説明

シールリングを備えた真空バルブ

【課題】より小さな回転経路を持ち、ハウジングサイドに配置されたバルブを損傷させる恐れのない、より簡単に生産することができるシールリングを備えた真空バルブを提供する。
【解決手段】本質的に矩形の断面を含み、互いに正反対に対向した矩形の端部において曲率半径が配置されており、この曲率半径は、ハウジングサイドとディスクサイドに互いに正反対に対向して配置したシーリングシートと密封係合し、それらの密封表面は、それぞれほぼ同一の円錐角を有するを備えた真空バルブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールリングを備えた真空バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このタイプの真空バルブは、特許文献1の主題として公知となった。この真空バルブは、大気圧から超高真空までの領域で真空を封鎖するために、真空ラインに配置するのに好適である。
【0003】
このタイプの真空バルブには、バルブディスクとハウジングサイドのバルブシートの間に、いわゆる、シールリングを設けることが知られている。特許文献1には、このタイプのシールリングの各種態様が記載されており、その中で、例えば、図6では矩形のシールリングが示されており、このシールリングは、密封状態から開いた状態への移行において、材料に大きな応力を生じさせる屈曲を受ける。この公知のシールリングの表面は、円錐状に具体化されているので、このタイプのシールリングは、非常に生産することが難しい。
【0004】
上記シールリングは、比較的薄い断面を有しているため、閉じた状態から開いた状態に移行する間に傾斜する。そうでなかったら、力の作用によって、このシールリングは折れて、密封機能を果たすことができなくなる危険がある。上記シールリングは、こうして、バルブシートの該当する表面に衝突し、そこで破片を引き離し、回復できないほど損傷を与える。
【0005】
この状況の改善が、特許文献2の主題において行われた。これは、矩形断面のシールリングから外れて、その代わり、ダブル円錐シールリングにしたものである。そして、これは外周半径が互いに正反対に対向して配置されており、くびれを間に配置している。
【0006】
このくびれを設けた理由は、互いに正反対に対向して配置した2つの半分のシールリングが互いに動くことができるように具体化するためである。そうすることによって、このシールリングが、可能である最低の固有抵抗をもち、可能である最大の回転経路を有することになるという特別な重要性が付与される。したがって、このシールリングは、その断面において、参照されたくびれを持つ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るシールリングを備えた真空バルブの概略断面図である。
【図2】閉じた状態におけるシールリングの拡大概略図である。
【図3】図2をさらに詳細に示した図2と同様の概略図である。
【図4】ハウジングサイドバルブシートにおけるシールリングの密封係合の拡大概略図である。
【図5】本発明に係るシールリングの断面の概略形状の拡大図である。
【図6】図5の別の態様である。
【発明を実施するための態様】
【0025】
好ましい態様においては、シールリングを例えばステンレス鋼、高ニッケル合金及び類似するもの等の金属材料で作製する。もちろん、他の適当な材料、例えば、金属/プラスチック化合物材料、グラファイト材料、銅及びブロンズ合金等を用いることも可能である。
【0026】
ハウジングサイドのシーリングシートを備えたハウジングは、ディスクサイドのシーリングシートを備えたハウジングと同様、好ましくはステンレス鋼が採用される。
【0027】
本発明に係るシールリングは、斜めの表面及び円錐状の表面を有していないため、非常に容易に製造することができるという格別な利点がある。そのため、シールリングは、ハウジングサイドとディスクサイドの密封表面で破片除去破損を起こすことがなく、2つの半径の中心点間の仮想直線が、互いにほぼ平行である2つのシールリング表面部分の仮想直線とほぼ直角になるように、互いに正反対に対向した端部の半径を定める。
【0028】
これにより、力が分散され、制御しやすくなる。極端な例として、シールリングの矩形断面のコーナー部の曲率半径を特定する上記半径は、それらが単一の点に集まる(あるいは、交点をわずかに超える)ように拡大することができる。しかしながら、本発明で規定しているように、2つの半径の中心点が、互いに正反対に対向する矩形断面の端部を通過する1つの線上で互いに離れて存在することになるように、比較的小さな曲率半径が好ましい。
【0029】
2つの半径が互いに離れたタイプの構成によれば、比較的低いシーリング力で高いシーリング効果を達成することができる利点がある。それによって、スピンドルドライブ側で費やされる力は従来技術よりも低くなる。
【0030】
本発明は、すなわち、必要とするシーリング力を獲得するためには、シールリングに固有の変形が必要であるという従来技術からの知識を意識的かつ特異的に基礎としている。本発明の存在価値は、ほとんど変形しないか、あるいは全く変形が起こらない矩形の断面を含み、ハウジングサイドとディスクサイドで互いに斜めに正反対に対向しているバルブシートでの比較的小さな半径に基づき、シーリング力が得られるシールリングを提供することにある。
【0031】
決定点(すなわち、シールリングが密封表面の円錐部と接触する所)の関係部分(各密封表面の円錐部の内部及び外部)には、力がわずかだけ、あるいは全くかからないように設計する。他の態様も可能であり、考えられる。例えば、ダンパー、スライディングシャトル、インラインバルブ、パルブフラップ、バタフライバルブあるいはフランジ結合をシールすることもできる。しかしながら、アングルバルブに対する例で示した特徴だけでなく、これらの態様にも同様の原理を適用することもできる。
