説明

ジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法

【課題】ジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造に伴って発生する濾液を効率的に処理する。
【解決手段】ジイソプロピルベンゼンを空気酸化反応に付し、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシド及びジイソプロピルベンゼンヒドロキシヒドロペルオキシドを含有する酸化反応液を得る酸化工程に続く、分離工程、分解工程、蒸留分離工程、還元工程及び後処理工程を有する方法において、還元工程で得られたジイソプロピルベンゼンジカルビノールを含む反応液からジイソプロピルベンゼンジカルビノールを、晶析、濾過及び乾燥を含む操作を用いて精製するに際し、濾過時に得られる濾液を分解工程及び/又は蒸留分離工程へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、ジイソプロピルベンゼンを原料とし、ジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールを同時に製造するジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法であって、ジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造に伴って発生する濾液を効率的に処理することができるという優れた効果を有するジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジイソプロピルベンゼンを原料とし、ジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールを同時に製造するジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法は公知である(特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、ジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造の濾過工程において発生する濾液を処理する必要がある。濾液の処理は、廃油として処分するか、濾液中の有効成分を回収した後、廃油処理を行うが、有効成分の回収には設備費用がかかるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平9−143112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、ジイソプロピルベンゼンを原料とし、ジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールを同時に製造するジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法であって、ジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造に伴って発生する濾液を効率的に処理することができるという優れた効果を有するジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、ジイソプロピルベンゼンを原料とし、ジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールを同時に製造するジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法であって、下記の工程を含むジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法に係るものである。
酸化工程:ジイソプロピルベンゼンを空気酸化反応に付し、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシド及びジイソプロピルベンゼンヒドロキシヒドロペルオキシドを含有する酸化反応液を得る工程
分離工程:酸化工程で得られた酸化反応液を水酸化ナトリウム水溶液による抽出操作及び有機溶媒による抽出操作に付すことにより、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシドとジイソプロピルベンゼンヒドロキシヒドロペルオキシドとを、各々を含む液に分離する工程
分解工程I:分離工程で得られたジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシドを含む液を、酸触媒の存在下、分解反応に付すことにより、ジヒドロキシベンゼンを含む液を得る工程
分解工程II:分離工程で得られたジイソプロピルベンゼンヒドロキシヒドロペルオキシドを含む液を、酸触媒の存在下、分解反応に付すことにより、アセトンとイソプロペニルフェノールを含む液を得る工程
蒸留分離工程:分解工程IIで得られたイソプロペニルフェノールとアセトンを含む有機溶媒液を蒸留操作に付すことにより、アセトンと有機溶媒、及びイソプロペニルフェノールを含む重質分とに分離する工程
還元工程:分離工程で得られたジイソプロピルベンゼンヒドロキシヒドロペルオキシドの一部を還元反応に付すことにより、ジイソプロピルベンゼンジカルビノールを含む液を得る工程
