説明

ジビニルアレーンジオキシド樹脂

(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)水との反応生成物を含む加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物、前記加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物の製造方法、及びそれから製造される硬化性加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物。上記加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物から製造された硬化生成物は、周知のエポキシ樹脂から製造された周知の硬化生成物と比べて、改善された特性、例えばより低い粘度及び高い耐熱性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂、及びかかる加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂から製造されたポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂を、例えば米国特許第4,404,335号明細書に記載されている方法により加水分解することは知られている。従来のエポキシ樹脂を加水分解して樹脂末端のエポキシド基をグリコールに転化させることができる。得られたグリコール樹脂は、例えばポリウレタン及びポリエステルなどのポリマーの製造における有用な中間体である。エポキシ樹脂の部分加水分解によって、樹脂の末端エポキシド基の一部はグリコールに転化し、これにより、例えばアミンなどの硬化剤との樹脂の残留エポキシド基の反応性が高まる。しかしながら、上記の加水分解によって、得られたエポキシ樹脂の粘度が増加する。
【0003】
最も一般的な部分的に加水分解したエポキシ樹脂はビスフェノールAジグリシジルエーテルである。低い粘度を有する脂肪族エポキシ樹脂又は単官能性エポキシ化合物の使用は、それらから得られる熱硬化物の耐熱性の低下をもたらす。このように、脂肪族エポキシ樹脂に基づくエポキシ樹脂はより低い粘度を有することができる一方で、従来の加水分解したエポキシ樹脂に基づく得られたポリマーは、重合後に高い耐熱性を維持しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,404,335号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、ジビニルアレーンジオキシドから製造された新規な加水分解エポキシ樹脂組成物であって、加水分解エポキシ樹脂が、従来の加水分解した芳香族又は脂肪族グリシジルエーテルに基づくものよりも低い粘度(例えば約5,000mPa・s未満)を有し、かつ、硬化剤及び/又は触媒により反応してエポキシ樹脂硬化物を形成し、得られた熱硬化物が加水分解エポキシ樹脂組成物の架橋によって高い耐熱性(例えば約50℃を超えるT)を示す組成物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るジビニルアレーンジオキシドから誘導された加水分解エポキシ樹脂組成物を製造することによって、先行技術の課題に取り組むことができる。
【0007】
本発明の一実施態様は、(a)少なくとも1種のジビニルアレーンジオキシドと、(b)水と、必要に応じて(c)触媒との反応生成物を含む加水分解エポキシ樹脂組成物に関する。本発明のこの新規な組成物は、低い粘度(例えば約5,000mPa・s未満)を有する一方で、当該樹脂を重合した後に高い耐熱性(例えば約50℃を超えるT)を維持する。他の実施態様において、本発明の組成物は、例えば、25℃で、約5mPa・s〜約5,000mPa・sの粘度を有することができる。
【0008】
本発明の別の実施態様は、(i)上記の加水分解エポキシ樹脂及び(b)少なくとも1種の硬化剤を含む重合性の加水分解エポキシ樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明のさらに別の実施態様は、上記の加水分解エポキシ樹脂の製造方法及び上記の重合性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0010】
本発明の別の実施態様は、同様のTで著しく低い粘度を有するか又は同様の粘度でより高いTを有する上記の加水分解エポキシ樹脂組成物から誘導された熱硬化物に関する。
【0011】
さらに別の実施態様において、得られた硬化性熱硬化性配合物を、様々な用途、例えばコーティング、接着剤、複合材料、電子機器、発泡体などで使用できる。ジビニルアレーンジオキシドの加水分解によって、都合良いことに、グリコールモノマーを含む新規な組成物が提供される。ジビニルアレーンジオキシドの完全な加水分解は、残留エポキシド基が実質的にないグリコールモノマーをもたらす。ジビニルアレーンジオキシドの部分加水分解は、グリコール変性ジビニルアレーンジオキシドモノマーをもたらす。従って、本発明の複合材料は、コーティング、接着剤、複合材料、電子機器、フォームなどの形態のポリウレタン、ポリエステル及びエポキシ熱硬化物の製造に有用である。
【0012】
本発明の加水分解及び部分加水分解ジビニルアレーンジオキシドモノマーは先行技術の加水分解エポキシ樹脂よりも低い粘度を有するとともに重合後に高い耐熱性を維持する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
その最も広い範囲において、本発明は、(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)水との反応生成物を含む加水分解したエポキシ樹脂を含み、加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂を提供する。得られた加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂は、硬化性樹脂組成物又は配合物を形成するために使用できる。得られた硬化性樹脂組成物又は配合物は、当該技術分野でよく知られている1又は2種以上の任意添加剤を含んでもよい。
