説明

シート状物およびその製造方法

【課題】外観、風合い、さらには伸長率および伸長回復率に優れ、かつ環境に配慮したシート状物、その製造方法を提供する。
【解決手段】
固有粘度差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体から形成されたサイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維を含んでなる糸を含む織編物と、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維とからなり、自己乳化型ポリウレタンを含有してなることを特徴とするシート状物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主として極細繊維と高分子弾性体からなるシート状物は天然皮革にない優れた特徴を有しており、衣料や椅子張り、自動車内装材用途等にその使用が年々広がってきた。そして最近は、特に衣料用途では着用感、資材用途では成型性の観点から、ストレッチ性に優れるシート状物が求められている。
【0003】
かかるシート状物を製造するにあたっては、不織布にポリウレタンの有機溶剤溶液を含浸せしめた後、該繊維シート状物をポリウレタンの非溶媒である水または有機溶剤溶液中に浸漬してポリウレタンを湿式凝固せしめる方法が一般的に採用されている。かかる有機溶剤としてはN,N’−ジメチルホルムアミド等の水混和性有機溶剤が用いられる。
【0004】
しかし、前述のようなポリウレタンに使用されているN,N’−ジメチルホルムアミド等の有機溶剤は人体や環境への有害性が高いことから、近年、シート状物の製造に際しては、従来の有機溶剤タイプのポリウレタンに代えて水中にポリウレタンを分散させたポリウレタン水分散液を用いる方法が検討されている。
【0005】
ポリウレタン水分散液とは、従来の有機溶剤にポリウレタンを溶解した液とは異なり、ポリウレタンを水中に分散させてエマルジョンとしたものであるため、有機溶剤を含有しないものである。
【0006】
このような状況の中、ポリウレタン水分散液を使用したストレッチ性を有するシート状物の検討が行われている。
【0007】
例えば、特許文献1では、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いた織編物を挿入する方法が記載されている。ポリトリメチレンテレフタレートの結晶構造に起因するストレッチ性を利用したものであるが、シート状物にした場合では、単繊維同士が絡合した高密度な不織布と、付与されたポリウレタンにより、織編物の動きは強固に拘束され、ストレッチ性は低いものであった。更には、不織布を形成する極細繊維の繊維長が20mm以下と非常に短いため、繰り返し伸縮することで、絡合が解け、品位の悪化を招くこととなる。
【0008】
また、特許文献2では、ポリウレタン繊維を用いた織編物を用いた織編物を挿入する方法が記載されている。しかしながら、ポリウレタンは経時的に劣化することが知られており、長年の使用によりストレッチ性が消失していくこととなる。また、特許文献1と同様に極細繊維の繊維長が短いため、繰り返し伸縮することで、極細繊維同士の絡合が解け、品位の悪化を招くこととなる。
【0009】
更に特許文献3では、一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる二成分以上のポリエステルポリマーからなる複合繊維を用いた織物を適用する方法が記載されている。しかしながらポリトリメチレンテレフタレートは熱に敏感で、収縮しやすい。そのため、この織物を適用してシート状物を加工した場合、加工中にかかる熱により意図しない工程で捲縮が発現することとなり、結果ストレッチ性に乏しいシート状物になりやすい。また、特許文献1と同様に極細繊維の繊維長が短いため、繰り返し伸縮することで、極細繊維同士の絡合が解け、品位の悪化を招くこととなる。
【0010】
すなわち、これまで、有機溶剤を用いないポリウレタン水分散液を用いた、外観、風合い、さらには伸長率および伸長回復率に優れたシート状物はまだ得られていない。
【特許文献1】特開平11−269751号公報
【特許文献2】特開2004−91999号公報
【特許文献3】特開2005−60859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、外観、風合い、さらには伸長率および伸長回復率に優れ、かつ環境に配慮したシート状物、その製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、固有粘度(IV)差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体から形成されたサイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維を含んでなる糸を含む織編物と、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維とからなり、自己乳化型ポリウレタンを含有してなることを特徴とするシート状物である。
【0013】
また本発明は、本発明のシート状物を製造する方法であって、次の(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とするシート状物の製造方法である。
(1)前記織編物と、溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子からなる極細繊維発生型繊維とを絡合させる工程。
(2)自己乳化型ポリウレタンを水に分散させてなる液を含浸、凝固させて、自己乳化型ポリウレタンを付与する工程。
(3)溶剤により前記極細繊維発生型繊維から平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維を発現せしめる工程。
(4)110℃以上の条件下で揉んで織編物を収縮させる工程。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外観、風合い、さらには伸長率および伸長回復率に優れ、かつ環境に配慮したシート状物、その製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のシート状物は、織編物を含んでなる。当該織編物は、ポリエチレンテレフタレート系重合体から形成された繊維を含んでなる糸を含むことが重要である。これはシート状物の製造において最も適当な特性を有しているからである。例えば、ポリトリメチレンテレフタレートを用いた複合繊維からなる織編物を使用して本発明のシート状物を作製した場合、ポリトリメチレンテレフタレートは熱に敏感な性質をもっているため、熱により収縮しやすい。そのため、この織物を適用してシート状物を加工した場合、加工中にかかる熱により意図しない工程で捲縮が発現することとなり、結果ストレッチ性に乏しいシート状物になりやすい。一方、ポリエチレンテレフタレートを用いた複合繊維は比較的高い温度で捲縮が発現する為、本発明のシート状物の製造方法に適している。
【0016】
ポリエチレンテレフタレート系重合体は、テレフタル酸またはその誘導体と、エチレングリコールまたはその誘導体が共重合してなる構造を主成分とする構造をもつ重合体であり、かかる主成分はポリエチレンテレフタレート系重合体に対して50重量%以上であることが好ましい。また、他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物としては例えば、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−イソフタル酸ナトリウムなどのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができる。
