説明

シール装置

【課題】容器の筒状連通口に対する着脱を簡便に行うことができるシール装置を提供する。
【解決手段】筒状口金30がアジャストリング14の内挿部に内挿された状態で、レバー22の操作により偏心カム20をそのリフト量が増大する向きに回転させることで、押し子18をシールリング16側へ押圧する。シールリング16の軸方向の一方側及び外周側への移動はアジャストリング14により拘束されているため、押し子18により押圧されたシールリング16は、内周側へ膨らむように変形する。このシールリング16の変形によって、シールリング16を筒状口金30の外周部に密着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置に関し、特に、筒状連通口が設けられた容器に用いられ、筒状連通口に装着されることで容器の密栓を行うシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシール装置の関連技術が下記特許文献1に開示されている。特許文献1のシール装置は、円筒状被検査体の気密検査に用いられるものであり、円筒状被検査体の内部へ流体を圧入するための加圧口を有する第1ブロックと、円筒状被検査体の被検査部を挿入する第2ブロックと、円筒状被検査体、第1ブロック、及び第2ブロックで区画される流体通路を第1ブロックと第2ブロックの間に挟み込まれて押圧するシール部材を備えている。そして、シール部材のうち、第1ブロック側の面と第2ブロック側の面の一方をテーパとし、他方を押さえ方向に略直交する方向に延びる平坦な面としている。これによって、シール力の向上を図っている。
【0003】
その他にも、特許文献2のシール装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−251787号公報
【特許文献2】特開2002−55018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば容器の洩れを検査する目的で、容器の内部と外部を連通する筒状連通口にシール装置を装着することで容器の密栓を行う場合は、筒状連通口の外周部にてシールを行うことで筒状連通口とシール部材の接触面積を増大させることができ、シールを確実に行うことができる。その場合に、シール装置を筒状連通口に対して簡便に着脱するためには、シール部材を容易に内周側へ変形させてシールを行うとともに、シール部材の内周側への変形を容易に復元してシールを解放することが要求される。
【0006】
特許文献1においては、第1ブロックにシール部材側への押圧力を加えることで円筒状被検査体のシールを行い、第1ブロックに加えるシール部材側への押圧力を0にすることで円筒状被検査体のシールを解放している。しかし、特許文献1には、第1ブロックに押圧力を加えるための具体的構成は何ら示されておらず、シール部材の内周側への変形及びその復元を容易に行うことが困難であり、シール装置を筒状連通口に対して簡便に着脱することが困難である。
【0007】
本発明は、容器の筒状連通口に対する着脱を簡便に行うことができるシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシール装置は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明に係るシール装置は、筒状連通口が設けられた容器に用いられ、筒状連通口に装着されることで容器の密栓を行うシール装置であって、外部から押圧されることで変形可能なシール部材と、軸方向の一方側から筒状連通口が内挿される内挿部が形成され、且つシール部材を内挿部より外周側の位置にて軸方向の一方側及び外周側から支持するガイド部材と、前記軸方向に移動可能な押圧部材であって、該軸方向においてシール部材を押圧部材とガイド部材との間に挟んだ状態でシール部材を該軸方向の他方側から押圧することでシール部材を内周側へ変形させる押圧部材と、押圧部材に当接し、回転運動により押圧部材をシール部材側へ押圧する押圧カムと、を備え、筒状連通口が内挿部に内挿された状態で、押圧カムの回転運動によりシール部材を内周側へ変形させることで、シール部材を筒状連通口の外周部に密着させることを要旨とする。
【0010】
