説明

シール構造体

【課題】携帯電話、ゲーム機、ノート型パソコンなどの電子機器に適用されるシール構造体において、防水性を高める。
【解決手段】シール構造体1は、連結部材に配設されるケーブル4が挿入されるチューブ2を有し、チューブ2の一端には、第1の筐体および第2の筐体の一方を構成する一対のハウジング間をシールする枠状の第1のガスケット3が一体成形されている。これにより、チューブ2と第1のガスケット3との隙間から浸水する事態を回避し、シール構造体1の防水性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、ゲーム機、ノート型パソコンなどの電子機器に適用するに好適なシール構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子機器としては、2つの筐体がヒンジを介して折り畳み自在に連結された折り畳み式のものが広く普及している。この折り畳み式の電子機器では、2つの筐体間で回路を接続するため、ヒンジにケーブルを配設する必要がある。そして、このような折り畳み式の電子機器においても、近年、防水性に対する要求が強くなってきている。
【0003】
従来、こうした要求に応えるべく、ケーブルが挿入されるチューブを押出成形で形成した後、このチューブにガスケットを取り付けてシール構造体を製造し、このシール構造体を折り畳み式の電子機器に組み込む技術(以下、公知技術1という。)が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−252059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、公知技術1では、チューブとガスケットがそれぞれ別個に製造された部材であるため、両者の隙間から浸水してシール構造体の防水性が低下しないように工夫を凝らす必要があるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、特別な工夫を凝らすことなく防水性を高めることが可能なシール構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1の筐体に連結部材を介して第2の筐体が接続された電子機器に適用されるシール構造体であって、前記連結部材に配設されるケーブルが挿入されるチューブを有し、前記チューブの一端には、前記第1の筐体および前記第2の筐体の一方を構成する一対のハウジング間をシールする枠状の第1のガスケットが一体成形されているシール構造体としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記チューブ内には、前記第1の筐体および前記第2の筐体の一方を構成する一対のハウジング同士が嵌合する部位に、第1の管体が当該チューブに挿入されるケーブルを保護しうるように設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、前記第1のガスケットには、第1の補強フィルムが当該第1のガスケットの形状を保持するように設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記第1の補強フィルムには、前記第1のガスケットを前記第1の筐体および前記第2の筐体の一方に組み付けるための第1の位置決め孔が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の構成に加え、前記チューブの他端には防水リングが、前記第1の筐体および前記第2の筐体の他方を構成する一対のハウジング間に介在して防水するように設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の構成に加え、前記チューブの他端には、前記第1の筐体および前記第2の筐体の他方を構成する一対のハウジング間をシールする枠状の第2のガスケットが一体成形されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の構成に加え、前記チューブ内には、前記第1の筐体および前記第2の筐体の他方を構成する一対のハウジング同士が嵌合する部位に、第2の管体が当該チューブに挿入されるケーブルを保護しうるように設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の構成に加え、前記第2のガスケットには、第2の補強フィルムが当該第2のガスケットの形状を保持するように設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の構成に加え、前記第2の補強フィルムには、前記第2の補強フィルムを前記第1の筐体および前記第2の筐体の他方に組み付けるための第2の位置決め孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、チューブと第1のガスケットとが一体成形されているので、両者の隙間から浸水する事態を回避し、シール構造体の防水性を高めることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、チューブ内に挿入されるケーブルの損傷を第1の管体で防ぐことができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、第1の補強フィルムで第1のガスケットの形状が保持されるため、シール構造体のハンドリング性を向上させることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、ガスケット組付用の第1の位置決め孔により、ガスケットの取付作業を高精度に素早く実行することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、他方の筐体において、ハウジングとチューブとの隙間からの浸水を防水リングで防ぎ、防水性を高めることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、チューブと第2のガスケットとが一体成形されているので、両者の隙間から浸水する事態を回避し、シール構造体の防水性を高めることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、チューブ内に挿入されるケーブルの損傷を第2の管体で防ぐことができる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、第2の補強フィルムで第2のガスケットの形状が保持されるため、シール構造体のハンドリング性を向上させることができる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、ガスケット組付用の第2の位置決め孔により、ガスケットの取付作業を高精度に素早く実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1に係るシール構造体を示す平面図である。
【図2】同実施の形態1に係るシール構造体の製造方法を示す工程図であって、(a)は成形工程図、(b)はバリ取り工程図、(c)は中子抜き工程図、(d)は金属管挿入工程図、(e)は内側カット工程図、(f)は保護シート梱包工程図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るシール構造体を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係るシール構造体を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態4に係るシール構造体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0027】
図1および図2には、本発明の実施の形態1を示す。
【0028】
まず、構成を説明する。
【0029】
シール構造体1は、図1に示すように、選択接着性シリコーンゴムからなる円筒状のチューブ2を有しており、チューブ2の一端には、選択接着性シリコーンゴムからなる枠状のガスケット3が一体成形されている。チューブ2内には、ガスケット3との結合部に円筒状の金属管5が装着されている。また、ガスケット3の枠内にはポリカーボネート樹脂製の補強フィルム6が、ガスケット3の形状を保持するようにガスケット3と一体成形されている。補強フィルム6には、ガスケット組付用の位置決め孔7が2つ形成されている。
【0030】
なお、選択接着性シリコーンゴムは、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂とは強固に接着するが、金属成形金型とは接着しないという選択的な接着特性を有する。この選択接着シリコーンゴムの具体例としては、信越化学工業(株)製の液状シリコーンゴムKE−2090−40、KE−2090−50、KE−2090−60、KE−2090−70、X−35−1625、X−30−3511Uなどを挙げることができる。
【0031】
ここで、チューブ2およびガスケット3の素材としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、二トリルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴムなどの熱硬化性エラストマーや、スチレン系、エステル系、ウレタン系の熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。但し、日常的に使用される電子機器の防水を目的とするシール構造体1としては、温度変化によるゴム物性の変化が小さく、圧縮永久歪特性や成形性等に優れることが望まれるため、このような観点からは、チューブ2およびガスケット3の素材としてシリコーンゴムを採用することが好ましい。
【0032】
また、チューブ2およびガスケット3のゴム硬度としては、JIS K6253のショアAで、20度以上60度以下であることが好ましく、30度以上50度以下であることが更に好ましい。このゴム硬度が70度以上になると、チューブ2が硬くなって容易に変形しないため、後述するように、シール構造体1を折り畳み式の携帯電話に組み込んでチューブ2をヒンジに配設したときに、ハウジング内でチューブ2が自由に動作し難くなる恐れがある。また、このゴム硬度が70度以上になると、ガスケット3の反発弾性が大きくなるため、後述するように、シール構造体1を携帯電話に組み込んでガスケット3を筐体に取り付けたときに、ハウジングが完全に密閉できなかったり変形しやすくなったりするため、ガスケット3によるシール性が劣る場合がある。一方、このゴム硬度が硬度が20度未満の場合、粘着性が増して異物が付着しやすくなることや、強度不足が生じることから、チューブ2およびガスケット3の取り扱いに注意しなければならなくなる。
【0033】
また、チューブ2の厚さは、0.15mm以上0.6mm未満が好ましい。チューブ2の厚さが0.15mm未満では、チューブ2の成形性に劣るばかりか、後述するように、チューブ2内にケーブル4を挿入するときに、その挿入に困難を伴う。逆に、チューブ2の厚さが0.6mm以上では、チューブ2が硬くなって自在に変形し難くなる。一方、チューブ2とガスケット3との接合部の厚さは、携帯電話の薄型化に対応すべく、0.25mm以下にすることも可能である。これは、チューブ2とガスケット3とは同一素材で一体成形されているため、厚さ0.25mm以下でも所定の強度を保つことができるためである。
