説明

シールド構造

【課題】電力ケーブルに流れる電流による磁場の外部への影響を抑制する。
【解決手段】バッテリ10からの電流が流れる電力ケーブル14p,14nをシールド42p,42nで覆う。そして、シールド42p,42nの両端間を連結ライン44,46で接続する。これによって、電力ケーブル14pに流れる電流による磁場の外部への漏出を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源からの出力ラインを覆うシールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両には、多くの機器が搭載され、信号処理回路などでは、侵入してくるノイズにより悪影響を受ける場合がある。そこで、ノイズ発生箇所は、シールドで覆い、ノイズの拡散をできるだけ防止している。例えば、インバータやコンバータでは、そのスイッチングに伴いノイズが発生する。特に、電気自動車の駆動モータ用のインバータなどでは、大きな電流が流れるため、スイッチングによって流れる電流によりその電力線からもノイズが発生しやすい。
【0003】
そこで、インバータの正負母線に接続する電力ケーブルについても、筒状部材で覆ってシールドし、電磁波の漏出を防止することが提案されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−268716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来例では、シールドに電流が流れ、その電流に応じた磁界が外部に漏れだし、これが周辺機器に影響を与える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、直流電源からの正負一対の出力ラインと、この一対の出力ラインに接続され、電力変換を行うインバータと、導電材料で形成され、前記一対の出力ラインをそれぞれ覆う一対のシールドと、を含み、前記一対のシールドの各端部を接続して、一対のシールドを含む回路を形成することを特徴とする。
【0007】
また、前記直流電源は、バッテリをDC/DCコンバータにより電力変換するものであることが好適である。
【0008】
また、本発明は、直流電源からの正負一対の出力ラインと、この一対の出力ラインに接続され、電力変換を行うコンバータと、導電材料で形成され、前記一対の出力ラインをそれぞれ覆う一対のシールドと、を含み、前記一対のシールドの各端部を接続して、一対のシールドを含む回路を形成することを特徴とする。
【0009】
また、前記シールドは、少なくとも1カ所においてアースに接続されており、前記一対のシールドの端部同士を連結する部分に流れる電流を検出する電流検出手段を有することが好適である。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、出力ラインを覆うシールドによって、ノイズおよび磁界の漏出を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、実施形態の全体構成を示す図である。バッテリ10は、例えば200V程度の出力電圧を有する。このバッテリ100には、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、燃料電池など、各種のものが採用可能である。バッテリ10には、コンバータ12が接続されている。このコンバータ12は、バッテリ10の出力電圧を昇圧(例えば、300V程度)するものであるが、条件によっては降圧することもできる。コンバータ12の正負電源出力には、正側電源ライン14pと、負側電源ライン14nが接続されている。そして、この正側電源ライン14pと負側電源ライン14nの他端は、インバータ16の正負母線にそれぞれ接続されている。このインバータ16は、三相の出力を有しており、これが三相の交流モータ18に接続されている。このようなシステムにより、バッテリ10の電圧をコンバータ12で昇圧し、昇圧された直流電力をインバータ16によって、所望の交流電流に変換して、モータ18を駆動することができる。モータ18は、例えば車両走行用のモータであり、出力トルク指令などに応じてインバータを制御して、モータ18を出力トルクを制御することができる。
【0013】
ここで、コンバータ12は、一端がバッテリ10の正側に接続されるコイル20を有している。このコイル20の他端は、2つのスイッチング素子22p,22nの接続点に接続されている。すなわち、正側のスイッチング素子22pのコレクタがダイオード24を介し正側電源ライン14pに接続され、負側のスイッチング素子22nのエミッタがバッテリ10の負極および負側電源ライン14nに接続されている。そして、スイッチング素子22pのエミッタと、スイッチング素子22nのコレクタの接続点がコイル20に接続されている。なお、各スイッチング素子22p,22nのエミッタ・コレクタ間には、エミッタからコレクタ側に電流を流すダイオードが接続されている。また、正側電源ライン14pと負側電源ライン14nの間には、平滑用のコンデンサ26が設けられている。従って、スイッチング素子22p,22nを交互にオンすることで、そのデューティー比に応じたDC/DC変換が行える。
