説明

シート状記録材剥離用摺動部材

【課題】分離爪や分離板などのシート状記録材剥離用摺動部材として要求される各種機能を有するとともに、被膜を形成することなく、耐摩耗性および耐熱剛性の向上したシート状記録材剥離用摺動部材を提供すること。
【解決手段】第1成分として、射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)、または、前記樹脂(A)と前記樹脂(A)とは異なる射出成形可能なフルオロカーボン系樹脂(B)との容積比(A/B)が5/95〜99/1である樹脂混合物を、第2成分として、熱可塑性ポリイミド(C)0.5〜50容積%を含む樹脂組成物からなる、シート状記録材剥離用摺動部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状記録材剥離用摺動部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート状記録材剥離用摺動部材は、例えば、複写機、レーザービームプリンター、印刷機等の電子写真方式による各種画像形成装置(以下、「複写機」という)の定着部や現像部において、定着ロール等のロールから複写紙、印刷紙等のシート状記録材を剥離する分離爪や分離板などとして用いられる。
【0003】
このような分離爪や分離板などの機能としては、印刷用トナーが付着しない非粘着性、分離爪などの先端部が変形したり破損したりしない形状安定性、その最先端部が接触するロール表面を傷つけないロールへの非攻撃性、更に、特に高温の定着ロールに接触する分離爪などにおいては、およそ200〜250℃の高温において変形しない耐熱性、ロールとの摺動時における静音性などが要求される。
【0004】
分離爪や分離板などのシート状記録材剥離用摺動部材として、上記の要求性能を満たすため、従来、種々の提案がなされている。例えば、特定構造を有するポリイミドの成形体の表面にテトラフルオロエチレンなどの特定のフルオロカーボン樹脂を主成分とする被膜を形成させ、表面の非粘着性を改良した複写機用分離爪(特許文献1)、ポリエーテルケトン系樹脂に酸化チタンウィスカ、酸化亜鉛ウィスカなどの補強材を特定比率配合した樹脂組成物の成形体の表面にフッ素樹脂の融着被膜を形成してなる複写用分離爪(特許文献2)、フッ素系樹脂にて射出成形された複写用分離爪(特許文献3)などが挙げられる。
【0005】
しかし、特許文献1および2に記載のような耐熱性の樹脂(基材ともいう)の表面にフッ素系樹脂の溶融被膜を形成してなる分離爪などの場合、確かに上記の要求を満たすものは得られるものの、フッ素系樹脂の溶融被膜を形成させる製造工程上の観点から、耐熱性が高いポリイミドやポリエーテルケトンなどの高価な樹脂を使用する必要があるという問題がある。
また、ポリイミドなどの成形体の表面にフッ素系樹脂を300℃程度の高温で溶融して被膜を形成させることから、被膜工程が余計に必要となり、また、高温加熱のためのエネルギーが必要になるため、よりコストがかかる上、環境負荷の面からも望ましくないという問題がある。
さらに、ポリイミドなどの樹脂は、一般に表面硬度が高いため、その表面にフッ素系樹脂で被膜を形成したとしても、表面硬度は高く、その最先端部が接触するロール表面を損傷させる危険性があり、加えて、被膜が摩耗したり、何らかの事情により被膜が剥離したりした場合には、著しくロール表面を損傷させるという問題がある。また、被膜表面の硬度が高いため、静音性はあまり良くないとされている。
加えて、基材の表面に被膜を形成してなる分離爪においては、形成された被膜の出来が分離爪の性能を左右するところ、被膜を形成する工程は、最終工程でありながら、最も不良の出やすい工程であるため、有人検査が必要になる。そのため、当該検査を行う管理面でコストがかかるという問題がある。
【0006】
また、特許文献3に記載のように、フッ素系樹脂にて射出成形した複写用分離爪の場合、ポリイミドなどの高価な樹脂を用いておらず、かつ、表面に被膜を形成しないため、特許文献1や2に記載の複写用分離爪と比較して、コストや環境負荷の面では改善されている。しかしながら、フッ素系樹脂にて射出成形された複写用分離爪の場合、摩耗性が高いうえ、高温時の剛性が低くいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平8−16815号公報
【特許文献2】特許第2902320号公報
【特許文献3】特開2003−241557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題点に鑑みて、本発明の目的とするところは、分離爪や分離板などのシート状記録材剥離用摺動部材として要求される上記機能を有するとともに、被膜を形成することなく、耐摩耗性および耐熱剛性の向上したシート状記録材剥離用摺動部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題解決のため、鋭意検討した結果、接着性フルオロカーボン系樹脂と熱可塑性ポリイミドを用いることで、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
【0010】
本発明は、第1成分として、
射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)、または、
