説明

ジケトピロロピロール類に基づく顔料調合物

本発明は、20〜100nmの平均粒度d50を有するC.I.ピグメントレッド254と、次式(II)で表される少なくとも一種の顔料系分散剤を含有することを特徴とする顔料調合物に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース顔料としてのC.I.ピグメントレッド254と、アミン基を含むか、またはアニオン性のC.I.ピグメントレッド255に基づく特定の顔料系分散剤とを有する新規な顔料調合物に関する。
【0002】
顔料調合物は、ベース顔料と、特定の作用を有する基で置換された顔料であるいわゆる顔料系分散剤との組み合わせである。顔料系分散剤は、適用媒体中(Anwendungsmedien)、特に塗料、印刷インキおよびインキ中での分散を容易にし、そして顔料のレオロジー的かつ色的な特性を向上させるために顔料に加えられる。それによって、例えば、多くの用途において色強度、透明性並びに光沢を高めることができる。
【0003】
カラーフィルターの製造のためには、コントラスト比の減少を招く粒子の散乱を大幅に排除するために、特に微細な顔料が使用される。
【0004】
国際公開第01/04215号パンフレット(特許文献1)は、微細なジケトピロロピロール系顔料、すなわち、次式のC.I.ピグメントレッド254(I)を開示している。
【0005】
【化1】

【0006】
これは、高い結晶度および特定の吸収特性と結びついている特に狭い粒度分布によって特徴付けられる。そのようなC.I.ピグメントレッド254は、最初に粗製顔料を、乾燥状態で少なくとも80℃で無機塩と共に撹拌し、引き続いて有機溶剤の存在下で無機塩と一緒に混練プロセスに供することにより得ることができる。
【0007】
上記の公知法に基づき、商業製品を入手可能であり、これは高い透明性が必要とされる用途、例えば、カラーフィルターにおける用途に推奨される。それにもかかわらず、これら顔料は、当該技術分野の全ての要求を常に満たすわけではない。とりわけ、透明性、分散性およびレオロジーに関しては、改善の必要性がなおも存在する。
【0008】
欧州特許出願公開第1104789号A1明細書(特許文献2)、欧州特許公開第1362081号B1明細書(特許文献3)および特開平03−026767号公報(特許文献4)は、顔料、例えばジケトピロロピロール類またはキナクリドン類に基づく顔料系分散剤を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第01/04215号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第1104789号A1明細書
【特許文献3】欧州特許公開第1362081号B1明細書
【特許文献4】特開平03−026767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
高い色強度、低い粘度およびベース顔料であるC.I.ピグメントレッド254からのできるだけ小さい色相のずれを有し、そして、とりわけカラーフィルター用途に適した、ベース顔料としてC.I.ピグメントレッド254を有する顔料調合物を提供するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特定の粒度を有するC.I.ピグメントレッド254と、以下に定義する顔料系分散剤に基づく顔料調合物が、個々の化合物の色特性によれば、明らかにより大きな色相のずれが予期されるにもかかわらず、上記課題を解決することが見出された。
【0012】
本発明の対象は、20〜100nmの平均粒度d50を有するC.I.ピグメントレッド254と、次式(II)で表される少なくとも一種の顔料系分散剤を含有することを特徴とする顔料調合物である。
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、
sは、1〜5の数、好ましくは1〜3の数を表し、
nは、0〜4の数、好ましくは0〜2の数を表し、ここでsとnの合計は1〜5となり、
は、分岐状のもしくは非分岐状の、飽和もしくは不飽和の1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、またはC−C−シクロアルキル基、または1、2もしくは3個の芳香族環を有する芳香脂肪族もしくは芳香族の基(ここで環は縮合していても、あるいは結合して架橋していてもよい)、またはO、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子を1、2、3または4個含む、1、2もしくは3個の環を有する複素環の基、またはそれらの組み合わせを意味し;ここで、上述の炭化水素基、シクロアルキル基、芳香族の基、芳香脂肪族の基、およびヘテロ芳香族の基は、OH、CN、F、Cl、Br、NO、CF、C−C−アルコキシ、S−C−C−アルキル、NHCONH、NHC(NH)NH、NHCO−C−C−アルキル、C−C−アルキル、COOR、COO、CONR、NR、SO、SOまたはSO−NRの群から選択される1、2、3または4個の置換基で置換することができ、ここでRとRは、同一または異なって、水素、フェニルまたはC−C−アルキルを意味し、
は、水素またはRを意味し、
、Gは、互いに独立して、H、あるいは化学元素周期律表の1〜5主族または1もしくは2亜族または4〜8亜族から選択される金属カチオンMp+の当量Mp+/mを表し、ここでmは1、2もしくは3の数を、そしてpは1、2もしくは3の数を意味するか、あるいは置換されたもしくは非置換のアンモニウムイオンを表す。
【0015】
上記式(II)の好ましい顔料系分散剤においては、
