説明

ジェットループ型反応器における塩素化されたカルボニル化合物の製造方法

【課題】塩素化された又は部分塩素化されたカルボニル化合物の製造方法であって、従来技術の欠点を克服し、そして高い選択性と生成物純度を伴う廉価な方法となるような方法を提供する。
【解決手段】塩素化された又は部分塩素化されたカルボニル化合物の製造方法において、塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物と塩素化剤とをジェットループ型反応器中で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化されたカルボニル化合物を、ジェットループ型反応器(Jet Loop Reaktor)中で改善された選択性及び改善された転化率をもって製造するための方法であって、相応の塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物と塩素とを、連続的な様式でもしくは半連続的な様式で反応させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素化されたカルボニル化合物は、例えば医薬産業及び農産業において使用するための合成有機化学での多くの生成物のための構成要素である。
【0003】
刊行物には、カルボニル化合物を塩素化させる上での様々な可能性が記載されている。その際、当該塩素化は、撹拌槽、管形反応器、管形反応器と撹拌槽とを組み合わせたもの又は気泡塔において実施される。個々の反応器型における不十分な混和によって、その際しばしば、反応器内部で局所的に不均一な塩素濃度及び温度不均一性がもたらされ、それにより広範な副生成物が生成しうる。そのことにより目的生成物に関しての不十分な選択性及び転化率が引き起こされる。
【0004】
先行技術から公知の個々の反応器型は、それらの混合性能に関して十分に最適化されている。撹拌槽中の通気撹拌機及び管形反応器中のスタティックミキサーを使用する他に、気泡塔の場合には非常に様々なガス分散器(Gasverteiler)が使用されるし、又は気相中では費用のかかる塩素化が実施される。その際、熱排出は、内部熱交換器によって、かつ場合により外部熱交換器によって行われる。
【0005】
カルボニル化合物の塩素化に際して、その転化率はしばしば不完全であり、選択性、ひいては収率はしばしば低い。それにより必要となる後続の後処理は、技術的に費用のかかるものであり、残留物質を生ずるため、生産に費用がかかる。その上、塩素化されたカルボニル化合物及び部分塩素化されたカルボニル化合物は、しばしば熱的に不安定であり、熱的分離の傾向にある。
【0006】
塩素化反応における選択性と転化率を高めるために、従来技術においては種々の方法が提案されている。
【0007】
EP0234503号は、例えば反応混合物に触媒を添加することを記載している。触媒を使用する場合には、高い触媒活性に関連する塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物の純度は、しばしば追加の後処理段階によってのみ達成できるにすぎず、かつ高い触媒価格は、その製造コストに顕れる。
【0008】
GB2036016号は、気相中での塩素化の実施を記載している。この方法は技術的に非常に費用のかかるものである。それというのも、部分的に開始時に気相中で塩素化のために高い反応温度が必要となり、その気相温度によっても低い空時収量しか達成されないからである。同様に、出発材料と生成物のために多段階の後処理工程が必要であり、これはまたしても収率損失が避けられない。
【0009】
DE19842332号から、ジェットループ型反応器及び廃水の生物学的浄化のための方法並びに装置が知られている。化合物の塩素化のために係る装置を使用するという示唆は示されていない。
【特許文献1】EP0234503号
【特許文献2】GB2036016号
【特許文献3】DE19842332号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、塩素化された又は部分塩素化されたカルボニル化合物の製造方法であって、従来技術の欠点を克服し、そして高い選択性と生成物純度を伴う廉価な方法となるような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象は、塩素化された又は部分塩素化されたカルボニル化合物の製造方法において、塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物と塩素化剤とをジェットループ型反応器中で反応させることを特徴とする方法である。
