】
【0026】
最後に、図8にその典型的な実施例を示した本発明による溶着加工装置と従来の前記従来の加熱プレス機とを比較すれば、専用機であるため軽量かつコンパクトに構成することが出来ることが指摘出来る。図8に示すものは据置型を想定しているが、前記のように軽量かつコンパクトに構成出来るため、可搬形として構成することが可能である。図11は前記可搬形の実施形態例を示し、図8に示す溶着加工装置の下部にキャスタ1101を装着したものである。可搬形とすることによって、小型トラックによっておよび人力等によって前記ジョイント部13が設置される前記薬品工場や食品工場の現場に運搬し、弾力があるため事前に設計することが困難なジョイント部13を前記配管11および12の現物に最も良くフィットするように溶着加工することが出来るという付加的な効果を発現する。
【実施例5】
【0027】
なお、前記実施例においては操作者、すなわち人手によって各々の加工の工程を進めているが、能率的に行なうためにそれぞれを自動化しても良く、前期実施例と同様の効果を発揮することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば薬品工場や食品工場において、粉体となっている原材料や製品を搬送する配管を接続するウレタンゴム等を材料に用いて、溶着によって製作されるジョイント部において、粉体の漏れを無くするとともに、ウレタンゴム等の特性による耐磨耗性に優れた製品を供給することが出来、広く産業上に利用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0029】
11 配管
12 配管
13 ジョイント部
14 バンド
15 バンド
21 被加工物
21−1 シートの左端
21−2 シートの右端
22 口出し部
23 上部熱板
24 下部熱板
25 陥没部
31 オーバラップ部
41 上部熱板
41−1 上部熱板の凸部
42 下部熱板
42−1 下部熱板の凸部
51 上部シート支持板
52 下部シート支持板
52−1 下部シート支持板の穴
61−1 下部熱板のロッド
61−2 下部熱板のロッド
61−3 ダイヤルゲージ
71−1 定規
71−2 定規
72−1〜72−4 クリップ
73 作業台
81 支持ポール
82−1 アーム
82−2 アーム
83−1 支点
83−2 支点
84 リード線
85 加熱温度制御コントローラ
91 シート材
92 シート材
1101 キャスタ
【技術分野】
【0001】
この発明が対象とする被加工物は、ウレタンゴムを代表とする弾性と柔軟性との双方を兼ね備え、かつ接着剤による接着が困難なため、その熱可塑性を利用して加熱による溶着を行なっている物質で、その厚みの代表例は1mmである。
【背景技術】
【0002】
薬品工場や食品工場において、粉体となっている原材料や製品を搬送するのには工場内に設置された配管を経由するのが通常である。この配管は金属のパイプであり、その直径は例えば200mmとなっている。しかし、配管と配管との接続部をも金属で接続することは、管内のクリーニングを実施する際にその作業が極めて困難となるため、薬品工場や食品工場のようにその内部を搬送される原材料や製品が高温高圧でない場合は弾性と柔軟性を兼ね備えた合成ゴムで作られたジョイント部を製作して接続することが通常である。図1にこの状況を例示する。
【0003】
図1は前記の配管と配管との接続部であるジョイント部の例を示すものである。図1に示すように二つの配管11と12との接続部分の間隙にジョイント部13を設け、そのジョイント部を固定するために前記の二つの配管部を覆うようにバンド14および15にて囲ってクランプする。管内のクリーニングを実施する際には前記のバンド14および15を取り外し、ジョイント部13は弾性を有するため適宜力を加えて引き抜くことが出来る。また再度ジョイント部13を設置するときにはこのジョイント部13に適宜力を加えて拡げ、配管部を覆ってバンド14および15にて囲ってクランプする。
【0004】
このジョイント部13として使用される代表的な材料は合成ゴムであるシリコンゴムとウレタンゴムである。粉体に対する常温での耐摩耗性においてはシリコンゴムに勝り、かつシリコンゴムよりも安価である点では、ウレタンゴムが好ましい。特に粉体に対する耐摩耗性が高いという特徴によって、搬送される粉体にジョイント部が磨耗して異物として混入することがほとんどなく、この点でも極めて好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−22663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしウレタンゴムの問題点として、接着剤による接合が困難なことが挙げられる。このためウレタンゴムの接合には約150℃に加熱してシートの両側を溶着する方法が適用される。例えば図1に示すジョイント部13に使用するためには、例えば厚み1mmのウレタンゴムのシートを丸めて両端を溶着することによってウレタンジョイントを製作することが出来るが、従来はこの製作方法に課題があった。
