ジャケット付きグラスライニング容器、及びその製造方法
【課題】熱媒の温度及び圧力に関わらず内面に施されたグラスライニングが剥離、及び破損しにくいジャケット付きグラスライニング容器の製造方法を提供する。
【解決手段】まず、反応槽本体1の側面1cにある側面流通領域7の上下両側に対を成す側面リブ8を夫々形成する。次に、側面流通領域7に酸化耐性及び耐熱性を有するコーティング材を溶射して溶射膜13を形成し、その後、一対の側面リブ8に側面ジャケット9を溶接して側面流通領域7を覆う。側面ジャケット9で側面流通領域7を覆った後、反応槽本体1の内面にグラスライニング6を施す。
【解決手段】まず、反応槽本体1の側面1cにある側面流通領域7の上下両側に対を成す側面リブ8を夫々形成する。次に、側面流通領域7に酸化耐性及び耐熱性を有するコーティング材を溶射して溶射膜13を形成し、その後、一対の側面リブ8に側面ジャケット9を溶接して側面流通領域7を覆う。側面ジャケット9で側面流通領域7を覆った後、反応槽本体1の内面にグラスライニング6を施す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面にジャケットを有し、内面にグラスライニングが施されたジャケット付きグラスライニング容器、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラント等において、スラリー等の内容物を反応、晶析、ろ過、乾燥、及び混合等するべく反応機が使用されている。反応機は、反応槽を備えている。反応槽は、内容物を貯める反応槽本体を有し、反応槽本体の内面には、内容物に対する高度な耐食性を達成すべくグラスライニングが施されることがある。また、反応槽本体の外面には、ジャケットが設けられており、そこに熱媒や冷媒を流すことで内容物が加熱又は冷却される。反応機では、熱媒として水蒸気が使用されることが多く、鋼板により構成される反応槽本体の外面が水蒸気酸化されて、そこで水素イオンが発生する。発生した水素イオンは、反応槽本体の鋼板内をグラスライニングの方に移動する。この水素イオンがやがて反応槽本体の内面に達し、そこで水素イオン同士が結合して水素ガスに成る。この水素ガスが反応槽本体の内面とグラスライニングと間にある僅かな隙間に溜まっていき、その隙間の内圧が上昇する。やがて、前記内圧の上昇に耐え切れなくなったグラスライニングは、反応槽本体の内面から剥離し、破損する。
【0003】
特許文献1では、グラスライニングの剥離及び破損の原因である水蒸気酸化を防ぐべく反応槽本体の外面に無電解メッキを施している。特許文献1では、反応槽本体の外面に無電解メッキを施すことで防錆効果を得ると共に、無電解メッキを施す前の反応槽本体の外面の洗浄で使用する酸の濃度の低く抑えることで、洗浄時における水素ガスの発生を抑制している。これにより水素ガスによってグラスライニングが反応槽本体の内面から剥離し、破損することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−159947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される処理方法では、洗浄時における水素ガスの発生を抑制することができるが、無電解メッキを施す際に生じる水素イオンが反応槽本体の鋼板内に侵入し、そのまま鋼板内に残留する可能性がある。この水素イオンは、加熱時に活性化してグラスライニングの方へと移動して水素ガスに成る。それ故、反応槽本体の外面が水蒸気酸化された場合と同様に、反応槽本体の内面とグラスライニングとの間にある僅かな隙間に水素ガスが溜まっていき隙間の内圧が上昇し、グラスライニングを反応槽本体の内面から剥離させ、破損させるおそれがある。水素イオンは、熱媒の温度が高いほどより活性化するため、熱媒の温度が高いほどより多くの水素ガスが前記隙間に溜まる。それ故、熱媒の温度が高いほどグラスライニングが反応槽本体の内面から剥離し、また破損しやすくなる。
【0006】
そこで本発明は、内面に施されたグラスライニングが熱媒の温度及び圧力に関わらず剥離、及び破損しにくいジャケット付きグラスライニング容器、及びその製造方法を提供する目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の製造方法は、外面にジャケットを有し、内面にグラスライニングが施されたジャケット付きグラスライニング容器の製造方法であって、容器本体の外面において媒体が流される流通領域を囲むように取付け部を形成する取付け部形成工程と、被膜を前記流通領域に熱を利用して形成する被膜形成工程と、前記取付け部に前記ジャケットを接合して前記流通領域を覆うジャケット接合工程と、前記ジャケット取付け工程の後、前記容器本体の内面にグラスライニングを施すグラスライニング施工工程とを有する方法である。
【0008】
本発明に従えば、熱を利用して被膜を形成する上に、化学反応を伴わないので、従来のメッキ処理の場合より、被膜形成時に容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンが少ない。それ故、容器本体の外面で発生した水素ガスによりグラスライニングが容器本体の内面から剥離したり、破損したりすることを防ぐことができる。また、グラスライニングを施す前に被膜形成を行うので、被膜形成時の熱によりグラスライニングが容器本体の内面から剥離したり、破損したりすることを防ぐことができる。
【0009】
更に、本発明では、被膜形成した後にグラスライニングを施すべく焼成が行われる。焼成により容器本体に内在する水素ガス及び水素イオンが除去される。それ故、被膜形成した後にグラスライニングを施すことで、容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンをより少なくすることができる。これによっても、容器本体の内部から発生した水素ガスによりグラスライニングが容器本体の内面から剥離したり、破損したりすることを防ぐことができる。このように、本発明に係る製造方法により製造されたジャケット付きグラスライニング容器は、容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンが少ないので、熱媒の温度及び圧力に関わらずグラスライニングの剥離及び破損が起こりにくい。
【0010】
上記発明において、前記被膜形成工程では、溶射により前記被膜を形成することが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、溶射材料を溶融して容器本体の外面に吹き付けるだけで被膜を形成することができるので、被膜の形成が容易である。
【0012】
上記発明において、前記溶射に使用する溶射材料は、金属であることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、グラスライニングを施す際に容器本体を繰り返して焼成しても、溶射により形成された被膜が脆性破壊して被膜にひび等が生じることがなく、そこから熱媒が侵入して容器本体の外面を酸化させることを防ぐことができる。
【0014】
上記発明において、前記グラスライニング施工工程では、前記ジャケット内に不活性ガスを充填した後、前記容器本体の内面にグラスライニングを施すことが好ましい。
【0015】
上記構成に従えば、グラスライニングを焼成する際に溶射膜、ジャケット及びリブが酸化することを抑制している。これにより、焼成後に容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンを更に少なくすることができる。
【0016】
上記発明において、前記取付け部は、前記容器本体の外面に立設するリブであり、前記取付け部形成工程では、前記流通領域を囲むように前記リブが前記容器本体の外面に接合され、前記被膜形成工程では、前記流通領域から前記リブの前記流通領域側の内面まで被膜を形成することが好ましい。
【0017】
上記構成に従えば、リブを設けることで、流通領域が明確になり被膜が形成しやすくなると共に、取付け部が被膜で覆われてジャケットを取付けにくくなることを防ぐことができる。また、リブの内面まで被膜を形成することで、被膜の形成されていない部分が水蒸気酸化されても、その部分から容器本体の内面までの距離が遠くなる。それ故、容器本体の内面に達する水素イオンの量を減らすことができ、容器本体の内面とグラスライニングとの間の隙間に溜まる水素ガスの量を減らすことができる。これにより、グラスライニングが容器本体の内面から剥がれたり、破損したりすることを防ぐことができる。
【0018】
本発明のジャケット付きグラスライニング容器は、内面にグラスライニングが施された容器本体と、前記容器本体の外面において媒体が流される流通領域を囲むように前記容器本体の外面に溶着されたリブと、前記リブに溶着されて前記流通領域を覆うジャケットと、前記流通領域に熱を利用して形成された被膜とを有し、前記被膜は、前記流通領域から前記リブの前記流通領域側にある内面まで形成されているものである。
【0019】
上記構成に従えば、熱を利用して被膜を形成するので、従来のメッキ処理の場合より、被膜形成時に容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンが少ない。それ故、容器本体から発生した水素ガスによりグラスライニングが容器本体の内面から剥離したり、破損したりすることを防ぐことができる。これにより、容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンが少ないので、熱媒の温度及び圧力に関わらずグラスライニングが剥離及び破損しにくくなっている。
【0020】
また、本発明では、被膜が前記流通領域から前記リブの前記流通領域側にある内面まで形成されているので、リブと被膜との隙間から熱媒が侵入して容器本体の外面を酸化することを防ぐことができる。また、リブの内面まで被膜を形成することで、被膜の形成されていない部分が水蒸気酸化されても、その部分から容器本体の内面までの距離が遠くなる。それ故、容器本体の内面に達する水素イオンの量を減らすことができ、容器本体の内面とグラスライニングとの間の隙間に溜まる水素ガスの量を減らすことができる。これにより、グラスライニングが容器本体の内面から剥がれたり、破損したりすることを防ぐことができる。
【0021】
上記発明において、前記流通領域は、前記容器本体の外面において螺旋状に延在しており、前記ジャケットは、断面半円形状に形成されていることが好ましい。
【0022】
上記構成に従えば、高圧の熱媒を流通領域上に流すことができるようになり、熱媒の温度を上げることができるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ジャケット付きグラスライニング容器において、その内面に施されたグラスライニングが熱媒の温度及び圧力に関わらず剥離、及び破損しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る第1実施形態の反応槽を切断して見た正面断面図である。
【図2】図1に示す反応槽の側面ジャケット付近を拡大して見た拡大断面図である。
【図3】図1に示す反応槽を下から見た底面図である。
【図4】図1に示す反応槽の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す反応槽の製造方法を説明するための図であり、(a)は、反応槽の側面に側面リブを形成した状態を示し、(b)は、側面流通領域に溶射膜を形成した状態を示す。
【図6】図1に示す反応槽の製造方法を説明するための図であり、一対の側面リブに側面ジャケットを取付けた状態を示す。
【図7】本発明に係る第2実施形態の反応槽の側面ジャケット付近を拡大して見た拡大断面図である。
【図8】図7に示す反応槽の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図9】図7に示す反応槽の製造方法を説明するための図であり、(a)は、反応槽の側面にマスキングテープを貼り付けて溶射膜を形成した状態を示し、(b)は、側面の取付け部に側面ジャケットを取付けた状態を示す。
【図10】本発明に係る第3実施形態の反応槽を切断して見た断面正面図である。
【図11】図10に示す反応槽を下から見た底面図である。
【図12】本発明に係る第4実施形態の反応槽を下から見た底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明に係る第1乃至第4実施形態の反応槽30,30A〜30C及びその製造方法について説明する。なお、以下で説明する際に用いられる方向の概念は、一例であり、必ずしも下記に示す方向の概念に限定するものではない。また、以下に説明する反応槽30,30A〜30Cは、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は、以下のような実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0026】
[第1実施形態]
<反応槽>
化学工場等では、スラリー等の内容物を反応、晶析、ろ過、乾燥、及び混合等する際に反応機が使用されている。反応機は、反応槽30を備えている。ジャケット付きグラスライニング容器である反応槽30は、SM材、SLA材、又はSS材等の鋼板(例えば、SS400、SM400B、SLA235A又はSLA325A等の鋼板が好ましい)から成る縦型円筒形状の反応槽本体1を有しており、その中にスラリーを貯められるようになっている。反応槽本体1の上面1a及び下面1bは、皿形になっており、上下方向に夫々突出するように円弧状に湾曲している。反応槽本体1の上面1aには、3つのノズル2,3,4が形成されており、各ノズル2,3,4から撹拌翼やバッフルを出し入れしたり、スラリー等を投入したりできるようになっている。なお、ノズルの数は、3つに限定されず、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。また、反応槽本体1の下面1bには、排出ノズル5が形成されている。排出ノズル5には、図示しないバルブが設けられており、バルブを開けることで反応槽本体1の中の内容物を排出できるようになっている。このように構成されている反応槽本体1は、その内面にグラスライニング6が施されており、反応槽本体1の内面が内容物に対して高度な腐食耐性を有している。
【0027】
<側面ジャケット>
反応槽本体1の側面1cには、図1及び図2に示すように側面流通領域7があり、側面1cにおいて側面流通領域7上を水蒸気等の伝熱媒体が流れるようになっている。側面流通領域7は、側面1cにおいて下面1bから上面1aに向かってコイル状、つまり螺旋状に延在している。また、側面1cには、この側面流通領域7を上下両側から挟んで囲むように一対の側面リブ8が設けられている。側面リブ8は、鋼板、例えばSS材から成り、側面1cに溶接(つまり、接合)されており、側面1cから半径方向外方に向かって立設している(なお、図2の符号X1は、溶接材を示す)。このように設けられた一対の側面リブ8は、側面流通領域7に沿って下面1bから上面1aに向かって螺旋状に延在しており、螺旋方向一端部同士及び他端部同士が互いに連結されて閉じられている。
【0028】
また、一対の側面リブ8には、側面ジャケット9が設けられている。側面ジャケット9は、鋼板、例えばSS材から成る断面半円形状の半割りジャケットである。側面ジャケット9は、大略螺旋状に形成されている。側面ジャケット9は、断面視でその両端部が一対の側面リブ8の半径方向外方側の端部に夫々溶接されており(図2の符号X2は、溶接材を示す)、側面流通領域7を半径方向外側から覆っている。これにより、側面流通領域7上には、一対の側面リブ8と側面ジャケット9とによって囲まれた側面流路10が形成される。また、側面ジャケット9には、排出管11及び供給管12が設けられている。排出管11は、側面ジャケット9の螺旋方向下端部に設けられ、供給管12は、側面ジャケット9の螺旋方向上端部に設けられている。これら排出管11及び供給管12は、図示しない循環装置等と側面流路10とに繋がっている。側面流路10の伝熱媒体は、排出管11を介して循環装置に戻され、更に循環装置にて加熱又は冷却されて供給管12を介して側面流路10に供給されるようになっている。
【0029】
また、側面流通領域7上には、図2に示すように溶射膜13が形成されている。溶射膜13は、酸化耐性及び耐熱性を有する延性材料(コーティング材料)から成る被膜であり、例えばインコネル(登録商標)やハステロイ(登録商標)等のニッケル基の超合金、ニッケル、チタン、又はステンレス鋼によって構成されている。溶射膜13は、前述するようなコーティング材料を側面流通領域7に溶射することによって形成される膜であり、その厚みは、300μm以上700μm以下である。但し、厚みは、この範囲に限定されず、300μm未満や700μmより大きくてもよい。なお、本実施形態において、溶射膜13は、側面流通領域7から一対の側面リブ8の対向する面(つまり、内面)まで達し、側面流通領域7及び一対の側面リブ8の内面を一体的に覆っている。
【0030】
<下面ジャケット>
反応槽本体1の下面1bには、図1及び図3に示すような複数の下面流通領域17があり、下面1bにおいて下面流通領域17上を水蒸気等の伝熱媒体が流れるようになっている。複数の下面流通領域17は、底面視で反応槽本体1の中心軸線L1を中心とする同心円状に位置している。更に、下面1bには、各下面流通領域17を半径方向両側から挟んで囲むように一対の下面リブ18が設けられている。一対の下面リブ18は、底面視で中心軸線L1を中心とする同心円の円環状に形成されている。各下面リブ18の上端部は、下面1bに溶接され、そこから下方に向かって立設している。
【0031】
一対の下面リブ18には、下面ジャケット19が設けられている。下面ジャケット19は、例えばSS材から成る断面半円形状の半割りジャケットである。下面ジャケット19は、大略円環状に形成されている。下面ジャケット19は、段面視でその両端部が一対の下面リブ18の下端部の各々に夫々溶接されており、下面流通領域17を下方から覆っている。これにより、下面流通領域17上には、一対の下面リブ18と下面ジャケット19とによって囲まれた下面流路20が形成される。また、下面ジャケット19には、排出管21及び供給管22が設けられている。排出管21及び供給管22は、図示しない循環装置等と各下面流路20とに繋がっている。循環装置は、下面流路20から排出管21を介して排出された伝熱媒体を加熱又は冷却して供給管22を介して下面流路20に伝熱媒体を供給するようになっている。
【0032】
また、下面流通領域17上には、側面流通領域7上の溶射膜13と同様に、溶射膜23が形成されている。この溶射膜23は、下面流通領域17から一対の下面リブ18の対向する面(つまり、内面)まで達し、下面流通領域17及び一対の側面リブ18の内面を一体的に覆っている。
【0033】
<内容物に対する加熱>
ノズル4から反応槽本体1の中に投入されたスラリー等の内容物を加熱する際、循環装置により供給管12,22に水蒸気が供給される。供給された水蒸気は、側面流路10及び下面流路20を通り、排出管11,21に排出されて循環装置に戻され、循環装置によって加熱され再び供給管12,22に供給される。このように循環する水蒸気の温度及び圧力は、内容物及び作業工程等に応じて設定されており、高温及び高圧の水蒸気が側面流路10及び下面流路20に供給されることもある。水蒸気の温度及び圧力が高いほど酸化する速度は速く、反応槽本体1の鋼板やリブ8,18が酸化されやすい。しかし、各領域7,17及びリブ8,18の内面が溶射膜13,23で覆われているため、水蒸気により各領域7,17及びリブ8,18の内面が酸化されない。それ故、水蒸気による酸化によって水素イオンが生成されることを抑制することができ、また水素イオンが鋼板を透過して反応槽本体1の内面とグラスライニング6との間で水素ガスに成ってグラスライニング6を反応槽本体1の内面から剥離させることを防ぐことができる。
【0034】
なお、側面ジャケット9及び下面ジャケット19には酸化耐性被膜が形成されていないため、側面ジャケット9及び下面ジャケット19は、水蒸気によって酸化され、水素イオンが生成され得る。しかし、側面ジャケット9及び下面ジャケット19は、反応槽本体1と別体で形成されているため、それらを構成する鉄鋼の結晶方向が異なる。更に、側面ジャケット9と反応槽本体1との間には、それらとは別体の側面リブ8が介在し、下面ジャケット19と反応槽本体1と間には、それらとは別体の下面リブ18が介在している。これにより、結晶方向が異なる部材が介在することになり、また各ジャケット9,19で発生する水素イオンの反応槽本体1までの距離が遠くなる。それ故、側面ジャケット9及び下面ジャケット19で発生した水素イオンが反応槽本体1まで達し、更に反応槽本体1の鋼板を透過することは殆どなく、この水素イオンに起因してグラスライニング6が反応槽本体1の内面から剥離することは殆どない。
【0035】
なお、上記記載は、側面ジャケット9及び下面ジャケット19に溶射膜13,23が形成されてない場合について例示したに過ぎず、側面ジャケット9及び下面ジャケット19の酸化を防ぐべく側面ジャケット9及び下面ジャケット19に溶射膜等の被膜を形成してもよい。また、側面ジャケット9及び下面ジャケット19をステンレス鋼で構成してもよい。
【0036】
また、側面流路10が螺旋状、下面流路20が同心円状になっており、各ジャケット9,19が断面半円形状になっているので、流路10,20を流れる水蒸気からジャケット9,19が夫々受ける作用力が低減されている。それ故、高圧の水蒸気を流すことが可能になり、水蒸気の温度をより高くすることができる。
【0037】
<製造方法について>
以下では、図4〜図6を参照しながら、反応槽30の製造方法について説明する。まず、SM材等の鋼板により縦型円筒形状の反応槽本体1を成形する(ステップS1)。次に、反応槽本体1の側面1cに側面リブ8を取付ける(ステップS2)。ここでは、まず、側面流通領域7の上下両側に側面リブ8を夫々立て、側面リブ8の上下両側を側面1cに夫々溶接する(図5(a)の符号X1参照)。これにより、図5(a)に示すように、側面流通領域7を上下両側から挟んで囲むように一対の側面リブ8が側面1cに立設される。その後、一対の側面リブ8の螺旋方向一端部同士及び他端部同士を互いに連結して、両端部を閉じる。
【0038】
側面リブ8を取付けた後、それに続けて反応槽本体1の下面1bに下面リブ18を取付ける(ステップS3)。なお、下面リブ18の取付けは、側面リブ8の取付けより先に行なってもよく、また側面リブ8の取付と同時に行なってもよい。下面リブ18の取付けでは、側面リブ8の取付と同様に、下面流通領域17の半径方向両側に下面リブ18を夫々立て、下面リブ18の半径方向両側を下面1bに溶接する。これにより、下面流通領域17を半径方向両側から挟んで囲むように一対の下面リブ18が下面1cに立設される。
【0039】
全ての下面流通領域17に対して一対の下面リブ18を立設すると、次に側面流通領域7及び下面流通領域17上に溶射膜13,23を形成する(ステップS4)。ここでは、まず、酸化耐性及び耐熱性を有するコーティング材料を加熱して溶融若しくは軟化させてから側面流通領域7及び下面流通領域17に向かって吹き付けて各領域7,17上にコーティング材を堆積させる。つまり、側面流通領域7及び下面流通領域17上にコーティング材料を溶射する(図5(b)の符号13参照)。これにより、図5(b)に示すように、側面流通領域7上に溶射膜13が形成されると共に、下面流通領域17上にも溶射膜23が形成される。なお、この溶射作業では、一対の側面リブ8及び一対の下面リブ18の内面にもコーティング材を溶射しており、一対の側面リブ8及び一対の下面リブ18の内面にも溶射膜13,23が形成される。
【0040】
溶射膜13,23を形成した後、側面流通領域7を覆うように一対の側面リブ8に側面ジャケット9が溶接され、また下面流通領域17を覆うように一対の下面リブ18に下面ジャケット19が溶接される(ステップS5、図6参照)。これにより、図6に示すように側面流通領域7上に側面流路10が形成され、下面流通領域17上に下面流路20が形成される。更に、各側面ジャケット9,19に排出管11,21及び供給管12,22を取付ける(ステップS6)。そして、排出管11,21を図示しないバルブ等で閉塞し、供給管12,22から各流路10,20に不活性ガス、例えば窒素を供給し、各流路10,20に不活性ガスを充填する(ステップS7)。
【0041】
不活性ガスを充填した後、反応槽本体1の内面にグラスライニング6を施す(ステップS8)。ここでは、まず反応槽本体1の内面のスケールを除去してから反応槽本体1の内面にガラス材料を含む釉薬を反応槽本体1の内面に吹き付ける。なお、釉薬の吹き付けは、不活性ガスの充填より先に行なってもよい。釉薬を内面に吹き付けて乾燥させた後、反応槽本体1を加熱(例えば、800度〜900度)してガラス素材を焼成する。反応槽本体1の内面に形成されるグラスライニング6の厚みが所望の厚みになるまで釉薬の吹き付け及び焼成が繰り返される。これにより、所望の厚みのグラスライニング6が反応槽本体1の内面に施され(図2参照)、反応槽30の製造が終了する。
【0042】
このように反応槽30では、熱を利用する溶射により側面1c及び下面1bに溶射膜13,23を形成するので、溶射膜13,23の形成時に水素ガスや水素イオンが発生して反応槽本体1の鋼板内部に水素ガスや水素イオンが残留することがない。それ故、反応槽本体1の鋼板内部から発生した水素ガスによりグラスライニングが反応槽本体1の内面から剥離したり、破損したりすることを防ぐことができる。
【0043】
反応槽30では、施工後に溶射のように熱を利用した方法で各流通領域7,17に被膜を形成すると、グラスライニング6が熱を加えると剥離し得る。しかし、上述する製造方法によれば、反応槽本体1の内面にグラスライニング6を施す前に溶射膜13,23が形成されるので、溶射膜13を形成することでグラスライニング6が破損するということがなくなる。また、グラスライニング6を施す前に被膜を形成すると、焼成により被膜が焼ける等して損傷することがある。しかし、反応槽30では、耐熱性を有するコーティング材料により溶射膜13,23が形成されているので、焼成に対しても耐えることができる。また、繰り返し行なわれる焼成により加熱及び冷却が繰り返されて溶射膜13,23が繰り返し伸縮するが、コーティング材料が延性材料であるので、そのような伸縮に対しても溶射膜13,23が耐え得る。従って、本実施形態の製造方法によれば、内面にグラスライニング6が施された反応槽本体1に対して、水蒸気による酸化を防げる被膜である溶射膜13,23を流通領域7,17上に熱を利用して形成することができる。
【0044】
また、本実施形態の製造方法によれば、溶射膜13,23を形成し、ジャケット9,19を取付けた後に焼成が行われる。焼成は、反応槽本体1の鋼板に内在する水素イオン及び水素ガスを除去することができる。それ故、製造工程の後段で焼成を行うため、仮に被膜処理で鋼板内に水素イオンが生成したとしても焼成工程にて鋼板内に内在する水素イオン及び水素ガスが除去されることで水素ガスに伴うグラスライニング6の剥離を更に抑制することができる。
【0045】
本実施形態の製造方法では、側面1cに側面リブ8を溶接した後、側面流通領域7にコーティング材を溶射するので、側面流通領域7から側面リブ8の内面まで一体の溶射膜13,23を形成することができる。これにより、側面リブ8と溶射膜13との隙間から水蒸気が侵入して反応槽本体1の側面1cに達することを防ぐことができ、反応槽本体1の酸化をより確実に防ぐことができる。また、反応槽本体1では、前記隙間から侵入した水蒸気によって水蒸気酸化して側面リブ8より腐食電位が卑な鋼板がガルバニック腐食を生じるが、前記隙間からの水蒸気の侵入を防ぐことで、このようなガルバニック腐食も防ぐことができる。
【0046】
[第2実施形態]
本発明に係る第2実施形態の反応槽30Aは、第1実施形態の反応槽30と構成が類似している。以下では、第2実施形態の反応槽30Aの構成について、第1実施形態の反応槽30の構成と異なる点についてだけ説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。以下、第3実施形態及び第4実施形態の反応槽30B,1Cについても同様である。
【0047】
<構成について>
反応槽30Aの反応槽本体1Aには、その側面1cの略全域にコーティング材が溶射されており、取付け部8Aを除く側面1cの略全域に溶射膜13Aが形成されている。取付け部8Aは、側面1cにおいて溶射膜13Aが形成されていない非被覆部である。取付け部8Aは、側面流通領域7の上下両側において、側面流通領域7に沿って螺旋状に形成されており、上下両側で対を成している。取付け部8Aは、後述するように溶射時にマスキングすることで形成されている。一対の取付け部8Aには、側面ジャケット9の両端部(断面視で上下両端部)が夫々溶接されおり、側面ジャケット9は、図7に示すように、反応槽本体1Aの側面1cに直接溶接されている。このように側面ジャケット9を側面1cの取付け部8Aに溶接することで、側面流通領域7上に側面ジャケット9に囲まれた側面流路10が形成される。
【0048】
なお、図示しないが、反応槽本体1Aの下面1bにある各下面流通領域17の半径方向両側にも円環状の取付け部が夫々形成されている。これら2つの取付け部には、下面ジャケット19の両端部(断面視で半径方向両端部)が夫々溶接されており、側面ジャケット9と同様に反応槽本体1Aの下面1cに直接溶接されている。このように下面ジャケット19を側面1cの円環状の取付け部に溶接することで、円還流通領域17上に下面ジャケット19で囲まれた下面流路20が形成される。
【0049】
<製造方法について>
以下では、図8〜図10を参照しながら、反応槽30Aの製造方法について説明する。まず、SM材等の鋼板により縦型円筒形状の反応槽本体1Aを成形する(ステップS11)。次に、側面流通領域7及び下面流通領域17に沿ってそれらの両側にマスキング部材、例えば溶射用マスキングテープ31(図9(a)参照)を貼り付ける(ステップS12)。マスキングテープを貼り付けた後、反応槽本体1Aの側面1c(特に、側面流通領域7及び下面流通領域17)にコーティング材を溶射して、側面1c及び下面1b上に溶射膜13Aを形成する(ステップS13)。これにより、取付け部8A及び円環状の取付け部を除く側面1cの略全域において溶射膜13Aが形成される(図9(a)参照)。
【0050】
溶射膜13Aを形成した後、マスキングテープ31を取外し、側面流通領域7を覆うように取付け部8Aに側面ジャケット9を溶接し、下面流通領域17を覆うように円環状の取付け部に下面ジャケット19を溶接する(ステップS14、図9(b)の符号X3参照)。この際、側面ジャケット9及び下面ジャケット19が断面半円形の半割りジャケットであるため、各ジャケット9,19の外側からしか溶接作業を行うことができない。そこで、各ジャケット9,19の両端部が図9(b)に示すように先鋭状に形成されている。これにより、溶接時に溶融した溶接材料が各ジャケット9,19の外側から内側に導かれて各ジャケット9,19の両端部の内側も反応槽本体1Aに溶接される。また、各ジャケット9,19の内側に溶接材料を導いてジャケット9,19と溶射膜13Aとの間を埋めることで、上述するような反応槽本体1Aの側面1c及び下面1bでガルバニック腐食が生じることを防げる。
【0051】
このように各ジャケット9,19を溶接すると、図9(b)に示すように側面流通領域7上に側面流路10が形成され、下面流通領域17上に下面流路20が形成される。その後は、第1実施形態の反応槽30と同様に、各側面ジャケット9,19に排出管11,21及び供給管12,22を取付け(ステップS15)、各流路10,20に不活性ガス(例えば窒素)を充填する(ステップS16)。そして、図10に示すように、反応槽本体1Aの内面にグラスライニング6を施す(ステップS17、図7参照)。
【0052】
第2実施形態の反応槽30の製造方法によれば、第1実施形態の場合より溶接の回数を減らすことができる。また、部品点数も減らすことができるので、製造コストを削減することができる。その他、第1実施形態と同様に、グラスライニング6が施された反応槽30Aを製造する際に、熱を利用して酸化耐性被膜、つまり溶射膜13Aを反応槽本体1Aの外面に形成しても、グラスライニング6及び溶射膜13Aがどちらも損傷することがない。第2実施形態の製造方法によっても、グラスライニング6が施された反応槽本体1Aの外面に熱を利用した酸化耐性被膜を形成することが可能である。
【0053】
[第3実施形態]
本発明に係る第3実施形態の反応槽30Bの反応槽本体1Bは、図10に示すようにその側面1cに複数の側面流通領域7B(本実施形態では、3つの側面流通領域7B)を有している。側面流通領域7Bは、側面1cの周方向全周にわたって形成されており、側面流通領域7Bの上下両側には、そこから半径方向外方に延在する中空円板状の側面リブ8Bが側面流通領域7Bに沿って夫々溶接されている。これら2つの側面リブ8Bには、側面ジャケット9Bが設けられている。側面ジャケット9Bは、中空円板状で断面半円形の半割りジャケットであり、その半径方向両端部が2つの側面リブ8Bに夫々溶接されて側面流通領域7Bを覆っている。これにより、側面流通領域7B上には、側面ジャケット9B及び2つの側面リブ8Bによって囲まれた円環状の側面流路10Bが形成される。
【0054】
また、反応槽本体1Bは、その下面1cに渦巻状に形成された下面流通領域17Bを有している。下面流通領域17Bの半径方向両側には、そこから下方に延在する下面リブ18Bが下面流通領域17Bに沿って夫々溶接されている。2つの下面リブ18Bは、図11に示すように、下面流通領域17Bに沿って渦巻状に形成されており、その渦巻き方向の両端部が互いに連結されて閉じられている。また、2つの下面リブ18Bには、下面ジャケット19Bが設けられている。下面ジャケット19Bは、渦巻状で断面半円形の半割りジャケットであり、その半径方向両端部が2つの下面リブ18Bに夫々溶接されて下面流通領域17Bを覆っている。これにより、下面流通領域17B上には、下面ジャケット19B及び2つの下面リブ18Bによって囲まれた渦巻状の下面流路20Bが形成される。また、下面ジャケット19Bの渦巻き方向両端部には、排出管21B及び供給管22Bが設けられている。
【0055】
このような構成を有する反応槽30Bは、第1実施形態の製造方法と同様の製造方法で製造することができる。それ故、製造方法については、第1実施形態の製造方法を参照し、説明を省略する。
【0056】
本実施形態の反応槽30Bは、第1実施形態の反応槽30と同様の作用効果奏する。
【0057】
[第4実施形態]
本発明に係る第4実施形態の反応槽30Cの反応槽本体1Cは、図12に示すように、その下面1cに複数の下面流通領域17C(本実施形態では、5つの下面流通領域17C)を有している。下面流通領域17Cは、底面視で円弧状、具体的にはC字状に形成されており、反応槽本体1Cの中心軸線L1を中心として同心円状に位置している。下面流通領域17Cの半径方向両側には、そこから下方に延在する円筒状の下面リブ18Cが下面流通領域17Cに沿って夫々溶接されている。これら2つの下面リブ18Cの周方向の両端部は、互いに連結されて閉じられている。また2つの下面リブ18Cには、下面ジャケット19Cが設けられている。下面ジャケット19Cは、平面C字状で断面半円形の半割りジャケットであり、その半径方向両端部が2つの側面リブ8Cに夫々溶接されて下面流通領域17Cを覆っている。これにより、下面流通領域17C上には、下面ジャケット19C及び2つの下面リブ18Cによって囲まれたC字状の下面流路20Cが形成される。
【0058】
また、下面ジャケット19Cの周方向一端部には、連通管24が設けられており、自身より半径方向外側に位置する下面ジャケット19Cの周方向他端部に繋がっている。なお、半径方向において最も外側に位置する下面ジャケット19Cの周方向一端部には、連通管24ではなく、循環装置に繋がる排出管21Cが設けられている。また、半径方向において最も内側に位置する下面ジャケット19Cの周方向他端部には、循環装置に繋がる供給管22Cが設けられている。
【0059】
このような構成を有する反応槽30Cは、第1実施形態の製造方法と同様の製造方法で製造することができる。それ故、製造方法については、第1実施形態の製造方法を参照し、説明を省略する。
【0060】
本実施形態の反応槽30Cは、第1実施形態の反応槽30と同様の作用効果奏する。
【0061】
[その他の実施形態]
第1〜第4実施形態の反応槽30,30A〜30Cでは、酸化耐性を有する被膜(溶射膜13,13A,23)を溶射によって形成しているが、被膜の形成方法は、溶射に限定されず、熱を利用するものであればよい。この際、被膜に使用する材料は、少なくともグラスライニング6を焼成する際に焼けることなく耐え得る程度の耐熱性能を有する必要がある。
【0062】
また、第1〜第4実施形態における反応槽本体1,1A〜1Cは、縦型円筒形状に限定されず、逆円錐形や、釣鐘状であってもよく、その外形形状については問わない。また、第1〜第4実施形態では、反応機の容器である反応槽30,30A〜30Cに適用した場合について説明したが、濾過乾燥装置や混合装置等、反応機以外の化学工場の容器に適用してもよい。また、各リブ8,18や、各ジャケット9,19の形状もまた、前述する形状に限定されず、蛇腹状であったり、直線的であったりしてもよい。また、反応槽30、各リブ8,18及び各ジャケット9,19同士が溶接によって接合されているが、必ずしも溶接に限定されず、他の接合方法によって接合されてもよい。
【0063】
更に、本実施形態では、伝熱媒体が高圧の場合、その圧力に耐え得るべく半割りのジャケットを使用しているが、伝熱媒体の圧力が低い場合、反応槽本体1,1A〜1Cの側面1c及び下面1bにそれらの略全域を覆うようなジャケットを設けてそのジャケットと側面1c及び下面1bとの間に円環状の空間を形成し、その空間に伝熱媒体を流すようにしてもよい。その場合、側面1c及び下面1bのうち、リブ又は取付け部が形成される部分を除いた略全域が流通領域となり、この流通領域に溶射膜13が形成される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
外面にジャケットを有し、内面にグラスライニングが施されたジャケット付きグラスライニング容器、及びその製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1,1A〜1C 反応槽本体
1b 下面
1c 側面
6 グラスライニング
7,7B 側面流通領域
8,8B,8C 側面リブ
8A 取付け部
9,9B 側面ジャケット
13,13A 溶射膜
17,17B,17C 下面流通領域
18,18B,18C 下面リブ
19,19B,19C 下面ジャケット
23 溶射膜
30,30A〜30C 反応槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面にジャケットを有し、内面にグラスライニングが施されたジャケット付きグラスライニング容器、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラント等において、スラリー等の内容物を反応、晶析、ろ過、乾燥、及び混合等するべく反応機が使用されている。反応機は、反応槽を備えている。反応槽は、内容物を貯める反応槽本体を有し、反応槽本体の内面には、内容物に対する高度な耐食性を達成すべくグラスライニングが施されることがある。また、反応槽本体の外面には、ジャケットが設けられており、そこに熱媒や冷媒を流すことで内容物が加熱又は冷却される。反応機では、熱媒として水蒸気が使用されることが多く、鋼板により構成される反応槽本体の外面が水蒸気酸化されて、そこで水素イオンが発生する。発生した水素イオンは、反応槽本体の鋼板内をグラスライニングの方に移動する。この水素イオンがやがて反応槽本体の内面に達し、そこで水素イオン同士が結合して水素ガスに成る。この水素ガスが反応槽本体の内面とグラスライニングと間にある僅かな隙間に溜まっていき、その隙間の内圧が上昇する。やがて、前記内圧の上昇に耐え切れなくなったグラスライニングは、反応槽本体の内面から剥離し、破損する。
【0003】
特許文献1では、グラスライニングの剥離及び破損の原因である水蒸気酸化を防ぐべく反応槽本体の外面に無電解メッキを施している。特許文献1では、反応槽本体の外面に無電解メッキを施すことで防錆効果を得ると共に、無電解メッキを施す前の反応槽本体の外面の洗浄で使用する酸の濃度の低く抑えることで、洗浄時における水素ガスの発生を抑制している。これにより水素ガスによってグラスライニングが反応槽本体の内面から剥離し、破損することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−159947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される処理方法では、洗浄時における水素ガスの発生を抑制することができるが、無電解メッキを施す際に生じる水素イオンが反応槽本体の鋼板内に侵入し、そのまま鋼板内に残留する可能性がある。この水素イオンは、加熱時に活性化してグラスライニングの方へと移動して水素ガスに成る。それ故、反応槽本体の外面が水蒸気酸化された場合と同様に、反応槽本体の内面とグラスライニングとの間にある僅かな隙間に水素ガスが溜まっていき隙間の内圧が上昇し、グラスライニングを反応槽本体の内面から剥離させ、破損させるおそれがある。水素イオンは、熱媒の温度が高いほどより活性化するため、熱媒の温度が高いほどより多くの水素ガスが前記隙間に溜まる。それ故、熱媒の温度が高いほどグラスライニングが反応槽本体の内面から剥離し、また破損しやすくなる。
【0006】
そこで本発明は、内面に施されたグラスライニングが熱媒の温度及び圧力に関わらず剥離、及び破損しにくいジャケット付きグラスライニング容器、及びその製造方法を提供する目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の製造方法は、外面にジャケットを有し、内面にグラスライニングが施されたジャケット付きグラスライニング容器の製造方法であって、容器本体の外面において媒体が流される流通領域を囲むように取付け部を形成する取付け部形成工程と、被膜を前記流通領域に熱を利用して形成する被膜形成工程と、前記取付け部に前記ジャケットを接合して前記流通領域を覆うジャケット接合工程と、前記ジャケット取付け工程の後、前記容器本体の内面にグラスライニングを施すグラスライニング施工工程とを有する方法である。
【0008】
本発明に従えば、熱を利用して被膜を形成する上に、化学反応を伴わないので、従来のメッキ処理の場合より、被膜形成時に容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンが少ない。それ故、容器本体の外面で発生した水素ガスによりグラスライニングが容器本体の内面から剥離したり、破損したりすることを防ぐことができる。また、グラスライニングを施す前に被膜形成を行うので、被膜形成時の熱によりグラスライニングが容器本体の内面から剥離したり、破損したりすることを防ぐことができる。
【0009】
更に、本発明では、被膜形成した後にグラスライニングを施すべく焼成が行われる。焼成により容器本体に内在する水素ガス及び水素イオンが除去される。それ故、被膜形成した後にグラスライニングを施すことで、容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンをより少なくすることができる。これによっても、容器本体の内部から発生した水素ガスによりグラスライニングが容器本体の内面から剥離したり、破損したりすることを防ぐことができる。このように、本発明に係る製造方法により製造されたジャケット付きグラスライニング容器は、容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンが少ないので、熱媒の温度及び圧力に関わらずグラスライニングの剥離及び破損が起こりにくい。
【0010】
上記発明において、前記被膜形成工程では、溶射により前記被膜を形成することが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、溶射材料を溶融して容器本体の外面に吹き付けるだけで被膜を形成することができるので、被膜の形成が容易である。
【0012】
上記発明において、前記溶射に使用する溶射材料は、金属であることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、グラスライニングを施す際に容器本体を繰り返して焼成しても、溶射により形成された被膜が脆性破壊して被膜にひび等が生じることがなく、そこから熱媒が侵入して容器本体の外面を酸化させることを防ぐことができる。
【0014】
上記発明において、前記グラスライニング施工工程では、前記ジャケット内に不活性ガスを充填した後、前記容器本体の内面にグラスライニングを施すことが好ましい。
【0015】
上記構成に従えば、グラスライニングを焼成する際に溶射膜、ジャケット及びリブが酸化することを抑制している。これにより、焼成後に容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンを更に少なくすることができる。
【0016】
上記発明において、前記取付け部は、前記容器本体の外面に立設するリブであり、前記取付け部形成工程では、前記流通領域を囲むように前記リブが前記容器本体の外面に接合され、前記被膜形成工程では、前記流通領域から前記リブの前記流通領域側の内面まで被膜を形成することが好ましい。
【0017】
上記構成に従えば、リブを設けることで、流通領域が明確になり被膜が形成しやすくなると共に、取付け部が被膜で覆われてジャケットを取付けにくくなることを防ぐことができる。また、リブの内面まで被膜を形成することで、被膜の形成されていない部分が水蒸気酸化されても、その部分から容器本体の内面までの距離が遠くなる。それ故、容器本体の内面に達する水素イオンの量を減らすことができ、容器本体の内面とグラスライニングとの間の隙間に溜まる水素ガスの量を減らすことができる。これにより、グラスライニングが容器本体の内面から剥がれたり、破損したりすることを防ぐことができる。
【0018】
本発明のジャケット付きグラスライニング容器は、内面にグラスライニングが施された容器本体と、前記容器本体の外面において媒体が流される流通領域を囲むように前記容器本体の外面に溶着されたリブと、前記リブに溶着されて前記流通領域を覆うジャケットと、前記流通領域に熱を利用して形成された被膜とを有し、前記被膜は、前記流通領域から前記リブの前記流通領域側にある内面まで形成されているものである。
【0019】
上記構成に従えば、熱を利用して被膜を形成するので、従来のメッキ処理の場合より、被膜形成時に容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンが少ない。それ故、容器本体から発生した水素ガスによりグラスライニングが容器本体の内面から剥離したり、破損したりすることを防ぐことができる。これにより、容器本体の内部に残留する水素ガス及び水素イオンが少ないので、熱媒の温度及び圧力に関わらずグラスライニングが剥離及び破損しにくくなっている。
【0020】
また、本発明では、被膜が前記流通領域から前記リブの前記流通領域側にある内面まで形成されているので、リブと被膜との隙間から熱媒が侵入して容器本体の外面を酸化することを防ぐことができる。また、リブの内面まで被膜を形成することで、被膜の形成されていない部分が水蒸気酸化されても、その部分から容器本体の内面までの距離が遠くなる。それ故、容器本体の内面に達する水素イオンの量を減らすことができ、容器本体の内面とグラスライニングとの間の隙間に溜まる水素ガスの量を減らすことができる。これにより、グラスライニングが容器本体の内面から剥がれたり、破損したりすることを防ぐことができる。
【0021】
上記発明において、前記流通領域は、前記容器本体の外面において螺旋状に延在しており、前記ジャケットは、断面半円形状に形成されていることが好ましい。
【0022】
上記構成に従えば、高圧の熱媒を流通領域上に流すことができるようになり、熱媒の温度を上げることができるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ジャケット付きグラスライニング容器において、その内面に施されたグラスライニングが熱媒の温度及び圧力に関わらず剥離、及び破損しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る第1実施形態の反応槽を切断して見た正面断面図である。
【図2】図1に示す反応槽の側面ジャケット付近を拡大して見た拡大断面図である。
【図3】図1に示す反応槽を下から見た底面図である。
【図4】図1に示す反応槽の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す反応槽の製造方法を説明するための図であり、(a)は、反応槽の側面に側面リブを形成した状態を示し、(b)は、側面流通領域に溶射膜を形成した状態を示す。
【図6】図1に示す反応槽の製造方法を説明するための図であり、一対の側面リブに側面ジャケットを取付けた状態を示す。
【図7】本発明に係る第2実施形態の反応槽の側面ジャケット付近を拡大して見た拡大断面図である。
【図8】図7に示す反応槽の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図9】図7に示す反応槽の製造方法を説明するための図であり、(a)は、反応槽の側面にマスキングテープを貼り付けて溶射膜を形成した状態を示し、(b)は、側面の取付け部に側面ジャケットを取付けた状態を示す。
【図10】本発明に係る第3実施形態の反応槽を切断して見た断面正面図である。
【図11】図10に示す反応槽を下から見た底面図である。
【図12】本発明に係る第4実施形態の反応槽を下から見た底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明に係る第1乃至第4実施形態の反応槽30,30A〜30C及びその製造方法について説明する。なお、以下で説明する際に用いられる方向の概念は、一例であり、必ずしも下記に示す方向の概念に限定するものではない。また、以下に説明する反応槽30,30A〜30Cは、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は、以下のような実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0026】
[第1実施形態]
<反応槽>
化学工場等では、スラリー等の内容物を反応、晶析、ろ過、乾燥、及び混合等する際に反応機が使用されている。反応機は、反応槽30を備えている。ジャケット付きグラスライニング容器である反応槽30は、SM材、SLA材、又はSS材等の鋼板(例えば、SS400、SM400B、SLA235A又はSLA325A等の鋼板が好ましい)から成る縦型円筒形状の反応槽本体1を有しており、その中にスラリーを貯められるようになっている。反応槽本体1の上面1a及び下面1bは、皿形になっており、上下方向に夫々突出するように円弧状に湾曲している。反応槽本体1の上面1aには、3つのノズル2,3,4が形成されており、各ノズル2,3,4から撹拌翼やバッフルを出し入れしたり、スラリー等を投入したりできるようになっている。なお、ノズルの数は、3つに限定されず、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。また、反応槽本体1の下面1bには、排出ノズル5が形成されている。排出ノズル5には、図示しないバルブが設けられており、バルブを開けることで反応槽本体1の中の内容物を排出できるようになっている。このように構成されている反応槽本体1は、その内面にグラスライニング6が施されており、反応槽本体1の内面が内容物に対して高度な腐食耐性を有している。
【0027】
<側面ジャケット>
反応槽本体1の側面1cには、図1及び図2に示すように側面流通領域7があり、側面1cにおいて側面流通領域7上を水蒸気等の伝熱媒体が流れるようになっている。側面流通領域7は、側面1cにおいて下面1bから上面1aに向かってコイル状、つまり螺旋状に延在している。また、側面1cには、この側面流通領域7を上下両側から挟んで囲むように一対の側面リブ8が設けられている。側面リブ8は、鋼板、例えばSS材から成り、側面1cに溶接(つまり、接合)されており、側面1cから半径方向外方に向かって立設している(なお、図2の符号X1は、溶接材を示す)。このように設けられた一対の側面リブ8は、側面流通領域7に沿って下面1bから上面1aに向かって螺旋状に延在しており、螺旋方向一端部同士及び他端部同士が互いに連結されて閉じられている。
【0028】
また、一対の側面リブ8には、側面ジャケット9が設けられている。側面ジャケット9は、鋼板、例えばSS材から成る断面半円形状の半割りジャケットである。側面ジャケット9は、大略螺旋状に形成されている。側面ジャケット9は、断面視でその両端部が一対の側面リブ8の半径方向外方側の端部に夫々溶接されており(図2の符号X2は、溶接材を示す)、側面流通領域7を半径方向外側から覆っている。これにより、側面流通領域7上には、一対の側面リブ8と側面ジャケット9とによって囲まれた側面流路10が形成される。また、側面ジャケット9には、排出管11及び供給管12が設けられている。排出管11は、側面ジャケット9の螺旋方向下端部に設けられ、供給管12は、側面ジャケット9の螺旋方向上端部に設けられている。これら排出管11及び供給管12は、図示しない循環装置等と側面流路10とに繋がっている。側面流路10の伝熱媒体は、排出管11を介して循環装置に戻され、更に循環装置にて加熱又は冷却されて供給管12を介して側面流路10に供給されるようになっている。
【0029】
また、側面流通領域7上には、図2に示すように溶射膜13が形成されている。溶射膜13は、酸化耐性及び耐熱性を有する延性材料(コーティング材料)から成る被膜であり、例えばインコネル(登録商標)やハステロイ(登録商標)等のニッケル基の超合金、ニッケル、チタン、又はステンレス鋼によって構成されている。溶射膜13は、前述するようなコーティング材料を側面流通領域7に溶射することによって形成される膜であり、その厚みは、300μm以上700μm以下である。但し、厚みは、この範囲に限定されず、300μm未満や700μmより大きくてもよい。なお、本実施形態において、溶射膜13は、側面流通領域7から一対の側面リブ8の対向する面(つまり、内面)まで達し、側面流通領域7及び一対の側面リブ8の内面を一体的に覆っている。
【0030】
<下面ジャケット>
反応槽本体1の下面1bには、図1及び図3に示すような複数の下面流通領域17があり、下面1bにおいて下面流通領域17上を水蒸気等の伝熱媒体が流れるようになっている。複数の下面流通領域17は、底面視で反応槽本体1の中心軸線L1を中心とする同心円状に位置している。更に、下面1bには、各下面流通領域17を半径方向両側から挟んで囲むように一対の下面リブ18が設けられている。一対の下面リブ18は、底面視で中心軸線L1を中心とする同心円の円環状に形成されている。各下面リブ18の上端部は、下面1bに溶接され、そこから下方に向かって立設している。
【0031】
一対の下面リブ18には、下面ジャケット19が設けられている。下面ジャケット19は、例えばSS材から成る断面半円形状の半割りジャケットである。下面ジャケット19は、大略円環状に形成されている。下面ジャケット19は、段面視でその両端部が一対の下面リブ18の下端部の各々に夫々溶接されており、下面流通領域17を下方から覆っている。これにより、下面流通領域17上には、一対の下面リブ18と下面ジャケット19とによって囲まれた下面流路20が形成される。また、下面ジャケット19には、排出管21及び供給管22が設けられている。排出管21及び供給管22は、図示しない循環装置等と各下面流路20とに繋がっている。循環装置は、下面流路20から排出管21を介して排出された伝熱媒体を加熱又は冷却して供給管22を介して下面流路20に伝熱媒体を供給するようになっている。
【0032】
また、下面流通領域17上には、側面流通領域7上の溶射膜13と同様に、溶射膜23が形成されている。この溶射膜23は、下面流通領域17から一対の下面リブ18の対向する面(つまり、内面)まで達し、下面流通領域17及び一対の側面リブ18の内面を一体的に覆っている。
【0033】
<内容物に対する加熱>
ノズル4から反応槽本体1の中に投入されたスラリー等の内容物を加熱する際、循環装置により供給管12,22に水蒸気が供給される。供給された水蒸気は、側面流路10及び下面流路20を通り、排出管11,21に排出されて循環装置に戻され、循環装置によって加熱され再び供給管12,22に供給される。このように循環する水蒸気の温度及び圧力は、内容物及び作業工程等に応じて設定されており、高温及び高圧の水蒸気が側面流路10及び下面流路20に供給されることもある。水蒸気の温度及び圧力が高いほど酸化する速度は速く、反応槽本体1の鋼板やリブ8,18が酸化されやすい。しかし、各領域7,17及びリブ8,18の内面が溶射膜13,23で覆われているため、水蒸気により各領域7,17及びリブ8,18の内面が酸化されない。それ故、水蒸気による酸化によって水素イオンが生成されることを抑制することができ、また水素イオンが鋼板を透過して反応槽本体1の内面とグラスライニング6との間で水素ガスに成ってグラスライニング6を反応槽本体1の内面から剥離させることを防ぐことができる。
【0034】
なお、側面ジャケット9及び下面ジャケット19には酸化耐性被膜が形成されていないため、側面ジャケット9及び下面ジャケット19は、水蒸気によって酸化され、水素イオンが生成され得る。しかし、側面ジャケット9及び下面ジャケット19は、反応槽本体1と別体で形成されているため、それらを構成する鉄鋼の結晶方向が異なる。更に、側面ジャケット9と反応槽本体1との間には、それらとは別体の側面リブ8が介在し、下面ジャケット19と反応槽本体1と間には、それらとは別体の下面リブ18が介在している。これにより、結晶方向が異なる部材が介在することになり、また各ジャケット9,19で発生する水素イオンの反応槽本体1までの距離が遠くなる。それ故、側面ジャケット9及び下面ジャケット19で発生した水素イオンが反応槽本体1まで達し、更に反応槽本体1の鋼板を透過することは殆どなく、この水素イオンに起因してグラスライニング6が反応槽本体1の内面から剥離することは殆どない。
【0035】
なお、上記記載は、側面ジャケット9及び下面ジャケット19に溶射膜13,23が形成されてない場合について例示したに過ぎず、側面ジャケット9及び下面ジャケット19の酸化を防ぐべく側面ジャケット9及び下面ジャケット19に溶射膜等の被膜を形成してもよい。また、側面ジャケット9及び下面ジャケット19をステンレス鋼で構成してもよい。
【0036】
また、側面流路10が螺旋状、下面流路20が同心円状になっており、各ジャケット9,19が断面半円形状になっているので、流路10,20を流れる水蒸気からジャケット9,19が夫々受ける作用力が低減されている。それ故、高圧の水蒸気を流すことが可能になり、水蒸気の温度をより高くすることができる。
【0037】
<製造方法について>
以下では、図4〜図6を参照しながら、反応槽30の製造方法について説明する。まず、SM材等の鋼板により縦型円筒形状の反応槽本体1を成形する(ステップS1)。次に、反応槽本体1の側面1cに側面リブ8を取付ける(ステップS2)。ここでは、まず、側面流通領域7の上下両側に側面リブ8を夫々立て、側面リブ8の上下両側を側面1cに夫々溶接する(図5(a)の符号X1参照)。これにより、図5(a)に示すように、側面流通領域7を上下両側から挟んで囲むように一対の側面リブ8が側面1cに立設される。その後、一対の側面リブ8の螺旋方向一端部同士及び他端部同士を互いに連結して、両端部を閉じる。
【0038】
側面リブ8を取付けた後、それに続けて反応槽本体1の下面1bに下面リブ18を取付ける(ステップS3)。なお、下面リブ18の取付けは、側面リブ8の取付けより先に行なってもよく、また側面リブ8の取付と同時に行なってもよい。下面リブ18の取付けでは、側面リブ8の取付と同様に、下面流通領域17の半径方向両側に下面リブ18を夫々立て、下面リブ18の半径方向両側を下面1bに溶接する。これにより、下面流通領域17を半径方向両側から挟んで囲むように一対の下面リブ18が下面1cに立設される。
【0039】
全ての下面流通領域17に対して一対の下面リブ18を立設すると、次に側面流通領域7及び下面流通領域17上に溶射膜13,23を形成する(ステップS4)。ここでは、まず、酸化耐性及び耐熱性を有するコーティング材料を加熱して溶融若しくは軟化させてから側面流通領域7及び下面流通領域17に向かって吹き付けて各領域7,17上にコーティング材を堆積させる。つまり、側面流通領域7及び下面流通領域17上にコーティング材料を溶射する(図5(b)の符号13参照)。これにより、図5(b)に示すように、側面流通領域7上に溶射膜13が形成されると共に、下面流通領域17上にも溶射膜23が形成される。なお、この溶射作業では、一対の側面リブ8及び一対の下面リブ18の内面にもコーティング材を溶射しており、一対の側面リブ8及び一対の下面リブ18の内面にも溶射膜13,23が形成される。
【0040】
溶射膜13,23を形成した後、側面流通領域7を覆うように一対の側面リブ8に側面ジャケット9が溶接され、また下面流通領域17を覆うように一対の下面リブ18に下面ジャケット19が溶接される(ステップS5、図6参照)。これにより、図6に示すように側面流通領域7上に側面流路10が形成され、下面流通領域17上に下面流路20が形成される。更に、各側面ジャケット9,19に排出管11,21及び供給管12,22を取付ける(ステップS6)。そして、排出管11,21を図示しないバルブ等で閉塞し、供給管12,22から各流路10,20に不活性ガス、例えば窒素を供給し、各流路10,20に不活性ガスを充填する(ステップS7)。
【0041】
不活性ガスを充填した後、反応槽本体1の内面にグラスライニング6を施す(ステップS8)。ここでは、まず反応槽本体1の内面のスケールを除去してから反応槽本体1の内面にガラス材料を含む釉薬を反応槽本体1の内面に吹き付ける。なお、釉薬の吹き付けは、不活性ガスの充填より先に行なってもよい。釉薬を内面に吹き付けて乾燥させた後、反応槽本体1を加熱(例えば、800度〜900度)してガラス素材を焼成する。反応槽本体1の内面に形成されるグラスライニング6の厚みが所望の厚みになるまで釉薬の吹き付け及び焼成が繰り返される。これにより、所望の厚みのグラスライニング6が反応槽本体1の内面に施され(図2参照)、反応槽30の製造が終了する。
【0042】
このように反応槽30では、熱を利用する溶射により側面1c及び下面1bに溶射膜13,23を形成するので、溶射膜13,23の形成時に水素ガスや水素イオンが発生して反応槽本体1の鋼板内部に水素ガスや水素イオンが残留することがない。それ故、反応槽本体1の鋼板内部から発生した水素ガスによりグラスライニングが反応槽本体1の内面から剥離したり、破損したりすることを防ぐことができる。
【0043】
反応槽30では、施工後に溶射のように熱を利用した方法で各流通領域7,17に被膜を形成すると、グラスライニング6が熱を加えると剥離し得る。しかし、上述する製造方法によれば、反応槽本体1の内面にグラスライニング6を施す前に溶射膜13,23が形成されるので、溶射膜13を形成することでグラスライニング6が破損するということがなくなる。また、グラスライニング6を施す前に被膜を形成すると、焼成により被膜が焼ける等して損傷することがある。しかし、反応槽30では、耐熱性を有するコーティング材料により溶射膜13,23が形成されているので、焼成に対しても耐えることができる。また、繰り返し行なわれる焼成により加熱及び冷却が繰り返されて溶射膜13,23が繰り返し伸縮するが、コーティング材料が延性材料であるので、そのような伸縮に対しても溶射膜13,23が耐え得る。従って、本実施形態の製造方法によれば、内面にグラスライニング6が施された反応槽本体1に対して、水蒸気による酸化を防げる被膜である溶射膜13,23を流通領域7,17上に熱を利用して形成することができる。
【0044】
また、本実施形態の製造方法によれば、溶射膜13,23を形成し、ジャケット9,19を取付けた後に焼成が行われる。焼成は、反応槽本体1の鋼板に内在する水素イオン及び水素ガスを除去することができる。それ故、製造工程の後段で焼成を行うため、仮に被膜処理で鋼板内に水素イオンが生成したとしても焼成工程にて鋼板内に内在する水素イオン及び水素ガスが除去されることで水素ガスに伴うグラスライニング6の剥離を更に抑制することができる。
【0045】
本実施形態の製造方法では、側面1cに側面リブ8を溶接した後、側面流通領域7にコーティング材を溶射するので、側面流通領域7から側面リブ8の内面まで一体の溶射膜13,23を形成することができる。これにより、側面リブ8と溶射膜13との隙間から水蒸気が侵入して反応槽本体1の側面1cに達することを防ぐことができ、反応槽本体1の酸化をより確実に防ぐことができる。また、反応槽本体1では、前記隙間から侵入した水蒸気によって水蒸気酸化して側面リブ8より腐食電位が卑な鋼板がガルバニック腐食を生じるが、前記隙間からの水蒸気の侵入を防ぐことで、このようなガルバニック腐食も防ぐことができる。
【0046】
[第2実施形態]
本発明に係る第2実施形態の反応槽30Aは、第1実施形態の反応槽30と構成が類似している。以下では、第2実施形態の反応槽30Aの構成について、第1実施形態の反応槽30の構成と異なる点についてだけ説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。以下、第3実施形態及び第4実施形態の反応槽30B,1Cについても同様である。
【0047】
<構成について>
反応槽30Aの反応槽本体1Aには、その側面1cの略全域にコーティング材が溶射されており、取付け部8Aを除く側面1cの略全域に溶射膜13Aが形成されている。取付け部8Aは、側面1cにおいて溶射膜13Aが形成されていない非被覆部である。取付け部8Aは、側面流通領域7の上下両側において、側面流通領域7に沿って螺旋状に形成されており、上下両側で対を成している。取付け部8Aは、後述するように溶射時にマスキングすることで形成されている。一対の取付け部8Aには、側面ジャケット9の両端部(断面視で上下両端部)が夫々溶接されおり、側面ジャケット9は、図7に示すように、反応槽本体1Aの側面1cに直接溶接されている。このように側面ジャケット9を側面1cの取付け部8Aに溶接することで、側面流通領域7上に側面ジャケット9に囲まれた側面流路10が形成される。
【0048】
なお、図示しないが、反応槽本体1Aの下面1bにある各下面流通領域17の半径方向両側にも円環状の取付け部が夫々形成されている。これら2つの取付け部には、下面ジャケット19の両端部(断面視で半径方向両端部)が夫々溶接されており、側面ジャケット9と同様に反応槽本体1Aの下面1cに直接溶接されている。このように下面ジャケット19を側面1cの円環状の取付け部に溶接することで、円還流通領域17上に下面ジャケット19で囲まれた下面流路20が形成される。
【0049】
<製造方法について>
以下では、図8〜図10を参照しながら、反応槽30Aの製造方法について説明する。まず、SM材等の鋼板により縦型円筒形状の反応槽本体1Aを成形する(ステップS11)。次に、側面流通領域7及び下面流通領域17に沿ってそれらの両側にマスキング部材、例えば溶射用マスキングテープ31(図9(a)参照)を貼り付ける(ステップS12)。マスキングテープを貼り付けた後、反応槽本体1Aの側面1c(特に、側面流通領域7及び下面流通領域17)にコーティング材を溶射して、側面1c及び下面1b上に溶射膜13Aを形成する(ステップS13)。これにより、取付け部8A及び円環状の取付け部を除く側面1cの略全域において溶射膜13Aが形成される(図9(a)参照)。
【0050】
溶射膜13Aを形成した後、マスキングテープ31を取外し、側面流通領域7を覆うように取付け部8Aに側面ジャケット9を溶接し、下面流通領域17を覆うように円環状の取付け部に下面ジャケット19を溶接する(ステップS14、図9(b)の符号X3参照)。この際、側面ジャケット9及び下面ジャケット19が断面半円形の半割りジャケットであるため、各ジャケット9,19の外側からしか溶接作業を行うことができない。そこで、各ジャケット9,19の両端部が図9(b)に示すように先鋭状に形成されている。これにより、溶接時に溶融した溶接材料が各ジャケット9,19の外側から内側に導かれて各ジャケット9,19の両端部の内側も反応槽本体1Aに溶接される。また、各ジャケット9,19の内側に溶接材料を導いてジャケット9,19と溶射膜13Aとの間を埋めることで、上述するような反応槽本体1Aの側面1c及び下面1bでガルバニック腐食が生じることを防げる。
【0051】
このように各ジャケット9,19を溶接すると、図9(b)に示すように側面流通領域7上に側面流路10が形成され、下面流通領域17上に下面流路20が形成される。その後は、第1実施形態の反応槽30と同様に、各側面ジャケット9,19に排出管11,21及び供給管12,22を取付け(ステップS15)、各流路10,20に不活性ガス(例えば窒素)を充填する(ステップS16)。そして、図10に示すように、反応槽本体1Aの内面にグラスライニング6を施す(ステップS17、図7参照)。
【0052】
第2実施形態の反応槽30の製造方法によれば、第1実施形態の場合より溶接の回数を減らすことができる。また、部品点数も減らすことができるので、製造コストを削減することができる。その他、第1実施形態と同様に、グラスライニング6が施された反応槽30Aを製造する際に、熱を利用して酸化耐性被膜、つまり溶射膜13Aを反応槽本体1Aの外面に形成しても、グラスライニング6及び溶射膜13Aがどちらも損傷することがない。第2実施形態の製造方法によっても、グラスライニング6が施された反応槽本体1Aの外面に熱を利用した酸化耐性被膜を形成することが可能である。
【0053】
[第3実施形態]
本発明に係る第3実施形態の反応槽30Bの反応槽本体1Bは、図10に示すようにその側面1cに複数の側面流通領域7B(本実施形態では、3つの側面流通領域7B)を有している。側面流通領域7Bは、側面1cの周方向全周にわたって形成されており、側面流通領域7Bの上下両側には、そこから半径方向外方に延在する中空円板状の側面リブ8Bが側面流通領域7Bに沿って夫々溶接されている。これら2つの側面リブ8Bには、側面ジャケット9Bが設けられている。側面ジャケット9Bは、中空円板状で断面半円形の半割りジャケットであり、その半径方向両端部が2つの側面リブ8Bに夫々溶接されて側面流通領域7Bを覆っている。これにより、側面流通領域7B上には、側面ジャケット9B及び2つの側面リブ8Bによって囲まれた円環状の側面流路10Bが形成される。
【0054】