前記樹脂(A)と前記樹脂(A)とは異なる射出成形可能なフルオロカーボン系樹脂(B)との容積比(A/B)が5/95〜99/1である樹脂混合物を、
第2成分として、熱可塑性ポリイミド(C)0.5〜50容積%を含む樹脂組成物からなる、シート状記録材剥離用摺動部材に関する。
【0011】
本発明では、前記樹脂組成物が、添加剤として繊維状物質、ウィスカ状物質、および粒子状物質からなる群より選択される少なくとも1種を0.1〜30容積%含むことが好ましい。また、前記樹脂組成物において、前記樹脂(A)または前記樹脂混合物、前記熱可塑性ポリイミド(C)および前記添加剤の各容積比率の合計が100容積%であるのがより好ましい。
【0012】
また、本発明では、前記射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)が、酸無水物基、カルボキシ基、酸ハライド基およびカーボネート基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を有していてもよい。
【0013】
また、本発明では、前記射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)が、テトラフルオロエチレンに基づく第一繰返し単位、ジカルボン酸無水物基を有し、且つ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく第二繰返し単位、および、その他のモノマーに基づく第三繰返し単位を含有し、第一繰返し単位、第二繰返し単位および第三繰返し単位の合計モル量に対して、第一繰返し単位が50〜99.89モル%、第二繰返し単位が0.01〜5モル%、第三繰返し単位が0.1〜49.99モル%である含フッ素共重合体であってもよい。
【0014】
さらに、本発明では、前記熱可塑性ポリイミド(C)の平均分散粒子径が10μm以下であるのが好ましい。
【0015】
また、本発明では、シート状記録材剥離用摺動部材の表面の水滴接触角が90°以上であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、分離爪や分離板などのシート状記録材剥離用摺動部材として要求される、非粘着性、形状安定性、非攻撃性、耐熱性、静音性などの上記機能を有するとともに、被膜を形成することなく、耐摩耗性および耐熱剛性が向上したシート状記録材剥離用摺動部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のシート状記録材剥離用摺動部材の実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明のシート状記録材剥離用摺動部材の実施形態の他の例を示す斜視図である。
【図3】本発明のシート状記録材剥離用摺動部材の実施形態の一例を複写機に装着した状態の説明図である。
【図4】本発明のシート状記録材剥離用摺動部材の実施形態の一例である分離爪の先端角度の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るシート状記録材剥離用摺動部材は、第1成分として、射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)、または、前記樹脂(A)と前記樹脂(A)とは異なる射出成形可能なフルオロカーボン系樹脂(B)との容積比(A/B)が5/95〜99/1である樹脂混合物を、第2成分として、熱可塑性ポリイミド(C)0.5〜50容積%を含む樹脂組成物からなる。
即ち、本発明では、第1成分としての樹脂(A)および第2成分としての熱可塑性ポリイミド(C)を含む樹脂組成物を用いてシート状記録材剥離用摺動部材を構成しても良いし、第1成分としての樹脂(A)と樹脂(B)との特定容積比の樹脂混合物および第2成分としての熱可塑性ポリイミド(C)を含む特定の樹脂組成物を用いてシート状記録材剥離用摺動部材を構成しても良い。但し、何れの場合も、樹脂組成物中の熱可塑性ポリイミド(C)の含有量は、容積比で0.5〜50容積%である。
【0019】
このように、本発明に係るシート状記録材剥離用摺動部材は、熱可塑性ポリイミド(C)を含有するため、その特性に基づいて、耐熱性に優れ、高い機械的強度を有する(即ち、形態安定性、耐熱性を有する)とともに、前記樹脂(A)(必要により前記樹脂(B))を含有するため、フルオロカーボン系樹脂の特性に基づいて、優れた耐薬品性(即ち、非粘着性)、適度の柔軟性(即ち、静音性)を有する。また、従来の融着被膜とは異なり、表面のみでなく、全体が上記樹脂組成物からなるため、ロールへの攻撃性を抑制することが可能となる。
【0020】
前記射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)としては、射出成形に使用可能で、熱可塑性ポリイミド(C)と相容性があるものであれば、特に限定なく用いることが可能である。ここで「接着性」には、熱可塑性ポリイミド(C)をはじめとする樹脂、樹脂(A)以外の他の樹脂、その他の材料との相容性ないし親和性があること含む。
