説明

シールドコネクタ

【課題】機器側シールドコネクタの製造コストを低減する。
【解決手段】ハウジング21の外周面には、機器ケース11の取付孔13の孔縁部13Aに対向するフランジ27が形成される。ハウジング21に形成された挿入溝35にはシールドシェル60が後方から挿入され、同シールドシェル60の後縁には、一対の接続部70が横開きされて形成され、フランジ27の裏面に配される。接続部70には弾性接触片72が形成される。接続部70の配設位置の回りにはシールリング75が装着される。フランジ27がボルト28によって機器ケース11に固定されると、弾性接触片72が取付孔13の孔縁部13Aに弾性的に押し付けられることで、シールドシェル60が機器ケース11に対してアースされ、またシールリング75が弾縮されて押し付けられることで、取付孔13の回りがシールされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器側のシールドコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
機器側のシールドコネクタの一例として、図22及び図23に記載されたものが知られている。このものは、機器に装備されたプリント基板と接続される雄端子1が装着されたハウジング2を有し、同ハウジング2の後端側の外周面には長方形状のフランジ2Aが形成され、その四隅に金属カラー3Aが嵌着されたボルト4の挿通孔3が開口されている。一方、ハウジング2内には、雄端子1の先端側の回りを囲むようにして、シールドシェル5がインサート成形により埋設され、同シールドシェル5の後端縁から径方向に延出形成された脚部6の先端側の目玉部6Aが、フランジ2Aの表面に形成された溝7に嵌められつつ一の金属カラー3Aの端面に重ねられている。なお、フランジ2Aの裏面にはシールリング8が嵌着されている。
【0003】
そして、図23に示すように、上記のハウジング2におけるフランジ2Aから突出した後端部2Bが、金属製の機器ケース9に開口された取付孔9Aに嵌められ、各挿通孔3に通したボルト4を機器ケース9に切られたねじ孔にねじ込むことで、ハウジング2が機器ケース9に固定され、シールリング8により取付孔9Aの回りがシールされる一方、シールドシェル5が、脚部6、金属カラー3Aを介して機器ケース9にアースされるようになっている。
なお、この種の機器側シールドコネクタは、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2005−19188公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに上記構造のシールドコネクタでは、より確実な防水を期するために、シールドシェル5の脚部6がハウジング2の外部に突出した部分を、エポキシ樹脂等のポッティング材で封止する必要があり、面倒な作業を伴うことで製造コストが高く付く不具合があった。また、シールドシェル5がインサート成形によって装着される構造であるため、これもコスト高につながり、さらなる改良が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、製造コストを低減するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、機器に装着され相手のシールドコネクタが嵌合される機器側のシールドコネクタであって、機器と接続される端子金具を装着したハウジングを有し、このハウジングは、後端側が金属製の機器ケースに開口された取付孔に嵌合可能で、かつ外周面には前記取付孔の表面側の孔縁部に対向したフランジが突設され、このフランジが前記機器ケースに締結具で固定可能となっており、前記ハウジングには、前記端子金具の回りを囲むシールドシェルが同ハウジングに形成された挿入溝内に後方から挿入可能とされ、このシールドシェルの後端側に、前記フランジの裏面側に沿って配される接続部が曲げ形成されているとともに、前記フランジの裏面における前記接続部の配設領域の外側には、シールリングが嵌る装着溝が形成され、前記ハウジングのフランジを前記機器ケースに締結することに伴い、前記シールドシェルの接続部並びに前記シールリングが、前記機器ケースにおける前記取付孔の表面側の孔縁部に対して押し付けられるようになっている構成としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記シールドシェルの接続部には、前記取付孔の表面側の孔縁部に弾性的に接触可能な弾性接触片が形成されているところに特徴を有する。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記シールドシェルの接続部は、複数枚が角度間隔を開けて設けられているところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記接続部は、前記シールドシェルの後端部の周面における周方向の所定幅部分を外側に切り起こすことで形成され、残った周面は後方に延出して前記取付孔内に進入可能となっているところに特徴を有する。
