説明

スイッチトリラクタンスモータ及びスイッチトリラクタンスモータ装置

【課題】モータ駆動装置のコストを低減させるともに、SRモータから生じる音振動を低減させるため、3相インバータによりロータを駆動することが可能であるとともにステータに作用する径方向の力を分散させることができるSRモータを提供する。
【解決手段】スイッチトリラクタンスモータ1において、ロータ4は、非磁性導電材料からなるロータ本体4aと、磁性材料からなり、ロータ本体4aに円周方向等ピッチに取り付けられた複数のブロック4bとを有する。ステータ突極2aにはそれぞれ巻線3が集中巻にて巻装され、巻線3は、U相、V相およびW相の巻線を形成し、U相、V相、W相の順にて、円周方向略等ピッチに配置された複数のステータ突極2aに円周方向に順に巻装され、U相、V相およびW相の巻線のそれぞれの一端は、非接地である中性点に接続され、U相、V相およびW相の巻線のそれぞれの一端には、外部から制御電流が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチトリラクタンスモータに関し、特に3相インバータを備えるモータ駆動装置で駆動するスイッチトリラクタンスモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11に、一般的な従来のスイッチトリラクタンスモータ100の横断面図を示す。一般に、スイッチトリラクタンスモータ(以下「SRモータ」ともいう。)100は、略円筒状のステータ200と、ステータ200の内側に回転自在に配置されたロータ400とを備えている。ステータ200は、略円環形状のステータ本体200aと、ステータ本体200aの内周面から半径方向内側に一体的に突出し、円周方向等ピッチに配置された複数のステータ突極200bを備えおり、複数のステータ突極200bのそれぞれには、巻線300が集中巻きにて巻装されている。
【0003】
一方、ロータ400は、略円環形状のロータ本体400aと、ロータ本体400aの外周面から半径方向外側に一体的に突出し、円周方向等ピッチに配置された複数のロータ突極400bとを備えている。ここで、図17に示されるSRモータ100は、ステータ突極200bの数が「6」、ロータ突極400bの数が「4」である。
【0004】
互いに対向する位置に配置されたステータ突極SS1、SS4には、U相の巻線U、Uが巻装され、互いに対向する位置に配置されたステータ突極SS2、SS5には、V相の巻線V、Vが巻装され、互いに対向する位置に配置されたステータ突極SS3、SS6には、W相の巻線W、Wが巻装されている。
【0005】
同図は、SRモータ100のロータ400が、時計方向CWに回転するときのSRモータ100の磁気回路についても示している。SRモータ100を時計方向CWに回転させるには、例えば、ロータ突極RR1とステータ突極SS1が近接するとともに、ロータ突極RR3とステータ突極SS4が近接する場合には、U相の巻線U、Uに電流を供給し、互いに対向する位置に配置されたステータ突極SS1、SS4に磁界を生じさせる。
【0006】
この磁界により、SRモータ100には、順に、ステータ突極SS1、ロータ突極RR1、ロータ本体部400a、ロータ突極RR3、ステータ突極SS2、ステータ本体部200a、ステータ突極SS1を磁気回路とする磁束φ1、φ2が形成される。このとき、磁束φ1、φ2の経路のインダクタンスを増加させようとするリラクタンストルクが生じる。そして、インダクタンスを増加させるために、ステータ突極SS1とロータ突極RR1、およびステータ突極SS2とロータ突極RR2の対向面積を増加させるべく、ロータ突極RR1はステータ突極SS1に、ロータ突極RR3はステータ突極SS4に引き付けられ、ロータ400は時計方向CWに回転する。
【0007】
このように、ロータ突極400bとステータ突極200bの相対位置に応じ、U相の巻線U、U、V相の巻線V、V、W相の巻線W、Wの順に、或いはU相の巻線U、U、W相の巻線W、W、V相の巻線V、Vの順に、順次独立して電流を流すことにより、ロータ400を所定の方向に回転させることができる。上記においては、ステータ突極の数が「6」、ロータ突極の数が「4」のSRモータを例にして、U相の巻線、V相の巻線、W相の巻線に順次独立して電流を供給することにより、ロータを回転させることについて説明したが、ステータ突極の数が「6」、ロータ突極の数が「4」のSRモータに限られず、従来のSRモータのロータは、一般にU相の巻線、V相の巻線、W相の巻線に順次独立して電流を流すことにより回転する。
【0008】
上述のSRモータにU相の巻線、U相の巻線U、U、V相の巻線V、V、W相の巻線W、Wの順に、或いはU相の巻線U、U、W相の巻線W、W、V相の巻線V、Vの順に、順次独立して電流を供給する手段として、例えば、図12に示すモータ駆動装置が提案されている(特許文献1)。図12に示すように、モータ駆動装置500は、電源800及びSRモータ100に接続され、SRモータ100に制御信号を供給するインバータ600と、インバータ600に動作信号を供給する駆動制御部700を備えている。
【0009】
インバータ600は、第1乃至第4のハーフブリッジ(610、620、630、640)を備えている。第1のハーフブリッジ610は、接続点aaにて直列に接続された半導体スイッチ素子610a、610bからなり、第2のハーフブリッジ620は、接続点bbにて直列に接続された半導体スイッチ素子620a、620bからなり、第3のハーフブリッジ630は、接続点ccにて直列に接続された半導体スイッチ素子630a、630bからなり、第4のハーフブリッジ640は、接続点ddにて直列に接続された半導体スイッチ素子640a、640bからなる。このように、インバータ600においては、合計8個の半導体スイッチ素子(610a、610b、620a、620b、630a、630b、640a、640b)が用いられている。
【0010】
駆動制御部700は、インバータ600のそれぞれの半導体スイッチ素子(610a、610b、620a、620b、630a、630b、640a、640b)に接続されており、それぞれの半導体スイッチ素子(610a、610b、620a、620b、630a、630b、640a、640b)のオンオフを制御する。電源800の正極は半導体スイッチ素子(610a、620a、630a、640a)に接続され、電源800の負極は半導体スイッチ素子(610b、620b、630b、640b)に接続される。
【0011】
U相の巻線U、V相の巻線VおよびW相の巻線Wのそれぞれの一端は中性点mに接続されるとともに、中性点mは供給線L1にて第1のハーフブリッジ610の接続点aaに、U相の巻線Uの他端は供給線L2にて第2のハーフブリッジ620の接続点bbに、V相の巻線Vの他端は供給線L3にて第3のハーフブリッジ630の接続点ccに、W相の巻線Wの他端は供給線L4にて第4のハーフブリッジ640の接続点ddにそれぞれ接続される。
【0012】
ここで、駆動制御部700からの動作信号により、例えば、半導体スイッチ素子610aおよび半導体スイッチ素子620bをオンとした場合には、供給線L1からU相の巻線Uのみに電流が供給され、半導体スイッチ素子610aおよび半導体スイッチ素子630bをオンとした場合には、供給線L1からV相の巻線Vのみに電流が供給され、半導体スイッチ素子610aおよび半導体スイッチ素子640bをオンとした場合には、供給線L1からW相の巻線Wのみに電流が供給される。