【0032】
本発明の主題は、個々の特許請求項だけから生じるのではなく、個々の特許請求項を互いに組み合わせることによっても生じる。
【0033】
本願に開示された(要約も含めて)全てのデータ及び特徴、特に図面に示された立体的態様は、それらが個々に、又はそれらの組み合わせが従来技術に対して新規である限り、本発明に必須のものとして請求項に含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、本発明の実施の1つの態様だけを示す図面に基づいて、以下に詳細に説明される。本発明に本質的な他の特徴及び利点は、図面及び明細書に示される。
【0035】
図1は、ドライブハウジング1が、それに対応した適切なスクリューを介してバルブハウジング2に結合していることを一般的に示している。ドライブハウジング1には、スピンドル4により穴が設けられている。このスピンドル4は、回転することによって固定されるハンドホイール3に結合している。該スピンドルは、ドライブハウジング1の内部ねじ穴に、ねじ込み係合しており、これにより、ハンドホイール3を回転させると、バルブロッド9は矢印方向6に示すように上方に押しやられ、あるいは、矢印方向7に示すように下方に押しやられる。
【0036】
バルブハウジング2には、バルブロッド9のシールガイドとして、ガイド8を公知のやり方で設ける。
【0037】
それにより、バルブハウジング2は、インレットフランジ10が通じるインテリア12を形成する。
【0038】
アウトレットフランジ11は、シールのもう一方の側に配置する。
【0039】
もちろん、インレットフランジ10とアウトレットフランジ11の用語は交換可能である。どちらのサイドから媒体が流れ込み、流れ出るかは重要ではない。
【0040】
バルブディスク13がバルブロッド9の自由端で固定して付着していることは重要である。丸みのある該バルブディスクは、シールリング14に結合している。本発明の決定的要因は、ディスクサイドバルブシート18及びハウジングサイドバルブシート15と共にシールリング14が作動する点にある。
【0041】
さらに詳しくは、図2及び図3に示している。
【0042】
図2、3及び5を比較検討すると、本発明に係るシールリングは、本質的に矩形断面23を含んでいることが認められ、正反対に対向している矩形断面23のコーナー部は、それぞれ、半径20a、20bを有している。
【0043】
2つの半径20a、20bは、ほぼ同一とすることが好ましい。図2から、ハウジングサイドバルブシート15は、円錐線19aによって形づくられ、シールリング14の上部半径20aは、この斜めの円錐線に当接しており、これは、例えば、荷重伝達及びシーリングにおいて、垂直線に対して10°の角度であることを認めることができる。
【0044】
さらに、ディスクサイドバルブシート18には、同様に、ほぼ同一の配置をもつ円錐線19bを有し、矩形断面23の半径20aに正反対に対向する端部の半径20bが、この円錐線19bに当接することは必須である。
【0045】
図2及び図3は、シールリング14が水平に配置されることを示している。その理由は、シールリング14の最上部の面が、バルブディスク13にスクリュー17によってねじ込まれたディスク16によって保持されるからである。したがって、シールリング14はティルティング、サイドティルトが生じない。したがって、シールリング14は、2つのバルブシート15、18に沿って、開いた方向の矢印方向6に、閉じた方向の矢印方向7に直線運動する。
【0046】
したがって、ティルティングが発生せず、互いに正反対に対向しているバルブシート15,18の破片脱離破砕物との衝突が発生しない。
【0047】
図3は、2つの半径20a、20bの2つの半径中心点25a、25bが仮想の結合線26上にあり、この結合線は、互いに正反対に対向する矩形断面23の端部を正確に通って行き、ハウジングサイド円錐線19a及びディスクサイド円錐線19bと直角29a、29bに交差することを示している。
【0048】
このように、直角29a、29bは、水平線に関して、互いにオフセット配列して互いに対向している。これらの直角は、設けられたハウジングサイドバルブシート15又はディスクサイドバルブシート18とのシールリング14の密封係合を規定する。
【0049】
したがって、ティルティングあるいはサイドティルトの代わりに、本発明に係るシールリングではリニア押込みが生ずる。
【0050】
図4は、角度21は約10°にすることができること、すなわち、互いに正反対に対向する半径20a、20bがバルブシート15、18と密封係合し、シールリング14の他の部分は係合しないことを示している。このことは、例えば、図5に示すように、シールリング14の矩形断面の垂直線を表している互いに正反対に対向する直線22a、22bが必ずしも互いに平行である必要はないことを示している。それらの直線は、図5において垂直線として具体的に表現されている。しかしながら、それらは、図6に示すように、互いに並行に配列された斜めの線として具体的に表現することもでき、それにより、シールリング14の断面は平行四辺形断面30が形成される。
【0051】
同様に、図6に示したアラインメントを、図5に示したアラインメントにすることも可能である。例えば、図6に示した直線22aは図5に示した垂直線22aにすることができ、逆に、図6で示された斜めの直線22bは、図5で示した垂直線22aにすることができる。
【0052】
同様のことが、互いにそれることが可能な水平直線24a、24bにも当てはまる。
【0053】
例えば、互いに平行な直線24a、24bは凸状あるいは点を持つようにすることができる。
【0054】
