説明

スイッチング電源回路および撮像モジュール

【課題】 磁気に対するシールド効果の高い撮像モジュールを提供すること。
【解決手段】 撮像素子2と、撮像素子2により出力された電気信号から画像信号を形成する画像処理回路3と、撮像素子2および画像処理回路3にそれぞれ電源電圧を供給する、コイルを有するインダクタ部品5が組み込まれている電源回路4とを具備している撮像モジュール1であって、インダクタ部品5は、コイルの全体が磁性体で被覆されている撮像モジュール1である。インダクタ部品5においてコイルの全体が磁性体で隙間なく密に被覆されているので、コイルで生じた磁気がインダクタ部品5の外部へ漏れなくなり、撮像モジュール1における磁気に対するシールド効果が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気に対するシールド効果の高いインダクタ部品を備えたスイッチング電源回路および撮像モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置および画像表示装置や携帯電話等の通信装置などの各種電子装置に使用されるスイッチング電源回路は、入力された電源電圧を所定の大きさの電源電圧に変換するものであるため、用途によってはスイッチング電源回路内においてパルス電流等による大電流が流れる場合がある。また、例えば、このようなスイッチング電源回路が、撮像モジュールの電源回路として用いられた場合には、画像処理回路等の他の回路と比較して、制御用の電子部品において消費される電流が大きい。これらのスイッチング電源回路あるいは撮像モジュールの電源回路に用いられるインダクタ部品としては、例えば上鍔と下鍔との間の巻軸にコイルが巻回されたドラムコアをシールドコアの内側空間に挿入して、ドラムコアの一部をシールドコアに取り付ける構成のものが採用されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
このような構成により、ドラムコアをシールドコアで覆うことによって、コイルに電流が流れても、コイルで発生した磁気がインダクタ部品の外部に漏れることを防ぐことができ、スイッチング電源回路の内部の他の回路部はもとより、外部の電子回路および電子装置や、撮像モジュール内部の他の電子回路に影響を与える磁気に対するシールド効果を高めることができるというものである。
【特許文献1】特開平11−135331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の構成のインダクタ部品のように、コイルが巻軸に巻回されたドラムコアをシールドコアの内部に挿入してドラムコアの一部を別体のシールドコアに取り付けて形成されたインダクタ部品が用いられたスイッチング電源回路においては、インダクタ部品がドラムコアと別体のシールドコアとを接合して成るものであるために、その接合部に隙間が生じてしまう。その結果、コイルで発生した磁気がこのドラムコアとシールドコアとの接合部の隙間を通ってインダクタ部品の外部へ漏出しやすくなる。そして、インダクタ部品の外部へ漏出した磁気は、スイッチング電源回路の内部の他の回路部の電子部品等はもとより、外部の電子回路および電子装置に対してもノイズ発生等の原因となり、その機能に悪影響を与えるという問題点があった。
【0005】
また、従来のように、コイルが巻回されたドラムコアをシールドコアで覆っている構成のインダクタ部品が用いられた電源回路を有する撮像モジュールにおいては、インダクタ部品が別個の部材であるドラムコアとシールドコアとを接合しているものであるためにその接合部に隙間ができてしまうので、コイルで発生した磁気がこのドラムコアとシールドコアとの接合部の隙間を通ってインダクタ部品の外部へ漏れるのを有効に防ぐことが困難であるため、撮像モジュールの内部はもとより外部にも磁気が漏れやすいという問題点があった。
【0006】
そこで、これらの問題点を解決するために、コイルが巻回されたドラムコアをシールドコアの内側空間に挿入してドラムコアの一部をシールドコアに取り付けてなるインダクタ部品が用いられた電源回路を覆うようにシールドケースを取り付けた構成が、あるいはインダクタ部品等の電子部品が実装された撮像基板全体を覆うようにシールドケースを取り付けた構成が採用されていた。
【0007】
しかしながら、これらの構成においては、コイルで発生してドラムコアとシールドコアとの接合部の隙間を通ってインダクタ部品の外部へ漏れた磁気が撮像モジュールの外部へ漏れるのを防ぐために、別体のシールドケースが必要となることから、撮像モジュールを構成する部品点数が多くなるという問題点があり、また撮像モジュールが大型になりやすいという問題点があった。
【0008】