【0012】
ジェットループ型反応器の原理と構造は、まとめて刊行物に記載されている(Zehner,P.著:Bubble Columns 4.Jet Loop Reactors,Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Article Online Posting Date 15.06.2000)。マンモスループ型反応器(Mammutschlaufenreaktor)(エアリフト型反応器)と、プロペラループ型反応器(Propellerschlaufenreaktor)と、ジェットループ型反応器(Strahlschlaufenreaktor)とは区別される。
【0013】
具体的に説明するために、種々のジェットループ型反応器の最重要種を図1〜5に図示する。図1は、部分帰還を伴うジェット領域−ループ型反応器(SZR)の概略図を示し、図2は、部分帰還を伴わないジェット領域−ループ型反応器(SZR)の概略図を示し、図3は、部分帰還を伴うジェットループ型反応器(SSR)の概略図を示し、図4は、部分帰還を伴うジェットループ型反応器(SSR)の概略図を示し、そして図5は、部分帰還を伴わないジェットループ型反応器(SSR)の概略図を示している。
【0014】
ジェットループ型反応器(それにはコンパクトループ型反応器(Kompaktschlaufenreaktor)、衝撃ジェットループ型反応器(Prallstrahlschlaufenreaktor)並びにドライブジェットループ型反応器(Treibstrahlschlaufenreaktor)が属する)では、液体と気体がノズルによって上からもしくは下から反応器中に流される。これは、混合物の循環をもたらしてループ形成をもたらすだけでなく、気相の分散をも引き起こす。前記のドライブジェット型反応器の種類では、高いガス負荷時には、気相の分散と混合物の循環を保証するために高いエネルギー入力が必要である。ジェット領域−ループ型反応器によって、所要エネルギーは、分散と混合物循環との分離が行われるため減少させることができる。
【0015】
塩素化反応における、従来使用されていた気泡塔反応器や他の気液反応器に対するジェットループ型反応器の主な利点は、高い循環流での激しく迅速な液体の混合であり、従って高められた熱及び物質の移動である。更なる利点は、ジェット駆動されるループ型反応器(ジェットループ型反応器=SSR)では、気相の微分散と、ひいてはより大きな比相界面積によってもたらされる。
【0016】
好ましくは、本発明による反応は、ジェット領域−ループ型反応器中で実施される。
【0017】
本発明による方法は、高い選択性及び転化率で、技術的に費用のかかる方法工程を伴わずに、塩素化された又は部分塩素化されたカルボニル化合物を製造することを可能にする。この関連で、塩素化されたカルボニル化合物とは、カルボニル化合物と比べて全ての水素原子が塩素によって置換されている化合物を表す。部分塩素化されたカルボニル化合物は、カルボニル化合物と比べて少なくとも1つの水素原子が塩素によって置換されている化合物である。
【0018】
塩素化のためには、塩素、塩化スルフリル及び塩化チオニルを含む群からの1種もしくは複数種の塩素化剤を使用することができる。特に塩素化剤としては塩素が好ましい。
【0019】
使用可能な塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物は、直鎖状か、分枝鎖状か、又は環状の構造であってよい。
【0020】
カルボニル基の炭素原子上の基R1及びR2は、同一又は異なってよい。その際、前記基が既に1もしくは複数のハロゲン原子を有するか否かは、重要ではない。部分塩素化された化合物は、カルボニル化合物と比べて少なくとも1つの水素原子が塩素によって置換されている化合物である。従って、以下の段落に挙げられる群は、そこに示される水素原子が、化学的に可能であれば1もしくは複数の塩素原子を有してよい。
【0021】
本発明による方法で使用できるカルボニル化合物の例は、ケトン(その際、R1及びR2は、同一又は異なってよく、かつ−CH3及び−(CH2n−CH3を含む群から選択される);シクロケトン(その際、R1及びR2は、同一であり、かつ−(CH2n−を意味する);アルデヒド(その際、R1は、水素原子を表し、かつR2は、−(CH2n−CH3を意味する);1,3−ジカルボン酸(その際、R1は、−O−CH2−CH3であり、かつR2は、−CH2−CO−O−CH2−CH3を意味する);β−ジカルボニル化合物(その際、R1は、−(CH2n−CH3であり、かつR2は、−CH2−CO−CH3、−CH2−CO−O−(CH2n−CH3及び−CH2−CO−N−R′−R′′を含む群から選択され、その際、R′は、H、CH3、(CH2nを含む群から選択され、かつR′′は、H、CH3、(CH2nを含む群から選択される)である。
