説明

シート状身体洗浄材

【課題】 シートを容器から取り出す時の泡立ちが抑制され、肌への感触が優しく、使用感も良好なシート状身体洗浄材を提供する。
【解決手段】 界面活性剤10〜30質量%及びエタノール10〜25質量%を含有する水性洗浄液を、織布又は不織布に含浸させたシート状身体洗浄材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納容器から1枚ずつ取り出す時の泡立ちが抑制され、肌への感触が優しく、使用感も良好なシート状身体洗浄材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布等に界面活性剤を含浸させ、水を加えて泡立てて使用される洗浄用シートが知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。シートは、皮膚をマッサージして洗浄するために使用されることから、適度な強度と柔らかな感触を有することが必要であり、界面活性剤を含有する洗浄剤は、低刺激で泡立ちが良いことも必要である。しかしながら、従来の洗浄用シートでは、洗浄のために皮膚をこすりすぎると肌を傷める場合があるなど、十分満足できるものではなかった。
また、これらの洗浄用シートは、重ねて密封包装して保存されるが、保存中にシート同士が貼り付いたり、取り出し時に泡立つなどの問題もあった。
【0003】
特許文献4には、エタノールを特定量含有するpH3〜6の清浄用組成物を含浸させたウェットな繊維シートが記載されている。しかしながら、この繊維シートは、防かびのために、エタノールと、安息香酸、パラオキシ安息香酸塩類を組み合わせて用いるもので、ウェットティッシュ等の拭き取り用途に用いられるものであり、泡立てて使用するものではない。
【特許文献1】特開2003−27094号公報
【特許文献2】特開2002−363063号公報
【特許文献3】特開2003−95861号公報
【特許文献4】特開平11−99088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、シートを容器から取り出す時の泡立ちが抑制され、肌への感触が優しく、使用感も良好なシート状身体洗浄材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、界面活性剤とエタノールを特定の割合で含有する水性洗浄液を、織布又は不織布に含浸させることにより、容器から1枚ずつ取り出す時の泡立ちが抑制され、肌への感触が優しく、使用感も良好なシート状身体洗浄材が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、界面活性剤10〜30質量%及びエタノール10〜25質量%を含有する水性洗浄液を、織布又は不織布に含浸させたシート状身体洗浄材を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシート状身体洗浄材は、容器内でシート同士の貼り付きがなく、シートを容器から取り出す時の泡立ちが抑制され、防腐効果に優れるとともに、肌への感触が優しく、使用感も良好である。また、水性洗浄液が低粘度であるため、製造時の液の含浸性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる界面活性剤としては、身体洗浄剤としての使用に適した起泡性を有するアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤であればいずれでも良い。
【0009】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸塩、アルキル(又はアルケニル)硫酸塩、エーテルカルボン酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、高級脂肪酸塩、アルキルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩、アシル化イセチオン酸塩、アシル化タウレート、N−アルキルアミドアルカノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミドエーテル硫酸塩等が挙げられる。これらのうち、アルキルリン酸エステル塩が好ましく、特に一般式(1)、(2):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは平均炭素数9〜15で、分岐率10%以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、X1、X2及びX3はそれぞれ水素原子又はアルカリ金属を示し、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す0〜5の数である)
で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩が好ましい。
【0012】
非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルアミンオキサイド、アルキルサッカライド、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0013】
両性界面活性剤としては、例えばカルボベタイン、スルホベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミドベタイン等が挙げられる。