【0014】
本発明の新規な加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂は、ジビニルアレーンジオキシド、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)と水との反応生成物を含むことができる。
【0015】
ジビニルアレーンジオキシドと水との反応生成物を含む加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物は、都合良いことに、より高い耐熱性又は良好な耐熱性とより低い粘度とを有する新規な樹脂を提供する。これらの新規な樹脂を硬化させることによって、それらの高い耐熱性を維持する熱硬化物がもたらされる。本発明の加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂は、複合材料(高い耐熱性が望まれる1つの用途)として使用される熱硬化物の製造に適する。
【0016】
本発明において、ジビニルアレーンジオキシド、例えばDVBDOは、ジビニルアレーンと過酸化水素とを反応させて本発明のエポキシ樹脂組成物において有用なジビニルアレーンジオキシドをもたらすことにより製造できる。かかる製造されたジビニルアレーンジオキシドを使用して本発明の加水分解したジビニルアレーンジオキシドを製造することができる。
【0017】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド、特にジビニルベンゼン、例えばDVBDOから誘導されたものは、比較的低い液体粘度を有するが、従来のエポキシ樹脂よりも高い耐熱性及び剛性をその誘導された熱硬化物に付与するジエポキシド類である。ジビニルアレーンジオキシド中のエポキシド基は先行技術の加水分解したエポキシ樹脂を製造するのに使用された従来のグリシジルエーテルの場合と比べて反応性がかなり低い。
【0018】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドは、例えば、任意の環位置に2つのビニル基を有する任意の置換又は非置換アレーン核を含んでよい。ジビニルアレーンジオキシドのアレーン部分は、ベンゼン、置換ベンゼン、(置換)環付加(ring-annulated)ベンゼン又は同族的に結合した(置換)ベンゼン、又はそれらの混合物から成ることができる。ジビニルアレーンジオキシドのジビニルベンゼン部分は、オルト、メタ又はパラ異性体又はそれらの任意の混合物であることができる。さらなる置換基は、H耐性基、例えば飽和アルキル、アリール、ハロゲン、ニトロ、イソシアネート、又はRO−(Rは飽和アルキル又はアリールであることができる)などから成ることができる。環付加ベンゼンは、ナフタレン、テトラヒドロナフタレンなどから成ることができる。同族的に結合した(置換)ベンゼンは、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどから成ることができる。
【0019】
本発明の組成物を製造するために使用されるジビニルアレーンジオキシドは、下記一般化学構造I〜IVにより一般的に例示することができる:
【0020】
【化1】

【0021】
本発明のジビニルアレーンジオキシドコモノマーについての上記構造I〜IVにおいて、各R、R、R及びRは、個別に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール若しくはアラルキル基、又はH耐性基、例えばハロゲン、ニトロ、イソシアネート若しくはRO基(式中、Rはアルキル、アリール又はアラルキルであることができる)などであることができ、xは0〜4の整数であることができ、yは2以上の整数であることができ、x+yは6以下の整数であることができ、zは0〜6の整数であることができ、z+yは8以下の整数であることができ、Arはアレーンフラグメント、例えば1,3−フェニレン基などである。
【0022】
一実施態様において、本発明において使用されるジビニルアレーンジオキシドは、例えば、引用により本明細書に援用する2008年12月30日にMarks他により出願された米国特許出願番号第61/141,457号明細書に記載されている方法によって製造することができる。本発明において有用であるジビニルアレーンジオキシド組成物は、例えば、引用により本明細書に援用する米国特許第2,924,580号明細書にも開示されている。
【0023】
別の実施態様において、本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドは、例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、ジビニルナフタレンジオキシド、ジビニルビフェニルジオキシド、ジビニルジフェニルエーテルジオキシド、又はこれらの混合物を含んでよい。
【0024】
本発明の好ましい一実施態様において、エポキシ樹脂配合物中に使用されるジビニルアレーンジオキシドは例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)であることができる。最も好ましくは、本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド成分としては、例えば、下記の構造Vの化学式により例示されるDVBDOが挙げられる:
【0025】
【化2】

【0026】
上記DVBDO化合物の化学式はC1010であり、DVBDOの分子量は約162.2であり、DVBDOの元素分析は、およそ、C,74.06;H,6.21;及びO,19.73であり、エポキシド当量は約81g/molである。
【0027】
ジビニルアレーンジオキシド、特に、例えばDVBDOなどのジビニルベンゼンから誘導されたものは、比較的低い液体粘度を有するが、従来のエポキシ樹脂よりも高い剛性及び架橋密度を有するジエポキシド類の部類である。