このような接着性フルオロカーボン系樹脂は、フルオロカーボン系樹脂の有する、適度な柔軟性、優れた耐熱性、耐薬品性、耐候性、ガスバリア性等の特性を有しつつ、表面の自由エネルギーが適度に高くなっているため、他の材料と組合せたポリマーアロイなどの樹脂組成物を構成することが可能となる。従って、本発明のように熱可塑性ポリイミドの有する耐熱性や機械的強度などの優れた特性と、フルオロカーボン系樹脂の前記の優れた特性とを併せ持つ樹脂組成物が得られる。
【0021】
この接着性フッ素樹脂を構成するベースフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく繰り返し単位を含むフッ素樹脂を好ましく用いることができる。具体的に、このベースフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)−TFE共重合体等からなる群より選ばれる1つを単独で、又は2つ以上をブレンドして好ましく用いることができ、特に、耐熱性および非粘着性の観点から、PFAを好ましく用いることができる。
【0022】
前記射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)(以下、接着性フッ素樹脂と称する場合がある。)としては、例えば、酸無水物基、カルボキシル基、酸ハライド基およびカーボネート基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を有するフッ素樹脂などが挙げられる。これにより、熱可塑性ポリイミドとの相容性をより向上することができる。従って、熱可塑性ポリイミドと相分離が生じにくくなり、全体として耐摩耗性や耐熱剛性を付与することができる。
【0023】
また、接着性フッ素樹脂に含有される酸無水物基としては、不飽和カルボン酸無水物基を好ましく用いることができ、特に、ジカルボン酸無水物基を好ましく用いることができ、中でも環状炭化水素と結合したジカルボン酸無水物基を好ましく用いることができる。
【0024】
また、この酸無水物基としては、重合性不飽和基及びジカルボン酸無水物基を環に有する環状炭化水素モノマー(以下、「環状モノマー」という)に基づく繰り返し単位を好ましく用いることができる。この場合、接着性フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレンに基づく第一繰り返し単位、ジカルボン酸無水物基を有し且つ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく第二繰り返し単位、及びテトラフルオロエチレン及び当該環状炭化水素モノマーを除くその他のモノマー(以下、「追加モノマー」という)に基づく第三繰り返し単位を有するものを好ましく用いることができる。
【0025】
また、この接着性フッ素樹脂としては、前記の、第一繰り返し単位、第二繰り返し単位、及び第三繰り返し単位の合計モル量に対して、当該第一繰り返し単位が50〜99.89モル%であり、当該第二繰り返し単位が0.01〜5モル%であり、当該第三繰り返し単位が0.1〜49.99モル%であるものを好ましく用いることができる。第一繰り返し単位、第二繰り返し単位、及び第三繰り返し単位のモル%が、それぞれ上記の範囲内にある場合には、接着性フッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性、接着性、成形性、機械物性に優れたものとなる。さらに、この接着性フッ素樹脂としては、第一繰り返し単位が60〜99.45モル%であり、第二繰り返し単位が0.05〜3モル%であり、第三繰り返し単位が0.5〜45モル%であるものがより好ましく、当該第一繰り返し単位が80〜98.9モル%であり、当該第二繰り返し単位が0.1〜1モル%であり、当該第三繰り返し単位が1〜40モル%であるものが最も好ましい。
【0026】
この接着性フッ素樹脂を構成する環状モノマーは、1つ以上の5員環又は6員環からなる環状炭化水素と、ジカルボン酸無水物基と、環内重合性不飽和基と、を有する重合性化合物が好ましい。この環状モノマーとしては、1つ以上の有橋多環炭化水素を有する環状炭化水素を有するものを好ましく用いることができ、特に、1つの有橋多環炭化水素からなる環状炭化水素、2つ以上の有橋多環炭化水素が縮合した環状炭化水素、又は有橋多環炭化水素と他の環状炭化水素とが縮合した環状炭化水素を有するものを好ましく用いることができる。また、この環状モノマーとしては、炭化水素環を構成する炭素原子間に存在する重合性不飽和基を1つ以上含む環内重合性不飽和基を有するものを好ましく用いることができる。また、この環状モノマーとしては、炭化水素環を構成する2つの炭素原子に結合し、又は環外の2つの炭素原子に結合しているジカルボン酸無水物基(−CO−O−CO−)を有するものを好ましく用いることができる。
【0027】
具体的に、この環状モノマーとしては、例えば、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」という)や、下式(1)〜(3)で表される酸無水物等を好ましく用いることができ、特に、NAHを好ましく用いることができる。なお、上述の環状モノマーを用いることにより、特殊な重合方法を用いることなく、当該環状モノマーからなる繰り返し単位を含む接着性フッ素樹脂を容易に製造することができる。
【0028】
【化1】

【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