【0014】
これらのうち、起泡性の点から、特にアニオン界面活性剤が好ましい。
【0015】
界面活性剤は、1種以上を用いることができ、水性洗浄液の全組成中に10〜30質量%、好ましくは15〜30質量%含有される。10質量%未満では、十分な泡立ちを得ることができず、30質量%を超えると、使用感が低下したり製剤化が困難になったりする。
【0016】
また、水性洗浄液は、エタノールを10〜25質量%、好ましくは15〜25質量%含有する。10質量%未満では、低粘度化や防腐の効果が十分に得られず、25質量%を超えると、使用時の泡立ちが低下する。
【0017】
本発明で用いる水性洗浄液には、更に増泡剤を含有することができる。増泡剤としては、脂肪酸、高級アルコール、アルキルグリセリルエーテル等を用いることができる。
脂肪酸としては、炭素数10〜18のものが好ましく、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
高級アルコールとしては、炭素数10〜18のものが好ましく、例えばラウリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
アルキルグリセリルエーテルとしては、炭素数4〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有するものが挙げられる。例えばn−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等の、炭素数4〜12のアルキル基を有するものが好ましい。
【0018】
増泡剤は、1種以上を用いることができ、水性洗浄液の全組成中に1〜10質量%、特に2〜5質量%含有するのが、使用時の泡立ちと長期保存時の品質維持の観点から好ましい。
【0019】
本発明で用いる水性洗浄液には、更にスキンケア剤を含有することができる。スキンケア剤としては、多価アルコール、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム等の保湿剤;動植物油由来の油脂・ロウ類;流動パラフィン、ワセリン等の炭化水素;コレステロール、フィトステロール等のステロール類;脂肪酸エステルなどが挙げられる。
これらのスキンケア剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に1〜20質量%、特に5〜17質量%含有するのが、使用感向上のため好ましい。
【0020】
水性洗浄液には、前記成分以外に、更に、トリクロサン、トリクロロカルバニリド等の殺菌剤;グリチルリチン酸カリウム、酢酸トコフェロール等の抗炎症剤;メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、安息香酸ナトリウム、イソプロピルメチルフェノール等の防腐剤;エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩等のキレート剤;その他、香料、l−メントール等の冷感剤、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、植物エキスなどを含有させることができる。
このように、界面活性剤を主体とし、各種成分を含んでもよい水性洗浄液に含まれる水は、30〜70質量%であることが好ましい。
【0021】
本発明で用いる水性洗浄液は、20倍水希釈液のpHが3〜12、特にpH5〜10であるのが、使用時の泡立ちと肌への低刺激性の観点から好ましい。
pHの調整は、酸又はアルカリ水溶液を用いて行えば良い。
なお、pHは、水性洗浄液をイオン交換水で20倍に希釈した希釈液について、25℃において、pHメーターを用いて測定されるものである。
【0022】
本発明で用いる織布又は不織布は、前記の水性洗浄液を含浸させるものである。例えば、親水性繊維及び/又は疎水性繊維からなる不織布、編織布、織布などが挙げられる。親水性繊維としては、セルロース繊維、パルプ、レーヨン、アクリル等が挙げられ、疎水性(合成)繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ナイロン、アセテート等が挙げられる。
【0023】
上記織布又は不織布としては、特に、極細合成繊維と親水性繊維との混合繊維からなる不織布が好ましい。極細合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ナイロン、アセテート等の繊維からなる極細繊維又は分割繊維が好ましい。極細合成繊維の繊度は、0.1〜3.3dtex、特に0.1〜1.1dtexであるのが好ましい。ここに、dtexは繊維の単位長さ(10000m)あたりの重量である。この数字が低いほど細い繊維となる。
繊維径で表すと、10μm以下であることが、感触良好で、空気を巻き込み泡立ちが増すことから好ましい。
分割繊維の場合は分割前の繊度が1.1〜4.4dtex、分割数は4〜22であるのが、繊維間距離が狭くなり泡立ちの点で好ましい。
また、親水性繊維としては、セルロース繊維(コットン、パルプ、レーヨン、キュプラ、テンセル、リヨセル等)、アクリル等が挙げられ、特にレーヨンが好ましい。
【0024】
繊維の繊維長としては特に制限されないが、5〜60mmであるのが、密度が増え、泡立ちの点で好ましい。
繊維の形状は特に制限されないが、三角、星型など感触の影響ない範囲で変更できる。
【0025】