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記シールドシェルの周面には、前記挿入溝内に設けられた係止部に弾性的に係止して抜け止めするランスが設けられるとともに、前記ハウジングには、前記ランスを強制的に弾性変位させて係止を解除する治具の挿通溝が前記係止部から前方に開口して形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
ハウジングの後端部を機器ケースの取付孔に嵌めた後、ハウジングのフランジを機器ケースに対して締結すると、フランジの裏面に配されたシールドシェルの接続部と、シールリングとが、機器ケースにおける取付孔の表面側の孔縁部に対して押し付けられる。これにより、取付孔の回りがシールされるとともに、シールドシェルが接続部を介して機器ケースに対してアースされる。
シールドシェルにおけるハウジングの外部に突出した部分が、シールリングの内側に配されているから、同部分をポッティング材で封止する作業が不要にでき、また、シールドシェルがインサート成形によらず圧入等で装着でき、もって製造コストの低減を図ることができる。シールドシェルの接続部は、言わば横開きされて取付孔の表面側の孔縁部に押し付けられるのであるから、接触圧を大きく取ることが可能であり、高い接続の信頼性を得ることができる。
【0009】
<請求項2の発明>
接続部に形成された弾性接触片が取付孔の表面側の孔縁部に弾性的に押し付けられることで、接続の信頼性がさらに高められる。
<請求項3の発明>
接続部が複数箇所において取付孔の表面側の孔縁部に押し付けられるから、これも接続の信頼性を高めることに有効となる。
【0010】
<請求項4の発明>
シールドシェルの残った周面により、シールド機能をさらに高めることができる。
<請求項5の発明>
挿通溝から治具を挿通してランスを強制的に弾性変形させると係止が解除されるから、引き続いてシールドシェルを後方に引っ張ることでハウジングから抜き取ることができる。コネクタの廃棄時等に、合成樹脂製のハウジングと、金属製のシールドシェルとを分別する場合等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図15によって説明する。
本実施形態のシールドコネクタは、機器に装着される機器用のシールドコネクタであって、機器としては、自動車用エアコンディショナにおけるインバータ型圧縮機の制御ユニットが例示される。
同機器10は、図14に示すように、シールド機能を有するアルミダイキャスト等の金属製の機器ケース11内に、機器本体(図示せず)を収容したものであって、同機器ケース11の所定の側面(取付面12)には、当該機器側シールドコネクタ20を取り付けるための取付孔13が開口されている。この取付孔13は、やや横長の長方形断面で、四隅には丸みが付けられている。
【0012】
機器側シールドコネクタ20は、機器ケース11の取付面12に装着されたのち、後記するように電線側シールドコネクタ80と嵌合接続されるようになっている。
機器側シールドコネクタ20は、プリント基板(図示せず)に接続されるPCBコネクタで、かつ防水型でもあり、図1に示すように、ハウジング21、機器側の雄端子50(図8参照)、シールドシェル60及びシールリング75から構成されている。
【0013】
ハウジング21は合成樹脂製であって、図1ないし図4に示すように、上記した機器ケース11の取付孔13よりも一回り小さい横長のほぼ長方形断面で、前後方向に長い角筒状をなす本体部22を有し、同本体部22内における前後方向の中央部から少し後方に寄った位置には、比較的厚肉の装着壁23が形成されている。
この本体部22における装着壁23よりも前の前端部22Aと、その前方の所定域(前端部22Aとほぼ同長)の回りを覆うようにして、前面に開口したフード部25が形成されている。フード部25は本体部22よりも一回り大きく形成され、同フード部25内に、相手の電線側シールドコネクタ80が嵌合可能とされている。