接着性フッ素樹脂を構成する前記の追加モノマーとしては、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、「VdF」という)、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」という)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」という)、ペルフルオロアルキルビニルエーテルであるCF2=CFORf1(ここで、Rf1は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基)、CF2=CFORf2SO21(Rf2は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、X1はハロゲン原子又は水酸基)、CF2=CFORf2CO22(ここで、Rf2は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、X2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基)、CF2=CF(CF2pOCF=CF2(ここで、pは1又は2)、CH2=CX3(CF2q4(ここで、X3及びX4は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子、qは2〜10の整数)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素数2〜4のオレフィンからなる群より選ばれる1つを単独で、又は2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
具体的に、この追加モノマーとしては、例えば、VdF、HFP、CTFE、CF2=CFORf1、CH2=CX3(CF2q4、及びエチレンからなる群より選ばれる1つ以上を含むものを用いることができ、好ましくは、HFP、CTFE、CF2=CFORf1、エチレン及びCH2=CX3(CF2q4からなる群より選ばれる1つ以上を含むものを用いることができ、特に好ましくは、HFP、CTFE及びCF2=CFORf1である。そして、追加モノマーとしては、最も好ましくは、CF2=CFORf1である。この場合、Rf1としては、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜4のペルフルオロアルキル基がより好ましく、ペルフルオロプロピル基が最も好ましい。
【0033】
また、接着性フッ素樹脂としては、その融点が、150〜320℃の範囲内にあるものを好ましく用いることができ、特に、200〜310℃の範囲内にあるものを好ましく用いることができる。融点この範囲内にある接着性フッ素樹脂は、特にポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶性ポリマー(LCP)、セミ芳香族系ポリアミドのような耐熱性が150℃以上あるスーパーエンジニアリングプラスチックとのポリマーアロイを高温下に溶融混練する際に適したものであり、溶融成形性に優れたものである。なお、接着性フッ素樹脂の融点は、当該接着性フッ素樹脂に含まれる各繰り返し単位の含有比率によって適宜調節することができる。
【0034】
また、接着性フッ素樹脂として、TFEに基づく第一繰り返し単位が50〜99.89モル%であり、第二繰り返し単位が0.01〜5モル%であり、CTFEに基づく第三繰り返し単位が0.1〜49.99モル%であるフッ素樹脂を用いることも可能である。
【0035】
前記の接着性フッ素樹脂の製造方法は特に制限はなく、ラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合が挙げられ、特に溶液重合が好ましい。
【0036】
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である温度が0℃〜100℃であるラジカル重合開始剤が好ましい。より好ましくは20〜90℃である。その具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル、(Z(CF2rCOO)2(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、rは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
【0037】
本発明において、含フッ素共重合体の溶融流れ速度(MFR)を制御するために、連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。含フッ素共重合体の高分子末端に接着性官能基を導入するための連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0038】
本発明において重合条件は特に限定されず、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
【0039】
上記のような製造方法で得られた接着性フッ素樹脂は、定法に従って、ペレット状、粉体状、その他の形態として得ることができる。
【0040】