【0014】
また、インバータは、正負母線間に2つのスイッチング素子を直列接続したアームが3つ並列して配置された構成であり、各アームの中点がモータ18の三相の入力に接続されている。また、各スイッチング素子には、上述と同様にダイオードが設けられている。
【0015】
本実施形態においては、正負電源ライン14p,14nのそれぞれを筒状のシールド42p,42nで覆っている。そして、このシールド42p,42nのコンバータ側端部同士およびインバータ側端部同士を連結ライン44、46で接続している。
【0016】
すなわち、コンバータ12とインバータ16を接続している高圧の電源ライン14p,14nを同軸型のシールド42p,42nでシールドするとともに、このシールド42p,42nは、連結ライン44,46で端部同士が接続されるため、全体として電気的に接続された回路が形成されている。
【0017】
なお、電源ライン14p,14nと、シールド42p,42nには、同軸ケーブルを使用することができるが、両者は絶縁されていることを条件になるべく密着している方が望ましい。また、シールド42p,42nの許容電流は、芯線となる電源ライン14p,14nと同等か、少し小さくなっていることが好ましい。
【0018】
このような構成によって、電源ライン14p,14nに流れる電流I1に応じた誘導電流I2がシールド42p,42nにちょうど反対方向に流れ、これによって電流I1によって発生する磁場を電流I2によって相殺され、磁場を遮蔽することができる。従って、他の電子機器に悪影響を与えるノイズを低減することができる。
【0019】
また、このように誘導電流を発生させることで、電源ライン14p,14nに流れる高周波電流自体も抑制することができる。さらに、シールド42p,42nは発熱するがこの熱を暖房などに利用することも好適である。
【0020】
また、図1において、破線で示したように、連結ライン44,46の一方または両方をアースに接続することも好適である。これによって、高周波電流を低減して、かつ十分なシールド効果を得ることができる。
【0021】
また、図3に示すように、コンバータ12とバッテリ10を接続する正側電源ライン34pと、負側電源ライン34nにシールド42p,42nを設けることも好適である。これによって、上述と同様に、シールド42p,42nによるシールド効果が得られる。
【0022】
さらに、図4には、コンバータ12とバッテリ10を接続する正側電源ライン34pと、負側電源ライン34nに分岐ライン36p,36nを設け、他のコンバータ48に接続する場合の例が示されている。この例では、一対の分岐ライン36p,36nにシールド42p,42nを設けている。なお、コンバータ48は、DC/DCコンバータであっても、ACコンバータであってもよい。
【0023】
図5には、他の実施形態が示されている。この例は、図3と同様にバッテリ10とコンバータ12との間の電源ライン34p,34nにシールド42p,42nを配置しているが、図1,図4のような位置にシールド42p,42nを配置してもよい。
【0024】
バッテリ10の正極、負極には、それぞれ正側電源ライン34pおよび負側電源ライン34nが接続され、これら正負電源ライン34pをシールド42p,42nによってシールドされるが、正側電源ライン34pおよび負側電源ライン34nのバッテリ10側には、システムメインリレーSMRが配置されている。従って、このシステムメインリレーSMRをオフすることによってバッテリ10がコンバータ12から切り離される。また、負側のシールド42nは、アースに接続されている。
【0025】
そして、シールド42p,42nの端部は、連結ライン44,46で接続されるが、この連結ライン44には抵抗50が設けられており、この抵抗50の両端が検出部52に接続されている。従って、検出部52は、抵抗50の両端電圧を検出することで、連結ライン44に流れる電流を計測することができる。なお、負側シールド42nのアースに接続される部位は、抵抗50が設けられた連結ライン44が接続される部位と同一または近傍とすることが好適である。また、検出部52は、例えば抵抗50の両端電圧を増幅するオペアンプによって構成される。
【0026】
ここで、この連結ライン44,46に流れる電流は、正側シールド42pに流れる電流に等しい。この正側シールド42pに流れる電流は、正側電源ライン34pに流れる電流に基づいて発生される磁界に基づいて発生するものであり、正側電源ライン34pに流れる電流に反比例している。従って、検出部52において検出した電圧により、正側電源ライン34pに流れる電流を検出することができる。
【0027】
検出部52の検出電圧V1は、比較器54に供給される。この比較器54は、予め設定された基準電圧V2と比較する。この基準電圧V2は、この回路において許容できる最大電流に応じて設定される。従って、V1がV2より大きいということは、正側電源ライン34pに流れる電流が許容最大電流を上回っている(過電流が流れている)ことを意味する。