は、C−C−アルキル、ベンジル、フェニル、フェニル−NR、フェニル−COO、フェニル−SO、C−C−アルキル−NR、C−C−アルキル−SOもしくはC−C−アルキル−COO(式中、RとRは、同一または異なって、水素、フェニルまたはC−C−アルキルを意味する。)を意味し、
は、水素、C−C−アルキル、ベンジルまたはフェニルを意味し、
、Gは、互いに独立して、水素、アルカリ土類金属、アルカリ金属、または第3主族の金属、特にLi、Na、K、Ca、Sr、Ba、Alを意味する。
【0016】
および/またはGがアンモニウムイオンを表す場合には、これには、次のものが挙げられる。
(i)NR10(式中、置換基R,R,RとR10は、互いに独立して、それぞれ水素原子、C−C30−アルキル、C−C30−アルケニル、C−C30−シクロアルキル、フェニル、(C−C)−アルキルフェニル、(C−C)−アルキレンフェニル、または式−[CH(R11)−CH(R11)−O]−H(式中、kは1〜30の数であり、2つの基R11は、互いに独立して、水素、C−C−アルキル、または、k>1である場合に限り、それらの組み合わせを意味する。)で表される(ポリ)アルキレンオキシ基であり;
そして、R、R、Rおよび/またはR10として示したアルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニルまたはアルキルフェニルは、アミノ、ヒドロキシおよび/またはカルボキシによって置換されることができ;
あるいは、置換基RとRが第四級N原子と一緒に、5〜7員の飽和環系を形成することができ、該環は、場合によってはO、SおよびNの群から選択される更に別のヘテロ原子も含むか;
あるいは、置換基R、RとRが第四級N原子と一緒に5〜7員の芳香環系を形成することができ、該環は、場合によってはO、SおよびNの群から選択される更に別のヘテロ原子も含み、および場合によっては上記の環には追加の環が縮合している;
あるいは、
(ii)次式(III)のアンモニウムイオン、
【0017】
【化3】

【0018】
式中、
12、R13、R14とR15は、互いに独立して、水素、または、式-[CH(R11)−CH(R11)O]−H(式中、kとR11は、上述の意味を有する。)で表される(ポリ)アルキレンオキシ基を意味し;
qは、1〜10の数であり;
rは、1〜5の数であり、ここでr≦q+1であり;
Tは、分岐状もしくは非分岐状のC−C−アルキレン基を意味するか、またはq>1である場合に、Tは分岐状もしくは非分岐状のC−C−アルキレン基の組み合わせであることもできる。
【0019】
上記式(II)の顔料系分散剤は、それ自体は公知の化合物であり、公知の方法、例えば、特許文献4(特開平03−026767号公報)または特許文献3(欧州特許公開第1362081B1号明細書)に従って製造することができる。
【0020】
本発明による顔料調合物においては、C.I.ピグメントレッド254と、式(II)の顔料系分散剤との重量比は、好ましくは(99.9:0.1)〜(80:20)、特に好ましくは(99:1)〜(83:17)、とりわけ(98:2)〜(85:15)であり、中でも特に好ましくは(96:4)〜(88:12)である。
【0021】
上記成分であるC.Iピグメントレッド254と本発明による顔料系分散剤の混合物が特許請求の範囲に記載の量比にあれば、ΔHとΔCそれぞれのずれが3.0より大きくなることが予想されるであろう。彩度(Chroma)(C)は、所与の明度での色の鮮やかさを表すパラメータであり、ΔCは、2つの色の鮮やかさの差異を示す。同様に、ΔHは、2つの色を比較した際の色相の差異を示す。
【0022】
しかしながら、驚くべきことに、本発明による顔料調合物を用いたアルキド/メラミン塗料系中で、1/3標準色深さ(Farbtiefe)でDIN EN ISO787−26に従い着色すると、純粋なC.I.PR254および同じ粒度での着色との比較において、好ましくは2.0以下、とりわけ1.5以下、特に好ましくは1.0以下のΔH(CIELAB準拠)を示すことが判明した。好ましくは、ΔC(CIELAB準拠)は2.0以下、とりわけ1.5以下、そして特に好ましくは1.0以下である。
【0023】
本発明による顔料調合物は、好ましくは高結晶性であり、CuKα線を用いた粉末X線回折図において、0.2〜0.7°2θ、特に0.3〜0.5°2θのメインピークの半値幅HWBによって特徴付けられる。
【0024】
本発明の顔料調合物は、20〜100nm、好ましくは30〜80nm、特に30〜60nmの平均粒度d50を有するベース顔料を含有する。C.I.ピグメントレッド254の粒度分布は、好ましくはガウス分布に近似するものであり、標準偏差σは、好ましくは40nm未満、特に好ましくは30nm未満である。一般に、標準偏差は5〜40nm、好ましくは10〜30nmである。
【0025】
本発明の顔料調合物は、驚くべきことに、非常に低い粘度、好ましくは、円錐・平板型粘度計、例えばHaake社製のRS75を用いて20℃で測定して3〜50mPa・sの粘度を有する。
【0026】
本発明の顔料調合物は、ジケトピロロピロール系顔料と顔料系分散剤の他に、更なに別の慣用の助剤や添加剤、例えば界面活性剤、分散剤、フィラー、標準化剤(Stellmittel)、樹脂、ワックス、消泡剤、防塵剤、エキステンダー、帯電防止剤、防腐剤、乾燥遅延剤、湿潤剤、酸化防止剤、UV吸収剤および光安定剤を、顔料調合物の全重量に基づいて好ましくは0.1〜10重量%、特に0.5〜5重量%の量で含有することができる。
【0027】
界面活性剤としては、アニオンもしくはアニオン活性物質、カチオンもしくはカチオン活性物質、およびノニオンもしくは両性物質、またはそれらの物質の混合物が挙げられる。
【0028】