【0017】
また、ポリエチレンテレフタレート系重合体には、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加することも好ましい。
【0018】
本発明のシート状物における織編物は、固有粘度(IV)差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体から形成されたサイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維を含んでなる糸を含むことが重要である。かかる複合繊維は、延伸時の高粘度側への応力集中により、2成分間で異なった内部歪みが生じる。この内部歪みの為、延伸後の弾性回復率差および熱処理工程での熱収縮差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル型の捲縮を発現する。この3次元コイル型の捲縮により、シート状物としてのストレッチ性が発現する。また、織編物の強い収縮力により、シート状物の表面は繊維密度が高くなり、緻密で高級感のある品位と良好なタッチを得ることができる。
【0019】
ポリエチレンテレフタレート系重合体の固有粘度は、重合の時間、温度、触媒量や共重合成分を適宜調整することで、所望の粘度とすることができる。
【0020】
サイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維を形成する2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体のうち粘度が最も高いものと最も低いものとの差、2種類のポリエチレンテレフタレート系重合体からなる場合には当該2種類のポリエチレンテレフタレート系重合体の固有粘度差としては、0.2以上が、シート状物としての優れたストレッチ性を得るうえで好ましい。
【0021】
2種類のポリエチレンテレフタレート系重合体からなる場合の高粘度成分と低粘度成分との複合比率としては、製糸性、繊維長さ方向のコイル寸法の均質性および後述するトンネル構造の形成の点で、高粘度成分:低粘度成分の量比で75:25〜35:65が好ましく、65:35〜45:55がより好ましい。
【0022】
複合繊維の繊維断面形状としては、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、扁平断面、X型断面、その他、各種の異形断面を採用することができ、捲縮発現性と風合いのバランスからは丸断面、軽量、保温、反発感の点からは中空、ドライな風合いの点からは三角断面が好ましい。
【0023】
サイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維を含んでなる糸にかかる撚りの撚係数としては、5000〜25000が好ましい。5000以上、より好ましくは8000以上とすることで後の加工で極細繊維発生型繊維と絡合させてシートを作製するときに糸が損傷することを防ぐことができ、25000以下、より好ましくは20000以下とすることで十分なストレッチ性を得ることができる。
撚係数Kは次式により得られる。
K=T×D0.5
ここで、K:撚係数
T:糸長1m当たりの撚数(回)
D:糸の繊度(dtex)。
【0024】
また、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維を含んでなる糸は、シート状物内でトンネル構造を有することが好ましい。ここにトンネル構造とは、糸の外周部が繊維によって形成されているが、糸の中心部には繊維が存在しない構造のことである。トンネル構造の度合いとしては、外周部の厚さが糸の半径の80%以下であることが好ましい。なお、トンネル構造の内部には高分子弾性体等が存在していてもよい。
トンネル構造を有することにより、シート状物において優れたストレッチ性が発現し、更にはシート状物に膨らみとシート状物内部に空隙を与え、これにより柔軟な風合や適度な反発力や、充実した手持ち感が得られる。
【0025】
後述するように、織編物を極細繊維発生型繊維と絡合させてシート化した後に110℃以上の条件下で揉んで収縮させることで、かかる織編物を構成する糸条はトンネル構造となる。
【0026】
本発明において織編物とは、織物と編物とを総称していうものである。織物の組織としては例えば、平織、綾織、朱子織等が挙げられ、コスト面からは平織が好ましい。また、編物の場合は、丸編、トリコット、ラッセル等が好ましい。
【0027】
本発明に用いられる織編物は、すべてがそのような複合繊維によりなる織編物であることが好ましいが、本発明の効果が損なわれない範囲で他の繊維を含んでいてもよい。
【0028】
例えば、複合繊維を緯糸にのみまたは経糸にのみ使用して、ヨコ方向またはタテ方向にストレッチ性を付与することも可能である。
【0029】
本発明のシート状物を構成する極細繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのポリエステル、6−ナイロン、66−ナイロンなどのポリアミド、アクリルポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種合成繊維を用いることができる。中でも、強度、寸法安定性、耐光性、染色性の観点からポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維を用いることが好ましい。また、シート状物は異なる素材の極細繊維が混合されて構成されていてもよい。
【0030】
また、これらのポリマーには、隠蔽性を向上させるために、酸化チタン粒子等の無機粒子の添加や、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤、抗菌剤等、種々目的に応じて添加することも好ましい。
【0031】
シート状物を構成する極細繊維の平均単繊維繊度としては、シート状物の柔軟性や立毛品位の観点から0.001dtex以上0.5dtex以下であることが重要である。好ましくは0.3dtex以下、より好ましくは0.2dtex以下である。一方、染色後の発色性やサンドペーパーなどによる研削など起毛処理時の繊維の分散性、さばけ易さの観点からは、0.005dtex以上であることが好ましく、より好ましくは0.01dtex以上である。
【0032】
なお、極細繊維の平均単繊維繊度は、シート状物、もしくはシートの表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して素材ポリマーの比重から繊度に換算し、さらに平均値を計算することで算出される。
【0033】
極細繊維の断面形状としては、丸断面でよいが、楕円、扁平、三角などの多角形、扇形、十字型などの異形断面のものを採用してもよい。
【0034】
本発明のシート状物を構成する不織布(極細繊維ウエブ)は、短繊維不織布、長繊維不織布のいずれでもよいが、風合いや品位を重視する場合には、短繊維不織布が好ましい。短繊維不織布とする場合、繊維長は、25mm以上90mm以下であることが好ましい。90mm以下とすることで、良好な品位、風合いとなり、25mm以上とすることで、耐摩耗性や繰り返しの伸縮に耐えるシート状物とすることができる。例えば、抄紙法などで非常に短い短繊維を用いた場合では、繊維の脱落が多く表面の立毛が消失したり、繰り返しの伸縮により短繊維の絡合が解け、シート状物の品位は著しく悪化することとなる。これを抑制するためにポリウレタンなどの高分子弾性体の付与量を増加させると、風合いの硬化やストレッチ性の低下につながることとなる。しかしながら、前述の範囲の繊維長である場合、極細繊維がしっかりと絡合している構造となるため、多くの繊維の脱落や、繰り返しの伸縮により繊維同士の絡合が解けることはなく、良好な品位を保つことが可能である。
