説明

ジフルオロアルケン誘導体及び農園芸用の有害生物防除剤

【課題】本発明の課題は、新規なジフルオロアルケン誘導体及びそれを有効成分とする農園芸用有害生物防除剤を提供することである。
【解決手段】上記課題は、次式(I)で示されるジフルオロアルケン誘導体及びそれを有効成分とする農園芸用有害生物防除剤によって解決される。
【化1】


【0001】
(式中、Qは、低級アルキル基、置換基(I-a、I-b、I-c、I-d)を表し、Aはカルボニル基、ヒドロキシメチレン基、低級アシルオキシメチレン基、ベンゾイルオキシメチレン基、ヒドロキシイミノメチレン基、低級アルコキシイミノメチレン基を表す。また置換基(I-a、I-b、I-c、I-d)において、Rは水素原子、4−トルエンスルホニル基、ベンジル基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基を表し、Rは水素原子、低級アシル基を表し、Rは低級アルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸用有害生物防除剤として有用である新規なジフルオロアルケン誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農園芸用の有害生物防除活性を示すハロアルケン誘導体としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5などに開示されているが、本発明の次式(I)で示されるジフルオロアルケン誘導体に関する記載はなく新規化合物である。
従って、同誘導体が、農園芸の有害生物防除活性を有することも知られていない。
【0003】
【化1】

【0004】
(式中、Qは、低級アルキル基、下記置換基(I-a、I-b、I-c、I-d)を表し、Aはカルボニル基、ヒドロキシメチレン基、低級アシルオキシメチレン基、ベンゾイルオキシメチレン基、ヒドロキシイミノメチレン基、低級アルコキシイミノメチレン基を表す。)
【0005】
【化2】

【0006】
(式中、Rは水素原子、4−トルエンスルホニル基、ベンジル基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基を表し、R3は水素原子、低級アシル基を表し、Rは低級アルキル基を表す。)
【特許文献1】米国特許第4,950,666号明細書
【特許文献2】米国特許第5,081,287号明細書
【特許文献3】米国特許第5,723,470号明細書
【特許文献4】特開平6−73036号公報
【特許文献5】特開2003−313169号公報
【特許文献6】特開昭52−266号公報
【非特許文献1】Journal of Chemical Society.,1946,p.39
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、新規なジフルオロアルケン誘導体及びそれを有効成分とする農園芸用有害生物防除剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するために検討した結果、前記式(I)で表わされる新規なジフルオロアルケン誘導体が顕著な農園芸の殺虫、殺ダニ、殺線虫及び殺菌活性を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は次の通りである。
【0009】
第1の発明は、次式(I)で示されるジフルオロアルケン誘導体に関するものである。
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Q及びAは前記と同義である。)
【0012】
第2の発明は、前記の式(I)で示されるジフルオロアルケン誘導体を有効成分とする農園芸用有害生物防除剤に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
前記式(I)で表される本発明の新規なジフルオロアルケン誘導体は、農園芸の有害生物に対し、優れた防除効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
前記式(I)で表されるジフルオロアルケン誘導体における各種置換基は、次の通りである。
【0015】
Qは、低級アルキル基、下記置換基(I-a、I-b、I-c、I-d)を表す。
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Rは水素原子、4−トルエンスルホニル基、ベンジル基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基を表し、Rは水素原子、低級アシル基を表し、Rは低級アルキル基を表す。)
【0018】
ここで、Qにおける低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4の低級アルキル基を挙げることができるが、メチル基が好ましい。
【0019】
におけるベンジル基としては、メチル基、エチル基などの低級アルキル基又はフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子で置換されても良いベンジル基、或いは非置換ベンジル基を挙げることができるが、非置換ベンジル基が好ましい。
【0020】
としては、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、前述の炭素数1〜4の低級アルキル基を挙げることができるが、水素原子が好ましい。
【0021】
としては、水素原子、低級アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基など(なお、これら置換基は、その異性体を含む。))を挙げることができるが、水素原子又はアセチル基が好ましい。
【0022】
における低級アルキル基としては、前述の炭素数1〜4の低級アルキル基を挙げることができるが、エチル基が好ましい。
【0023】
Aはカルボニル基、ヒドロキシメチレン基、低級アシルオキシメチレン基、ベンゾイルオキシメチレン基、ヒドロキシイミノメチレン基、低級アルコキシイミノメチレン基を表す。
【0024】
ここで、低級アシルオキシメチレン基としては、アセチルオキシメチレン基、プロピオニルオキシメチレン基、ブチリルオキシメチレン基など(なお、これら置換基は、その異性体を含む。)を挙げることができるが、アセチルオキシメチレン基が好ましい。
【0025】
ベンゾイルオキシメチレン基としては、前述のハロゲン原子、炭素数1〜4の低級アルキル基で置換されても良いベンゾイルオキシメチレン基、或いは非置換ベンゾイルオキシメチレン基を挙げることができるが、4−クロロベンゾイルオキシメチレン基が好ましい。
【0026】
低級アルコキシイミノメチレン基としては、メトキシイミノメチレン基、エトキシイミノメチレン基、プロポキシイミノメチレン基など(なお、これら置換基は、その異性体を含む。)を挙げることができるが、メトキシイミノメチレン基が好ましい。
【0027】
Qが低級アルキル基の場合、Aとの好ましい組み合わせとしては、1−ヒドロキシエチル基、1−(4−クロロベンゾイルオキシ)エチル基が挙げられる。
【0028】
Qが前記式I-aで表わされる置換基の場合、Aとの好ましい組み合わせとしては、1,3−ジメチル−5−ヒドロキシピラゾール−4−イル−カルボニル基、1,3−ジメチル−5−(4−トルエンスルホニルオキシ)ピラゾール−4−イル−カルボニル基、1,3−ジメチル−5−ベンジルオキシピラゾール−4−イル−カルボニル基、1,3−ジメチル−5−ヒドロキシピラゾール−4−イル−ヒドロキシイミノメチル基が挙げられる。
【0029】
Qが前記式I-bで表わされる置換基の場合、Aとの好ましい組み合わせとしては、ベンゾイル基、α−ヒドロキシベンジル基、α−アセトキシベンジル基、(フェニル)ヒドロキシイミノメチル基、(フェニル)メトキシイミノメチル基が挙げられる。
【0030】
Qが前記式I-cで表わされる置換基の場合、Aとの好ましい組み合わせとしては、ピリジン−3−イル−α−ヒドロキシメチル基が挙げられる。
Qが前記式I-dで表わされる置換基の場合、Aとの好ましい組み合わせとしては、エトキシカルボニルメチルカルボニル基、エトキシカルボニル(アセチル)メチルカルボニル基が挙げられる。
【0031】
以下、本発明の前記式(I)で示されるジフルオロアルケン誘導体(以下、化合物(I)と記載。)の合成法を詳細に述べる。
【0032】
〔合成法1〕
この合成法は、グリニアール試薬である化合物(II)と化合物(III)とを、溶媒中反応させることにより化合物(I)においてQが前述の低級アルキル基、前記置換基(I-b、I-c)であり、Aが前述のヒドロキシメチレン基である化合物(I-I)を得る合成法である。
【0033】
【化5】

【0034】
(式中、Qは、前述の低級アルキル基、前記置換基(I-b、I-c)を表わし、Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【0035】
この合成法で用いられる溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ヘキサンなどの芳香族、脂肪族、又は脂環式の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、或いは前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0036】
溶媒の使用量は、化合物(III)の濃度が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
【0037】
原料化合物である化合物(II)の使用量は、化合物(III)1モルに対して、1〜5モルであるが、1〜1.2モルが好ましい。
【0038】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、−5℃〜10℃が好ましい。
【0039】
反応時間は、前記の溶媒の使用量、温度によって変化するが、通常0.5〜8時間である。
【0040】
グリニアール試薬である化合物(II)は、市販品を使用することができる。
【0041】
化合物(III)は、参考例(1)に記載する次式に示す方法で合成することができる。
【0042】
【化6】

【0043】
〔合成法2〕
この合成法は、化合物(I−I)と化合物(V)とを、溶媒中、塩基の存在下に反応させることにより化合物(I)においてQが前述の低級アルキル基、前記置換基(I-b、I-c)であり、Aが前述の低級アシルオキシメチレン基、ベンゾイルオキシメチレン基である化合物(I-II)を得る合成法である。
【0044】
【化7】

【0045】
(式中、Qは、前述の低級アルキル基、前記置換基(I-b、I-c)を表わし、Rは低級アシル基、ベンゾイル基を表す。)
【0046】
この合成法で用いられる溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ヘキサン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロルエチレンなどの塩素化された又はされていない芳香族、脂肪族、又は脂環式の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド化合物、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシ化合物、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの尿素化合物、スルホラン、或は前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0047】
溶媒の使用量は、化合物(I−I)の濃度が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
化合物(I−I)は、前記合成法1に従って合成し、定法に従って精製したものを用いることができる。
【0048】
塩基の種類としては、特に限定されず、例えば、第3級アミン(トリエチルアミンなど)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)などの有機塩基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機塩基を挙げることができるが、有機塩基が好ましく、更にトリエチルアミンが好ましい。
【0049】
塩基の使用量は、化合物(I−I)1モルに対して1〜5モルであるが、1.2〜2.0モルが好ましい。
【0050】
原料化合物である化合物(V)の使用量は、化合物(I−I)1モルに対して、1〜5モルであるが、1〜1.2モルが好ましい。
ここで化合物(V)は、市販品を使用することができる。
【0051】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、0〜70℃が好ましい。
【0052】
反応時間は、前記の溶媒の使用量、温度によって変化するが、通常0.5〜8時間である。
【0053】
〔合成法3〕
この合成法は、化合物(I―I)を、溶媒中で酸化剤と反応させることにより化合物(I)においてQが前述の低級アルキル基、前記置換基(I-b、I-c)であり、Aが前述のカルボニル基である化合物(I-III)を得る合成法である。
【0054】
【化8】

【0055】
(式中、Qは、前述の低級アルキル基、前記置換基(I-b、I-c)を表す。)
【0056】
この合成法で用いられる酸化剤としては、クロロクロム酸ピリジウム(略称;PCC)や二クロム酸ピリジウム(略称;PDC)などの酸化剤を挙げることができるが、クロロクロム酸ピリジウム(略称;PCC)が好ましい。これらの酸化剤は、市販品を使用できる。
酸化剤の使用量は、化合物(I−I)1モルに対して、1〜5モルであるが、1〜1.5モルが好ましい。
化合物(I−I)は、前記合成法1に従って合成し、定法に従って精製したものを用いることができる。
【0057】
溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ヘキサン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロルエチレンのような塩素化された又はされていない芳香族、脂肪族、又は脂環式の炭化水素類、テトラヒドロフラン、シオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、或は、前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0058】
溶媒の使用量は、化合物(I−I)の濃度が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
【0059】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、室温〜50℃が好ましい。
【0060】
反応時間は、前記の溶媒の使用量、温度によって変化するが、通常0.5〜8時間である。
【0061】
〔合成法4〕
この合成法は、化合物(VI)と化合物(VII)を、溶媒中で塩基の存在下に反応させることにより化合物(I-IV)を得た後、これを転移させて化合物(I)においてQが、Rが水素原子である前記置換基I-aであり、Aが前述のカルボニル基である化合物(I-V)を得る合成法である。
【0062】
【化9】

【0063】
化合物(VI)から化合物(I―IV)の合成で用いられる溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ヘキサン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロルエチレンなどの塩素化された又はされていない芳香族、脂肪族、又は脂環式の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド化合物、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシ化合物、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの尿素化合物、スルホラン、或は前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0064】
溶媒の使用量は、化合物(VI)の濃度が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
【0065】
塩基の種類としては、特に限定されず、例えば、第3級アミン(トリエチルアミンなど)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)などの有機塩基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機塩基を挙げることができるが、無機塩基が好ましく、更に炭酸カリウムが好ましい。
【0066】
塩基の使用量は、化合物(VI)1モルに対して1〜5モルであるが、1.2〜2.0モルが好ましい。
【0067】
原料化合物である化合物(VII)の使用量は、化合物(VI)1モルに対して、1〜5モルであるが、1〜1.2モルが好ましい。
【0068】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、0〜70℃が好ましい。
【0069】
反応時間は、前記の溶媒の使用量、温度によって変化するが、通常0.5〜8時間である。
【0070】
化合物(I―IV)から化合物(I―V)へ、転移させる反応は、特許文献6に記載の方法に準じてアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の存在下に行うことができる。
ここでアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのような炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムのような水酸化物が使用できる。
また、用いられる溶媒の種類としては、イソプロパノール、t−ブタノールのようなアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類が挙げられる。
【0071】
化合物(VI)は、市販品を使用することができる。
【0072】
化合物(VII)は、参考例(2)に記載した次式に示す方法で合成することができる。
【0073】
【化10】

【0074】
〔合成法5〕
この合成法は、化合物(I―V)と化合物(IX)を、溶媒中で塩基の存在下に反応させることにより、化合物(I)においてQは、Rが前述の4−トルエンスルホニル基、又はベンジル基である前記置換基I-aであり、Aがカルボニル基である化合物(I−VI)を得る合成法である。
【0075】
【化11】

【0076】
(式中、Rは、4−トルエンスルホニル基、又はベンジル基を表わす。)
【0077】
この合成法で用いられる溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ヘキサン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロルエチレンのような塩素化された又はされていない芳香族、脂肪族、又は脂環式の炭化水素類、テトラヒドロフラン、シオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド化合物、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシ化合物、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの尿素化合物、スルホラン、或は前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0078】
溶媒の使用量は、化合物(I―V)の濃度が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
化合物(I−V)は、前記合成法4に従って合成し、定法に従って精製したものを用いることができる。
【0079】
塩基の種類としては、特に限定されず、例えば、第3級アミン(トリエチルアミンなど)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)などの有機塩基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機塩基を挙げることができるが、有機塩基が好ましく、更にトリエチルアミンが好ましい。
【0080】
塩基の使用量は、化合物(I―V)1モルに対して1〜5モルであるが、1.2〜2モルが好ましい。
【0081】
原料化合物である化合物(IX)の使用量は、化合物(I―V)1モルに対して、1〜5モルであるが、1〜1.2モルが好ましい。
化合物(IX)は、市販品を使用することができる。
【0082】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、室温〜70℃が好ましい。
【0083】
反応時間は、前記の濃度、温度によって変化するが、通常0.5〜3時間である。
【0084】
〔合成法6〕
この合成法は、化合物(I―VII)と化合物(X)を、溶媒中で塩基の存在下に反応させることにより、化合物(I)においてQが、前記置換基(I―a、I―b)であり、Aが前述のヒドロキシイミニメチレン基、又は低級アルコキシイミノメチレン基である化合物(I−VIII)を得る合成法である。
【0085】
【化12】

【0086】
(式中、Qは、前記置換基(I―a、I―b)を表わし、Rは、水素原子、又は、前述の低級アルキル基を表わす。)
【0087】
この合成法で用いられる溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ヘキサン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロルエチレンなどの塩素化された又はされていない芳香族、脂肪族、又は脂環式の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、水、或は前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0088】
溶媒の使用量は、化合物(I−VII)の濃度が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
化合物(I−VII)は、前記合成法1、3、4又は5に従って合成し、定法に従って精製したものを用いることができる。
【0089】
原料化合物である化合物(X)の使用量は、化合物(I−VII)1モルに対して、1〜5モルであるが、1〜1.2モルが好ましい。
化合物(X)は、市販品を使用することができる。
【0090】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、室温〜70℃が好ましい。
【0091】
反応時間は、前記の濃度、温度によって変化するが、通常0.5〜3時間である。
【0092】
〔合成法7〕
この合成法は、化合物(XI)と化合物(VII)を、溶媒中で塩基の存在下に反応させることにより、化合物(I)においてQが、前記置換基I―dであり、Aがカルボニル基である化合物(I−IX)を得る方法である。
【0093】
【化13】

【0094】
(式中、R、Rは、前述の低級アルキル基を表わす。)
【0095】
この合成法で用いられる溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ヘキサン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロルエチレンなどの塩素化された又はされていない芳香族、脂肪族、又は脂環式の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、或は前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0096】
溶媒の使用量は、化合物(XI)の濃度が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
化合物(XI)は、市販品を使用することができる。
【0097】
塩基の種類としては、特に限定されず、例えば、第3級アミン(トリエチルアミンなど)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)などの有機塩基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機塩基を挙げることができるが、無機塩基が好ましく、更に水素化ナトリウムが好ましい。
【0098】
塩基の使用量は、化合物(XI)1モルに対して1〜5モルであるが、1.2〜2モルが好ましい。
【0099】
原料化合物である化合物(VII)の使用量は、化合物(XI)1モルに対して、1〜5モルであるが、1〜1.2モルが好ましい。
【0100】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、室温〜70℃が好ましい。
【0101】
反応時間は、前記の濃度、温度によって変化するが、通常0.5〜3時間である。
【0102】
〔合成法8〕
この合成法は、化合物(I−IX)を、溶媒中でアセトンシアンヒドリンの存在下に反応させることにより、化合物(I)においてQが、前記置換基I―dであり、Aがカルボニル基である化合物(I−X)を得る方法である。
【0103】
【化14】

【0104】
(式中、R、Rは、前述の低級アルキル基を表わす。)
【0105】
この合成法で用いられる溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ヘキサン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロルエチレンなどの塩素化された又はされていない芳香族、脂肪族、又は脂環式の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、或は前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0106】
溶媒の使用量は、化合物(I−IX)の濃度が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
化合物(I−IX)は、前記合成法7に従って合成し、定法に従って精製したものを用いることができる。
【0107】
アセトンシアンヒドリンの使用量としては、化合物(I−IX)1モルに対して、0.1〜2モルであるが、0.3〜1モルが好ましい。
【0108】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、室温〜50℃が好ましい。
【0109】
反応時間は、前記の濃度、温度によって変化するが、通常、数時間〜数日である。
【0110】
以上のようにして製造された本発明の化合物(I)は、反応終了後、抽出、濃縮、ロ過などの通常の後処理を行い、必要に応じて再結晶,各種クロマトグラフィーなどの公知の手段で適宣精製することができる。
【0111】
〔防除効果〕
本発明の化合物(I)で防除効果が認められる農園芸用有害生物としては、農園芸害虫〔例えば、半翅目(ウンカ類、ヨコバイ類、アブラムシ類、コナジラミ類など)、鱗翅目(ヨトウムシ類、コナガ、ハマキムシ類、メイガ類、シンクイムシ類、モンシロチョウなど)、鞘翅目(ゴミムシダマシ類、ゾウムシ類、ハムシ類、コガネムシ類など)、ダニ目(ハダニ科のミカンハダニ、ナミハダニなど、フシダニ科のミカンサビダニなど)〕、線虫(ネコブセンチュウ、シストセンチュウ、ネグサレセンチュウ、シンガレセンチュウ、マツノザイセンチュウなど)、ネダニ、衛生害虫(例えば、ハエ、カ、ゴキブリなど)、貯蔵害虫(例えば、コクヌストモドキ類、マメゾウムシ類など)、木材害虫(例えば、イエシロアリ、ヤマトシロアリ、ダイコクシロアリなどのシロアリ類、ヒラタキクイムシ類、シバンムシ類、シンクイムシ類、カミキリムシ類、キクイムシ類など)を挙げることができ、また、農園芸病原菌(例えば、コムギ赤さび病、大麦うどんこ病、キュウリべと病、イネいもち病、トマト疫病など)を挙げることができる。
【0112】
〔有害生物防除剤〕
本発明の農園芸用の有害生物防除剤は、特に、殺虫・殺ダニ及び殺線虫効果が顕著であり、化合物(I)の1種以上を有効成分として含有するものである。
化合物(I)は、単独で使用することもできるが、通常は常法によって、担体、界面活性剤、分散剤、補助剤などを配合して(例えば、粉剤、乳剤、微粒剤、粒剤、水和剤、油性の懸濁液、エアゾールなどの組成物として調製して)使用することが好ましい。
【0113】
担体としては、例えば、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、ケイソウ土、ホワイトカーボン、バーミキュライト、消石灰、ケイ砂、硫安、尿素などの固体担体、炭化水素(ケロシン、鉱油など)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、塩素化炭化水素(クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、シクロヘキサノン、イソホロンなど)、エステル類(酢酸エチル、エチレングリコールアセテート、マレイン酸ジブチルなど)、アルコール類(メタノール、n−ヘキサノール、エチレングリコールなど)、アミド化合物(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ジメチルスルホキシド、水などの液体担体、空気、窒素、炭酸ガス、フレオンなどの気体担体(この場合には、混合噴射することができる)などを挙げることがでる。
【0114】
本剤の有害生物への付着、吸収の向上、薬剤の分散、乳化、展着などの性能を向上させるために使用できる界面活性剤及び分散剤としては、例えば、アルコール硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレングリコールエーテルなどを挙げることができる。そして、その製剤の性状を改善するためには、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴムなどを補助剤として用いることができる。
本剤の製造では、前記の担体、界面活性剤、分散剤及び補助剤をそれぞれの目的に応じて、各々単独で、又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0115】
本発明の化合物(I)を製剤化した場合の有効成分濃度は、乳剤では通常1〜50重量%、粉剤では通常0.3〜25重量%、水和剤では通常1〜90重量%、粒剤では通常0.5〜5重量%、油剤では通常0.5〜5重量%、エアゾールでは通常0.1〜5重量%である。
これらの製剤を所望の濃度に希釈して、それぞれの目的に応じて、植物茎葉、土壌、水田の水面に散布するか、又は直接施用することによって各種の用途に供することができる。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を参考例及び実施例によって具体的に説明する。なお、これらは、本発明の範囲を限定するものではない。
【0117】
参考例1〔化合物(III)の合成〕
(1)6,6−ジフルオロ−5−ヘキセナールの合成
クロロクロム酸ピリジウム(30g)を塩化メチレン150mlに加え、氷冷攪拌下に6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン−1−オール(13.6g)を塩化メチレン50mlに溶解した溶液を滴下し、滴下後、室温にて3時間攪拌した。
反応終了後、反応液にセライトを加え、濾過し、濾液を減圧下に溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:塩化メチレン)で精製することにより、6,6−ジフルオロ−5−ヘキセナールを12.4g得た。
【0118】
参考例2〔化合物(IX)の合成〕
(2)6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン酸クロライドの合成
(2−1)6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン酸の合成
6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン−1−オール(11.3g)をアセトン100mlに溶解し、氷冷攪拌下に、ジョーンズ試薬(酸化クロム5.6gと濃硫酸8.7gを水16mlに溶解し調整)を滴下し、5時間攪拌した。次いで、イソプロパノールをジョーンズ試薬のオレンジ色が消えるまで加え、析出した緑色の沈殿を濾別し、沈殿をアセトンで洗浄した。(なお、このジョーンズ試薬による反応は、非特許文献1に記載の方法に準じて行った。)
濾液と洗液を併せ、減圧下にアセトンを留去した。残渣をジエチルエーテルに溶解し、濃度1モル/L(リットル)の塩酸で洗浄した後、濃度1モル/L(リットル)の水酸化ナトリウム水溶液をpH9以上になるまで加えて抽出した。抽出液を氷冷攪拌下に、濃塩酸でpHが2以下になるように調整し、ジエチルエーテルにて抽出した。抽出液を、乾燥後、減圧下にジエチルエーテルを留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1溶出)で精製することによって、無色液体である目的物を7.5g得た。
【0119】
(2−2)6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン酸クロライドの合成
6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン酸(7.5g)を塩化メチレン100mlに溶解し、塩化チオニル(6.8g)を滴下し、2時間加熱還流した。
反応終了後、減圧下に塩化メチレンを留去し、無色液体である目的物を8.1g得た。
本化合物は、精製することなく次の反応に用いた。
【0120】
実施例2〔化合物(I)の合成〕
(1)7,7−ジフルオロ−6−ヘプテン−2−オール(化合物I−1)の合成
6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンアルデヒド(6.7g)を塩化メチレン200mlに溶解し、氷冷攪拌下に濃度3モル/L(リットル)のメチルマグネシュウムブロマイド−ジエチルエーテル溶液(15ml)を滴下し、滴下後1時間攪拌した。
反応終了後、水(20ml)と濃度1モル/L(リットル)の塩酸(50ml)を加え、有機層を分取し、水洗、乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製することによって、無色液体である目的物を6.0g得た。
以下に、その物性を示す。
【0121】

【0122】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.18〜1.22(3H,m)、1.39〜1.59(4H,m)、
1.51(1H,s)、1.99〜2.05(2H,m)、
3.64〜3.82(1H,m)、4.06〜4.21(1H,d−q)
【0123】
(2)(7,7−ジフルオロ−6−ヘプテン−2−イル)−4−クロロ安息香酸エステル(化合物I−4)の合成
7,7−ジフルオロ−6−ヘプテン−2−オール(0.6g)とトリエチルアミン(0.5g)を塩化メチレン10mlに溶解し、冷却攪拌下に4−クロロベンゾイルクロライド(0.6g)の塩化メチレン5ml溶液を滴下し、滴下終了後、室温で2時間攪拌した。
反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、塩化メチレン層を分取し、水洗、乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=30/1)で精製することによって、無色液体である目的物を0.8g得た。
以下に、その物性を示す。
【0124】

【0125】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.33〜1.35(3H,m)、1.45〜1.74(2H,m)、
1.98〜2.05(2H,m)、4.05〜4.20(1H,d−q)、
5.12〜5.18(2H,m)、7.39〜7.98(4H,m)
【0126】
(3)1,3−ジメチル−4−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセノイル)−5−ヒドロキシピラゾール(化合物I−5)の合成
1,3−ジメチル−5−ヒドロキシピラゾール(2.0g)をアセトニトリル60mlに溶解し、炭酸カリウム(2.6g)を加え、2時間加熱還流した。次いで、室温まで冷却し、6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン酸クロライド(2.95g)を滴下し、4時間室温攪拌した。次いで、減圧下にアセトニトリルを留去し、得られた残渣にイソプロパノール10mlを加え、水酸化カルシウム(0.8g)を添加後、2時間加熱還流した。
反応終了後、濃度6モル/L(リットル)の塩酸で酸性とした後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水洗、乾燥後、減圧下に溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=2/1)で精製することによって、淡褐色液体である目的物を3.75g得た。
以下に、その物性を示す。
【0127】

【0128】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.73〜1.80(2H,m)、2.05〜2.12(2H,m)、
2.38(3H,s)、2.67〜2.72(2H,m)、3.58(3H,s)
4.09〜4.19(1H,d−q)、9.0〜11.5(1H,b)
【0129】
(4)5−ベンジルオキシ−1,3−ジメチル−4−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセノイル)ピラゾール(化合物I−6)の合成
1,3−ジメチル−4−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセノイル)−5−ヒドロキシピラゾール(0.5g)とベンジルクロライド(0.27g)を塩化メチレン15mlに溶解し、トリエチルアミン(0.3g)を加え、2時間加熱還流した。
反応終了後、希塩酸で洗浄し、水洗、乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製することによって、淡黄色液体である目的物を0.33g得た。
以下に、その物性を示す。
【0130】

【0131】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.73〜1.81(2H,m)、1.98〜2.07(2H,m)、
2.42(3H,s)、2.70〜2.75(2H,m)、3.39(3H,s)
4.08〜4.17(1H,d−q)、5.16(2H,s)、
7.34〜7.41(5H,m)
【0132】
(5)1−フェニル−6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン−1−オール(化合物I−9)の合成
6,6−ジフルオロ−5−ヘキセナール(6.7g)を塩化メチレン200mlに溶解し、氷冷攪拌下に濃度2モル/L(リットル)のフェニルマグネシュウムブロマイド−テトラヒドロフラン溶液(20g)を滴下し、滴下後1時間攪拌した。
反応終了後、水(20ml)と濃度1モル/L(リットル)の塩酸(50ml)を加え酸性とした後、有機層を分取し、水洗、乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することによって、無色液体である目的物を6.8g得た。
以下に、その物性を示す。
【0133】

【0134】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.40〜1.51(2H,m)、1.72〜1.79(2H,m)、
2.01〜2.06(2H,m)、2.34〜2.39(1H,m)、
4.05〜4.17(1H,d−q)、4.65〜2.70(1H,m)、
7.25〜7.36(5H,m)
【0135】
(6)1−フェニル−6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン−1−オン(化合物I−11)の合成
クロロクロム酸ピリジウム(1.8g)を塩化メチレン10mlに加え、氷冷攪拌下に1−フェニル−6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン−1−オール(1.2g)を塩化メチレン5mlに溶解した溶液を滴下し、滴下後、室温にて3時間攪拌した。
反応液にセライトを加え、濾過し、濾液を減圧下に溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製することにより、無色液体である目的物を1.0g得た。
以下に、その物性を示す。
【0136】

【0137】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.82〜1.89(2H,m)、2.06〜2.13(2H,m)、
2.96〜3.01(2H,m)、4.11〜4.24(1H,d−q)、
7.47〜7.97(5H,m)
【0138】
(7)1−フェニル−6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン−1−オンオキシム(化合物I−16)の合成
1−フェニル−6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン−1−オン(0.45g)をメタノール10mlに溶解し、ヒドロキシルアミン塩酸(0.4g)を水2mlに溶解した溶液を滴下し、滴下後、室温にて5時間攪拌した。
反応終了後、水を加え、酢酸エチルで抽出し、抽出液を、水洗、乾燥後、減圧下溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製することにより、無色液体である目的物を0.4g得た。
以下に、その物性を示す。
【0139】

【0140】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.60〜1.70(2H,m)、2.02〜2.10(2H,m)、
2.80〜2.86(2H,m)、4.09〜4.24(1H,d−q)、
7.37〜7.61(5H,m)、8.52(1H,s)
【0141】
(8)2−アセチル−8,8−ジフルオロ−3−オキソ−7−オクテン酸エチルエステル(化合物I−21)の合成
水素化ナトリウム60%in Oil(0.7g)をn−ヘキサンで洗浄した後、テトラヒドロフラン50mlに懸濁させ、アセト酢酸エチルエステル(2.3g)をゆっくりと滴下した。滴下後、室温で30分攪拌し、6,6−ジフルオロ−5−ヘキセノイルクロライド(3.0g)をテトラヒドロフラン20mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後、室温で3時間攪拌した。反応終了後、氷冷攪拌下、水を加え、酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を、水洗、乾燥後、減圧下溶媒を留去した。
得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することによって、無色液体である目的物を1.7g得た。
以下に、その物性を示す。
【0142】

【0143】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.22〜1.26(3H,m)、1.74〜1.79(2H,m)、
2.01(3H,s)、2.08〜2.13(2H,m)、
2.50〜2.56(2H,m)、4.08〜4.18(3H,m)、
5.59(1H,s)
【0144】
(9)8,8−ジフルオロ−3−オキソ−7−オクテン酸エチルエステル(化合物I−23)の合成
2−アセチル−8,8−ジフルオロ−3−オキソ−7−オクテン酸エチルエステル(0.7g)をテトラヒドロフラン50mlに溶解し、アセトンシアンヒドリン(0.1g)を加え、室温で1日攪拌した。反応液に、水を加え、酢酸エチルで抽出し、水洗、乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することによって、無色液体である目的物を0.5g得た。
以下に、その物性を示す。
【0145】

【0146】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.27〜1.31(3H,m)、1.69〜1.75(2H,m)、
1.97〜2.04(2H,m)、2.54〜2.59(2H,m)、
3.43(2H,s)、4.08〜4.23(3H,m)
【0147】
(10)表1中のその他の化合物(I)の合成
前記(1)〜(9)に記載の方法に準じて、表1及び表2中のその他の化合物(I)を合成した。
【0148】
以上のように合成した化合物(I)及びそれらの物性を表1及び表2に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【0151】
実施例2〔製剤の調製〕
(1)粒剤の調製
化合物(I)5重量部、ベントナイト35重量部、タルク57重量部、ネオレックスパウダー(商品名;花王株式会社製)1重量部及びリグニンスルホン酸ナトリウム2重量部を均一に混合し、次いで少量の水を添加して混練した後、造粒、乾燥して粒剤を得た。
【0152】
(2)水和剤の調製
化合物(I)10重量部、カオリン70重量部、ホワイトカーボン18重量部、ネオレックスパウダー(商品名;花王株式会社製)1.5重量部及びデモール(商品名;花王株式会社製)0.5重量部を均一に混合し、次いで粉砕して水和剤を得た。
【0153】
(3)乳剤の調製
化合物(I)20重量部及びキシレン70重量部に、トキサノン(商品名;三洋化成工業製)10重量部を加えて均一に混合し、溶解して乳剤を得た。
【0154】
(4)粉剤の調製
化合物(I)を粉5重量部、タルク50重量部及びカオリン45重量部を均一に混合して粉剤を得た。
【0155】
実施例3〔効力試験〕
(1)サツマイモネコブセンチュウに対する効力試験
96穴プレートの各ウエルに、実施例2の(2)に準じて調製した表1及び表2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水で各々30ppmになるように希釈した薬液を入れ、各ウエルにサツマイモネコブセンチュウの2期幼虫約100頭を放った。
次に、25℃の定温室に放置し、2日後に顕微鏡下(40倍視野)で生死虫数を数えて観察して殺センチュウ率を求めた。
殺センチュウ効果の評価結果は、殺センチュウ率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−5、I−7、I−13、I−19、I−21、I−23が、Aの殺センチュウ活性を示した。
【0156】
(2)ハスモンヨトウに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び表2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01重量%)を含む)で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液中にダイズ本葉をそれぞれ30秒間浸漬し、それぞれプラスチックカップに入れた。風乾後、各カップにハスモンヨトウ2齢幼虫10頭を放ち,蓋をして25℃の低温室に放置して、2日後に生死虫数を数えて死虫率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−21が、Aの殺虫活性を示した。
【0157】
(3)コナガに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び表2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01重量%)を含む)で該化合物が300ppmになるように希釈し、これらの薬液中にキャベツ葉片(5×5cm)を30秒間浸漬し、それぞれプラスチックカップに1枚ずつ入れて風乾した。各カップにコナガ3齢幼虫10頭を放って蓋をし、25℃低温室に放置し、2日後に生死虫数を数えて死虫率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−5、I−13、I−21がAの殺虫活性を示し、I−1、I−9、I−15、I−23が、Bの殺虫活性を示した。
【0158】
(4)トビイロウンカに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び表2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01重量%)を含む)で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液中にイネ稚苗をそれぞれ30秒間浸漬し、風乾した後、ガラス円筒に挿入した。各ガラス円筒内にトビイロウンカ(4齢幼虫)10頭を放ち、多孔質の栓をし、25℃の定温室に放置し、4日後にガラス円筒内の生死虫数を数えて殺虫率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−1、I−4、I−5、I−6、I−7、I−8、I−13、I−19、I−21、I−23がAの殺虫活性を示した。
【0159】
(5)ツマグロヨコバイに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び表2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01重量%)を含む)で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液中にイネ稚苗をそれぞれ30秒間浸漬し、風乾した後、ガラス円筒に挿入した。各ガラス円筒内にツマグロヨコバイ(4齢幼虫)10頭を放ち、多孔質の栓をし、25℃の定温室に放置し、4日後にガラス円筒内の生死虫数を数えて殺虫率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−5、I−13、I−19、I−21、I−23がAの殺虫活性を示し、I−1、I−4、I−6、I−7、I−8、I−9がBの殺虫活性を示した。
【0160】
(6)ヒラタコクヌストモドキに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び表2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01%)を含む)で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液1mlをそれぞれプラスチックカップ内に敷いたろ紙(直径7.8cm)全体に含浸させた後、風乾した。
各カップ内にヒラタコクヌストモドキ成虫10頭を放って蓋をし、25℃の定温室に放置し、5日後に生死虫数を数えて殺虫率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−21がAの殺虫活性を示し、I−4がBの殺虫活性を示した。
【0161】
(6)ナミハダニ雌成虫に対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び表2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01%)を含む)で該化合物が300ppmになるように希釈し、これらの薬液に10頭のナミハダニ雌成虫を寄生させたインゲン葉片(直径20mm)を15秒間浸漬して風乾した。これらの葉片を25℃の定温室に放置し、3日後に各葉片における生死虫数を数えて殺ダニ率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−1、I−4、I−5、I−6、I−7、I−8、I−9、I−13、I−19、I−21、I−23がAの殺虫活性を示した。
【0162】
(7)ナミハダニ殺卵効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び表2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01%)を含む)で該化合物が300ppmになるように希釈し、これらの薬液にインゲン葉片(直径20mm)(5頭のナミハダニ雌成虫を24時間寄生産卵させた後に、成虫を除去したもの)を15秒間浸漬して風乾した。これらの葉片を25℃の定温室に放置し、7日後に各葉片における孵化幼虫数を数えて殺卵率を求めた。
殺卵効果の評価結果は、殺卵率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−1、I−4、I−5、I−6、I−7、I−8、I−9、I−13、I−19、I−21、I−23が、Aの殺卵活性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)で示されるジフルオロアルケン誘導体。
【化1】

(式中、Qは、低級アルキル基、下記(I-a、I-b、I-c、I-d)を表し、Aはカルボニル基、ヒドロキシメチレン基、低級アシルオキシメチレン基、置換若しくは非置換のベンゾイルオキシメチレン基、ヒドロキシイミニメチレン基、低級アルコキシイミノメチレン基を表す。)
【化2】

(式中、Rは水素原子、4−トルエンスルホニル基、ベンジル基を表し、R水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基を表し、Rは水素原子、低級アシル基を表し、Rは低級アルキル基を表す。)
【請求項2】
請求項1の式(I)で示されるジフルオロアルケン誘導体を有効成分とする農園芸用有害生物防除剤。

【公開番号】特開2006−76888(P2006−76888A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259260(P2004−259260)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】