アニオン活性物質としては、例えば、脂肪酸タウリド類、脂肪酸Nメチルタウリド類、脂肪酸イセチオナート類、アルキルフェニルスルホナート類、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホナート類、アルキルフェノールポリグリコールエーテルスルフェート類、脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルフェート類、脂肪酸アミドポリグリコールエーテルスルフェート類、アルキルスルホスクシナメート類、アルケニルコハク酸モノエステル類、脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルホスクシナート類、アルカンスルホナート類、脂肪酸グルタメート類、アルキルスルホスクシナート類、脂肪酸サルコシド類;脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸;これらアニオン性物質の塩およびセッケン、例えば脂肪酸、ナフテン酸および樹脂酸(例えばアビエンチン酸)のアルカリ塩、アルカリ可溶性樹脂、例えばロジン変性マレアート樹脂、および塩化シアヌル、タウリン、N,N'−ジエチルアミノ−プロピルアミンおよびp−フェニレンジアミンに基づく縮合物などが挙げられる。好ましいのは、樹脂セッケン、すなわち、樹脂酸のアルカリ塩である。
【0029】
カチオン活性物質としては、例えば第四級アンモニウム塩、脂肪アミンオキシアルキレート類、ポリオキシアルキレンアミン類、オキシアルキル化ポリアミン類、脂肪アミンポリグリコールエーテル類、第一、第二、もしくは第三アミン類、例えばアルキルアミン類、シクロアルキルアミン類もしくは環状アルキルアミン類、特に、脂肪アミン類;脂肪アミン類もしくは脂肪アルコール類から誘導されたジアミン類およびポリアミン類、並びにそれらのオキシアルキレート類;脂肪酸から誘導されたイミダゾリン類、ポリアミノアミド化合物もしくはポリアミノ化合物1g当たりアミン指数100〜800mgKOHを有する、ポリアミノアミド化合物もしくはポリアミノ化合物、またはポリアミノアミド樹脂もしくはポリアミノ樹脂、並びにこれらカチオン活性物質類の塩、例えばアセテートまたは塩化物などが挙げられる。
【0030】
非イオノゲン物質および両性物質としては、例えば、脂肪アミンカルボキシグリシナート類、アミンオキシド類、脂肪アルコールポリグリコールエーテル類、脂肪酸ポリグリコールエステル類、ベタイン類、例えば脂肪酸アミド−N−プロピルベタイン類、脂肪族アルコールおよび芳香族アルコールのリン酸エステル、脂肪アルコールもしくは脂肪アルコールポリグリコールエーテル類、脂肪酸アミドエトキシレート、脂肪アルコールアルキレンオキシド付加物、およびアルキルフェノールポリグリコールエーテル類が挙げられる。
【0031】
非顔料系分散剤については、これらは構造的に有機顔料に由来するものではない物質である。これらは分散剤として顔料製造時にすでに加えられるが、しばしば着色される適用媒体中への顔料の導入時、例えば適したバインダー中への顔料の分散によるカラーフィルターの製造時にも加えられる。これらは、ポリマー性物質、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミン、ポリアクリレート、ポリイソシアナート、これらのブロックコポリマー、相当するモノマーのコポリマー、もしくは他の種類のわずかなモノマーで変性された種類のポリマーであることができる。これらのポリマー性物質は、極性のアンカー基、例えばヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、アンモニウム基、カルボン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホナート基、またはホスホン酸基もしくはホスホナート基などを有しており、芳香族の非顔料系物質で変性することもできる。非顔料系分散剤は、そのほかに官能性基で化学的に変性された非有機顔料由来の芳香族物質であることもできる。このような非顔料系分散剤は、当業者には公知であり、その一部は商業的に入手できる(例えば、Solsperse(登録商標)(Avecia社)、Disperbyk(登録商標)(Byk−Chemie社)、Efka(登録商標)(Efka社)。以下に、代表的ないくつかのタイプのものを挙げるが、原則的には任意の他の記載の物質も使用することができ、例えば、イソシアナートとアルコール、ジオールもしくはポリオール、アミノアルコール、またはジアミンもしくはポリアミンからなる縮合生成物、ヒドロキシカルボン酸からなるポリマー、オレフィンモノマーもしくはビニルモノマーと、エチレン不飽和カルボン酸もしくは−エステルからなるコポリマー、エチレン不飽和モノマーのウレタン含有ポリマー、ウレタン変性ポリエステル、シアヌルハロゲニドに基づく縮合物、ニトロキシル化合物含有ポリマー、ポリエステルアミド、変性ポリアミド、変性アクリルポリマー、ポリエステルとアクリルポリマーからなるくし型構造を有する分散剤、リン酸エステル、トリアジン誘導ポリマー、変性ポリエーテル、または非顔料系芳香族物質誘導の分散剤などが挙げられる。その際、これらの基本構造は、多くの場合において、例えば官能基を有する更に別の物質との化学反応により、または塩の形成により更に変性される。
【0032】
本発明の顔料調合物は、好ましくは水性のプレスケークまたは湿性の顆粒として使用することができるが、通常、粉末状態の固体の系である。
【0033】
本発明の対象は、本発明の顔料調合物の製造方法でもあり、C.I.ピグメントレッド254を、例えば混練、湿式粉砕、または乾式粉砕などの微細化の前またはその間に、または仕上げ処理の直前またはその間に、式(II)の顔料系分散剤と混合することを特徴とする方法である。
