説明

ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物の変色抑制方法

【課題】ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物における経時的な変色を防止すること。
【解決手段】ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物に、ムコ多糖類の1種又は2種以上を添加することにより、経時的な変色、特に熱及び/又は光による経時的な変色を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物の経時的な変色を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェンヒドラミン又はその塩は、強い抗ヒスタミン作用を有することから、止痒・鎮痒効果を期待して、医薬品・医薬部外品の薬理活性成分として汎用されている。アスコルビン酸又はその塩は、抗炎症効果、ニキビ改善効果、美白効果、老化防止効果、抗酸化効果などを期待して、医薬品、医薬部外品、化粧品など幅広い用途に汎用されている。ところが、ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する製剤は、熱や光によって経時的に変色が生じる場合があることが知られている。このような変色が生じると商品価値が低下して好ましくないため、その解決手段もこれまでに検討されている。
【0003】
例えば、ジフェンヒドラミン又はその塩の熱による変色に対しては、ジフェンヒドラミン類を含有する油脂性軟膏剤に、ジブチルヒドロキシトルエンを単独で、又はジブチルヒドロキシトルエン及びメントールを組み合わせて添加することにより、当該油脂性軟膏剤の変色が防止できることが開示されている(特許文献1)。
【0004】
さらに、ジフェンヒドラミン又はその塩の光による変色に対しては、ジフェンヒドラミン又はその塩を含有する製剤を遮光性を有する箱や包装容器内に保管する他、固形製剤の場合は、遮光剤を有するコーティング剤でジフェンヒドラミンを含有する製剤を被覆すること(特許文献2、3)、ジフェンヒドラミン塩を油液中に分散させる(特許文献4)、特定の高分子化合物(特許文献5:カルボキシメチルセルロースカルシウム、特許文献6:低膨潤性高分子及び高膨潤性高分子)を添加して製剤化するなどの手段により、ジフェンヒドラミン又はその塩を含有する製剤の変色が防止できることが開示されている。
【0005】
アスコルビン酸又はその塩の光による変色に対しては、ポリメタクロイルオキシエトキシホスホリルコリンと組み合わせて添加することにより、変色が防止できることが開示されている(特許文献7)。さらに、アスコルビン酸又はその塩の熱による変色に対しては、合成スチブンサイトと組み合わせて添加することにより、高温時の経時的な変色が抑えられることが開示されている(特許文献8)。
【0006】
また、アスコルビン酸又はその塩の経時的に変色する問題については、このアスコルビン酸又はその塩の変色に対して、オキシレスベラトロールと組み合わせてレシチンを用いてゲル化すること(特許文献9)、ショ糖脂肪酸エステルと組み合わせて多価アルコールを含有しない皮膚外用剤(特許文献10)とすることで変色が防止できることが開示されている。
【0007】
しかしながら、ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する製剤の、経時的な変色、特に熱及び/又は光による経時的な変色を抑制する手段としてムコ多糖類が有効であることはこれまでに知られていなかった。
さらに、特許文献1〜10に開示された方法は、光又は熱の一方による変色を抑制するものであり、光及び熱の両方による変色に対して有効な方法もこれまでに知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−28124号公報
【特許文献2】特開2007−284394号公報
【特許文献3】特開2003−300872号公報
【特許文献4】特開2003−37855号公報
【特許文献5】特開2007−291045号公報
【特許文献6】特開2004−107258号公報
【特許文献7】特開2005−68115公報
【特許文献8】特開2005−60239公報
【特許文献9】特開2009−137874公報
【特許文献10】特開2006−213738公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物における経時的な変色、特に熱及び/又は光による経時的な変色を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物に、ムコ多糖類(好ましくは、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩、ヒアルロン酸誘導体又はその塩、及びデルマタン硫酸又はその塩;特に好ましくはヘパリン類似物質)を共存させることにより、当該外用組成物の経時的な変色を抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
従って、本発明は以下を提供する。
〔1〕ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物において、ムコ多糖類の1種又は2種以上を共存させる、ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物の変色抑制方法。
〔2〕ムコ多糖類が、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩、ヒアルロン酸誘導体又はその塩、及びデルマタン硫酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上である、〔1〕に記載の方法。
〔3〕ムコ多糖類が、ヘパリン類似物質及びコンドロイチン硫酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上である、〔1〕に記載の方法。