また、インダクタ部品が用いられた電源回路や撮像基板を覆うようにシールドケースを取り付ける必要があるので、撮像モジュールの製造工程数が増加することとなり、そのため製造効率を高めるのが困難になり、低価格化が強く要求されている中で製造コストを低減するのも難しくなるという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、コイルを有するインダクタ部品からスイッチング電源回路の内部はもとより外部に、あるいは撮像モジュールの外部に磁気が漏れることを大幅に抑制することにある。また、別体のシールドケースを不要としてスイッチング電源回路または撮像モジュールを構成する部品点数を少なくするとともに、スイッチング電源回路または撮像モジュールを小型化することにある。また、スイッチング電源回路または撮像モジュールの製造工程数を低減させて製造効率を高めて低コストに製造できるスイッチング電源回路または撮像モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスイッチング電源回路は、コイルを有するインダクタ部品が組み込まれているスイッチング電源回路であって、前記インダクタ部品は、前記コイルの全体が磁性体で被覆されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のスイッチング電源回路は、上記構成において、パルス幅制御回路部と、該パルス幅制御回路部により制御されたパルス幅に応じたパルス電圧を発生させるスイッチング回路部と、前記パルス電圧を直流電圧に整流する整流回路部と、前記直流電圧を平滑化して出力直流電圧とする、前記インダクタ部品が組み込まれている平滑回路部とを具備していることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のスイッチング電源回路は、上記構成において、前記インダクタ部品は、磁性体層とコイルパターンとが交互に積層されている積層型インダクタ部品であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の撮像モジュールは、撮像素子と、該撮像素子により出力された電気信号から画像信号を形成する画像処理回路と、前記撮像素子および前記画像処理回路にそれぞれ電源電圧を供給する、コイルを有するインダクタ部品が組み込まれている電源回路とを具備している撮像モジュールであって、前記インダクタ部品は、前記コイルの全体が磁性体で被覆されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の撮像モジュールは、上記構成において、前記インダクタ部品は、磁性体層とコイルパターンとが交互に積層されている積層型インダクタ部品であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスイッチング電源回路によれば、コイルを有するインダクタ部品が組み込まれているスイッチング電源回路において、インダクタ部品は、コイルの全体が磁性体で被覆されていることから、コイルを覆う磁性体がコイルとの間に隙間がなく密なものであり、従来のコイルが巻回されたドラムコアをシールドコアで覆っている構成に比べて、ドラムコアとシールドコアの内面との間の空間に相当する空間がないこと、およびドラムコアとシールドコアとの接合部の隙間に相当する、外部へ磁気が漏れる部分がないことによって、コイルで生じた磁気がインダクタ部品の外部へ漏れるのを大幅に抑制することができる。従って、スイッチング電源回路の内部の他の回路部はもとより、外部の他の電子回路および電子装置に影響を与える磁気に対するシールド効果を向上させることができる。その結果、スイッチング電源回路におけるシールド構造を簡略化することができる。
【0016】
また、本発明のスイッチング電源回路によれば、パルス幅制御回路部と、パルス幅制御回路部により制御されたパルス幅に応じたパルス電圧を発生させるスイッチング回路部と、パルス電圧を直流電圧に整流する整流回路部と、直流電圧を平滑化して出力直流電圧とする、インダクタ部品が組み込まれている平滑回路部とを具備しているときには、整流回路部により整流された直流電圧は脈動成分等の非直流成分を含んでいるため、そのような直流電圧が平滑回路部に流入すると平滑回路部に組み込まれたインダクタ部品は交流磁界による磁気を生じやすくなるが、コイルを覆う磁性体がコイルとの間に隙間がなく密なものであるので、従来のようにコイルが巻軸に巻回されたドラムコアをシールドコアで覆っている構成に比べて、ドラムコアとシールドコアの内面との間の空間に相当する部分がないこと、およびドラムコアとシールドコアとの接合部に生じる隙間に相当する、外部へ磁気が漏れる部分がないことによって、コイルで生じた磁気がインダクタ部品の外部へ漏れるのを大幅に抑制することができる。その結果、インダクタ部品における磁気に対するシールド効果を向上させることができ、スイッチング電源回路におけるシールド構造を簡略化することができる。