【0022】
ケトンについて好ましい化合物は、モノクロロアセトンであり、シクロケトンについて好ましい化合物は、シクロペンタノンであり、アルデヒドについて好ましい化合物は、プロピオンアルデヒドであり、1,3−ジカルボン酸について好ましい例は、ジエチルマロン酸であり、そしてβ−ジカルボニル化合物については、アセチルアセトン、2−アセトアセトアミド及びアセト酢酸エチルエステルである。
【0023】
その際、塩素添加は、常圧又は過圧で実施してよく、好ましくは常圧で作業される。該反応は、連続的もしくは半連続的な様式で行うことができる。連続的な塩素添加は、未反応の塩素を循環中に帰還させつつ行うこともできる。
【0024】
塩素化剤を、反応器中の塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物に配量することは、体積流量比1:1〜1:4000、有利には1:30〜1:2000で行われる。その際、配量は、1成分混合ノズルを介しても、又は多成分混合ノズルを介しても行われる。
【0025】
ジェットループ型反応器中の温度は、−20℃〜160℃、有利には5℃〜100℃で実施することができる。
【0026】
塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物は、本発明による方法では、そのままで又は溶剤の存在下で存在してよい。溶剤としては、当業者に公知の全ての溶剤を、該溶剤がその都度使用されるカルボニル化合物と塩素化剤に適している限りは使用することができる。
【0027】
場合により、該反応は、触媒の存在下で実施することもできる。その際、触媒としては、他の塩素化反応から当業者に公知の触媒を使用することができる。
【0028】
例として、DE−19842332号(参照をもって開示されたものとする)から知られるジェット領域−ループ型反応器でジェットループ型反応器の機能が示されるべきである(図1の部分帰還を伴うジェット領域−ループ型反応器(SZR)を参照のこと)。
【0029】
ジェット領域−ループ型反応器は、2つの異なる領域に区分される。上部衝撃プレート4の下方に、いわゆるジェット領域(Strahlzone)1が存在する。この領域は、低い高さ−直径比率を有するコンパクト反応器(Kompaktreaktor)として見なすことができる。循環ポンプ8によって、2成分ノズル5を介して自由噴流が生ずる。塩素10の供給を介して、気相は、2成分ノズル5で、かつ自由噴流において微分散される。気/液混合物は、下部差込管(Einsteckrohr)3を通じて反応器の下部衝撃プレート4にまで押し流される。下部衝撃プレート4で、混合物の方向転換が行われ、それが噴射領域1の環形間隙13において上昇を招く。2成分ノズル5の自由噴流によって、液体の一部は、再び差込管中に吸引され、それがループ流動の形成をもたらす。吸い上げられなかった混合物の部分は、上部衝撃プレート4を通り過ぎて反応領域2へと到達する。環形間隙では差込管中よりも高いガス含有率が生ずるので、密度差が生まれ、それにより逆流がもたらされる。この効果によって、エアリフト原理によるループが形成される。生成物は、生成物出口12を介して取り出すことができる。2成分ノズル5への生成物の帰還は、還流弁7を介して可能であり、又はボトムバルブ6により噴流領域1から取り去ることでも可能である。
【0030】
狙い通りに調整可能な反応実施パラメータと再現可能な方法条件とに基づき、本発明による方法により製造された塩素化された又は部分塩素化されたカルボニル化合物は高い選択性を有し、引き続いての生成物の単離をより簡単にするか又は不要にする。その際、分別蒸留は、最も頻度の高い単離方法となっている。
【0031】
以下で本発明を実施例をもとにより詳細に説明する。
【0032】
以下の実施例は、本発明の一般的な使用分野を示すものであって、それを制限することを意味するものではない。パーセントの表記は、特に記載がない限りは、質量%を表す。
【実施例】
【0033】
実施例1:
モノクロロアセトンを、本発明による方法に従って、部分帰還を伴うジェット領域−ループ型反応器(図1を参照のこと)において塩素によって部分連続的に塩素化して、1,1,3−トリクロロアセトンを得る。
【0034】
1,1,3−トリクロロアセトンの選択性は、以下のように定義される:
【表1】

