説明

シート装置

【課題】ウォークインモードとフラットモードとを兼用した機構として、シンプルな構造で部品点数が少なく、設置スペースも小さくなるように工夫したシート装置を提供する。
【解決手段】シートバックのアッパーブラケット23には、カム部23aとストッパー部23bとが設けられている。シートクッションのロアブラケット21には、支軸33で支持される第1リンク34および第2リンク35が設けられている。第2リンク35には、支ピン39で第3リンク40が支持されている。第1リンク34には、第1ケーブル36が接続され、第1スプリング37と、被係止部34aとが設けられている。第2リンク35には、当接部35aが設けられている。第3リンク40には、係止部40aと、第2スプリング42と、連係部31とが設けられ、第2ケーブル41が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のシート装置として、シートバックを前傾させた時にスライダーをアンロックして、シートクッションを前方にスライド可能としたウォークインモードと、シートクッションを前方に跳ね上げた時にスライダーをロックして、シートバックを前倒可能としたフラットモードとを兼用した機構を備えたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
前記のウォークインモードとフラットモードとを兼用した機構は、図8に示すように、ロアアーム2にボルト・ナット7,7a,8で固定されるベースブラケット6、ベースブラケット6にピン16で枢着される第1のリンク17および第2のリンク18と、ベースブラケット6にピン9で枢着されるセンサリンク15と、第2のリンク18の長孔12に挿入されるピン19と、アッパアーム3の当接部5aに当接可能なピン18aと、スプリング11等で構成されている。
【特許文献1】特開2003−182416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベースブラケット6、複数のボルト・ナット7、4本のピン9,16,18a,19、第1のリンク17、第2のリンク18、スプリング11、センサリンク15のように、多数個(本例では10個)の部品を必要としている。
【0005】
したがって、構造が複雑で部品点数も多く、設置スペースも大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、ウォークインモードとフラットモードとを兼用した機構として、シンプルな構造で部品点数が少なく、設置スペースも小さくなるように工夫したシート装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、シートクッションのロアブラケットにシートバックのアッパーブラケットが前後回動自在に連結されていて、前記シートクッションを前後移動自在に支持するスライダーと、前記シートクッションを前後移動位置にロックするシートロック機構とが設けられたシート装置であって、前記アッパーブラケットには、シートバックの前倒方向にカム部とストッパー部とが設けられ、前記ロアブラケットには、支軸で同軸にそれぞれ回動自在に支持される第1リンクおよび第2リンクが設けられ、第2リンクには、支ピンで回動自在に支持される第3リンクが設けられて、第1リンクには、シートロック機構をアンロック操作可能な第1ケーブルが接続されるとともに、アンロック操作方向に回動付勢する第1スプリングと、アンロック操作方向の回動を係止するための被係止部とが設けられ、第2リンクには、シートバックの前倒時に、アッパーブラケットのカム部で第2リンクを回動させながらストッパー部に当接することでシートバックの前倒位置を規制する当接部が設けられ、第3リンクには、第1リンクの被係止部を係止する係止部と、この係止部が第1リンクの被係止部を係止する方向に回動付勢する第2スプリングと、第2リンクと連係する連係部とが設けられるとともに、シートクッションの前方跳ね上げ時に、第1リンクの被係止部の係止を解除可能な第2ケーブルが接続されていることを特徴とするシート装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によリンク、シートバックを前倒させるウォークインモード時には、アッパーブラケットのカム部で当接部を介して第2リンクが回動され、第2リンクに連係する第3リンクの係止部から被係止部を介して第1リンクが第1スプリングの付勢力に抗してアンロック操作方向に回動される。これにより、第1ケーブルを介してシートロック機構がアンロック操作されるようになる。そのため、シートクッションが前方にスライド可能になる。同時に、第2リンクの当接部にアッパーブラケットのストッパー部が当接することで、シートバックの前傾位置が規制されるようになる。
【0009】
一方、シートクッションを前方に跳ね上げるフラットモード時には、第2ケーブルで第3リンクが第2スプリングの付勢力に抗して回動されると同時に、連係部を介して第2リンクが回動される。これにより、第3リンクによる第1リンクの係止が解除され、第1スプリングの付勢力で第1ケーブルを介してシートロック機構がロック操作されるようになる。同時に、第2リンクの当接部がアッパーブラケットのストッパー部に当接しないように退避することで、シートバックが前倒可能になる。
【0010】