【0035】
本発明のシート状物は、自己乳化型ポリウレタンを含有してなることが重要である。自己乳化型ポリウレタンは、その分子構造内に親水性の、いわゆる内部乳化剤を有し、界面活性剤等の乳化剤を用いなくても安定に水に分散しうるものである。自己乳化型ポリウレタンは活性剤等の乳化剤を用いなくてもよいため、強制乳化型のポリウレタン使いに比べシート状物においても耐水性が高く、例えばシート状物の染色においても、ポリウレタンの染色液への脱落を防ぐことができる。
【0036】
水分散型ポリウレタンの一種である自己乳化型ポリウレタンは、有機溶剤系のポリウレタンに比べ親水性が高いため、ポリウレタンを水に濡らすとより軟化しやすい。そのため、シート中の複合繊維からなる織編物の収縮を行うときに、ポリウレタンが水に濡れることで軟化し、織編物の収縮阻害を抑制することが可能である。さらに自己乳化型ポリウレタンは、強制乳化型ポリウレタンに比べ、ポリウレタンを水に分散させるために使用する内部乳化剤の量が多いため、自己乳化型ポリウレタンはより織編物の収縮阻害を抑制することが可能である。そのため、本発明は伸縮性に優れたシート状物となるのである。
【0037】
当該シート状物の内部空間に存在する自己乳化型ポリウレタンは無孔構造であることが好ましい。自己乳化型ポリウレタンが無孔構造であることにより、多孔構造に比べ、揉み等の物理力に強くなることから、シート状物の耐ピリング性、耐摩耗性等は良好となる。ここでいう無孔構造とは、シート状物の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率300倍で観察した際に、自己乳化型ポリウレタン部分において、5μm以上の孔が見えないことをいう。
【0038】
当該シート状物の内部空間に存在する自己乳化型ポリウレタンは、自己乳化型ポリウレタンを水に分散させてなる液を複合繊維からなる織編物と極細繊維からなるシートに含浸して得られるものである。自己乳化型ポリウレタンは、分子構造内に親水性の、いわゆる内部乳化剤を有しているため、界面活性剤等の乳化剤を用いなくても安定に水分散する。
【0039】
なお、自己乳化型ポリウレタンは、通常、水に分散した状態で取り扱われ、メーカーからもこの状態で入手できるが、これは一旦乾燥すると再度水に分散させることが不可能となるためである。
【0040】
内部乳化剤は、4級アミン塩等のカチオン系、スルホン酸塩、カルボン酸塩等のアニオン系、ポリエチレングリコール等のノニオン系、およびカチオン系とノニオン系の組み合わせ、アニオン系とノニオン系の組み合わせのいずれでもよいが、カチオン系内部乳化剤は、黄変等の耐光性に劣り、アニオン系内部乳化剤は、中和剤による弊害が発生する可能性があるため、ノニオン系内部乳化剤であることが好ましい。
【0041】
本発明に使用する自己乳化型ポリウレタンは、内部乳化剤以外にポリオール、ポリイソシアネート、鎖伸長剤、内部架橋剤を適宜反応させた構造を有するものを用いることができる。
【0042】
ポリオールとしては、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、シリコーン系ジオール、フッ素系ジオールや、これらを組み合わせた共重合体を用いてもよい。中でも耐加水分解性の観点から、ポリカーボネート系ジオール、ポリエーテル系ジオールを用いることが好ましく、さらに耐光性、耐熱性といった観点から、ポリカーボネート系ジオールがより好ましい。
【0043】
ポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、などの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネートジオールでも2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネートジオールのいずれでも良い。
【0044】
ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族系が挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、耐光性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系が好ましい。
【0045】
鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、メチレンビスアニリン等のアミン系、エチレングリコール等のジオール系、さらにはポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを用いることができる。
【0046】
内部架橋剤とは、自己乳化型ポリウレタン分子の一部として自己乳化型ポリウレタンを合成する際にあらかじめ分子構造内に導入しておく架橋反応可能な官能基を有する化合物のことであり、導入することで自己乳化型ポリウレタンの耐加水分解性等の耐久性を飛躍的に向上することができる。内部乳化剤を用いることが好ましく、その種類については特に限定はないが、シロキサン結合を形成するシラノール基を有する化合物が好ましい。
【0047】
また、自己乳化型ポリウレタンは、自己乳化型ポリウレタン全重量に対して3重量%以上30重量%以下のポリエチレングリコールを有していてもよい。ポリエチレングリコールを有することにより、感熱ゲル化性を付与することができ、自己乳化型ポリウレタン付与時にマイグレーションを抑制し柔軟なシート状物とすることが可能である。更には、水に濡れると自己乳化型ポリウレタン自体が柔らかくなる性質も付与することができ、後の工程で織編物の収縮の阻害を抑制することが可能である。ただし、ノニオン系内部乳化剤によって自己乳化している自己乳化型ポリウレタンの場合、少なすぎると自己乳化しにくくなり、多すぎると耐水性の低下やポリウレタン膜の強力等の物性低下が発生しやすいことから、ポリウレタン全重量に対するポリエチレングリコールの含有量はより好ましくは5重量%以上20重量%以下である。
【0048】
本発明において、自己乳化型ポリウレタンは単独で用いても複数種を併用してもよく、また、他のポリマー等を併用してもよい。
【0049】
他のポリマーとしては、例えば、アクリル系やシリコーン系等の水分散性や水溶性のポリマーが挙げられる。
【0050】
自己乳化型ポリウレタンは、カーボンブラック等の顔料、染料、防カビ剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの耐候剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロッキング剤、帯電防止剤等の界面活性剤、シリコーン等の消泡剤、セルロース等の充填剤、凝固調整剤等を含有することも好ましい。
【0051】
本発明のシート状物においては、極細繊維と織編物に対する自己乳化型ポリウレタンの含有量は20重量%以上100重量%以下であることが好ましい。20重量%以上とすることで、耐摩耗性と繰り返しの伸縮に耐えうる形態保持性を得ることができる。100重量%以下とすることで、シート状物の風合いが硬くなるのを防ぎ、後の工程で織編物の収縮をおこなう時に、織編物の収縮を阻害せず、ストレッチ性を発現することができる。より好ましくは30重量%以上90重量%以下であり、更に好ましくは35重量%以上85重量%以下である。
【0052】
本発明のシート状物は、例えば染料、顔料、柔軟剤、風合い調整剤、ピリング防止剤、抗菌剤、消臭剤、撥水剤、耐光剤、耐候剤等の機能性薬剤を含んでいることも好ましい。
【0053】
次に本発明のシート状物の製造方法について説明する。
【0054】
本発明のシート状物の製造方法は、次の(1)〜(4)の工程を含むものである。
