説明

シーリング・ポンプアップ装置

【課題】液剤容器に付加される荷重を低減することができるシーリング・ポンプアップ装置を得る。
【解決手段】シーリング剤32をタイヤ内に供給した後に、コンプレッサユニットが加圧空気を流路切替機構20の加圧空気口48から流路切替機構20の内部へ供給する。さらに、流路切替機構20の内部に供給された加圧空気は、流出口52から流出し、ホース部材54を通ってタイヤ内に供給される。ここで、流路切替機構20の流入口38には、流体の流入だけを許可する逆止弁38が設けられているため、加圧空気が液剤容器18の内部に流入するのが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクした空気入りタイヤをシールするためのシーリング剤を空気入りタイヤ内へ注入した後、空気入りタイヤ内に加圧空気を供給して空気入りタイヤの内圧を昇圧させるシーリング・ポンプアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空気入りタイヤがパンクした際に、タイヤ及びホイールを交換することなく、タイヤをシーリング剤により補修して規定圧までタイヤ内圧をポンプアップするシーリング・ポンプアップ装置が記載されている。
【0003】
このシーリング・ポンプアップ装置によると、シーリング剤を収容した液剤容器の内部へ空気供給手段によって加圧空気が供給される。そして、この加圧空気によってシーリング剤が液剤容器から押し出され、ホース部材を通してタイヤ内に送り込まれるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−118779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液剤容器の内部に加圧空気が供給される。液剤容器が加圧空気(荷重)によって破損するのを防止するため、液剤容器の剛性を確保しなければならなかった。このため液剤容器が高価な部品となっていた。
本発明は、上記事実を考慮し、液剤容器に付加される荷重を低減することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るシーリング・ポンプアップ装置は、加圧空気を供給する空気供給手段と、前記空気供給手段から供給される加圧空気の流入だけを許可する第1制御部材が設けられた加圧空気流入部と、流体の流入だけを許可する第2制御部材が設けられた流入部と、流体が流出可能な流出口と、を備える流路切替機構と、シーリング剤が内部に収容されると共に、前記流路切替機構に備えられた前記流入部に接続される吐出口を備え、圧縮されると前記吐出口からシーリング剤が吐出される液剤容器と、前記流路切替機構に備えられる流出口に基端部が接続されると共に、先端部がバルブアダプタを通して空気入りタイヤのタイヤバルブに接続されるホース部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、シーリング剤が内部に収容される液剤容器を圧縮すると、シーリング剤が吐出口を通って流路切替機構の流入部から流路切替機構の内部に供給される。ここで、流入部には第2制御部材が設けられている。第2制御部材は、流体の流入だけを許可する構成となっているため、シーリング剤が流入部を通過することができる。
【0008】
また、流路切替機構の内部に供給されたシーリング剤は、流路切替機構に設けられた流出口から流出し、ホース部材を通ってバルブアダプタ及びタイヤバルブを介してタイヤ内に供給される。ここで、流路切替機構に設けられた加圧空気流入部には、加圧空気の流入だけを許可する第1制御部材が設けられているため、シーリング剤は流出口からだけ流出する。
【0009】
そして、空気供給手段が加圧空気を流路切替機構の加圧空気流入部から流路切替機構の内部へ供給する。さらに、流路切替機構の内部に供給された加圧空気は、流路切替機構に設けられた流出口から流出し、ホース部材を通ってバルブアダプタ及びタイヤバルブを介してタイヤ内に供給される。ここで、流路切替機構の流入部には、流体の流入だけを許可する第2制御部が設けられているため、加圧空気が液剤容器の内部に流入するのが抑制される。
【0010】
これにより、シーリング剤によりパンクした空気入りタイヤが補修され、タイヤの内圧が昇圧されることで、一定速度以下(例えば、80Km/h以下)での走行が可能になる。
【0011】
このように、液剤容器の吐出口が接続される流路切替機構の流入部に第2制御部材を設けることで、流路切替機構から液剤容器内への流体の流れが抑制される。つまり、空気供給手段によって供給された加圧空気が液剤容器内に流入するのが抑制されるため、液剤容器に付加される荷重を低減することができる。
【0012】