【0028】
下記構造VIは、本発明において有用なDVBDOの好ましい化学構造の実施態様を例示する:
【0029】
【化3】

【0030】
下記構造VIIは、本発明において有用なDVBDOの好ましい化学構造の別の実施態様を例示する:
【0031】
【化4】

【0032】
DVBDOが当該技術分野で知られている方法により製造される場合、オルト、メタ及びパラの3つの可能な異性体のうちの1つを得ることが可能である。そのため、本発明は、上記構造のうちのいずれか1つにより例示されるDVBDOを個別に含むか又は上記構造のDVBDOを混合物として含む。上記構造VI及びVIIは、それぞれ、DVBDOのメタ(1,3−DVBDO)異性体及びDVBDOのパラ(1,4−DVBDO)異性体を示す。オルト異性体は少なく、通常、DVBDOは、たいてい、メタ(構造VI)異性体とパラ(構造VII)異性体を一般的に約9:1〜約1:9の範囲内の比で生じる。本発明は、好ましくは、一実施態様として、約6:1〜約1:6の範囲内の比で構造VIと構造VIIを含み、別の実施態様において、構造VIと構造VIIの比は約4:1〜約1:4又は約2:1〜約1:2であることができる。
【0033】
本発明の別の実施態様において、ジビニルアレーンジオキシドは、置換アレーンを含んでよい(例えば約20質量%未満)。置換アレーンの量及び構造は、ジビニルアレーンジオキシドへのジビニルアレーン前駆体の製造に使用される方法に依存する。例えば、ジエチルベンゼン(DEB)の脱水素化により製造されたジビニルベンゼン(DVB)は、エチルビニルベンゼン(EVB)及びDEBを含むことがある。過酸化水素との反応によって、EVBは、エチルビニルベンゼンモノオキシドを生成し、一方、DEBは変化せずに残る。これらの化合物の存在は、ジビニルアレーンジオキシドのエポキシド当量を、純粋な化合物のエポキシド当量を超える値に増加させることができる。
【0034】
一実施態様において、本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド、例えばDVBDOは、低粘度液体エポキシ樹脂(LER)組成物を構成する。本発明のエポキシ樹脂組成物の製造方法において使用されるジビニルアレーンジオキシドの粘度は、一般的に、25℃で、約5mPa・s〜約100mPa・s、好ましくは約10mPa・s〜約50mPa・s、より好ましくは約10mPa・s〜約25mPa・sである。
【0035】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドの有利な特性のうちの1つは、それらの熱安定性であり、その熱安定性によって、オリゴマー化又はホモ重合なしに中温(例えば約100℃〜約200℃)で数時間(例えば少なくとも2時間)以内の時間、配合物又は加工におけるそれらの使用が可能となる。配合又は加工中のオリゴマー化又はホモ重合は、粘度の実質的な増加又はゲル化(架橋)により分かる。本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドは、中温で配合又は加工中にジビニルアレーンジオキシドが粘度の実質的な増加又はゲル化を経験しないほどの十分な熱安定性を有する。
【0036】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドの別の有利な特性は、例えばその剛性である。ジビニルアレーンジオキシドの剛性は、Prediction of Polymer Properties, Dekker, New York, 1993に記載されているBiceranoの方法を使用して、側鎖を除くジオキシドの回転自由度の計算値に求められる。本発明において使用されるジビニルアレーンジオキシドの剛性は、一般的に、約6〜約10、好ましくは約6〜約9、より好ましくは約6〜約8の回転自由度に及ぶことができる。
【0037】
本発明の加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂を製造するために使用されるジビニルアレーンジオキシドの濃度は、一般的に、約99質量%(wt%)〜約1wt%、好ましくは約99wt%〜約50wt%、より好ましくは約99wt%〜約80wt%である。上記の加水分解した樹脂を製造するために使用されるジビニルアレーンジオキシドの質量%は、所望の加水分解度に応じて変えることができる。化学量論的量未満の樹脂が使用される場合、反応混合物中に存在する過剰の水を、樹脂の使用に先立って樹脂から分離することができる。
【0038】
本発明において有用な水(成分(b))に関して欠くことのできない条件はなく、いかなる供給源からの水を得ることができる。例えば、本発明の実施において有用な水は脱イオン水、水道水、又は蒸留水であることができる。
【0039】
本発明の加水分解したエポキシ樹脂を製造するために使用される水の量は、所望の加水分解度に依存する。一般的に、使用される水の量は約1パーセント(%)〜約90%、好ましくは約1%〜約50%、より好ましくは約1%〜約20%に及ぶことができる。上記の加水分解した樹脂を製造するために使用される水の質量%は所望の加水分解度二応じて変えることができる。化学量論的量を超える水が使用された場合には、樹脂の使用に先立って、過剰の水を樹脂から分離することができる。
【0040】
本発明の加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂を製造する際に、ジビニルアレーンジオキシド化合物の加水分解を促進するために少なくとも1種の加水分解触媒を必要に応じて使用してもよい。本発明において有用な触媒としては、当該技術分野で知られている加水分解触媒、例えば金属塩及び錯体、アンモニウム塩、無機酸、有機酸、イオン交換樹脂、担持された金属リン酸塩及びゼオライト、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