このように、ウォークインモードとフラットモードとを兼用した機構として、第1リンク、第2リンク、第3リンク、第1スプリング、第2スプリング、支軸、支ピンの7部品となるから、シンプルな構造で部品点数が少なくなる。
【0011】
また、第1〜第3リンク等の各部品は、支軸に対して組み立てられるから、設置スペースが小さくすみ、組み立ても容易になる。
【0012】
さらに、第1〜第3リンクは、基本的には曲げ加工の必要はなく、打ち抜き加工だけで良いから、部品コストが安価になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1(a)に示すように、車両のシート装置は、シートクッション用フレーム20のロアブラケット21にシートバック用フレーム22のアッパーブラケット23がリクライニング軸24で前後回動自在(矢印a参照)に連結されている。
【0015】
シートクッション用フレーム20の前部には、シートクッションを取付けるクッションフレーム25がヒンジ軸26で、図1(a)の着座位置と図6(a)の前方跳ね上げ位置とに回動自在に連結されている。
【0016】
車体のフロアには、シートクッション用フレーム20を前後移動自在(矢印b参照)に支持するスライダー27が設けられ、このスライダー27には、シートクッション用フレーム20を前後移動位置にロックするシートロック機構28が設けられている。
【0017】
このシートロック機構28は、図1(b)に示すように、スライダー27のロアレール側に形成されたロック突起27aに、スプリング(不図示)で上方に付勢されたアッパーレール側のロックプレート29aのロック溝が係合することでロックされる。そして、連係部材30を左回動cさせたときに、これに連係するロック補助部材29が右回動dすることで、スプリング(不図示)の付勢力に抗して下動されるロックプレート29aのロック溝がロック突起27aから外れることでアンロックされる。
【0018】
図2および図3に詳細に示すように、アッパーブラケット23の下部の外周縁には、シートバックの前倒方向にカム部23aとストッパー部23bとが順次に一体的に設けられている。なお、カム部とストッパー部とを形成した別部材をアッパーブラケット23に固定しても良い。
【0019】
ロアブラケット21の軸部21aには支軸33が嵌合固定され、この支軸33には、第1リンク34と第2リンク35とが同軸でそれぞれ回動可能に支持されている。
【0020】
第1リンク34には、シートロック機構28のロック補助部材29に連係する連係部材30をロック・アンロック方向に押し引き操作可能な第1ケーブル36が接続されている。
【0021】
第1リンク34は、一端37aがロアブラケット21の穴21bに係止され、他端37bが第1リンク34に係止される第1ワイヤースプリング37により、第1ケーブル36をアンロック方向に押し操作する右回動e方向に付勢されている。第1リンク34は、右回動e方向に付勢された状態で、角パイプ50に当接することで回動位置が規制される。
【0022】
第1リンク34には、第1ケーブル36をアンロック方向に押し操作するのを係止するための被係止部34aが設けられている。
【0023】
第2リンク35には、シートバックの前倒時に、アッパーブラケット23のカム部23aで回動されながらストッパー部23bに当接することで、シートバックの前倒位置を規制する当接部35aが設けられている。
【0024】
第2リンク35には、支ピン39で回動自在に支持される第3リンク40が設けられ、第3リンク40には、クッションフレーム25を前方に跳ね上げた時に引き操作される第2ケーブル41が接続されている。
【0025】
第3リンク40には、第1リンク34の被係止部34aを係止する係止部40aが設けられている。
【0026】
第3リンク40は、一端42aが第1リンク34に係止され、他端42bが第3リンク40の係止される第2ワイヤースプリング42により、係止部40aが第1リンク34の被係止部34aを係止する右回動f方向に付勢されている。
【0027】
第3リンク40と第2リンク35とは、第3リンク40のダボ部40bが第2リンク35の長孔35bに係合することで連係するようになる。この長孔35bとダボ部40bは連係部31を構成する。
【0028】
前記のようにシート装置を構成すれば、リンク、シートバック用フレーム(シートバック)22を前倒させるウォークインモード時には、図4および図5に示したように、アッパーブラケット23は、矢印g方向に回動する。
【0029】
この時、アッパーブラケット23のカム部23aで当接部35aを介して第2リンク35が左回動hされ、第2リンク35に長孔35bとダボ部40bで連係する第3リンク40の係止部40aから被係止部34aを介して第1リンク34が第1ワイヤースプリング37の付勢力に抗してアンロック操作方向に左回動iされる。
【0030】
これにより、第1ケーブル36が矢印j方向に引かれるので、図1(b)のように、シートロック機構28の連係部材30が左回動cされ、これに連係するロック補助部材29が右回動dして、ロックプレート29aのロック溝がロック突起27aから外れることで、シートロック機構28がアンロック操作されるようになる。
【0031】
そのため、シートクッション用フレーム(シートクッション)20が前方にスライド可能になると同時に、図5のように、第2リンク35の当接部35aにアッパーブラケット23のストッパー部23bが当接することで、図4(a)のように、シートバック用フレーム(シートバック)22の前傾位置が規制されるようになる。