後処理工程:還元工程で得られたジイソプロピルベンゼンジカルビノールを含む反応液からジイソプロピルベンゼンジカルビノールを、晶析、濾過及び乾燥を含む操作を用いて精製する工程であって、濾過時に得られる濾液を分解工程II及び/又は蒸留分離工程へ供給する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ジイソプロピルベンゼンを原料とし、ジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールを同時に製造するジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法であって、ジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造に伴って発生する濾液を効率的に処理することができるという優れた効果を有するジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ジイソプロピルベンゼンを原料とし、ジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールを同時に製造するジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法である。具体例としては、ジイソプロピルベンゼンがメタジイソプロピルベンゼン及び/又はパラジイソプロピルベンゼンであり、ジヒドロキシベンゼンがレゾルシン及び/又はハイドロキノンであり、かつジイソプロピルベンゼンジカルビノールがメタジイソプロピルベンゼンジカルビノール及び/又はパラジイソプロピルベンゼンジカルビノールである場合をあげることができ、更に好ましい具体例としては、ジイソプロピルベンゼンがメタジイソプロピルベンゼンであり、ジヒドロキシベンゼンがレゾルシンであり、かつジイソプロピルベンゼンジカルビノールがメタジイソプロピルベンゼンジカルビノールである場合をあげることができる。
【0009】
本発明の酸化工程は、ジイソプロピルベンゼン(以下「DIPB」と記す。)を空気酸化反応に付し、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド(以下「MHPO」と記す。)及びジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシド(以下「DHPO」と記す。)及びジイソプロピルベンゼンヒドロキシヒドロペルオキシド(以下「CHPO」と記す。)を含有する酸化反応液を得る工程である。
【0010】
本工程を実施する装置及び条件としては、次のものをあげることができる。
【0011】
酸化工程は、DIPBを含有する酸化原料液を酸素又は空気で酸化する工程である。酸化原料液中には、主原料であるMHPO20〜60重量%及びDIPB10〜40重量%の他、DHPO5重量%以下が通常含有される。通常の反応条件としては、温度70〜110℃、圧力0〜1MPaG、滞留時間0〜50時間等をあげることができる。酸化工程に用いることができる装置としては、例えば流通式や回分式反応槽、反応塔をあげることができる。酸化工程で得られる酸化反応液の通常組成はとしては、DHPO3〜30重量%、MHPO20〜60重量%及びDIPB35重量%以下をあげることができる。
【0012】
本発明の分離工程は、酸化工程で得られた酸化反応液を水酸化ナトリウム水溶液による抽出操作及び有機溶媒による抽出操作に付すことにより、DHPOとCHPOとを、各々を含む液に分離する工程である。
【0013】
酸化工程で得られた酸化反応液は、先ず水酸化ナトリウム水溶液による抽出操作に付される。酸化反応液は未反応のDIPB、MHPO、DHPO、CHPO及びその他の副生物を含有する。これらのうち、DHPO及びCHPOは水酸化ナトリウム水溶液中に抽出される。この際、油水の分液性及び抽出効率を高めるために、酸化反応液に、水酸化ナトリウム水溶液及び/又はDIPBを、別途適当量添加してもよい。
【0014】
抽出温度は通常0〜100℃の範囲である。水酸化ナトリウム水溶液に抽出されなかったDIPB及びMHPOを含む有機層は、酸化工程へリサイクルされ得る。DHPO及びCHPOを抽出する際の水酸化ナトリウム水溶液の濃度としては、2〜30重量%が好ましく、4〜15重量%が更に好ましい。該濃度が低過ぎると抽出効率が悪くなる場合があり、一方該濃度が高過ぎるとアルカリ使用量の増加及びDHPOやCHPOなどの有効成分の劣化を招く場合がある。
【0015】
水酸化ナトリウム水溶液による抽出操作により得られたDHPO及びCHPOを含む水酸化ナトリウム水溶液は、次に有機溶媒による抽出操作に付される。このことにより、DHPOとCHPOとを、各々分離することができる。
【0016】
分離工程で用いる有機溶媒としては、炭素数4〜10のケトン類、炭素数4〜10のエーテル類、炭素数4〜8のアルコール類が好ましく、抽出効率及び溶媒回収の観点からメチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と記す。)が最も好ましい。溶媒は、一種を単独で用いてもよく、又は、二種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