好ましい一実施態様において、本発明の実施において使用される適切な触媒としては、例えば、以下のもののうちの1又は2種以上が挙げられる:リン酸ランタン、Csゼオライトベータ、イオン交換樹脂、塩化ビスマス、亜硫酸水素テトラブチルアンモニウム、錫(IV)ポルフィリン、過塩素酸鉄(III)、トリフルオロ酢酸鉄(III)、塩化鉄(III)、セシウムトリフラート、リン酸、シュウ酸、及び関連化合物。好ましい触媒としては、リン酸化合物及び不均一リン酸金属塩触媒が挙げられる。本発明において有用な他の触媒としては、引用により本明細書に援用する米国特許第4,404,335号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0042】
反応触媒は、一般的に、組成物の総質量に基づいて約0〜約15質量%、好ましくは0.01〜約10質量%、より好ましくは約0.01〜約8質量%、最も好ましくは約0.01〜約4質量%の量で使用される。
【0043】
また、ジビニルアレーンジオキシド化合物の加水分解を促進するために、本発明の加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂を製造する際に任意の溶剤を使用してもよい。例えば、ケトン類、例えばアセトンなど、アミド類、例えばジメチルホルムアミドなど、エーテル類、例えばテトラヒドロフラン及びジオキサンなど、及びアセトニトリル、並びにそれらの混合物などの、当該技術分野でよく知られている1又は2種以上の有機溶剤を使用できる。
【0044】
本発明において使用される溶剤の濃度は、一般的に、0質量%〜約90質量%、好ましくは約0.01質量%〜約80質量%、より好ましくは約1質量%〜約70質量%、最も好ましくは約10質量%〜約60質量%に及ぶことができる。
【0045】
本発明の加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂の製造は、反応器に、水、必要に応じて触媒、必要に応じて溶剤、及びジビニルアレーンジオキシドを加え、次にこれらの成分を反応条件下で反応させて加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂を生成させることにより達成される。上記成分を任意の順序で混合してよい。好ましい一実施態様において、ジビニルアレーンジオキシドは反応器に加えられる最後の成分である。ジビニルアレーンジオキシドは、少なくとも部分的に加水分解したものであってもよい。加水分解は、エポキシド基の転化率が約1%〜約100%である得られた生成物は、単離前又は単離中に冷却され、熱硬化性配合物において即座に使用可能である。
【0046】
ジビニルアレーンジオキシドを加水分解させる処理条件は、一般的には約25℃〜約250℃の範囲内、好ましくは約35℃〜約225℃の範囲内、より好ましくは約55℃〜約200℃の範囲内の温度で上記方法を行うことを含む。処理圧力は、約0.1バール(bar)〜約100バール、好ましくは約0.5バール〜約50バール、より好ましくは約0.9バール〜約10バールであることができる。
【0047】
本発明のジビニルアレーンジオキシドを加水分解する方法は回分式又は連続式であることができる。当該方法で使用される反応器は当業者に知られている任意の反応器及び付帯設備であることができる。
【0048】
新規な加水分解したジビニルアレーンジオキシドは低い粘度を有し、誘導された熱硬化物は先行技術の類似のエポキシドと比べて高い耐熱性を示す。
【0049】
本発明の方法により製造される加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂の粘度は、一般的に、25℃で、約5mPa・s〜約5,000mPa・s、好ましくは約5mPa・s〜約500mPa・s、より好ましくは約10mPa・s〜約100mPa・sである。
【0050】
本発明の加水分解したジビニルアレーンジオキシドは、硬化性若しくは熱硬化性又は重合性樹脂配合物又は組成物においてエポキシ成分として有用である。
【0051】
本発明の別の広い実施態様において、重合性の加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物は、(i)上記の加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂、(ii)硬化剤、及び(iii)必要に応じて他のエポキシ樹脂の混合物を含むものであることができる。
【0052】
重合性樹脂組成物の第1の成分(i)は、上記のとおりの加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂を含む。
【0053】
本発明の重合性樹脂混合物において使用される加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂の濃度は、一般的に、約99.9質量%〜約0.1質量%、好ましくは99質量%〜約1質量%、より好ましくは約90質量%〜約10質量%に及ぶことができる。一般的に、加水分解したジビニルアレーンジオキシドの量は、単独で、又は他のエポキシ樹脂との組み合わせで、共反応性の硬化剤の官能基の当量と比べて、当量に基づいて化学量論的均衡以上である。
【0054】
本発明の重合性樹脂組成物に有用な硬化剤(成分(ii))は、硬化性エポキシ樹脂に基づく組成物に対して有用であることが当該技術分野で知られている従来の共反応性又は触媒作用のある硬化剤のうちのいずれを含んでもよい。重合性又は熱硬化性樹脂組成物において有用な共反応性の硬化剤(curing agent)(硬化剤(hardener)又は架橋剤とも呼ばれる)は、例えば、当該技術分野でよく知られている共反応性の硬化剤から選択することができ、例えば酸無水物、カルボン酸、アミン化合物、又はそれらの混合物から選択できるが、これらに限定されない。かかる共反応性硬化剤の具体例としては、例えば、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミノアミド、ジシアンジアミド、ポリカルボン酸及び酸無水物、並びにそれらの任意の組み合わせなどが挙げられる。熱硬化性組成物において有用な触媒作用のある硬化剤は、例えば、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、例えば第4級アンモニウムハロゲン化物、ルイス酸、例えば三フッ化ホウ素など、ルイス酸−アミン複合体、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。共反応性の硬化剤の他の具体例としては、ジアミノジフェニルスルホン、スチレン−無水マレイン酸(SMA)コポリマー、及びそれらの混合物が挙げられる。従来の共反応性エポキシ硬化剤のうちで、アミン類及びアミノ又はアミド含有樹脂並びにフェノール系化合物が好ましい。