〔4〕ジフェンヒドラミン又はその塩を含有する外用組成物が、乳化物である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕アスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物が、液剤である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩1重量部に対して、ムコ多糖類の1種又は2種以上を0.003〜10重量部共存させる、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕変色が、熱及び/又は光によるものである、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
【0012】
〔8〕ムコ多糖類の1種又は2種以上を有効成分とする、ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物の変色抑制剤。
〔9〕ムコ多糖類が、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩、ヒアルロン酸誘導体又はその塩、及びデルマタン硫酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上である、〔8〕に記載の変色抑制剤。
〔10〕ムコ多糖類が、ヘパリン類似物質及びコンドロイチン硫酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上である、〔8〕に記載の変色抑制剤。
〔11〕ジフェンヒドラミン又はその塩を含有する外用組成物が、乳化物である、〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の変色抑制剤。
〔12〕アスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物が、液剤である、〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の変色抑制剤。
〔13〕ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩1重量部に対して、ムコ多糖類の1種又は2種以上を0.003〜10重量部共存させる、〔8〕〜〔12〕のいずれかに記載の変色抑制剤。
〔14〕変色が、熱及び/又は光によるものである、〔8〕〜〔13〕のいずれかに記載の変色抑制剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物の経時的な変色、特に熱及び/又は光による経時的な変色を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書中において使用される用語は、特に他に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられていることが理解されるべきである。
【0015】
本発明の外用組成物に含有されるジフェンヒドラミンは公知の化合物であり、ジフェンヒドラミンの塩としては、薬学的に許容されるものであれば、特に制限されず使用できる。ジフェンヒドラミン又はその塩は水和物の形態であってもよい。
ジフェンヒドラミンの塩の具体例としては、有機酸塩(例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等のモノカルボン酸塩;フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等の多価カルボン酸塩;乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等のオキシカルボン酸塩;ラウリル硫酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等の有機スルホン酸塩;等)、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、金属との塩(例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;等の金属との塩等)、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0016】
本発明の外用組成物に配合するジフェンヒドラミン又はその塩の配合量は、所望の薬理作用を奏し得る限り特に制限されないが、外用組成物全体に対して、通常は0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上であり、配合上限は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下とするのがよい。
【0017】
本発明の外用組成物に含有されるアスコルビン酸は公知の化合物であり、アスコルビン酸の塩としては、薬学的に許容されるものであれば、特に制限されず使用できる。アスコルビン酸又はその塩は水和物の形態であってもよい。
アスコルビン酸の塩の具体例としては、有機塩基との塩(例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ピリジン塩などの第3級アミンとの塩、アルギニンなどの塩基性アンモニウム塩など)、無機塩基との塩(例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩など)などが挙げられ、特に好ましい塩は、ナトリウム塩、カリウム塩である。具体的には、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸モノリン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸ジリン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸トリリン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸−2−硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。
【0018】
本発明の外用組成物に含有されるアスコルビン酸又はその塩は医薬品、医薬部外品または化粧品分野において皮膚外用剤の成分として市販されているアスコルビン酸又はその塩を用いることができる。本発明で用いるアスコルビン酸又はその塩の配合量は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限されないが、皮膚外用剤全体に対して、通常は0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上であり、配合上限は、通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下とするのがよい。