【0017】
また、本発明のスイッチング電源回路によれば、インダクタ部品が、磁性体層とコイルパターンとが交互に積層されている積層型インダクタ部品であるときには、コイルの全体を覆っている磁性体がより密なものであり、コイルを覆っている磁性体層が緻密な磁性体粒子の焼結体等から成り、磁性体層間にも隙間がないものとなる。その結果、コイルで生じた磁気が積層型インダクタ部品の外部へより漏れにくくなり、積層型インダクタ部品における磁気に対するシールド効果をさらに向上させることができ、スイッチング電源回路におけるシールド構造をさらに簡略化することができる。
【0018】
本発明の撮像モジュールによれば、コイルを有するインダクタ部品が組み込まれている電源回路において、インダクタ部品は、コイルの全体が磁性体で被覆されていることから、従来のコイルが巻回されたドラムコアをシールドコアで覆っている構成に比べて、ドラムコアとシールドコアの内面との間の空間に相当する空間がないこと、およびドラムコアとシールドコアとの接合部の隙間に相当する外部へ磁気が漏れる部分がないことによって、コイルを覆う磁性体が隙間なく密なものであり、その結果、コイルで生じた磁気がインダクタ部品の外部へ漏れるのを大幅に抑制することができる。従って、撮像モジュールの内部はもとより外部に磁気が漏れるのを大幅に抑制することができ、磁気に対するシールド効果を向上させたり、撮像モジュールにおけるシールド構造を簡略化したりすることができる。
【0019】
また、インダクタ部品から外部への磁気の漏れを大幅に抑制できると、従来の撮像モジュールにおいて用いられていた別体のシールドケースが必要なくなるので、部品点数を減少させることができるとともに、撮像モジュールの小型化を進めることができる。また、別体のシールドケースを取り付ける必要がなくなれば、撮像モジュールの製造工程数を低減させることができ、製造効率を高めることができるとともに、製造コストを低減させることが可能になる。
【0020】
また、本発明の撮像モジュールによれば、インダクタ部品が、磁性体層とコイルパターンとが交互に積層されている積層型インダクタ部品であるときには、コイルを覆っている磁性体層が緻密な磁性体粒子の焼結体等から成り、磁性体層間にも隙間がないことから、コイルの全体を覆っている磁性体がより密なものになるのでコイルで生じた磁気が積層型インダクタ部品の外部へより漏れにくくなり、撮像モジュールにおける磁気に対するシールド効果をさらに向上させたり、撮像モジュールにおけるシールド構造をさらに簡略化したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明のスイッチング電源回路の実施の形態の一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明のスイッチング電源回路の実施の形態の一例を示す基本的構成のブロック回路図である。
【0023】
図1に示す例のスイッチング電源回路4は、コイルを有するインダクタ部品5が組み込まれているスイッチング電源回路4である。そして、このインダクタ部品5は、内部のコイルの全体が磁性体で被覆されている。
【0024】
このような構成のスイッチング電源回路4により、コイルを覆う磁性体が隙間なく密なものであるので、前述した従来の構成と比べて、本例のインダクタ部品5には磁気が漏れる隙間等が存在しない。その結果、コイルで生じた磁気がインダクタ部品5の外部へ漏れるのを大幅に低減することができる。従って、スイッチング電源回路4の内部の他の回路部の電子部品等はもとより外部の他の電子回路や電子装置等に影響を与える磁気に対するシールド効果を向上させることができ、スイッチング電源回路4における磁気漏れに対するシールド部材等の構成の簡略化を進めることができる。例えば、本例のスイッチング電源回路4が物理量の計測等に使用される精密機器、携帯電話等の通信機器、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、および液晶表示装置等の画像表示装置などの電子機器に用いられた場合、本例のインダクタ部品5のコイルからスイッチング電源回路4外部への磁気漏れを低減できることから、これらの電子機器に、コイルで生じた磁気の変化による誘導電流によるノイズを生じさせないようにすること等ができるようになる。結果として、本例のスイッチング電源回路4が用いられた電子機器は、本例のインダクタ部品5のコイルで生じた磁気のノイズによる誤作動の問題が生じなくなるので、信頼性の高いものとなる。