【0014】
本体部22の外周面における上記したフード部25の後端に相当する位置には、同ハウジング21を機器ケース11に取り付けるためのフランジ27が形成されてる。言い換えると、本体部22における装着壁23よりも後の後端部22Bが、フランジ27の後面から所定寸法突出している。フランジ27は、横長の長方形でかつ四つ角に丸みが付けられた厚肉の板状に形成されており、その四隅には、ボルト28の挿通孔29が形成されている。
【0015】
ハウジング21の本体部22には、図示2本のタブ状をなす雄端子50が装着されるようになっている。この雄端子50は、図8及び図10に示すように、導電性に優れた金属板をプレス加工することで形成され、初めは真直に延びた形状に形成され、先端側の短寸の所定領域51が、残りの領域52に比べてやや幅広に形成されている。また、幅広の先端部51と残りの部分52とは、後方に向けて次第に幅狭となった傾斜部53を介して接続されているとともに、先端部51における両側縁の途中位置には、張り出し部54が形成されている。
【0016】
一方、本体部22側では、前端部22Bの内部が仕切壁31によって左右に仕切られている。装着壁23には、上記した雄端子50が圧入される左右2本の圧入孔32が形成されている。圧入孔32は、装着壁23を前後に貫通して形成され、雄端子50が板厚方向に緊密に嵌合される縦幅を有している。また、圧入孔32は、雄端子50の先端部(幅広側)の幅よりも若干狭い横幅を有するとともに、同圧入孔32の先端部が段差状に拡幅されることで、雄端子50の張り出し部54が突き当たるストッパ33が形成されている。
したがって雄端子50は、その後端部が対応する圧入孔32に前方から挿入され、挿入の終盤になると、傾斜部53から先端部51の根元側が、圧入孔32の左右の側壁に食い込みつつ圧入され、張り出し部54がストッパ33に当たったところで押し込みが停止されるようになっている。
【0017】
ハウジング21には、両雄端子50の回りを囲うようにしてシールドシェル60が装着されるようになっている。そのため、フード部25の後面壁25Aには、上記した本体部22の回りの位置において、シールドシェル60の挿入溝35が形成されている。この挿入溝35は、本体部22よりも一回り大きい横長の長方形断面に形成され、その四つ角には丸みが付けられてる。挿入溝35における上下の溝のそれぞれの左右両端位置には、前後方向を向いたリブ36が形成され、各リブ36が本体部22の外面と接続されている。各リブ36における後端面には、その径方向の内側の領域において、所定寸法前方に切り込まれたストッパ溝37が形成されている。
また、フード部25の上下の内面には、それぞれ左右一対の規制リブ39が形成されている。規制リブ39は、フード部25の後面壁25Aから本体部22の手前に所定寸法突出した位置まで前方に延出して形成され、各規制リブ39の径方向内方への突出端は、挿入溝35における上下の溝の外面側に対応する位置まで達している。
【0018】
シールドシェル60は、黄銅、耐熱銅合金等からなる金属板をプレス加工することによって、図5に示すような展開形状に形成される。この平板状の展開母材61における一方の短辺には、幅方向のほぼ中央部において、一枚の重畳片62が段差状に外方に突出して形成されているとともに、他方の短辺には、上記の重畳片62を挟む両側に対応する位置に、一対の重畳片62が同じく段差状に外方に突出して形成されている。
そして、同展開母材61は、両短辺を互いに突き合わせるように回曲されて、各短辺のそれぞれの重畳片62に対して、反対側の縁辺を潜らせることで結合され、これによりシールドシェル60は全体として、図6及び図7にも示すように、上記した挿入溝35と整合する横長の長方形断面をなす角筒状に形成されている。また、シールドシェル60の全長は、ハウジング21の本体部22における後端から、その前端よりもさらに前方に所定量突出するだけの寸法を有している。
【0019】
シールドシェル60における上下の面には、その左右両端部の位置において、上記したハウジング21側のリブ36に嵌るガイド溝64が形成されている。ガイド溝64は、前縁から、後縁よりも所定寸法前方に留まった位置に向けて切り込み形成されている。ガイド溝64の前縁部は、誘い込み用に拡幅されている。また、シールドシェル60における左右の面の前縁と、上下の面における両ガイド溝64の間の位置の前縁には、外方に折り重ねられた二枚重ね部65が形成されている。
【0020】