【0034】
また、補強フィルム6の素材としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、PMMA等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などを挙げることができる。但し、フィルム成形性、強度、易接着性、コスト等を考慮すると、特にポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0035】
また、補強フィルム6の厚さは、0.1mm以上0.5mm以下が好ましい。補強フィルム6の厚さが0.1mm未満では、ガスケット3の形状を保持する補強効果が薄れ、シール構造体1のハンドリング性(取り扱い性)が低下してしまう。逆に、補強フィルム6の厚さが0.5mmを超えると、補強フィルム6の剛性が増大するため、ガスケット3によるシール性が低下する恐れがある。
【0036】
次に、このシール構造体1の製造方法について説明する。
【0037】
まず、成形工程で、図2(a)に示すように、補強フィルム6および丸棒状(円柱状)の金属製の中子9を金型(図示せず)にインサートし、この状態で、この金型のキャビティ内に液状の選択接着性シリコーンゴムを注入して固化させることにより、インサート成形を行った後、金型から離型する。
【0038】
この補強フィルム6には、ガスケット組付用の位置決め孔7の他に、予め成形用の位置決め孔8Aが2つ形成されている。したがって、これらの位置決め孔8Aを利用して補強フィルム6のインサート作業を高精度に素早く実行することができる。また、補強フィルム6には、予め内側カット用の位置決め孔8Bが2つ形成されている。
【0039】
このとき、選択接着性シリコーンゴムを用いるため、補強フィルム6に接着する一方で、金型や中子9には接着しないという選択特性を発揮する。その結果、インサート作業を短時間で行うことができるとともに、金型からの離型作業や、後述する中子9の抜き取り作業を容易に行うことができる。
【0040】
次に、バリ取り工程に移行し、図2(b)に示すように、このインサート成形で生じたバリ10を取り去る。
【0041】
次いで、中子抜き工程に移行し、図2(c)に示すように、チューブ2から中子9を抜き取る。
【0042】
次に、金属管挿入工程に移行し、図2(d)に示すように、チューブ2内に金属管5を挿入し、ガスケット3との結合部に位置決めする。
【0043】
次いで、内側カット工程に移行し、図2(e)に示すように、ガスケット3の内側にある補強フィルム6の大部分を切り取る。但し、2つのガスケット組付用の位置決め孔7を含む補強フィルム6部分がガスケット3に残るようにする。
【0044】
このとき、2つの内側カット用の位置決め孔8Bを切欠きとして利用して補強フィルム6を切り取ることにより、補強フィルム6の切取作業を迅速に行うことができる。
【0045】
最後に、ガスケット3の表面に塵埃が静電気で付着するのを防ぐため、保護シート梱包工程に移行し、図2(f)に示すように、ガスケット3および補強フィルム6を保護シート12で梱包する。
【0046】
ここで、シール構造体1の製造が終了する。
【0047】
なお、このシール構造体1を折り畳み式の携帯電話(図示せず)に組み込む際には、この携帯電話の一方の筐体にガスケット3を取り付けて、この筐体を構成する一対のハウジング間をシールするとともに、この携帯電話のヒンジにチューブ2を配設する。そして、2つの筐体間で回路を接続するケーブル4は、チューブ2内に挿入される。
【0048】
したがって、このシール構造体1においては、チューブ2とガスケット3とが一体成形されているので、両者の隙間から浸水する事態を回避し、シール構造体1の防水性を高めることができる。その結果、携帯電話の一方の筐体において、その防水性が向上する。
【0049】
また、チューブ2内には、ガスケット3との結合部、つまり一方の筐体を構成する一対のハウジングで挟み込まれる部位に、剛体である金属管5が設けられている。そのため、携帯電話の一方の筐体にガスケット3を取り付けるときに、この筐体を構成する一対のハウジングからチューブ2に対して、その求心方向(つまり、金属管5側)に加力されても、金属管5がその剛性によって形状を保持する。その結果、チューブ2がハウジングと金属管5とに挟まれて圧縮変形するため、シール構造体1の防水性がますます向上する。これに加えて、金属管5の内部空間がそのまま確保されるので、チューブ2内に挿入されるケーブル4が一対のハウジングの嵌合時に損傷を受ける事態を未然に防ぐことができる。
【0050】
また、ガスケット3には補強フィルム6が設けられているため、枠状のガスケット3の形状を保持することができる。その結果、シール構造体1を携帯電話に組み込む際に、シール構造体1のハンドリング性を向上させ、ひいては所要時間を短縮することができる。
【0051】
また、補強フィルム6にはガスケット組付用の位置決め孔7が2つ形成されているので、シール構造体1を携帯電話に組み込む際に、これらの位置決め孔7を利用してガスケット3の取付作業を高精度に素早く実行することができる。
[発明の実施の形態2]
【0052】
図3には、本発明の実施の形態2を示す。
【0053】
この実施の形態2に係るシール構造体1では、図3に示すように、チューブ2の一端に、選択接着性シリコーンゴムからなる枠状のガスケット3が一体成形されており、チューブ2内には、ガスケット3との結合部に円筒状の金属管5Aが装着されている。また、チューブ2の他端には、円筒状の金属管5Bが内部に装着されているとともに、円環状の防水リング13が外周部に嵌着されている。この防水リング13は、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂13aとシリコーンゴムなどの弾性体13bとからなる複合品である。なお、チューブ2に対する金属管5Bおよび防水リング13の取付順序は、いずれが先でも構わない。