本発明の一態様では、押圧カムを回転運動させるためのレバーを備え、筒状連通口が内挿部に内挿された状態で、レバーの操作により押圧カムを回転運動させることで、シール部材を内周側へ変形させることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、押圧カムの回転運動によりシール部材を容易に内周側へ変形させることができ、シール部材を筒状連通口の外周部に容易に密着させることができる。さらに、押圧カムの回転運動によりシール部材の内周側への変形を容易に復元することができ、シール部材を筒状連通口の外周部から容易に解放することができる。したがって、シール装置を容器の筒状連通口に対して簡便に着脱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るシール装置の内部構成の概略を示す図である。本実施形態に係るシール装置10は、以下に説明する外筒12、アジャストリング14、シールリング16、押し子18、偏心カム20、及びレバー22を備えている。本実施形態に係るシール装置は、例えば燃料タンク等の容器の洩れ検査を行うときに用いられるものであり、容器の内部と外部を連通する筒状口金30に装着されることで容器の密栓を行う。
【0014】
アジャストリング14は、略円筒形状を呈しており、周方向に配列された複数のナット(ねじ止め部品)24により外筒12の内周側にねじ止めされている。アジャストリング14には、その中心軸14aに平行な方向(以下軸方向とする)の一方側(図1における右側)から容器の筒状口金30が内挿される内挿部が形成されている。ここで、図1は、筒状口金30が軸方向の一方側からアジャストリング14の内挿部に内挿された状態を示している。ただし、図1では、筒状口金30が接合された容器本体の図示を省略している。そして、アジャストリング14は、シールリング16をこの内挿部より外周側の位置にて軸方向の一方側及び外周側から支持する。
【0015】
押し子18は、アジャストリング14の内周壁に沿って軸方向に摺動可能である。押し子18における軸方向の他方側(図1における左側)の端部には、押圧面18a(平面)が形成されている。シールリング16は、軸方向において押し子18とアジャストリング14との間に挟まれており、押圧面18aに軸方向の一方側への押圧力を作用させることで、シールリング16を軸方向の他方側から押圧することができる。
【0016】
ここでのシールリング16は、ゴム(例えばNBR)等の弾性変形可能な材料で構成することができる。シールリング16がアジャストリング14と軸方向の一方側において接触する面は、シールリング16の内周側ほど軸方向の一方側へ張り出すように、軸方向と垂直な面に対して傾斜している。そして、シールリング16が押し子18と軸方向の他方側において接触する面は、シールリング16の内周側ほど軸方向の他方側へ張り出すように、軸方向と垂直な面に対して傾斜している。
【0017】
偏心カム20は、そのリフト量がその回転位相に応じて変化し、押し子18の押圧面18aに当接している。そして、偏心カム20は、そのリフト量が増大する向き(図1の反時計まわり)の回転運動により、押し子18をシールリング16側(軸方向の一方側)へ押圧することができる。偏心カム20にはレバー22が取り付けられており、レバー22の操作により偏心カム20を回転運動させることができる。なお、偏心カム20の回転軸(偏心軸)20aは、外筒12に回転可能な状態で支持されている。また、外筒12には、レバー22の回転位置を制限するためのストッパー面12a,12bが形成されている。
【0018】
本実施形態に係るシール装置10を用いて筒状口金30が接合された容器の洩れ検査を行う場合は、容器内に洩れ検査用気体(例えばヘリウム等)が入れられた状態で、シール装置10を筒状口金30(容器が燃料タンクの場合は燃料注入口)に装着することで容器の密閉を行う。その際には、図1に示すように、筒状口金30を軸方向の一方側からアジャストリング14の内挿部に内挿する。この状態で、筒状口金30の先端部は、押し子18によりほぼ覆われる。
【0019】
そして、筒状口金30がアジャストリング14の内挿部に内挿された状態で、レバー22をストッパー面12aに当接する回転位置から偏心カム20のリフト量が増大する向き(図1の反時計まわり)に回転させる。このレバー22の操作によって、押し子18をシールリング16側へ押圧する。ここで、シールリング16の軸方向の一方側及び外周側への移動は、アジャストリング14により拘束されている。そのため、軸方向において押し子18とアジャストリング14との間に挟まれたシールリング16は、図1の矢印に示すように、全周において内周側へ膨らむように変形する。このシールリング16の変形によって、シールリング16を筒状口金30の外周部に全周において密着させることができ、容器の密閉を行うことができる。
【0020】
このように、シールリング16を筒状口金30の外周部に密着させてシールを行うことで、シールリング16と筒状口金30との接触面積を増大させることができ、シールを確実に行うことができる。そして、シールリング16の軸方向における押し子18及びアジャストリング14との接触面を軸方向と垂直な面に対して傾斜させることで、シールリング16と筒状口金30の外周部との密着力を増大させることができる。さらに、レバー22(偏心カム20)の回転角度を調整することで、シールリング16の内周側への変形量を調整することができ、シールリング16と筒状口金30の外周部との密着力を調整することができる。なお、外筒12とアジャストリング14を締結するナット24の締め付け力を調整することによっても、シールリング16と筒状口金30の外周部との密着力を調整することができる。