本発明の請求項2に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1に記載において、前記第1制御部材は、前記流路切替機構へ前記加圧空気の流入だけを許可する第1逆止弁又は第1開閉バルブ部材であることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、加圧空気流入部に設けられた第1逆止弁又は第1開閉バルブ部材が、流路切替機構へ加圧空気の流入だけを許可する。このため、シーリング剤が空気供給手段に浸入することはない。
これにより、シーリング剤を流路切替機構に設けられた流出口から流出させ、ホース部材を通してタイヤ内に供給することができる。
【0014】
本発明の請求項3に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1又は2に記載において、前記第2制御部材は、流体の流入だけを許可する第2逆止弁又は第2開閉バルブ部材であることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、流入部に設けられた第2逆止弁又は第2開閉バルブ部材が、流路切替機構へ流体の流入だけを許可する。このため、加圧空気が液剤容器内に浸入することはない。
これにより、液剤容器に付加される荷重を低減することができる。
【0016】
本発明の請求項4に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1〜3何れか1項に記載において、前記液剤容器は、弾性部材により蛇腹状に成形されることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、液剤容器は、弾性部材により蛇腹状に成形されている。つまり、液剤容器を圧縮することで蛇腹状の蛇腹部が縮んで液剤容器の吐出口からシーリング剤が吐出する。
このように、液剤容器を弾性部材により蛇腹状に成形することで、吐出口から容易にシーリング剤を吐出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液剤容器に付加される荷重を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置10について図1から図5に従って説明する。
【0020】
(全体構成)
図5には、本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置10が示されている。シーリング・ポンプアップ装置10は、自動車等の車両に装着された空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という。)がパンクした際、そのタイヤ及びホイールを交換することなく、タイヤをシーリング剤32(図1参照)により補修して所定の基準圧まで内圧を再加圧(ポンプアップ)するものである。
【0021】
このシーリング・ポンプアップ装置10は、空気供給手段としてのコンプレッサユニット12を備えており、このコンプレッサユニット12には、その内部にモータ、エアポンプ、電源回路等が配設されると共に、電源回路からユニット外部へ延出する電源ケーブル(図示省略)が設けられている。この電源ケーブルの先端部に設けられたプラグを、例えば、車両に設置されたシガレットライターのソケットに差込むことにより、車両に搭載されたバッテリにより電源回路を通してモータ等へ電源が供給可能になる。
【0022】
そして、コンプレッサユニット12は、そのエアポンプにより修理すべきタイヤ14の種類毎に規定された基準圧よりも高圧(例えば、300kPa以上)の加圧空気を発生可能とされている。
【0023】
シーリング・ポンプアップ装置10には、シーリング剤32(図1参照)を収容した液剤容器18、及びこの液剤容器18に設けられたシーリング剤32が吐出する吐出口26がナット34で連結される矩形状の流路切替機構20が設けられている。
【0024】
図1に示されるように、吐出口26は、それよりも上側の容器本体部分よりも径が細く形成されている。また、吐出口26の開口部分(下端)には、シーリング剤32を液剤容器18内に密封するためのアルミシール30が配設されている。
【0025】
ここで、液剤容器18はガス遮断性を有する各種の弾性樹脂材料を材料とし、側面が蛇腹状に成形され上下方向(図1に示す上下方向)に伸縮するようになっている。また、液剤容器18内には、シーリング・ポンプアップ装置10により修理すべきタイヤ14(図5参照)の種類、サイズ等に応じた規定量(例えば、200g〜400g)よりも若干多めのシーリング剤32が充填されている。
【0026】
なお、本実施形態の液剤容器18においては、図1に示されるように、空間を設けることなくシーリング剤32が液剤容器18内に隙間無く充填されているが、シーリング剤32の酸化、窒化等による変質を防止するため、出荷時にAr等の不活性ガスをシーリング剤32と共に液剤容器18内へ若干量封入するようにしても良い。
【0027】
また、液剤容器18を流路切替機構20の上側に吐出口26を下方へ向けて直立した状態にすると、液剤容器18内のシーリング剤32が自重により、液剤容器18のアルミシール30に押し付けられる状態となる。