【0028】
比較器54は、過電流が流れていることを検出した場合には、その旨の信号例えばHレベルの信号を出力する。この比較器54の出力は、SMR制御部56に送り、SMR制御部56は過電流を検出した場合に、システムメインリレーSMRをオフする。これによって、システムの過電流保護ができる。なお、比較器54は、通常のオペアンプで構成できる。
【0029】
特に、本実施形態では、正側電源ライン34pに流れる電流を直接検出するのではなく、連結ライン44に流れる電流を検出している。従って、効果的な検出が行える。
【0030】
正電源ライン34pに流れる電流を検出する場合、正電源ライン34pに抵抗を配置し、その抵抗の両端電圧を検出することが考えられる。ところが、バッテリ10の電圧が200Vであると、正電源ライン34pも200Vとになり、この高電圧が直接接触する電圧検出回路に印加されることになり、高圧部分に対する保護措置を採らなければならない。一方、ホール素子や、トランスを用いて、正電源ライン34pに流れる電流を検出することも考えられるが、この場合には、検出回路が大型になったり、高価になってしまうという問題がある。
【0031】
本実施形態によれば、正電源ライン34pに流れる電流に応じてシールド42pに流れる電流を連結ライン44において検出します。従って、本実施形態によれば、シールド42p,42nによって、電磁波および磁場のシールドを行うとともに、高圧電源ラインとの絶縁して高圧電源ラインに流れる電流を検出できるという効果が得られる。
【0032】
図6には、正電源ライン34pに流れる電流I1、シールド42pに流れる電流I2、検出器52において検出する電圧V1および基準電圧V2の一例を示してある。このように、正電源ライン34pに流れる電流I1の変化に応じて、シールド42pに電流I2が流れ、それが検出器52によって検出される。
【0033】
なお、本実施形態の場合、電流I2は、シールド42p、連結ライン44、シールド42n、連結ライン46という回路に流れるため、連結ライン46に流れる電流を検出してもよい。従って、正側電源ライン34pの地絡や、正側および負側電源ライン34p、34nのショートなどの急激な電流変化に基づく過電流保護を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】シールドに流れる電流を説明する図である。
【図3】シールドを取り付ける箇所についての他の例を示す図である。
【図4】シールドを取り付ける箇所についてのさらに他の例を示す図である。
【図5】電流検出の構成を付加した例を示す図である。
【図6】各部に流れる電流、および検出する電圧を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 バッテリ、12 コンバータ、14p,34p 正側電源ライン、14n,34n 負側電源ライン、16 インバータ、18 モータ、20 コイル、22p,22n スイッチング素子、24 ダイオード、26 コンデンサ、36p,36n 分岐ライン、42p,42n シールド、44,46 連結ライン、48 コンバータ、50 抵抗、54 比較器、56 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの正負一対の出力ラインと、
この一対の出力ラインに接続され、電力変換を行うインバータと、
導電材料で形成され、前記一対の出力ラインをそれぞれ覆う一対のシールドと、
を含み、
前記一対のシールドの各端部を接続して、一対のシールドを含む回路を形成することを特徴とするシールド構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシールド構造において、
前記直流電源は、バッテリをDC/DCコンバータにより電力変換するものであることを特徴とするシールド構造。
【請求項3】
直流電源からの正負一対の出力ラインと、
この一対の出力ラインに接続され、電力変換を行うコンバータと、
導電材料で形成され、前記一対の出力ラインをそれぞれ覆う一対のシールドと、
を含み、
前記一対のシールドの各端部を接続して、一対のシールドを含む回路を形成することを特徴とするシールド構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のシールド構造において、
前記シールドは、少なくとも1カ所においてアースに接続されており、
前記一対のシールドの端部同士を連結する部分に流れる電流を検出する電流検出手段を有することを特徴とするシールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−27089(P2009−27089A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190951(P2007−190951)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】