【0013】
このように、U相の巻線、V相の巻線、W相の巻線に順次独立して電流を供給することが求められる従来のSRモータに対し、第1乃至第4のハーフブリッジ(610、620、630、640)を備えたインバータ600を用いることにより、U相の巻線、V相の巻線、W相の巻線に順次独立して電流を供給することができる。
【特許文献1】特開2007−28866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述のようにU相の巻線、V相の巻線、W相の巻線に順次独立して電流を供給することが求められる従来のSRモータにあっては、ブラシレスモータ等に制御電流を供給するインバータとして一般的に用いられている所謂3相インバータを用いることができない。
【0015】
3相インバータは、第1乃至第3のハーフブリッジにより形成されるため、3相インバータにより、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線に制御電流を供給するためには、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線のそれぞれの一端を非接地の中立点に接続し、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線のそれぞれの他端を第1乃至第3のハーフブリッジに接続する構成をとる必要がある。
【0016】
このように、3相インバータにより、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線に制御電流を供給する場合、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線に順次独立して電流を供給することができず、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線のうち、例えば、U相の巻線とV相の巻線のように、同時に少なくとも2つの巻線に制御電流が供給されることとなる。従って、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線に制御電流を供給する場合、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線に順次独立して電流を供給することが必要な従来のSRモータを駆動させることができない。
【0017】
ここで、3相インバータは、それぞれ2個の半導体スイッチ素子で形成される第1乃至第3のハーフブリッジにより形成されるため、合計で6個の半導体スイッチ素子で構成される。一方、一般的な従来のSRモータは、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線に順次独立して電流を供給するために、例えば、特許文献1に示すように、第1乃至第4のハーフブリッジを用いた場合には、合計で8個の半導体スイッチ素子が必要となる。そのため、3相インバータに対し、追加して2個の半導体スイッチ素子が必要となってしまい、その分コストが高くなってしまう結果となる。従って、3相インバータにより、ロータを駆動することが可能なSRモータを提供することが求められる。
【0018】
図13は、SRモータが駆動しているときに、SRモータのステータに作用する力について説明するものである。図19は、上述した一般的な従来のSRモータのであるステータ突極の数が「6」、ロータ突極の数が「4」のSRモータ100の横断面を示すものである。
【0019】
同図では、ロータ突極RR1とステータ突極SS1が近接するとともに、ロータ突極RR3とステータ突極SS4が近接する場合に、U相の巻線U、Uに電流を供給し、互いに対向する位置に配置されたステータ突極SS1、SS4に磁界を生じさせた場合を示す。このとき、ロータ突極RR1とステータ突極SS1との間、および、ロータ突極RR3とステータ突極SS4との間には、ロータ400の回転に寄与する円周方向の力とともに、径方向の力F1、F2が生じる。
【0020】
それぞれの力F10、F20は、機械角180°対向の2箇所の位置に生じるので、略円環形状のステータ200を楕円形状に変形させるように作用する。このことは、U相の巻線U、Uのみならす、V相の巻線V、VまたはW相の巻線W、Wに電流を供給した場合にも同様に生じる。このように、機械角180°対向の2箇所の位置に径方向の力が集中的にステータ200に生じるとステータ200の変形量が大きくなりやすく、SRモータ100から生じる音振動の原因となる。従って、ステータに作用する径方向の力を分散させることができるSRモータが求められる。
【0021】
そこで、本発明の目的は、SRモータのモータ駆動装置のコストを低減させるともに、SRモータから生じる音振動を低減させるため、3相インバータによりロータを駆動することが可能であるとともにステータに作用する径方向の力を分散させることができるSRモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のスイッチトリラクタンスモータは、略円環形状のステータ本体と、前記ステータ本体の内周面から半径方向内側に一体的に突出し、円周方向略等ピッチに配置された複数のステータ突極と、前記ステータ突極に巻装された複数の巻線とを有するステータと、非磁性導電材料からなるロータ本体と、磁性材料からなり、前記ロータ本体に円周方向等ピッチに取り付けられた複数のブロックとを有し、略円柱形状に形成され、前記ステータの内側に回転自在に配置されたロータとを備えるスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記複数の巻線の数と前記ステータ突極の数は同一であり、前記複数の巻線のそれぞれは、前記複数のステータ突極のそれぞれに集中巻にて巻装され。前記複数の巻線にて、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線が形成され、U相、V相、W相の順にて、円周方向略等ピッチに配置された前記複数のステータ突極のそれぞれに円周方向に順に巻装され、前記U相の巻線、前記V相の巻線及び前記W相の巻線のそれぞれの一端は、非接地である中性点に接続され、前記U相の巻線、前記V相の巻線及び前記W相の巻線のそれぞれの一端には、外部から制御電流が供給される。
【0023】
さらに、請求項2に記載のスイッチトリラクタンスモータは、請求項1に記載のスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記ロータ本体には、前記ブロックと同数の凹部が形成され、前記複数のブロックのそれぞれは、前記凹部のそれぞれに取り付けられている。また、本発明の請求項3に記載のスイッチトリラクタンスモータは、本発明の請求項1又は2のいずれか一方に記載のスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記複数の巻線のそれぞれは、前記複数のステータ突極に同方向に巻装されている。