【0054】
そして、このシール構造体1を折り畳み式の携帯電話に組み込む際には、上述した実施の形態1と同様の手順に従うが、図3に示すように、この携帯電話の他方の筐体を構成する一対のハウジング15A、15Bとチューブ2との間に防水リング13を介在させる。その結果、これらのハウジング15A、15Bとチューブ2との隙間からの浸水を防水リング13で防ぐことができるため、他方の筐体においても、その防水性が向上する。
【0055】
その他の構成については、上述した実施の形態1と同様であるため、実施の形態1と同じ作用効果を奏する。
[発明の実施の形態3]
【0056】
図4には、本発明の実施の形態3を示す。
【0057】
上述した実施の形態2では、チューブ2およびガスケット3の成形とは別個に防水リング13を製造し、この防水リング13をチューブ2に嵌着する場合について説明したが、この防水リング13をチューブ2およびガスケット3と同時に成形することもできる。この方法を実施の形態3として以下に説明する。
【0058】
すなわち、この実施の形態3では、上述した実施の形態1と同様の手順でシール構造体1の製造するが、成形工程においては、補強フィルム6および中子9に加えて防水リング13の熱可塑性樹脂13aを金型にインサートする。これにより、防水リング13をチューブ2およびガスケット3と同時にインサート成形することもできる。
【0059】
その他の構成については、上述した実施の形態2と同様であるため、実施の形態2と同じ作用効果を奏する。
[発明の実施の形態4]
【0060】
図5には、本発明の実施の形態4を示す。この実施の形態4では、折り畳み式の携帯電話の2つの筐体に対応して、チューブ2の両端にガスケット3A、3Bが一体成形され、これらのガスケット3A、3Bがチューブ2について略線対称となるように構成されている。
【0061】
すなわち、この実施の形態4に係るシール構造体1は、図5に示すように、選択接着性シリコーンゴムからなる円筒状のチューブ2を有しており、チューブ2の一端には、選択接着性シリコーンゴムからなる枠状の第1のガスケット3Aが一体成形されている。チューブ2内には、第1のガスケット3Aとの結合部に円筒状の第1の金属管5Aが装着されている。また、第1のガスケット3Aの枠内にはポリカーボネート樹脂製の第1の補強フィルム6Aが、第1のガスケット3Aの形状を保持するように第1のガスケット3Aと一体成形されている。第1の補強フィルム6Aには、ガスケット組付用の第1の位置決め孔7Aが2つ形成されている。
【0062】
また、チューブ2の他端には、選択接着性シリコーンゴムからなる枠状の第2のガスケット3Bが一体成形されている。チューブ2内には、第2のガスケット3Bとの結合部に円筒状の第2の金属管5Bが装着されている。また、第2のガスケット3Bの枠内にはポリカーボネート樹脂製の第2の補強フィルム6Bが、第2のガスケット3Bの形状を保持するように第2のガスケット3Bと一体成形されている。第2の補強フィルム6Bには、ガスケット組付用の第2の位置決め孔7Bが2つ形成されている。
【0063】
そして、このシール構造体1を折り畳み式の携帯電話(図示せず)に組み込む際には、この携帯電話の一方の筐体に第1のガスケット3Aを取り付けて、この筐体を構成する一対のハウジング間をシールするとともに、この携帯電話の他方の筐体に第2のガスケット3Bを取り付けて、この筐体を構成する一対のハウジング間をシールし、この携帯電話のヒンジにチューブ2を配設する。そして、2つの筐体間で回路を接続するケーブル4は、チューブ2内に挿入される。
【0064】
したがって、このシール構造体1においては、チューブ2と2つのガスケット3A、3Bとが一体成形されているので、両者の隙間から浸水する事態を回避し、シール構造体1の防水性を高めることができる。その結果、携帯電話の両方の筐体において、その防水性が向上する。
【0065】
また、チューブ2内には、第1のガスケット3Aとの結合部、つまり一方の筐体を構成する一対のハウジングで挟み込まれる部位に、剛体である第1の金属管5Aが設けられている。そのため、携帯電話の一方の筐体に第1のガスケット3Aを取り付けるときに、この筐体を構成する一対のハウジングからチューブ2に対して、その求心方向(つまり、第1の金属管5A側)に加力されても、第1の金属管5Aがその剛性によって形状を保持する。その結果、チューブ2がハウジングと第1の金属管5Aとに挟まれて圧縮変形するため、シール構造体1の防水性がますます向上する。これに加えて、第1の金属管5Aの内部空間がそのまま確保されるので、チューブ2内に挿入されるケーブル4が一対のハウジングの嵌合時に損傷を受ける事態を未然に防ぐことができる。
【0066】
同様に、チューブ2内には、第2のガスケット3Bとの結合部、つまり他方の筐体を構成する一対のハウジングで挟み込まれる部位に、剛体である第2の金属管5Bが設けられている。そのため、携帯電話の他方の筐体に第2のガスケット3Bを取り付けるときに、この筐体を構成する一対のハウジングからチューブ2に対して、その求心方向(つまり、第2の金属管5B側)に加力されても、第2の金属管5Bがその剛性によって形状を保持する。その結果、チューブ2がハウジングと第2の金属管5Bとに挟まれて圧縮変形するため、シール構造体1の防水性がますます向上する。これに加えて、第2の金属管5Bの内部空間がそのまま確保されるので、チューブ2内に挿入されるケーブル4が一対のハウジングの嵌合時に損傷を受ける事態を未然に防ぐことができる。
【0067】