【0007】
即ち、シートを丸めて溶着するためには、
工程1:シートを丸めてパイプ状にする工程、
工程2:丸めたシートを支持する工程、
工程3:溶着部の口出しをする工程、
工程4:溶着部をプレスおよび加熱して溶着する工程、
の4工程を経由する必要があるが、前記の
工程3:溶着部の口出しをする工程、
に課題があった。ウレタンゴムの溶着をする専用機が存在しないため、汎用の加熱プレス機の熱板を利用していたが、パイプの外側に口出し部を作って溶着する方法しかなかったからである。
【0008】
この状況を図2によって説明する。図1における前記ジョイント部13を前記汎用の加熱プレス機を利用して製作する状況を表す断面図を図2に示す。図1における前記ジョイント部13を製作するためには、図2に示すように丸められた被加工物であるシート21から上下に接する口出し部22を生成し、前記口出し部22を前記汎用の加熱プレス機に装荷される上側の熱板23と下側の熱板24で挟んでプレスすることにより図1における前記ジョイント部13が製作出来る。
【0009】
しかし図2において明らかなように、前記口出し部の裏側には陥没部25が発生することは必然的である。この陥没部25は、溶着部すなわち前記口出し部22を図1において前記ジョイント部13として前記二つの配管部11と12とを覆うように前記バンド14および15にて囲ってクランプしたときに溶着部に隙間が出来る原因として作用し、そのため搬送する粉体等がその隙間から漏れる事態となり、広くウレタンゴム製のジョイントが使用されるには至っていなかった。さらに、接続する前記二つの配管部11と12と直径が同一でない場合はジョイント部を構成することがきわめて困難であった。本発明は、ウレタンゴム製等のジョイントを適用するにあたり、溶着による製作をせざるを得ないために搬送する粉体等がジョイント部から漏れるという課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記の状況に鑑み、汎用の加熱プレス機ではなく専用の溶着加工装置を用いて、前記のウレタンゴム製等のジョイントの欠点を除去したことにある。この工程は、従来の工程中にある前記の
工程3:溶着部の口出しをする工程、
に替えて、
工程3A:溶着部をオーバラップさせる工程、
を導入し、口出し部の存在による搬送粉体等の漏れを除去したことにある。さらに、前記工程3Aとその後に続く
工程4:溶着部をプレスおよび加熱して溶着する工程、
とを円滑に実行するためにプレスおよび加熱部の形状を改良したことにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶着部を予めオーバラップさせることによって、口出し部が存在することによる搬送粉体等の漏れを除去し、耐磨耗性に優れ、かつ比較的安価なウレタンゴムを前記ジョイント部に適用することを容易ならしめることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】配管と配管との接続部であるジョイント部の例である。
【図2】ジョイント部を汎用の加熱プレス機を利用して製作する状況を表す断面図である。
【図3】本発明による溶着方法の概念を断面形状として示す。
【図4】本発明による溶着部の加熱およびプレス方法の原理を示す断面図である。
【図5】本発明の最終的な実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明による下部の熱板とそれに接する下部シート支持板とを単独に取り出して並置した見取図である。
【図7】本発明による溶着の準備作業の形態を前記被加工物である丸められたシート21の上部から見た見取図である。
【図8】本発明による溶着作業をするための溶着加工装置の全体的な構成を示す。
【図9】本発明の別の実施形態を示す。
【図10】本発明の別の実施形態を示す。
【図11】本発明を可搬形にした実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