有機溶媒による抽出は、0〜50℃程度の低温における抽出と、該抽出の温度より5〜70℃高い温度にて行われる高温における抽出を組み合わせて行うことが好ましい。すなわち、低温における抽出によりCHPOを選択的に有機溶媒層に移行させ、その後高温における抽出によりDHPOを有機溶媒層に移行させるのである。かくして、CHPOとDHPOが各々別々に分離して回収される。
【0018】
なお、低温における抽出により得られるCHPOを含有する溶液中にも少量のDHPOが混在する。また、高温における抽出により得られるDHPOを含有する溶液中にも少量のCHPOが混在する。低温における抽出により得られる溶液中のCHPO濃度は2〜20重量%とし、DHPO濃度は1重量%以下とすることが好ましい。また、高温における抽出により得られる溶液中のDHPO濃度は5〜30重量%とし、CHPO濃度は1重量%以下とすることが好ましい。
【0019】
本発明の分解工程Iは、分離工程で得られたDHPOを含む液を、酸触媒の存在下、分解反応に付すことにより、ジヒドロキシベンゼンを含む液を得る工程である。
【0020】
分解工程Iで用いる酸触媒としては、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化第二鉄、塩化第二スズなどのルイス酸及び硫酸、リン酸、塩酸、過塩素酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、強酸性イオン交換樹脂などのプロトン酸が使用できる。収率や取扱い易さの観点から濃硫酸又は無水硫酸又は発煙硫酸が好ましく、無水硫酸が更に好ましい。
【0021】
分解工程Iに供される液中には、通常1〜10重量%の水分が含まれるので、このままでは分解反応の酸触媒に悪影響を及ぼす。そのため、通常は分解工程Iの前に溶媒の一部を蒸留で留去する濃縮が行なわれる。この濃縮操作により、水分も除かれる。水分濃度は1重量%以下まで脱水するのが好ましい。このようにして得た濃縮液は分解工程Iに供される。
【0022】
分解工程Iは通常、常圧ないし減圧下、反応温度30〜150℃、反応時間1〜200分で行なわれる。得られた酸分解反応液にはレゾルシン(以下「RES」と記す。)又はハイドロキノン(以下「HYQ」と記す。)、アセトン、有機溶媒の他、酸触媒や重質物を含んでおり、ここからアルカリ中和・分液による酸触媒除去、蒸留によるアセトンや有機溶媒の除去、更に蒸留、抽出、晶析などの通常の操作によって、RES又はHYQとアセトンを単離することができる。
【0023】
本発明の分解工程IIは、分離工程で得られたCHPOを含む液を、酸触媒の存在下、分解反応に付すことにより、アセトンとイソプロペニルフェノール(以下「OST」と記す。)を含む液を得る工程である。
【0024】
分解工程IIで用いる酸触媒としては、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化第二鉄、塩化第二スズなどのルイス酸及び硫酸、リン酸、塩酸、過塩素酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、強酸性イオン交換樹脂などのプロトン酸が使用できる。収率や取扱い易さの観点から濃硫酸又は無水硫酸又は発煙硫酸が好ましい。
【0025】
分解工程IIに供される液中には、通常1〜10重量%の水分が含まれるので、このままでは分解反応の酸触媒に悪影響を及ぼす。そのため、通常は分解工程IIの前に溶媒の一部を蒸留で留去する濃縮が行なわれる。この濃縮操作により、水分も除かれる。水分濃度は1重量%以下まで脱水するのが好ましい。このようにして得た濃縮液は分解工程IIに供される。
【0026】
分解工程IIは通常、常圧ないし減圧下、反応温度30〜150℃、反応時間1〜200分で行なわれる。得られた酸分解反応液にはOST、アセトン、有機溶媒の他、酸触媒や重質物を含んでおり、ここからアルカリ中和・分液による酸触媒除去が行われる。
【0027】
本発明の蒸留分離工程は、分解工程IIで得られたOSTとアセトンを含む有機溶媒液を蒸留操作に付すことにより、アセトンと有機溶媒の低沸成分、及びOSTを含む重質分とに分離する工程である。
【0028】
本工程を実施する装置及び条件としては、次のものをあげることができる。
蒸留分離条件としては、温度100〜200℃、圧力1〜100KPaA、装置としては、蒸留塔をあげることができる。
【0029】
また、分離されたOSTを含む重質成分は、例えばボイラー燃料の一部に利用されることもある。
【0030】
本発明の還元工程は、分離工程で得られたCHPOを含む液の一部を還元反応に付すことにより、ジイソプロピルベンゼンジカルビノール(以下「DCA」と記す。)を含む液を得る工程である。
【0031】
還元工程に供される液中には、CHPOのほか、DHPOやその他の不純物が含まれているのが、該液は、そのままかあるいは有機溶媒の一部を蒸留で留去する濃縮操作を行った後に還元反応に供せられる。液中のCHPOの濃度は、2〜30重量%が好ましい。
【0032】
還元反応としては、亜硫酸ソーダなどの還元剤を用いる量論還元又は水添触媒の存在下に水素による還元が適用できる。なお、水添触媒の存在下に水素による還元の方が操作性がよく安価であり、工業的に好ましい。水添触媒としては周期律表第8属の貴金属を担体に担持した通常の水素化触媒が使用できるが、とりわけパラジウム担持触媒が活性、選択性から好ましく使用できる。担体としては、たとえば、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシアなどがあげられる。担体上のPdの担持濃度は、パラジウム金属として、通常0.01〜10重量%である。還元に用いる水素は純粋である必要はなく、窒素、炭酸ガス、メタンなどの不活性ガスを含んでいてもよい。反応圧力は通常1〜10MPaである。反応温度は通常20〜150℃であり、反応時間は通常1〜300分である。反応方法としては、液相での固定床流通反応や撹拌槽スラリー反応などで実施できるが、活性、選択性及び触媒寿命などの点から粉体触媒を用いる撹拌槽スラリー反応が好適である。撹拌槽スラリー反応の場合、触媒濃度は通常0.05〜10重量%の範囲である。