【0021】
シール装置10を筒状口金30に装着することで容器の密閉を行った後は、容器を図示しないチャンバー内に入れて容器の洩れを検査する。容器の洩れを検査した後は、シール装置10を筒状口金30から取り外す。その際には、シールリング16が筒状口金30の外周部に密着した状態で、レバー22を偏心カム20のリフト量が減少する向き(図1の時計まわり)に回転させてストッパー面12aに当接する回転位置まで戻す。このレバー22の操作によって、シールリング16側へ移動した押し子18を元の位置まで戻すことができ、シールリング16の内周側への変形を復元することができる。したがって、シールリング16を筒状口金30の外周部から解放することができ、シール装置10を筒状口金30から取り外すことができる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態においては、レバー22の操作により偏心カム20をそのリフト量が増大する向きに回転させることで、シールリング16を容易に内周側へ変形させることができるので、シールリング16を筒状口金30の外周部に容易に密着させることができる。さらに、レバー22の操作により偏心カム20をそのリフト量が減少する向きに回転させることで、シールリング16の内周側への変形を容易に復元することができるので、シールリング16を筒状口金30の外周部から容易に解放することができる。したがって、本実施形態によれば、シール装置10を容器の筒状口金30に対して簡便に着脱することができる。
【0023】
また、レバー22の操作によりシールリング16を筒状口金30の外周部に密着させる際には、レバー22(偏心カム20)の回転角度を調整することで、シールリング16と筒状口金30の外周部との密着力を適切に調整することができる。したがって、シール装置10による容器の密栓を高精度に行うことができる。
【0024】
以上の説明においては、洩れ検査用流体として気体を用いた場合について説明したが、液体(例えば水)を用いて容器の洩れ検査を行うこともできる。その場合は、本実施形態に係るシール装置10を筒状口金30に装着して容器の密閉を行った状態で、容器を洩れ検査用液体内に沈めることで、容器の洩れを検査することができる。さらに、本実施形態に係るシール装置10を、容器の洩れ検査以外の用途に使用しても構わない。
【0025】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るシール装置の内部構成の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10 シール装置、12 外筒、14 アジャストリング、16 シールリング、18 押し子、20 偏心カム、22 レバー、24 ナット、30 筒状口金。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状連通口が設けられた容器に用いられ、筒状連通口に装着されることで容器の密栓を行うシール装置であって、
外部から押圧されることで変形可能なシール部材と、
軸方向の一方側から筒状連通口が内挿される内挿部が形成され、且つシール部材を内挿部より外周側の位置にて軸方向の一方側及び外周側から支持するガイド部材と、
前記軸方向に移動可能な押圧部材であって、該軸方向においてシール部材を押圧部材とガイド部材との間に挟んだ状態でシール部材を該軸方向の他方側から押圧することでシール部材を内周側へ変形させる押圧部材と、
押圧部材に当接し、回転運動により押圧部材をシール部材側へ押圧する押圧カムと、
を備え、
筒状連通口が内挿部に内挿された状態で、押圧カムの回転運動によりシール部材を内周側へ変形させることで、シール部材を筒状連通口の外周部に密着させることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシール装置であって、
押圧カムを回転運動させるためのレバーを備え、
筒状連通口が内挿部に内挿された状態で、レバーの操作により押圧カムを回転運動させることで、シール部材を内周側へ変形させることを特徴とするシール装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−242713(P2006−242713A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57824(P2005−57824)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】