説明

シールド掘進機

【課題】ディスクカッタを搬送用ウィンチにて搬送することなく、容易かつ安全に、ディスクカッタ摩耗時の対処を行うことができる作業性のよいシールド掘進機を提供する。
【解決手段】シールド機本体の前部に回転可能なカッタヘッド18を有するシールド掘進機において、カッタヘッド18には、カッタヘッド18の前面より突出した状態でカッタヘッド18に取り付けられた複数の固定ディスクカッタ32と、カッタヘッド18の前面より非突出状態でカッタヘッド18に取り付けられ、固定ディスクカッタ32の摩耗時に油圧機構によりカッタヘッド18の前面より突出可能にされた予備用の複数の格納式ディスクカッタ34とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機に関し、特に、カッタヘッドにディスクカッタを備えたシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にシールド掘進機は、シールド機本体の前部にカッタヘッドが回転駆動可能に装着され、このカッタヘッドの前面にカッタビットの他、礫層、砂礫層シールド掘進において、巨礫を破砕するためのディスクカッタを装備する。
【0003】
しかし、近年、トンネル工事は長距離化の傾向にあり、ディスクカッタは、巨礫が多く掘進距離が長いと摩耗し、地盤の掘削効率が低下もしくは掘進不能となるので、途中で掘削作業を停止して摩耗したディスクカッタの交換をしなければならない。
【0004】
このようなディスクカッタの交換は、通常、地上から地盤改良を実施しておき、シールド掘進機を地盤改良区に貫入後、切羽とバルクヘッドとの間のチャンバを含む空間内の泥水や掘削土砂を外部に排出し、バルクヘッドから切羽に入って人力でカッタ交換を行うようにしており、そのため、地盤改良費及び仮設費がかさみ、工期が延び、人が切羽に入るという作業を伴うものであった。
【0005】
そのため、特許文献1に示すようなシールド掘進機が提案されている。
【0006】
このシールド掘進機は、ディスクカッタを回転可能に装着し、このディスクカッタをカッタヘッドのスポークに回動自在に装着し、ディスクカッタが摩耗したときには回転体を回動してディスクカッタを後方に向け、カッタヘッドの交換室からこのディスクカッタを交換するようにしたものである。
【特許文献1】特開2002−147175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなシールド掘進機にあっては、ディスクカッタの交換作業時に、摩耗したディスクカッタを回転体から取り外した後、搬送用ウィンチにより吊り上げ、この状態でシールド機本体まで搬送するようにしているが、このディスクカッタは硬質な岩盤に押圧してこれを破砕するものであるから、所定の大きさをした重量物となっているため、ディスクカッタを搬送用ウィンチに吊り上げる作業は困難なものであり、また、吊り上げたディスクカッタを搬送する作業にも危険が伴い、作業者の負担が大きく、作業性の良くないものである。
【0008】
本発明の目的は、ディスクカッタを搬送用ウィンチにて搬送することなく、容易かつ安全に、ディスクカッタ摩耗時の対処を行うことができる作業性のよいシールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明のシールド掘進機は、シールド機本体の前部に回転可能なカッタヘッドを有するシールド掘進機において、
前記カッタヘッドには、
前記カッタヘッドの前面より突出した状態で前記カッタヘッドに取り付けられた複数の固定ディスクカッタと、
前記カッタヘッドの前面より非突出状態で前記カッタヘッドに取り付けられ、前記固定ディスクカッタ摩耗時に押出し機構により前記カッタヘッド前面より突出可能にされた予備用の複数の格納式ディスクカッタと、
が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、複数の固定ディスクカッタに加え、カッタヘッドの前面より非突出状態で前記カッタヘッドに取り付けられ、押出し機構により前記カッタヘッド前面より突出可能にされた予備用の複数の格納式ディスクカッタを設けることで、前記固定ディスクカッタ摩耗時に摩耗したディスクカッタはそのままに、格納式ディスクカッタをカッタヘッドの依然面より突出させれば、格納式ディスクカッタが新たに固定ディスクカッタに代わって掘削を行うこととなり、ディスクカッタを搬送用ウィンチにて搬送することなく、容易かつ安全に、しかも作業性よくディスクカッタ摩耗時の対処を行うことができる。
【0011】
本発明においては、前記格納式ディスクカッタは、前記固定ディスクカッタの回転軌跡とほぼ等しい回転軌跡を形成する位置に配置されるようにすることができる。
【0012】
