説明

ジケトン及び薬剤を製造するための新しいプロセス

X及びYが説明の中で記載されているとおりである、式III


の化合物の製造のためのプロセスを提供する。当該化合物は、例えば、ドロネダロンなどの薬剤の合成における有用な中間体であり得る。また式I


の化合物の製造のためのプロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、特に薬剤、例えば抗不整脈薬、例えばドロネダロン(N−{2−(n−ブチル)−3−[4−(3−ジブチルアミノ−プロポキシ)−ベンゾイル]−ベンゾフラン−5−イル}メタン−スルホンアミド)の合成における有用な中間体である、特定のジケトンの製造のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ドロネダロンは、心房細動(AF)のような心不整脈の予防のためのクラスIII抗不整脈薬である。AFは不規則な心拍動を特徴とする状態であり、心房(心臓の上部の室)が非常に急速に収縮する場合に起こる。これは、心臓の下部の室である心室の無秩序な収縮を引き起こし、そのために血液が身体に効率よく送り出されず、組織損傷、さらには死を導くことがある。
【0003】
ドロネダロンは、2−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン及び2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランを含む多くの中間体の合成を含む段階的手順によって製造される。
【0004】
2−ブチル−3−アロイル−5−ニトロベンゾフランは、典型的には3−非置換2−ブチル−5−ニトロベンゾフランのフリーデル・クラフツアシル化(Friedel Craft acylation)を介して合成される。そのような反応は、米国特許である米国特許第5,223,510号及び同第5,854,282号、日本の特許文献である特開2002−371076号並びに国際特許出願である国際公開第2007/140989号に記載されている。これらの文献には、直接3−アシル−ベンゾフランを生じさせるベンゾフラン形成反応の開示がないことを考慮すると、そのような反応において使用され得るいかなるジケトン中間体についての開示も存在しない。
【0005】
ジケトンは4−ヒドロキシ−アセトフェノンから合成されるが、そのなかでヒドロキシ基が最初にアシル化され(典型的には酸無水物との反応によって)、次に、BFのような添加剤の存在下で、分子内縮合反応が起こる。そのような反応は、例えば欧州特許第900 831号に記載されている。英国特許出願第948 494号も、酸無水物とフェノールケトンの反応を記載している。そのような反応は、ナトリウムなどのアルカリ金属又はBFの存在下で実施され、生じるジケトンは錯体として単離される。
【0006】
El−Ansary,A.K.による学術論文、Egyptian journal of pharmaceutical sciences(1991),32(3−4),page 709−17、Jonesら,Journal of Chem.Soc.,Perkin Trans 2(1975),11,p 1231−4及びJonesら,Makromolekulare Chemie(1961)m 50,p232−43はすべて、様々なジケトンの合成を開示する。しかし、反応物の1つがヒドロキシフェニル基であり、そのヒドロキシ基が保護されていない、ジケトンを形成する縮合反応についての具体的な開示はない。
【0007】
様々な文献、例えば米国特許出願第10/470893号は、錯体の形成を含む、ジケトンの精製も記載している。結晶化を含む技術の開示はない。
【0008】
国際出願である国際公開第2009/044143号は、1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオンの合成を開示しており、前記化合物は、保護されたヒドロキシフェニル化合物を介して製造され、約230×120μMの凝集体粒径を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,223,510号明細書
【特許文献2】米国特許第5,854,282号明細書
【特許文献3】特開2002−371076号公報
【特許文献4】国際公開第2007/140989号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第900 831号明細書
【特許文献6】英国特許第948 494号明細書
【特許文献7】米国特許出願第10/470893号明細書
【特許文献8】国際公開第2009/044143号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】El−Ansary,A.K.による学術論文、Egyptian journal of pharmaceutical sciences(1991),32(3−4),page 709−17
【非特許文献2】Jonesら,Journal of Chem.Soc.,Perkin Trans 2(1975),11,p 1231−4
【非特許文献3】Jonesら,Makromolekulare Chemie(1961)m 50,p 232−43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
より効率的な又は公知の合成に比べて有利なジケトンの合成が必要とされている。そのようなジケトンは、3−アロイルベンゾフランを直接製造するために使用し得る、すなわち3−非置換ベンゾフランの形成を回避し、それ故そのフリーデル・クラフツアシル化段階のためのその必要性を免れる。
【0012】
本明細書における、おそらく先行して公表された文献の列挙又は考察は、必ずしもその文献が技術水準の一部又は共通の一般知識であるという承認と解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の態様では、式III:

[式中、
Xは、水素、又は場合により1若しくはそれ以上のハロ(例えばフルオロ)原子によって置換されたC1〜6アルキルを表し;
Yは、少なくとも1個(例えば1個)の−OH基によって置換されたアリール又はヘテロアリールを表す]
の化合物、又はその誘導体の製造のためのプロセスであって、その必須の−OH置換基が保護されていないことを特徴とする、式VII:

[式中、Yは上記で定義したとおりである]
の化合物又はその誘導体と、式VIII:

[式中、Xは上記で定義したとおりであり;
は−C≡N又は、好ましくは−C(O)Lを表し;
は、ハロ(例えばブロモ、クロロ若しくはヨード)又は、より好ましくは−OC1〜6アルキル(例えば−OCH若しくは、好ましくは−OCHCH)などの適切な脱離基である]
の化合物又はその誘導体との、塩基の存在下での反応を含み、前記塩基が、アルコキシドのアルキル部分が分枝鎖C3〜6アルキル基であるアルカリ金属アルコキシド、又は同様のもの(すなわちそのような塩基の等価物)を含むプロセスが提供され、前記プロセスを、本明細書中以下では「本発明のプロセス」と称する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】国際特許出願である国際公開第2009/044143号の実施例A(実施例1、(b))によって生成される1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオンの粒径の画像(測定は135.7μM(長さ)×63.2μM(幅)である)。
【図2】本明細書で述べる本発明のプロセスによって生成される1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオンの粒径の画像(例えば以下の実施例1(a);測定は498.2μM(長さ)×376.5μM(幅)である)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前述したように、前記反応は、式VIIの化合物において、完全体(integer)Yによって定義されるアリール又はヘテロアリール基上の必須の−OH置換基が保護されていないことを特徴とする。これにより、その基が遊離−OH基として存在するか、又は別の実施形態では、その塩として、例えば式−O[式中、Aは第I族アルカリ金属、例えばカリウム又は、好ましくはナトリウムを表し、それ故、例えば−ONa部分を形成する(しかし、−OH基は、炭素原子などの別の原子に共有結合していない)]の部分として存在することを意味する。好ましくは、それ故、本発明のプロセスによって生成される式IIIの化合物において、対応する−OHもまた保護されていない(しかし−Oとして又は遊離−OH形態で存在し得る;実際には、本発明のプロセスの反応はプロトンで反応停止(quench)され、従って−Oが存在する、インサイチュ(in situ)で形成される式IIIの任意の化合物を、遊離−OH基が存在する式IIIの対応する化合物に変換し、前記化合物として単離し得る)。
【0016】
本発明のプロセスは、式VII及びVIIIの化合物の塩、溶媒和物又は保護された誘導体(例えばカルボニル基がイミンとして保護されている)を使用して実施し得る。それによって生成され得る式IIIの化合物は、(例えば対応する)その塩若しくは溶媒和物、又は保護された誘導体の形態で生成されてもよく又は生成されなくてもよい(例えばイミンのような保護されたカルボニル基が生成され得る)。しかし、前述したように、式VIIの化合物のY基中のアリール基又はヘテロアリール基に結合した必須の−OH置換基は、「誘導体化」されていなくてもよい、すなわち保護されていなくてもよい(例えば炭素原子を介して共有結合されることによって)が、遊離−OH基(又はその塩)として存在する。当業者は、Bが−C≡Nを表す式VIIIの化合物を使用する場合、本発明のプロセスによって形成される、生じる式IIIの生成物は、必然的にカルボニル基がイミンとして保護されており(例えばX−C(=NH)−CH−C(=O)−Yである式IIIの化合物又はその誘導体又は同様のものが形成され得る)、そのイミノ(=NH)部分が加水分解されて、X−C(=O)−CH−C(=O)−Yである式IIIの化合物を生じ得るものであることを認識する。最も好ましくは、Bが−C(O)Lを表す式VIIIの化合物を本発明のプロセスにおいて使用する。
【0017】
本明細書で述べるプロセス(すなわち本発明のプロセスを含むもの)において使用される又は前記プロセスによって生成される化合物は互変異性を示してもよい。本発明のプロセスは、それ故、それらの互変異性体のいずれか又は任意のそのような形態の混合物としてのそのような化合物の使用又は生成を包含する。例えば、式IIIの化合物はケト−エノール互変異性を示し得る。
【0018】
同様に、本明細書で述べるプロセス(すなわち本発明のプロセスを含むもの)において使用される又は前記プロセスによって生成される化合物はまた、1又はそれ以上の不斉炭素原子を含んでもよく、それ故鏡像異性体又はジアステレオ異性体として存在してもよく、光学活性を示してもよい。本発明のプロセスは、従って、それらの光学異性体又はジアステレオ異性体のいずれか又は任意のそのような形態の混合物としてのそのような化合物の使用又は生成を包含する。
【0019】
さらに、本明細書で述べるプロセスにおいて使用される又は前記プロセスによって生成される化合物(例えば式IIAの化合物)は二重結合を含んでもよく、従って各々個々の二重結合についてE(entgegen)及びZ(zusammen)幾何異性体として存在してもよい。すべてのそのような異性体及びそれらの混合物は本発明の範囲に包含される。
【0020】
特に指定のない限り、本明細書で定義されるアルキル基は、直鎖状であってよく、又は、十分な数(すなわち少なくとも3個)の炭素原子が存在する場合は、分枝鎖状及び/又は環状であってもよい。さらに、十分な数(すなわち少なくとも4個)の炭素原子が存在する場合は、そのようなアルキル基はまた、部分的環状/非環状であってもよい。そのようなアルキル基はまた、飽和であってもよく、又は十分な数(すなわち少なくとも2個)の炭素原子が存在する場合は、不飽和であってもよい。
【0021】
「アリール」という用語は、本明細書で使用される場合、C6〜14(例えばC6〜10)の基を含む。そのような基は、単環式、二環式又は三環式であってもよく、多環式である場合は、全体的又は部分的に芳香族であってもよい。挙げられるC6〜10アリール基は、フェニル、ナフチル等を含む。疑わしさを避けるため、アリール基上の置換基の結合点は、環系の任意の炭素原子を介してよい。
【0022】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素、窒素及び/又は硫黄から選択される1又はそれ以上のヘテロ原子を含有する5〜14員ヘテロアリール基を含む。そのようなヘテロアリール基は、1、2又は3個の環を含んでもよく、そのうち少なくとも1つは芳香族である。ヘテロアリール基上の置換基は、適切な場合は、ヘテロ原子を含む環系中の任意の原子上に位置してよい。ヘテロアリール基の結合点は、(適切な場合は)ヘテロ原子を含む環系中の任意の原子を介してよい。挙げられるヘテロアリール基の例は、ピリジル、ピロリル、キノリニル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、インドリル、ピラジニル、インダゾリル、ピリミジニル、キノリニル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾチアゾリルを含む。
【0023】
「ハロ」という用語は、本明細書で使用される場合、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを含む。
【0024】
本発明のプロセスにおいて、生成され得る式IIIの好ましい化合物は、式中、
Xは、C1〜4アルキル(場合により1又はそれ以上のフルオロ原子によって置換されているが、好ましくは置換されていない)、例えば1−メチルプロピルなどのCアルキル、又は、最も好ましくはブチル(特にn−ブチル)を表し;
Yは、2位、3位又は、好ましくは4位で1個の−OH基(又はその塩、例えば−ONa基)によって置換されたフェニルを表し;
は、好ましくはハロ(例えばブロモ、クロロ又はヨード)などの適切な脱離基又は、より好ましくは−OC1〜6アルキル(例えば−OCH若しくは、好ましくは−OCHCH)を表すが、等価脱離基を使用してもよい
ものを含む。
【0025】
式IIIの最も好ましい化合物は、式中、
Yは、4−(OH)−フェニルを表し(Yはまた、必須の−OH基に加えて他の置換基、例えばハロ、−OH、−O−C1〜3アルキル(このアルキル基は場合により1若しくはそれ以上のフルオロ原子によって置換されている)及び/又は−CNなどの他の小さな置換基によって置換されていてもよいが、Yは、好ましくは他の置換基によって置換されていない);
Xはn−ブチルを表し;
は−C(O)OCHCHを表す
ものを含む。
【0026】
本発明のプロセスは、特定のアルカリ金属アルコキシドの存在下で実施される。好ましくは、アルカリ金属は、カリウム又は、好ましくはナトリウムなどの第I族金属である。塩基のアルコキシ部分は分枝であることを明言する。好ましくは、枝分れは、アルコキシ基の必須の酸素原子に結合している炭素原子に対してα位で起こる(従って、C3〜6アルキル基は酸素原子への結合点に関して第二級又は、好ましくは第三級である。)最も好ましくは、アルコキシ部分は分枝C4〜6アルキル基(例えばtert−ブチル)である。最も好ましい塩基はナトリウムtert−ブトキシドである。アルカリ金属アルコキシドのアルキル部分が分枝であるそのような塩基は、アルキル部分が分枝ではなく直鎖状である対応する塩基(酸素原子への結合点に関して第一級アルキル基を含む対応する塩基)よりも高いpKaを有する(すなわちより強い塩基である)。
【0027】
本発明のプロセスで使用される塩基は、特定のpKaを有するものである。同様に、同様の又はより高いpKaを有する他の適切な塩基も本発明のプロセスにおいて使用し得る(前記塩基を、本明細書では本発明のプロセスにおいて使用される必須のアルカリ金属アルコキシド塩基の等価塩基と称する)。そのような塩基は、例えば副反応を低減する、それ故望ましくない副生成物を低減する(例えば競合する縮合反応、例えば自己縮合を低減する)ことによって、プロセスの収率及び効率を改善し得るので、本発明のプロセスにおいて好都合である。式VIIの化合物が遊離−OH基を含む場合、これ(すなわち副反応の低減)は、そのヒドロキシ基の付随する脱プロトン化によるものであると考えられ、アルカリ金属塩(すなわち−O)を形成して、カルボニル基に対する反応性を低下させ、それにより自己縮合の可能性を低下させ得る。
【0028】
前述したように、特定のアルカリ金属アルコキシド又は別の適切な塩基(例えば等価塩基)を前記プロセスで使用する。別の適切な塩基とは、その塩基が本発明のプロセスで使用されるアルカリ金属アルコキシドと同様若しくはより高いpKaを有する、又は、例えば同様の機序によって反応を促進することにより、本発明のプロセスに同様の作用を及ぼすことを意味する。使用し得る他の適切な塩基は、以下のいずれかを含む:別のアルカリ金属ベースの塩基(例えばNaCO又はKCOなどの炭酸塩及び/又はKPOなどのリン酸塩)、アルカリ金属水素化物(例えばKH、CaH又は、好ましくはNaH)、有機リチウム塩基(例えばn−、s−若しくはt−ブチルリチウム又は、好ましくはリチウムジイソプロピルアミド)、又は塩基の混合物。
【0029】
本発明のプロセスは、特定のアルカリ金属アルコキシド(又は同様のもの)の存在を必要とするが、他の塩基が反応混合物中に存在してもよい。しかし、好ましくは、前記プロセスは、主として反応混合物中の塩基として必須のアルカリ金属アルコキシド塩基(又はその等価物)の存在下で(例えば本明細書で定義される当量で)、及び場合により(例えば式VIIの化合物中のY基上に遊離−OH基が存在する場合)、例えばその−OH部分(例えば本明細書で定義される)を脱プロトン化することができる少なくとも1当量又は約1当量の、塩基の存在下で実施される。
【0030】
例えば式VIIの化合物が遊離−OH基を含む場合、少なくとも又は約1当量の塩基(例えば必須のアルカリ金属アルコキシド又は同様のもの)を使用する(式VIIの化合物のモル量に等しい)ことが好ましい。しかし、最初の1当量の塩基は式VIIの化合物の遊離−OH基を脱プロトン化し得る(それにより−O部分が存在する式VIIの対応する化合物を形成する)ので、収率を最大化しようとする場合は、少なくとも1.5、好ましくは少なくとも又は約2当量の塩基を使用することが好ましい。しかし、最も好ましくは、形成しようとする式IIIの化合物はエノール化することがあり、それ故付加的な1当量の塩基を必要とし得るので、収率を最大化するためには、少なくとも2.5、例えば少なくとも又は約3当量の塩基(例えば必須のアルカリ金属アルコキシド又は同様のもの)を使用する。好ましくは、前記反応のプロセスで使用するすべての塩基が本明細書で定義される必須のアルカリ金属アルコキシド又はその等価物である。しかし、少なくとも又は約1当量、例えば少なくとも又は約2当量(好ましくは少なくとも又は約3)当量の必須のアルカリ金属アルコキシド(又は等価物)を使用することを条件として、異なる塩基の混合物を使用してもよい。
【0031】
式VIIの化合物が−O部分(遊離−OH基の代わりとして、Aは第I族金属陰イオン、好ましくはNaである)を含む場合は、より少ない当量の塩基を必要とし(遊離−OH部分はすでに脱プロトン化されているので)、従って、塩基(例えば必須のアルカリ金属アルコキシド又は等価物)の量は、好ましくは少なくとも又は約1当量、好ましくは少なくとも又は約2当量である。前述したように、−O部分が存在する式VIIの化合物は、反応のプロセス中に存在する必須のアルカリ金属アルコキシド塩基との反応によってインサイチュで製造してもよい。しかし、そのような化合物は、最初に別の適切なアルカリ金属塩基との反応によってあらかじめ形成し得るか又はインサイチュで形成してもよく(それに続く式VIIの化合物と必須のアルカリ金属アルコキシド塩基又はその等価物との反応)、その場合、適切な塩基は、アルカリ金属(ナトリウム、例えばナトリウム線など)又はアルカリ金属水酸化物(例えば水酸化カリウム若しくは、好ましくは水酸化ナトリウム;後者の場合は−ONa部分が形成される)などの強アルカリ金属塩基を含む。
【0032】
本発明のプロセスは、適切な溶媒(テトラヒドロフラン(THF)、トルエン及び/又はジメチルホルムアミドなど;THFのような極性非プロトン性溶媒が特に好ましい)の存在下で実施してもよい。しかし、反応物の1つ(例えば式VIIIの化合物)が反応温度で液体である場合は、反応は溶媒の不在下で実施してもよい(反応物、例えば式VIIIの化合物が溶媒としての役割を果たし得るので)。
【0033】
前述したように、本発明のプロセスによって形成される(化合物IIIの)生成物は、エノラートの形態であってもよい。従って、本発明のプロセスの反応は、好ましくは適切な量(例えば少なくとも1当量)のプロトン源、例えばハロゲン化水素(例えばHCl)などのプロトン酸又は弱有機酸(例えば酢酸などのカルボン酸)の添加によって反応停止される。好都合には、弱有機酸を使用する場合、反応停止は同時に、例えば以下で定義するような、生成物の結晶化/沈殿も生じさせ得る。
【0034】
本発明のプロセスは、式VII及びVIIIの化合物の各々の任意の量の存在下で実施してもよい。しかし、好ましくは、約3:2〜約2:3のモル比、最も好ましくは約1.1:1〜約1:1.1(例えば約1:1)のモル比の式VIIと式VIIIの化合物の存在下で実施される。
【0035】
本発明のプロセスは、室温又は高温(例えば約40℃)、例えば約65℃若しくはそれ以上(例えば約40℃〜85℃)のような、標準的な反応条件下で実施してもよい。挙げられる他の具体的な温度は、約68℃〜73℃(例えば約70〜73℃)である。反応の長さは、当業者によって(例えばTLCによって反応の程度を観測することによって)決定され得る。しかし、好ましくは、式VIIの化合物と式VIIIの化合物との(式IIIの化合物を形成する)反応は、2時間以上、例えば少なくとも又は約6時間、さらには少なくとも又は約15時間を要し得る。
【0036】
本発明のプロセスでは、式VIIと式VIIIの化合物を共に混合してもよい。この混合物を本発明のプロセスにおいて使用する塩基(この塩基は、場合により及び好ましくは、本発明のプロセスで使用し得る溶媒中に存在する)に添加してもよく、逆もまた同様である、すなわち塩基(及び溶媒)を式VIIと式VIIIの化合物の混合物に添加する。
【0037】
前述したように、本発明のプロセスをプロトン源(例えば酢酸などのカルボン酸)の添加によって反応停止してもよい。プロトン源(例えば酢酸などのカルボン酸)は、水との混合物として存在してもよい。そのような場合(かかる場合が好ましい)、カルボン酸の量は、式VII又は式VIIIの化合物1モルにつき少なくとも1モルのカルボン酸(例えば酢酸)が存在する(より好ましくは、少なくとも2モル当量のカルボン酸、例えば少なくとも又は約3モル当量のカルボン酸(例えば酢酸)が存在する)量である。カルボン酸と混合してもよい(好ましくは混合する)水の量は、好ましくは式VII又は式VIIIの化合物1モルにつき少なくとも又は約100gの水(例えば式VII又は式VIIIの化合物1モルにつき少なくとも又は約200g(例えば300又は、好ましくは400g、例えば450g)であるか、又は水の量は、プロトン源として存在し得るカルボン酸1モルにつき少なくとも又は約50g(例えばカルボン酸1モルにつき少なくとも又は約100g、例えば約150g)である。前述したように、カルボン酸を水と混合してもよい。それ故、カルボン酸と水は混和性であることが特に好都合である。
【0038】
好都合には及び好ましくは、本発明のプロセスの反応を上述したように反応停止した後、任意の溶媒(例えばTHF;及びプロトン源などの反応混合物中に存在する他の揮発性物質(例えば酢酸などの揮発性カルボン酸である場合))を、減圧下又は、好ましくは大気圧下(この場合は、混合物を、例えば反応温度より上に、例えば約80℃以上(例えば約90℃又はそれ以上、好ましくは約100℃、例えば102℃)に加熱する)での濃縮によって回収してもよい(及び場合により再利用してもよい)。これは経済的及び/又は環境的観点から特に重要である。その後、反応混合物の温度を冷却し(例えば約75℃に)、水相を分離してもよい。次に(すなわち再利用し得る任意の揮発性物質を既に分離した後)、何らかの他の望ましくない生成物、例えば式VIIIの化合物などの未反応出発物質を除去するために反応混合物/反応容器を減圧下で再び加熱してもよい。他の望ましくない生成物を除去するこの手順は、液体温度が、最大でも又は約50mbarの圧で少なくとも又は約110℃である場合は、停止又は中断してもよい。
【0039】
本発明のプロセスの反応を反応停止し(例えば上述したように)、揮発性物質を除去した後、式IIIの所望化合物を標準的な後処理手順によって(例えばトルエンなどの適切な有機溶媒での抽出によって)単離してもよい。しかし、好都合にも、特定手順に従うことによって、例えば揮発性物質/他の望ましくない生成物(例えば大気圧下又は減圧下で加熱することによって除去されたと考えられる)の後に、例えばさらなる水とプロトン源(例えば酢酸などのカルボン酸)の添加によって、得られる式IIIの化合物の収率を高め得る/最大化し得ることが認められた。例えば、式VII又は式VIIIの化合物1モルにつき少なくとも1モルのカルボン酸(例えば酢酸)(より好ましくは、少なくとも2モル当量のカルボン酸、例えば少なくとも又は約3又は4モル当量のカルボン酸(例えば酢酸)が存在する)を添加してもよく、水の量は、式VII又は式VIIIの化合物1モルにつき少なくとも又は約25g(例えば式VII又は式VIIIの化合物1モルにつき少なくとも又は約75g(例えば少なくとも又は約100g))であり得る。そのような混合物を、次に、例えばおよそ室温(例えば約25〜28℃)に冷却してもよい。混合物を、好都合には、室温より下、例えば0℃以下、例えば約−10℃又はそれ以下、例えば約−12℃にさらに冷却してもよい。さらなる水を、好ましくはこの低温で添加する(例えば式VII又は式VIIIの化合物1モルにつき少なくとも又は約25g(例えば少なくとも又は約50〜75g))。好都合には、この後処理手順は、式IIIの所望生成物のより高い収率を生じさせることができ、それを標準的な方法によって、例えば単にろ過によって単離してもよい。その後ろ過ケークを洗浄し(例えば希釈カルボン酸、20%酢酸、及びその後水で)、乾燥してもよい(例えば減圧下で、場合により高温、例えば約50℃で)。
【0040】
驚くべきことに、本発明のプロセスは、ヒドロキシ基の保護及び脱保護を必要とせずに進行する。本発明のプロセスは、それ故、より効率的及び/又は経済的であり得る。またそれにより、環境上の利点も提供し得る。好都合には、保護されていないヒドロキシ基は反応のプロセスに実質的に干渉せず、これは通常、ヒドロキシ部分(式VIIの化合物の)が、式VIIの化合物のもう1つの別の離れた分子のカルボニル基との反応を誘引し得る求核試薬として働き、それによって望ましくない副反応を生じさせ得ることが考えられる。驚くべきことに、前記反応のプロセスにおいて、式VIIのケトンは望ましくない副反応(例えば自己縮合反応)を受けにくい。
【0041】
好ましくは、前記反応は、ホウ素試薬(BF又はBF又はその錯体など)などのさらなる添加剤の不在下で実施される。さらに、本発明のプロセスによって生成される式IIIの化合物は、錯体、例えば銅キレートとして単離されない。
【0042】
本発明のさらなる態様では、上記で定義した、式IIIの化合物の単離/精製のためのプロセスであって、溶媒系中での化合物の結晶化又は沈殿を含むプロセスが提供され、このプロセスも、本明細書中以下では本発明のプロセスと称する。
【0043】
本発明のプロセスによって製造される化合物の結晶化(又は沈殿)は、任意の適切な溶媒(又は溶媒の混合物)中で実施してもよい。しかし、好ましくは、驚くべきことに、特定の溶媒系が特に好ましいことが見出された。式IIIの化合物の結晶化又は沈殿のために特に好ましい溶媒系は、水性溶媒及び弱有機酸(本明細書で定義するカルボン酸、例えばギ酸、プロピオン酸又は、好ましくは酢酸など)を含む。
【0044】
本明細書で述べる本発明の結晶化/沈殿プロセスは、式IIIの化合物が他の生成物(たとえば未反応出発物質又は他の望ましくない副生成物)との反応混合物として存在してもよいが、この精製/単離プロセスはそれでもなお進行し得るという付加的な利点を有する。例えば、式IIIの化合物は、結晶化/沈殿させる混合物の95%未満(例えば90%未満、例えば約80%又はそれ未満)存在し得るが、そのようにして形成される単離/精製された生成物は望ましくない生成物を含まないと考えられる(そして、形成される生成物中により高い割合で、例えば95%以上、例えば99%以上、例えば100%又はそれに近い割合で存在し得る)。
【0045】
最も好ましくは、結晶化又は沈殿プロセスで使用される溶媒系は、水と弱有機酸(例えば酢酸などのカルボン酸)の混合物を含む。そのような溶媒の混合物を溶媒系で使用する場合、水:弱有機酸の任意の比率、例えば1:10〜10:1の比率を使用し得る。しかし、好ましくは、その比率は1:5〜5:1、例えば1:3〜3:1、特に約1:1である。
【0046】
好ましくは、結晶化溶媒は均一であり、例えば溶媒は共沸混合物を形成してもよい。しかし、適切な溶媒はまた、結晶化プロセスを助けるために「アンチソルベント」(すなわち式Iの化合物の塩が難溶性である溶媒)として使用してもよい。
【0047】
結晶化温度及び結晶化時間は、溶液中の化合物の濃度及び使用される溶媒系に依存する。
【0048】
驚くべきことに、本発明のプロセスの結晶化又は沈殿は、式IIIの化合物の新しい物理的形態を生じさせることが認められた。従って、本発明のさらなる態様では、本明細書で述べる本発明のプロセスの結晶化/沈殿によって得られる式IIIの化合物が提供される。
【0049】
本発明のさらなる態様では、平均粒径が少なくとも250×150μMである、前記で定義した式IIIの化合物(例えば式IIIの誘導体ではないもの)が提供される(これも、本明細書では本発明の1つの態様と称され、そのような生成物を製造するためのプロセスも、本明細書では本発明のもう1つのプロセスと称される)。好ましくは、平均粒径は少なくとも300×200μM(例えば少なくとも400×300μM、例えば約500×380μM)である。そのような化合物は、本質的に先行技術において述べられているものよりも大きいと考えられる。本明細書で言及する場合、「平均」は中央値を指す。測定は、長方形(又はそれに近い)である粒子に関して実施してよい(従って、より大きな数字は長さを指し、より小さな数字は幅を指す)。測定はまた、球状(又はそれに近い)である粒子に関して実施してもよく、その場合数字は直径(又は横断面)を指す。測定は、好ましくは「クラスター化した」粒子ではなく「個別の」粒子に関して実施される。これらの測定は、(「個別の」)粒子の大きな割合(例えば大部分)が実質的に長方形、球状、長円形又は楕円形の形状であると仮定する(これは、好ましくは、例えばそのような粒子が前述した本発明のプロセスによって製造される場合に当てはまる)。これは、本明細書で述べる本発明のプロセスによって生成された粒子を、国際特許出願である国際公開第2009/044143号の実施例Aのプロセスステップ(実施例1、(b);式IIIのジケトンがヒドロキシ部分のベンジル脱保護によって生成される)によって生成される粒子と比較する、以下の図面によって示され得る。
【0050】
新しい物理的形態(増大された平均粒径を有する)は、式IIIの化合物の取扱いに関する利点及び/又は化合物の特徴の改善を導き得る。
【0051】
結晶形態は精製及び/又は取扱いがより容易であり得るので、化合物の特定の結晶塩の形成は好都合であると考えられる(例えば非晶質形態と比較した場合)。結晶形態はまた、より良好な固体状態安定性と貯蔵寿命を有し得る(例えば物理化学的特徴、例えば化学組成、密度及び溶解度への実質的な変化を伴わずにより長期間保存され得る)。
【0052】
当業者は、化合物を安定な結晶形態で得ることができれば、非晶質形態に関する上記の不都合/問題のいくつかを克服し得ることを認識する。結晶形態を得ることは必ずしも達成可能であるとは限らない、又は容易には達成できないことに留意すべきである。実際に、典型的には特定の化合物又はその塩の結晶化挙動がどのようなものであるかを予測する(例えば化合物の分子構造から)ことは不可能である。これは、典型的には経験的にしか決定されない。
【0053】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書で述べる本発明のプロセスの組合せが提供される。例えば、式IIIの化合物の製造のためのプロセス(前記で定義した、式VII及び式VIIIの化合物の反応を含む;以下ではプロセス(i)と称する)、それに続いて前記で述べた結晶化(又は沈殿)(以下ではプロセス(ii)と称する)が提供される。好ましくは、プロセス(ii)はプロセス(i)の直後に、例えば式IIIの化合物の分離(例えば溶媒の抽出と除去/蒸発による)、それに続いて式IIIの化合物と結晶化プロセスの溶媒系との混合/接触によって実施される。あるいは、本発明のさらなる実施形態では、プロセス(ii)はプロセス(i)の直後に及び同じ反応ポットにおいて、例えばプロセス(ii)に必要とされる溶媒系中でプロセス(i)を反応停止することによって実施できる。
【0054】
好都合には、本発明のプロセスによって製造される式IIIの化合物は、式I:

[式中、R、R、R及びRは、独立して水素、ハロ、−NO、−CN、−C(O)x1、−ORx2、−SRx3、−S(O)Rx4、−S(O)x5−N(Rx6)Rx7、−N(Rx8)C(O)Rx9、−N(Rx10)S(O)x11又はRx12を表し;
Xは、水素又は場合により1若しくはそれ以上のハロ(例えばフルオロ)原子によって置換されたC1〜6アルキルを表し(すなわち前記で定義したとおりであり);
Yは、少なくとも1個(例えば1個)の−OH基によって置換されたアリール又はヘテロアリールを表し(すなわち前記で定義したとおりであり);
x1、Rx2、Rx3、Rx6、Rx7、Rx8、Rx9及びRx10は、独立して水素又は場合により1若しくはそれ以上のハロ(例えばフルオロ)原子によって置換されたC1〜6アルキルを表し;
x4、Rx5、Rx11及びRx12は、独立して、場合により1又はそれ以上のハロ(例えばフルオロ)原子によって置換されたC1〜6アルキルを表す]
の化合物を製造するために使用してもよく、前記プロセスは、式II:

[式中、R、R、R及びRは上記で定義したとおりである]
の化合物又はその保護された誘導体若しくは塩と、前述した本発明のプロセスによって製造される式IIIの化合物との反応を含み、このプロセスも、以下では「本発明のプロセス」と称する。
【0055】
本発明のさらなる実施形態では、前記で定義したとおりであるが、
反応が「ワンポット」法として実施され;
が−NOを表し、プロセスが、前記で定義した本発明のプロセスによって製造されるが、Rが−NOを表す式IIの化合物と前記で定義した式IIIの化合物との反応を含む、又はプロセスがアシル化試薬の不在下で実施される(例えば、本発明のプロセスが式XXIVの中間体(以下で定義する)を介して進行する場合、その中間体は、式Iの化合物を形成するペリ環状反応を促進するために、最初はアシル化試薬(トリフルオロ無水酢酸又はトリフルオロアセチルトリフレート)の存在下で反応せず、N−アシル化中間体を形成する)
ことを特徴とする、式Iの化合物の製造のためのプロセスが提供される。
【0056】
例えば、式IIの化合物の保護された誘導体又は塩をプロセスにおいて使用してもよいことが上記に明確に記載されている。これに関して、挙げられる具体的な塩は、ハロゲン化水素塩(例えばHCl)などの酸性塩を含み、挙げられる具体的な保護基は、例えば式IIA及びIIB:

[それぞれ、式中、
PGは、イミノ保護基(すなわちイミノ官能基を生じさせるアミノ部分のための保護基)、例えば=C(Rq1)ORq2を表し(それ故−O−N=C(Rq1)ORq2である保護されたヒドロキシルアミン基を形成する)[前記式中、Rq1及びRq2は、独立してC1〜6アルキルを表し、より好ましくはC1〜3アルキルを表す。最も好ましくは、Rq1はメチルを表し、及び/又はRq2はエチルを表す(それ故、例えば保護されたヒドロキシルアミン基が−O−N=C(CH)OCHCHである式IIAの化合物を形成する)]。以下で述べるように、式IIAの化合物は、幾何異性体、すなわちイミノ二重結合についてシス及びトランス異性体として存在してもよい;
PGは、アミノ保護基(すなわち第二級アミノ基であるアミノ部分を生じさせる保護基)、例えばアミド(例えばN−アセチル)、N−アルキル(例えばN−アリル又は場合により置換されたN−ベンジル)、N−スルホニル(例えば場合により置換されたN−ベンゼンスルホニル)を提供する保護基、又は、より好ましくはカルバメート又は尿素を表す]
の化合物によって定義される、イミノ保護基又はアミノ保護基などの、ヒドロキシルアミン部分のための適切な保護基を含む。
【0057】
従って、PGは、
−C(O)Rt1(Rt1は、好ましくはC1〜6アルキル又は場合により置換されたアリールを表す);
1〜6アルキル、前記アルキル基は、場合により置換されたアリールから選択される1又はそれ以上の置換基によって場合により置換されている;
−S(O)t2(Rt2は、好ましくは場合により置換されたアリールを表す);又は、好ましくは−C(O)ORt3(Rt3は、好ましくは場合により置換されたアリール又は、より好ましくはC1〜6(例えばC1〜4)アルキル、例えばtert−ブチルを表す(それ故、例えばtert−ブトキシカルボニル保護基、すなわちアミノ部分と一緒になった場合、tert−ブチルカルバメート基を形成する);
−C(O)N(Rt4)Rt5(好ましくは、Rt4及びRt5は、独立して水素、C1〜6アルキル、場合により置換されたアリール又は−C(O)Rt6を表し、Rt6はC1〜6アルキル又は場合により置換されたアリールを表す)
を表し得る。
【0058】
本明細書で使用される場合(例えばPGによって定義されるような保護基に関して)、「場合により置換されたアリール」という用語は、好ましくは、選択的置換基が、好ましくはハロ、−NO、−OH及び/又は−OC1〜6アルキルから選択される、「場合により置換されたフェニル」を指す。
【0059】
式IIの化合物の保護された誘導体を本発明のプロセスにおいて使用する場合(式Iのベンゾフランを生成するため)、式IIAの化合物を使用することが好ましい。しかし、好ましくは、式IIAの化合物を、最初に本明細書で述べるように脱保護して、式IIの化合物を形成し、その脱保護された化合物を本発明のベンゾフラン形成プロセスにおいて使用する。
【0060】
式IIの化合物の保護された誘導体(例えば式IIA又は式IIBの化合物)又は式IIの化合物の塩(例えばハロゲン化水素塩、例えばHClなどの酸性塩)を本発明のプロセスにおいて使用する場合、式IIの保護されていない化合物への脱保護段階、又は式IIの化合物の遊離塩基への中和段階(例えば酸性塩の塩基化による)を、例えば本発明のプロセスの前に、別途に実施する必要はない(しかし好ましくは実施する)。そのような段階は、好都合には本発明のプロセスと同じ「ポット」内で実施してもよい、すなわち本発明のプロセスの反応が同時に起こる間に脱保護又は中和が生じてもよく、それにより保護された形態ではない及び/又は塩の形態ではない式Iの化合物を提供し得る。
【0061】
式IIの化合物又はその塩は、当業者に公知の標準的条件下で、式IIA又は式IIBの対応する化合物の脱保護によって製造してもよい。例えば、式IIAの化合物の脱保護のためには、標準的な加水分解条件、例えば水溶液中の酸(例えばHBr又は、好ましくはHClなどのハロゲン化水素)の存在を使用し得る(酸はまた、リン酸又は硫酸などの無機酸であってもよい)。そのような条件は、式IIの化合物(の保護されていない誘導体)の塩(例えば関連するハロゲン化水素塩)、又は式IIのそのような化合物の遊離塩基型(例えば、塩形態が、例えば塩基化によって、中和される場合)を生じさせ得る。
【0062】
好ましくは、式IIの化合物を式IIAの化合物の脱保護から製造する場合(好ましくはそのように製造する)、そのような脱保護段階は、ハロゲン化水素、リン酸又は硫酸(好ましくはハロゲン化水素、例えばHCl)及び少なくとも15重量%の水を含有する溶媒系の存在下で実施してよい。好ましくは、溶媒系は、少なくとも25重量%の水、例えば少なくとも50重量%の水を含有する。より好ましくは、溶媒系は、少なくとも70重量%(例えば少なくとも80重量%)、最も好ましくは少なくとも90重量%の水を含有する。最も好ましくは、溶媒系は、少なくとも95%の水(重量比で)を含有し、基本的に水から成る(例えば、溶媒系は、主として、好ましくは、排他的に水から成り、例えば溶媒系の100重量%又は100重量%近くが水から成る)。従って、最も好ましくは、本発明のプロセスの溶媒系は基本的に水から成る。少なくとも15%の水(重量比で)を含有することを条件として、溶媒系はまた、有機溶媒、例えば極性プロトン性溶媒などの極性溶媒、例えばアルコール(例えばエタノール又は、好ましくはメタノールなどのC1〜6アルコール)、又は、より好ましくはジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン又は、最も好ましくはアセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒を含み得る。上記溶媒の混合物を使用してもよい。あるいは、本発明のこの態様のプロセスは、本明細書で述べるように実施されるが、溶媒系は、水が1:3以上のモル比(溶媒系中の他の溶媒に比して)で存在する、例えば水:他の溶媒(前記の他の溶媒は、アルコール又は、好ましくはアセトニトリルなどの有機溶媒であり得る)のモル比が少なくとも1:2、例えば少なくとも1:1、好ましくは2:1である溶媒系である。より好ましくは、水:他の溶媒のモル比は少なくとも5:1、例えば少なくとも10:1、最も好ましくは、モル比は50:1以上(例えば、溶媒系は、本明細書で定義するように、主として又は排他的に水を含有する)。
【0063】
本発明のこの態様(すなわち式IIAの化合物からの式IIの化合物の製造)では、本発明のプロセスにおいて、式IIAの化合物を、ハロゲン化水素、リン酸又は硫酸(好ましくはハロゲン化水素、例えばHCl)と本発明のプロセスで使用される溶媒系の混合物に添加することが好ましい。しかし、本発明のそのような実施形態では、反応のプロセスで使用される溶媒系全体を酸と混合する必要はない。例えば、溶媒系の一部を式IIAの化合物と混合してもよい(これは、例えば反応物へのその添加を助け得る)。さらに、有機溶媒が反応混合物中に存在する場合、そのような溶媒を酸と混合してもよいが、好ましくは式IIAの化合物と混合する(溶解を助けるため)。しかし、溶媒系中に存在する水の少なくとも20%(例えば少なくとも30%)を、好ましくは最初に、使用される酸(例えばハロゲン化水素;これは、以下で述べるように水中のハロゲン化水素として存在してもよい)と混合する。好ましくは、溶媒系中に存在する水の少なくとも50%(例えば少なくとも60%、例えば少なくとも75%)を、最初に酸と混合する(これに、それ自体が溶媒中に存在してもよい式IIAの化合物を添加する)。好ましくは、本発明のこの態様のプロセスでは、溶媒(例えば水)の存在下であってもよい酸(例えばハロゲン化水素)を式IIAの化合物(これは、場合により式IIAの化合物と本明細書で定義する溶媒系、例えば水との混合物であってもよい)と混合する/反応させる。上述したように、式IIAの化合物を、場合により溶媒(例えば水)の存在下で、酸(例えばハロゲン化水素)に添加することが好ましい。好ましくは、少なくとも1モル当量のハロゲン化水素(例えばHCl)を、使用される、例えば少なくとも又は約2当量(好ましくは少なくとも又は約3当量、例えば少なくとも又は約4当量、例えば約5当量)に添加する。酸、例えばハロゲン化水素(これは水溶液中のハロゲン化水素として使用してもよい)を式IIAの化合物と反応させる/混合することは上記で明言している。好ましくは、式IIAの化合物を酸(例えばハロゲン化水素)に添加し、そのどちらもが本明細書で述べる溶媒中に存在してもよい(例えばハロゲン化水素は、好ましくは水溶液中に存在する)。この添加は、好ましくは一定期間にわたって小分けして実施される。例えば、式IIAの化合物は、反応(本発明のプロセス)の温度を一定レベルに、例えば室温近くに(例えばできる限り室温近くに)維持する速度で添加し得る。好ましくは、本発明のプロセスの温度を約50℃以下(例えばほぼ室温から50℃までの間)、例えば約40℃以下、例えば35℃以下に維持する。最も好ましくは、温度をほぼ室温(約25℃)から約32℃までの間に維持する。本発明のプロセスはまた、室温より下で実施してもよいが、好ましくは0℃より上で実施し、最も好都合にはほぼ室温で実施する。式IIAの化合物は、本発明のプロセスで使用される溶媒系中の混合物として酸(例えばハロゲン化水素)に添加してもよい。例えば、水中の式IIAの化合物の混合物(例えば前述したような)として使用してもよい。本発明のプロセスにおける酸、例えばハロゲン化水素(又はその水溶液)への式IIAの化合物の小分け方式での添加は、最も好ましくは約1時間にわたって式IIAの化合物約1モル(例えば約50分間にわたって約0.8モル)を添加することによって実施される。しかし、添加は小分け方式である必要はなく、すなわち添加は実質的に単回の「一括」としてであってもよい。添加が小分け方式である場合は、式IIAの化合物1モルを10分間から2時間の期間にわたって(最も好ましくは上述したように約1時間の好ましい期間にわたって)酸(例えばハロゲン化水素)に添加し得る。小分け方式での添加は、必要な期間にわたる連続的な添加プロセスによって実施してもよく、例えば、添加は、必要とされる適切な速度で添加を実施するように設定し得るシリンジポンプを用いて、式IIAの化合物(例えば水性溶媒中の)の連続的な添加によってであり得る。小分け方式での添加はまた、あらかじめ定められた間隔(すなわち不連続な添加)で実施してもよい。本発明のプロセスにおける式IIAの化合物のモル数を増加又は減少させる場合は、添加を行う期間をそれに応じて上昇又は低下させ得る(例えば、2モルを使用する場合は、添加時間を2倍にし得る)。しかし、当業者は、他の因子も必要な添加期間に影響を及ぼし得ることを認識する(例えば、溶媒中の試薬の濃度及び/又は温度;より高い濃度及びより低い温度は添加期間を短縮し得る)。
【0064】
本発明のプロセスのこの態様において(すなわち式IIAの化合物の脱保護から式IIの化合物を得るために)使用される溶媒の総量は、反応を進行させる(例えば収率を最大化する、反応時間を最小化する等のために、あらかじめ定められた速度で)のに十分であるべきである。従って、任意の適切な量の溶媒を使用してよい。好ましくは、しかし、本発明のプロセスで使用される溶媒の量は、式IIAの化合物の少なくとも1重量%、例えば少なくとも10重量%(例えば少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に少なくとも100重量%)及び/又は本発明のプロセスで使用される酸の少なくとも5重量%(例えば少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に少なくとも100重量%)である。あるいは(特に溶媒系が主として水を含有する、例えば排他的に水を含有する場合)、存在する溶媒の総量は、式IIAの化合物に比して、少なくとも1モル当量に当たる量である。好ましくは、本発明のプロセスの溶媒系中には少なくとも3モル当量、例えば少なくとも5モル当量の溶媒が存在する。本発明のプロセスで使用される溶媒の実際の量/容積は、反応の速度、収率等の必要条件に依存して変化し得る。プロセスにおいて必要とされる溶媒の量の任意の上限が存在してもよい。しかし、これは、実際には、反応混合物が希薄すぎないように(例えば反応の速度が遅すぎないように)又は量が多すぎて過剰の廃棄物を生じることがないように決定され得る。
【0065】
本発明のこの態様のプロセスの脱保護段階(すなわち式IIAの化合物の脱保護から式IIの化合物を得るため)を実施した後、反応混合物の酸性媒質を中和する必要があり得る。本発明のプロセスは酸(例えばハロゲン化水素、好ましくはHCl)の存在下で実施されるので、そのようにして形成された式IIの生成物は、式IIの化合物の酸性(例えばハロゲン化水素)塩として存在し得る。本発明のプロセスによって形成される式IIの化合物の任意の酸性(例えばハロゲン化水素)塩を標準的な条件下で、例えば適切な塩基の存在下で、例えばアルカリ金属水酸化物(好ましくは水酸化ナトリウム)などのアルカリ金属ベースの塩基の存在下で中和してもよい。例えば、塩基(例えば水酸化ナトリウム水溶液)は、10〜50%w/w、例えば15〜40%w/w、例えば約33%w/w)であり得る。好ましくは、塩基を、本発明のプロセスの生成物の混合物の温度を一定レベル(50℃以下など)に維持する速度で混合物に添加する、例えば、温度を本発明のプロセスの間維持される温度と同じレベルに維持する、すなわち温度を、最も好ましくはほぼ室温(約25℃)から約32℃までの間に維持する。本発明のプロセスの範囲に包含される、そのような中和段階は、好都合にも式IIの化合物の遊離塩基を生成し、それを溶媒系(本発明のプロセスで使用される溶媒系、例えば水、及び/又は本明細書で述べる中和段階で使用される任意の付加的な溶媒、例えば水を含み得る)から析出させてもよい。従って、そのようにして形成される式IIの化合物の遊離塩基を標準的な技術、例えばろ過によって単離してもよい。
【0066】
式IIB又は、好ましくは式IIAの化合物は、式IV:

[式中、Lは、スルホン酸基(例えば−OS(O)CF、−OS(O)CH若しくは−OS(O)PhMe)又は、より好ましくはハロ(例えばブロモ、フルオロ若しくは、好ましくはクロロ)などの適切な脱離基を表し、そしてR、R、R及びRは前記で定義したとおりである]
の化合物と、式V(式IIAの化合物の製造の場合):

[式中、PGは前記で定義したとおりである]
の化合物、又は式VI(式IIBの化合物の製造の場合):

[式中、PGは前記で定義したとおりである]
の化合物との、例えば標準的な芳香族置換反応条件下での反応によって製造し得る。例えば、芳香族置換反応は、極性非プロトン性溶媒(ジメチルホルムアミドなど)の存在下で実施してもよい。これに関連して、挙げられる他の極性非プロトン性溶媒は、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル及びジオキサンを含む。しかし、今や、このプロセスステップはまた、そのうち1つだけが極性非プロトン性溶媒である(そしてその他は非極性溶媒である)、溶媒の混合物中でも実施し得ることが認められた。従って、本発明のもう1つの態様では、上記で定義した(そして好ましくはジメチルホルムアミドである)極性非プロトン性溶媒に加えて使用される、非極性非プロトン性溶媒などの非極性溶媒の存在下でのそのようなプロセスが提供される。好ましい非極性非プロトン性溶媒は、トルエンを含むが、式V又は式VIの化合物を抽出する(例えば以下で定義する反応混合物から)ために使用し得る任意の溶媒でよい。
【0067】
好都合にも、本発明のこの態様(すなわち式IIA又は式IIBの化合物の製造のためのプロセス)では、式V又は式VIの化合物(どちらかを使用する)を含有する溶液、例えば反応混合物からの抽出によって得られる溶液(式V又は式VIの化合物の製造後に)を、溶媒の部分的又は完全な蒸発によって濃縮する必要がない(すなわち好都合にも、溶媒を除去する必要がない)。むしろ、極性非プロトン性溶媒(例えばDMF)を、好ましくは、非極性溶媒、例えば抽出において使用されるものの完全な除去を伴わずに(最も好ましくは、いかなる除去も伴わずに)式V又は式VIの化合物の溶液に直接添加してよい。
【0068】
PGが=C(Rq1)ORq2を表す式Vの化合物は、ヒドロキシルアミン又はその塩(例えばHClなどのハロゲン化水素塩)と、式XVII:

[式中、Rq1及びRq2 は前記で定義したとおりである]
の化合物との、標準的な反応条件下での反応によって製造し得る。そのような生成物を得るための反応混合物は、非極性溶媒(例えばトルエン)などの適切な溶媒で抽出し得る。
【0069】
式XVIIの化合物は、式XXI:

[式中、Rq1は前記で定義したとおりである]
の化合物と、式XXII:

[式中、Rq2は前記で定義したとおりである]
の化合物との、標準的な反応条件下での、例えばハロゲン化水素(例えばHCl)などの酸の存在下での反応によって製造し得る。
【0070】
本明細書で述べる中間体化合物及びその誘導体(例えば保護された誘導体)は、商業的に入手し得るか、文献中で公知である、又は容易に入手可能な出発物質から適切な試薬と反応条件を使用して、公知の技術に従い、従来の合成手順によって入手してもよい。
【0071】
本明細書で述べるプロセスのいずれもが、好都合にも、連係して(すなわち連続して)使用し得る。例えば、式IIAの化合物の製造のためのプロセスは、最初に、本明細書で述べる式Vの化合物の製造のためのプロセス(すなわちヒドロキシルアミン又はその塩と式VIIの化合物との反応を含む)、続いて式IIAの化合物の製造のためのプロセス(すなわちそのようにして製造された式Vの化合物と式IVの化合物との反応を含む)から構成され得る。さらに、式II及び/又は式IIIの化合物(又はその誘導体)の製造のためのプロセスは、好都合にも本発明のプロセスと併せて使用してもよい。
【0072】
式III(又は式I)の化合物又はそのような化合物の何らかの関連する中間体化合物(又はその塩、溶媒和物又は誘導体)上の置換基、例えばR、R、R、Rによって定義される置換基、又はY上の置換基は、上述したプロセスの前、後又はプロセスの間に、当業者に周知の方法によって1回又はそれ以上修飾されてもよい。そのような方法の例は、置換、還元、酸化、アルキル化、アシル化、加水分解、エステル化、エーテル化、ハロゲン化、ニトロ化、ジアゾ化又はそのような方法の組合せを含む。このようにして式I、II又はIIIの特定の化合物(又はその誘導体)を、それぞれ式I、II又はIIIの他の化合物(又はその誘導体)に変換してもよい。例えば、Rが−NOを表す式IVの化合物(この化合物は、式IVの化合物と式Vの化合物との求核芳香族置換反応により適し得る)を使用して、Rが同じく−NOを表す式IIAの化合物を合成してもよい。しかし、そのような−NO基を本発明のプロセスの前又は後にアミノ基に還元して、Rがアミノを表す式Iの対応する化合物を形成してもよい。そのようなアミノ基は、最初に式IVのアミノ置換された化合物を使用した場合は、上記求核芳香族置換反応には適さなかったと考えられる。同様に、式IIIの化合物に対応するが、Yが−NHによって置換されたアリール又はヘテロアリールを表す化合物を反応のプロセスにおいて使用してもよいが、そのアミノ基を、本発明のプロセスの前又は後に、ジアゾニウム塩に変換し、その後、例えば−OH基に変換してもよい。
【0073】
特定の官能基が保護されていてもよいことは本明細書で明言される。上述したプロセスにおいて、中間体化合物の他の官能基が保護基によって保護されていてもよい又は保護される必要があり得ることも当業者によって認識される。
【0074】
いずれにしても、保護することが望ましい官能基はヒドロキシを含む(但し、本明細書で述べるプロセスにおける特定のヒドロキシ基は、保護されていない、すなわち遊離−OHの誘導体であると明確に示される)。ヒドロキシのための適切な保護基は、トリアルキルシリル基及びジアリールアルキルシリル基(例えばtert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル又はトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル基及びアルキルカルボニル基(例えばメチル及びエチルカルボニル基)を含む。しかし、ヒドロキシのための最も好ましい保護基は、場合により置換されたベンジルなどのアルキルアリール基を含む。
【0075】
官能基の保護及び脱保護は、前述した反応段階のいずれかの前又は後に実施してよい。
【0076】
保護基は、当業者に周知であり、以下で述べる技術に従って除去し得る。
【0077】
保護基の使用は、「Protective Groups in Organic Chemistry」,edited by J.W.F.McOmie,Plenum Press(1973)、及び「Protective Groups in Organic Synthesis」,3rd edition,T.W.Greene & P.G.M.Wutz,Wiley−Interscience(1999)に記載されている。
【0078】
当業者は、本発明のベンゾフラン形成プロセスがO−フェニルオキシム中間体、すなわち式XXIV:

[式中、R〜R、X及びYは前記で定義したとおりである]
の化合物を介して進行してもよく、前記中間体が次にペリ環状転位を受けて、最終的にベンゾフラン環を形成することを認識する。本発明の1つの実施形態では、本発明のプロセスをアシル化試薬の不在下で実施することが前記に明言されている。この場合、本発明のプロセスが式XXIVの中間体を介して進行するときには、式XXIVのフェニルオキシム中間体は最初アシル化試薬と反応せず、例えば以下の式XXIVA:

[式中、Qは、例えば、場合により1又はそれ以上のフルオロ原子によって置換されたC1〜6アルキルを表し(それ故、例えば−CF基を形成する)、そしてR〜R、X及びYは前記で定義したとおりである]
の化合物又はそのもう1つ別のエナミノ等価物(例えば、Xがアルキル基を表す場合、エナミノ部分の二重結合はX基に隣接してもよい)によって示される、イミノ窒素でN−アシル基を形成する(関連するイミノ官能基はエナミノ官能基に変換される)。
【0079】
むしろ、式XXIVの化合物のペリ環状転位はアシル化試薬の不在下で起こり、従って式XXIVAの中間体を介して進行しない。むしろ、ペリ環状転位は本明細書で述べるような反応条件下で、例えば本明細書で述べる弱有機酸などの酸の存在下で実施される。
【0080】
そのような中間体を本発明のプロセスにおいて分離(例えば単離)してもよく及び/又は反応条件をその後変更してもよい。すなわち、最初の反応段階において、前記で定義した式IIの化合物を前記で定義した式IIIの化合物と反応させ、式XXIVの中間体化合物を形成してもよく、その後の反応段階において、式XXIVの中間体に反応(すなわちペリ環状転位反応)を受けさせ、式Iの化合物を形成してもよい。従って、そのような実施形態は基本的に2つの(例えば異なる/別個の)反応段階から成る。そのような実施形態では、式XXIVの中間体化合物を反応混合物から分離してもよく(例えば抽出し、場合により任意の不純物から単離して、場合により任意の溶媒を除去する)、及び/又はその後の反応段階を変更された反応条件下で(例えば異なる又は「新鮮」溶媒の存在下で及び/又は付加的な試薬の存在下で)実施してもよい。
【0081】
しかし、好都合には、本発明のベンゾフラン形成プロセスで形成されるいずれの中間体(式XXIVの中間体など)も分離する必要がない及び/又はベンゾフラン形成反応を促進するために反応条件を変更する必要がない。基本的に、それ故、反応は「ワンポット」法として実施し得る。そのような「ワンポット」法は、YがHを表す、式Iの化合物(及び/又はRが−NOを表す式Iの化合物)を必要とする及び/又は所望する場合に特に好ましい。
【0082】
従って、本発明の特定実施形態では、反応はいかなる中間体の分離(例えば単離)も伴わずに実施される。本発明の代替的実施形態では、反応は反応条件の変更を伴わずに実施される。
【0083】
反応が中間体の分離を伴わずに実施されると明言される場合、出発試薬の反応によって形成され得るいかなる中間体も、例えば精製状態では、単離されないことを意味する(中間体がまだ溶媒及び/又は残留出発物質又は他の不純物の存在下にあるか否かにかかわらず)。これに関連して、それ故、いかなる中間体も出発物質の反応から抽出されないことを包含する。反応条件を変更する必要がないと明言される場合、溶媒を変更する必要がない及び/又はさらなる試薬を添加する必要がない反応を包含する。
【0084】
本発明のさらにもう1つの態様では、式XXIVの化合物の反応、例えば分子内反応(すなわちペリ環状転位)を含む、前記で定義した式Iの化合物の製造のためのベンゾフラン形成プロセスが提供される。そのような反応は、アシル化試薬の不在下で実施してよく、例えば本明細書で述べる反応条件下で実施してよい。
【0085】
本発明のプロセス(すなわち式IIの化合物と式IIIの化合物とのベンゾフラン形成反応)は、好ましくは、弱有機酸(例えばギ酸又は、好ましくは酢酸)及び/又は任意の適切な鉱酸などの無機酸又はその適切な塩(例えば硝酸、硫酸又はその塩、例えば硫酸水素ナトリウム若しくは、より好ましくはハロゲン化水素酸、例えばHBr)などの酸の存在下で実施される。酸の混合物、例えば弱有機酸と無機酸(例えばHBrと酢酸)の混合物も使用してもよい。さらに、酸を使用する場合、その酸は水溶液の成分であってもよい。「弱有機酸」とは、有機酸が約2〜約6(例えば約3〜約5)のpKa(約25℃で)を有することを意味する。
【0086】
本発明のベンゾフラン形成プロセスは、適切な溶媒、例えば水又は有機溶媒、例えばトルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド若しくは、好ましくはアルコール(メタノール若しくはエタノールなど)、又はそれらの混合物(水と有機溶媒の混合物などの二相溶媒系を含む)の存在下で実施し得る。しかし、弱有機酸を反応混合物中で使用する場合(唯一の酸成分として又は酸の混合物の成分として)、その酸は試薬及び溶媒の両方の役割を果たし得る。そのような場合、好都合には、反応混合物中での溶媒の別途の使用が回避される(しかし、上述したように、そのような有機酸と上記で定義した別の適切な溶媒の混合物を使用してもよい)。特に、比較的低い沸点を有する弱有機酸、例えば150℃未満の沸点を有する有機酸(例えばギ酸又は、より好ましくは酢酸)は、試薬及び溶媒としての役割を果たし得る。例えば、弱有機酸(例えば試薬及び溶媒としての役割を果たすもの)を使用する場合、溶液として(例えば水若しくは溶媒中の)使用してもよく又は、例えばより好ましくは、「未希釈(neat)」で使用する。例えば、酢酸を使用する場合、氷酢酸であり得る。
【0087】
溶媒又は溶媒としての役割を果たす弱有機酸を使用する場合、それは任意の適切な容量で存在してよい。しかし、溶媒/弱有機酸溶媒中の式IIの化合物の濃度は、約0.1M〜約5M、好ましくは約0.5M〜約2M(例えば約0.6M〜約1.5M)であることが好ましい。
【0088】
式IIと式IIIの化合物を同時に反応混合物に添加する場合は、溶媒中の試薬の濃度をより高くする(反応混合物中の式IIと式IIIの化合物のモル比に従って;下記参照)。しかし、式IIIの化合物を式IIの化合物に添加することが好ましい(後者は、好ましくは既に溶媒又は溶媒としての役割を果たす弱有機酸の存在下にある)。しかし、式IIの化合物を式IIIの化合物に添加することが特に好ましい(後者は、好ましくは既に溶媒又は溶媒としての役割を果たす弱有機酸の存在下にある)。そのような添加の順序は、初期分子間反応の位置選択性を促進し得る及び/又は、反応が式XXIVの中間体化合物を介して進行する場合、この添加の順序はまた、ベンゾフラン環を形成するその後の分子内反応の効率を促進し得る。
【0089】
前記反応のベンゾフラン形成プロセスは、任意の適切な反応温度で、例えば室温又は高温で実施してよい。本発明の特定の好ましい実施形態では、(例えば反応が弱有機酸と強無機酸の混合物の存在下で起こる場合)、反応は室温で実施してよく(例えば約6時間などの一定期間)、又は(例えば反応が弱有機酸溶媒の存在下で起こる場合)、反応は高温(例えば50℃以上、例えば約60℃〜約80℃)で一定期間(例えば約3時間若しくは、約25時間までの任意の適切な期間)実施してよく、続いて、必要な場合は、反応温度を一定期間(例えば約25時間までの任意の適切な期間、例えば22時間)上昇させてよい(例えば少なくとも80℃、例えば約90℃〜約118℃(例えば約110℃、例えば約100℃)に)。
【0090】
当業者は、温度は溶媒系(弱有機酸溶媒を含み得る)の沸点までしか上昇させることができない、例えば酢酸を使用する場合は、反応温度は約118℃までしか上昇させることができないことを認識する。従って、本発明のプロセスの好ましい温度条件は、反応のプロセスが酢酸の存在下で実施される場合に特に当てはまる。しかし、反応のプロセスをギ酸などの他の弱有機酸(又は別の適切な溶媒)の存在下で実施する場合、当業者は、本明細書で言及する好ましい反応温度条件が、例えば異なる沸点に従って、変化し得ることを認識する。
【0091】
本発明のベンゾフラン形成プロセスはまた、高温が必要とされる及び/又は望ましい典型的な反応条件に代わる選択肢を提供する条件下で実施してもよい。例えば、マイクロ波照射条件を使用してもよい。「マイクロ波照射条件」により、そのような条件が熱誘起反応を促進する(例えば前記で述べたような高温で)及び/又はそのような条件が非熱誘起反応を促進する(すなわち反応が基本的にマイクロ波によって誘起される)反応を包含する。従って、そのような反応条件は必ずしも温度の上昇を伴わない。当業者は、そのような反応条件を使用する場合、反応時間の長さを変化させ得る(例えば短縮し得る)ことを認識する(そして非発明的に決定することができる)。
【0092】
本発明のベンゾフラン形成プロセスはまた、加圧下で、例えば通常の大気圧より高い圧力下で、例えば約5又は6バールまでの圧力で実施してもよい。やはり、当業者は、そのような反応条件を使用する場合、反応時間の長さを変化させ得る(例えば適切に短縮し得る)ことを認識する(そして非発明的に決定することができる)。
【0093】
本発明のベンゾフラン形成プロセスは、式II及び式IIIの化合物の各々の任意の量の存在下で実施してよい。しかし、好ましくは、約3:2〜約2:3のモル比、最も好ましくは約1.1:1〜約1:1.1(例えば約1:1)のモル比の式II及び式IIIの化合物の存在下で実施される。
【0094】
本発明のプロセスによって製造し得る式Iの好ましい化合物は、
、R、R及びRは、独立して水素、ハロ、−NO、−CN、−C(O)x1、−N(Rx6)Rx7又は−N(Rx10)S(O)x11を表し;
Xは、C1〜4アルキル(場合により1又はそれ以上のフルオロ原子によって置換された;しかし好ましくは置換されていない)、例えばCアルキル、例えば1−メチルプロピル又は、最も好ましくはブチル(特にn−ブチル)を表し;
Yは、2位、3位又は、好ましくは4位で1個の−OH基によって置換されたフェニルを表し;
x1、Rx2、Rx3、Rx6、Rx7、Rx8、Rx9及びRx10は、独立して水素又は場合により1若しくはそれ以上のハロ(例えばフルオロ)原子によって置換されたC1〜4アルキルを表し;
x4、Rx5、Rx11及びRx12は、独立して、場合により1又はそれ以上のハロ(例えばフルオロ)原子によって置換されたC1〜4アルキルを表す
ものを含む。
【0095】
本発明のプロセスによって製造し得る式Iのさらなる好ましい化合物は、
、R、R及びRの任意の3つ(好ましくはR、R及びR)は水素を表し;
、R、R及びRの任意の1つ(好ましくはR)は、ハロ、−CN、−C(O)x1、好ましくは−N(Rx10)S(O)x11又は、より好ましくは−NO又は−N(Rx6)Rx7(例えば−NO)を表し;
x1は、H又はC1〜3アルキル(例えばイソプロピルなどのプロピル)を表し;
x6、Rx7及びRx10は、独立して水素を表し;
x11はC1〜2アルキル(例えばメチル)を表す
ものを含む。
【0096】
式Iのそのような化合物を生成する反応は、3−アロイル置換ベンゾフランを必要とする場合、3−非置換ベンゾフランに関する(不都合な)フリーデル・クラフツアシル化段階が回避されるという付加的な利点を有する。本発明のこのプロセスに関連するさらなる利点は、反応が、対応する反応よりも位置選択的に進行し得るので、式Iの化合物がより高い収率で生成され得ることである。式IIIの化合物が2つのカルボニル部分を含有するという事実にも関わらず、式IIの化合物との反応は高度に位置選択的に進行し、Xによって定義される基に隣接する(又は前記の基に対してα位の)カルボニルに有利に働く(式IIの化合物のヒドロキシルアミノ部分と関連するカルボニル基の間での初期段階の縮合反応において)。驚くべきことに、この位置選択性は90:10以上(例えば95:5)であり、99:1の選択性が達成された。
【0097】
前述したように、本発明のベンゾフラン形成プロセスを介して得られる式Iの化合物は、Rが−NOを表すものである。Rが−NOである式Iの化合物の形成は、通常、この反応を実施する従来の方法である、ヒドロキシイミン(例えば2−ヘキサノンオキシム)とクロロフェニル基の反応を介して進行する。
【0098】
本発明のそのような化合物(本明細書で述べる本発明のプロセスによって製造される)を所望する及び/又は必要とする(例えばドロネダロンの合成における中間体として)場合、関連する−OH基が保護されていないときに本発明のプロセスが進行することは特に好都合である。例えば、3−非置換ベンゾフランのフリーデル・クラフツアシル化に関する、先行技術において(例えば米国特許第5,223,510号、同第5,854,282号及び国際出願第PCT/EP2007/004984号において)述べられているプロセスは、すべて3−(4−メトキシベンゾイル)ベンゾフランの形成を生じさせる。そのような中間体はドロネダロンの合成において使用し得るが、メトキシ基を「脱保護」しなければならない、すなわちメチル基をメチルアリールエーテルから切断しなければならない。そのような切断条件はまた、金属ハロゲン化物触媒、例えば第III族金属ハロゲン化物触媒、例えばBBr及びAlClを含み得る(これは、本明細書で挙げる理由からプロセス化学において不利である;例えばAlClを使用する場合、毒性副生成物、例えばクロロメタンが形成され得るため)。従って、Yが−OHで置換された(例えばパラ位で)フェニルを表す式Iの化合物を製造する場合に、そのようなメチルアリールエーテル切断が回避されることを考慮すると、本発明のこの実施形態は特に好ましい。従って、本発明のプロセスに関連する、特に本発明のプロセスの特定実施形態に関連するいくつかの環境上の便益が存在する。
【0099】
本発明のプロセスによって得られる式Iの化合物は、標準的な技術によって、例えばクロマトグラフィ、結晶化、溶媒の蒸発及び/又はろ過によって分離及び/又は単離し得る。
【0100】
好都合には、本発明のプロセスは、溶液から式Iの化合物を結晶化する付加的な段階をさらに含み、その溶媒は、好ましくは非ハロゲン化溶媒である。そのような結晶化は、式Iの化合物を提供する本発明のプロセスの反応混合物への溶媒の添加によって実施し得る(例えば式Iの化合物の事前の分離、例えば単離(例えば抽出による)を伴わずに)か、又はそのような結晶化は、式Iの化合物を分離(例えば抽出と、場合によりその後の溶媒の除去によって)又は単離した後に実施し得る。
【0101】
好ましくは、溶媒の添加後に、結晶化混合物/溶液(これに関して、前記混合物/溶液は、本発明のプロセス後であるが分離前の反応混合物中の式Iの化合物、並びに分離され、その後溶媒が添加された式Iの化合物を含む)を冷却する。好都合には、混合物を約−5〜約15℃(例えば使用される最適温度は約+5〜約15℃である)に冷却する。好ましい「結晶化」温度は約−5℃である。混合物は、任意の適切な手段、例えば氷浴又は当業者に周知の、例えば熱交換器を含む冷却システムを使用して冷却してよい。
【0102】
「結晶化」溶媒はまた、結晶化した生成物を洗浄するために使用してもよく、好ましくは前記溶媒を予冷しておく。溶媒を予冷し得る可能な温度は約−5℃〜約5℃である(あるいは、温度は約+5℃〜約15℃であってよい)。洗浄溶媒の予冷を行わない場合、収率が低下し得る。最も好ましい温度は約−5℃である。
【0103】
「結晶化」溶媒は、好ましくはハロゲン化されていないもの、例えば水であるか、又はメタノール、エタノール、イソプロパノール及び1−プロパノールなどのアルコールであってもよい。最も好ましい「結晶化」溶媒はメタノールであり得る。挙げられる他の好ましい結晶化溶媒は、弱有機酸、例えばカルボン酸(例えばブタン酸、プロパン酸、好ましくはギ酸又は、より好ましくは酢酸)を含む。そのような弱有機酸を水と混合して、結晶化共溶媒を形成してもよい。結晶化が反応混合物への溶媒の添加から成る場合、その溶媒は水であり得る。
【0104】
本発明のプロセスによってそのように形成される式Iの精製化合物はまた、上記で特定したもの以外の物質を含有してもよいことが認識されるべきである。
【0105】
この生成物を、さらなる結晶化、蒸留、相分離、例えば分子ふるい及び/又は活性炭を使用した吸着、及び洗浄を含む任意の適切な分離/精製技術又は技術の組合せを使用してさらに精製してもよい。
【0106】
本発明のさらなる態様では、ドロネダロン:

(又はその塩、例えば塩酸塩)を製造するためのプロセスであって、本明細書で述べるプロセス(例えば2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランの製造のためのプロセス)をプロセスステップとして含むことを特徴とするプロセスが提供される。
【0107】
従って、ドロネダロン又はその塩の製造のためのプロセスであって、本明細書で述べる式Iの化合物の製造のためのプロセス(例えば2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランの製造のためのプロセス)を含み、それに続いて、必要な場合は:
1)ニトロ(−NO)基のメチルスルホニルアミノ(−NHS(O)CH)基への変換(例えばニトロ基のアミノ(−NH)基への変換と、それに続くCH−S(O)−L[Lはハロ、好ましくはクロロを表す]との反応を介して);
2)−OH基の関連するオキシアルキルアミノアルキル(例えば−O−(CH−N(C)基への変換;
3)必要な場合/要求される場合は、そのようにして形成されたドロネダロンの任意の遊離塩基の塩(例えば塩酸塩)への変換
を含むプロセスが提供される。
【0108】
そのような段階は当業者に公知の標準的な段階であり、前記段階は、本明細書で開示する参考文献のような、先行技術において記述されている技術に従って実施してよい。例えば、ドロネダロン(又はその塩)は、米国特許第5,223,510号に記載されているような、ベンゾフランの誘導体を合成する任意の標準的な経路を使用して式Iの関連化合物から製造し得る。当業者は、変換の個々の段階(例えば上記段階(1)及び(2)によって概説されるもの)は任意の適切な順序で実施してよいことを認識する。
【0109】
段階(2)
例えば、式Iの化合物が2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランである場合、そのような化合物を上記段階(2)に述べられているように反応させてよく、その反応は、式XXV:

[式中、L1a1は、スルホン酸基(例えばトリフレート又はスルホネート)、ヨード、ブロモ又は、好ましくはクロロなどの適切な脱離基である]
の化合物の存在下に、例えば米国特許第5,223,510号(実施例1(e)参照)に記載されているような標準的なアルキル化反応条件下で実施され、式XXVI:

のドロネダロン中間体化合物を形成し得る。
【0110】
あるいは、段階(2)は、2つの異なる段階で実施してもよく、例えば2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランと、式XXVIA:

[式中、各々のL1a1は、独立して、ヨード、クロロ又は、好ましくはブロモなどの適切な脱離基を表す]
の化合物を反応させ、そのようにして式XXVIB:

[式中、L1a1は前記で定義したとおりである(そして好ましくはブロモである)]
のドロネダロン中間体を形成し、その中間体を、次に、例えば中国特許公開番号第CN101153012号に記載されているような反応条件下で、HN(n−ブチル)(ジ−n−ブチルアミン)と反応させて、式XXVIのドロネダロン中間体を形成してもよい。
【0111】
段階(1)
式XXVIの中間体化合物を、次に、上記段階(1)に述べられているように反応させてよく、その反応は、異なるサブ段階:
(i)例えば米国特許第5,223,510号(実施例1(f)参照)又は国際公開第02/48132号に記載されているような標準的な反応条件下での、−NO基の−NH基への還元、例えばH(例えば水素雰囲気又は発生期水素、例えばギ酸アンモニウム)及び貴金属触媒(例えばPtO又はPd/C)の存在下に、適切な溶媒(例えばアルコール、例えばエタノール)の存在下での水素化、それにより式XXVI:

の中間体化合物を形成する;
(ii)式XXVIIのドロネダロン中間体化合物を、次に、米国特許第5,223,510号(実施例3(a))に記載されているような反応条件下で、式XXVIII:

[式中、L1a2は、ブロモ、ヨード又は、好ましくはクロロなどの適切な脱離基を表す]
の化合物との反応によってメシル化し得る;
から構成され得る。
【0112】
段階(3)
上述したように、ドロネダロンを、例えば米国特許第5,223,510号(実施例3(b)参照)に記載されているように、例えばドロネダロンとHClをエーテル中で接触させることによって、又は米国特許第6,828,448号(実施例4などの実施例参照)に記載されているように、例えばドロネダロン、塩酸(例えば約30〜40%)及びイソプロパノールなどのアルコール系溶媒を接触させることによって、塩酸塩などの塩に変換してもよい。
【0113】
上述したように、上記段階は任意の実行可能な順序で実施してよい。従って、2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランを、最初に段階(1)に述べられているように反応させ、次に段階(2)に述べられているように反応させてもよい。ドロネダロンの製造は、それ故、以下の式XXIX及びXXX:

の中間体化合物を介して進行してもよく(段階(1))、また式XXXI:

[式中、L1a1は前記で定義したとおりである]
の中間体化合物を介して進行してもよい(2段階プロセスとして実施する場合は、段階(2))。
【0114】
当業者は、式XXVI、XXVIB、XXVII、XXIX、XXX及びXXXIの中間体化合物が同時に式Iの化合物であってもよいことを認識する。従って、式Iのそのような化合物(本発明のプロセスから直接製造され得る)の変換は、ドロネダロン又はその塩(例えばHCl塩)を提供するために上記で概説したプロセスステップ(又はサブプロセスステップ)(すなわち段階(1)、(2)及び(3))のすべてを必要とするとは限らない。そのような場合、上記段階のいずれが適切な変換のために必要であるかは当業者に即座に明らかである。
【0115】
ドロネダロン(又はその塩、例えば塩酸塩)の中間体の製造のためのプロセスであって、前述したプロセスステップ、続いてドロネダロン又はその塩の形成を導く1又はそれ以上のプロセスステップを含むプロセスがさらに提供される。例えば、そのようなさらなるプロセスステップは、上記の段階(1)、(2)及び(3)に開示されるプロセスステップの任意の1又はそれ以上を任意の実行可能な順序で含み得る(それにより式XXVI、XXVIB、XXVII、XXIX、XXX又はXXXIの中間体を形成する)。当業者は、上記段階(1)、(2)及び(3)が各々、関連する変換を実施させるために複数の別々の反応段階を必要とし得ることを認識する。
【0116】
本明細書で述べるプロセスは、バッチプロセスとして又は連続プロセスとして操作してもよく、任意の規模で実施してよい。
【0117】
一般に、本明細書で述べるプロセスは、式Iの化合物が、先行技術で開示されるプロセスと比較して、より少ない試薬及び/又は溶媒を使用する及び/又はより少ない反応段階(例えば異なる/別々の反応段階)しか必要としない方法で生成され得るという利点を有し得る。
【0118】
本発明のプロセスはまた、式Iの化合物が、先行技術で開示される手順と比較して、より高い収率で、より高い純度で、より高い選択性(例えばより高い位置選択性)で、より少ない時間で、より便利な(すなわち取り扱いやすい)形態で、より便利な(すなわち取り扱いやすい)前駆体から、より低いコストで、及び/又は材料(試薬及び溶媒を含む)のより少ない使用量及び/又は廃棄量で生成されるという利点を有し得る。さらに、ハロゲン化溶媒の使用の回避(例えば、−OH基に対して、先行技術でのプロセスによって実施される特定段階のために必要とされ得る、フリーデル・クラフツ反応又は、例えば−OCH基の脱保護を実施する必要性を回避する場合)などの、本発明のプロセスのいくつかの環境上の便益が存在し得る。
【0119】
以下の実施例は、単に、本明細書で述べる本発明のプロセスの説明的実施例である。
【0120】
使用したすべての装置、試薬及び溶媒は、標準的な実験装置、例えばガラス製品、加熱装置及びHPLC装置であった。
【0121】
以下の図面を参照しながら、非限定的な実施例を述べる:
【実施例】
【0122】
実施例1
(a)1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオン

ナトリウムt−ブトキシド、180.5g、1.878molをTHF 378mlと混合し、撹拌する。THF 56ml中の4−ヒドロキシアセトフェノン、85.3g、0.626molと吉草酸エチル、81.5g、0.626molの混合物を約45℃に加熱し、その透明な溶液をナトリウムt−ブトキシド/THF混合物に添加する。混合物を還流温度(約68℃)に加熱し、6時間撹拌する。温度を約60℃に調整し、水294ml中の酢酸120gの溶液に添加することによって粘性混合物を反応停止する。THF及び他の揮発性物質を除去し、残留乳濁液をトルエン146mlで抽出する。水相の分離後、残留物を減圧下で濃縮し、生成物を酢酸130mlと水138mlの混合物から結晶化させる。生成物をろ過によって単離し、ろ過ケークを20%酢酸、次に水で洗浄する。湿潤生成物を減圧下で乾燥し、1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオン、93.1g、0.423molを得る。収率67.5%。
【0123】
(b)1−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルヘキサン−1,3−ジオン

4−ヒドロキシアセトフェノン、29.0g、0.213mol及び2−メチル酪酸エチル、27.7g、0.213molをTHF 80mlに溶解する。溶液を、THF 80ml中のナトリウムtert−ブトキシド、63.3g、0.659molのスラリーに添加する。生じた混合物を加熱還流し(70℃)、70時間撹拌する。暗溶液を37%HCl 55mlと水100mlの混合物に添加することによって反応停止する。揮発性物質を減圧下で除去し、残留物にトルエン50ml及び水40mlを添加する。水相を分離し、トルエン相を10%NaCl 50gで洗浄する。水相を分離し、トルエンを減圧下に75℃で除去して、赤色油43.5gが残る。酢酸/水からの結晶化を試みたが成功しなかった。純度(HPLC)90%。収率:0.9×43.5=39.2g、0.178mol、83.5%。
【0124】
(c)1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオン

吉草酸エチル74ml中の4−ヒドロキシアセトフェノン、13.6g、0.10molの溶液にナトリウムtert−ブトキシド、29.7g、0.31molを小分けして添加する。形成されたスラリーを82℃に加熱し、4時間撹拌した後、その混合物を、水47ml中の酢酸2mlの溶液に添加することによって反応停止する。生成物を含有する下部水相を分離し、酢酸16mlで処理してpH4に到達させる。上部油相を分離し、酢酸20ml及び水2.3gで希釈する。混合物を冷却し、20℃で結晶が分離し始める。5℃まで冷却を続ける。水19mlを25分間かけて添加し、続いて20分間撹拌して、その後生成物をろ過によって単離し、20%酢酸23.5g、次に水23.5gで洗浄する。気流中、室温で乾燥して、1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオン、14.6gを得た。純度(HPLC)<99.8%、収率65%。クエンチからの上部相をトルエン30mlで希釈し、少量の水相を分離する。有機相を濃縮し、次に蒸留して、理論上の回収率の48%の粗吉草酸エチルを得た。
【0125】
(d)1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオン
ナトリウムtert−ブトキシド(190g、1.98mol)にTHF 459mlを添加する。希薄なスラリーだけが残るまで混合物を撹拌する。混合物を吉草酸エチル(85.6g、0.657mol)中の4−ヒドロキシアセトフェノン(89.5g、0.657mol)の懸濁液に添加する。混合物を70〜73℃に加熱し、4−ヒドロキシアセトフェノンの変換が>90%になるまで(約15時間)この温度で撹拌する。混合物を約60℃に冷却し、水308gと酢酸126g(2.1mol)の混合物に添加する。内容物を加熱し、反応器内の温度が102℃に達するまでTHFと他の揮発性物質を大気圧で除去する。バッチを約75℃に冷却し、下部水相を分離して、廃棄する。残留吉草酸エチルを除去するために反応器の内容物を減圧下で加熱する。液体温度が≦50mbarの圧で≧110℃である場合は操作を中断する。残存する生成物油を酢酸142g、次に水61gで希釈し、混合物を25〜28℃に冷却して、濃厚なスラリーが形成されるまで撹拌する。スラリーを約−12℃に冷却し、水43mlを45分間かけて添加し、次に約−12℃で60分間撹拌する。生成物をろ過によって単離し、ろ過ケークを20%酢酸150g、次に水150gで洗浄する。減圧下に50℃で乾燥して、1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオン、104g、0.472molを得る。HPLC純度:99.9%。収率:72%。
【0126】
実施例2
2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン
O−4−ニトロフェニルヒドロキシルアミン(1.0g)を酢酸(10ml)に懸濁し、1−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン−1,3−ジオン(1.36g;上記実施例1(a)又は実施例1(c)に従って製造した)を添加した。混合物を70℃で3時間撹拌し、その後100℃でさらに22時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で蒸発させた。2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランの収率80%。
【0127】
実施例3−ドロネダロンの合成
ドロネダロンを、本明細書で述べるプロセスのいずれか、例えば実施例2で述べる中間体2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランへのプロセス又は実施例1で述べる中間体へのプロセス(例えば実施例1(a)又は実施例1(c))を組み込んで、先行技術において記述されている(及び本明細書で言及する)標準的な合成プロセスを使用して合成する。ドロネダロンは、ニトロ(−NO)基をメチルスルホニルアミノ(−NHS(O)CH)基に変換し(例えばアミノ(−NH)基を介して)、−OH(又は−OCH)基を任意の関連するオキシ−アルキルアミノアルキル(例えば−O−(CH−N(C)基に変換するための任意の標準的な経路を使用してこれらの中間体から作製できる。さらに、関連化合物の塩(塩酸塩など)も製造し得る。そのような段階は当業者に公知の標準的な段階であり、前記段階は、本明細書で開示する参考文献などの先行技術において記述されている技術に従って実施し得る。
【0128】
実施例4
方法A
エチルN−(4−ニトロフェノキシ)アセトイミデート

4−クロロニトロベンゼン、136.2g及びエチルN−ヒドロキシアセトイミデート、111.4gをDMF 216mlに溶解する。温度を30℃に調整し、固体NaOH 41.6gを、温度を30〜35℃に保持しながら8回に分けて添加する。1時間後、温度を40〜45℃に調整し、混合物を1.5時間撹拌する。冷却し、水520mlを、温度を約40℃に保持する速度で添加する。形成されたスラリーを17℃に冷却し、ろ過する。ろ過ケークをエタノール/水 90/10(V/V)175ml、次に水175mlで洗浄する。乾燥エチルN−(4−ニトロフェノキシ)アセトイミデート192gに対応する、湿潤生成物214.5gを単離する。収率98.5%。
【0129】
方法B
エチルN−(4−ニトロフェノキシ)アセトイミデート

トルエン976g中のエチルN−ヒドロキシアセトイミデート549gの溶液にDMF 1267g、Aliquat 336 39.9g及び4−クロロニトロベンゼン799gを添加する。温度を30℃に調整し、固体NaOH 223gを10〜15分ごとに25〜30gずつに分けて添加する。添加が完了したとき、ジャケット温度を40℃に設定し、反応が完了するまで、3〜4時間、混合物を撹拌する。ジャケット温度を50℃に調整し、トルエンの約80%を減圧下で除去する。温度を最大で45℃に保持しながら水3040gを添加する。形成されたスラリーを効率的に撹拌し、残留トルエンを減圧下で除去する。15℃に冷却した後、生成物をろ過し、EtOH/水 90/10(V/V)1080g、次に水1080gで洗浄する。乾燥エチルN−(4−ニトロフェノキシ)アセトイミデート1080gに対応する、湿潤生成物1188gを得る。収率95%。
【0130】
方法C
(a)O−(4−ニトロフェニル)ヒドロキシルアミン

湿潤エチルN−(4−ニトロフェノキシ)アセトイミデート、781g(乾燥重量)をアセトニトリル2100gに溶解し、温度を約25℃に調整する。37%塩酸515gを、温度を30℃以下に保持する速度で添加する。反応が完了するまで、約2時間、混合物を25〜30℃で撹拌する。次に12%NaOH(水溶液)2090gを25〜30℃で添加し、混合物を約30分間撹拌する。減圧を適用し、アセトニトリルの約85%を100mbar及びジャケット温度50℃(内部温度25〜30℃)で除去する。水2090g添加し、スラリーを60分間撹拌する。生成物をろ過し、水505gで洗浄して、その後減圧下に40℃で乾燥する。O−(4−ニトロフェニル)ヒドロキシルアミン、560gを得る。収率94%。
【0131】
(b)O−(4−ニトロフェニル)ヒドロキシルアミン
生成物181g、0.807mol(乾燥時)を含有する、水で湿らせたエチルN−(4−ニトロフェノキシ)アセトイミデート、240gを、温度を25〜32℃に保持しながら、小分けして50分間以上かけて37%塩酸397g(5当量)に添加した。60分後の分析(HPLC)は99.9%の変換を示した。スラリーを水37mlで希釈し、次に、温度を33℃以下に保持しながら33%NaOH 580gで中和した。その後スラリーを24℃に冷却し、ろ過して、ろ過ケークを水210mlで洗浄した。乾燥して、O−4−ニトロフェニルヒドロキシルアミン、124.5gを得た。アッセイ(NMR)99.8%、クロマトグラフィ純度(HPLC)99.4面積%。収率99.9%。
【0132】
方法D
1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘプタンジオン
表題化合物を実施例1(例えば実施例(1)(a)及び実施例1(c))で述べた手順に従って製造した。
【0133】
方法E
2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン

1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘプタンジオン(本発明のプロセスに従って製造した;実施例1(a)及び実施例1(c)参照)、697gを酢酸2532gに溶解する。O−(4−ニトロフェニル)ヒドロキシルアミン(方法C、反応(a)及び/又は(b)参照)、488gを約20℃で小分けして添加する。形成されたスラリーを酢酸739gで希釈し、混合物を115℃に加熱して、3時間撹拌する。暗溶液を冷却し、温度を70〜80℃に保持しながら水1635gを添加する。温度を60℃に調整し、種結晶を添加する。結晶化が始まったとき、スラリーを4℃に冷却し、ろ過して、67%酢酸水溶液870g、次に水580gで洗浄する。減圧下に70℃で乾燥して、2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン、736gを得る。収率69%。
【0134】
方法F
1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオン−3−[O−(4−ニトロフェニル)オキシム]