【0033】
本発明の後処理工程は、還元工程で得られたDCAを含む反応液からDCAを、晶析、濾過及び乾燥を含む操作を用いて精製する工程であって、濾過時に得られる濾液を分解工程II及び/又は蒸留分離工程へ供給する工程である。
【0034】
還元工程で得られたDCAを含む液を、晶析、濾過、乾燥の操作を用いてDCAを精製する。また、晶析操作の前に蒸留で有機溶媒の一部を留去する濃縮操作を行ってもよい。
【0035】
晶析操作は、例えば攪拌下の晶析槽で25℃まで冷却しながら、DCAを選択的に析出させることができる。
【0036】
濾過操作は、DCA結晶と有機溶媒とを分離する操作であり、減圧、加圧、遠心等があるが、操作性の観点から遠心濾過が好ましい。濾過時に得られる濾液は、DCAと有機溶媒を含んでいる液で、有機溶媒を回収し再利用する為、蒸留分離工程へ供給することができる。
【0037】
また、濾液の蒸留分離工程へ供給する量が多すぎると、蒸留分離工程で得られるボイラー燃料中にDCAが析出し、送液出来ないという問題が生じるため、分解工程IIに濾液を送ることが好ましい。分解工程IIでは、濾液中のDCA等を酸触媒の存在下、分解反応に付すことにより、ジイソプロペニルベンゼン(以下「DST」と記す。)等を得ることができる。DST等を含む液は、蒸留分離工程へ供給することで有機溶媒の回収とボイラー燃料中の析出防止ができる。
【0038】
乾燥操作は、濾過操作で得られたDCA結晶に付着している有機溶媒と水分を留出し、製品のDCAを得る。乾燥条件は、圧力5〜100KPaA、温度20〜100℃で実施することができる。
【0039】
本発明の最大の特徴は、後処理工程において、濾過時に得られる濾液を分解工程II及び/又は蒸留分離工程へ供給し、新たに濾液回収設備を設けず、有機溶媒を回収利用する点にある。また、濾液を蒸留分離工程に付し、重質成分のDCAはボイラー燃焼処理されるが、濾液量が多すぎるとボイラー燃料中にDCAが析出し、送液が出来なくなる。そこで、分解工程IIに濾液を送ると、本発明による濾液中のDCAはDST等となり、ボイラー燃料中の析出防止が出来、且つ有機溶媒を効率的に回収利用できるのである。
【実施例】
【0040】
次に本発明を実施例により説明する。
実施例1
酸化反応器へリサイクル成分を含む酸化原料油(DIPB24重量%、MHPO40重量%、DHPO1重量%を含む)を毎時60容量部を連続的に供給し、空気を毎時7000標準容量部通じ、90℃、0.3MPa、水分3〜4重量%、pH9〜11に調整し、滞留時間10時間にて酸化反応させた。この酸化反応液にDIPB溶液を毎時5容量部連続供給し、分離水を除去し、定常状態において、DIPB23.5重量%、MHPO39重量%、DHPO10重量%の他、少量のCHPOなどを含む反応液が得られた。
DIPBの酸化生成物を7重量%水酸化ナトリウム水溶液で抽出した液と後述のDHPOの水溶液(V)との混合液(DHPO13.5重量%、CHPO1重量%を含む)100部と後述のMIBK溶液(X)の一部、50部を用いて、温度35℃、向流抽出(抽出I)した。こうして得た抽出後の水溶液(W)はDHPO12重量%、CHPO0.1重量%を含んでいた。また、抽出I後のMIBK液を7重量%水酸化ナトリウム水溶液30部を用いて温度25℃向流で再抽出(抽出II)することにより、MIBK液中のDHPOの99%が水溶液(V)に回収された。また、抽出I後のDHPOを含む水溶液(W)を65℃で過剰のMIBKを用いて抽出(抽出III)することにより、DHPO12重量%、CHPO0.1重量%、水分3重量%を含むMIBK溶液(X)を得た。一方、上記抽出I後のMIBK液からDHPOを回収した残りとして、CHPO6重量%、DHPO0.2重量%を含むMIBK溶液(Y)を得た。
MIBK溶液(X)を減圧濃縮し、DHPO濃度20重量%、水分濃度0.2重量%とした濃縮液を酸分解反応に供した。反応は触媒としての無水硫酸0.1重量%存在下、常圧、反応温度70℃、反応時間10分で行なった。DHPOからのRESの収率は94%であった。反応液中の触媒を中和除去後、精留、抽出により、アセトン(純度99%以上)及びRES(純度99%以上)を単離し、また溶媒MIBKを回収することができた。
【0041】
撹拌機を備えた水添反応機に原料のMIBK溶液(Y)の一部とパラジウム・アルミナ触媒(パラジウム金属として1重量%担持したもの)を原料に対し0.5重量%存在させ、水素圧力0.5MPa、反応温度98℃、反応時間60分にて液層水素還元反応を行なった。CHPOの転化率は実質上100%であり、反応液中のDCA濃度は6重量%であった。反応液を濃縮し、DCA濃度は20重量%にした後、80℃から25℃まで0.25℃/分の降温速度で晶析し、その後、濾過、MIBK洗浄及び乾燥操作を行うことにより、純度99%以上のDCAを単離収率85%で取得した。