【0032】
一方、シートクッション用フレーム(シートクッション)20を前方に跳ね上げるフラットモード時には、図6および図7に示したように、第2ケーブル41が矢印k方向に引かれるので、第3リンク40が第2ワイヤースプリング42の付勢力に抗して左回動mされると同時に、連係部31を介して第2リンク35が左回動nされる。
【0033】
これにより、第3リンク40の係止部40aによる第1リンク34の被係止部34aの係止が解除されるから、第1リンク34が第1ワイヤースプリング37の付勢力で右回動eして、第1ケーブル36が矢印p方向(アンロック方向)に押されるようになる。
【0034】
これにより、シートロック機構28の連係部材30が右回動qされ、これに連係するロック補助部材29が左回動して、ロックプレート29aのロック溝がロック突起27aに係合することで、シートロック機構28がロック操作されるようになる。
【0035】
同時に、第2リンク35の当接部35aがアッパーブラケット23のストッパー部23bに当接しないように退避することで、シートバック用フレーム(シートバック)22が前倒可能になる。
【0036】
このように、ウォークインモードとフラットモードとを兼用した機構として、第1リンク34、第2リンク35、第3リンク40、第1ワイヤースプリング37、第2ワイヤースプリング42、支軸33、支ピン39の7部品となるから、シンプルな構造で部品点数が少なくなる。
【0037】
また、第1〜第3リンク34等の各部品は、支軸33に対して組み立てられるから、設置スペースが小さくすみ、組み立ても容易になる。
【0038】
さらに、第1〜第3リンク34,35,40は、基本的には曲げ加工の必要はなく、打ち抜き加工だけで良いから、部品コストが安価になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態のシート装置であり、(a)は、シートバックが起立位置の側面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図2】図1(b)の要部拡大図である。
【図3】図2の機構部分の分解斜視図である。
【図4】ウォークインモード時のシート装置であり、(a)は側面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図5】図4(b)の要部拡大図である。
【図6】フラットモード時のシート装置であり、(a)は側面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図7】図6(b)の要部拡大図である。
【図8】従来のシート装置の機構部分の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
20 シートクッション用フレーム(シートクッション)
21 ロアブラケット
22 シートバック用フレーム(シートバック)
23 アッパーブラケット
23a カム部
23b ストッパー部
24 リクライニング軸
25 クッションフレーム(シートクッション)
27 スライダー
28 シートロック機構
31 連係部
33 支軸
34 第1リンク
34a 被係止部
35 第2リンク
36 第1ケーブル
37 第1ワイヤースプリング
39 支ピン
40 第3リンク
40a 係止部
41 第2ケーブル
42 第2ワイヤースプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションのロアブラケットにシートバックのアッパーブラケットが前後回動自在に連結されていて、前記シートクッションを前後移動自在に支持するスライダーと、前記シートクッションを前後移動位置にロックするシートロック機構とが設けられたシート装置であって、
前記アッパーブラケットには、シートバックの前倒方向にカム部とストッパー部とが設けられ、
前記ロアブラケットには、支軸で同軸にそれぞれ回動自在に支持される第1リンクおよび第2リンクが設けられ、第2リンクには、支ピンで回動自在に支持される第3リンクが設けられて、
第1リンクには、シートロック機構をアンロック操作可能な第1ケーブルが接続されるとともに、アンロック操作方向に回動付勢する第1スプリングと、アンロック操作方向の回動を係止するための被係止部とが設けられ、
第2リンクには、シートバックの前倒時に、アッパーブラケットのカム部で第2リンクを回動させながらストッパー部に当接することでシートバックの前倒位置を規制する当接部が設けられ、
第3リンクには、第1リンクの被係止部を係止する係止部と、この係止部が第1リンクの被係止部を係止する方向に回動付勢する第2スプリングと、第2リンクと連係する連係部とが設けられるとともに、シートクッションの前方跳ね上げ時に、第1リンクの被係止部の係止を解除可能な第2ケーブルが接続されていることを特徴とするシート装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−132069(P2010−132069A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308336(P2008−308336)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000109738)デルタ工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】