【0055】
ジシアンジアミドは、本発明において有用な硬化剤の1つの好ましい実施態様である。ジシアンジアミドは、その硬化特性を活性化するのに比較的高い温度を必要とするため、ジシアンジアミドは硬化遅延をもたらすという利点を有し、ジシアンジアミドをエポキシ樹脂に加え、室温(約25℃)で貯蔵することができる。
【0056】
硬化性エポキシ樹脂組成物において使用される硬化剤の量は、一般的に、約0wt%〜約90wt%、好ましくは約0.01wt%〜約80wt%、より好ましくは約1wt%〜約70wt%に及ぶ。一般的には、使用される硬化剤の量は、エポキシド基の量と比べて当量に基づいて化学量論的に釣り合いがとれる量以下である。
【0057】
加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂を含む硬化性組成物は、それらの意図されている用途に依存して加工特性及び/又は硬化後の特性を最適化するために、広く調節できる。幾つかの用途では、配合物の硬化速度及び/又は硬化した配合物の特性における有意な改善を達成するために、ほんの少量の加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂が必要とされる。
【0058】
本発明の加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂の耐熱性は、示差走査熱量測定法(DSC)を使用してガラス転移温度(T)により求めた場合に、一般的に、約50℃〜約300℃、好ましくは約75℃〜約275℃、より好ましくは約100℃〜約250℃に及ぶ。
【0059】
本発明の重合性樹脂組成物、ブレンド又は混合物の製造において、上記のジビニルアレーンジオキシドに加えて、混合物は上記の加水分解したジビニルアレーンジオキシドと異なる少なくとも1種のエポキシ樹脂を含んでよい。エポキシ樹脂は、少なくとも1つのビシナルエポキシ基を含む化合物である。エポキシ樹脂は、飽和又は不飽和の、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式であることができ、置換されていてもよい。エポキシ樹脂は、モノマーであってもポリマーであってもよい。本発明において有用なエポキシ樹脂は、当該技術分野で知られている任意のエポキシ樹脂から選択できる。本発明において有用なエポキシ樹脂の広範な列挙が、引用により本明細書に援用するLee, H.及びNeville, K., "Handbook of Epoxy Resins," McGraw-Hill Book Company, New York, 1967, Chapter 2, 第257-307頁に見られる。
【0060】
本発明のここに開示する実施態様において使用されるエポキシ樹脂は、様々なものであることができ、かかる樹脂としては、従来のエポキシ樹脂及び市販のエポキシ樹脂が挙げられ、単独で使用するか、又は2種以上を併用できる。本明細書に開示する組成物に対してエポキシ樹脂を選択する際に、最終生成物の特性だけ考慮されるべきでなく、樹脂組成物の加工に影響を及ぼしうる粘度や他の特性も考慮されるべきである。
【0061】
当業者に知られている特に適するエポキシ樹脂は、多官能性アルコール類、フェノール類、脂環式カルボン酸、芳香族アミン又はアミノフェノール類とエピクロロヒドリンとの反応生成物に基づく。幾つかの非限定的な実施態様として、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、及びパラ−アミノフェノール類のトリグリシジルエーテルが挙げられる。当業者に知られている他の好適なエポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとo−クレゾールの反応生成物、及びフェノールノボラック樹脂が挙げられる。2種又は3種以上のエポキシ樹脂の混合物を使用することもできる。
【0062】
上記エポキシ樹脂組成物の製造のために本発明において有用なエポキシ樹脂は、市販の製品から選択できる。例えば、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company)から入手可能なD.E.R.(登録商標)331、D.E.R.332、D.E.R.334、D.E.R.580、D.E.N.431、D.E.N.438、D.E.R.736又はD.E.R.732エポキシ樹脂を使用できる。本発明の1つの例示として、エポキシ樹脂は、175〜185のエポキシド当量(EEW)、9.5Pa・sの粘度及び1.16g/ccの密度を有する液体エポキシ樹脂であるD.E.R.383エポキシ樹脂であることができる。エポキシ樹脂成分として使用できる他の市販のエポキシ樹脂は、D.E.R.330、D.E.R.354又はD.E.R.332エポキシ樹脂であることができる。D.E.R.はザ・ダウ・ケミカル・カンパニーの登録商標である。
【0063】
本発明において有用な他の好適なエポキシ樹脂は、例えば米国特許第3,018,262号、米国特許第7,163,973号、第6,887,574号、第6,632,893号、第6,242,083号、第7,037,958号、第6,572,971号、第6,153,719号及び第5,405,688号明細書;PCT国際公開第2006/052727号;並びに米国特許出願公開第2006/0293172号、第2005/0171237号及び第2007/0221890号明細書に開示されており、それらの開示はそれぞれ引用により本明細書に援用する。