【0034】
例えば、顆粒物形態または粉末形態の乾燥成分を、粉砕前または粉砕後に混合することができ、また、一方の成分を、湿性状態または乾燥状態で他方の成分に加えることができ、例えば湿性プレスケークの形態で各成分を混合することができる。
【0035】
混合は、例えば乾燥形態、湿性形態での粉砕、例えば混練により、あるいは懸濁状態で行うことができるか、あるいはこれらの方法の組み合わせによって行うことができる。粉砕は、水、溶剤、酸または粉砕助剤(例えば、塩)を添加して行うことができる。顔料結晶を微細化する混練は、特に有機溶剤の存在下でのソルトニーディングである。
【0036】
混合はまた、C.I.ピグメントレッド254の製造工程の間に顔料系分散剤を加えることによっても行うことができる。しかしながら、顔料系分散剤のC.I.ピグメントレッド254への添加は、好ましくは、C.I.ピグメントレッド254の化学生成後であって、かつ微細粒子の形成前か形成中に行われる。
【0037】
特に好ましくは、ジケトピロロピロール系顔料への顔料系分散剤の添加は、乾式粉砕または湿式粉砕の間に行われる。その際形成された微結晶性の顔料調合物は、一般に仕上げ(Finish)と称する後処理、例えば、水および/または溶媒中で、そして大抵高められた温度、例えば200℃までの温度下、および場合によっては高められた圧力下での後処理に供することができる。顔料系分散剤はまた、乾式粉砕または湿式粉砕後であるが、しかし仕上げ前またはその間に加えることができる。言うまでもなく、顔料系分散剤は異なる時間に少しずつ分けて加えることもできる。
【0038】
湿性の顔料調合物の乾燥時に、公知の乾燥装置、例えば乾燥箱、バケットホイール乾燥機、タンブル乾燥機、接触式乾燥機、および、特にスピンフラッシュ乾燥機もしくは噴霧乾燥機を使用することができる。
【0039】
本発明の対象はまた、上述の方法に従って得ることができる顔料調合物である。
【0040】
本発明の顔料調合物は、その卓越した色およびレオロジーに関する特性、特に高い凝集安定性、容易分散性、良好なレオロジー、高い色強度、透明性および飽和度(彩度)により特徴付けられる。これらは、多くの適用媒体中に容易におよび高い細度まで分散可能である。そのような顔料分散物は、塗料や印刷インキ濃厚物の高い顔料着色度においてさえも卓越したレオロジー特性を示す。その他の性質、例えば光沢、上塗り堅牢性(Ueberlackierechtheit)、溶剤堅牢性、アルカリおよび酸堅牢性、耐光性、耐候性、および色相の高い純度などもまた、非常に良好である。その上、本発明の顔料調合物を用いることにより、カラーフィルターでの使用時に要求される赤色領域の色相を達成することができる。ここで、これらは、高いコントラストを保障し、そしてカラーフィルターでの使用時に生じるその他の要求、例えば、高い温度安定性や急で幅の狭い吸収帯域もまた満たす。これらは高い純度と低いイオン含有率で製造することができる。
【0041】
本発明の顔料調合物は、原則的に天然もしくは合成由来全ての高分子量有機材料、例えば、プラスチック、樹脂、塗料、特に金属塗料、ペイント、電子写真用トナーと現像剤、エレクトレット材料、カラーフィルター並びにインキ、印刷インキの顔料着色に使用することができる。
【0042】
本発明による顔料調合物で顔料着色可能な高分子量有機材料は、例えばセルロース化合物、例えばセルロースエーテルやセルロースエステル、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートもしくはセルロースブチラート、天然由来のバインダー、例えば脂肪酸、脂肪油、樹脂およびそれらの転化生成物、または合成樹脂、例えば重縮合物、重付加物、重合体および共重合体、例えばアミノプラスト、特にユリアホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノールプラストおよびフェノール樹脂、例えばノボラックやレゾール、尿素樹脂、ポリビニル類、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニルもしくはポリビニルエーテル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンもしくはポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレートおよびそれらの共重合体、例えばポリアクリル酸エステルまたはポリアクリルニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、クマロン−インデン樹脂および炭化水素樹脂、エポキシド樹脂、様々な硬化機序を有する不飽和合成樹脂(ポリエステル、アクリレート)、ワックス、アルデヒド樹脂、ケトン樹脂、天然ゴム(Gummi)、弾性ゴム(Kautschuk)およびその誘導体、およびラテックス、カゼイン、シリコーンおよびシリコーン樹脂、の個々のもの、あるいは混合物である。
【0043】
この際、上述の高分子量有機化合物が、可塑性材料、溶融物として、あるいは紡糸液、分散物、塗料(Lack)、ペイント(Anstrichstoff)または印刷インキの形態で存在するかどうかはここでは重要ではない。使用目的に応じて、本発明の顔料調合物をブレンドとして、あるいは調剤や分散物の形態で利用するのが有利であることが判明した。
【0044】
高分子量有機媒体中へ導入する時に初めて顔料調合物を製造することもまた可能である。
【0045】
したがって本発明の対象はまた、本発明による顔料調合物を着色有効量で含有する高分子有機材料でもある。
【0046】