図3は本発明による溶着方法の概念を断面形状として示すものである。図3に示すように、本発明では溶着される被加工物であるウレタンゴムシート21を丸めた後に、図2に示す口出し部22に代えてオーバラップ部31を設ける。
【0014】
また、本発明による溶着部のプレスおよび加熱方法の原理を図3の前記オーバラップ部31の付近の断面図として図4に示す。口出し部を設けずにシートをオーバラップさせ、そのラップ幅と熱板の幅とをほぼ等しくすることにより、溶着部がほとんど平坦となり、円形に近いジョイント部13を製作することが出来、従来の製作方法による欠点が解消できたのであった。
【0015】
すなわち、図4において、前記オーバラップ部31の上下に加熱およびプレスを行なう熱板41および42を設け、また図4に示すように前記オーバラップ部31の幅を前記熱板41および42の幅に合わせてほぼ等しくし、この前記熱板41と42によって被加工物である丸めたウレタンゴムシートの左端である21−1と右端21−2のオーバラップ部31を加熱およびプレスして溶着することによって、この溶着部がほとんど平坦となり、所望のジョイント部13が得られる。なお、図示しないが、前記オーバラップ部31をその上面から観察すれば、その形状が帯状となることが理解出来るであろう。
【0016】
しかし、図4に示す原理によって製作するときには実施上の問題があった。それは、オーバラップさせる幅と熱板の幅とは溶着強度が確保できる範囲で小さい方が望ましいが、小さくするとシートの支持が困難になることであった。このため、最終的な実施のためには、オーバラップ幅および熱板の幅は可能な範囲で小さくし、かつシートを支持するためには十分な幅とするためにシート支持板を追加して設置することが必要であった。この断面図を図5に示す。
【0017】
図5に示すように、加熱およびプレスを行なう熱板41および42の断面形状を凸形とし、被加工物のオーバラップ部31の幅を前記熱板の凸部41−1および41−2の幅とほぼ同じくするとともに、オーバラップ部に接しない熱板の部分は加熱用のヒータを収納するのに十分な幅とする。次に上部の熱板41の凸部41−1を取り囲む上部シート支持板51を設置する。図5は断面形状を示すので前記シート支持板51が2個の部分に分かれているが、これらは同一物の左断面と右断面であり、その関係は次に示す見取図である図6にて明らかである。同様に下部の熱板42の凸部42−1を取り囲むように下部シート支持板52を設置する。
【0018】
図6は前記熱板の片方である下部の熱板42とそれに接する下部シート支持板52とを単独に取り出して並置した見取図である。図示するように前記下部シート支持板52は前記下部の熱板である42の凸部42−1にほぼ嵌合するように穴52−1が開けられており、実際の使用に当たっては前記下部シート支持板52を前記熱板42に載荷することによって、前記図5にその断面を示すように被加工物21の左端21−1と右端21−2とを前記下部シート支持板52とが支持する。なお、図6においてロッド61−2は溶着加工に際して前記熱板42を支持するために設けられる。またダイヤルゲージ61−3は前記熱板42に収納される電熱ヒータの温度の設定および表示をする機能を持っている。
【0019】
被加工物である21の左端21−1と右端21−2とを溶着するためには、前記図5に示すように被加工物21を上下方向から支持しなければならない。このためには準備作業が必要であり、その形態を前記被加工物である丸められたシート21の上部からの見取図として図7に示す。前記被加工物である丸められたシート21は、前記下部シート支持板52に金属製の定規71−1および71−2とクリップ72−1ないし72−4によって支持される。前記オーバラップ部31はこの下部シート支持板52の上部に示されている。
【0020】
準備作業は図7上の作業台73上を利用して実施される。前記作業台73上に前記被加工物である丸められたシート21を置き、前記オーバラップ部31を上にして置く。前記オーバラップ部31は、前記下部シート支持板52、定規71−1および71−2によって支持されるが、前記下部熱板42の凸部42−1の幅とほぼ等しい幅の帯状の形とする。この時点でシートは丸められて支持されており、以後に図8によって示す溶着作業によって前記オーバラップ部31を溶着すれば所望のジョイント部13が得られる。準備作業の最終段階において、前記オーバラップ部31を上にしたまま図示しないスペーサと前記ロッド61−2を操作者が持つこととによって浮かせた下部熱板42がその中に挿入されるように移動する。図7はこの準備作業の最終段階を示すものであって、前記シート支持板が前記下部熱板の凸部に嵌合された状態を示し、前記凸部42−1の一部が図7において観察できる。