【0019】
ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物は、経時的に変色、特に熱及び/又は光によって経時的に変色するが、本発明の変色抑制方法は、ムコ多糖類を有効成分とする点を特徴とする。
【0020】
ムコ多糖類は、皮膚の天然保湿因子として知られ、優れた保湿効果を有していることから、本発明の変色抑制方法の有効成分としてムコ多糖類を共存させることにより、本発明の外用組成物は優れた保湿効果を奏することも期待される。
【0021】
ムコ多糖類は、その基本骨格にアミノ糖とウロン酸とを含有する多糖類であって、動物の組織から得られる。ムコ多糖類の具体例としては、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸I及びII等、及びこれらの誘導体、並びにこれらの塩が挙げられる。
【0022】
ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸I及びII等及びこれらの誘導体の塩としては、薬学的・生学的に許容される塩が好ましい。例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;
マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン等のアルカノールアミン塩;等を挙げることができ、好ましくはナトリウム塩等のアルカリ金属塩である。
【0023】
本発明に用いるムコ多糖類の由来は特に制限されず、医薬品、医薬部外品、又は化粧品の分野において通常用いられ得るものを特に限定されず用いることができる。
本発明において、ムコ多糖類は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。また、ムコ多糖類は、市販品がある場合、市販品をそのまま使用してもよい。
【0024】
本発明の組成物において、ムコ多糖類の平均分子量は特に制限されないが、通常は1000〜400万、好ましくは1000〜120万であり、より好ましくは5000〜100万、特に好ましくは5000〜40万である。
【0025】
本発明に用いられるムコ多糖類としては、具体的には、ヘパリン類似物質;コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸又はその塩;デルマタン硫酸、デルマタン硫酸ナトリウム等のデルマタン硫酸またはその塩;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カルシウム等のヒアルロン酸又はその塩;アセチルヒアルロン酸、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸カリウム、アセチルヒアルロン酸マグネシウム、アセチルヒアルロン酸カルシウム等のヒアルロン酸誘導体又はその塩;ヘパラン硫酸;ヘパリン;ケラタン硫酸I及びII;等や、これらの混合物等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いられるムコ多糖類としては、本発明の効果の発揮の観点から、好ましくはヘパリン類似物質;コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸又はその塩;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸又はその塩;アセチルヒアルロン酸、アセチルヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸誘導体又はその塩;デルマタン硫酸、デルマタン硫酸ナトリウム等のデルマタン硫酸またはその塩;等が、より好ましくはヘパリン類似物質や、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸又はその塩等が、特に好ましくはヘパリン類似物質が挙げられる。
【0027】
ここで、ヘパリン類似物質とは、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖の総称を意味し、ムコ多糖を構成する単糖1分子当たり平均0.5〜5分子、好ましくは平均0.6〜3分子の硫酸基を有するのが好ましい。より具体的には、ヘパリン類似物質は、ヘパリン、コンドロイチンポリ硫酸と呼ばれるコンドロイチン硫酸Dやコンドロイチン硫酸E等を含有する。
ヘパリン類似物質は、ムコ多糖を硫酸化することにより得ることもできるし、ウシ、ブタ等の動物の気管支を含む内臓より水性担体を用いて抽出・精製したり、その後必要に応じて硫酸化することによっても得ることもできる。このようなヘパリン類似物質は、医薬化粧品原料として開発されているため、このような市販品を利用することもできる。
本発明の外用組成物において、ヘパリン類似物質としては、日本薬局方外医薬品規格に収戴されているものが好適に使用される。
【0028】
本発明の外用組成物に配合するムコ多糖類の配合量は、本願効果を奏し得る限り特に制限されないが、外用組成物全体に対して、通常は0.005重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上であり、配合上限は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下とするのがよい。
【0029】
本発明の外用組成物におけるジフェンヒドラミン又はその塩とムコ多糖類との重量比は、本願効果を奏し得る限り特に制限されないが、ジフェンヒドラミン又はその塩1重量部に対して、ムコ多糖類が通常は0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜2重量部、特に好ましくは0.1〜1重量部の範囲内とするのがよい。
【0030】
本発明の外用組成物におけるアスコルビン酸又はその塩とムコ多糖類との重量比は、本願効果を奏し得る限り特に制限されないが、アスコルビン酸又はその塩1重量部に対して、ムコ多糖類が通常は0.003〜10重量部、好ましくは0.005〜1重量部、さらに好ましくは0.01〜0.3重量部の範囲内とするのがよい。
【0031】
