説明

シール剥がし機

【課題】シールの粘着状態にかかわらず容器からシールを完全に剥がして除去することができるシール剥がし機を提供する。
【解決手段】シール剥がし機10は、高圧流体を吐出する高圧ポンプ50と、高圧ポンプ50からの高圧流体を容器のシール粘着部分に向けて噴射するノズル32と、を備える。高圧ポンプ50の吐出圧を14MPaより大きく20MPa未満の範囲にし、容器とノズルとの間の離隔距離を150mm以下に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製の被粘着体に粘着されたシールを剥がすシール剥がし機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着層を有するラベル、レッテルまたはシートのようなシールが粘着された被粘着体からシールを剥がすために高圧流体を使用したものとしては、特許文献1または特許文献2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された接着シートの剥離方法では、被着体に接着された接着シートに40〜90℃の温水を常用吐出圧力30kg/cm(3MPa)以上で吹き付けるようになっており、具体的にはその圧力は80kg/cm(8MPa)程度となっている。
【0004】
特許文献2に記載された貼着ラベルの自動剥離除去装置では、ケース等に貼着されているラベルに上下又は左右にスイングするスイングノズルで高圧水を噴射するようになっており、その高圧水の水圧は常温60kg/cm(6MPa)となっており、ノズルとラベル面との間の距離が170mmとなっており、ノズルはラベルの面に対して5〜45度に傾斜して配設されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−199784号公報
【特許文献2】特開平11−197620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1または特許文献2の構成では、単層のシールが粘着された被粘着体からシールを剥がすことが前提となっている。しかしながら、シールの上にさらに別のシールが重ね合わされて複数枚のシールが重ね合わされて粘着された被粘着体や、シールの粘着層が残存した状態でその上に別のシールを粘着したような被粘着体や、長期に渡りシールが放置された被粘着体では、シールをきれいに剥がすことは容易ではない。特に、シールの基材部分を剥がすことはできても、シールの粘着層の糊状の汚れを完全に除去することは困難であるという問題がある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、シールの粘着状態にかかわらず被粘着体からシールを完全に剥がして除去することができるシール剥がし機を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、プラスチック製の被粘着体の側面に粘着されたシールを剥がすシール剥がし機であって、
高圧流体を吐出する高圧ポンプと、
高圧ポンプからの高圧流体を前記被粘着体のシール粘着部分に向けて噴射するノズルと、
を備え、高圧ポンプの吐出圧が14MPaより大きく20MPa未満の範囲にあり、被粘着体とノズルとの間の離隔距離が150mm以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記ノズルの噴射中心線が、被粘着体のシール粘着部分に向けて被粘着体に対して直交する方向に向いていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の前記ノズルが、シールの粘着範囲をカバーするように上下運動を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の前記被粘着体とノズルとの相対搬送速度が10mm/sec〜50mm/secの範囲内にあることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の前記ノズルが旋回流を噴射する旋回ノズルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高圧ポンプの吐出圧を14MPaより大きく20MPa未満の範囲にし、被粘着体とノズルとの間の離隔距離を150mm以下とすることにより、高い噴射圧で被粘着体に液体を噴射することで、プラスチック製の被粘着体の表面の研磨を行うことができる。被粘着体に粘着されたシールが研磨される粒子と共に剥ぎとられることで、シールをきれいに除去することができる。一方、あまり高い噴射圧になるとプラスチック製の被粘着体に傷を付けることになるが、前記の範囲で吐出圧と離隔距離とを設定することにより、被粘着体に傷を付けることなく、好適なシール除去が行われる。
【0014】
ノズルの噴射中心線を、被粘着体のシール粘着部分に向けて被粘着体に対して直交する方向に向くようにすることにより、高い噴射圧で被粘着体に液体を噴射することができる。
【0015】
ノズルを上下運動させることにより、シールの粘着範囲をカバーして、シールの粘着範囲に均等に噴射を行うことができる。
【0016】
ノズルと被粘着体の相対搬送速度を前記の範囲で設定することにより、シールの粘着範囲に均等に噴射を行うことができ、好適なシール除去が行われる。ノズルと被粘着体は、いずれか一方がいずれか他方に対して水平方向に相対搬送されることができる。
【0017】
ノズルを旋回ノズルとすることにより、効果的にシール除去を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1ないし図5は、本発明によるシール剥がし機を表す図である。