顔料着色する高分子量有機材料に基づいて、本発明による顔料調合物は、多くの場合に0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%の量で使用される。カラーフィルター用途のためには、より高い着色剤濃度を使用することもできる。
【0047】
本発明による顔料調合物はまた、電子写真用トナーと現像液、例えば、一成分または二成分粉体トナー(一成分または二成分現像剤とも称される)、磁気トナー、液体トナー、重合トナーおよび特殊トナーにおける着色剤としても適している。典型的なトナーバインダーは、重合樹脂、重付加樹脂および縮重合樹脂、例えばスチレン樹脂、スチレンアクリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノールエポキシド樹脂、ポリスルホン、ポリウレタンの個々のものまたはこれらの組み合わせ、並びにポリエチレンおよびポリプロピレンであり、これらは更に別の含有物質、例えば荷電制御剤、ワックスまたは流動性向上剤を含有することができるか、またはこれらの添加剤で後から変性することができる。
【0048】
更に、本発明による顔料調合物は、粉体および粉末塗料、特に物品、例えば、金属、木材、プラスチック、ガラス、セラミック、コンクリート、繊維材料(Textilmaterial)、紙またはゴムからなる物品の表面被覆に使用される摩擦電気的にまたは動電気的に噴霧可能な粉末塗料の着色剤として適している。
【0049】
その上、本発明による顔料調合物は、水系や非水系のインクジェットインキ、並びにホットメルト法に従って作用するようなインキの着色剤としても適している。
【0050】
インクジェットインキは、本発明の顔料調合物を一般的に合計で0.5〜15重量%、好ましくは1.5〜8重量%(乾燥物換算で)含有する。
【0051】
マイクロエマルションインキは、有機溶剤、水、および場合によっては追加のヒドロトロープ物質(界面メディエーター)に基づく。マイクロエマルションインキは、本発明による顔料調合物を、一般に、0.5〜15重量%、好ましくは1.5〜8重量%と、水を5〜99重量%と、有機溶剤および/またはヒドロトロープ化合物を0.5〜94.5重量%の量で含有する。
【0052】
“溶剤系”のインクジェットインキは、好ましくは本発明の顔料調合物を0.5〜15重量%、有機溶剤および/またはヒドロトロープ化合物を85〜99.5重量%の量で含有する。
【0053】
ホットメルトインキは、通常、室温で固体であり、加熱時に液状になるワックス、脂肪酸、脂肪アルコールまたはスルホンアミドに基づく、その際好ましい融点範囲は約60℃〜約140℃である。ホットメルトインクジェットインキは、例えば、本質的に、ワックス20〜90重量%と本発明の顔料調合物1〜10重量%とからなる。更には、追加のポリマー(“染色溶解剤”として)0〜20重量%、分散助剤0〜5重量%、粘度調整剤0〜20重量%、可塑剤0〜20重量%、粘着性助剤(Klebrigkeitszusatz)0〜10重量%、透明性安定剤(例えばワックスの結晶化を防止する)0〜10重量%、および酸化防止剤0〜2重量%を含むことができる。
【0054】
とりわけ、本発明の顔料調合物は、カラーフィルター用の加法発色および減法発色のための着色剤として、例えば、電子光学システム、例えばテレビ画像スクリーン、LCD(液晶ディスプレイ)、電荷結合素子、プラズマディスプレイまたはエレクトロルミネッセンスディスプレイ(これらは、アクティブ(ねじれネマチック)またはパッシブ(超ねじれネマチック)であることができる)の強誘電性ディスプレイや発光ダイオードであることができるもの、における着色剤として、並びに電子インキ(“electronic inks”または“eインキ”)や電子ペーパー(“eペーパー”)の着色剤としても適している。
【0055】
反射型カラーフィルターと透過型カラーフィルターの両方のカラーフィルターを製造する際、顔料を適当なバインダー(アクリレート、アクリルエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エポキシド、ポリエステル、メラミン、ゼラチン、カゼイン)中のペーストの形態で、または顔料着色されたフォトレジストとして、個々のLCD構成部品(例えば、TFT−LCD=薄膜トランジスタ液晶ディスプレイや、例えば、((S)TN−LCD)=(超)ねじれネマチックLCD)上に塗布する。高い熱安定性以外に、安定なペーストまたは着色されたフォトレジストのためには、高い顔料純度も前提条件である。更には、顔料着色されたカラーフィルターは、インクジェット印刷法またはその他の適当な印刷法によっても設けることができる。
【0056】
本発明による顔料調合物の赤い色相は、カラーフィルターのカラーセットである赤−緑−青(R,G,B)に非常に好ましく適している。これら3つのカラーは、相並んで個別のカラー画素として存在し、そして背面からの光透過によりフルカラー画像を生じさせる。
【0057】
赤いカラー画素の典型的な着色剤は、ピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料およびアゾ系顔料、例えば、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド175およびC.I.ピグメントオレンジ38の個々のものまたは混合物である。緑のカラー画素については、典型的にはフタロシアニン系着色剤が使用され、例えば、C.I.ピグメントグリーン36およびC.I.ピグメントグリーン7である。
【0058】
必要な場合には、陰影(Nuancieren、色調、色合い)を付けるために、個々のカラー画素を更に別の着色剤と混ぜることもできる。赤い色相と緑の色相については、好ましくは、黄色と、例えばC.I.ピグメントイエロー138、139、150、151、180および213と混合される。