本発明の外用組成物は、その用途に応じて、種々の形態に調製することができ、例えば、クリーム、乳液、ゲル乳液、ローション、美容液、化粧水、軟膏剤、固形剤等の形態が挙げられる。なかでも、広範囲に塗布しやすいことから、本発明の実施形態としてはクリーム、乳液、ゲル乳液等の乳化物、ローション、美容液、化粧水等の液剤が好ましい。
【0032】
本発明の外用組成物には、保存安定性や粘度等の品質を損なわず、また本発明の効果を損なわない量的及び質的範囲内で、必要に応じて医薬品、医薬部外品または化粧品分野において一般的に用いられる各種の成分、例えば水、油性成分(例えば、炭化水素、植物油、エステル油、高級アルコール、シリコーン油、脂肪酸等)、多価アルコール、増粘剤、低級アルコール、界面活性剤、保存剤、pH調整剤、安定化剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、分散剤、香料等を配合することができる。なお、これらの成分は1種単独で、または2種以上を任意に組み合わせて配合することができる。またこれらの成分の配合量は、本発明の効果を奏すれば特に制限されないが、望ましくは薬学上許容される上限配合量を限度に適宜選択される。
【0033】
本発明の外用組成物には、該組成物に所望の効果を持たせるため、さらに有効成分を配合することができる。本発明において有効成分とは、薬理活性成分や生理活性成分等の皮膚に対して有用な効果を有する成分で、特に制限されないが、例えば、非ステロイド性抗炎症剤、ビタミン類、美白剤、抗シワ剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、ステロイド剤、育毛剤、痩身剤、局所麻酔剤、鎮痒剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、角質軟化剤、保湿剤、収斂剤、抗酸化剤、発毛抑制剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等が挙げられる。これらの成分は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの成分の配合量は、本発明の効果を奏すれば特に制限されないが、望ましくは薬学上許容される上限配合量を限度に適宜選択される。
【0034】
本発明の外用組成物は、通常、容器に充填されて使用される。このような容器としては、使用目的・用途に応じ、適宜選択した形状、材質の容器に収容し、使用することができ、当該技術分野において通常使用されるものであれば、特に制限されず使用できる。
容器(本体、キャップ、吐出部材、中栓、シール部材等)の材質としては、最内層が外用組成物の保存安定性等や、容器の耐薬品性、強度、柔軟性、耐候性等を考慮して適宜選択すればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、アルミ、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂及びガラス等が挙げられる。好ましくは、容器材質として最内層がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アルミ、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂及びガラスの容器が挙げられる。また、これらの容器樹脂を使用した積層体を用いてもよい。
【0035】
本発明の外用組成物は、様々な症状や疾患の治療、予防又は改善用の組成物として用いることができる。本発明の外用組成物の外皮への適用量や用法は特に制限されず、該組成物は通常、一日数回、適量を皮膚等の外皮に塗布する等して用いることができる。
【0036】
本発明の外用組成物は、ジフェンヒドラミン又はその塩及びムコ多糖類が、治療、予防又は改善効果を奏する症状や疾患に対して用いるのが特に好ましい。このような症状、疾患としては、例えば、痒み症状;皮膚の乾燥に起因する症状;痒み症状や皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患;等が挙げられる。
皮膚の乾燥に起因する症状の具体例としては、皮膚表面の落屑、粉ふき、けばだち、かさつき、ひび、あかぎれ、ひじ・ひざ・かかと・くるぶし等の角化、顔の小じわ、皮膚柔軟性の低下、手指のあれ、痒み、乾燥肌(ドライスキン)、敏感肌、皮膚のかぶれ、紅斑、アトピー肌、肌荒れ等がある。
痒み症状や皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患の具体例としては、乾皮症、老人性乾皮症、小児乾燥性皮膚、尋常性鱗癬(鮫肌)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、皮脂減少性湿疹、敏感肌、季節性乾皮症、水性掻痒症、主婦湿疹、皮膚炎、かぶれ、じんましん、虫さされ、湿疹、ただれ、あせも、しもやけ等が挙げられる。
本発明の外用組成物は、痒みを伴う、皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患(例えば、乾皮症、老人性乾皮症、小児乾燥性皮膚等)に対して、特に有効である。
【0037】
本発明の外用組成物は、アスコルビン酸又はその塩及びムコ多糖類が、治療、予防又は改善効果を奏する症状や疾患に対して用いるのが特に好ましい。このような症状、疾患としては、例えば炎症症状;皮膚の炎症に起因する症状;肌あれ症状や皮膚の炎症に起因する症状を示す疾患;にきび等が挙げられる。皮膚の炎症に起因する症状の具体例としては、ひび、あかぎれ、手指のあれ、痒み、乾燥肌(ドライスキン)、敏感肌、皮膚のかぶれ、紅斑、アトピー肌、肌荒れ、日焼けによるしみ、そばかす等がある。
本発明の外用組成物は、皮膚の炎症に起因する症状を示す疾患(例えば、にきび、日焼けによるしみ、そばかす)に対して、特に有効である。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、下記の各実施例において%とは特に言及しない限り、質量(W/W)%を意味するものとする。
【0039】
試験例1 ジフェンヒドラミン含有クリームの熱安定性及び光安定性試験
油相(パルミチン酸イソプロピル、流動パラフィン、セトマクロゴール、モノステアリン酸グリセリン、セタノール、白色ワセリンを混合溶解したもの)にジフェンヒドラミンを加え、70℃まで加熱した。同様に水相(精製水、濃グリセリン、パラオキシ安息香酸メチル、カルボキシビニルポリマー、エデト酸ナトリウムを混合攪拌したもの)にヘパリン類似物質を加え、70℃に加熱した。2相(油相、水相)を高温で攪拌・乳化し、室温まで冷却して、表1に示す組成の実施例1のクリームを得た。