【0019】
このシール剥がし機10は、被粘着体12の側面に粘着されたシール14を剥がすためのものであり、この例では被粘着体12は、ほぼ直方体形状をなしたポリプロピレン等のプラスチック製の容器となっている。シール14は、容器12の対向する2つの側面の両方またはいずれか一方に外側から粘着されており、紙、プラスチックフィルムまたは布等のいずれかからなる基材と、該基材の裏面に設けられた粘着層とから構成することができる。
【0020】
シール剥がし機10は、おおまかに、容器12を水平方向に搬送する容器搬送部20と、容器12のシール14剥がしを行うためのノズルを備えた高圧流体噴射部30と、噴射する流体を貯留する貯留部40と、高圧流体を吐出する高圧ポンプ50と、を備えている。
【0021】
容器搬送部20は、容器12を搬送して前記高圧流体噴射部30を往復させるためのチェーンコンベア22と、チェーンコンベア22が巻回された駆動スプロケット24及び従動スプロケット25と、該駆動スプロケット24を回転駆動する搬送モータ26と、を備えている。容器12の搬送速度は、10mm/sec〜50mm/sec程度のものとするとよい。搬送モータ26は正逆転切替可能となっており、チェーンコンベア22は容器12を高圧流体噴射部30へと導入して、所定距離搬送した後、搬送モータ26の反転により、反対方向に搬送して、高圧流体噴射部30から導出する。但し搬送形態はこの往復搬送に限るものではなく、一方向のみの搬送によって高圧流体噴射部30に容器12を導入した後、高圧流体噴射部30の反対側から容器12を導出するようにしてもよい。
【0022】
高圧流体噴射部30は、容器搬送部20の搬送路が通過する入口31aを備えたカバー31と、カバー31内で容器搬送部20の搬送路の両側に配置されて前記容器12の側面及びその側面に粘着されたシール14に対向可能となり高圧流体を噴射するノズル32とを備える。ノズル32は搬送された容器12の側面及びシール14に対してほぼ直交する方向を向いている。これは、容器12への噴射圧を高めるためである。但し、容器12の搬送速度が流体の噴射速度に対して無視できる程度に小さくない場合には、容器12の搬送する座標系で見てノズル32の角度が直交する方向を向いているようにするとよい。
【0023】
ノズル32は、任意の手段により旋回流を噴射することができるノズルであるとよい。噴角は20〜30度、好ましくは25度程度とし、その口径は0.5mm〜2mm、好ましくは1mm程度とするとよい。
【0024】
ノズル32と容器12の側面及びシール14との間の離隔距離は、150mm以下とし、好ましくは20mm〜100mmとするとよい。可能な限り離隔距離を小さくして、容器12への噴射圧を高めるようにする。ノズル32は、シール14の粘着範囲をカバーするべく、この例では、両側にそれぞれ1個ずつ合計2個設けられている。さらに、シール14の粘着範囲全体に渡りノズル32からの噴射を均等に及ぼすようにするために、ノズル32を上下動させる。このノズル32を上下動させるためのノズル上下動機構34が設けられており、該ノズル上下動機構34は、2個のノズル32を保持するべく、下向きのコ字形をなしたノズルホルダ36と、ノズルホルダ36を昇降させる昇降シリンダ38と、を備え、昇降シリンダ38は図示しないエア源からのエアによって駆動される。ノズルの上下運動の速度は、400mm/sec以下とし、好ましくは300mm/sec程度とするとよい。
【0025】
貯留部40は、高圧流体噴射部30の下方に設けられて、高圧流体噴射部30においてノズル32から噴射された流体を回収する漏斗体42と、漏斗体42からの流体を受けて貯留するタンク44と、を備える。漏斗体42と貯留タンク44との間には、シールの残骸などを回収するメッシュカゴ46が配置され、貯留タンク44の出口である供給口44aには、さらに不純物の混入を防ぐためのストレーナ48が配置される。さらに、貯留タンク44内にはボールタップ49が備えられて、貯留タンク44の水位が所定値より下がると給水を行う。流体は常温の水とすることができる。流体には界面活性剤、洗剤を含む液体とすることもできるが、界面活性剤、洗剤は必須ではない。
【0026】
高圧ポンプ50は、貯留タンク44の供給口44aとホース52によって連結される。高圧ポンプ50はプランジャーポンプとすることができ、その吐出圧は14MPaより大きく20MPa未満の範囲とする。ポンプの小型化または負荷を考慮すると吐出圧は15MPa〜16MPaの範囲から選択すると好ましい。高圧ポンプ50からの吐出流体は配管54を介して各ノズル32へと連結される。各ノズル32へと連結される配管54の途中には開閉弁が配置されて、両側に配置されるノズル32のうち高圧流体を供給するノズル32を選択的に両側またはいずれか一方の側に切り替え可能であるとよい。
【0027】
以上のように構成されるシール剥がし機においてその作用を説明する。容器12は容器搬送部20によって搬送されて高圧流体噴射部30へと送られる。高圧流体噴射部30のノズル32には、高圧ポンプ50からの高圧流体が供給されており、その高圧流体がノズル32から容器12の側面に向けて噴射される。ノズル32はノズル上下動機構34によって上下動しながら噴射を続けており、一定速度で搬送される容器12に対して、容器12の側面のシール14の粘着部分に均等に噴射が行われる。シール14の粘着部分がノズル32を通過すると、図示しないセンサによって検出された信号により制御部が搬送モータ26の回転を反転し、容器12の搬送方向が反対向きとなり、再び、シール14の粘着部分にノズル32から高圧流体が噴射される。
【0028】