TCA = トリクロロアセトン
DCA = ジクロロアセトン
TeCA = テトラクロロアセトン
【表2】

【0035】
実施:
モノクロロアセトンを、供給口9を介して反応装置に装入し、40℃に加熱する。ボトムバルブ6を開放し、そして循環ポンプ8を作動させることによって、2成分ノズル5を介して自由噴流を発生させる。塩素を、供給口10を介してジェット領域−ループ型反応器中に2成分ノズル5を介して導入する。温度を、塩素配量の間は、外部循環冷却器を介して40℃に保持する。転化率と選択性を、ガスクロマトグラフィーによって追跡する。達成された選択性によって、触媒としてのヨウ素添加を省くことができる。生成物の単離は、純粋蒸留によって行われる。
【0036】
実施例2:
モノクロロアセトンを、本発明による方法に従って、部分帰還を伴うジェット領域−ループ型反応器において塩素によって連続的に水素化して、1,1,3−トリクロロアセトンを得る。
【0037】
1,1,3−トリクロロアセトンの選択性は、以下のように定義される:
【表3】

【0038】
実施:
実施例1によるモノクロロアセトンと塩素による部分連続的な塩素化をして、ボトムバルブ6を介して循環ポンプ8を作動させた後に、モノクロロアセトンを供給口9を介して、そして塩素を供給口10を介して連続的に2成分ノズル5を介して導入する。温度を、外部循環冷却器を介して40℃に一定に保持する。出来上がった生成物は、連続的に排出口12を介して得られる。転化率と選択性を、ガスクロマトグラフィーによって追跡する。達成された選択性によって、触媒としてのヨウ素添加を省くことができる。生成物の単離は、純粋蒸留によって行われる。
【0039】
実施例3:
マロン酸−ジエチルエステルを、本発明による方法に従って、部分帰還を伴うジェット領域−ループ型反応器(図1を参照のこと)において塩素によって部分連続的に塩素化して、クロロマロン酸−ジエチルエステルを得る。
【0040】
クロロマロン酸−ジエチルエステル(DECM)の選択性は、以下のように定義される:
【表4】

DECM = クロロマロン酸−ジエチルエステル
DEDCM = ジクロロマロン酸−ジエチルエステル
【表5】

【0041】
実施:
実施例1と同様。マロン酸−ジエチルエステルを、反応装置中に装入し、50℃に加熱する。循環ポンプを作動させた後に、塩素を、ジェット領域−ループ型反応器中に配量ノズルを介して導入する。温度を、塩素配量の間は、外部循環冷却器を介して50℃に保持する。転化率と選択性を、ガスクロマトグラフィーによって追跡する。後続の生成物の単離は、達成された選択性に基づき省くことができる。
【0042】
実施例4:
アセト酢酸エチルエステルを、本発明による方法に従って、部分帰還を伴わないジェット領域−ループ型反応器(図2を参照のこと)において塩素によって連続的に塩素化して、2−クロロアセト酢酸エチルエステルを得る。
【0043】
2−クロロアセト酢酸エチルエステルの選択性は、以下のように定義される:
【表6】

2ClACE = 2−クロロアセト酢酸エチルエステル
2,4DClACE = 2,4−ジクロロアセト酢酸エチルエステル
【表7】

【0044】
実施:
アセト酢酸エチルエステルを、供給口7を介して連続的に2成分ノズル5を介してジェット領域−ループ型反応器中に供給する。ジェット領域1において自由噴流が形成した後に、塩素を、連続的に供給口6及び2成分ノズル5を介してジェット領域−ループ型反応器中に導入する。温度は、予冷されたアセト酢酸エチルエステルによって35℃に保持する。出来上がった生成物は、連続的に排出口9を介して得られる。更なる単離のために、過剰のアセト酢酸エチルエステルを反応混合物から留去し、そして塩素化へと帰還させる。転化率と選択性を、ガスクロマトグラフィーによって追跡する。
【0045】
実施例5:
2−アセトアセトアミドを、本発明による方法に従って、部分帰還を伴わないジェット領域−ループ型反応器(図2を参照のこと)において塩素によって連続的に塩素化して、クロロアセトアセトアミドを得る。
【0046】
クロロアセトアセトアミドの選択性は、以下のように定義される:
【表8】

CAA = クロロアセトアセトアミド
DCAA = ジクロロアセトアセトアミド
【表9】

【0047】
実施:
実施例4と同様にして、アセトアセトアミドを2成分ノズルを介してジェット領域−ループ型反応器中に供給する。ジェット領域1において自由噴流が形成した後に、塩素を、連続的に2成分ノズルを介してジェット領域−ループ型反応器中に導入する。温度は、予冷されたアセトアセトアミドによって、かつジャケット冷却を介して−5℃に保持する。目的生成物は固体として生じ、そしてそれは連続的に排出口を介して得られる。更なる単離のために、固体を遠心分離器を介して分離する。転化率と選択性を、ガスクロマトグラフィーによって追跡する。
【0048】
実施例6:
プロピオンアルデヒドをジクロロメタン中で、部分帰還を伴うジェットループ型反応器(図4を参照のこと)において塩化スルフリルによって連続的に塩素化して、2−クロロプロピオンアルデヒドを得る。
【0049】
2−クロロプロピオンアルデヒドの選択性は、以下のように定義される:
【表10】