MIBK溶液(Y)の残液を減圧濃縮し、CHPO濃度35重量%、水分濃度0.1重量%とした濃縮液を酸分解反応に供した。反応は触媒としての濃硫酸0.1重量%存在下、常圧、反応温度90℃、反応時間40分で行ない、その後中和処理してOSTを含む液(A)得た。OSTを含む液(A)は、精留分離により、アセトン(純度99%以上)及びボイラー用燃料を単離し、また溶媒MIBKを回収することができた。
濾過操作で発生する濾液(MIBK75重量%、DCA4重量%を含む)は、(A)液に対し20重量%で混合し、精留分離により、DCAは、ボイラー用燃料として単離し、また溶媒MIBKを回収することができた。
【0042】
実施例2
実施例1と同様操作でRESとDCAを取得し、濾液(z)は分解工程IIに回収した。
具体的には、MIBK溶液(Y)の残液を減圧濃縮し、CHPO濃度35重量%、水分濃度0.1重量%とした濃縮液(V)を得て、(V)液に対し53重量%で濾液(z)と共に酸分解反応に供した。反応は触媒としての濃硫酸0.1重量%存在下、常圧、反応温度90℃、反応時間40分で行ない、その後中和処理してOST、DSTを含む液(A)得た。OST、DSTを含む液(A)は、精留分離により、アセトン(純度99%以上)及びボイラー用燃料を単離し、ボイラー燃料中の析出防止が出来た。また溶媒MIBKを回収することができた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】請求項1に対応するフローの概略図である。
【図2】実施例1に対応するフローの概略図である。
【図3】実施例2に対応するフローの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジイソプロピルベンゼンを原料とし、ジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールを同時に製造するジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法であって、下記の工程を含むジヒドロキシベンゼン及びジイソプロピルベンゼンジカルビノールの製造方法。
酸化工程:ジイソプロピルベンゼンを空気酸化反応に付し、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシド及びジイソプロピルベンゼンヒドロキシヒドロペルオキシドを含有する酸化反応液を得る工程
分離工程:酸化工程で得られた酸化反応液を水酸化ナトリウム水溶液による抽出操作及び有機溶媒による抽出操作に付すことにより、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシドとジイソプロピルベンゼンヒドロキシヒドロペルオキシドとを、各々を含む液に分離する工程
分解工程I:分離工程で得られたジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシドを含む液を、酸触媒の存在下、分解反応に付すことにより、ジヒドロキシベンゼンを含む液を得る工程
分解工程II:分離工程で得られたジイソプロピルベンゼンヒドロキシヒドロペルオキシドを含む液を、酸触媒の存在下、分解反応に付すことにより、アセトンとイソプロペニルフェノールを含む液を得る工程
蒸留分離工程:分解工程IIで得られたイソプロペニルフェノールとアセトンを含む有機溶媒液を蒸留操作に付すことにより、アセトンと有機溶媒、及びイソプロペニルフェノールを含む重質分とに分離する工程
還元工程:分離工程で得られたジイソプロピルベンゼンヒドロキシヒドロペルオキシドの一部を還元反応に付すことにより、ジイソプロピルベンゼンジカルビノールを含む液を得る工程
後処理工程:還元工程で得られたジイソプロピルベンゼンジカルビノールを含む反応液からジイソプロピルベンゼンジカルビノールを、晶析、濾過及び乾燥を含む操作を用いて精製する工程であって、濾過時に得られる濾液を分解工程II及び/又は蒸留分離工程へ供給する工程
【請求項2】
ジイソプロピルベンゼンがメタジイソプロピルベンゼン及び/又はパラジイソプロピルベンゼンであり、ジヒドロキシベンゼンがレゾルシン及び/又はハイドロキノンであり、かつジイソプロピルベンゼンジカルビノールがメタジイソプロピルベンゼンジカルビノール及び/又はパラジイソプロピルベンゼンジカルビノールである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ジイソプロピルベンゼンがメタジイソプロピルベンゼンであり、ジヒドロキシベンゼンがレゾルシンであり、かつジイソプロピルベンゼンジカルビノールがメタジイソプロピルベンゼンジカルビノールである請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
分離工程の有機溶媒による抽出操作で用いる有機溶媒がメチルイソブチルケトンである請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
分解工程I及び分解工程IIで用いる酸触媒が濃硫酸又は無水硫酸又は発煙硫酸である請求項1記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−246512(P2007−246512A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28980(P2007−28980)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】