【0024】
このように、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線の一端を非接地である中性点に接続し、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線を所謂スター結線のコイル構造とすることで、3相のインバータで駆動するスイッチトリラクタンスモータとすることができる。
【0025】
本発明の請求項4に記載のスイッチトリラクタンスモータは、請求項1乃至3に記載のスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記ステータ突極の数は「6」とし、前記ブロックの数は「4」とする。
【0026】
このように、ステータ突極の数を「6」とし、ブロックの数を「4」とし、隣接する二つのステータ突極と、一つのブロックにて磁気回路を形成することにより、ステータに生じる径方向の力を分散させることができ、スイッチトリラクタンスモータから生じる音振動を低減させることができる。
【0027】
本発明の請求項5に記載のスイッチトリラクタンスモータ装置は、本発明の請求項1乃至4のいずれか一つに記載された前記スイッチトリラクタンスモータと、前記スイッチトリラクタンスモータに制御電流を供給するモータ駆動装置とからなり、前記モータ駆動装置は、第1の接続点にて直列接続された第1及び第2の半導体スイッチング素子を有し、前記第1の接続点に前記U相の巻線の他端が接続された第1のハーフブリッジと、第2の接続点にて直列接続された第3及び第4の半導体スイッチング素子を有し、前記第2の接続点に前記V相の巻線の他端が接続された第2のハーフブリッジと、第3の接続点にて直列接続された第5及び第6の半導体スイッチング素子を有し、前記第3の接続点に前記W相の巻線の他端が接続された第3のハーフブリッジとを備えた3相インバータと、前記第1乃至第6の半導体スイッチング素子をそれぞれオン、オフ駆動させる駆動信号を生成し、前記第1乃至第6の半導体スイッチング素子に前記駆動信号を供給する駆動制御部とを備える。
【0028】
このように3相インバータでスイッチトリラクタンスモータを駆動するモータ駆動装置とすることで、モータ駆動装置に用いられる半導体スイッチ素子の数を少なくすることができ、モータ駆動装置のコストを低減させることができる。
【0029】
さらに、本発明の請求項6に記載のスイッチトリラクタンスモータ装置は、請求項5に記載のスイッチトリラクタンスモータ装置において、前記第1乃至第6の半導体スイッチング素子はそれぞれ還流ダイオードが逆並列接続された金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであり、前記第1の半導体スイッチ素子のソース端子と前記第2の半導体スイッチ素子のドレイン端子が第1の接続点にて互いに接続され、前記第3の半導体スイッチ素子のソース端子と前記第4の半導体スイッチ素子のドレイン端子が第2の接続点にて互いに接続され、前記第5の半導体スイッチ素子のソース端子と前記第6の半導体スイッチ素子のドレイン端子が第3の接続点にて互いに接続されている。
【発明の効果】
【0030】
このように、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線の一端を非接地である中性点に接続し、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線を所謂スター結線のコイル構造とすることで、3相のインバータで駆動するスイッチトリラクタンスモータとすることができ、モータ駆動装置に用いられる半導体スイッチ素子の数を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、この発明の実施形態のSRモータ装置を図1乃至図3に基づいて説明する。SRモータ装置Aは、SRモータ1と、SRモータ1に制御電流を供給するモータ駆動装置図50とを備える。図1は、SRモータの縦断面図であり、図2は、SRモータの横断面図である。図3は、SRモータ装置のシステムブロック図である。
【0032】
SRモータ1は、ステータ2と、ステータ2の内側にて回転自在に配置されたロータ4とを備える。ステータ2は、薄板の鋼板を積層して形成され、略円環形状のステータ本体2aと、ステータ本体2aの内周面から半径方向内側に一体に突出し、円周方向略等ピッチに配置された複数のステータ突極2bと、複数のステータ突極2bのそれぞれに集中巻にて巻装された複数の巻線3とを有する。
【0033】
このように、各ステータ突極2bに巻線3を集中巻にて巻装することで、2以上のステータ突極に巻線を巻装する場合に必要な渡り線が存在しないので、磁界の形成に寄与しない線材がなく、巻線の電気抵抗が不要に増大することがなく、ステータの軽量化も図られる。
【0034】
ロータ4は、非磁性導電材料であるアルミ合金からなるロータ本体4aと、磁性材料からなり、ロータ本体4aに円周方向略等ピッチに取り付けられた複数のブロック4bとを備える。ロータ本体4aは、所謂アルミダイキャストにて成型され、ロータ本体4aの外周部には、ブロック4bと同数の凹部(C1からC4)が形成されている。一方、ブロック4bは、薄板の電磁鋼鈑を積層して形成されており、ブロック4bのそれぞれは、各凹部(C1からC4)に接着にて固定されている。
【0035】
ロータ本体4aの中央には、略円柱状のシャフト12が固定され、ロータ4とシャフト12は一体的に勘合している。ここで、実施形態のSRモータ1は、ステータ突極2bの数は「6」であり、ブロック4bの数は「4」である。
【0036】
ステータ2は、円筒形状のアルミ製のステータケース5に挿入されるともに、フロントブラケット6およびエンドブラケット7でステータケース5とともに狭持されることにより、フロントブラケット6およびエンドブラケット7に固定される。
【0037】
シャフト12の両端は、フロントブラケット6に外輪が挿入固定された軸受8、およびエンドブラケット7に外輪が挿入固定された軸受9に、それぞれ挿入固定される。そして、フロントブラケット6およびエンドブラケット7により、シャフト12と一体的に勘合したロータ4は、ステータ2の内側にて回転自在に軸支される。
【0038】
SRモータ1のロータ4の回転角度の検出には、レゾルバ10が用いられる。レゾルバ10は、レゾルバステータ10aと、レゾルバステータ10aの内側に配置されるレゾルバロータ10bを備えている。レゾルバステータ10aは、エンドブラケット7の端面に設けられたステータ固定部7aに取り付けられ、レゾルバロータ10bは、シャフト12の端部12aに取り付けられ、レゾルバステータ10aに対向する位置に配置される。このレゾルバ10からの回転角度信号に基づき、モータ駆動装置50は、SRモータ1に対し、所定の制御電流を供給する。
【0039】
複数の巻線3のそれぞれは、ステータ2の複数のステータ突極2bのそれぞれに、円周方向に順に、U相、V相、W相の順にて、集中巻にて巻装されている。図2においては、ステータ突極S1にU相の巻線U1が巻装され、ステータ突極S2にV相の巻線V1が巻装され、ステータ突極S3にW相の巻線W1が巻装され、ステータ突極S4にU相の巻線U2が巻装され、ステータ突極S5にV相の巻線V2が巻装され、ステータ突極S6にW相の巻線W2が巻装されている。