【0059】
以下の例において、別途明示しない限り、百分率表示は重量%を意味し、そして部は重量部を意味する。
【実施例】
【0060】
例1: 顔料系分散剤10%の存在下でのC.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕
P.R.254を70部、商業的に入手可能なナフタレンスルホン酸ベースの流動性改善剤を1.4部、ジルコニウム酸化物ビーズ(0.4〜0.6mm)を800部、水を600部、および特許文献3と同じ方法で製造された次式(IV)の顔料系分散剤を7部からなる混合物を、Drais(登録商標) Advantis V3−ミル中で粉砕する。
【0061】
【化4】

【0062】
粉砕継続時間は、5〜6回の理論粉砕パス数に相当する。粉砕物をビーズから分離し、ろ過し、そしてフィルターケークを、水とイソブタノールの1:1混合物と一緒にpH2で2時間還流下で加熱する。水蒸気蒸留後にろ過し、塩を含まないよう水で洗浄し、真空下で乾燥し、続いて粉末化する。35nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0063】
例2:C.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕および溶剤処理前の顔料系分散剤10%の添加
P.R.254を90部、商業的に入手可能なナフタレンスルホン酸ベースの流動性改善剤を1.8部、および水800部からなる混合物を均質なペーストにし、ジルコニウム酸化物ビーズ(0.4〜0.6mm)800部の存在下、Drais(登録商標)Advantis V3ミルで粉砕する。粉砕継続時間は5〜6回の理論粉砕パス数に相当する。約10%濃度の粉砕懸濁液740部を、顔料系分散剤(IV)7.4部およびイソブタノールと、イソブタノールと水の1:1混合物が生じるように混合する。懸濁液を、pH2で2時間還流下で加熱し、水蒸気蒸留によるイソブタノールの分離後にろ過し、塩を含まないよう水で洗浄し、真空下で乾燥し、続いて粉末化する。41nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0064】
例3:顔料系分散剤5%の存在下でのC.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕
例1と同様に行うが、式(IV)の顔料系分散剤を7部ではなく3.5部のみ使用する。37nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0065】
例4:C.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕および溶剤処理前の顔料系分散剤5%の添加
例2と同様に行うが、式(IV)の顔料系分散剤を7.4部ではなく3.7部のみ使用する。39nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0066】
例5:顔料系分散剤10%の存在下でのC.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕
例1と同様に行うが、特許文献3と同様に製造した式(V)の顔料系分散剤を使用する。
【0067】
【化5】

【0068】
62nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0069】
例6:C.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕および溶剤処理前の顔料系分散剤10%の添加
例2と同様に行うが、式(V)の顔料系分散剤を使用する。46nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0070】
例7:顔料系分散剤5%の存在下でのC.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕
例5と同様に行うが、式(V)の顔料系分散剤を7部ではなく3.5部のみ使用する。48nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0071】
例8:C.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕および溶剤処理前の顔料系分散剤5%の添加
例6と同様に行うが、式(V)の顔料系分散剤を7.4部ではなく3.7部のみ使用する。59nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0072】
例9:顔料系分散剤10%の存在下でのC.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕
例1と同様に行うが、特許文献4と同様に製造した式(VI)の顔料系分散剤をのみ使用する。
【0073】
【化6】

【0074】
49nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0075】
例10:C.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕および溶剤処理前の顔料系分散剤10%の添加
例2と同様に行うが、式(VI)の顔料系分散剤を使用する。60nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0076】