シールドシェル60の上面には、前方から見た右側のガイド溝64の奥側から少し左方に逃げた位置において、ランス67が形成されている。このランス67は、後方の斜め下方を向いた姿勢に切り起こし形成されている。
これに対してハウジング21側では、本体部22の上面における対応位置に、ランス67の係止溝40が形成されている。この係止溝40は、図8に示すように、装着壁23における前後方向の中央よりも少し後方に寄った位置から、本体部22の前端面に開口して形成されている。この係止溝40の奥面が、ランス67に係止する係止面41になっている。また、係止溝40は、本体部22の前端面に開口していることで、ランス67を強制的に撓み変形させるべく治具が挿通可能であって、治具の挿通溝ともなっている。
【0021】
シールドシェル60における左右の面の後縁には、一対の接続部70が設けられている。この接続部70は、展開母材61(図5)における後側の長辺領域において、2本のスリット71が入れられることでその間に形成されている。スリット71は、ガイド溝64のほぼ奥端と対応する位置まで切り込まれている。そして、各接続部70は、図7に示すように、その根元部から外方に向けて直角曲げされ、いわゆる横開きされた状態となっている。各接続部70は、シールドシェル60の高さ寸法よりも少し小さい縦寸法を有するやや縦長の長方形となっている。
各接続部70には、上下一対ずつ弾性接触片72が形成されている。各弾性接触片72は、それぞれ互いに離反する方向を向いた舌片状に切り出し形成され、先端側が前後方向に撓み変形可能となっており、同弾性接触片72の先端部の後面側には、接触突部73が叩き出し形成されている。
【0022】
係る形状に形成されたシールドシェル60は、図1の矢線に示すように、ハウジング21の後面側から挿入溝35に挿入され、ガイド溝64がリブ36に嵌って案内されつつ、終盤ではランス67が撓み変形して押し込まれる。図8に示すように、ガイド溝64の奥端64Aが、リブ36の後面に形成されたストッパ溝37の奥面に当たったところで押し込みが停止され、併せてランス67が係止溝40の係止面41の前方に通過することで復元変形して係止溝40内に落ち込み、係止面41に係止されて抜け止めされる。このとき、シールドシェル60の前縁は、フード部25の内面に形成された規制リブ39の前端にまで達する。
また、図10に示すように、後縁の両接続部70は、フランジ27の裏面上に当接可能な位置に来るようになっている。ただし、フランジ27の裏面上における接続部70と対応する位置には、同接続部70よりも一回り大きい逃がし凹部43が凹み形成されている。
【0023】
さらに、フランジ27の裏面には、本体部22並びにシールドシェル60の接続部70の配設箇所の外側を囲むようにして、シールリング75の装着溝45が形成されている。この装着溝45は、横長の方形でかつ四つ角に丸みを付けた環状に形成されている。
なお、フランジ27の四隅に形成された挿通孔29には、金属カラー46が嵌着されているとともに、上記した機器ケース11の取付面12における取付孔13の孔縁部13Aには、各挿通孔29に挿通されたボルト28が螺合可能なねじ孔15が対応して切られている。
【0024】
相手の電線側シールドコネクタ80を簡単に説明すると、図14に示すように、ハウジング81内には、シールド電線82の端末に接続された雌端子83が2本並べて収容されており、各シールド電線82の端末には、編組線82Aの端部と接続された接続リング84が圧着されているとともに、両シールド電線82の端末の回りを覆うようにして相手のシールドシェル85が装着されて、その後部側の内面に、両接続リング84が弾性接触されている。なお、ハウジング81の後面にはゴム栓86Aが、内部には上記した機器側シールドコネクタ20のハウジング21との間をシールするパッキン86Bが装着されている。
そして、両ハウジング21が嵌合されて正規嵌合に至ると、ロックアーム87が相手のロック部47に係止してロックされ、このとき対応する雌雄の端子金具83,50同士が接続されるとともに、シールドシェル85の前端部が、機器側シールドコネクタ20のシールドシェル60の前端部の内側に弾性的に嵌合されるようになっている。
【0025】
続いて、本実施形態の作用を説明する。
機器側シールドコネクタ20では、図1の状態から、既述した要領により、ハウジング21の挿入溝35に対してシールドシェル60が後方から挿入されて装着され、また装着溝45にシールリング75が嵌められる。それとともに、図8に示すように、真直姿勢の雄端子50が、対応する圧入孔32に対して前方から挿入されて圧入により固定され、そののち本体部22の後面から突出した雄端子50の後端部52側が、上向きに直角曲げされる。これにより、図8ないし図11に示すように、機器側シールドコネクタ20の組み付けが完了する。