【0040】
次に、図3に基づきSRモータ装置Aの構成について説明する。SRモータ装置Aは、SRモータ1と、SRモータ1に制御電流を供給するモータ駆動装置50を備える。まず、上述のようにSRモータ1の複数のステータ突極2bに巻装される複数の巻線3の結線について説明する。
【0041】
U相の巻線U1、U2、V相の巻線V1、V2およびW相の巻線W1、W2は、それぞれ互いに並列に接続されている。そして、U相の巻線U1、U2の一端Un、V相の巻線V1、V2の一端VnおよびW相の巻線W1、W2の一端Wnは、それぞれ非接地の中性点nに接続されている。一方、U相の巻線U1、U2の他端Us、V相の巻線V1、V2の他端VsおよびW相の巻線W1、W2の他端Wsは、それぞれ互いに接続されていない。他端Us、Vs、Wsには外部から制御電流が供給される。すなわち、U相の巻線U1、U2、V相の巻線V1、V2およびW相の巻線W1、W2は、所謂スター結線構造となっており、他端Us、Vs、Wsには外部から制御電流が供給される。
【0042】
モータ駆動装置50は、インバータ60と、駆動制御部70とを備えており、電圧値DC72Vの電源80と、SRモータ1の巻線3の間に接続され、SRモータ1に制御電流を供給する。インバータ60は、第1乃至第3のハーフブリッジ61、62、63を備えており、所謂3相インバータである。
【0043】
第1のハーフブリッジ61は、第1および第2の半導体スイッチ素子61a、61bを備えており、第1および第2の半導体スイッチ素子61a、61bは、接続点a(第1の接続点)にて直列に接続されている。本実施形態において、第1および第2の半導体スイッチ素子61a、61bは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(metal−oxide semiconductor field−effect transistor、以下これを略し単に「MOSFET」という。)であり、それぞれに還流ダイオード61c、61dが逆並列接続されている。
【0044】
すなわち、第1および第2の半導体スイッチ素子61a、61bのドレイン端子には、還流ダイオード61c、61dのカソード端子が接続され、第1および第2の半導体スイッチ素子61a、61bのソース端子には、還流ダイオード61c、61dのアノード端子が接続されている。そして、第1の半導体スイッチ素子61aのソース端子と第2の半導体スイッチ素子61bのドレイン端子が接続点a(第1の接続点)にて直列に接続され、第1のハーフブリッジ61は形成される。
【0045】
第2のハーフブリッジ62は、第3および第4の半導体スイッチ素子62a、62bを備えており、第3および第4の半導体スイッチ素子62a、62bは、接続点b(第2の接続点)にて直列に接続されている。本実施形態において、第3および第4の半導体スイッチ素子62a、62bは、MOSFETであり、それぞれに還流ダイオード62c、62dが逆並列接続されている。
【0046】
すなわち、第3および第4の半導体スイッチ素子62a、62bのドレイン端子には、還流ダイオード62c、62dのカソード端子が接続され、第3および第4の半導体スイッチ素子62a、62bのソース端子には、還流ダイオード62c、62dのアノード端子が接続されている。そして、第3の半導体スイッチ素子62aのソース端子と第4の半導体スイッチ素子62bのドレイン端子が接続点b(第2の接続点)にて直列に接続され、第2のハーフブリッジ62は形成される。
【0047】
第3のハーフブリッジ63は、第5および第6の半導体スイッチ素子63a、63bを備えており、第5および第6の半導体スイッチ素子63a、63bは、接続点c(第3の接続点)にて直列に接続されている。本実施形態において、第5および第6の半導体スイッチ素子63a、63bは、MOSFETであり、それぞれに還流ダイオード63c、63dが逆並列接続されている。
【0048】
すなわち、第5および第6の半導体スイッチ素子63a、63bのドレイン端子には、還流ダイオード63c、63dのカソード端子が接続され、第5および第6の半導体スイッチ素子63a、63bのソース端子には、還流ダイオード63c、63dのアノード端子が接続されている。そして、第5の半導体スイッチ素子63aのソース端子と第6の半導体スイッチ素子63bのドレイン端子が接続点c(第3の接続点)にて直列に接続され、第3のハーフブリッジ63は形成される。
【0049】
第1乃至第3のハーフブリッジ61、62、63は、それぞれの第1、第3、第5の半導体スイッチ素子61a、62a、63aのドレイン端子が接続点dに接続されるとともに、それぞれの第2、第4、第6の半導体スイッチ素子61b、62b、63bのソース端子が接続点eに接続されている。これにより、第1乃至第3のハーフブリッジ61、62、63は、互いに並列に接続され、第1乃至第3のハーフブリッジ61、62、63により3相インバータであるインバータ60が形成される。
【0050】
インバータ60の接続点dは、電源80の正極に、接続点eは電源の負極にそれぞれ接続されている。そして、第1乃至第6の半導体スイッチ素子(61a、61b、62a、62b、63a、63b)のオンオフ動作により、電源80からインバータ60を介してSRモータ1に制御電流が供給される。
【0051】
駆動制御部70は、第1乃至第6の半導体スイッチ素子(61a、61b、62a、62b、63a、63b)のゲート端子とソース端子に接続され、第1乃至第6の半導体スイッチ素子(61a、61b、62a、62b、63a、63b)をそれぞれオン、オフ駆動させる駆動信号を生成し、第1乃至第6の半導体スイッチ素子(61a、61b、62a、62b、63a、63b)に駆動信号を供給する。
【0052】
インバータ60の接続点dは、電源80の正極に、接続点eは電源の負極にそれぞれ接続されている。一方、U相の巻線U1、U2の他端Usは、供給線l1により接続点a(第1の接続点)に接続され、V相の巻線V1、V2の他端Vsは、供給線l2により接続点b(第2の接続点)に接続され、W相の巻線W1、W2の他端Wsは、供給線l3により接続点c(第3の接続点)に接続される。そして、駆動制御部70から供給される駆動信号により、第1乃至第6の半導体スイッチ素子(61a、61b、62a、62b、63a、63b)がオンオフ動作され、電源80からインバータ60を介してSRモータ1のU相の巻線U1、U2、V相の巻線V1、V2およびW相の巻線W1、W2に制御電流が供給される。
【0053】
図4に基づき、巻線3のステータ突極2bへの巻装構造について説明する。図4は、巻線3が巻装されたステータ突極2bを平面上に展開した図である。上述のように、ステータ突極S1にU相の巻線U1が巻装され、ステータ突極S2にV相の巻線V1が巻装され、ステータ突極S3にW相の巻線W1が巻装され、ステータ突極S4にU相の巻線U2が巻装され、ステータ突極S5にV相の巻線V2が巻装され、ステータ突極S6にW相の巻線W2が巻装されている。ここで、U相の巻線U1、U2、V相の巻線V1、V2およびW相の巻線W1、W2は、全て同方向に巻かれており、本実施形態では、紙面視において、全て反時計方向に巻かれている。