また、2つのガスケット3A、3Bにはそれぞれ補強フィルム6A、6Bが設けられているため、枠状のガスケット3A、3Bの形状を保持することができる。その結果、シール構造体1を携帯電話に組み込む際に、シール構造体1のハンドリング性を向上させ、ひいては所要時間を短縮することができる。
【0068】
また、2つの補強フィルム6A、6Bにはそれぞれガスケット組付用の位置決め孔7A、7Bが2つずつ形成されているので、シール構造体1を携帯電話に組み込む際に、これらの位置決め孔7A、7Bを利用して2つのガスケット3A、3Bの取付作業を高精度に素早く実行することができる。
[発明のその他の実施の形態]
【0069】
なお、上述した実施の形態1〜4では、管体として金属管5、5A、5Bを用いる場合について説明したが、金属管5、5A、5B以外の管体(例えば、硬質樹脂管など)を代用または併用することもできる。
【0070】
また、上述した実施の形態1〜4では、シール構造体1の生産性を向上させることを目的として、選択接着性シリコーンゴムを用いてシール構造体1を製造する場合について説明した。しかし、選択接着性のシリコーンゴムを用いない場合であっても、補強フィルム6の所望の部分に予め印刷や塗装等によってプライマー処理を施すことにより、同様の目的を達することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、折り畳み式またはスライド式の移動体端末(携帯電話、無線機、PDA(personal digital assistant)など)に限らず、電子手帳、ゲーム機、ノート型パソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラその他の電子機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1……シール構造体
2……チューブ
3……ガスケット(第1のガスケット)
3A……第1のガスケット
3B……第2のガスケット
4……ケーブル
5……金属管(第1の管体)
5A……第1の金属管(第1の管体)
5B……第2の金属管(第2の管体)
6……補強フィルム(第1の補強フィルム)
6A……第1の補強フィルム
6B……第2の補強フィルム
7……ガスケット組付用の位置決め孔(ガスケット組付用の第1の位置決め孔)
7A……ガスケット組付用の第1の位置決め孔
7B……ガスケット組付用の第2の位置決め孔
8A……成形用の位置決め孔
8B……内側カット用の位置決め孔
9……中子
10……バリ
12……保護シート
13……防水リング
13a……熱可塑性樹脂
13b……弾性体
15A、15B……ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体に連結部材を介して第2の筐体が接続された電子機器に適用されるシール構造体であって、
前記連結部材に配設されるケーブルが挿入されるチューブを有し、
前記チューブの一端には、前記第1の筐体および前記第2の筐体の一方を構成する一対のハウジング間をシールする枠状の第1のガスケットが一体成形されていることを特徴とするシール構造体。
【請求項2】
前記チューブ内には、前記第1の筐体および前記第2の筐体の一方を構成する一対のハウジング同士が嵌合する部位に、第1の管体が当該チューブに挿入されるケーブルを保護しうるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシール構造体。
【請求項3】
前記第1のガスケットには、第1の補強フィルムが当該第1のガスケットの形状を保持するように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のシール構造体。
【請求項4】
前記第1の補強フィルムには、前記第1のガスケットを前記第1の筐体および前記第2の筐体の一方に組み付けるための第1の位置決め孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシール構造体。
【請求項5】
前記チューブの他端には防水リングが、前記第1の筐体および前記第2の筐体の他方を構成する一対のハウジング間に介在して防水するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のシール構造体。
【請求項6】
前記チューブの他端には、前記第1の筐体および前記第2の筐体の他方を構成する一対のハウジング間をシールする枠状の第2のガスケットが一体成形されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のシール構造体。
【請求項7】
前記チューブ内には、前記第1の筐体および前記第2の筐体の他方を構成する一対のハウジング同士が嵌合する部位に、第2の管体が当該チューブに挿入されるケーブルを保護しうるように設けられていることを特徴とする請求項6に記載のシール構造体。
【請求項8】
前記第2のガスケットには、第2の補強フィルムが当該第2のガスケットの形状を保持するように設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載のシール構造体。
【請求項9】
前記第2の補強フィルムには、前記第2の補強フィルムを前記第1の筐体および前記第2の筐体の他方に組み付けるための第2の位置決め孔が形成されていることを特徴とする請求項8に記載のシール構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−18859(P2011−18859A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164184(P2009−164184)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】