CPA = 2−クロロプロピオンアルデヒド
DCPA = 2,2−ジクロロプロピオンアルデヒド
【表11】

【0050】
実施:
ジクロロメタンを、供給口13を介して反応装置に装入する。ボトムバルブ4を開放し、そして循環ポンプ6を作動させることによって、2成分ノズル9を介して自由噴流を発生させる。プロピオンアルデヒドを供給口7を介して、かつ塩化スルフリルを供給口8を介して、連続的に2成分ノズル9を介して導入する。同時に、溶剤としてのジクロロメタンの連続的な計量供給を、供給口13を介して反応器中に行う。温度を、外部循環冷却器を介して25℃に一定に保持する。出来上がった生成物は、連続的に排出口12を介して得られる。転化率と選択性を、ガスクロマトグラフィーによって追跡する。達成された選択性によって、引き続いての分別式の純粋蒸留を省くことができる。生成物の単離のために、溶剤としてジクロロメタンを留去する。
【0051】
実施例7:
アセチルアセトンを、部分帰還を伴うジェットループ型反応器(図3を参照のこと)において塩化チオニルによって部分連続的に塩素化して、3−クロロアセチルアセトンを得る。
【0052】
3−クロロアセチルアセトンの選択性は、以下のように定義される:
【表12】

3ClAcAc = 3−クロロアセチルアセトン
3,3ClAcAc = 3,3−ジクロロアセチルアセトン
【表13】

【0053】
実施:
アセチルアセトンを、供給口7を介して反応装置に装入する。ボトムバルブ4を開放し、そして循環ポンプ6を作動させることによって、2成分ノズル9を介して自由噴流を発生させる。アセチルアセトンを供給口7を介して、かつ塩化チオニルを供給口8を介して、連続的に2成分ノズル9を介して導入する。温度を、外部循環冷却器を介して20℃に一定に保持する。転化率と選択性を、ガスクロマトグラフィーによって追跡する。達成された選択性によって、引き続いての純粋蒸留を省くことができる。
【0054】
実施例8:
シクロペンタノンを、部分帰還を伴わないジェットループ型反応器(図5を参照のこと)において塩素によって連続的に塩素化させて、2−クロロシクロペンタノンを得る。
【0055】
2−クロロシクロペンタノンの選択性は、以下のように定義される:
【表14】

CCPA = 2−クロロシクロペンタノン
2CCPE = 3−クロロシクロペンテン−1−オン
3CCPE = 3−クロロシクロペンテン−1−オン
【表15】

【0056】
実施:
シクロペンタノンを供給口5を介して、かつ塩素を供給口4を介して、連続的に2成分ノズル6を介して導入する。温度を、ジェットループ型反応器のジャケット冷却を介して25℃に保持する。出来上がった生成物は、連続的に排出口8を介して得られる。転化率と選択性を、ガスクロマトグラフィーによって追跡する。過剰なシクロペンタノンを、連続的に後続の蒸留において反応生成物と分離し、それを塩素化へと帰還させる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、部分帰還を伴うジェット領域−ループ型反応器(SZR)の概略図を示している。
【図2】図2は、部分帰還を伴わないジェット領域−ループ型反応器(SZR)の概略図を示している。
【図3】図3は、部分帰還を伴うジェットループ型反応器(SSR)の概略図を示している。
【図4】図4は、部分帰還を伴うジェットループ型反応器(SSR)の概略図を示している。
【図5】図5は、部分帰還を伴わないジェットループ型反応器(SSR)の概略図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化された又は部分塩素化されたカルボニル化合物の製造方法において、塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物と塩素化剤とをジェットループ型反応器中で反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、ジェット領域−ループ型反応器を使用することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、塩素、塩化スルフリル及び塩化チオニルを含む群からの1種もしくは複数種の塩素化剤を使用することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法において、使用される塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物が、直鎖状か、分枝鎖状か、又は環状の構造であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法において、塩素化剤を、塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物へと反応器において配量することを、体積流量比1:1〜1:4000で行うことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法において、塩素化されていない又は部分塩素化されたカルボニル化合物を、そのままで又は1種もしくは複数種の溶剤の存在下で使用することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、反応を、ジェットループ型反応器において、−20℃〜160℃の温度で行うことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、反応を、触媒の存在下で実施することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法において、反応を、連続的な又は半連続的な方式で行うことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法において、連続的な塩素添加を、未反応の塩素を循環に帰還させつつ行うことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法において、塩素化を、部分帰還を伴って、及び部分帰還を伴わずに行うことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−120802(P2008−120802A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289843(P2007−289843)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】