極細合成繊維と親水性繊維の混合割合は、極細合成繊維:親水性繊維=20:80(wt/wt)〜80:20(wt/wt)、特に40:60(wt/wt)〜60:40(wt/wt)であることがシートの耐久性と肌への感触を両立できるため好ましい。
不織布の目付け(坪量)は、30〜100g/m2、特に40〜60g/m2であるのが好ましい。
【0026】
また、シートの形状、大きさ等は特に制限されず、円形、正方形、長方形等の形状のものを、目的に応じて選択することができる。
厚みは0.1〜4mm、特に0.2〜3mmであることが、使い勝手及び携帯性の点で好ましい。厚みは3.7g/cm2荷重下で測定された値である。
密度(見かけ比重)は、0.01〜0.3g/cm3、特に0.1〜0.25g/cm3であることが水性洗浄液の含浸性と、使用時に水を加えた際の泡立ちの点から好ましい。
【0027】
本発明の身体洗浄材は、泡立ちを向上させ洗浄性を上げるために、水を加えて泡立てて使用する際に、十分な空気を巻き込むことが好ましい。このためには、織布又は不織布が、次式で表される空隙率が70〜99%、特に85〜99%であるのが好ましい。
【0028】
空隙率(%)=(1−(ρ’/ρ))×100
(式中、ρ:シートの比重、ρ’:シートの見かけ比重)
【0029】
本発明の身体洗浄材においては、不織布の繊維間距離を1〜100μm、特に1〜50μmにすることが、液の含浸性に優れ、より細かい泡を形成する上で好ましい。
繊維間距離は以下の方法で算出される。不織布の厚みをL(cm)、坪量をw(g/m2)、構成繊維iの繊度をDi(dtex)、構成繊維iの重量割合をαi(%)、構成繊維の平均直径をFd(μm)とすると、平均繊維間距離Dpは以下の式で表される。
【0030】
【数1】

【0031】
繊度Diは、示差走査熱量計を用いて個々の繊維の種類を特定し、特定された繊維の密度di(g/cm3)と、構成繊維iの直径Fdi(μm)とから、次式により算出される。
Di=1000000(cm)×断面積(cm2)×比重(g/cm3
=1000000×π(Fdi/2)2 ×di
【0032】
また、不織布は単層に限らず多層でも良い。多層、例えば3層の場合、中間層に潜在捲縮繊維などを用いてクッション層を設け、空気を押し出す設計にすれば、泡立ちが更に増し好ましい。
【0033】
不織布の製法としては特に制限されないが、スパンレース法のほか、湿式スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、レジンボンド法などが、感触の点で好ましい。
また、不織布に繊維の粗密密度勾配を設けたり、エンボス加工等でパターニングを行って、密度の高い部分と低い部分を設けても良い。
【0034】
本発明においては、このような基材に前記水性洗浄液を含浸させる。含浸率は、シート1gに対して1〜3g/g、特に2〜2.5g/gであるのが好ましい。
【0035】
水性洗浄液を含浸させたシート状身体洗浄材は、ウェットタイプの洗浄材として適用され、密封包装して保存されるのが好ましい。
本発明のシート状身体洗浄材は、身体洗浄用、特に洗顔料として好適である。
【0036】
本発明のシート状身体洗浄材は、使用時に水を加えて泡立て、シートを用いて身体をマッサージするようにして洗浄することができる。
【実施例】
【0037】
実施例及び比較例
表1に示す組成のシート状身体洗浄材(水性洗浄液含有量2.3g/g(シート))を製造し、使用時の起泡性、肌への感触、取出し時の泡立ち、粘度を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0038】
(評価方法)
(1)使用時の起泡性、肌への感触、取出し時の泡立ち:
専門パネルにより、各シート状身体洗浄材に適量の水を加えて泡立て、これを用いて顔を洗浄し、水道水ですすぎを行なった。そのときの起泡性、肌への感触及び取出し時の泡立ちを官能評価し、以下の基準で判定した。
(起泡性、肌への感触)
◎:非常に良い。
○:良い。
△:普通。
×:悪い。
【0039】
(取出し時の泡立ち)
◎:なし。
○:ほとんどなし。
△:あり。
×:多い。
【0040】
(2)粘度:
トキメック社製、BM/BL型粘度計を用い、25℃にて測定した。ローターはNo.2を用い、回転速度は60rpmとした。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤10〜30質量%及びエタノール10〜25質量%を含有する水性洗浄液を、織布又は不織布に含浸させたシート状身体洗浄材。
【請求項2】
界面活性剤が、アニオン界面活性剤である請求項1記載のシート状身体洗浄材。
【請求項3】
界面活性剤が、アルキルリン酸エステル塩である請求項1記載のシート状身体洗浄材。
【請求項4】
水性洗浄液中に増泡剤を1〜10質量%含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のシート状身体洗浄材。
【請求項5】
織布又は不織布が、極細合成繊維と親水性繊維との混合繊維からなる不織布である請求項1〜4のいずれか1項記載のシート状身体洗浄材。

【公開番号】特開2006−45097(P2006−45097A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226662(P2004−226662)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】