【0021】
最終的な溶着作業をするための溶着加工装置の全体的な構成を図8に示す。図8において、前記上部熱板41と下部熱板42とは、支持ポール81の周囲に自由に回転するように設置されたアーム82−1および82−2によって支点83−1および83−2を介して前記支持ポール82に結合されている。前記上部熱板41と下部熱板42との高さの調整は適宜準備した図示しないスペーサの上に前記アーム81−1および81−2を載荷してこれを行なう。84は前記上部熱板41と下部熱板42に電熱ヒータ用の電力を供給するリード線であり、85はこの加熱温度を制御するためのコントローラである。また前記図7にて示した形態は下部熱板42に前記被加工物である丸められたシート21が挿入されたものであることが理解できよう。
【0022】
最終的な溶着作業は前記図7の状態において上部より前記上部熱板41を操作者が下降させて前記オーバラップ部31に接近させ、その後前記上部熱板41に前記上部シート支持板51を装着してロッド61−1を操作して前記オーバラップ部31を操作者がプレスして溶着させる。溶着後に前記上部熱板41を上昇させた後、前記被加工物である丸められたシート21を引抜くことによって溶着作業が完了する。
【実施例2】
【0023】
前記実施例は円筒状のジョイント部13を製作する場合を示しているが、本発明の実施は単なる円筒状のジョンイント部のみならず、従来の口出し部を用いた方法では極めて困難であったテーパ状のジョイント部の製作も可能である。すなわち、前記図1において配管11と配管12との直径が同一でなく径差がある場合にも本発明を容易に実施することが出来る。従って、実開平5−22663号公報のような複雑な構造によることなくジョイント部13の製作が出来る。
【実施例3】
【0024】
また、前記実施例等によれば、溶着後の用途は前記ジョイント部13、すなわち円筒形に被加工物を加工するものである。しかし本発明は円筒形に被加工物を加工するのみにはとどまらないことはいうまでもない。図9は被加工材が平坦なシートの場合の本発明の実施形態を示し、左側のシート材91と右側のシート材92をオーバラップ部31で溶着する形態を示す。この場合にも前記図2に示したような口出し部が存在しないため、溶着部の段差が少なく、種々の効果が得られることが期待される。
【0025】
また、図10は図9と比較すれば明らかなように、オーバラップ部31がシートの左右方向と直角ではなく、斜めになっている状況を示す。この方式は前記ジョイント部13の製作にも適用できるが、この場合はオーバラップ部31により発生する僅かな段差が円周方向の一箇所のみでなく、ある範囲にわたって分布するので、特に搬送物の粒径が小さい場合でも漏れが軽減されることが期待される。
【実施例4】
【0026】
最後に、図8にその典型的な実施例を示した本発明による溶着加工装置と従来の前記従来の加熱プレス機とを比較すれば、専用機であるため軽量かつコンパクトに構成することが出来ることが指摘出来る。図8に示すものは据置型を想定しているが、前記のように軽量かつコンパクトに構成出来るため、可搬形として構成することが可能である。図11は前記可搬形の実施形態例を示し、図8に示す溶着加工装置の下部にキャスタ1101を装着したものである。可搬形とすることによって、小型トラックによっておよび人力等によって前記ジョイント部13が設置される前記薬品工場や食品工場の現場に運搬し、弾力があるため事前に設計することが困難なジョイント部13を前記配管11および12の現物に最も良くフィットするように溶着加工することが出来るという付加的な効果を発現する。
【実施例5】
【0027】
なお、前記実施例においては操作者、すなわち人手によって各々の加工の工程を進めているが、能率的に行なうためにそれぞれを自動化しても良く、前期実施例と同様の効果を発揮することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば薬品工場や食品工場において、粉体となっている原材料や製品を搬送する配管を接続するウレタンゴム等を材料に用いて、溶着によって製作されるジョイント部において、粉体の漏れを無くするとともに、ウレタンゴム等の特性による耐磨耗性に優れた製品を供給することが出来、広く産業上に利用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0029】
11 配管
12 配管
13 ジョイント部
14 バンド
15 バンド
21 被加工物
21−1 シートの左端
21−2 シートの右端