【0064】
好ましい一実施態様において、本発明の組成物において有用なエポキシ樹脂は、任意の芳香族又は脂肪族のグリシジルエーテル又はグリシジルアミン、あるいは脂環式エポキシ樹脂を含む。
【0065】
一般的に、本発明において使用されるエポキシ樹脂の選択は用途に依存する。しかしながら、ビスフェノールAのグリシジルエーテル(DGEBA)及びその誘導体が特に好ましい。他のエポキシ樹脂をビスフェノールFエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAエポキシ樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択できるが、これらに限定されない。
【0066】
必要に応じて使用される他のエポキシ樹脂は、本発明の重合性樹脂組成物中に、一般的には、約1wt%〜約99wt%、好ましくは約5wt%〜約95wt%、より好ましくは約10wt%〜約90wt%の濃度で存在することができる。
【0067】
本発明の重合性又は硬化性熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、1又は2種以上の他の添加剤(それらの意図する用途、例えば加水分解エポキシ樹脂の製造、貯蔵及び硬化に有用なもの)を含んでよい。例えば、本発明の重合性組成物において有用な任意選択的な追加成分として使用できる任意添加剤としては、触媒、溶剤、他の樹脂、安定剤、充填剤、可塑剤、触媒失活剤、界面活性剤、流れ調整剤、顔料又は染料、艶消し剤、脱ガス剤、難燃剤(例えば、無機難燃剤、ハロゲン化難燃剤、及び非ハロゲン化難燃剤、例えばリン含有材料)、強化剤、硬化開始剤、硬化抑制剤、湿潤剤、着色剤又は顔料、熱可塑性材料、加工助剤、紫外線(UV)遮断化合物、蛍光化合物、紫外線(UV)安定剤、不活性充填剤、繊維強化材、酸化防止剤、耐衝撃性改良剤、例えば熱可塑性粒子など、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。上記のリストは例示を目的とし、限定を目的とするものでない。当業者は、本発明の配合物に対して好ましい添加剤を最適化することができる。
【0068】
追加の添加剤の濃度は、全組成物の質量を基準にして、約0wt%〜約90wt%、好ましくは約0.01wt%〜約80wt%、より好ましくは約1wt%〜約65wt%、最も好ましくは約10wt%〜約50wt%である。
【0069】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の製造は、次の成分:加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂、硬化剤、必要に応じて触媒、及び必要に応じて不活性有機溶剤を容器内で混合し、次にこれらの成分を配合して重合性樹脂組成物にすることにより達成される。混合順序に重要度はない。すなわち、本発明の配合物又は組成物を構成する成分は、本発明の熱硬化性組成物をもたらすために、任意の順序で混合されてよい。上記の任意選択的な様々な配合剤、例えば充填剤を、混合中又は混合前に組成物に加えて重合性樹脂組成物を形成してもよい。
【0070】
重合性樹脂組成物の成分は全て、典型的には、所望の用途のための低い粘度を有する有効な重合性樹脂組成物の製造を可能にする温度で混合又は分散される。全成分の混合中の温度は、一般的に、約0℃〜約100℃、好ましくは約20℃〜約50℃である。
【0071】
上記のジビニルアレーンジオキシドから製造された本発明の重合性樹脂組成物は、当該技術分野で知られている組成物と比べて、同じ分子量で改善された耐熱性を有するか又は同じ耐熱性でより低い粘度を有する。
【0072】
本発明の方法により製造される重合性樹脂組成物の粘度は、一般的に、25℃で、約5mPa・s〜約5,000mPa・s、好ましくは約5mPa・s〜約500mPa・s、より好ましくは約10mPa・s〜約100mPa・sである。
【0073】
本発明の重合性樹脂組成物から製造されたに基づく熱硬化物の耐熱性は、示差走査熱量測定法(DSC)を使用してガラス転移温度(T)により求めた場合、一般的に、約50℃〜約300℃、好ましくは約75℃〜約275℃、より好ましくは約100℃〜約250℃である。
【0074】
本発明の重合性又は硬化性配合物又は組成物は、従来の加工条件下で硬化でき、熱硬化物を形成する。得られた熱硬化物は、高い熱安定性を維持しつつ、優れた熱−機械的特性、例えば良好な靱性及び機械的強度を示す。
【0075】
本発明の熱硬化製品を製造する方法は、重力キャスティング、真空キャスティング、自動圧力ゲル化(APG)、真空圧力ゲル化(VPG)、インフュージョン(infusion)、フィラメント巻き(filament winding)、レイアップインジェクション(lay up injection)、トランスファーモールディング、プリプレグ成形、浸漬、コーティング、吹付け、刷毛塗りなどにより実施できる。
【0076】
硬化反応条件としては、例えば、約0℃〜約300℃、好ましくは約20℃〜約250℃、より好ましくは約50℃〜約200℃の範囲内の温度のもとで反応を実施することが挙げられる。
【0077】
硬化反応は、例えば約0.01バール〜約1000バール、好ましくは約0.1バール〜約100バール、より好ましくは約0.5バール〜約10バールの圧力で実施できる。
【0078】
硬化性又は熱硬化性組成物の硬化は、例えば、当該組成物を硬化させるのに十分な所定の時間で実施することができる。例えば、硬化時間は、約1分間〜約24時間、好ましくは約10分間〜約12時間、より好ましくは約100分間〜約8時間の間で選択できる。
【0079】
本発明の硬化方法は、回分法又は連続法であることができる。当該方法で使用される反応器は、当業者によく知られている任意の反応器及び付帯設備であることができる。