(1)固有粘度差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体から形成されたサイドバイサイド型にまたは偏心芯鞘型の複合繊維を含んでなる糸を含む織編物と、溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子からなる極細繊維発生型繊維とを絡合させる工程。
(2)自己乳化型ポリウレタンを水に分散させてなる液を含浸、凝固させて、自己乳化型ポリウレタンを付与する工程。
(3)溶剤により前記極細繊維発生型繊維から平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維を発現せしめる工程。
(4)110℃以上の条件下で揉んで織編物を収縮させる工程。
【0055】
工程(1)〜(4)を実施することで、外観、風合い、さらには伸長率および伸長回復率に優れたシート状物を得ることができる。
【0056】
まず、工程(1)について説明する。
【0057】
工程(1)では、固有粘度差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体から形成されたサイドバイサイド型にまたは偏心芯鞘型の複合繊維を含んでなる糸を含む織編物と、溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子からなる極細繊維発生型繊維とを絡合させる。
【0058】
複合繊維の製造方法は、例えばサイドバイサイド型複合繊維の場合、2種類のポリエチレンテレフタレート系重合体の一方に高粘度ポリエチレンテレフタレートを配し、他方に低粘度ポリエチレンテレフタレート系重合体を配して、口金によって吐出孔上部で合流させ、サイドバイサイド複合流を形成させた後、所望の断面形状を得るための吐出孔から吐出することによって得ることができる。吐出された糸条は冷却され、固化した後、一旦巻き取ってから延伸や延伸仮撚加工を行う2工程法によって製造してもよいし、紡糸引取り後、そのまま延伸する直接紡糸延伸法によって製造してもよい。
【0059】
本発明において、シートを構成する極細繊維は、溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子物質からなる極細繊維発生型繊維を用いる。極細繊維発生型繊維と織編物をあらかじめ絡合した後に、溶剤で処理し、繊維の極細化を行うことによって、極細繊維と織編物が絡合してなるシート状物を得ることができる。
【0060】
極細繊維発生型繊維としては、溶剤に対する溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分・島成分とし、海成分を溶剤を用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、該2成分の熱可塑性樹脂を繊維表面を放射状または多層状に交互に配置し、溶剤処理により剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも、海島型複合繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、基材の柔軟性や風合いの観点からも好ましい。
【0061】
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い、海・島の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式と、海・島の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点で高分子配列体方式による海島型複合繊維がより好ましい。
【0062】
得られた極細繊維発生型繊維に、好ましくは捲縮加工を施し、所定長にカットして原綿(ウエブ)を得る。
【0063】
捲縮加工やカット加工は公知の方法を用いることができる。得られた原綿を、クロスラッパー等によりウエブとし、次いで繊維と前述の織編物を絡合してシートとする。
【0064】
繊維および織編物を絡合させシートを得る方法としては、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチ等の公知の方法を用いることができる。
【0065】
得られた前記シートには、繊維の緻密感向上のために、温水やスチーム処理によって収縮処理を施してもよい。ただし、高温で収縮処理を行うと、織編物の捲縮が発現してしまい、この状態で次工程において自己乳化型ポリウレタンを付与すると、ストレッチ性に乏しいシート状物になるため注意が必要である。収縮処理を行う場合は100℃以下で行うことが好ましい。
【0066】
次に工程(2)について説明する。
【0067】
工程(2)では自己乳化型ポリウレタンを水に分散させてなる液(以下、「自己乳化型ポリウレタン水分散液」とも呼ぶ。)を含浸、凝固させて、自己乳化型ポリウレタンを付与する。
【0068】
自己乳化型ポリウレタン水分散液を前記シートに付与するにあたっては、例えばシートに当該自己乳化型ポリウレタン水分散液を含浸、または付与し乾熱凝固する方法、シートに当該ポリウレタン水分散液を含浸後、湿熱凝固して加熱乾燥する方法、熱水中で湿式凝固して加熱乾燥する方法、およびその組み合わせがある。
【0069】
なお、乾燥温度は低すぎると乾燥時間が長時間となり、かかる点からは80℃以上が好ましく、より好ましくは90℃以上である。一方、乾燥温度が高すぎると自己乳化型ポリウレタンの熱劣化の原因となる可能性がある。かかる点からは180℃以下が好ましく、より好ましくは160℃以下である。また、織編物におけるサイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維の捲縮はこの段階では発現させずに後述する工程(4)において発現させることが好ましい。かかる点からは、120℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以下である。
【0070】
本発明の製造に使用するポリウレタン水分散液は水中に分散してエマルジョンとしてあるポリウレタン水分散液であり、界面活性剤等の乳化剤を含有しない自己乳化型ポリウレタン水分散液である。
【0071】
界面活性剤等の乳化剤を含有する強制乳化型のポリウレタン水分散液を用いた場合、得られたシート状物の表面は乳化剤に起因するベトツキ等が発生するため、洗浄工程が必要となり、加工工程が増加してコストアップに繋がる。
【0072】
なお、自己乳化型ポリウレタンは、通常、水に分散した状態で取り扱われ、メーカーからもこの状態で入手できるが、これは一旦乾燥すると再度水に分散させることが不可能となるためである。
【0073】
本発明に使用する自己乳化型ポリウレタン水分散液には、貯蔵安定性や製膜性向上のために水溶性有機溶剤を水分散液に対して0重量%以上40重量%以下含有していてもよいが、製膜時の加熱による大気中への有機溶剤の放出や最終製品への有機溶剤の残留等の懸念から、有機溶剤は0重量%以上1重量%以下含有していることが好ましい。
【0074】
自己乳化型ポリウレタンとしては水に分散している水分散液であれば特に限定されないが、耐加水分解性から、ポリカーボネート系の自己乳化型ポリウレタン水分散液が好ましい。
【0075】
自己乳化型ポリウレタン水分散液の濃度(自己乳化型ポリウレタン水分散液に対する自己乳化型ポリウレタンの含有量)は、自己乳化型ポリウレタン水分散液の貯蔵安定性の観点から、10重量%以上50重量%以下が好ましい。
【0076】
また、自己乳化型ポリウレタン水分散液は感熱ゲル化温度を有することが好ましい。感熱ゲル化温度を有することで、シートに含浸し、乾燥する際のポリウレタンのマイグレーション現象を抑制することができる。ただ、感熱ゲル化温度は低すぎるとポリウレタン水分散液の貯蔵においてゲル化する可能性が高く、高すぎるとマイグレーション現象を抑制できなくなることから、55℃以上90℃以下であることが好ましい。