【0054】
上述のように、ステータ突極2bの数を「6」とし、ブロック4bの数を「4」とし、ステータ突極2bのそれぞれに円周方向に順に、U相の巻線U1、V相の巻線V1、W相の巻線W1、U相の巻線U2、V相の巻線V2をW相の巻線W2を巻装するSRモータ1とすることで、3相のインバータ60により動作するSRモータ装置Aとすることができる。これにより、例えば、図12に示す従来例のインバータ600に対し、半導体スイッチ素子の数を2つ減らすことができ、モータ駆動装置のコストの低減および小型化を実現することができる。
【0055】
次に、図5から図9に基づき、本実施形態のSRモータ装置Aの動作について説明する。図5は、一の方向にSRモータのロータを回転させるときに、駆動制御部が、第1乃至第6の半導体スイッチ素子に供給する動作信号を示すタイミングチャート図である。図6は、図5の動作信号が駆動制御部から第1乃至第6の半導体スイッチ素子に供給されたときに巻線に流れる電流を示す図である。
【0056】
図7から図9は、図5に示す動作信号を駆動制御部70から第1乃至第6の半導体スイッチ素子に供給するタイミング、および、図5に示す動作信号が駆動制御部70から第1乃至第6の半導体スイッチ素子に供給されたときのSRモータのロータの動作を説明する図である。
【0057】
図5において、動作信号UHは駆動制御部70から第1の半導体スイッチ素子61aに供給される信号であり、動作信号ULは駆動制御部70から第2の半導体スイッチ素子61bに供給される動作信号である。動作信号VHは駆動制御部70から第3の半導体スイッチ素子62aに供給される信号であり、動作信号VLは駆動制御部70から第4の半導体スイッチ素子62bに供給される動作信号である。動作信号WHは駆動制御部70から第5の半導体スイッチ素子63aに供給される信号であり、動作信号WLは駆動制御部70から第6の半導体スイッチ素子63bに供給される動作信号である。
【0058】
ここで、縦軸は、各動作信号(UH、UL、VH、VL、WH、WL)のオンオフを示し、各動作信号(UH、UL、VH、VL、WH、WL)は、第1乃至第6の半導体スイッチ素子(61a、61b、62a、62b、63a、63b)にオン動作を指令するときは「1」であり、オフ動作を指令するときは「0」である。また、横軸は、時刻Tを示し、時刻T0から時刻T6が、駆動制御部70から供給される動作信号の一周期を示し、時刻T0から時刻T6は電気角360°に相当する。
【0059】
ここで、時刻T0から時刻T6は、(1)時刻T0から時刻T1、(2)時刻T1から時刻T2、(3)時刻T2から時刻T3、(4)時刻T3から時刻T4、(5)刻T4から時刻T5、(6)時刻T5から時刻T6に6等分されており、それらは電気角60°に相当する。
【0060】
同図は、一の方向にSRモータのロータを回転させるときの駆動制御部70からの各動作信号(UH、UL、VH、VL、WH、WL)を示したものであり、(1)時刻T0から時刻T1においては、動作信号UH、VLが「1」であり、(2)時刻T1から時刻T2においては、動作信号VL、WHが「1」であり、(3)時刻T2から時刻T3においては、動作信号UL、WHが「1」である。また、(4)時刻T3から時刻T4においては、動作信号UL、VHが「1」であり、(5)時刻T4から時刻T5においては、動作信号VH、WLが「1」であり、(6)時刻T5から時刻T6においては、動作信号UH、WLが「1」である。
【0061】
次に、図6に基づき、図5に示す動作信号(UH、UL、VH、VL、WH、WL)が駆動制御部70から第1乃至第6の半導体スイッチ素子(61a、61b、62a、62b、63a、63b)に供給されたときにU相乃至W相の巻線(U1、U2、V1、V2、W1、W2)に流れる電流を説明する。
【0062】
(1)時刻T0から時刻T1において、動作信号UH、VLが「1」となると、第1および第4の半導体スイッチ素子61a、62bがオンとなり、U相の巻線U1、U2からV相の巻線V1、V2に電流が流れる。(2)時刻T1から時刻T2において、動作信号VL、WHが「1」となると、第4および第5の半導体スイッチ素子62b、63aがオンとなり、W相の巻線W1、W2からV相の巻線V1、V2に電流が流れる。
【0063】
(3)時刻T2から時刻T3において、動作信号UL、WHが「1」となると、第2および第5の半導体スイッチ素子61b、63aがオンとなり、W相の巻線W1、W2からU相の巻線U1、U2に電流が流れる。(4)時刻T3から時刻T4において、動作信号UL、VHが「1」となると、第2および第3の半導体スイッチ素子61b、62aがオンとなり、V相の巻線V1、V2からU相の巻線U1、U2に電流が流れる。
【0064】
(5)時刻T4から時刻T5において、動作信号VH、WLが「1」となると、第3および第6の半導体スイッチ素子62a、63bがオンとなり、V相の巻線V1、V2からW相の巻線W1、W2に電流が流れる。(6)時刻T5から時刻T6において、動作信号UH、WLが「1」となると、第1および第6の半導体スイッチ素子61a、63bがオンとなり、U相の巻線U1、U2からW相の巻線W1、W2に電流が流れる。
【0065】
ここで、(1)では、U相の巻線U1、U2からV相の巻線V1、V2に向けて電流が流れ、その後制御電流が転流され、(2)では、W相の巻線W1、W2からV相の巻線V1、V2に向けて電流が流れる。そのため、(1)および(2)では、ともにV相の巻線V1、V2に同方向の電流が流れるため、(1)にてV相の巻線V1、V2に蓄えられた電気エネルギーは、(2)にて打ち消されることなく有効に利用される。そのため、(1)から(2)への制御電流の転流が効率よく円滑になされる。
【0066】
同様に、(2)では、W相の巻線W1、W2からV相の巻線V1、V2に向けて電流が流れ、その後制御電流が転流され、(3)では、W相の巻線W1、W2からU相の巻線U1、U2に向けて電流が流れる。そのため、(2)および(3)では、ともにW相の巻線W1、W2に同方向の電流が流れるため、(2)にてW相の巻線W1、W2に蓄えられた電気エネルギーは、(3)にて打ち消されることなく、有効に利用される。そのため、(2)から(3)への制御電流の転流が効率よく円滑になされる。
【0067】
(3)では、W相の巻線W1、W2からU相の巻線U1、U2に向けて電流が流れ、その後制御電流が転流され、(4)では、V相の巻線V1、V2からU相の巻線U1、U2に向けて電流が流れる。そのため、(3)および(4)では、ともにU相の巻線U1、U2に同方向の電流が流れるため、(3)にてU相の巻線U1、U2に蓄えられた電気エネルギーは、(4)にて打ち消されることなく有効に利用される。そのため、(3)から(4)への制御電流の転流が効率よく円滑になされる。
【0068】
(4)では、V相の巻線V1、V2からU相の巻線U1、U2に向けて電流が流れ、その後制御電流が転流され、(5)では、V相の巻線V1、V2からU相の巻線W1、W2に向けて電流が流れる。そのため、(4)および(5)では、ともにV相の巻線V1、V2に同方向の電流が流れるため、(4)にてV相の巻線V1、V2に蓄えられた電気エネルギーは、(5)にて打ち消されることなく、有効に利用される。そのため、(4)から(5)への制御電流の転流が効率よく円滑になされる。