このような構成とすることにより、複数の固定ディスクカッタとほぼ同じ軌跡で格納式ディスクカッタを回転させることで、固定ディスクカッタ摩耗時に同じ条件で格納式ディスクカッタによる掘削を行うことができる。
【0013】
本発明においては、前記押出し機構は、前記収納式ディスクカッタに一体的に組み込まれた油圧機構とすることができる。
【0014】
このような構成とすることにより、格納式ディスクカッタに一体的に組み込まれた油圧機構を用いることにより、コンパクトで確実な駆動を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1〜図3は、本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機を示す図である。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るシールド掘進機の断面図、図2はカッタヘッドの正面図である。
【0018】
このシールド掘進機10は、泥土圧シールド掘進機で、図1に示すように、シールド機本体12の前部にカッタヘッドサポート14が固定され、このカッタヘッドサポート14に軸受け16を介してカッタヘッド18が回転自在に設けられている。
【0019】
このカッタヘッド18の回転と、シールド機本体12内のシールドジャッキ20の駆動とによって、掘進が行われ、所定距離掘進した状態で、セグメントエレクタ22によりセグメント24が組み立てられるようになっている。
【0020】
また、シールド機本体12には、隔壁26が固定され、この隔壁26とカッタヘッド18との間には掘削土砂を取り込むためのシールドチャンバ28が画成されている。
【0021】
シールドチャンバ28内には、図示せぬ送泥管より泥土が供給され、この泥土によって土圧に対向しながら掘削を行い、シールドチャンバ28内に溜まった掘削土をスクリューコンベア30にてシールド機本体12内に取り込み、そこから外部へと搬送、排出するようにしている。
【0022】
この場合、掘進途中に礫層や砂礫層があり、そこに巨礫があると、掘削後の礫が大きいままとなり、スクリューコンベア30内に入らず、シールドチャンバー30からシールド機本体12内に取り出すことができず、巨礫をスクリューコンベア30に入る大きさに粉砕する必要がある。
【0023】
そこで、図2に示すように、カッタヘッド18の前面に通常のカッタビット36の他、礫層、砂礫層シールド掘進において巨礫を破砕するための固定ディスクカッタ32と、格納式ディスクカッタ34とを装備している。
【0024】
固定ディスクカッタ32は、掘進当初から掘削に用いられるもので、カッタヘッド18の前面より突出した状態でカッタヘッド18に固定状態で複数個、例えば12個取り付けられている。
【0025】
格納式ディスクカッタ34は、固定ディスクカッタ32が摩耗した際に用いられる予備のもので、当初はカッタヘッド18の前面より非突出状態でカッタヘッド18に取り付けられ、固定ディスクカッタ32の摩耗時に押出し機構としての油圧機構38によりカッタヘッド18の前面より突出可能に、複数個、例えば5個設けられている。
【0026】
このように、複数の固定ディスクカッタ32に加え、カッタヘッド18の前面より非突出状態で前記カッタヘッド18に取り付けられ、油圧機構38によりカッタヘッド18の前面より突出可能にされた予備用の複数の格納式ディスクカッタ34を設けることで、固定ディスクカッタ32の摩耗時に摩耗した固定ディスクカッタ32はそのままに、格納式ディスクカッタ34をカッタヘッド18の表面より突出させれば、格納式ディスクカッタ34が新たに固定ディスクカッタ32に代わって掘削を行うこととなり、ディスクカッタを搬送用ウィンチにて搬送することなく、容易かつ安全に、しかも作業性よくディスクカッタ摩耗時の対処を行うことができることとなる。
【0027】
また、複数の格納式ディスクカッタ34を、固定ディスクカッタ32の回転軌跡とほぼ等しい回転軌跡を形成する位置に配置することで、固定ディスクカッタ32の摩耗時に固定ディスクカッタ32と同じ条件で格納式ディスクカッタ34による掘削を行うことができるようにしている。
【0028】
さらに、本実施の形態では、油圧機構38を、格納式ディスクカッタ34に一体的に組み込まれた機構とすることで、コンパクトで確実な駆動を行わせることができるようにしている。
【0029】
具体的には、この油圧機構38は、図3に示すように、ディスクカッタ本体40を支持する台座42と、この台座42に設けられるホルダ44とを備える。
【0030】
台座42は、外周面がほぼ円筒形状で、内周面に中央に向けて突出する複数個の受け座42aを有しており、これら受け座42aにディスクカッタ本体40が載置されて後方からボルト46により固定されている。
【0031】