【0077】
自己乳化型ポリウレタン水分散液は、単独で感熱ゲル化性を有することが好ましいが、自己乳化型ポリウレタン水分散液に感熱ゲル化性を付与する、または感熱ゲル化温度を低下させる目的で、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の無機塩を添加することも好ましい。
【0078】
また、自己乳化型ポリウレタン水分散液を付与するにあたっては、必要に応じてカーボンブラック等の顔料、染料、防カビ剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの耐光剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロッキング剤、帯電防止剤、シリコーン等の消泡剤、セルロース等の充填剤、ポリウレタン凝固調整剤等を添加して用いることも好ましい。
【0079】
工程(2)は、工程(3)の前、または後のどちらで行ってもよい。
【0080】
次に工程(3)について説明する。
【0081】
工程(3)では溶剤により前記極細繊維発生型繊維から平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維を発現させる。極細繊維発生型繊維が海島型複合繊維の場合、海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、5−スルホイソフタル酸ナトリウムやポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、ポリ乳酸、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂などを用いることができる。
【0082】
海成分を溶解する溶剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンの場合は、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤、共重合ポリエステル、ポリ乳酸の場合は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂の場合は、熱水を用いることができ、溶剤中に海島型複合繊維を浸漬し、窄液を行うことによって除去することができる。
【0083】
次に工程(4)について説明する。
【0084】
工程(4)では織編物、極細繊維、自己乳化型ポリウレタンからなるシート状物を110℃以上の条件下で揉んで織編物の収縮を行う。
【0085】
110℃以上の条件下で、揉みをシート状物に与えることで、織編物を構成する複合繊維からなる糸条の収縮、捲縮が発現し、シート状物にストレッチ性を付与することができる。その結果、シート状物にはストレッチ性が付与され、さらには良好な風合、タッチそして品位を得ることができる。
【0086】
シートに110℃以上の温度で揉みを与えるためには、液流染色機等を用いることができ、かかる染色機としては、公知のものを使用することができる。
【0087】
処理温度は110℃以上であることが必要であり、より高い温度で処理を行う方が、糸条の捲縮発現、織編物の収縮が進みやすく、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上である。ただし、あまり高温で処理を行うとポリウレタンを主成分とする高分子弾性体が熱劣化するため、かかる点から好ましくは150℃以下、より好ましくは135℃以下である。
【0088】
本発明においては、この工程(4)においてシート状物を高温で加熱し、織編物の収縮処理を行い、糸条の捲縮を発現させることが重要である。例えば、事前に収縮、捲縮発現を行った織編物を工程(1)にて挿入した場合、ニードルパンチ等の絡合処理により織編物の繊維が切断され、シート表面に繊維が露出することで外観品位が悪化したり、ストレッチ性の低下や、手持ち感、品位の低下がおこることがある。また、織編物を捲縮発現した後に工程(2)でポリウレタンを付与すると、シート状物自体の形態が固定され、ストレッチ性が発現しにくいものとなる。そのため、本発明においては、シート状物として一体化した後にシート状物内の織編物を収縮させ、複合繊維からなる糸条がトンネル構造をとるようにすることがのぞましい。
【0089】
また、工程(4)における収縮処理と同時に染色を行ってもよい。染料は特に限定されるものではなく、シート状物を構成する極細繊維にあわせて選択すればよい。例えばシートをポリエステル系極細繊維で構成しているのであれば分散染料を、ポリアミド系極細繊維で構成しているのであれば酸性染料や含金染料を用いることができる。
分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行ってもよい。
【0090】
また、染色の均一性や再現性をアップする目的で染色時に染色助剤を使用することは好ましい。さらにシリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤等の仕上げ剤処理を施してもよく、仕上げ処理は染色後でも、染色と同浴でもよい。
【0091】
本発明のシート状物は、少なくとも片面に極細繊維の立毛を有している立毛調のシート状物としてもよい。そのためには工程(3)と工程(4)の間、または工程(4)の後に起毛処理を施すことが好ましい。
【0092】
シート状物表面に立毛を形成するための起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤を付与してもよい。
【0093】
また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与することは、研削によってシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる傾向にあり好ましい。
【0094】
また、シート状物は、工程(2)の前、工程(3)の前または工程(4)を行う前に、シート厚み方向に半裁、ないしは数枚に分割されていてもよい。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0096】
[評価方法]
(1)固有粘度IV
オルソクロロフェノール(以下、OCPと略記する)10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下式により求め、固有粘度IVを算出した。
ηr=η/η=(t×d)/(t×d
固有粘度IV=0.0242ηr+0.2634
ここで、η:ポリマー溶液の粘度
η:OCPの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
:OCPの落下時間(秒)
:OCPの密度(g/cm)。
【0097】
(2)撚係数
糸を電動検撚機にて90×10−3cN/dtexの荷重下で解撚し、完全に解撚したときの解撚数を解撚した後の糸長で割って撚数Tを求め、さらに次式により撚係数Kを求めた。
K=T×D0.5
ここで、K:撚係数
T:糸長1m当たりの撚数(回)
D:糸の繊度(dtex)。
【0098】
(3)平均単繊維繊度
シート、またはシート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して繊維の素材ポリマーの比重(ポリエチレンテレフタレートは1.38g/cm)から繊度に換算し、さらに100本の平均値を計算することで算出した。
【0099】
(4)織編物内の糸のトンネル構造の確認