【0069】
(5)では、V相の巻線V1、V2からW相の巻線W1、W2に向けて電流が流れ、その後制御電流が転流され、(6)では、U相の巻線U1、U2からW相の巻線W1、W2に向けて電流が流れる。そのため、(5)および(6)では、ともにW相の巻線W1、W2に同方向の電流が流れるため、(5)にてW相の巻線W1、W2に蓄えられた電気エネルギーは、(6)にて打ち消されることなく有効に利用される。そのため、(5)から(6)への制御電流の転流が効率よく円滑になされる。
【0070】
このように(1)から(6)の電気角360°の一周期において、転流が効率よく円滑になされる。そして、その後、(6)から(1)への制御電流の転流においても、(6)では、U相の巻線U1、U2からW相の巻線W1、W2に向けて電流が流れ、その後制御電流が転流され、(1)では、U相の巻線U1、U2からV相の巻線V1、V2に向けて電流が流れる。そのため、(6)および(1)では、ともにU相の巻線U1、U2に同方向の電流が流れるため、(6)にてU相の巻線U1、U2に蓄えられた電気エネルギーは、(1)にて打ち消されることなく有効に利用される。そのため、(6)から(1)への制御電流の転流が効率よく円滑になされる。この結果、(1)から(6)の転流が順次繰り替えられても各転流は効率よく円滑になされる。
【0071】
次に、図7から図9に基づき、図5に示す動作信号(UH、UL、VH、VL、WH、WL)を駆動制御部70から第1乃至第6の半導体スイッチ素子(61a、61b、62a、62b、63a、63b)に供給するタイミング、および、図5に示す動作信号(UH、UL、VH、VL、WH、WL)が駆動制御部70から第1乃至第6の半導体スイッチ素子(61a、61b、62a、62b、63a、63b)を供給されたときのSRモータ1のロータ4の動作等を説明する。なお、図7に示すように、ロータ4を紙面視にて、時計方向CWに回転させる場合につき説明する。
【0072】
図7から図9において、基準線BL1は、SRモータ1のシャフト12の軸心Oとステータ突極S1の円周方向の中央を結んだ線であり、ステータ突極S1の基準位置を示す線であり、基準線BL2は、SRモータ1のシャフト12の軸心OからブロックR4の円周方向の中央を結んだ線であり、ブロックR4の基準位置を示す線である。また、回転角度ξは、図7から図12においては、基準線BL1に対する基準線BL2の相対角度を示し、回転角度ξは、ステータ2に対するロータ4の回転角度を示すものである。なお、回転角度ξは、図7から図9においては、時計方向CWを正とする。
【0073】
本実施形態のモータ駆動装置50は、SRモータ1に取り付けられたレゾルバ10にてステータ2に対するロータ4の回転角度ξを検出し、検出された回転角度ξに基づき駆動制御部70から供給する動作信号UH、UL、VH、VL、WH、WL)を制御し、U相の巻線U1、U2、V相の巻線V1、V2、およびW相の巻線W1、W2へ制御電流を供給する。
【0074】
図7では、U相の巻線U1、U2およびV相の巻線V1、V2への制御電流の供給を開始するタイミング、すなわち、図5にて「時刻T0」と設定し、U相の巻線U1、U2およびV相の巻線V1、V2への制御電流の供給を開始するときのSRモータ1が示される。ここで、同図では、ステータ突極S1に対して、ブロックR4が回転角度ξ(T0)の位置の状態のSRモータ1が示される。本実施形態では、回転角度ξ(T0)は「30°」に設定され、レゾルバ10により検出される回転角度ξが「30°」のときに「時刻T0」と設定され、U相の巻線U1、U2およびV相の巻線V1、V2への制御電流の供給を開始する。
【0075】
さらに、同図は、回転角度ξ(T0)のときに、SRモータ1に形成される磁束φ0a、φ0b、およびロータ4の動作を示す。回転角度ξ(T0)のとき、ブロックR1は、ステータ突極S1、S2に対し、ブロックR1の円周方向中央とステータ突極S2の円周方向中央が、それぞれ径方向に略正対した位置にある。一方、ステータ突極S1の反時計方向CCW端に対するブロックR4の時計方向CW端の位置は、磁路が形成される程度に反時計方向CCWに若干ずれている。
【0076】
従って、U相の巻線U1およびV相の巻線V1に制御電流が供給されると、順に、ステータ突極S2、ブロックR1、ステータ突極S1、ステータ本体2aを経路とする磁束φ0aが流れる。ここで、ロータ本体4aは、非磁性導電材料であるアルミ合金にて形成されているため、磁束φ0aはロータ本体4aに漏れることはない。
【0077】
同様に、回転角度ξ(T0)のとき、ブロックR3は、ステータ突極S4,S5に対し、ブロックR3の円周方向中央とステータ突極S5の円周方向中央とが、径方向に略正対した位置にある。一方、ステータ突極S4の反時計方向CCW端に対するブロックR3の時計方向CW端の位置は、磁路が形成される程度に反時計方向CCWに若干ずれている。
【0078】
従って、U相の巻線U2およびV相の巻線V2に制御電流が供給されると、順に、ステータ突極S5、ブロックR3、ステータ突極S4、ステータ本体2aを経路とする磁束φ0bが流れる。こで、ロータ本体4aは、非磁性導電材料であるアルミ合金にて形成されているため、磁束φ0bはロータ本体4aに漏れることはない。
【0079】
このとき、上記に示す磁束φ0a、φ0bの経路のインダクタンスを増大させようとする作用がSRモータ1に生じる。ここで、磁束φ0a、φ0bの磁束量は、一つには、ステータ突極S1、S2とブロックR1との対向面積と、ステータ突極S4、S5とブロックR3との対向面積の総和を大きくすることにより増大する。そのため、磁束φ0a、φ0bの磁束量を増大させるべく、ブロックR1、R3には、ロータ4を時計方向CWに回転させる吸引力が生じる。この吸引力によるリラクタンストルクにより、結果としてロータ4は、時計方向CWに回転する。
【0080】
ここで、次の転流までU相の巻線U1、U2およびV相の巻線V1、V2に制御電流が供給されるのは、時刻T0から時刻T1までの電気角60°の時間であり、そのときロータ4は、機械角「30°」回転する。
【0081】
図8では、V相の巻線V1、V2およびW相の巻線W1、W2への制御電流の供給を開始するタイミング、すなわち、図5にて「時刻T1」と設定し、V相の巻線V1、V2およびW相の巻線W1、W2への制御電流の供給を開始するときのSRモータ1が示される。ここで、同図では、ステータ突極S1に対して、ブロックR4が回転角度ξ(T1)の位置の状態のSRモータ1が示される。本実施形態では、回転角度ξ(T1)は「60°」に設定され、レゾルバ10により検出される回転角度ξが「60°」のときに「時刻T1」と設定され、V相の巻線V1、V2およびW相の巻線W1、W2への制御電流の供給を開始する。
【0082】
さらに、同図は、回転角度ξ(T1)のときに、SRモータ1に形成される磁束φ1a、φ1b、およびロータ4の動作を示す。回転角度ξ(T1)のとき、ブロックR2は、ステータ突極S2、S3に対し、ブロックR2の円周方向中央とステータ突極S3の円周方向中央が、径方向に略正対した位置にある。一方、ステータ突極S2の反時計方向CCW端に対するブロックR2の時計方向CW端の位置は、磁路が形成される程度に反時計方向CCWに若干ずれている。
【0083】
従って、V相の巻線V1およびW相の巻線W1に制御電流が供給されると、順に、ステータ突極S2、ブロックR2、ステータ突極S3、ステータ本体2aを経路とする磁束φ1aが流れる。ここで、ロータ本体4aは、非磁性導電材料であるアルミ合金にて形成されているため、磁束φ1aはロータ本体4aに漏れることはない。
【0084】
同様に、回転角度ξ(T1)のとき、ブロックR4は、ステータ突極S5,S6に対し、ブロックR4の円周方向中央とステータ突極S6の円周方向中央が、径方向に略正対した位置にある。一方、ステータ突極S5の反時計方向CCW端に対するブロックR4の時計方向CW端の位置は、磁路が形成される程度に反時計方向CCWに若干ずれている。
【0085】
従って、V相の巻線V2およびW相の巻線W2に制御電流が供給されると、順に、ステータ突極S5、ブロックR4、ステータ突極S6、ステータ本体2aを経路とする磁束φ1bが流れる。こで、ロータ本体4aは、非磁性導電材料であるアルミ合金にて形成されているため、磁束φ0bはロータ本体4aに漏れることはない。
【0086】
このとき、上記に示す磁束φ1a、φ1bの経路のインダクタンスを増大させようとする作用がSRモータ1に生じる。ここで、磁束φ1a、φ1bの磁束量は、一つには、ステータ突極S2、S3とブロックR2との対向面積と、ステータ突極S5、S6とブロックR4との対向面積の総和を大きくすることにより増大する。そのため、磁束φ1a、φ1bの磁束量を増大させるべく、ブロックR2、R4には、ロータ4を時計方向CWに回転させる吸引力が生じる。この吸引力によるリラクタンストルクにより、結果としてロータ4は、時計方向CWに回転する。
【0087】
ここで、次の転流までV相の巻線V1、V2およびW相の巻線W1、W2に制御電流が供給されるのは、時刻T1から時刻T2までの電気角60°の時間であり、そのときロータ4は、機械角「30°」回転する。
【0088】
図9では、W相の巻線W1、W2およびU相の巻線U2、U1への制御電流の供給を開始するタイミング、すなわち、図5にて「時刻T2」と設定し、W相の巻線W1、W2およびU相の巻線U2、U1への制御電流の供給を開始するときのSRモータ1が示される。ここで、同図では、ステータ突極S1に対して、ブロックR4が回転角度ξ(T2)の位置の状態のSRモータ1が示される。本実施形態では、回転角度ξ(T2)は「90°」に設定され、レゾルバ10により検出される回転角度ξが「90°」のときに「時刻T2」と設定され、W相の巻線W1、W2およびU相の巻線U2、U1への制御電流の供給を開始する。
【0089】
さらに、同図は、回転角度ξ(T2)のときに、SRモータ1に形成される磁束φ2a、φ2b、およびロータ4の動作を示す。回転角度ξ(T2)のとき、ブロックR3は、ステータ突極S3、S4に対し、ブロックR3の円周方向中央とステータ突極S4の円周方向中央が、径方向に略正対した位置にある。一方、ステータ突極S3の反時計方向CCW端に対するブロックR3の時計方向CW端の位置は、磁路が形成される程度に反時計方向CCWに若干ずれている
【0090】
従って、W相の巻線W1およびU相の巻線U2に制御電流が供給されると、順に、ステータ突極S4、ブロックR3、ステータ突極S3、ステータ本体2aを経路とする磁束φ2aが流れる。ここで、ロータ本体4aは、非磁性導電材料であるアルミ合金にて形成されているため、磁束φ2aはロータ本体4aに漏れることはない。
【0091】
同様に、回転角度ξ(T2)のとき、ブロックR1は、ステータ突極S6、S1に対し、ブロックR1の円周方向中央とステータ突極S1の円周方向中央が、径方向に略正対した位置にある。一方、ステータ突極S6の反時計方向CCW端に対するブロックR1の時計方向CW端の位置は、磁路が形成される程度に反時計方向CCWに若干ずれている。
【0092】
従って、W相の巻線W2およびU相の巻線U1に制御電流が供給されると、順に、ステータ突極S1、ブロックR1、ステータ突極S6、ステータ本体2aを経路とする磁束φ2bが流れる。こで、ロータ本体4aは、非磁性導電材料であるアルミ合金にて形成されているため、磁束φ0bはロータ本体4aに漏れることはない。
【0093】
このとき、上記に示す磁束φ2a、φ2bの経路のインダクタンスを増大させようとする作用がSRモータ1に生じる。ここで、ここで、磁束φ2a、φ2bの磁束量は、一つには、ステータ突極S3、S4とブロックR3との対向面積と、ステータ突極S6、S1とブロックR1との対向面積の総和を大きくすることにより増大する。そのため、磁束φ2a、φ2bの磁束量を増大させるべく、ブロックR3、R1には、ロータ4を時計方向CWに回転させる吸引力が生じる。この吸引力によるリラクタンストルクにより、結果としてロータ4は、時計方向CWに回転する。
【0094】
ここで、次の転流までW相の巻線W1、W2およびU相の巻線U2、U1に制御電流が供給されるのは、時刻T1から時刻T2までの電気角60°の時間であり、そのときロータ4は、機械角「30°」回転する。
【0095】
このように、電気角60°毎にロータ4は機械角30°回転するため、モータ駆動装置50からSRモータ1に供給される制御電流が一周期(電気角360°)毎に、ロータ4は機械角180°回転する。そして、この制御電流を所定時間供給することにロータ4は連続的に回転する。
【0096】
次に、本実施形態のSRモータ1の音振動の低減効果について、図10に基づき説明する。図10は、SRモータのロータが回転動作するときに、SRモータに生じる磁束によりステータに作用する力を示す図である。同図では、U相の巻線U1、U2およびW相の巻線W1、W2に制御電流が供給された場合が示されている。
【0097】
U相の巻線U1、U2およびW相の巻線W2、W1に制御電流が供給されると、順に、ステータ突極S1、ブロックR1、ステータ突極S6、ステータ本体2aを経路とする磁束φ2aが流れるとともに、順に、ステータ突極S4、ブロックR3、ステータ突極S3、ステータ本体2aを経路とする磁束φ2bが流れる。
【0098】
このとき、磁束φ2a、φ2bを形成する磁束線の経路を短くすべく作用する径方向の力として、力F1がステータ突極S1とブロックR1との間に、力F2がステータ突極S6とブロックR1との間に、力F3がステータ突極S4とブロックR3との間に、力F4がステータ突極S3とブロックR3との間に生じ、それらの力(F1、F2、F3、F4)は、4箇所に分散して生じている。そして、それらの力(F1、F2、F3、F4)により、ステータ2は変形し、SRモータ1に生じる音振動の原因となる。
【0099】