前記射出成形可能なフルオロカーボン系樹脂(B)としては、前記射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)以外の射出成形可能なフルオロカーボン系樹脂であれば、特に限定はない。公知の射出成形可能なフルオロカーボン系樹脂、例えば、PFA、FEP、ETFE、CTFE−TFE共重合体等からなる群より選ばれる1つを単独で、又は2つ以上をブレンドしたものを、用いることができる。
【0041】
前記樹脂混合物は、前記樹脂(A)と、前記樹脂(A)とは異なる射出成形可能なフルオロカーボン系樹脂(B)との容積比(A/B)が5/95〜99/1であり、好ましくは15/85〜90/10、より好ましくは20/80〜85/15である。これにより、熱可塑性ポリイミド(C)との相容性が得られる。容積比(A/B)が5/95より小さいと、所望の相容性が得られない傾向にある。
尚、樹脂混合物の容積比は、各成分の質量比と比重から算出される。
【0042】
前記樹脂混合物の製造方法としては、特に限定はなく、一般的な樹脂の混合に用いられる方法、例えば、2軸混練、粉体のドライブレンドなどを採用することができる。
【0043】
前記熱可塑性ポリイミド(C)としては、特に限定はなく、公知のものや、市販のものを用いることができる。市販のものとしては、例えば、三井化学社製のオーラムPD−500などが挙げられる。
【0044】
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性ポリイミド(C)を0.5〜50容積%含む。これにより、耐熱剛性、耐摩耗性が向上する。熱可塑性ポリイミド(C)の含有率が0.5容積%より小さいと、耐熱剛性、耐摩耗性の向上が図れず、50容積%より大きいと、射出成形時の流動性および表面性が悪化し、非粘着性も低下する傾向にある。また、後述の添加剤を用いる場合は、射出成形時の流動性確保、耐熱剛性、耐摩耗性を考慮し、0.5〜30容積%であってもよい。
【0045】
また、前記樹脂組成物中において、前記熱可塑性ポリイミド(C)の平均分散粒子径が10μm以下であるのが好ましい。この場合、熱可塑性ポリイミド(C)が、前記樹脂(A)、または、前記樹脂混合物中に適度に分散され、耐摩耗性および耐熱剛性が向上したシート状記録材剥離用摺動部材が得られる。
尚、前記の平均分散粒子径は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0046】
本発明では、前記樹脂組成物が、添加剤として繊維状物質、ウィスカ状物質、および粒子状物質からなる群より選択される少なくとも1種(以下、特定添加剤という場合がある。)を含むように構成しても良い。これにより、耐熱剛性、耐摩耗性が向上する。また、これらは、補強効果、耐摩耗性、射出成形時の流動性を考慮して、適宜選択することができる。
【0047】
前記繊維状物質としては、無機系、有機系の繊維状物質が挙げられる。無機系の繊維状物質としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、グラファイト繊維、ステンレス繊維などの金属繊維などが挙げられる。また、有機系の繊維状物質としては、各種の合成繊維や天然繊維が挙げられる。中でも、耐摩耗性、非攻撃性の観点から、炭素繊維、有機繊維が好ましい。
【0048】
前記ウィスカ状物質は、針状(髭状)の単結晶体または多結晶体であり、結晶体の大きさは、平均直径0.01〜10μmである。このようなウィスカ状物質としては、無機系、有機系のウィスカ状物質を用いることができる。無機系のウィスカ状物質としては、例えば、ケイ酸カルシウムウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、硫酸カルシウムウィスカ、硫酸マグネシウムウィスカ、硝酸マグネシウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、酸化チタンウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、ウォラストナイトウィスカなどが挙げられる。また、中でも、耐摩耗性、非攻撃性の観点から、炭酸カルシウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカが好ましい。
【0049】
前記粒子状物質としては、粒子径が0.5〜100μmの有機系、無機系の粒子状の物質を用いることができる。無機系としては、例えば、タルク、マイカ、モンモリロナイト、シリカ、炭酸カルシウムなど、有機系としては全芳香族ポリアミドのアラミド粉などが挙げられる。中でも、耐摩耗性、非攻撃性、コストの観点から、タルク、炭酸カルシウムが好ましい。
【0050】
また、前記樹脂組成物中の前記添加剤(特定添加剤)の含有率としては、耐熱剛性、耐摩耗性、射出成形時の流動性の観点から、0.1〜30容積%であるのが好ましく、3〜20容積%であるのがより好ましい。
【0051】
また、本発明では、前記樹脂組成物に、本発明の効果を妨げない範囲で、上記の特定添加剤以外の添加剤を用いても良い。このような添加剤としては、離型剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、発泡剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、染料・顔料などの着色剤、帯電防止剤などの一種以上のものが挙げられる。