シート状物断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、織編物を構成する、円形または円形に近い楕円形の糸条を選び、図1に示すように近似円を描いた。続いて、
糸条の外周と近似円の中心とを結ぶ線Aを引き、線Aと繊維とが重なる部分Bの長さを測定し、線Aの長さに対する線Bの長さの比率を測定した。これを外周部を確認できる円弧部について30度おきに測定し、平均値を求め、繊維の充実度とした。
【0100】
(5)ストレッチ性
ストレッチ性評価は、伸長率、伸長回復率により行った。シートの各方向について、伸長率、伸長回復率の両方が目標値を超えた場合は評価を「○」とし合格、どちらか一方または両方が目標を超えなかった場合は「×」とし、不合格とした。また、タテ方向およびヨコ方向のどちらか、または両方が合格となれば、ストレッチ性があるシートと判断し、総合評価において「○」とし、両方が不合格の場合は、不合格と判断し、「×」とした。
【0101】
・伸長率
JIS L 1096(2005) 8.14.1 B法(定荷重法)においてシート状物の伸長率を測定した。
なお、本発明において良好なレベル(目標値)は、伸長率15%以上35%以下である。
【0102】
・伸長回復率
JIS L 1096(2005) 8.14.2 B−1法(定荷重法)においてシート状物の伸長回復率を測定した。また、つかみ間隔は50cmとし、荷重を取り除いた後の放置時間は1時間とした。
なお、本発明において良好なレベル(目標値)は、伸長回復率80%以上100%以下である。
【0103】
(6)外観品位
皮革様シート状物の表面品位は、健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、目視と官能評価にて下記のように評価し、最も多かった評価を外観品位とした。本発明において良好なレベルは「○」、「△」である。
○:繊維の分散状態が良好で、外観も良好である。
△:繊維の分散状態がやや良くない部分があるが、外観はまずまず良好である。
×:全体的に繊維の分散状態が非常に悪く、外観が不良である。
【0104】
(7)風合い
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、下記の評価を触感で判別を行い、最も多かった評価を風合いとした。また、評価結果が同数で割れた場合は、評価が悪い方を風合いとした。なお、本発明において良好なレベルは「◎」または「○」である。
◎:非常に柔軟である。
○:柔軟である。
△:硬い
×:非常に硬い。
【0105】
(8)ピリング評価
シート状物のピリング評価は、マーチンデール摩耗試験機として、James H.Heal&Co.製のModel 406を、標準摩擦布として同社のABRASTIVE CLOTH SM25を用い、12kPa相当の荷重をかけ、摩耗回数20,000回の条件で摩擦させた後の試料の外観を目視で観察し、評価した。評価基準は試料の外観が摩擦前と全く変化が無かったものを5級、毛玉が多数発生したものを1級とし、その間を0.5級ずつに区切った。
【0106】
[化学物質の表記]
PU:ポリウレタン
C5C6PC:ペンタメチレンカーボネートジオールとヘキサメチレンカーボネートジオールの共重合ポリカーボネートポリオール
3MPC:ポリ(3−メチルペンタンカーボネート)ポリオール
PHC:ポリヘキサメチレンカーボネート
H12MDI:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
PET:ポリエチレンテレフタレート
NaOH:水酸化ナトリウム
[ポリウレタン種]
(1)自己乳化型ポリウレタン水分散液I(PU−I)
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
(2)自己乳化型ポリウレタン水分散液II(PU−II)
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :3MPC
内部乳化剤 :ジメチロールプロピオン酸トリエチルアミン塩
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
(3)強制乳化型ポリウレタンIII(PU−III)
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :なし
外部乳化剤 :ノニオン系界面活性剤
内部架橋剤 :なし
(織編物用繊維の製造)
<製造例1>
固有粘度(IV)が0.78のPETと固有粘度(IV)0.51のPETをそれぞれ別に溶融し、紡糸温度295℃で12孔の複合紡糸口金から複合比(重量%)50:50で吐出し、紡糸速度1450m/分で引き取り、12フィラメントのサイドバイサイド型複合構造未延伸糸を得た。
さらにホットロール−熱版系延伸機を用い、延伸倍率2.6倍で延伸して56dtex、12フィラメントの延伸糸を得た。
【0107】
<製造例2>
芯として固有粘度(IV)が0.78のPET、鞘として固有粘度(IV)0.51のPETをそれぞれ別に溶融し、紡糸温度295℃で12孔の複合紡糸口金から複合比(重量%)50:50で吐出し、紡糸速度1450m/分で引き取り、12フィラメントの偏心芯鞘型複合構造未延伸糸を得た。
さらにホットロール−熱版系延伸機を用い、延伸倍率2.6倍で延伸して56dtex、12フィラメントの延伸糸を得た。
【0108】
<製造例3>
固有粘度(IV)が0.65のPETを、紡糸温度295℃で72孔の複合紡糸口金から吐出し、紡糸速度1650m/分で引き取り、72フィラメントの未延伸糸を得た。
さらにホットロール−熱版系延伸機を用い、延伸倍率2.8倍で延伸して84dtex、72フィラメントの延伸糸を得た。
【0109】
(織物の製造)
<製造例4>
製造例1で得られた延伸糸に1500回/m(撚係数11200)の撚りを施した撚糸を緯糸に、製造例3で得られた延伸糸に2500回/m(撚係数22900)の撚りを施した撚糸を経糸に用いて平織の織物を作製した。
【0110】
<製造例5>
製造例1で得られた延伸糸に1500回/m(撚係数11200)の撚りを施した撚糸を緯糸、経糸の両方に用いて平織の織物を作製した。
【0111】
<製造例6>
製造例2で得られた延伸糸に1500回/m(撚係数11200)の撚りを施した撚糸を緯糸に、製造例3で得られた延伸糸に2500回/m(撚係数22900)の撚りを施した撚糸を経糸に用いて平織の織物を作製した。
【0112】
<製造例7>
製造例3で得られた延伸糸に2500回/m(撚係数22900)の撚りを施した撚糸を緯糸、経糸の両方に用いて平織の織物を作製した。
【0113】
<製造例8>
製造例1で得られた延伸糸に1500回/m(撚係数11200)の撚りを施した撚糸を緯糸に、製造例3で得られた延伸糸に2500回/m(撚係数22900)の撚りを施した撚糸を経糸に用いて平織の織物を作製した。
得られた織物を液流染色機にて130℃、30分処理した後、ピンテンターを用い、130℃で乾燥し、緯糸が捲縮発現した織物を作製した。
【0114】
(シート状物の製造)
<実施例1>
島成分としてPETを、また海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が36島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率55/45で溶融紡糸した後、延伸、捲縮後、51mmにカットし、単繊維繊度2.8dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0115】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、600本/cmのパンチ本数でニードルパンチした後に、製造例4で作製した織物をウエブの上下に挿入し、2900本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施してウエブと織物を張り合わせ、シートを得た。