ここで、図13に示す従来方式のSRモータ100は、径方向の力として機械角180°対向の2箇所の位置に力(F10、F20)が集中して生じる。一方、本実施形態のSRモータ1の力(F1、F2、F3、F4)は4箇所に分散して生じているため、力(F1、F2、F3、F4)は力(F10、F20)に比して小さくなる。また、力(F1、F2、F3、F4)は4箇所に分散して生じているため、ステータ2の変形は従来方式に比して小さくなる。そのため、SRモータ1に生じる音振動は低減される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施形態におけるSRモータの縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるSRモータの横断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるSRモータ装置のシステムブロック図である。
【図4】本発明の実施形態におけるステータ突極を平面上に展開した図である。
【図5】駆動制御部が、半導体スイッチ素子に供給する動作信号を示すタイミングチャート図である。
【図6】図5に示す動作信号が半導体スイッチ素子に供給されたときに巻線に流れる電流を示す図である
【図7】時刻T0から時刻T1において、図5に示す動作信号が半導体スイッチ素子に供給されたときのSRモータのロータの動作を説明する図である。
【図8】時刻T1から時刻T2において、図5に示す動作信号が半導体スイッチ素子に供給されたときのSRモータのロータの動作を説明する図である。
【図9】時刻T2から時刻T3において、図5に示す動作信号が半導体スイッチ素子に供給されたときのSRモータのロータの動作を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態におけるSRモータのロータが回転動作するときに、ステータに作用する力を示す図である。
【図11】従来例におけるSRモータの横断面図である。
【図12】従来例におけるSRモータ装置のシステムブロック図である。
【図13】従来例におけるSRモータのロータが回転動作するときに、ステータに作用する力を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
A SRモータ装置
1 スイッチトリラクタンスモータ
2 ステータ
2a ステータ本体
2b ステータ突極
3 巻線
4 ロータ
4a ロータ本体
4b ブロック
50 モータ駆動装置
60 インバータ
61 第1のハーフブリッジ
61a 第1の半導体スイッチング素子
61b 第2の半導体スイッチング素子
62 第2のハーフブリッジ
62a 第3の半導体スイッチング素子
62b 第4の半導体スイッチング素子
63 第3のハーフブリッジ
62a 第5の半導体スイッチング素子
62b 第6の半導体スイッチング素子
61c、61d、62c、62d、63c、63d 還流ダイオード
70 駆動制御部
C1、C2、C3、C4 凹部
R1、R2、R3、R4 ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円環形状のステータ本体と、前記ステータ本体の内周面から半径方向内側に一体的に突出し、円周方向略等ピッチに配置された複数のステータ突極と、前記ステータ突極に巻装された複数の巻線とを有するステータと、
非磁性導電材料からなるロータ本体と、磁性材料からなり、前記ロータ本体に円周方向等ピッチに取り付けられた複数のブロックとを有し、略円柱形状に形成され、前記ステータの内側に回転自在に配置されたロータとを備えるスイッチトリラクタンスモータにおいて、
前記複数の巻線の数と前記ステータ突極の数は同一であり、前記複数の巻線のそれぞれは、前記複数のステータ突極のそれぞれに集中巻にて巻装され。
前記複数の巻線にて、U相の巻線、V相の巻線およびW相の巻線が形成され、U相、V相、W相の順にて、前記複数の巻線のそれぞれは、円周方向略等ピッチに配置された前記複数のステータ突極のそれぞれに円周方向に順に巻装され、
前記U相の巻線、前記V相の巻線及び前記W相の巻線のそれぞれの一端は、非接地である中性点に接続される端子であり、前記U相の巻線、前記V相の巻線及び前記W相の巻線のそれぞれの一端には、外部から制御電流が供給される端子であることを特徴とするスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチトリラクタンスモータおいて、前記ロータ本体には、前記ブロックと同数の凹部が形成され、前記複数のブロックのそれぞれは、前記凹部のそれぞれに取り付けられていることを特徴とするスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一方に記載のスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記複数の巻線のそれぞれは、前記複数のステータ突極に同方向に巻装されていることを特徴とするスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記ステータ突極の数は「6」であり、前記ブロックの数は「4」であることを特徴とするスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一方に記載のスイッチトリラクタンスモータと、前記スイッチトリラクタンスモータに制御電流を供給するモータ駆動装置とからなるスイッチトリラクタンスモータ装置において、
前記モータ駆動装置は、
第1の接続点にて直列接続された第1及び第2の半導体スイッチング素子を有し、前記第1の接続点に前記U相の巻線の他端が接続された第1のハーフブリッジと、
第2の接続点にて直列接続された第3及び第4の半導体スイッチング素子を有し、前記第2の接続点に前記V相の巻線の他端が接続された第2のハーフブリッジと、
第3の接続点にて直列接続された第5及び第6の半導体スイッチング素子を有し、前記第3の接続点に前記W相の巻線の他端が接続された第3のハーフブリッジとを備えた3相インバータと、
前記第1乃至第6の半導体スイッチング素子をそれぞれオン、オフ駆動させる駆動信号を生成し、前記第1乃至第6の半導体スイッチング素子に前記駆動信号を供給する駆動制御部とを備えることを特徴とするスイッチトリラクタンスモータ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のスイッチトリラクタンスモータ装置において、前記第1乃至第6の半導体スイッチング素子はそれぞれ還流ダイオードが逆並列接続された金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであり、
前記第1の半導体スイッチ素子のソース端子と前記第2の半導体スイッチ素子のドレイン端子が第1の接続点にて互いに接続され、
前記第3の半導体スイッチ素子のソース端子と前記第4の半導体スイッチ素子のドレイン端子が第2の接続点にて互いに接続され、
前記第5の半導体スイッチ素子のソース端子と前記第6の半導体スイッチ素子のドレイン端子が第3の接続点にて互いに接続されていることを特徴とするスイッチトリラクタンスモータ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−81728(P2010−81728A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247048(P2008−247048)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】