ホルダ44は、台座42の外周面と摺接するように配され、このホルダ44を貫通する複数本のボルトによってカッタヘッド18に固定され、ホルダ44の各部材間は複数本のボルトによって互いに固定されている。
【0032】
なお、図示せぬが、台座42の外周面にはスプライン歯が設けられ、このスプライン歯がホルダ44の内周面の溝部に係合することで、小さな面圧でホルダ44に対する台座42の回り止めを行うようにしている。
【0033】
また、ホルダ44には2系統のオイル通路が形成され、各オイル通路が台座42及びホルダ44の摺接面に形成されるチャンバー52、54にそれぞれ開口することで、ホルダ44をシリンダとする油圧機構38が形成され、台座42をピストンとして、ホルダ44に対して台座42、すなわちディスクカッタ本体40を前後方向に移動できるようにしている。
【0034】
なお、ホルダ44と台座42との摺接面には、オイルシールとしてのピストンシール56が介装されている。
【0035】
このような格納式ディスクカッタ34において、掘進当初に図3(1)に示すように、チャンバー52に油圧を供給し、チャンバー54を減圧した状態として、ディスクカッタ本体40をホルダ44に対して後退させた状態としておく。
【0036】
この状態で、カッタヘッド18を回転させながらシールド機本体12を前進させると、固定ディスクカッタ32のみが礫の破砕に寄与することとなり、格納式ディスクカッタ34は使用されない状態で掘進が行われることとなる。
【0037】
次に、所定距離の掘進が行われて、固定ディスクカッタ32が摩耗した場合、固定ディスクカッタ32はそのままにして、図3(2)に示すように、チャンバー54に油圧を供給し、チャンバー52を減圧した状態として、ディスクカッタ本体40をホルダ44に対して距離L分前進させ、カッタヘッド18の前面より突出した状態とする。
【0038】
この状態で、再度掘進を開始すれば、摩耗した固定ディスクカッタ32に代わって新たに突出した予備の格納式ディスクカッタ34が礫の破砕を行うこととなり、ディスクカッタの交換を不要とすることができる。
【0039】
また、このような格納式ディスクカッタ34は、油圧機構38がコンパクトなものとなり、しかも確実な駆動を行わせることができると共に、油圧ホースを1本にして簡略な、かつ、配設の容易なものとすることができる。
【0040】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0041】
前記実施の形態では、土圧式のシールド掘進機について説明したが、この例に限定されるものではなく、泥水式シールド掘進機にも適用が可能である。
【0042】
また、油圧機構は、前記実施の形態に限定されず、格納式ディスクカッタと一体のものであれば種々のものを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機を示す断面図である。
【図2】図1のカッタヘッドの正面図である。
【図3】(1)は格納時における格納式ディスクカッタの断面図、(2)はディスク本体突出時における格納式ディスクカッタの断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 シールド掘進機
12 シールド機本体
18 カッタヘッド
32 固定ディスクカッタ
34 格納式ディスクカッタ
38 油圧機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機本体の前部に回転可能なカッタヘッドを有するシールド掘進機において、
前記カッタヘッドには、
前記カッタヘッドの前面より突出した状態で前記カッタヘッドに取り付けられた複数の固定ディスクカッタと、
前記カッタヘッドの前面より非突出状態で前記カッタヘッドに取り付けられ、前記固定ディスクカッタ摩耗時に押出し機構により前記カッタヘッド前面より突出可能にされた予備用の複数の格納式ディスクカッタと、
が設けられていることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
請求項1において、
前記格納式ディスクカッタは、前記固定ディスクカッタの回転軌跡とほぼ等しい回転軌跡を形成する位置に配置されていることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記押出し機構は、前記収納式ディスクカッタに一体的に組み込まれた油圧機構とされていることを特徴とするシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−144460(P2009−144460A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324686(P2007−324686)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】