例11:顔料系分散剤5%の存在下でのC.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕
例9と同様に行うが、式(VI)の顔料系分散剤を7部ではなく3.5部のみ使用する。51nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0077】
例12:C.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕および溶剤処理前の顔料系分散剤5%の添加
例10と同様に行うが、式(VI)の顔料系分散剤を7.4部ではなく3.7部のみ使用する。56nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0078】
例13:顔料系分散剤10%の存在下でのC.I.ピグメントレッド254のソルトニーディング
P.R.254を15部、顔料系分散剤(VI)1.5部、微晶質塩化ナトリウム90部、ジエチレングリコール26部からなる混合物を、80℃で24時間、ダブルトラフニーダーで混練する。混練物は、塩酸900部中、90℃で2時間撹拌し、固形物をろ別し、中性になるまで水で洗浄し、そして乾燥する。45nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0079】
例14:顔料系分散剤5%の存在下でのC.I.ピグメントレッド254のソルトニーディング
例13と同様に行うが、式(VI)の顔料系分散剤を1.5部ではなく0.75部のみ使用する。49nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0080】
比較例A:顔料系分散剤なしのC.I.ピグメントレッド254のビーズミル粉砕
P.R.254を90部、商業的に入手可能なナフタレンスルホン酸ベースの流動性改善剤1.8部、水800部からなる混合物を均質なペーストにし、ジルコニウム酸化物ビーズ(0.4〜0.6mm)800部の存在下でDrais(登録商標) Advantis V3ミルで粉砕する。粉砕継続時間は5〜6回の理論粉砕パス数に相当する。粉砕懸濁液は、イソブタノールと水の1:1混合物を生じるようイソブタノールと混合する。懸濁液はpH2で2時間還流下で加熱し、水蒸気蒸留によるイソブタノールの分離後ろ過し、塩を含まなくなるまで水で洗浄し、真空下で乾燥し、続いて粉末化する。102nmの平均粒度d50(TEM)の赤色の顔料調合物を得る。
【0081】
試料の粒度分布:
粒度分布については、一連の電子顕微鏡写真を使用する。一次粒子は視覚によって識別する。各々の一次粒子の面積を、グラフィックタブレットを使って測定する。この面積から、面積の同じ円の直径が算出される。このように計算された等価直径の頻度分布を求め、そして頻度を体積割合に換算して粒度分布として表す。
【0082】
標準分布は、分布の幅の尺度である。標準偏差が小さいほど、粒度分布はより狭くなる。
【0083】
【表1】

【0084】
試料の結晶化度:
粉末X線回折における反射の半値幅の大きさが、試料の結晶化度の尺度である。半値幅が小さいほど、試験した材料はより結晶化度が高い。半値幅HWBは、それぞれの場合の最大ピーク(28°における)の半分の高さ(最大値の半分)での反射の幅のことであると解釈される。
【0085】
試料の半値幅は、STOE/θ−回折装置(Cu−Kα、U=40kV、I=40mA)を用いて測定する(スリット:プライマリサイド/垂直2×8mm、プライマリサイド/水平1.0mm、セカンダリサイド0.5mm)。試料ホルダーとして、標準の鋼製ホルダーを使用する。測定時間は所望の統計的信頼性に合わせ、角度幅2θは、測定全体を通じて5〜30°であり、ステップ幅は3秒の周期時間で0.02°である。特定範囲において、ステップ幅0.02°と周期時間6秒で23〜30°の範囲で測定する。
【0086】
X線は、グラファイト−セカンダリモノクロメータによってモノクローム化し、シンチレーションカウンタで試料を連続回転させながら測定する。評価のために、第二の測定2θ=23〜30°の全角度範囲について、プロフィルフィットを行う(フィットファンクション:ローレンツ(4反射))。
【0087】
【表2】

【0088】
カラーフィルター用途のミルベースの粘度:
上述の例からの顔料または顔料調合物10gを、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)73g中に懸濁し、商業上慣用の高分子量ブロックコポリマー17gとジルコニウム酸化物ビーズ(0.3mm)250gと混合し、そしてFirma Lau GmbH製のペイントシェーカーディスパーズDAS 200で3時間分散する。
【0089】
このミルベースの粘度を測定するために、円錐・平板型粘度計、HaakeRS75を20℃で用いる。
【0090】
【表3】

【0091】
上記の顔料調合物を、スピンコーター(POLOSウエハスピナー)を使って、ガラスプレート(SCHOTT、レーザーで10×10cmに切断)上に塗布する。低い粘度のために、薄い層厚(500〜1300nm)で、非常に良好なコントラスト値(TSUBOSAKA ELECTRIC CO.,LTD, Modell CT−1)を有する、明度が高く、高い透明性の、赤色の着色が得られ、これは非添加の試料の色相から僅かしかずれていない。
【0092】
例1〜14の顔料調合物は、それらの高いコントラスト値のために、カラーフィルター用途に非常に適している。
【0093】
透明な焼付け塗料への応用例:
顔料混合物の色強度、彩度ΔCおよび色相ΔHを調査するため、得られた顔料調合物を透明なアルキドメラミン焼付け塗料系中に完全に分散させて、フルトーンの塗料を得た。続いて、アルキドメラミンフルトーン塗料6部を、30%濃度の白色塗料20部を混合して、淡色化(ホワイトリダクション)塗料を製造した。