【0028】
(要部構成)
流路切替機構20の上面20Aに設けられ、液剤容器18の吐出口26がナット34で接続される流入部としての流入口36には、流路切替機構20への流体の流入だけを許可する逆止弁38が設けられている。また、逆止弁38の下方には、逆止弁38と連通する共通流路40が設けられている。
【0029】
この構成により、図2に示されるように、液剤容器18の上面18Aを下方へ押圧すると、側面に形成された蛇腹部18Bが縮み、内部に収容されていたシーリング剤32がアルミシール30を破り、シーリング剤32が流入口36に向けて流出する。さらに、シーリング剤32は、逆止弁38を通って共通流路40へ至るようになっている。
【0030】
一方、図1に示されるように、流路切替機構20の一側面20Bには、コンプレッサユニット12(図5参照)から延出する耐圧ホース44がジョイントカプラ46を介して接続される加圧空気流入部としての加圧空気口48が設けられている。さらに、この加圧空気口48には、共通流路40への加圧空気の流入だけを許可する逆止弁50が設けられている。
【0031】
さらに、流路切替機構20の一側面20Bと反対側の他側面20Cには、共通流路40からの流体の流出を可能とする流出口52が設けられており、この流出口52には、ジョイントホース54の基端部が接続されている。なお、ジョイントホース54の先端部には、タイヤ14のタイヤバルブ16に着脱可能に接続されるバルブアダプタ56(図5参照)が設けられている。
【0032】
(作用・効果)
【0033】
次に、本実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置10を用いてパンクしたタイヤ14を修理する作業手順を説明する。
【0034】
図4、図5に示されるように、タイヤ14にパンクが発生した際には、先ず、作業者は液剤容器18を流路切替機構20の流入口36へナット34で接続する。次いで、ジョイントホース54の先端に設けられたバルブアダプタ56をタイヤ14のタイヤバルブ16にねじ止めし、ジョイントホース54を通して共通流路40(図1参照)をタイヤ14内へ連通させる。
【0035】
そして、作業者は、図2に示されるように、液剤容器18の上面18Aを下方へ向けて押圧する。これにより、液剤容器18の蛇腹部18Bが縮み、内部に収納されていたシーリング剤32がアルミシール30を破り、シーリング剤32が流入口36に向けて流出する。さらに、シーリング剤32は、逆止弁38を通って共通流路40へ至る。
【0036】
共通流路40に至ったシーリング剤32は、流出口52から流出し、ジョイントホース54を通ってバルブアダプタ56及びタイヤバルブ16を介して空気入りタイヤ14内へ供給される。
【0037】
ここで、従来、タイヤバルブ16には、タイヤ14内の空気をタイヤバルブ16から流出しないように、コア部材(図示省略)が設けられている。しかし、シーリング剤32の圧力によりコア部材が押圧され、タイヤバルブ16が開放状態となるため、コア部材を取り除くことなく、シーリング剤32をタイヤ内に供給することができる。
【0038】
また、流出口52と対向するように設けられた加圧空気口48には、逆止弁50が設けられているため、シーリング剤32がコンプレッサユニット12(図5参照)へ浸入することはない。
【0039】
さらに、図3に示されるように、液剤容器18を押し切り、シーリング剤32をタイヤ14へ供給した後、作業者は、コンプレッサユニット12のスイッチ60(図5参照)を入れて、加圧空気を発生させる。図3に示す矢印のように、加圧空気は、耐圧ホース44を介し、加圧空気口48から流路切替機構20内に流入し、逆止弁50を通って共通流路40に至る。共通流路40に至った加圧空気は、流出口52から流出し、ジョイントホース54を通ってバルブアダプタ56及びタイヤバルブ16を介して空気入りタイヤ14内へ供給される。ここで、流路切替機構20の流入口36には、流体の流入だけを許可する逆止弁38が設けられているため、加圧空気が液剤容器18の内部に流入するのが抑制される。
【0040】
次に、図5に示されるように、作業者は、コンプレッサユニット12に設けられた圧力計62によりタイヤ14の内圧が指定圧になったことを確認したならば、スイッチ60をオフにしてコンプレッサユニット12を停止し、バルブアダプタ56をタイヤバルブ16から取り外す。
【0041】
作業者は、タイヤ14の膨張完了後一定時間内に、シーリング剤32が注入されたタイヤ14を用いて一定距離(例えば、10km)に亘って予備走行する。これにより、タイヤ14内部にシーリング剤32が均一に拡散し、シーリング剤32がパンク穴に充填されてパンク穴が閉塞される。
【0042】