22 口出し部
23 上部熱板
24 下部熱板
25 陥没部
31 オーバラップ部
41 上部熱板
41−1 上部熱板の凸部
42 下部熱板
42−1 下部熱板の凸部
51 上部シート支持板
52 下部シート支持板
52−1 下部シート支持板の穴
61−1 下部熱板のロッド
61−2 下部熱板のロッド
61−3 ダイヤルゲージ
71−1 定規
71−2 定規
72−1〜72−4 クリップ
73 作業台
81 支持ポール
82−1 アーム
82−2 アーム
83−1 支点
83−2 支点
84 リード線
85 加熱温度制御コントローラ
91 シート材
92 シート材
1101 キャスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性と柔軟性との双方を具備するシート状の材料の溶着加工装置であって、被加工物である前記シート状の材料を上下にオーバラップさせ、前記オーバラップ部の形状を帯状とし、加工部は前記オーバラップ部の上下方向から加熱およびプレスを行うように構成するとともに、前記オーバラップ部の前後に前記被加工物に接する支持板を前記加工部に近接して設け、前記支持板が前記加工部とともに加工に際して前記オーバラップ部を支持することを特徴とする、弾性と柔軟性との双方を具備するシート状の材料の溶着加工装置
【請求項2】
弾性と柔軟性との双方を具備するシート状の材料の溶着加工方法であって、被加工物である前記シート状の材料を上下にオーバラップさせる工程、前記オーバラップ部の形状を帯状とする工程、加工部は前記オーバラップ部の上下方向から加熱およびプレスを行う工程を備え、前記オーバラップ部の前後に前記被加工物に接する支持板を前記加工部に近接して設ける工程、前記支持板が前記加工部とともに加工に際して前記オーバラップ部を支持する工程を有することを特徴とする、弾性と柔軟性との双方を具備するシート状の材料の溶着加工方法
【請求項3】
可搬形に構成することを特徴とする前記請求項1に記載の弾性と柔軟性との双方を具備するシート状の材料の溶着加工装置
【請求項1】
弾性と柔軟性との双方を具備するシート状の材料の溶着加工装置であって、被加工物である前記シート状の材料を上下にオーバラップさせ、前記オーバラップ部の形状を帯状とし、加工部は前記オーバラップ部の上下方向から加熱およびプレスを行うように構成するとともに、前記オーバラップ部の前後に前記被加工物に接する支持板を前記加工部に近接して設け、前記支持板が前記加工部とともに加工に際して前記オーバラップ部を支持することを特徴とする、弾性と柔軟性との双方を具備するシート状の材料の溶着加工装置
【請求項2】
弾性と柔軟性との双方を具備するシート状の材料の溶着加工方法であって、被加工物である前記シート状の材料を上下にオーバラップさせる工程、前記オーバラップ部の形状を帯状とする工程、加工部は前記オーバラップ部の上下方向から加熱およびプレスを行う工程を備え、前記オーバラップ部の前後に前記被加工物に接する支持板を前記加工部に近接して設ける工程、前記支持板が前記加工部とともに加工に際して前記オーバラップ部を支持する工程を有することを特徴とする、弾性と柔軟性との双方を具備するシート状の材料の溶着加工方法
【請求項3】
可搬形に構成することを特徴とする前記請求項1に記載の弾性と柔軟性との双方を具備するシート状の材料の溶着加工装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−161985(P2012−161985A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23839(P2011−23839)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【特許番号】特許第4939678号(P4939678)
【特許公報発行日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(505328465)
【出願人】(511033265)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【特許番号】特許第4939678号(P4939678)
【特許公報発行日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(505328465)
【出願人】(511033265)
【Fターム(参考)】
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