【0052】
本発明では、前記樹脂組成物において、前記樹脂(A)または前記樹脂混合物、前記熱可塑性ポリイミド(C)および前記の特定添加剤の各容積比率の合計が100容積%であるように構成しても良い。
【0053】
更に、本発明に係るシート状記録材剥離用摺動部材は、その表面の水滴接触角が90°以上であるのが好ましい。この場合、特にシート状記録材剥離用摺動部材に対するトナーの非付着性がより向上する。
【0054】
本発明に用いる前記樹脂組成物の製造方法としては、特に限定はなく、一般的な樹脂の混合に用いられる方法、例えば、2軸混練、粉体のドライブレンドなどを採用することができる。また、樹脂組成物の最終形態としては、ペレット、ストランド、粉体、ペーストなど、樹脂の一般的な形態とすることができる。
【0055】
また、本発明に係るシート状記録材剥離用摺動部材は、上記の樹脂組成物を用いて、射出成形などにより、その全体を一体に成形して得ることができる。従って、融着被膜を形成する工程が不要であり、従来の融着被膜を形成したものに比べて、製造工程の簡略化、環境負荷の低減を図ることができる。また、射出成形を行うことが可能なため、量産性に優れる利点がある。
【0056】
上記のような樹脂組成物からなるシート状記録材剥離用摺動部材は、例えば、複写機の定着部や現像部において、定着ロール等のロールから複写紙、印刷紙等のシート状記録材を剥離する分離爪や分離板などの摺動部材として好適に用いることができる。
【0057】
本発明に係るシート状記録材剥離用摺動部材の実施形態について、複写機用分離爪の場合について説明する。
本発明では、複写機用分離爪の形状は特に限定されるものではなく、基本的には従来からの分離爪と同様の形状のものでよい。
本実施形態の複写機用分離爪は、その全体が前記樹脂組成物により一体に成形されている。例えば、図1に示すように、分離爪1に支軸2が一体に成形してある。または、例えば図2に示すように、分離爪1aに軸孔2aを設けてある。そして、図3に示すように、前記分離爪1は、定着ロールその他のロール10の回転軸11と前記支軸2とを平行にして該支軸2を中心に回動可能とし、また、前記分離爪1aは、前記軸孔2a部分をロール10の回転軸11と平行に設けられた取付軸4へ挿通して、該取付軸4を中心に回動可能とし、バネ等の付勢手段3によりロール10の表面へ爪先端部を適正な圧力で接触させた状態に取り付けられる。
【0058】
また、例えば図4に示すように、ロール10と分離爪1とを通常の使用状態に接触させた際に、ロール10の回転軸11側から見て、ロール10と接触する側の分離爪1の稜線L1と、複写紙Pが通過する側の分離爪1の稜線L2とがなす角度θを分離爪の先端角度とすると、分離爪の先端角度は5〜80度の範囲が好ましく、25〜45度の範囲がより好ましい。先端角度が5度以下では、ロールへの押しつけ力にもよるが、曲がり変形によりロールと分離爪先端部との間に隙間ができて通紙時に複写紙の紙詰まりが発生しやすい。一方、先端角度が80度以上では、曲がり変形は起こり難いものの、複写紙の分離機能が発揮されにくい。
【実施例】
【0059】
(製造例)射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)の製造
酸無水物基を有するモノマーとしてNAH(無水ハイミックス酸、日立化成工業株式会社製)を、追加モノマーとしてCF2=CFO(CF23F(ペルフルオロプロピルビニルエーテル、旭硝子株式会社製)(以下、PPVEという)を用いて、射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)(接着性フッ素樹脂)を製造した。
【0060】
まず、369kgの1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(AK225cb、旭硝子社製)(以下、「AK225cb」という)と、30kgのPPVEと、を予め脱気された、内容積が430Lの撹拌機付き重合槽に仕込んだ。次いで、この重合槽内を加熟して50℃に昇温し、さらに50kgのTFEを仕込んだ後、当該重合槽内の圧力を0.89MPa/Gまで昇圧した。
【0061】
さらに、重合開始剤溶液として、(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.36質量%の濃度でAK225cbに溶解した溶液を調製し、重合槽中に当該溶液の3Lを1分間に6.25mLの速度にて連続的に添加しながら重合を行った。また、重合反応中における重合槽内の圧力が0.89MPa/Gを保持するようにTFEを連続的に仕込んだ。また、NAHを0.3質量%の濃度でAK225cbに溶解した溶液を、重合中に仕込むTFEこのモル数に対して0.1モル%に相当する量ずつ連続的に仕込んだ。
【0062】
重合開始8時間後、32kgのTFEを仕込んだ時点で、重合槽内の温度を室温まで降温するとともに、圧力を常圧までパージした。得られたスラリをAK225cbと固液分離した後、150℃で15時間乾燥することにより、33kgの接着性フッ素樹脂を得た。また、得られた接着性フッ素樹脂の比重は2.15であった。
【0063】
溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、この接着性フッ素樹脂(m−PFAと略称する場合がある。)の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位(第一繰り返し単位)/NAHに基づく繰り近し単位(第二繰り返し単位)/PPVEに基づく繰り返し単位(第三繰り返し単位)=97.9/0.1/2.0(モル%)であった。また、この接着性フッ素樹脂(m−PFA)の融点は300℃であり、溶融流れ速度(Melt Flow Rate:MFR)は0.39mm3/秒であった。
【0064】
(実施例、比較例)
射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)として、製造例で作製したm−PFA、射出成形可能なフルオロカーボン系樹脂(B)として、旭硝子株式会社製PFA(製品名「Fluon(登録商標)PFA P−62XP」、比重(ρ)2.15)、熱可塑性ポリイミド(C)として、三井化学株式会社製TPI(製品名「AURUM(登録商標) PD−500」、比重(ρ)1.33)、添加剤(特定添加剤)として、炭素繊維(比重(ρ)1.7)、ガラス繊維(比重(ρ)2.5)、炭酸カルシウムウィスカ(比重(ρ)2.8)を用い、表1に示す容積基準の組成(表2には、質量基準の組成を示した)の樹脂組成物を、定法に従って、2軸混練押出機により調製し、ペレットを得た。得られた樹脂組成物を用い、定法に従って、射出成形により評価用サンプルとしてのシート状記録材剥離用摺動部材(射出成形品)を成形した。
【0065】
(参考例)
実施例および比較例と同様に、表1(表2)に示す組成の樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物を用いて射出成形したシート状記録材剥離用摺動部材の表面に、定法に従って、PFAの融着被膜を形成したシート状記録材剥離用摺動部材を調製した。
【0066】
(評価)
実施例などで調製した射出成形品(参考例については被膜形成後のもの。以下同じ。)を用いて、以下の項目について評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0067】
<射出成形品の外観>
実施例などで調製した射出成形品の表面外観を目視により観察した。評価基準は、以下の通りである。
○:表面剥離なし
×:表面剥離あり
【0068】
<TPIの平均分散粒子径の測定>
実施例および比較例で調製した射出成形品を用い、液体窒素に浸漬して冷凍した射出成形品を冷凍割断し、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ社製、S−3400N)にて観察して、TPIの粒子径を、SEM付属の測長機能を用いて測定した。
【0069】
<25℃での曲げ弾性率の測定>
実施例などで調製した射出成形品を用い、JIS K7203に準拠して、25℃での曲げ試験を行った。
【0070】
<200℃での曲げ弾性率の測定>
実施例などで調製した射出成形品を用い、JIS K7203に準拠して、200℃での曲げ試験を行った。
【0071】
<ステンレス鋼との摺動:25℃での比摩耗量の測定>
実施例などで調製した射出成形品を用い、表4の条件(但しステンレス鋼の温度は25℃)にてピンオンディスク式摩擦摩耗試験機により、ステンレス鋼に対する25℃での比摩耗量を測定した。尚、ステンレス鋼は、材質間の摩擦摩耗特性差を確認するための一般的な相手材であるため採用した。
【0072】
<ステンレス鋼との摺動:200℃での比摩耗量の測定>
実施例などで調製した射出成形品を用い、表4の条件(但しステンレス鋼の温度は200℃)にてピンオンディスク式摩擦摩耗試験機により、ステンレス鋼に対する200℃での比摩耗量を測定した。
【0073】
<ステンレス鋼との摺動:相手攻撃性(非攻撃性)評価>
実施例などで調製した射出成形品を用い、表4の条件(但しステンレス鋼の温度は25℃)にてピンオンディスク式摩擦摩耗試験機により、射出成形品のステンレス鋼に対する攻撃性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
○:ステンレス鋼の損傷深さ2μm以下
△:ステンレス鋼の損傷深さ2μmより大きく、10μm以下
【0074】
<PFAとの摺動:200℃での比摩耗量の測定>
実施例などで調製した射出成形品を用い、表4の条件(但しPFAの温度は200℃)にてピンオンディスク式摩擦摩耗試験機により、PFAに対する200℃での比摩耗量を測定した。尚、ロールの表面は、PFAで被覆されているのが一般的であるため、採用した。
【0075】
<PFAとの摺動:200℃での摩耗係数の測定>
実施例などで調製した射出成形品を用い、表4の条件(但しPFAの温度は200℃)にてピンオンディスク式摩擦摩耗試験機により、PFAに対する200℃での摩耗係数を測定した。
【0076】
<PFAとの摺動:相手攻撃性(非攻撃性)評価>
実施例などで調製した射出成形品を用い、表4の条件(但しPFAの温度は25℃)にてピンオンディスク式摩擦摩耗試験機により、射出成形品のPFAに対する攻撃性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
○:PFAの損傷深さが30μm以下