ノズル32から噴射された流体は、漏斗42によって回収されて貯留タンク44へと流れ落ちる。この際に、シールの残骸などはメッシュカゴ46で捕捉される。さらに貯留タンク44から流体が高圧ポンプ50へと供給されて、流体は循環される。
【0029】
この高圧流体は、高圧ポンプ50の吐出圧が14MPaより大きく20MPa未満の範囲にある。この吐出圧は、特許文献1または2で記載される吐出圧よりはるかに高い値である。ノズル32から所定の噴角を持って、離隔距離が150mm以下の離れた容器12に噴射する。
【0030】
この高い噴射圧によって、プラスチック製の容器12の表面がわずかに削り取られて、この際にシール14が一緒に剥ぎとられる。このため、シール14をその粘着層と共に完全に除去することができる。つまり、研磨によってシール14を剥がすために、容器12の表面からシール14がきれいに除去される。
【0031】
上記吐出圧の好適な選択によって、研磨によって削り取られる容器12の表面の厚みは僅かとなる。例えば、容器12のシール14の粘着される下地部分に、塗料によって塗装がなされていた場合、上記吐出圧の好適な選択によって塗料層自体を損なうことなく塗料層の表面を研磨することができる。また、吐出圧が高すぎると容器12の表面に細かい傷が発生するが、上記吐出圧の好適な選択によって容器12の表面に傷が付くことを防ぐことができる。
【0032】
このように本発明では主として研磨の作用に基づいてシール14を剥がすために、シール14の基材及び粘着層の素材にほとんど影響を受けることがない。また、吐出する流体の温度、成分にもほとんど影響を受けることがない。さらには、前処理、例えば、容器12を予め洗剤液に浸漬しておくといった前処理の必要もない。
【実施例】
【0033】
以下の条件でシール剥がしを実行した。
・容器の素材:ポリプロピレン(硬度:ロックウェル硬度(R95))
・容器の寸法:1900×1000×1300H
・容器搬送速度:10mm/sec
・ノズルと容器との距離:30mm
・ノズルの噴角:25度
・ノズルの噴射流:旋回流
・ノズルの孔径:1mm
・1個のノズル当りの噴射量:5.5L/min
・ノズルの上下運動の速度:300mm/sec
・噴射流体:水(常温)
【0034】
【表1】

【0035】
噴射流体を温水(70〜80℃)に替えて同じ条件で行っても結果は変わらなかった。また、水に洗剤(ECOLAB(登録商標)AC−700)を0.7%希釈したものを噴射流体として同じ条件で行ったが結果は変わらなかった。また、前処理として、容器を温水(65℃)に10分間浸漬した後、同様にシール剥がしを行ったが、前処理を行った場合と行わなかった場合とで結果は変わらなかった。
【0036】
ノズルと容器の離隔距離を変えた所、150mmまでは同じ結果が得られるが、離隔距離をそれ以上にすると、好適な吐出圧の範囲がより高い方へとシフトした。しかしながら、好適な吐出圧の範囲が高くなると、装置全体が大掛かりのものとなり高コスト化する。一方、ノズルと容器(シール)との間の離隔距離は、比較的自由に設定可能であるので、ノズルと容器(シール)との間の距離を可能な限り小さくした範囲で、吐出圧を上記好適な範囲(14MPaより大きく20MPa未満)の中で設定することが好ましいことが分かった。
【0037】
実験的にノズルに替えてブラシを用いて研磨を行ったところ、柔らかいブラシではシールを完全に除去することはできず、硬いブラシではシールは剥がれるが、容器の塗料層まで削れてしまった。このように、ブラシのような固体を用いてシール粘着部分を直接擦る方式では、研磨量の調整は非常に困難であるが、流体を噴霧する場合、その吐出圧の制御で、適度な研磨を行うことができることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるシール剥がし機の全体側面図である。
【図2】図1の内部構造を表す部分図である。
【図3】本発明によるシール剥がし機の内部構造の上方から見た図である。
【図4】本発明によるシール剥がし機の内部構造の前方から見た図である。
【図5】本発明によるシール剥がし機の要部の正面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 シール剥がし機
12 容器
14 シール
32 ノズル
50 高圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製の被粘着体の側面に粘着されたシールを剥がすシール剥がし機であって、
高圧流体を吐出する高圧ポンプと、
高圧ポンプからの高圧流体を前記被粘着体のシール粘着部分に向けて噴射するノズルと、
を備え、高圧ポンプの吐出圧が14MPaより大きく20MPa未満の範囲にあり、被粘着体とノズルとの間の離隔距離が150mm以下であることを特徴とするシール剥がし機。
【請求項2】
前記ノズルの噴射中心線は、被粘着体のシール粘着部分に向けて被粘着体に対して直交する方向に向いていることを特徴とする請求項1記載のシール剥がし機。
【請求項3】
前記ノズルは、シールの粘着範囲をカバーするように上下運動を行うことを特徴とする請求項1または2記載のシール剥がし機。
【請求項4】
前記被粘着体とノズルとの相対搬送速度は10mm/sec〜50mm/secの範囲内にあることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシール剥がし機。
【請求項5】
前記ノズルは旋回流を噴射する旋回ノズルであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシール剥がし機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate