説明

ジプラシドン製剤

少なくとも(a)1種のジプラシドン化合物と(b)少なくとも賦形剤成分とを含有するジプラシドン製剤であって、賦形剤成分(b)は、(i)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とグリセロールの1種または複数のモノエステル、ジエステルまたはトリエステル、またはそれらの混合物;および/または(ii)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とポリC2〜C3アルキルグリコールの1種または複数のモノエステルまたはジエステル、またはそれらの混合物;および/または(iii)TPGS(トコフェロール-コハク酸-ポリエチレングリコール)の少なくとも1種を含み;この成分(b)は、任意選択で、(iv)遊離していてもよいポリC2〜C3アルキルグリコール;(v)遊離していてもよいグリセロール;および(vi)12〜24個の炭素原子を有する遊離していてもよい脂肪酸;ならびに(vii)それらの混合物を含んでよく;前記製剤は、更に(c)アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含み、なお更に(d)各アルキル基および各ヒドロキシアルキル基が独立して1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1種のヒドロキシルアルキルアルキルセルロースを含む、ジプラシドン製剤。前記製剤においては、前記製剤の溶出性および生物学的利用能の向上が達成される。また、副作用プロファイルの減少、ならびに更なる適応症における有効性および有用性の増大についても開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
該当せず。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当せず。
【0003】
本発明は、ジプラシドンおよびその塩の分野に関し、ならびに、その溶解度を増大させることと、製剤(医薬製剤を含む)におけるジプラシドンの溶出速度を高めることとに関する。
【背景技術】
【0004】
ジプラシドン(一塩酸塩一水和物として)は、商品名GEODONの下でPfizerから入手可能である。その遊離塩基は、以下の構造:
【0005】
【化1】

【0006】
を有し、ジプラシドンは、かなり低い溶解度を有し、US4,831,031(参照により本明細書に全体として組み込まれる)においてクレームされている。US6,150,366(参照により本明細書に全体として組み込まれる)においては、ジプラシドン製剤中の平均粒径を85ミクロン未満に、好ましくは5〜30ミクロン未満に限定することにより、製剤のAUCまたはCmaxは125%超となっており、このことは、平均粒径が約85ミクロンであること以外は同じである製剤において認められた。これらの試験において、溶出試験は、75rpmで回転するパドルを有するUSP2装置を使用して、2w/v%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する900mLの水性リン酸一ナトリウム中、pH7.5で行われた。45分間以内に、70%のジプラシドンが溶出した。
【0007】
ジプラシドンの溶解度を向上させようとする他の手段としては、US5,312,925に示されるようにジプラシドンを一水和物、半水和物および無水物として提供する手段;US5,935,960のようにプロドラッグを調製する手段;US6,110,918およびUS6,245,765のようにメシル酸ジプラシドン水和物を調製する手段;US6,232,304およびUS6,399,777のようにジプラシドンとシクロデキストリンとの種々の包接錯体を調製する手段が挙げられる。残念ながら、より大きな水溶性を得る今までのそれらの方法には、重大な障害または望ましくない特性があるが、一方で他の方法では、製剤の安定性を犠牲にして溶解度をわずかに増大させることができるだけである。最近公開されたWO/2005/123086においては、WO/2005/123086のものではない比較製剤における平均粒径が85ミクロン以下であること以外は同じ製剤と同じまたは向上した生物学的利用能を有する、平均粒径が少なくとも90ミクロンのジプラシドンの製剤について考察されている。(上記の特許および特許出願の全ては、参照により本明細書に全体として組み込まれる。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 4,831,031
【特許文献2】US 6,150,366
【特許文献3】US 5,312,925
【特許文献4】US 5,935,960
【特許文献5】US 6,110,918
【特許文献6】US 6,245,765
【特許文献7】US 6,232,304
【特許文献8】US 6,399,777
【特許文献9】WO/2005/123086
【特許文献10】米国出願第11/282,507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、ジプラシドンまたはその塩(その無水物、水和物または他の溶媒和物等)の水溶性を増大させ、それにより胃腸環境における溶出速度を増加させるための系を提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、本発明の要件がない場合における同じ製剤よりも増大した水溶性および高められた溶出性を示すジプラシドンまたはその塩(その無水物、水和物または他の溶媒和物等)のための製剤を提供することである。
【0011】
本発明の更なる他の目的は、成分の内の1種または複数がない場合における同じ製剤よりも、ジプラシドン(またはその医薬として許容し得る塩)(その無水物、水和物または他の溶媒和物等)の水溶性の相乗的向上および高められた溶出性を示すジプラシドンまたはその塩(その無水物、水和物または他の溶媒和物等)のための賦形剤の組合せを含む可溶化系を提供することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、水、模擬胃液(Simulated Gastric Fluid:SGF)および/または模擬腸液(Simulated Intestinal Fluid:SIF)におけるジプラシドン(またはその医薬として許容し得る塩)(その無水物、水和物または他の溶媒和物等)の溶出性を高めるために賦形剤の組合せを含む可溶化系を含有するジプラシドンまたはその塩(その無水物、水和物または他の溶媒和物等)の製剤の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の更に他の目的は、ジプラシドン応答性疾患の治療における本発明の製剤の使用方法を提供することである。
【0014】
本発明のなお更なる目的は、比較対象のGEODON製剤よりも活性の低い薬剤を有する製剤によってGEODONに対して治療学的同等性を達成することである。
【0015】
本発明の更に他の目的は、ジプラシドン(またはその医薬として許容し得る塩)の1日1回の剤形を提供することである。
【0016】
本発明のなお更なる目的は、食品と共に服用した場合、食品がない状態で服用した場合と実質的に同様の薬物動態プロファイルおよび/または溶出プロファイルおよび/または吸収プロファイルを有する、ジプラシドン(またはその医薬として許容し得る塩)の製剤を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、上記目的の内の少なくとも1つを満たすジプラシドンの剤形を提供することであって、前記剤形は、錠剤、カプセル剤、分散可能な錠剤、経口崩壊錠剤、経口投与用懸濁剤、注射剤形または経皮貼付剤から選択される。
【0018】
本発明の更に他の目的は、実質的に治療学的に同等なGEODONと比較して、本発明の製剤による療法における副作用のレベルの低下が達成されるように、市販されているGEODONと実質的に治療学的同等性を有するが、活性薬剤の量がより少ないジプラシドン(またはその医薬として許容し得る塩)の製剤を提供することである。
【0019】
本発明のなお更なる目的は、当業者によって理解される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらのおよび他の、本発明の目的は、(a)少なくとも1種のジプラシドン化合物と(b)少なくとも賦形剤成分とを含有するジプラシドン製剤であって、
前記賦形剤成分(b)は、
(i)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とグリセロールの1種または複数のモノエステル、ジエステルまたはトリエステル、またはそれらの混合物;および/または
(ii)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とポリC2〜C3アルキルグリコールの1種または複数のモノエステルまたはジエステル、またはそれらの混合物;および/または
(iii)ビタミンE TPGS(ビタミンEトコフェロール-コハク酸-ポリエチレングリコール)
の少なくとも1種を含み;
この成分(b)は、
(iv)遊離していてもよいポリC2〜C3アルキルグリコール;
(v)遊離していてもよいグリセロール;および
(vi)12〜24個の炭素原子を有する遊離していてもよい脂肪酸;ならびに
(vii)それらの混合物
を場合によって含んでよく;
前記製剤は、更に
(c)アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含み、なお更に(d)各アルキル基および各ヒドロキシアルキル基が独立して1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1種のヒドロキシルアルキルアルキルセルロースを含む、ジプラシドン製剤
によって達成され得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、(a)少なくとも1種のジプラシドン化合物と(b)少なくとも賦形剤成分との製剤中に含むことによって、水溶性が高められたジプラシドン(その医薬として許容し得る塩、水和されたものかまたは溶媒和されたものかにかかわらず)(以下「ジプラシドン化合物」)であって、
前記賦形剤成分(b)は、
(i)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とグリセロールの1種または複数のモノエステル、ジエステルまたはトリエステル、またはそれらの混合物;および/または
(ii)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とポリC2〜C3アルキルグリコールの1種または複数のモノエステルまたはジエステル、またはそれらの混合物;および/または
(iii)ビタミンE TPGS(ビタミンEトコフェロール-コハク酸-ポリエチレングリコール)
の少なくとも1種を含み;
この成分(b)は、
(iv)遊離していてもよいポリC2〜C3アルキルグリコール;
(v)遊離していてもよいグリセロール;および
(vi)12〜24個の炭素原子を有する遊離していてもよい脂肪酸;ならびに
(vii)それらの混合物
を場合によって含んでよく;
前記製剤は、更に
(c)アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含み、なお更に(d)各アルキル基および各ヒドロキシアルキル基が独立して1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1種のヒドロキシルアルキルアルキルセルロースを含む。
これらの製剤は、限定されるものではないが、医薬剤形技術分野で一般に知られている結合剤、充填剤、崩壊剤(例えば、限定されるものではないが、クロスカルメロース、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム)、潤滑剤(例えば、限定されるものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸)、加工助剤(例えば、限定されるものではないが、流動助剤(例えばタルク)、種々の加圧助剤(例えば非吸湿性糖(例えば、限定されないが、ラクトース)、流動性を加えるものとして医薬技術分野で知られているまたは加圧助剤である糖アルコール)、加工助剤(例えば、限定されるものではないが、マンニトール、キシリトール、ソルビトール))、着色剤等、およびそれらの混合物を含む他の医薬として許容し得る賦形剤を、更に任意選択で含有することができる。好ましくは、前記製剤の一実施形態は、成分(b)(i)および(b)(ii)の混合物を含有し、任意選択で更に、成分(b)(iv)〜(b)(vii)の内の1種または複数を含有する。最も好ましくは、成分(b)(i)、(b)(ii)および任意選択で(b)(iv)〜(b)(vii)のこの混合物は、Aventisから入手可能なGelucireの名前で、商業的に入手可能である。別の実施形態は、成分(b)として(b)(iii)を有する。なお他の実施形態は、上記の(b)(i)および(b)(ii)から選択される少なくとも1種の成分と共に(b)(iii)を含有する。好ましい実施形態は、成分(b)として、Gelucire混合物、TPGSまたは前記2種の混合物を含有する。
【0022】
前記ジプラシドン化合物は、ジプラシドン遊離塩基またはその医薬として許容し得る酸付加塩であり、前記酸付加塩は、無機または有機のいずれかの医薬として許容し得る酸あるいはそれらの混合物とのジプラシドンの塩であってよい。医薬として許容し得る有機酸としては、カルボン酸やスルホン酸(例えば、限定されるものではないが、乳酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、ギ酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸)がある。医薬として許容し得る無機酸は、とりわけ医薬製剤技術分野で知られている塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸(またはその一塩基性または二塩基性)、硫酸(またはその一塩基性重硫酸)であってよい。幾つかの製剤において、ジプラシドン化合物は、かかる有機酸付加塩と、ジプラシドン遊離塩基またはジプラシドン無機酸付加塩のいずれかとの混合物、あるいはジプラシドン遊離塩基と、ジプラシドン有機酸付加塩と、ジプラシドン無機酸付加塩との3種全ての混合物、最も好ましくは、ジプラシドン塩酸塩とジプラシドン有機酸付加塩との混合物である。前記混合物は、ジプラシドン無機酸付加塩を有機酸と反応させることによって、または、当業者が理解する他の方法によって、またはジプラシドンの種々の酸付加塩および/または塩基を物理的に混合することによって、インサイチューで生じ得る。
【0023】
GELUCIRE系組成物は、両親媒性特性の不活性半固体蝋状物質であり、様々な物理学的性質を有するものが入手可能である。その組成物は、自然界で界面活性であり、ミセル、微視的胞子または微視的小胞を形成する水性媒質中で分散または可溶化する。その組成物は、その融点/HLB価により同定される。融点は摂氏温度で表され、HLB(親水性親油性バランス)は、0から約20に及ぶ数値尺度である。より低いHLB価は、より親油性および疎水性の物質を示し、より高い価は、より親水性および疎油性の物質を示す。水または油性物質に対する化合物の親和性が決定され、そのHLB価は、実験的に割り当てられる。融点および/またはHLB価の所望の特性を達成するために、異なるグレードのGELUCIRE賦形剤の1種または混合物が選択され得る。GELUCIRE組成物の化学作用に関して、GELUCIRE組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)との天然油のアルコリシス反応によって調製されるポリグリコール化グリセリドである。それは、長鎖(C12〜C18)脂肪酸のグリセリドのモノエステル、ジエステルおよび/またはトリエステルの混合物、および長鎖(C12〜C18)脂肪酸のPEG(モノおよび/またはジ)エステルであり、遊離ポリエチレングリコール(PEG)および遊離グリセロールを含むことができる。GELUCIRE組成物は、グリセロールの脂肪酸エステルおよびPEGエステルとして、または、ポリグリコール化グリセリドとして、本明細書において一般に記載される。GELUCIRE組成物の大きな群は、約33℃から約64℃、最も一般的には約35℃から約55℃の広範囲に亘る融点と、約1から約14、最も一般的には約7から約14の多様なHLB価とを特徴とする。例えば、このグレードに対して、GELUCIRE50/13は、約50℃の融点および約13のHLB価を示し、一方でGELUCIRE44/14は、約44℃の融点および約14のHLB価を示す。GELUCIREまたはGELUCIRE組成物の混合物の融点/HLB価の適切な選択によって、例えば即時的放出、持続的放出等の特定の機能のために必要とされる送達特性が得られることになる。GELUCIRE50/13は、グリセロールの脂肪酸(C16およびC18の大部分)エステルと、脂肪酸のPEGエステル(C16およびC18の大部分)と、遊離PEGとを含む。本発明に用いられる特に好ましいGelucireは、Gelucire44/14であり;別のものは、Gelucire50/13である。
【0024】
Gelucire物質を使用しない場合、存在するポリアルキレングリコールの少なくとも1種の長鎖脂肪酸モノエステルまたは長鎖脂肪酸ジエステル、および/または、存在するグリセロールの少なくとも1種のモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステル、好ましくは両方が存在する限り、その代わりにその個々の成分を使用することが可能である。遊離グリセロールおよび遊離ポリアルキレングリコールは、所望により任意選択で各々存在するか、または、存在しないが、一般に、エステルが作製される各場合においてエステル化反応混合物から分離されることなく存在する。長鎖脂肪酸のポリアルコキシル化エステルは、ポリエトキシ基またはポリプロポキシ基または混合ポリ(エトキシ/プロポキシ)基を有するものから選択される。混合ポリ(エトキシ/プロポキシ)基は、これらの基のランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである可能性があり、10アルコキシ単位と同程度短いものから40アルコキシ単位まで(即ち、この部分の分子量は約840から約3320)であり得る。ブロックコポリマーにおいて、ブロックは、ポロキサマー(ポリエチレンオキシドブロックで囲まれたポリプロピレンオキシドブロック)または逆のポロキサマー(ポリプロピレンブロックで囲まれたポリエチレンオキシドブロック)のように、ランダムであっても構築されてもよい。好ましくは、ポリアルキレンオキシドはモノマーである。最も好ましくは、ポリアルコキシル化部分は、ポリエトキシ基であり、好ましくはその約15から約20のアルコキシ単位(即ち、この部分の分子量が約1260から約1660)、より好ましくは約17から約18の反復単位(即ち、分子量約1500)である。長鎖脂肪酸成分は、好ましくは、少なくとも12個の炭素原子および最高24個の炭素原子を有する、飽和、モノ不飽和、ジ不飽和またはポリ不飽和等の脂肪酸であり、好ましくは、12、14、16、18、20、22および24の不飽和脂肪酸およびモノ不飽和脂肪酸を含む。個々の純粋化合物を用いることができるが、より可能性があり、かつ、より好ましくは、特にこれらの化合物の多くが純粋形態では経済的に入手可能ではないことから、これらの定義の範囲内の種々のエステルの混合物が用いられることになる。例えば、多くの脂肪酸は、脂肪酸の混合物として安価な形態で入手可能であり、それ
は次いで、特定のポリアルキレングリコールによって、またはより可能性があるのは、ある範囲の分子量を有する特定のポリアルキレングリコールの混合物によってエステル化される。したがって、長鎖脂肪酸のポリアルキレングリコールエステルは、ある範囲のポリアルキレングリコール部分の分子量と、単一の製剤において存在する脂肪酸成分の範囲とを有する可能性がある。本発明において使用され得る脂肪酸エステルに対する代替としては、TPGSがある。これは、ジエステル化するコハク酸であり;一方でトコフェロールにエステル化され、もう一方でポリエチレングリコールにエステル化される。また、コハク酸の代わりに、同様にエステル化する他の医薬として許容し得る二酸(例えば、限定されるものではないが、リンゴ酸やマレイン酸)を用いる同様の物質も許容し得る。TPGSのポリエチレングリコール基は、多種多様な大きさであり得るが、典型的にはポリエチレングリコール1000である。分子のこの部分について、所望により、より小さいまたはより大きな大きさが可能であるが、トコフェロール化合物を使用する場合、TPGS1000を使用することが好ましい。TPGSまたはその類似体を使用する場合、TPGSまたはその類似体は、上記に記載した脂肪酸ジエステル成分と同じ量の範囲で使用される。
【0025】
界面活性剤成分は、アニオン性または非イオン性のいずれかあるいはそれらの混合物であり、非常に好ましくはアニオン性である。適切なアニオン性界面活性剤は、任意のアニオン性界面活性剤であってよく、(水溶液中に)少なくとも1種のイオン化された基、-COO-;-SO3-;-PO3H2-,-PO3H-2;-PO3-3を有する界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に、これらの界面活性剤は、存在する他の荷電基を有さない。これらの荷電基は、多種多様な親油性部分上にペンダントとなり、その親油性部分としては、アルキル、アリール、ヘテロアリール、非アリールカルボシクリル、非アリールヘテロシクリル、ポリアルコキシ、アルキルポリアルコキシ等が挙げられる(様々な方法で非置換または置換であってよい5〜7員環の環、および他の環に融合してよい環)。アニオン性界面活性剤は、典型的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属および/またはアンモニウムイオンのイオン性塩として使用され、それらの混合物もまた適切である。好ましくは、ナトリウム塩としてイオン性界面活性剤が使用される。最も非常に好ましいアニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。別のものとしては、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムがある。この種の他の例示的な界面活性剤としては、硫酸化脂肪アルコールまたはリン酸化脂肪アルコール、対応する脂肪アルコール-PEG-サルフェートまたは脂肪アルコール-PEG-ホスフェートがあり、ここで基を遮断するPEGは、所望により種々の長さである。更なるアニオン性界面活性剤としては、ヒドロキシ酸のヒドロキシル基末端にエステル化する脂肪酸が挙げられ、そのカルボン酸は、その塩の形態である。別の変種としては、二酸(例えば、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸等)の一方の末端にエステル化する脂肪アルコールがあり、もう一方の末端は、塩の形態の遊離カルボキシ基である。対応する種類の硫酸化物質またはリン酸化物質は、本技術分野で知られており、本明細書における開示から当業者に明らかであろう。これらの多くは、洗剤の技術分野において既知であり、多種多様な原料から商業的に入手可能である。医薬として許容し得るこれらの各々は、本発明における使用に適切である。更に、ホスフェートを使用する場合、単一のリン酸基は、2個の脂肪アルコール基
を結合させる可能性があり、更に、(RO)2P(O)-O-のように、アニオン性界面活性剤に必要な負電荷を有し得る。非イオン性界面活性剤は、限定されるものではないが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのコポリマー(例えば、それらのランダムコポリマー、またはブロックコポリマー(例えばポロキサマー(ポリエチレングリコールブロックにより各側面に位置するポリプロピレンブロック、Lutrol F-127=ポロキサマー407が好ましいポロキサマーである)または逆のポロキサマー(ポリプロピレンブロックにより各側面に位置するポリエチレンブロック)))、ポリソルベート(典型的にはTWEENの名称で入手可能)等の物質であり得る。更に、非イオン性界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤中の電荷を担持する酸素が更なる脂肪基(即ち、12〜24個の炭素原子を有する)にエステル化すること以外は、アニオン性界面活性剤と同様の物質が挙げられる。したがって、アニオン性界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムは、その非イオン性類似体としてジラウリルサルフェートを有し、アニオン性界面活性剤のモノラウリルホスフェートおよびジラウリルホスフェートは、その非イオン性類似体としてトリラウリルホスフェートを有する。また、これらの各々は、医薬として許容し得る限り、本発明のための非イオン性界面活性剤としての使用に適切である。
【0026】
前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロース成分は、ヒドロキシC1〜C3アルキル-C1〜C3アルキルセルロースであり、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルプロピルセルロースを含み、最も好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの粘度グレード(25℃の水の2%溶液で測定)は、好ましくは約1〜約50cpsの範囲であり、好ましくは約10cps未満、より好ましくは約5cps未満、最も好ましくは約3cpsである。最も、好ましいヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、3cpsのヒドロキシプロピルメチルセルロースである。これらは、多種多様の原料から商業的に入手可能である。
【0027】
更に、他の賦形剤が存在してよいが、必ずしも必要ではない。その賦形剤としては、限定されるものではないが、充填剤(例えば、限定されるものではないが、糖類(単糖類および二糖類ならびに対応する糖アルコール(例えば、ラクトース、マンノース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等)を包含する));結合剤(例えば、限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コーンスターチ、予めゼラチン化されたコーンスターチ);分散剤(例えば、限定されるものではないが、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム);潤滑剤(例えば、限定されるものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、グリセリルビハネート);着色剤、加工助剤、被覆剤等が挙げられる。
【0028】
存在する成分の量に対して、前記成分は、広範囲に亘る比で存在することができる。特定の剤形において、前記成分は、
(a)10〜120重量部のジプラシドンまたはその塩;
(b)20〜240重量部の(i)ポリアルキレングリコールの脂肪酸モノエステルおよび/または脂肪酸ジエステル、および/または(ii)脂肪酸およびグリセリンのモノエステル、ジエステルおよび/またはトリエステル、および(iii)任意選択で、ポリアルキレングリコールおよび/または遊離グリセロール;
(c)20〜360重量部のヒドロキシアルキルアルキルセルロース;および
(d)20〜240重量部のアニオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤である。
【0029】
より好ましい実施形態において、本発明は、
約20重量部のジプラシドン(または対応する量のジプラシドン塩)、
約30〜50重量部のGelucire44/14、
約30〜50重量部のラウリル硫酸ナトリウム、および
約40〜80重量部のヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する製剤に関する。
【0030】
なおより非常に好ましい実施形態において、本発明は、
約20重量部のジプラシドン(または対応する量のジプラシドン塩)、
約40重量部のGelucire44/14、
約40重量部のラウリル硫酸ナトリウム、および
約60重量部のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むジプラシドン(または対応する量のジプラシドン塩)含有製剤に関する。
【0031】
更により非常に好ましい実施形態において、本発明は、
約20重量部のジプラシドン(または対応する量のジプラシドン塩)、
約40重量部のGelucire44/14、
約60重量部のPEG6000、
約40重量部のラウリル硫酸ナトリウム、および
約60重量部のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むジプラシドン(または対応する量のジプラシドン塩)含有製剤に関する。
【0032】
最も非常に好ましい実施形態において、本発明は、
約20重量部のジプラシドン(または対応する量のジプラシドン塩)、
約40重量部のGelucire44/14、
約60重量部のPEG6000、
約40重量部のラウリル硫酸ナトリウム、
約60重量部のヒドロキシプロピルメチルセルロース、および
約50重量部のクロスカルメロースナトリウムを含むジプラシドン(または対応する量のジプラシドン塩)含有製剤に関する。
【0033】
存在するジプラシドンの量(遊離塩基として算出)に対して、各々、上記量の幅広い範囲内で、脂肪酸エステル成分(b)は、ジプラシドン(ジプラシドン遊離塩基として算出)に対して、24:1〜1/3:1、好ましくは12:1〜1:1、より好ましくは6:1〜1.5:1、更により好ましくは約2:1の範囲で存在する。界面活性剤成分(c)は、既に示された幅広い範囲内で、ジプラシドン(ジプラシドン遊離塩基として算出)に対して、24:1〜1/3:1、好ましくは12:1〜1:1、より好ましくは6:1〜1.5:1、更により好ましくは約2:1の範囲で好ましくは存在する。ヒドロキシアルキルアルキルセルロース成分(d)は、既に示された幅広い範囲内で、ジプラシドン(ジプラシドン遊離塩基として算出)に対して、36:1〜1/6:1、好ましくは18:1〜1:1、より好ましくは12:1〜1.5:1、更により好ましくは約3:1〜約2:1の範囲で好ましくは存在する。
【0034】
本発明に使用するためのジプラシドンは、上記に示される特許の内の少なくとも1つにより部分的に明示されるように、本技術分野において示される方法の内のいずれかで調製され得る。しかしながら、ジプラシドンを作製する特に好都合な方法は、非結晶ジプラシドン化合物を得るために凍結乾燥法を利用することである。特に有用な方法は、出願中の特許出願(参照により本明細書に組み込まれる、2005年11月18日出願された米国出願第11/282,507号)に開示されている。他の凍結乾燥法手法もまた、本発明の精神から逸脱することなく使用され得る。
【0035】
典型的な錠剤またはカプセル剤として本発明を製剤する際には、任意の補助的なポリアルキレングリコールと共に脂肪酸エステル成分(b)および/またはビタミンE TPGS成分を加温して、それらの成分を融解させる。この融解物を、活性薬剤と、その後崩壊剤と混合する。その混合物を冷却し、固化させる。その塊を、界面活性剤成分と共に研和し、次いでヒドロキシアルキルアルキルセルロースと混合する。その途中のいずれの時点においても、所望により、他の任意の成分を添加することができる。次いで、潤滑剤、着色剤および他の補助的な任意の物質を添加することが可能であり、所望により、カプセル中に顆粒剤を充填することができる。あるいは、顆粒剤を錠剤に圧縮することができる。任意選択で、上記の代わりに、ジプラシドン、脂肪酸エステルおよび/またはTPGS成分(b)を含有する融解物を溶媒で希釈し、不活性球体上、好ましくは不活性糖球体上に噴霧乾燥または噴霧のいずれかを行うことができる。次いで、噴霧乾燥物質または乾燥された投入糖球体を、界面活性剤成分(c)およびヒドロキシアルキルアルキルセルロース成分(d)と混合することができる。いずれにせよ、前記混合物は、カプセル中に充填されるか、もしくは錠剤に圧縮され、あるいは、経口投与、非経口投与または局所投与のために溶解するための、または、経皮剤形に含有させるための、経口懸濁剤または粉剤等の形態の再組成のための分散可能粉剤として使用され得る。噴霧乾燥物質は、崩壊剤および水溶性賦形剤と共に造粒することが可能であり、また、錠剤が口中で保持される際に口中で速やかに分散するように錠剤中に圧縮することが可能である。速やかに崩壊する錠剤は、香料および糖類または味覚遮蔽賦形剤を含有してよい。あるいは、経皮的に薬剤を送達するために、軟膏剤またはローション剤または貼付剤のいずれかとして、ジプラシドン、脂肪酸成分および/またはTPGSを含有する融解物を調製することができる。
【0036】
別の好ましい一実施形態においては、不活性球体上、一般に不活性糖球体上に、少なくともジプラシドン化合物、脂肪酸エステルおよび/またはTPGS成分(b)、アニオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤(c)、およびヒドロキシアルキルアルキルセルロース成分(d)を有する製剤を噴霧して、前記製剤が前記球体上または前記球体に投入される。これらの実施形態において、必要とされる成分(製剤の溶解のために使用される溶媒を除く)ならびに成分の量および成分間の比は、前に記載した通りである。一般に、前記成分は、使用される溶媒または溶媒混合液中に界面活性剤と共にヒドロキシアルキルアルキルセルロースを溶解することによって調製される。次いで前記溶液に、製剤における任意のポリアルキレンオキシド(例えばPEG等)および/または脂肪酸エステルを添加した後、ジプラシドン化合物を懸濁液または分散液とする。次いで、その懸濁液/分散液を、不活性球体に噴霧被覆する。これらの実施形態のための前記成分を溶解するための適切な溶媒としては、限定されるものではないが、塩素化溶媒(例えば、限定されるものではないが、クロロホルム、メチレンクロリド等);環状エーテル(例えば、限定されるものではないが、ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ヒドロキシル溶媒(例えば、限定されるものではないが、低級アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等));およびそれらの混合物が挙げられる。一般に、ジプラシドンの可溶化を促進するためにカルボン酸が含まれ、これは、対応する量のジプラシドンの代わりに、別の成分として、あるいは、カルボン酸およびジプラシドンの塩として全体または一部が添加され得る。本発明に使用するためのジプラシドンの塩の形成に適切な前述のカルボン酸のいずれも、この場合の溶解助剤カルボン酸として使用することが可能である。特に好ましい一実施形態においては、乳酸および/またはジプラシドンラクテートが使用される。溶解助剤として使用する場合、カルボン酸は、一般に濃縮量で使用され、例えばこのように使用される場合、乳酸は、好ましくは水において少なくとも80%の濃度で、より好ましくは少なくとも85%の濃度で使用される。
【0037】
本発明のなお別の好ましい一実施形態においては、脂肪酸エステルおよび/またはTPGS成分の融解物中に、ジプラシドン(任意選択でカルボン酸と共に)または界面活性剤成分と共にジプラシドンのカルボン酸塩の溶解または分散を行う。次いで融解物を球体として押し出し、次いでヒドロキシアルキルアルキルセルロース成分をその球体に被覆する。溶出を補助するため、上記記載と同じ方法で、上記に記載された同じカルボン酸を使用することができる。
【0038】
調製の際、本発明の製剤は、ジプラシドンが有用であることが知られている適応症のいずれかにおいても使用され得る。更に、製剤の性質の向上のため、本発明は、(a)より少ない投与量の活性薬剤を投与して、既に市販されているGEODONと同じ治療効果を達成することができるため、副作用プロファイルを減少させる;(b)以前に有効性を達成することができなかった患者における有効性を達成する(より溶出性がより良好なため)、(c)現在市販されているGEODONが十分な有効性を全く有さなかった症状における有効性を達成する方法において使用され得る。したがって、本発明のジプラシドン製剤は、限定されるものではないが、とりわけ統合失調症、双極性躁病(bipolar mania)およびうつ病および/または代謝障害の症状を発現する患者の治療に応用される。
【実施例】
【0039】
以下の非限定的な実施例は、本明細書に添付される特許請求項の範囲のみにより限定される本発明の範囲を例示するものであって、限定するものではない。
【0040】
(実施例1)
下記の表1に示すように、種々の溶媒においてジプラシドン塩酸塩一水和物の溶解度を試験した。溶解度を向上させるためにしばしば使用される種々の賦形剤の溶解度についても試験を行った。その結果を下記の表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
(実施例2)
次いで、種々の製剤を調製し、媒質として900mlの0.05Mリン酸一ナトリウム緩衝液(pHは6.8)を使用するUSP-1(バスケット法)を使用して、現在市販されているGEODON製剤に対する溶出性について試験した(表3参照)。表3に試験結果を示す。本発明の全ての製剤は、最初の1時間で市販の製剤よりも多量の薬剤を溶出し、薬剤は、溶出溶媒の飽和溶解度のため後の時点で沈殿する。インビボでは、薬剤の沈殿は生じ得ない。なぜならば、溶出薬剤は、上部および下部消化管内を常に移動し、薬剤を溶出形態に維持する胆汁酸および他の酵素を含有する腸液と混じり合うためである。これらの溶出データに基づいて、表3に示される製剤は、市販の製剤よりも高い生物学的利用能を示し得ることが予想される。これらの製剤は、ガラスビーカー内でGelucireおよびPEG6000を融解させ、その集合物をなお融解している間にジプラシドンを添加し、その後(なお融解している間に)Ac-DiSolを添加することによって容易に調製することが可能である。その混合物を、ほとんど室温で維持することにより固化させる。次いでその集合物を粉末にし、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)(または別のアニオン性界面活性剤)とHPMCとを添加する。次いでその混合物を篩にかけ、ゼラチンカプセルに充填する。
【0044】
【表3】

【0045】
(実施例3)
【0046】
【表4】

【0047】
手順:
Gelucireを融解し、その融解物にTween80を添加した。次いでそれにジプラシドンHClを添加して、よく混合する。次いで半分の量のAc-Di-Sol(クロスカルメロース)を添加して、よく混合し、その後ラクトースを添加し、よく混合した。次いで、残りの半分のAc-Di-Solを添加し、その混合物をよく混合した。次いでその混合物をサイズ1の硬質ゼラチンカプセルに充填し、下記に詳細が示されるように試験に利用した。
【0048】
溶出試験パラメータ:
媒質:pH6.8リン酸緩衝液(SLS不含)
体積:900mL
方法:USP I
RPM:75
回収時点:30分、1時間、1 1/2時間および2時間
【0049】
【表5】

【0050】
1.5時間の終わりに約10%の薬剤放出が認められたが、その時点以後、ほとんどが沈殿した。ジプラシドンの幾つかの組成物の試験を行い、実施例3に示される製剤と同様の溶出プロファイルを示した。これらの製剤の組成物について、実施例4〜7で以下に示す。
【0051】
(実施例4)
【0052】
【表6】

【0053】
手順:
ガラスビーカー内にGelucire44/14およびPEG6000を入れ、60℃で融解および混合を行った。融解した集合物にジプラシドンHClを添加し、よく混合した。次いでAc-di-Solを添加し、よく混合した後、SLSを添加して、更なる混合を行った。次いでラクトースを添加し、よく混合した。その混合物を、No.1の硬質ゼラチンカプセルに充填した。
【0054】
(実施例5)
【0055】
【表7】

【0056】
手順:
SLSの代わりにドキュセートナトリウム(別名スルホコハク酸ジオクチルナトリウム)を用いたこと以外は、実施例4の手順に従った。
【0057】
(実施例6)
【0058】
【表8】

【0059】
手順:
HPMCにSLSを加えたこと以外は、実施例4の手順を用いた。
【0060】
(実施例7)
【0061】
【表9】

【0062】
手順:
ガラスビーカー内でGelucire44/14およびPEG6000を融解させた。その融解物にジプラシドンHClを添加し、よく混合し、それにAc-Di-Solを添加し、よく混合した。これを約30分間室温で固化させた。次いで、この混合物を粉末にし、SLSおよびHMPMCを添加し、よく混合した。その混合物を、30メッシュスクリーンで篩にかけ、得られたものをサイズ番号0の硬質ゼラチンカプセルに充填した。溶出溶媒に添加される様々な量のラウリル硫酸ナトリウム(剤形でのSLSとは別)の存在下で、pH6.8で、pH6.8緩衝液において溶出試験を行った。
【0063】
【表10】

【0064】
上記の溶出データから分かるように、薬物放出は、消化管内で(とりわけ腸管内で)生じるものと正確に同じである界面活性剤の存在によって高められる。存在する胆汁酸の量は、摂食状態では10mMであり、絶食状態では2mMである。0.05%のSLSは絶食条件と同様の1.74mMの溶液に相当し、0.2%のSLSは摂食条件と同様の7.5mMの溶液である。
【0065】
(実施例8)
次の実験において、実施例7の製剤からSLSを除去し、Ac-di-solをデンプングリコール酸ナトリウムに置き換えた。その組成を下表に示す。
【0066】
【表11】

【0067】
溶出媒質中の様々な量のSLSの存在下でpH6.8リン酸緩衝液において溶出試験を行った。溶出データを以下に示す。
【0068】
【表12】

【0069】
放出プロファイルは、わずかにより遅いが、実施例7の場合と有意な差はなかった。
【0070】
(実施例9)
調製するための更なる新規な方法は、ジプラシドンを乳酸に溶解し、得られた溶液を賦形剤と混合することによるものである。
【0071】
【表13】

【0072】
手順:
20mgのジプラシドンHClを2mlの(85%)乳酸に溶解し、ジプラシドン/乳酸溶液(ZPラクテート溶液)を得た。次いで、そのZP溶液を、後述のように使用した。
【0073】
【表14】

【0074】
手順:
ビーカー内に2mlのジプラシドンラクテート溶液を入れ、それにAerosil-200を添加して、研和し、自由流動粉末を得た。その粉末をよく混合し、サイズ0の硬質ゼラチンカプセル内に入れた。
【0075】
溶出試験パラメータ:
媒質:脱イオン水
体積:900mL
方法:USP I
RPM:75
回収時点:30分、1時間、1.30時間、2時間
【0076】
【表15】

【0077】
上記のデータから、90分において約80%の薬剤が水に放出されることを認めることができ、多少の沈殿があるものの、2時間においてさえ、かなりの量が溶液のままになっている。
【0078】
(実施例10〜18)
乳酸含有製剤が優れた溶出速度を示したことから、ジプラシドンの種々のカルボン酸製剤のスクリーニングを行った。下表にその製剤の組成物を示す。
【0079】
【表16】

【0080】
これらの製剤全てを、Geodonカプセル剤と共に、以下の溶出媒質において試験した。
媒質A:プレーンの脱イオン水
媒体B:SGF(0.1N塩酸および0.2%塩化ナトリウム)
媒質C:pH6.8のリン酸緩衝液
媒質D:Geodon Tier1についてのFDAにより公開された方法:2%のSLSを有するホスフェート系
媒質E:Geodon Tier2についてのFDAの方法の公開された方法:パンクレアチンを有するホスフェート系
【0081】
媒質A、BおよびCは、溶出性の評価用であるが、一方で媒質DおよびEは、100%の薬物放出のためのFDAにより公開された方法であり、SLSおよびパンクレアチンの存在により溶出性に影響を及ぼす賦形剤を区別することができない。これらの媒質における種々の製剤の溶出プロファイルを下表にまとめる。
【0082】
【表17A】

【0083】
【表17B】

【0084】
上記の表に示すように、試験された全ての媒質においてより良好な溶出プロファイルを示す乳酸含有製剤は、他の製剤に匹敵する。
【0085】
(実施例19)
上記の製剤に加えて、有機溶媒または有機溶媒の組合せにジプラシドンを溶解し、ノンパレイユシードに被膜することにより、ジプラシドンペレットも作製した。
【0086】
組成:
【0087】
【表18】

【0088】
被覆ペレットの製造手順:
流動層プロセッサにウルスターチャンバを装着し、約20分間予熱する。以下の条件に従って、予熱用ウルスターチャンバ内に16/20サイズのノンパレイユシード(NPS)を投入する。
・注入空気温度…… 38℃
・層温度……… 28℃
・ブロアモータRPM… 1600
・時間………… 20分間
その間、ジクロロメタン:IPA(60:40)混合液にHPMC 3cpsを溶解することによってジプラシドン分散液を調製し、1.5%w/w溶液を得た。そのHPMC溶液にPEG20000を添加し、約5分間撹拌した。その溶液に、撹拌下でジプラシドン塩酸塩を添加し、全被覆プロセスの間、分散液を撹拌下に維持した。次いで、以下の条件で、予熱したNPS上にその分散液を被覆した。
・注入空気温度…… 38℃
・層温度……… 28℃
・ブロアモータRPM… 1600〜1800
・噴霧ポンプRPM…… 2〜5
・アトマイゼーション圧… 1.4〜1.8バール
・時間………… 20分間
被覆の完了の後、以下の条件により、約10分間の乾燥時間で軽度の条件下でペレットをFBPで乾燥した。
・注入空気温度…… 30℃
・ブロアモータRPM… 1800
・アトマイゼーション圧… 1.4〜1.8バール
これらのペレットを、HPLCで解析し、硬質ゼラチンカプセルに充填することによって5種の媒質における溶出試験を更に行った。溶出データを下表に示す。
【0089】
【表19】

【0090】
この製剤の最も著しい特性は、この製剤がSGFにおける最も良好な溶出プロファイルを示したということである。更に、実施例9〜18の製剤はまた、ノンパレイユシードに被覆され得る。例えば、AerosilおよびAc-di-sol以外の実施例16に示された組成の含有物は、有機溶媒または有機溶媒の混合物に溶解することが可能であり、ノンパレイユシードに被覆することが可能である。あるいは、押出し法を用いて、TPGS1000またはGelucire44/14のペレットあるいは両方の組合せと、それによるまたは他の賦形剤と組み合わせた薬剤とを、有機溶媒または有機溶媒の組合せに溶解することが可能であり、上記で調製されたペレットに噴霧することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のジプラシドン化合物と(b)少なくとも賦形剤成分とを少なくとも製剤することを含む、ジプラシドンまたはその塩の溶解度を高める方法であって、
前記賦形剤成分(b)は、
(i)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とグリセロールの1種または複数のモノエステル、ジエステルまたはトリエステルまたはそれらの混合物;および/または
(ii)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とポリC2〜C3アルキルグリコールの1種または複数のモノエステルまたはジエステル、またはそれらの混合物;および/または
(iii)ビタミンE TPGS(ビタミンEトコフェロール-コハク酸-ポリエチレングリコール)
の少なくとも1種を含み;
この成分(b)は、
(iv)遊離していてもよいポリC2〜C3アルキルグリコール;
(v)遊離していてもよいグリセロール;および
(vi)12〜24個の炭素原子を有する遊離していてもよい脂肪酸;ならびに
(vii)それらの混合物
を場合によっては含んでよく;
製剤は、更に
(c)アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含み、なお更に
(d)各アルキル基および各ヒドロキシアルキル基が独立して1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1種のヒドロキシルアルキルアルキルセルロースを含む、方法。
【請求項2】
前記成分(b)が、GelucireまたはビタミンE TPGSあるいはそれらの混合物であり、前記アニオン性界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムであり、前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシルアルキルアルキルセルロースが、水において2%の濃度で、25℃で最高約50cpsの粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースがヒドロキシプロピルメチルセルロース(3cps)である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記の少なくとも1種のジプラシドン化合物が、前記成分(b)の融解物に前記界面活性剤と共に分散または溶解され、前記融解物が球体に形成され、前記球体が前記ヒドロキシルアルキルアルキルセルロースで被覆される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記ジプラシドン化合物および前記成分(b)が、有機溶媒に溶解または分散されて溶液または分散液を形成し、前記溶液または分散液が、球体またはペレットに噴霧乾燥され;次いで前記球体またはペレットが、少なくとも前記界面活性剤および前記ヒドロキシルアルキルアルキルセルロースと混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記ジプラシドン化合物および前記成分(b)が、有機溶媒に溶解または分散して溶液または分散液を形成し、前記溶液または分散液が、不活性の球体またはペレット上に噴霧され;次いで前記被覆球体またはペレットが、少なくとも前記界面活性剤および前記ヒドロキシルアルキルアルキルセルロースと混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)少なくとも1種のジプラシドン化合物と(b)少なくとも賦形剤成分とを少なくとも含む医薬組成物であって、
前記賦形剤成分(b)は、
(i)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とグリセロールの1種または複数のモノエステル、ジエステルまたはトリエステル、またはそれらの混合物;および/または
(ii)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とポリC2〜C3アルキルグリコールの1種または複数のモノエステルまたはジエステル、またはそれらの混合物;および/または
(iii)ビタミンE TPGS(ビタミンEトコフェロール-コハク酸-ポリエチレングリコール)
の少なくとも1種を含み;
この成分(b)は、
(iv)遊離していてもよいポリC2〜C3アルキルグリコール;
(v)遊離していてもよいグリセロール;および
(vi)12〜24個の炭素原子を有する遊離していてもよい脂肪酸;ならびに
(vii)それらの混合物
を場合によっては含んでよく;
製剤は、更に
(c)アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含み、なお更に
(d)各アルキル基および各ヒドロキシアルキル基が独立して1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1種のヒドロキシルアルキルアルキルセルロースを含む、医薬組成物。
【請求項9】
(a)10分で約50%以下、20分で約25%以上約70%以下;30分で約30%以上約80%以下、45分で約30%以上約80%以下、60分で約30%以上約80%以下の水中での溶出プロファイル;および/または
(b)10分で約50%以下、20分で約25%以上約70%以下;30分で約30%以上約80%以下、45分で約30%以上約80%以下、60分で約30%以上約80%以下の模擬胃液(0.2%NaCl水溶液における0.1N HCl)中での溶出プロファイル;および/または
(c)10分で約50%以下、20分で約25%以上約70%以下;30分で約30%以上約80%以下、45分で約30%以上約80%以下、60分で約30%以上約80%以下のpH6.8のリン酸緩衝液での溶出プロファイル;および/または
(d)2%のラウリル硫酸ナトリウムを有するホスフェート系におけるGEODON Tier1についてのFDAにより公開された方法において、10分で約20%〜約70%、30分で約80%以上;および/または
(e)パンクレアチンを有するホスフェート系におけるGeodon Tier2についてのFDAにより公開された方法において、10分で約20%〜約70%、30分で約80%以上
を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
プロファイル(a)〜(e)の内の少なくとも2つを満たす、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
溶出プロファイル(a)〜(e)の内の5つ全てを満たす、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
(a)少なくとも1種のジプラシドン化合物を、(b)少なくとも賦形剤成分と共に少なくとも製剤することを含む、市販の製剤GEODONが示す生物学的利用能よりもジプラシドンの生物学的利用能を高める方法であって、
前記賦形剤成分(b)は、
(i)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とグリセロールの1種または複数のモノエステル、ジエステルまたはトリエステル、またはそれらの混合物;および/または
(ii)各脂肪酸基が互いに独立して選択されるC12〜C24脂肪酸とポリC2〜C3アルキルグリコールの1種または複数のモノエステルまたはジエステル、またはそれらの混合物;および/または
(iii)ビタミンE TPGS(ビタミンEトコフェロール-コハク酸-ポリエチレングリコール)
の少なくとも1種を含み;
この成分(b)は、
(iv)遊離していてもよいポリC2〜C3アルキルグリコール;
(v)遊離していてもよいグリセロール;および
(vi)12〜24個の炭素原子を有する遊離していてもよい脂肪酸;ならびに
(vii)それらの混合物
を場合によっては含んでよく;
製剤は、更に
(c)アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含み、なお更に
(d)各アルキル基および各ヒドロキシアルキル基が独立して1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1種のヒドロキシルアルキルアルキルセルロースを含む、方法。
【請求項13】
ジプラシドン療法を必要とする患者に、請求項7に記載の医薬製剤を投与するステップを含む、治療的に同等であるが、GEODONの治療的に同等な剤形よりも少ない投与量のジプラシドンを投与するステップを含むGEODONで認められる副作用プロファイルを減少させる方法。
【請求項14】
ジプラシドンまたはその塩による、統合失調症、双極性躁病、うつ病から成る群から選択される精神的症状および/または代謝障害の治療方法であって、請求項7に記載の組成物の形態で、かかる治療を必要とする患者に、前記ジプラシドンまたはその医薬として許容し得る塩を投与するステップを含む方法。
【請求項15】
造粒、粉末化、押出、噴霧乾燥によって、あるいは不活性球状基体を被覆することによって形成される一般的な球状の粒子の形態である、請求項7に記載の組成物。
【請求項16】
更に、嚥下錠剤、経口崩壊錠剤、カプセル剤、トローチ剤、溶解用粉剤、ローション剤、軟膏剤、乳剤または経皮的製剤を含む単位用量形態にある請求項7に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−527925(P2010−527925A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508434(P2010−508434)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/006268
【国際公開番号】WO2008/143960
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(508148334)サイドース・エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】