上記の説明は、高さにおいて互いにオフセット配列されたバルブシート15,18に当接する水平に配置されたシールリング14のほぼ矩形の断面において、互いに正反対に対向するシールリング14のコーナー部だけが働きをすることを本質としている。なぜなら、コーナー部は配列したバルブシート15、18と互いに密封係合するからである。
【0055】
この密封係合に関与しない、この矩形断面の他のコーナー部及びこれらコーナー部を互いに結合する直線は、比較的自由な形で選択することができる。
【0056】
しかしながら、本発明において、図5に示した形状は、シールリング14の生産が容易であることから好ましい。
【0057】
矩形断面の高さ27対幅28の比は、幾何学的要件、すなわち、正反対に対向する2つの端部を通る結合線26は、正反対に対向する円錐線19a、19bとそれぞれ直角で交差しなければならないということに基づいて決定される。
【0058】
半径20a、2bのサイズは、比較的自由に選択することができる。伝達力がハウジングサイドあるいはディスクサイドバルブシート15、18に損傷を与えないことが必要である。
【0059】
その他の点として、シーリングシート15、18の円錐角は、シールリング14がこのバルブシート15、18に荷重をかけてセルフロッキングせず、開いた状態から閉じた状態に、このバルブシート15、18上を自由に移動できるように選択する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に矩形の断面を含み、互いに正反対に対向した矩形の端部において曲率半径が配置されており、この曲率半径(20a、20b)は、ハウジングサイドとディスクサイドに互いに正反対に対向して配置したシーリングシート(15,18)と密封係合し、それらの密封表面は、それぞれほぼ同一の円錐角を有するシールリング(14)を備えた真空バルブ。
【請求項2】
バルブハウジング(2)のバルブディスク(13)のバルブシート(18,15)の同一向きの円錐表面の間にあるシールリング(14)を備えた真空バルブであって、シールリング(14)は、本質的に多角形、特に矩形の断面をもち、バルブが閉じた状態において、バルブシート(18,15)の円錐表面とバルブシーリング表面を形成する、少なくとも2つの放射状に離れたリング端部は曲率半径(20a、20b)を有し、バルブディスク(13)の運動によってシールリングが曲がるとき、シールリング(14)の中立軸が常にバルブディスク(13)の運動方向にほぼ垂直となる真空バルブ。
【請求項3】
シールリング(14)は、わずかに弾性があり、バルブディスク(13)を閉じる操作あるいは閉じた状態の間、わずかに変形するか、変形しない請求項1又は2に記載の真空バルブ。
【請求項4】
シールリング(14)の断面が本質的に長方形、ひし形又は正方形及び少なくとも2つのリング端部で表され、該リング端部は、放射状に離れており、互いに正反対に対向する曲率半径(20a、20b)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項5】
シールリング(14)の曲率半径(20a、20b)がほぼ同一の大きさであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項6】
シールリング(14)の曲率半径(20a、20b)が異なる大きさであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項7】
曲率半径(20a、20b)の2つの中心点(25a、25b)を通る結合線が、バルブシート(18,15)の2つの円錐表面とほぼ直角で交差することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項8】
曲率半径(20a、20b)の2つの中心点(25a、25b)が一点に集まっていることを特徴とする請求項7に記載の真空バルブ。
【請求項9】
曲率半径(20a、20b)が、バルブディスク(13)の運動方向に対し、異なる高さにあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項10】
シールリング(14)の対称軸が、バルブディスク(13)の運動方向に対して、ほぼ垂直な水平面にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項11】
シールリング(14)が、ステンレス鋼、高ニッケル合金、金属/プラスチック化合物材料、グラファイト材料、又は銅及び/又はブロンズ合金を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項12】
シーリングシート(18,15)の少なくとも円錐表面が、ステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項13】
バルブディスク(13)が、縦方向に移動可能なバルブロッド(9)に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項14】
シールリング(14)が、保持手段(16,17)によって、脱離できる形で、バルブディスク(13)又はバルブハウジング(2)に保持されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の真空バルブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−174715(P2009−174715A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−3481(P2009−3481)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(509011167)
【Fターム(参考)】