また、反応槽本体1Bは、その下面1cに渦巻状に形成された下面流通領域17Bを有している。下面流通領域17Bの半径方向両側には、そこから下方に延在する下面リブ18Bが下面流通領域17Bに沿って夫々溶接されている。2つの下面リブ18Bは、図11に示すように、下面流通領域17Bに沿って渦巻状に形成されており、その渦巻き方向の両端部が互いに連結されて閉じられている。また、2つの下面リブ18Bには、下面ジャケット19Bが設けられている。下面ジャケット19Bは、渦巻状で断面半円形の半割りジャケットであり、その半径方向両端部が2つの下面リブ18Bに夫々溶接されて下面流通領域17Bを覆っている。これにより、下面流通領域17B上には、下面ジャケット19B及び2つの下面リブ18Bによって囲まれた渦巻状の下面流路20Bが形成される。また、下面ジャケット19Bの渦巻き方向両端部には、排出管21B及び供給管22Bが設けられている。
【0055】
このような構成を有する反応槽30Bは、第1実施形態の製造方法と同様の製造方法で製造することができる。それ故、製造方法については、第1実施形態の製造方法を参照し、説明を省略する。
【0056】
本実施形態の反応槽30Bは、第1実施形態の反応槽30と同様の作用効果奏する。
【0057】
[第4実施形態]
本発明に係る第4実施形態の反応槽30Cの反応槽本体1Cは、図12に示すように、その下面1cに複数の下面流通領域17C(本実施形態では、5つの下面流通領域17C)を有している。下面流通領域17Cは、底面視で円弧状、具体的にはC字状に形成されており、反応槽本体1Cの中心軸線L1を中心として同心円状に位置している。下面流通領域17Cの半径方向両側には、そこから下方に延在する円筒状の下面リブ18Cが下面流通領域17Cに沿って夫々溶接されている。これら2つの下面リブ18Cの周方向の両端部は、互いに連結されて閉じられている。また2つの下面リブ18Cには、下面ジャケット19Cが設けられている。下面ジャケット19Cは、平面C字状で断面半円形の半割りジャケットであり、その半径方向両端部が2つの側面リブ8Cに夫々溶接されて下面流通領域17Cを覆っている。これにより、下面流通領域17C上には、下面ジャケット19C及び2つの下面リブ18Cによって囲まれたC字状の下面流路20Cが形成される。
【0058】
また、下面ジャケット19Cの周方向一端部には、連通管24が設けられており、自身より半径方向外側に位置する下面ジャケット19Cの周方向他端部に繋がっている。なお、半径方向において最も外側に位置する下面ジャケット19Cの周方向一端部には、連通管24ではなく、循環装置に繋がる排出管21Cが設けられている。また、半径方向において最も内側に位置する下面ジャケット19Cの周方向他端部には、循環装置に繋がる供給管22Cが設けられている。
【0059】
このような構成を有する反応槽30Cは、第1実施形態の製造方法と同様の製造方法で製造することができる。それ故、製造方法については、第1実施形態の製造方法を参照し、説明を省略する。
【0060】
本実施形態の反応槽30Cは、第1実施形態の反応槽30と同様の作用効果奏する。
【0061】
[その他の実施形態]
第1〜第4実施形態の反応槽30,30A〜30Cでは、酸化耐性を有する被膜(溶射膜13,13A,23)を溶射によって形成しているが、被膜の形成方法は、溶射に限定されず、熱を利用するものであればよい。この際、被膜に使用する材料は、少なくともグラスライニング6を焼成する際に焼けることなく耐え得る程度の耐熱性能を有する必要がある。
【0062】
また、第1〜第4実施形態における反応槽本体1,1A〜1Cは、縦型円筒形状に限定されず、逆円錐形や、釣鐘状であってもよく、その外形形状については問わない。また、第1〜第4実施形態では、反応機の容器である反応槽30,30A〜30Cに適用した場合について説明したが、濾過乾燥装置や混合装置等、反応機以外の化学工場の容器に適用してもよい。また、各リブ8,18や、各ジャケット9,19の形状もまた、前述する形状に限定されず、蛇腹状であったり、直線的であったりしてもよい。また、反応槽30、各リブ8,18及び各ジャケット9,19同士が溶接によって接合されているが、必ずしも溶接に限定されず、他の接合方法によって接合されてもよい。
【0063】
更に、本実施形態では、伝熱媒体が高圧の場合、その圧力に耐え得るべく半割りのジャケットを使用しているが、伝熱媒体の圧力が低い場合、反応槽本体1,1A〜1Cの側面1c及び下面1bにそれらの略全域を覆うようなジャケットを設けてそのジャケットと側面1c及び下面1bとの間に円環状の空間を形成し、その空間に伝熱媒体を流すようにしてもよい。その場合、側面1c及び下面1bのうち、リブ又は取付け部が形成される部分を除いた略全域が流通領域となり、この流通領域に溶射膜13が形成される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
外面にジャケットを有し、内面にグラスライニングが施されたジャケット付きグラスライニング容器、及びその製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1,1A〜1C 反応槽本体
1b 下面
1c 側面
6 グラスライニング
7,7B 側面流通領域
8,8B,8C 側面リブ
8A 取付け部
9,9B 側面ジャケット
13,13A 溶射膜
17,17B,17C 下面流通領域
18,18B,18C 下面リブ
19,19B,19C 下面ジャケット
23 溶射膜
30,30A〜30C 反応槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面にジャケットを有し、内面にグラスライニングが施されたジャケット付きグラスライニング容器の製造方法であって、
容器本体の外面において媒体が流される流通領域を囲むように取付け部を形成する取付け部形成工程と、
被膜を前記流通領域に熱を利用して形成する被膜形成工程と、
前記取付け部に前記ジャケットを接合して前記流通領域を覆うジャケット接合工程と、
前記ジャケット取付け工程の後、前記容器本体の内面にグラスライニングを施すグラスライニング施工工程とを有する、ジャケット付きグラスライニング容器の製造方法。
【請求項2】
前記被膜形成工程では、溶射により前記被膜を形成する、請求項1に記載のジャケット付きグラスライニング容器の製造方法。
【請求項3】
前記溶射に使用する溶射材料は、金属である、請求項2に記載のジャケット付きグラスライニング容器の製造方法。
【請求項4】
前記グラスライニング施工工程では、前記ジャケット内に不活性ガスを充填した後、前記容器本体の内面にグラスライニングを施す、請求項1乃至3の何れか1つに記載のジャケット付きグラスライニング容器の製造方法。
【請求項5】
前記取付け部は、前記容器本体の外面に立設するリブであり、
前記取付け部形成工程では、前記流通領域を囲むように前記リブが前記容器本体の外面に接合され、
前記被膜形成工程では、前記流通領域から前記リブの前記流通領域側の内面まで被膜を形成する、請求項1乃至4の何れか1つに記載のジャケット付きグラスライニング容器の製造方法。
【請求項6】
内面にグラスライニングが施された容器本体と、
前記容器本体の外面において媒体が流される流通領域を囲むように前記容器本体の外面に溶着されたリブと、
前記リブに溶着されて前記流通領域を覆うジャケットと、
前記流通領域に熱を利用して形成された被膜とを有し、
前記被膜は、前記流通領域から前記リブの前記流通領域側にある内面まで形成されている、ジャケット付きグラスライニング容器。
【請求項7】
前記流通領域は、前記容器本体の外面において螺旋状に延在しており、
前記ジャケットは、断面半円形状に形成されている、請求項6に記載のジャケット付きグラスライニング容器。
【請求項1】
外面にジャケットを有し、内面にグラスライニングが施されたジャケット付きグラスライニング容器の製造方法であって、
容器本体の外面において媒体が流される流通領域を囲むように取付け部を形成する取付け部形成工程と、
被膜を前記流通領域に熱を利用して形成する被膜形成工程と、
前記取付け部に前記ジャケットを接合して前記流通領域を覆うジャケット接合工程と、
前記ジャケット取付け工程の後、前記容器本体の内面にグラスライニングを施すグラスライニング施工工程とを有する、ジャケット付きグラスライニング容器の製造方法。
【請求項2】
前記被膜形成工程では、溶射により前記被膜を形成する、請求項1に記載のジャケット付きグラスライニング容器の製造方法。
【請求項3】
前記溶射に使用する溶射材料は、金属である、請求項2に記載のジャケット付きグラスライニング容器の製造方法。
【請求項4】
前記グラスライニング施工工程では、前記ジャケット内に不活性ガスを充填した後、前記容器本体の内面にグラスライニングを施す、請求項1乃至3の何れか1つに記載のジャケット付きグラスライニング容器の製造方法。
【請求項5】
前記取付け部は、前記容器本体の外面に立設するリブであり、
前記取付け部形成工程では、前記流通領域を囲むように前記リブが前記容器本体の外面に接合され、
前記被膜形成工程では、前記流通領域から前記リブの前記流通領域側の内面まで被膜を形成する、請求項1乃至4の何れか1つに記載のジャケット付きグラスライニング容器の製造方法。
【請求項6】
内面にグラスライニングが施された容器本体と、
前記容器本体の外面において媒体が流される流通領域を囲むように前記容器本体の外面に溶着されたリブと、
前記リブに溶着されて前記流通領域を覆うジャケットと、
前記流通領域に熱を利用して形成された被膜とを有し、
前記被膜は、前記流通領域から前記リブの前記流通領域側にある内面まで形成されている、ジャケット付きグラスライニング容器。
【請求項7】
前記流通領域は、前記容器本体の外面において螺旋状に延在しており、
前記ジャケットは、断面半円形状に形成されている、請求項6に記載のジャケット付きグラスライニング容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−232012(P2011−232012A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105505(P2010−105505)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】
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