【0080】
本発明の重合性樹脂組成物を硬化させることにより製造される硬化した又は熱硬化した製品は、都合良いことに、熱−機械的特性(例えば、転移温度、モジュラス及び靱性)の改善されたバランスを示す。硬化した製品は、視覚的に透明又は乳白色であることができる。従来のエポキシ樹脂だけを使用して製造された類似の熱硬化物と比べて、本発明の加水分解エポキシ樹脂を使用して製造された熱硬化物はより高いT(従来のエポキシ樹脂よりも10〜100%高い)及びより高い引張弾性率(従来のエポキシ樹脂よりも10〜100%高い)を示す。
【0081】
は、典型的には、使用された硬化剤及びエポキシ樹脂に依存する。1つの例として、本発明の硬化したジビニルアレーンジオキシド樹脂のTは、その対応する従来の硬化した加水分解エポキシ樹脂よりも約10%〜約100%高いことができる。一般的に、本発明の硬化した加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂のTは約50℃〜約300℃であることができ、より好ましくは約50℃〜約250℃である。
【0082】
同様に、引張弾性率は、使用された硬化剤及びエポキシ樹脂に依存する。1つの例として、本発明の硬化した加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂の引張弾性率はその対応する従来の硬化した加水分解エポキシ樹脂よりも約10%〜約100%高いことができる。一般的に、本発明の加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂の引張弾性率は約100MPa〜約10,000MPaであることができ、より好ましくは約1000MPa〜約7500MPaである。
【0083】
本発明の加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物は、コーティング、フィルム、接着剤、積層体、複合材料、電子機器などの形態のエポキシ熱硬化物又は硬化製品の製造に有用である。
【0084】
本発明の1つの例として、一般的に、加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物は、キャスティング、ポッティング、封入、モールディング及びツーリングに有用である。
【実施例】
【0085】
以下の例により本発明を詳しく説明するが、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【0086】
LaPO、BPO、A1PO、ZrPO及びDowex 1X2をAldrich Chemical Companyから入手し、受け取ったままで使用した。Csゼオライトベータ、CuゼオライトY、(3/1)Mg/Alハイドロタルサイト及び担持されたLa(POをSud Chemieから入手し、特に注記しない限り受け取ったままで使用した。Niタコバイト(Ni Takovite)をUnited Catalyst Incorporatedから入手し、受け取ったままで使用した。Dowex XZ 91419は、スチレン−ジビニルベンゼン骨格を有する第4級t−ブチルアミンを含む開発中のアニオン樹脂であり、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから入手した。
【0087】
実施例1
ジビニルベンゼンジオキシド(EEW=81)を、圧力6.5バール及び温度155℃でジオキシド1g当り1.5gの水に3時間接触させた。得られた混合物を110℃に冷却し、次に、窒素ガスを混合物に加えて残留水を除去した。得られた部分的に加水分解したグリコール変性エポキシモノマーはエポキシド当量(EEW)が83であり、約5%のグリコール末端基を有していた。
【0088】
実施例2〜10
表1に示すように、ジビニルベンゼンジオキシドを、大気圧力及び温度65℃でジオキシド1g当り1.0gの水及びジオキシド1g当り0.07gの触媒に10〜180分間接触させた。得られた混合物を周囲温度に冷却し、試料をGC及びHPLCにより分析して転化率及び収率を求めた。窒素ガスを混合物に加えて残留水を除去し、次に、混合物をMgSO上でさらに乾燥させた。得られたグリコール変性エポキシモノマーは、ほぼ定量的にDVBDO−ジグリコールに加水分解した。
【0089】
【表1】

【0090】
比較例A〜C
表2に示す触媒を使用して実施例2〜10について記載した手順を繰り返した。
【0091】
【表2】

【0092】
層状で酸性のリン酸金属塩及び金属交換ゼオライト並びにマクロポーラスイオン交換樹脂は、DVBDOの加水分解に関して優れた触媒であり、DVBDO−ジグリコールへの定量的な転化が達成された(表1)。表2に示す比較例に基づいて、例えばハイドロタルサイト及びタコバイトなどの層状金属水酸化物触媒、及びDowex 1X2などのマイクロポーラスイオン交換樹脂は低い活性を示した(表2)。
【0093】
実施例11〜13
ジビニルベンゼンジオキシドを、大気圧力及び温度65℃で、ジオキシド1g当り0.60gの水及びジオキシド1g当り0.07gの触媒に180分間接触させた。得られた混合物を周囲温度に冷却し、試料をGC及びHPLCにより分析して転化率及び収率を求めた。窒素ガスを混合物に加えて残留水を除去し、次に、混合物をMgSO上でさらに乾燥させた。得られたグリコール変性エポキシモノマーは、ほぼ定量的にDVBDO−ジグリコールに加水分解した。
【0094】
【表3】

【0095】
実施例14
ジビニルベンゼンジオキシドを、大気圧力及び温度65℃で、ジオキシド1g当り0.40gの及びジオキシド1g当り0.1gのLaPO及びジオキシド1g当り3.0mLのTHFに5時間接触させた。得られた混合物を氷槽中で冷却し、濾過し、MgSO上で30分間乾燥させた。溶剤を減圧除去して油状物を得た。得られた油状物をアセトニトリルに溶解させ、濾過して白色析出物を除去し、不溶性の第2層から分離した。アセトニトリルを減圧除去して黄色を帯びた油状物を得た。DVBDO−モノグリコールの収率は65%。