【0116】
このシートを96℃の熱水で収縮させた後、乾燥温度110℃で5分間熱風乾燥した。
【0117】
次いで、自己乳化型ポリウレタン水分散液I(PU−I)を含浸し、乾燥温度120℃で10分熱風乾燥することで、シートの島成分と織物の重量に対するポリウレタン重量が51重量%となるようにポリウレタンを付与したシート状物を得た。
【0118】
次にこのシート状物を80℃に加熱した濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去し、極細繊維と織編物とポリウレタンからなるシート状物を得た。シート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.04dtexであることを確認した。
【0119】
そして、シート状物を厚さ方向に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成した。
【0120】
こうして得られたシート状物を液流染色機にて、130℃の条件下で、収縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機にて乾燥を行い、シート状物を得た。
【0121】
このシート状物について織物内糸条の空洞を観察した結果、緯糸に空洞が存在することを確認した。また、得られたシート状物のヨコの伸長率は25%、伸長回復率は92%であり、ヨコ方向に良好なストレッチ性があった。また、外観品位、風合い、ピリング評価も良好な結果であった。
【0122】
<実施例2>
島成分としてPETを、また海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が16島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率80/20で溶融紡糸した後、延伸、捲縮後、51mmにカットし、単繊維繊度3.8dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0123】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、300本/cmのパンチ本数でニードルパンチした後に、製造例5で作製した織物をウエブの上下に挿入し、3400本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施してウエブと織物を張り合わせ、シートを得た。
【0124】
このシートを96℃の熱水で収縮させた後、乾燥温度110℃で5分間熱風乾燥した。
【0125】
次いで、自己乳化型ポリウレタン水分散液II(PU−II)を含浸し、乾燥温度120℃で10分熱風乾燥することで、シートの島成分と織物の重量に対するポリウレタン重量が43重量%となるようにポリウレタンを付与したシート状物を得た。
【0126】
次にこのシート状物を80℃に加熱した濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去し、極細繊維と織編物とポリウレタンからなるシート状物を得た。シート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.19dtexであることを確認した。
【0127】
そして、シート状物を厚さ方向に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成した。
【0128】
こうして得られたシート状物を液流染色機にて、130℃の条件下で、収縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機にて乾燥を行い、シート状物を得た。
【0129】
このシート状物について織物内糸条の空洞を観察した結果、経糸、緯糸に空洞が存在することを確認した。また、得られたシート状物のヨコの伸長率は20%、伸長回復率は91%、タテの伸長率は18%、伸長回復率は85%であり、ヨコ方向、タテ方向の両方に良好なストレッチ性があった。また、外観品位、風合い、ピリング評価も良好な結果であった。
【0130】
<実施例3>
島成分としてPETを、また海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が36島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率55/45で溶融紡糸した後、延伸、捲縮後、51mmにカットし、単繊維繊度2.8dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0131】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、600本/cmのパンチ本数でニードルパンチした後に、製造例4で作製した織物をウエブの上下に挿入し、2900本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施してウエブと織物を張り合わせ、シートを得た。
【0132】
このシートを96℃の熱水で収縮させた後、乾燥温度110℃で5分間熱風乾燥した。
【0133】
次いで、80℃に加熱した濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して20分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去し、極細繊維と織編物からなる脱海シートを得た。シート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.04dtexであることを確認した。
【0134】
この極細繊維と織物からなるシートに、自己乳化型ポリウレタン水分散液I(PU−I)を含浸し、乾燥温度120℃で10分熱風乾燥することで、シートの島成分と織物の重量に対するポリウレタン重量が24重量%となるようにポリウレタンを付与したシート状物を得た。
【0135】
そして、シート状物を厚さ方向に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成した。
【0136】
こうして得られたシート状物を液流染色機にて、130℃の条件下で、収縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機にて乾燥を行い、シート状物を得た。
【0137】
このシート状物について織物内糸条の空洞を観察した結果、緯糸共に空洞が存在することを確認した。また、得られたシート状物のヨコの伸長率は18%、伸長回復率は95%であり、ヨコ方向に良好なストレッチ性があった。また、外観品位、風合い、ピリング評価も良好な結果であった。
【0138】
<実施例4>
島成分としてPETを、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が36島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率55/45で溶融紡糸した後、延伸、捲縮後、51mmにカットし、単繊維繊度3.1dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0139】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、600本/cmのパンチ本数でニードルパンチした後に、製造例4で作製した織物をウエブの上下に挿入し、2900本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施してウエブと織物を張り合わせ、シートを得た。