△:PFAの損傷深さが30μmより大きく、100μm以下
【0077】
<水滴接触角の測定>
実施例などで調製した射出成形品を用い、自動接触角計(協和界面化学株式会社製、FACE自動接触角計CA−Z型)により、表面の水滴接触角を測定した。
【0078】
<熱時変形特性>
実施例などで調製した射出成形品を用い、200℃のステンレス鋼ディスク上に、厚み2.5mm、先端角度45°、先端R0.05mmのエッジ部に1.96Nの荷重を与え、試験前と2時間後における荷重方向の寸法を測定し、試験前後の寸法差(変形量)を算出することにより、熱時変形特性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
◎:変形量が0.05mm未満
○:変形量が0.05mm以上、0.15mm未満
△:変形量が0.15mm以上
【0079】
<材料コスト>
実施例、比較例、参考例について、材料コストについて評価した。評価基準は、以下のとおりである。
◎:PFAの射出成形材のkg単価
○:PFAの射出成形材のkg単価の4倍未満
【0080】
<工程の容易さ>
実施例、比較例、参考例について、工程の容易さについて評価した。評価基準は、以下のとおりである。
○:被覆工程なし
△:被覆工程あり
【0081】
<製品コスト>
上記の評価項目のうち、材料コストおよび工程の容易さにおいて、各評価基準の◎を2点、○を1点、△を0点と評点化し、両者の評点の和が、3〜4点のものを◎、2点のものを○、0〜1点のものを△として、製品コストを評価した。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
比較例2において、射出成形品の表面外観は、表面剥離が観察され、また、TPIの平均分散粒子径の測定では、分散不良がSEM画像で観察された。
【0086】
【表4】

【符号の説明】
【0087】
1、1a 複写機用分離爪
2 支軸
2a 軸孔
3 付勢手段
4 取付軸
10 ロール
11 回転軸
P 複写紙
θ 先端角度




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分として、
射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)、または、
前記樹脂(A)と前記樹脂(A)とは異なる射出成形可能なフルオロカーボン系樹脂(B)との容積比(A/B)が5/95〜99/1である樹脂混合物を、
第2成分として、熱可塑性ポリイミド(C)0.5〜50容積%を含む樹脂組成物からなる、シート状記録材剥離用摺動部材。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、添加剤として繊維状物質、ウィスカ状物質、および粒子状物質からなる群より選択される少なくとも1種を0.1〜30容積%含む請求項1記載のシート状記録材剥離用摺動部材。
【請求項3】
前記樹脂組成物において、前記樹脂(A)または前記樹脂混合物、前記熱可塑性ポリイミド(C)および前記添加剤の各容積比率の合計が100容積%である請求項2記載のシート状記録材剥離用摺動部材。
【請求項4】
前記射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)が、酸無水物基、カルボキシ基、酸ハライド基およびカーボネート基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状記録材剥離用摺動部材。
【請求項5】
前記射出成形可能な接着性フルオロカーボン系樹脂(A)が、テトラフルオロエチレンに基づく第一繰返し単位、ジカルボン酸無水物基を有し、且つ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく第二繰返し単位、および、その他のモノマーに基づく第三繰返し単位を含有し、第一繰返し単位、第二繰返し単位および第三繰返し単位の合計モル量に対して、第一繰返し単位が50〜99.89モル%、第二繰返し単位が0.01〜5モル%、第三繰返し単位が0.1〜49.99モル%である含フッ素共重合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状記録材剥離用摺動部材。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリイミド(C)の平均分散粒子径が10μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート状記録材剥離用摺動部材。
【請求項7】
表面の水滴接触角が90°以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート状記録材剥離用摺動部材。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−113119(P2012−113119A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261695(P2010−261695)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(000107619)スターライト工業株式会社 (62)
【Fターム(参考)】