1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘプタンジオン(本発明のプロセスに従って製造した;実施例1(a)及び実施例1(c)参照)、1121gを酢酸4070gに溶解する。O−(4−ニトロフェニル)ヒドロキシルアミン(方法C、反応(a)及び/又は(b)参照)、784gを、温度を約20℃に保持しながら小分けして添加する。形成されたスラリーを3時間撹拌し、15℃に冷却して、ろ過し、酢酸1590gで洗浄する。乾燥1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオン−3−[O−(4−ニトロフェニル)オキシム]、1596gに対応する湿潤ケーク1944gを得る。収率88%。
【0135】
方法G
2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン

方法Fで得た湿潤1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−1,3−ジオン−3−[O−(4−ニトロフェニル)オキシム]、1944gを酢酸4900g中でスラリー化する。スラリーを115℃に加熱し、3時間撹拌する。形成された暗溶液を冷却し、温度を70〜80℃に保持しながら水2630gを添加する。温度を60℃に調整し、種結晶を添加する。結晶化が始まったとき、スラリーを4℃に冷却し、ろ過して、67%酢酸水溶液1400g、次に水930gで洗浄する。減圧下に70℃で乾燥して、2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン、1182gを得る。収率78%。
【0136】
方法H−ドロネダロンの合成
ドロネダロンは、本明細書で述べるプロセスのいずれか、例えば上記実施例で述べた中間体2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン及び1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘプタンジオンへのプロセスを組み込んだ、先行技術で記述されている(及び本明細書で言及される)標準的な合成プロセスを使用して合成される。ドロネダロンは、ニトロ(−NO)基をメチルスルホニルアミノ(−NHS(O)CH)基に変換し(例えばアミノ(−NH)基を介して)、−OH(又は−OCH)基を任意の関連するオキシアルキルアミノアルキル(例えば−O−(CH−N(C)基に変換するための任意の標準的な経路を使用してこれらの中間体から作製できる。さらに、関連化合物の塩(塩酸塩など)も製造し得る。そのような段階は当業者に公知の標準的な段階であり、前記段階は、本明細書で開示する参考文献などの先行技術において記述されている技術に従って実施し得る。
【0137】
実施例5
ドロネダロンは、例えばMultaq(登録商標)の商標名で市販されている製品を形成するための、標準的な手順を使用して医薬的に許容される製剤に製剤し得る。
【0138】
例えば、前記で定義したプロセスをプロセスステップとして含むことを特徴とする、ドロネダロン又はその塩(例えば塩酸塩)を含有する医薬製剤を製造するためのプロセスが提供される。当業者は、そのような医薬製剤が含有するもの/医薬製剤を構成するもの(例えば有効成分(すなわちドロネダロン又はその塩)と医薬的に許容される賦形剤、アジュバント、希釈剤及び/又は担体の混合物)を理解する。
【0139】
ドロネダロン(又はその塩、例えば塩酸塩)を含有する医薬製剤(前記製剤はMultaq(登録商標)であり得る)の製造のためのプロセスであって、ドロネダロン又は医薬的に許容されるその塩(前述したプロセスによって形成され得る)を1又はそれ以上の医薬的に許容される賦形剤、アジュバント、希釈剤及び/又は担体と接触させることを含むプロセスがさらに提供される。
【0140】
ドロネダロン(又はその塩、例えば塩酸塩)を関連する製剤のその他の成分と接触させることを含む、当技術分野で記述されている(例えば米国特許第5,985,915号(実施例3参照)、米国特許出願第2004/0044070号(実施例1〜5参照)、米国特許第7,323,439号、米国特許出願第2008/0139645号及び/又は中国特許第CN101152154号)ドロネダロン(又はその塩、例えば塩酸塩)を含有する医薬製剤の製造のためのプロセスがさらに提供される。例えば、ドロネダロン塩酸塩を、トウモロコシデンプン、滑石、無水コロイド状シリカ、ステアリン酸マグネシウム及びラクトース(米国特許第5,985,915号の実施例3参照);マンニトール、無水リン酸二水素ナトリウム及び、場合により水(米国特許第5,985,915号の実施例5参照);ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、リン酸一ナトリウム二水和物及びマンニトール(米国特許出願第2004/0044070号の実施例1参照);ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、無水リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び、場合により水(米国特許出願第2004/0044070号の実施例2及び3参照);β−シクロデキストリンのメチル化誘導体、マンニトール及び、場合により水の混合物(米国特許出願第2004/0044070号の実施例4参照)と接触させ得る。記述されている製剤は、経口錠剤形態又は注射用剤形であり得る(例えば米国特許出願第2004/0044070号は注射用剤形を記述し得る)。
【0141】
特に、ドロネダロン(又はその塩;本明細書で述べるプロセスに従って製造された)を、例えば米国特許第7,323,493号に記載されているように、場合により1又はそれ以上の医薬賦形剤と組み合わせて、ポロキサマー類(例えばポロキサマー407;Synperonic(登録商標)PE/F127)から選択される医薬的に許容される非イオン性親水性界面活性剤と接触させることを含む、医薬製剤の製造のためのプロセスがさらに提供され得る。例えば、ドロネダロン塩酸塩を、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ラクトース一水和物、修飾トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、Synperonic(登録商標)PE/F127及び、場合により無水コロイド状シリカ、ステアリン酸マグネシウム及び水の任意の1又はそれ以上(例えば米国特許第7,323,493号の錠剤A及び実施例1〜3参照);修飾トウモロコシデンプン、ラクトース一水和物、滑石、無水コロイド状シリカ及びステアリン酸マグネシウム(例えば米国特許第7,323,493号のゼラチンカプセル参照);微結晶セルロース、無水コロイド状シリカ、無水ラクトース、ポリビニルピロリドン、Synperonic(登録商標)PE/F127及び、場合によりmacrogol 6000及びステアリン酸マグネシウムの1又はそれ以上(米国特許第7,323,493号の実施例4〜6参照);微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、Synperonic(登録商標)PE/F127、無水コロイド状シリカ、ステアリン酸マグネシウム及びラクトース一水和物(米国特許第7,323,493号の実施例7及び8参照)と接触させ得る。当業者は、例えば成分の上記リストの中で、あらゆる単一成分が製剤中に存在する必要はない(従って、製剤を製造するためのプロセスは、ドロネダロンを上記成分の一部だけと接触させることを含んでもよい)ことを認識する。さらに、成分に言及する場合、当業者は、同じ機能を果たす別の等価物又は類似成分(例えばSynperonic(登録商標)PE/F127は別の適切な界面活性剤によって置き換えてもよく、メチルヒドロキシプロピルセルロース及びトウモロコシデンプンは、適切な崩壊剤又は生体接着促進剤等のような別の成分)によって置き換えてもよいことを認識する。
【0142】
本明細書において医薬製剤に言及する場合、それは、摂取のための適切な投与形態(例えば錠剤形態又は注射用剤形)の製剤を包含する。従って、ドロネダロン又はその塩を含有する医薬製剤の製造のためのプロセスに関して本明細書で言及する任意のプロセスは、適切な投与形態への適切な変換(及び/又は投与形態の適切な包装)をさらに含んでもよい。例えば、米国特許第7,323,493号は、ゼラチンカプセルであってもよい、適切な錠剤形態(実施例1〜8参照)へのプロセスを記述し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式III:

[式中、
Xは、水素又は場合により1若しくはそれ以上のハロ原子によって置換されたC1〜6アルキルを表し;
Yは、少なくとも1個の−OH基によって置換されたアリール又はヘテロアリールを表す]
の化合物、又はその誘導体の製造のためのプロセスであって、前記プロセスは、その必須の−OH置換基が保護されていないことを特徴とする、式VII:

[式中、Yは上記で定義したとおりである]
の化合物又はその誘導体と、式VIII:

[式中、Xは上記で定義したとおりであり;
は−C≡N又は−C(O)Lを表し;
は、ハロ又は−OC1〜6アルキルなどの適切な脱離基である]
の化合物又はその誘導体との、塩基の存在下での反応を含み、前記塩基が、アルコキシドのアルキル部分が分枝鎖C3〜6アルキル基であるアルカリ金属アルコキシド又はその等価塩基を含むプロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセス及びそれに続く溶媒系中での前記化合物の結晶化又は沈殿を含む、請求項1で定義した式IIIの化合物の製造のためのプロセス。
【請求項3】
請求項2で定義した結晶化又は沈殿を含む、式IIIの化合物(請求項1で定義した)の単離のためのプロセス。
【請求項4】
前記溶媒系が水と弱有機酸との混合物を含む、請求項2又は3に記載のプロセス。
【請求項5】
弱有機酸が酢酸である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる生成物。
【請求項7】
平均粒径が少なくとも250×150μMである、請求項1で定義した式IIIの化合物。
【請求項8】
平均粒径が少なくとも400×300μMである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式I:

[式中、R、R、R及びRは、独立して水素、ハロ、−NO、−CN、−C(O)x1、−ORx2、−SRx3、−S(O)Rx4、−S(O)x5−N(Rx6)Rx7、−N(Rx8)C(O)Rx9、−N(Rx10)S(O)x11又はRx12を表し;
Xは、水素又は場合により1若しくはそれ以上のハロ(例えばフルオロ)原子によって置換されたC1〜6アルキルを表し;
Yは、少なくとも1個(例えば1個)の−OH基によって置換されたアリール又はヘテロアリールを表し;
x1、Rx2、Rx3、Rx6、Rx7、Rx8、Rx9及びRx10は、独立して水素又は場合により1若しくはそれ以上のハロ(例えばフルオロ)原子によって置換されたC1〜6アルキルを表し;
x4、Rx5、Rx11及びRx12は、独立して、場合により1又はそれ以上のハロ(例えばフルオロ)原子によって置換されたC1〜6アルキルを表す]
の化合物の製造のためのプロセスであって、前記プロセスは、式II:

[式中、R、R、R及びRは上記で定義したとおりである]
の化合物又はその保護された誘導体若しくは塩と、請求項6〜8のいずれか一項に記載の、又は1〜5のいずれか一項に記載のプロセスによって製造される、式IIIの化合物との反応を含むプロセス。
【請求項10】
前記反応が「ワンポット」法として実施されることを特徴とする、請求項9で定義した式Iの化合物の製造のためのプロセス。
【請求項11】
請求項9で定義した式Iの化合物であるがRが−NOを表すことを特徴とする、式Iの化合物の製造のためのプロセスであって、前記プロセスは、請求項9で定義した式IIの化合物の反応であるがRが−NOを表す、式IIの化合物又はその保護された誘導体若しくは塩の反応を含むプロセス。
【請求項12】
前記プロセスがアシル化試薬の不在下で実施されることを特徴とする、請求項9で定義した式Iの化合物の製造のためのプロセス。
【請求項13】
プロセスステップとして請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセスを含むことを特徴とする、ドロネダロン又はその塩を製造するためのプロセス。
【請求項14】
プロセスステップとして請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセスを含むことを特徴とする、ドロネダロン又はその塩を含有する医薬製剤を製造するためのプロセス。
【請求項15】
請求項14に記載のドロネダロン又はその塩の製造のためのプロセスであって、(任意の順序で):
1)請求項9〜13のいずれか一項に記載の2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランの製造のためのプロセス;
2)ニトロ(−NO)基のメチルスルホニルアミノ(−NHS(O)CH)基への変換;
3)−OH基の−O−(CH−N(C基への変換;及び
4)必要な場合/要求される場合は、そのようにして形成されたドロネダロンの任意の遊離塩基の塩への変換
を含むプロセス。
【請求項16】
段階(1)が2−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランの製造を含み、その後に段階(3)、次に段階(2)、次に段階(4)が続く、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
ドロネダロン又はその塩を含有する医薬製剤の製造のためのプロセスであって、請求項13、14、15又は16に記載のドロネダロン又はその塩の製造のためのプロセスを含み、それに続いて、そのようにして形成されたドロネダロン(又はその塩)を医薬的に許容される1以上の賦形剤、アジュバント、希釈剤又は担体と混合することを含むプロセス。
【請求項18】
ドロネダロン又はその塩を含有する医薬製剤の製造のためのプロセスであって、請求項13、14又は16に記載のドロネダロン又はその塩の製造のためのプロセスを含み、それに続いて、ドロネダロン(又はその塩)をポロキサマー類から選択される医薬的に許容される非イオン性親水性界面活性剤及び、場合により1又はそれ以上の医薬賦形剤と混合することを含むプロセス。
【請求項19】
ドロネダロンの中間体又はその塩の製造のためのプロセスであって、請求項9〜13のいずれか一項に記載のプロセスステップ、それに続いて請求項15に記載の(1)、(2)及び(3)で開示される任意の1又はそれ以上のプロセスステップを含むプロセス。
【請求項20】
実施例を参照して実質的に本明細書に記載されたプロセス又は化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−504585(P2012−504585A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529616(P2011−529616)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002346
【国際公開番号】WO2010/038029
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510093303)
【氏名又は名称原語表記】CAMBREX KARLSKOGA AB
【住所又は居所原語表記】SE−691 85 Karlskoga, Sweden
【Fターム(参考)】