【0140】
このシートを96℃の熱水で収縮させた後、乾燥温度110℃で5分間熱風乾燥した。
【0141】
次いで、自己乳化型ポリウレタン水分散液I(PU−I)を含浸し、乾燥温度120℃で10分熱風乾燥することで、シートの島成分と織物の重量に対するポリウレタン重量が69重量%となるようにポリウレタンを付与したシート状物を得た。
【0142】
このシート状物をトリクロロエチレン中で海成分を溶解除去し、極細繊維と織物とポリウレタンからなるシート状物を得た。シート状物断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察で、平均単繊維繊度は0.05detxであった。
【0143】
そして、シート状物を厚さ方向に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成した。
【0144】
こうして得られたシート状物を液流染色機にて、130℃の条件下で、収縮処理と染色を同時に行ったのちに、乾燥機にて乾燥を行い、シート状物を得た。
【0145】
このシート状物について織物内糸条の空洞を観察した結果、緯糸に空洞が存在することを確認した。また、得られたシート状物のヨコの伸長率は27%、伸長回復率は87%であり、ヨコ方向に良好なストレッチ性があった。また、外観品位、風合い、ピリング評価も良好な結果であった。
【0146】
<実施例5>
製造例8で作製した織物を使用したことと、ポリウレタンの付量47%とした以外は、実施例1と同様の処理を行い、立毛面を形成したシート状物を得た。こうして得られたシート状物を液流染色機にて、130℃の条件下で、染色を行ったのちに、乾燥機にて乾燥を行い、シート状物を得た。
【0147】
このシート状物について織物内糸条の空洞を観察した結果、経糸、緯糸共に空洞は存在しなかった。また、得られたシート状物は、風合いは良好であり、若干ピリング評価は等級が低いが実用には十分であった。また、製品表面には、織物の繊維が露出しており、外観品位は他の実施例よりは若干劣るものの実用には十分であった。
【0148】
<実施例6>
製造例6で作製した織物を使用したことと、ポリウレタンの付量49%とした以外は、実施例1と同様の処理を行い、シート状物を得た。
【0149】
このシート状物について織物内糸条の空洞を観察した結果、緯糸に空洞が存在することを確認した。また、得られたシート状物のヨコの伸長率は20%、伸長回復率は88%であり、ヨコ方向に良好なストレッチ性があった。また、外観品位、風合い、ピリング評価も良好な結果であった。
【0150】
<比較例1>
製造例7で作製した織物(通常織物)を使用したことと、ポリウレタンの付量を53%とした以外は、実施例1と同様の処理を行い、シート状物を得た。
【0151】
このシート状物について織物内糸条の空洞を観察した結果、経糸、緯糸共に空洞は存在しなかった。また、得られたシート状物は、外観品位、風合い、ピリング評価は良好だったものの、ストレッチ性がないものであった。
【0152】
<比較例2>
強制乳化型ポリウレタン水分散液III(PU−III)を使用したことと、ポリウレタン付量を56%とした以外は実施例1と同様の処理を行い、シート状物を得た。
【0153】
このシート状物について織物内糸条の空洞を観察した結果、緯糸に空洞が存在することを確認した。また、得られたシート状物は、ヨコ方向に良好なストレッチ性があり、風合いも良好であったものの、ピリング評価が悪く、外観品位も繊維の分散が悪く不良であった。
【0154】
【表1】

【0155】
【表2】

【0156】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明のシート状物は、外観、風合い、さらには伸長率および伸長回復率に優れているので、家具や椅子の表皮材や壁材に、さらには自動車、電車、航空機などの車輛室内における座席や天井などの表皮材に、非常に優美な外観を有する内装材として好適に用いることができる。さらにはシャツ、ジャケット、鞄、ベルト、財布等、及びそれらの一部に使用した衣料用資材、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴、婦人靴等の靴のアッパー、トリム等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】織編物内の糸の空洞を確認するための、シート状物断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有粘度(IV)差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体から形成されたサイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維を含んでなる糸を含む織編物と、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維とからなり、自己乳化型ポリウレタンを含有してなることを特徴とするシート状物。
【請求項2】
前記サイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維含んでなる糸が、トンネル構造を有する、請求項1に記載のシート状物。
【請求項3】
前記サイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維が2種類のポリエチレンテレフタレート系重合体からなり、当該2種類のポリエチレンテレフタレート系重合体の固有粘度差が0.2以上である、請求項1または2に記載のシート状物。
【請求項4】
前記極細繊維の繊維長が25mm以上90mm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のシート状物。
【請求項5】
前記自己乳化型ポリウレタンがその全質量に対して3質量%以上30質量%以下のポリエチレングリコールを含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のシート状物。
【請求項6】
前記自己乳化型ポリウレタンがその分子構造中にシロキサン結合を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のシート状物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかのシート状物を製造する方法であって、次の(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とするシート状物の製造方法。
(1)前記織編物と、溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子からなる極細繊維発生型繊維とを絡合させる工程。
(2)自己乳化型ポリウレタンを水に分散させてなる液を含浸、凝固させて、自己乳化型ポリウレタンを付与する工程。
(3)溶剤により前記極細繊維発生型繊維から平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維を発現せしめる工程。
(4)110℃以上の条件下で揉んで織編物を収縮させる工程。
【請求項8】
前記(1)〜(4)の工程を(1)、(2)、(3)、(4)の順番で経る、請求項7に記載のシート状物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−7730(P2009−7730A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140756(P2008−140756)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】