比較例1のクリームは、ヘパリン類似物質を加えない以外は実施例1のクリームと同様にして、製造した。
【0040】
【表1】

【0041】
熱安定性試験
50mlの透明なねじ口ビンに、実施例1及び比較例1の外用組成物をそれぞれ約40g入れ、60℃にて3日間保存し、目視にて色の変化を観察した。結果を表1に示す。
光安定性試験
50mlの透明なねじ口ビンに、実施例1及び比較例1の組成物をそれぞれ約40g入れ、20〜25℃にて光照射を行い(総照度120万lux・hr)、目視にて色の変化を観察した。結果を表1に示す。
【0042】
表1に示した通り、熱及び光安定性試験のいずれにおいても、ヘパリン類似物質を含有する実施例1は、ヘパリン類似物質を含有しない比較例1と比較して、外用組成物の経時的な変色が抑制されていることが認められた。
【0043】
試験例2 ジフェンヒドラミン含有乳液の熱安定性及び光安定性試験
油相(パルミチン酸イソプロピル、フィトステロール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、白色ワセリンを混合溶解したもの)にジフェンヒドラミンを加え、70℃まで加熱した。同様に水相(精製水、濃グリセリン、パラオキシ安息香酸メチル、クエン酸ナトリウム、クエン酸を混合溶解したもの)にヘパリン類似物質を加え、70℃に加熱した。2相(油相、水相)を高温で攪拌・乳化し、キサンタンガムを加え攪拌し、室温まで冷却して、表2に示す組成の実施例2の乳液を得た。
比較例2の乳液は、ヘパリン類似物質を加えない以外は実施例2の乳液と同様にして、製造した。
【0044】
【表2】

【0045】
熱安定性試験
50mlの透明なねじ口ビンに、実施例1及び比較例1の外用組成物をそれぞれ約40g入れ、60℃にて1日間保存し、目視にて色の変化を観察した。結果を表2に示す。
【0046】
表2に示した通り、熱安定性試験において、ヘパリン類似物質を含有する実施例2は、
ヘパリン類似物質を含有しない比較例2と比較して、外用組成物の経時的な変色が抑制されていることが認められた。なお、熱安定性と同様に、試験例2の外用組成物の光安定性についても試験例1と同様の傾向が認められる。
【0047】
試験例3 アスコルビン酸含有ローション剤(美容液)の熱安定性及び光安定性試験
精製水、濃グリセリン、1.3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、パラオキシ安息香酸メチル、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、ヘパリン類似物質を40℃で混合溶解し、室温まで冷却して、表1に示す組成の実施例3のローション剤(美容液)を得た。
比較例3のローション剤(美容液)は、ヘパリン類似物質を加えない以外は実施例3のローション剤(美容液)と同様にして、製造した。
【0048】
【表3】

【0049】
熱安定性試験
50mlの透明なねじ口ビンに、実施例3及び比較例3の外用組成物をそれぞれ約40g入れ、60℃にて3日間保存し、目視にて色の変化を観察した。結果を表3に示す。
光安定性試験
50mlの透明なねじ口ビンに、実施例1及び比較例1の組成物をそれぞれ約40g入れ、20〜25℃にて光照射を行い(総照度120万lux・hr)、目視にて色の変化を観察した。結果を表3に示す。
【0050】
表3に示した通り、熱及び光安定性試験のいずれにおいても、ヘパリン類似物質を含有する実施例3は、ヘパリン類似物質を含有しない比較例3と比較して、外用組成物の経時的な変色が抑制されていることが認められた。
【0051】
以下に製剤実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。製剤実施例を収容する容器素材としては、最内層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アルミ、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂及びガラスの容器を用いることができる。なお、各配合成分の単位は重量(W/W)%を意味するものとする。
【0052】
【表4】

【0053】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物において、ムコ多糖類の1種又は2種以上を共存させる、ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物の変色抑制方法。
【請求項2】
ムコ多糖類が、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩、ヒアルロン酸誘導体又はその塩、及びデルマタン硫酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ムコ多糖類が、ヘパリン類似物質、及びコンドロイチン硫酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ジフェンヒドラミン又はその塩を含有する外用組成物が、乳化物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物が、液剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩1重量部に対して、ムコ多糖類の1種又は2種以上を0.003〜10重量部共存させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
変色が、熱及び/又は光によるものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ムコ多糖類の1種又は2種以上を有効成分とする、ジフェンヒドラミン又はその塩並びにアスコルビン酸又はその塩を含有する外用組成物の変色抑制剤。


【公開番号】特開2010−180206(P2010−180206A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3318(P2010−3318)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】