【0026】
このように組み付けられたシールドコネクタは、まず斜め姿勢にされて、屈曲された雄端子50の後端部52が、機器ケース11の取付孔13に挿入され、そののち真直姿勢に向きが変えられて、フランジ27が取付孔13の表側の孔縁部13Aに対向される。それとともに、フランジ27の挿通孔29が機器ケース11のねじ孔15に整合され、各挿通孔29に通したボルト28がねじ孔15に螺合されて締め付けられる。
【0027】
ボルト28が締め付けられると、図13及び図14に示すように、フランジ27が機器ケース11の取付孔13の表側の孔縁部13Aに接近することに伴い、シールドシェル60の両接続部70に設けられた弾性接触片72の接触突部73が同孔縁部13Aに当たって、弾性接触片72が逃がし凹部43に向けて撓み変形し、その復元弾力で弾性接触片72の接触突部73が同孔縁部13Aに押し付けられ、接続部70の弾性接触片72が取付孔13の孔縁部13Aと電気的に接続され、結果シールドシェル60が機器ケース11に対してアースされる。
【0028】
それとともに、シールリング75が、フランジ27の裏面の装着溝45の溝底と、取付孔13の孔縁部13Aとの間で弾縮され、取付孔13の回りがシールされる。
なお、機器ケース11内にはプリント基板(図示せず)が配設され、機器ケース11内に突出した雄端子50の後端部52が、同プリント基板の導電路と半田付け等によって接続される。
【0029】
このように、機器ケース11の取付面12に取り付けられたシールドコネクタに対して、図14の矢線に示すように、相手の電線側シールドコネクタ80が嵌合される。
両ハウジング21,81が正規嵌合されてロックされると、図15に示すように、対応する雌雄の端子金具83,50同士が接続されるとともに、機器側シールドコネクタ20のシールドシェル60の前端部の内側に、相手の電線側シールドコネクタ80のシールドシェル85の前端部が弾性的に嵌合されて接続される。このとき、シールドシェル60の前端部は、規制リブ39によって開きが規制されているから、両シールドシェル60,85の前端部同士は確実に嵌合接続される。
これにより、シールド電線82からその端末の雌端子83、さらには同雌端子83と接続された雄端子50の回りがシールド部材で覆われることにより、それらがシールドされることになる。
【0030】
本実施形態の機器側シールドコネクタ20では、シールドシェル60を機器ケース11にアースするに当たり、シールドシェル60の後縁に一対の接続部70を横開きに一体形成して、ハウジング21のフランジ27の裏面に配設するとともに、その外側にシールリング75を装着し、フランジ27を機器ケース11にボルト28で止めることに伴い、接続部70に形成された弾性接触片72を取付孔13の孔縁部13Aに弾性接触させ、併せてその回りにおいてシールリング75を弾縮させて挟持するようにしている。
上記構造によると、シールドシェル60におけるハウジング21の外部に突出した部分が、シールリング75の内側に配されることになるから、同部分をポッティング材で封止する作業が不要にでき、またシールドシェル60は、インサート成形によらず、ハウジング21の挿入溝35に対して差し込みにより装着でき、もって製造コストの低減を図ることができる。
シールドシェル60と機器ケース11との電気的な接続は、シールドシェル60の後縁に、取付孔13の孔縁部13Aと対向した接続部70を設ける一方、同接続部70に弾性接触片72を設けて、この弾性接触片72に設けた接触突部73を、取付孔13の孔縁部13Aに対して弾性的に押し付ける構造としたから、高い信頼性を持って電気的な接続を期することができる。
【0031】
シールドシェル60の接続部70は、対称位置に一対が設けられているから、例えばフランジ27の締め付けのばらつき等でフランジ27が傾いて取り付けられたような場合でも、どちらかの接続部70の弾性接触片72が確実に取付孔13の孔縁部13Aに押し付けられる等により、電気的な接続がより確実に担保される。
また、この実施形態のシールドシェル60の後端側の上下の周面は、そのまま残されて取付孔13内に挿入されるようにしたから、シールドシェル60を無駄なく利用して、シールド機能をさらに高めることができる。
【0032】