予備走行完了後に、作業者は、ジョイントホース54のバルブアダプタ56をタイヤ14のタイヤバルブ16に再度接続し、圧力計62によりタイヤ14の内圧を再測定し、規定の圧力に満たない場合にはコンプレッサユニット12を再作動させてタイヤ14を規定の内圧まで加圧する。これにより、タイヤ14のパンク修理が完了し、このタイヤ14を用いて一定の距離範囲内で一定速度以下(例えば、80Km/h以下)での走行が可能になる。
【0043】
このように、流入口36に設けられた逆止弁38によって、コンプレッサユニット12によって発生した加圧空気が液剤容器18の内部に流入するのが抑制される。これにより、液剤容器18に付加される荷重を低減することができる。
【0044】
また、液剤容器18に付加される荷重を低減させることで、液剤容器18の肉厚を薄くすることができ、さらに、薄くすることで省スペース化・軽量化が可能となる。
また、液剤容器18に付加される荷重を低減させることで、液剤容器18の材料として安価な材料を選定することができる。
【0045】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、流入口36及び加圧空気口48に逆止弁38、50を設けて、流体の逆流を防いだが、これに替えて、開閉可能な開閉バルブ部材を設けてもよい。
【0046】
この場合には、共通流路への流入を許可する時は開閉バルブ部材を開放し、それ以外の時は開閉バルブ部材を閉止することでシーリング剤及び加圧空気をタイヤ内へ供給することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、逆止弁38、共通流路40及び逆止弁50を一体的に設けたが、これに替えて別体としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置に設けられた液剤容器及び流路切替機構等を示した断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置に設けられた液剤容器及び流路切替機構等を示した断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置に設けられた液剤容器及び流路切替機構等を示した断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置に設けられた液剤容器及び流路切替機構等を示した斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置を示した概略構成図である。
【符号の説明】
【0049】
10 シーリング・ポンプアップ装置
12 コンプレッサユニット(空気供給手段)
14 タイヤ
16 タイヤバルブ
18 液剤容器
20 流路切替機構
26 吐出口
32 シーリング剤
36 流入口(流入部)
38 逆止弁(第2逆止弁)
48 加圧空気口(加圧空気流入部)
50 逆止弁(第1逆止弁)
52 流出口
54 ジョイントホース(ホース部材)
56 バルブアダプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧空気を供給する空気供給手段と、
前記空気供給手段から供給される加圧空気の流入だけを許可する第1制御部材が設けられた加圧空気流入部と、流体の流入だけを許可する第2制御部材が設けられた流入部と、流体が流出可能な流出口と、を備える流路切替機構と、
シーリング剤が内部に収容されると共に、前記流路切替機構に備えられた前記流入部に接続される吐出口を備え、圧縮されると前記吐出口からシーリング剤が吐出される液剤容器と、
前記流路切替機構に備えられる流出口に基端部が接続されると共に、先端部がバルブアダプタを通して空気入りタイヤのタイヤバルブに接続されるホース部材と、
を備えることを特徴とするシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項2】
前記第1制御部材は、前記流路切替機構へ前記加圧空気の流入だけを許可する第1逆止弁又は第1開閉バルブ部材であることを特徴とする請求項1に記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項3】
前記第2制御部材は、流体の流入だけを許可する第2逆止弁又は第2開閉バルブ部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項4】
前記液剤容器は、弾性部材により蛇腹状に成形されることを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載のシーリング・ポンプアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−208343(P2009−208343A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53431(P2008−53431)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】