【0096】
比較例D及び実施例15〜17
様々な量のジビニルベンゼンジオキシドモノグリコール(DVBDO−MG)を含む配合物を製造し、室温(約25℃)で硬化させた。他の配合成分は、表4に示されているように、DVBDO、Cardolite NC541LV(Cardolite Corp.製のフェナルカミン硬化剤)及びAncamine K−54(Air Products,Inc.製の第3級アミン)であった。
【0097】
【表4】

【0098】
表4に示す各配合物を20mLバイアル中で手で1分間混合し、Al皿に入れ、周囲条件下で硬化させた。18時間及び24時間の硬化時間後に、ショアーD硬度(ASTM D2240により求められる)及びメチルエチルケトン(MEK、しみ込ませた綿先端アプリケーターにより100回ラビングすることにより)に対する耐性を試験した(表5)。
【0099】
【表5】

【0100】
表5中の結果は、上記配合物中に10phrのDVBDO−MGを使用した場合の硬度及びMEK耐性の予想外の改善を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)水との反応生成物を含む加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物であって、前記形成された反応生成物が少なくとも部分的に加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物を含む加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物。
【請求項2】
前記ジビニルアレーンジオキシドが1又は2種以上の置換されたジビニルベンゼンジオキシドを含み、前記1又は2種以上の置換ジビニルベンゼンジオキシドが、ジビニルベンゼンジオキシド、ジビニルナフタレンジオキシド、ジビニルビフェニルジオキシド、ジビニルジフェニルエーテルジオキシド、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ジビニルアレーンジオキシドがジビニルベンゼンジオキシドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ジビニルアレーンジオキシドの濃度が約99質量%〜約1質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
触媒を含み、前記触媒が、塩化ビスマス、ビスマストリフラート、亜硫酸水素テトラブチルアンモニウム、錫(IV)ポルフィリン、過塩素酸鉄(III)、トリフルオロ酢酸鉄(III)、塩化鉄(III)、セシウムトリフラート、リン酸、シュウ酸、イオン交換樹脂、リン酸金属塩及び金属交換ゼオライト、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記触媒の濃度が約0.01質量%〜約10質量%である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
(i)請求項1に記載の少なくとも1種の加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物及び(ii)少なくとも1種の硬化剤を含む硬化性加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物。
【請求項8】
前記加水分解エポキシ樹脂の濃度が約99質量%〜約10質量%である、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記硬化剤が、酸無水物、カルボン酸、アミン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、ルイス酸、ルイス酸−アミン複合体、又はそれらの混合物を含む、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記硬化剤の濃度が約1質量%〜約90質量%である、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
(a)ジビニルアレーンジオキシド、(b)水、及び(c)必要に応じて触媒を、少なくとも1種の部分的に加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物をもたらす条件下で反応させることを含むジビニルアレーンジオキシド樹脂の加水分解方法。
【請求項12】
(i)請求項1に記載の加水分解したジビニルアレーンジオキシド樹脂及び(ii)少なくとも1種の硬化剤を混合することを含む、硬化性の加水分解ジビニルアレーンジオキシド樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
ジビニルアレーンジオキシドがジビニルベンゼンジオキシドである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
有機液体相を含むジビニルベンゼンジオキシドの加水分解から生成した反応生成物が、もっぱらジ加水分解生成物を生じる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
単一液体相反応のための補助溶剤を使用して加水分解中に形成された反応生成物が、主生成物としてモノ加水分解ジビニルジオキシドを生じる、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2013−513696(P2013−513696A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543217(P2012−543217)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059349
【国際公開番号】WO2011/071961
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】