シールドシェル60は、ランス67により抜け止めされてハウジング21の挿入溝35内に装着されている一方、ハウジング21には、ランス67の係止部分に達する治具の挿通溝(係止溝40)が前面に開口して形成されている。そのため、挿通溝(係止溝40)から治具を挿通してランス67を強制的に弾性変形させると係止が解除されるから、引き続いてシールドシェル60を後方に引っ張ることでハウジング21から抜き取ることができる。コネクタの廃棄時等に、合成樹脂製のハウジング21と、金属製のシールドシェル60とを分別する場合等に有用となる。
【0033】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図16ないし図18に基づいて説明する。
この実施形態2では、シールドシェル60の接続部70に形成された弾性接触片72Aの形状に変更が加えられている。
すなわち、図16及び図17に示すように、両接続部70には、縦向きの弾性接触片72Aが1本ずつ形成されており、この弾性接触片72Aは、上下両端が支持された両持ち梁状をなし、後面側に板厚の半分程度切り出されることによって形成されている。同弾性接触片72Aの長さ方向の中央部の後面側には、接触突部73が叩き出し形成されている。
なお、上記実施形態1とは違って、フランジ27の裏面上における接続部70と対応する位置に、逃がし凹部は設けられていない。
その他の構造については、上記実施形態1と同様であって、同一機能を有する部位については同一符号を付すことで、重複した説明は省略する。
【0034】
この実施形態2では、フランジ27が機器ケース11の取付孔13の表側の孔縁部13Aに当てられて、ボルト28で締め付けられると、図18に示すように、シールドシェル60の両接続部70に設けられた弾性接触片72Aの接触突部73が同孔縁部13Aに当たって、弾性接触片72Aは中央部が沈み込むように撓み変形し、その復元弾力で弾性接触片72Aの接触突部73が同孔縁部13Aに押し付けられ、接続部70の弾性接触片72Aが取付孔13の孔縁部13Aと電気的に接続され、結果シールドシェル60が機器ケース11に対してアースされる。
実施形態2の両持ち梁状の弾性接触片72Aは、実施形態1の片持ち梁状の弾性接触片72と比べて、経時後のへたりが抑制され、すなわち耐久性がより高められる。
【0035】
<関連技術>
次に、関連技術を図19ないし図21によって説明する。
シールドシェルを機器ケースに対してアースする部分の構造として、以下のようなものを採用してもよい。なお以下には、上記実施形態1との相違点を主に説明し、共通の構造等については、同一符号を付すことで説明を省略または簡略化する。
この関連技術では、シールドシェル90におけるハウジング21のフランジ27の裏側に突出した部分が筒形のままで残されて接続部91とされ、同接続部91が、機器ケース11の取付孔13内に緊密に嵌合可能とされている。この接続部91の上下左右の4面には、後方を向いた舌片状をなす弾性接触片92が形成され、各弾性接触片92の先端部の外面側には、接触突部93が叩き出し形成されている。
【0036】
この関連技術では、ハウジング21のフランジ27を機器ケース11の取付面12にボルト28で締め付けて固定するに当たり、図21に示すように、シールドシェル90の接続部91が、各弾性接触片92を内方に撓み変形させつつ、機器10の取付孔13内に嵌合され、各弾性接触片92の接触突部93が復元弾力で取付孔13の内面に押し付けられることにより、接続部91と取付孔13の内面とが電気的に接続され、すなわちシールドシェル90が機器ケース11に対してアースされることになる。
なお、この関連技術においても、弾性接触片を、実施形態2と同様に、両持ち梁状に形成してもよい。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では接続部に弾性接触片が設けられているが、弾性接触片は除去し、接続部全体を相手の取付孔の孔縁部に押し付けるようにしてもよい。この場合も、平面が面当たりするのであるから、高い接触圧が得られ、接続の信頼性も高くできる。
接続部自体を接触させる場合、接続部は予め90度よりも鈍角に曲げておいて、取付孔の孔縁部に弾性的に押し付けるようにしてもよく、また、接続部に接触突部を叩き出して形成するようにしてもよい。
【0038】
(2)上記実施形態では、シールドシェルの後端部における上面と下面とは残したが、これは除去してもよい。
(3)開き変形して設けられる接続部は、1枚だけであってもよく、逆に3枚以上を設けてもよい。
(4)シールドシェルは、必ずしもランスにより脱外可能に装着できるようにする必要はなく、脱外不能に装着されるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態1に係る機器側シールドコネクタの分解断面図