【0094】
この得られた淡色化塗料を、比較する試料の淡色塗料と相並べて白色のボール紙カード上に塗り付け、30分間空気乾燥させた後、140℃で30分間焼き付けた。色強度とその測定は、DIN EN ISO 787−26に従って定義される。
【0095】
上記の例で製造された顔料調合物の色強度、彩度(色の純度)、および色相を、以下の表に示す。
【0096】
色強度(100%)、彩度ΔC(色純度)(ΔC=0)、及び色相ΔH(ΔH=0)の基準として、比較例Aの顔料を援用した。
【0097】
【表4】

【0098】
記載の量比の成分C.I.ピグメントレッド254と、本発明の顔料系分散剤の混合物に関して、それぞれの場合のΔHとΔCのずれは、2.0〜3.0より大きくなると予想されたであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20〜100nmの平均粒度d50を有するC.I.ピグメントレッド254と、次式(II)で表される少なくとも一種の顔料系分散剤を含有することを特徴とする顔料調合物。
【化1】

(式中、
sは、1〜5の数の数を表し、
nは、0〜4の数の数を表し、ここでsとnの合計は1〜5となり、
は、分岐状のもしくは非分岐状の、飽和もしくは不飽和の1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、またはC−C−シクロアルキル基、または1、2もしくは3個の芳香族環を有する芳香脂肪族もしくは芳香族の基(ここで環は縮合していても、あるいは結合して架橋していてもよい)、またはO、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子を1、2、3または4個含む、1、2もしくは3個の環を有する複素環の基、またはこれらの組み合わせを意味し;ここで、上述の炭化水素基、シクロアルキル基、芳香族の基、芳香脂肪族の基、およびヘテロ芳香族の基は、OH、CN、F、Cl、Br、NO、CF、C−C−アルコキシ、S−C−C−アルキル、NHCONH、NHC(NH)NH、NHCO−C−C−アルキル、C−C−アルキル、COOR、COO、CONR、NR、SO、SOおよびSO−NRの群から選択される1、2、3または4個の置換基で置換することができ、ここでRとRは、同一または異なって、水素、フェニルまたはC−C−アルキルを意味し、
は、水素またはRを意味し、
、Gは、互いに独立して、H、あるいは化学元素周期律表の1〜5主族または1もしくは2亜族または4〜8亜族から選択される金属カチオンMp+の当量Mp+/mを表し、ここでmは1、2もしくは3の数を、そしてpは1、2もしくは3の数を意味するか、あるいは置換されたもしくは非置換のアンモニウムイオンを表す。)
【請求項2】
前記式(II)の化合物において、sが、1〜3の数、そしてnが0〜2の数を意味することを特徴とする、請求項1に記載の顔料調合物。
【請求項3】
が、C−C−アルキル、ベンジル、フェニル、フェニル−NR、フェニル−COO、フェニル−SO、C−C−アルキル−NR、C−C−アルキル−SOもしくはC−C−アルキル−COO(式中、RとRは、同一または異なって、水素、フェニルまたはC−C−アルキルを意味する。);
が、水素、C−C−アルキル、ベンジルまたはフェニルを意味し、
、Gが、互いに独立して、水素、アルカリ土類金属、アルカリ金属、または第3主族の金属を意味することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の顔料調合物。
【請求項4】
C.I.ピグメントレッド254と、前記式(II)の顔料系分散剤との重量比が、(99.9:0.1)〜(80:20)であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項またはそれ以上に記載の顔料調合物。
【請求項5】
C.I.ピグメントレッド254と、前記式(II)の顔料系分散剤との重量比が、(96:4)〜(88:12)であることを特徴とする、請求項4に記載の顔料調合物。
【請求項6】
CuKα線を用いた粉末X線回折図において、メインピークの半値幅HWBが0.2〜0.7°2θであることを特徴付けられる、請求項1〜5のいずれか一項またはそれ以上に記載の顔料調合物。
【請求項7】
C.I.ピグメントレッド254を、微細化の前またはその間に、または仕上げ処理の前またはその間に、前記式(II)の顔料系分散剤と混合することを特徴とする、請求項1〜6の一項またはそれ以上に記載の顔料調合物の製造方法。
【請求項8】
天然もしくは合成由来の高分子量有機材料の顔料着色のための、請求項1〜6のいずれか一項またはそれ以上に記載の顔料調合物の使用。
【請求項9】
プラスチック、樹脂、塗料、ペイント、電子写真用トナーと現像剤、インキ、および印刷インキの顔料着色のための、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
メタリック塗料、カラーフィルター、およびインクジェットインキの顔料着色のための、請求項8または9に記載の使用。

【公表番号】特表2010−520340(P2010−520340A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552089(P2009−552089)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001307
【国際公開番号】WO2008/107074
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】