【図2】ハウジングの正面図
【図3】図2のX−X線断面図
【図4】ハウジングの背面図
【図5】シールドシェルの展開図
【図6】シールドシェルの底面図
【図7】同背面図
【図8】機器側シールドコネクタの縦断面図
【図9】同側面図
【図10】同平断面図
【図11】同背面図
【図12】同正面図
【図13】機器側シールドコネクタを機器ケースに取り付けた状態における図12のY−Y線断面図
【図14】機器側シールドコネクタに対して相手の電線側シールドコネクタを嵌合する前の状態を示す図12のZ−Z線断面図
【図15】両シールドコネクタが嵌合された状態の縦断面図
【図16】本発明の実施形態2に係るシールドシェルの背面図
【図17】図16のW−W線拡大断面図
【図18】機器側シールドコネクタを機器ケースに取り付けた状態の断面図
【図19】関連技術に係る機器側シールドコネクタの側面図
【図20】同背面図
【図21】機器ケースに取り付けた状態の断面図
【図22】従来例に係るシールドコネクタの背面図
【図23】その機器ケースに取り付けた状態の断面図
【符号の説明】
【0040】
10…機器
11…機器ケース
13…取付孔
13A…(取付孔13の表面側の)孔縁部
15…ねじ孔
20…機器側シールドコネクタ
21…ハウジング
22…本体部
22B…(本体部22の)後端部
27…フランジ
28…ボルト(締結具)
35…挿入溝
40…係止溝(治具の挿通溝)
41…係止面(係止部)
45…装着溝
50…雄端子(端子金具)
60…シールドシェル
67…ランス
70…接続部
72,72A…弾性接触片
73…接触突部
75…シールリング
80…電線側シールドコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に装着され相手のシールドコネクタが嵌合される機器側のシールドコネクタであって、
機器と接続される端子金具を装着したハウジングを有し、このハウジングは、後端側が金属製の機器ケースに開口された取付孔に嵌合可能で、かつ外周面には前記取付孔の表面側の孔縁部に対向したフランジが突設され、このフランジが前記機器ケースに締結具で固定可能となっており、
前記ハウジングには、前記端子金具の回りを囲むシールドシェルが同ハウジングに形成された挿入溝内に後方から挿入可能とされ、このシールドシェルの後端側に、前記フランジの裏面側に沿って配される接続部が曲げ形成されているとともに、
前記フランジの裏面における前記接続部の配設領域の外側には、シールリングが嵌る装着溝が形成され、
前記ハウジングのフランジを前記機器ケースに締結することに伴い、前記シールドシェルの接続部並びに前記シールリングが、前記機器ケースにおける前記取付孔の表面側の孔縁部に対して押し付けられるようになっていることを特徴とするシールドコネクタ。
【請求項2】
前記シールドシェルの接続部には、前記取付孔の表面側の孔縁部に弾性的に接触可能な弾性接触片が形成されていることを特徴とする請求項1記載のシールドコネクタ。
【請求項3】
前記シールドシェルの接続部は、複数枚が角度間隔を開けて設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシールドコネクタ。
【請求項4】
前記接続部は、前記シールドシェルの後端部の周面における周方向の所定幅部分を外側に切り起こすことで形成され、残った周面は後方に延出して前記取付孔内に進入可能となっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシールドコネクタ。
【請求項5】
前記シールドシェルの周面には、前記挿入溝内に設けられた係止部に弾性的に係止して抜け止めするランスが設けられるとともに、前記ハウジングには、前記ランスを強制的に弾性変位させて係止を解除する治具の挿通溝が前記係止部から前方に開口して形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のシールドコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−41600(P2008−41600A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218035(P2006−218035)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】