【0025】
また、本例のスイッチング電源回路4の基本的な構成は、図1にブロック回路図で示す一例のように、パルス幅制御回路部19と、パルス幅制御回路部19により制御されたパルス幅に応じたパルス電圧を発生させるスイッチング回路部20と、パルス電圧を直流電圧に整流する整流回路部21と、直流電圧を平滑化して出力直流電圧とする、インダクタ部品5が組み込まれている平滑回路部22とを具備している。このような基本的な構成によれば、整流回路部21により整流された直流電圧は非直流の脈動成分等を含んでおり、このような直流電圧が平滑回路部22に流入すると、平滑回路部22に組み込まれたインダクタ部品5は交流磁界による磁気を生じやすくなるが、コイルを覆う磁性体が隙間なく密なものであるので、本例のインダクタ部品5には磁気が漏れる隙間等が存在しない。その結果、インダクタ部品5における磁気に対するシールド効果を向上させることができ、スイッチング電源回路4におけるシールド構造を簡略化することができる。例えば、本例のインダクタ部品5のコイルで生じた磁気がスイッチング電源回路4の外部へ漏れるのを防ぐために、シールドケースを、スイッチング電源回路4を覆うように設置する必要がなくなる。結果として、スイッチング電源回路4の小型化を進めることができ、また、製造工程数を低減させることができ、製造効率を高めることができる。
【0026】
図1において、18は発振回路であり、パルス信号を供給する機能を有する。
【0027】
19はパルス幅制御回路部であり、この例においてはPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御回路である。このパルス幅制御回路部19は、電界効果トランジスタ11に入力するパルス信号の時間的な幅を制御する機能を有する。例えば、スイッチング電源回路4の出力電圧が所望の電圧値(例えば3V)よりも大きい場合には、パルス信号の時間的な幅を小さくし、スイッチング電源回路4の出力電圧が所望の電圧値(例えば3V)と等しいかあるいは小さい場合には、パルス信号の時間的な幅を大きくする。これにより、電界効果トランジスタ11から出力されるそれぞれのパルス電圧の時間軸における積分値が同じになるように制御する。また、図1に示される本例のスイッチング電源回路4においては、PWM制御回路19によるPWM制御方式を採用しているが、パルス信号の時間的な幅は一定としパルス信号の発振周波数を制御するPFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)制御方式を採用してもよい。
【0028】
11は電界効果トランジスタであり、スイッチング回路部20として機能する。この電界効果トランジスタ11は、ゲート電圧に相当する、パルス幅制御回路部19からの時間的な幅を制御されたパルス信号によりオン/オフのスイッチング動作を行なうことにより、時間的な幅を制御された出力パルス電圧を発生する機能を有する。
【0029】
12はショットキーバリアダイオードであり、整流回路部21として機能する。このショットキーバリアダイオード12は、スイッチング動作により発生したスイッチング回路部20からのパルス電圧を直流電圧に整流する機能を有する。
【0030】
13および5は、それぞれ出力側のコンデンサおよびインダクタ部品であり、整流回路部21によって整流された直流電圧を平滑化する平滑回路部22として機能する。
【0031】
14は入力側のコンデンサであり、スイッチング電源回路4に入力された1次電源の電圧に含まれるノイズを除去する機能を有する。
【0032】
15,16は2つの抵抗素子であり、オペアンプ17における入力信号を分圧する抵抗として機能する。
【0033】
17はオペアンプであり、抵抗素子15,16によって分圧された、フィードバックされたスイッチング電源回路4の出力電圧と基準電圧との差分の電圧を増幅し、増幅した電圧をPWM制御回路19に出力する機能を有する。
【0034】
なお、図1において、オペアンプ17への各々の入力電圧の記号は、基準電圧をVin+(非反転入力)とし、フィードバックされたスイッチング電源回路4の出力電圧をVin−(反転入力)として示した。
【0035】
また、PWM制御回路19は、オペアンプ17により出力された、オペアンプ17への各々の入力電圧Vin−とVin+との差分電圧の値に応じたパルス幅となるように、出力するパルス信号の時間的な幅を制御する。例えば、この差分電圧の値(Vin−の値−Vin+の値)が所定の値(例えば0V)より大きくなった場合に、スイッチング回路部20である電界効果トランジスタ11によるスイッチングのオン時間を短くして、スイッチング電源回路4の出力電圧を小さくして差分電圧の値に応じた大きさとなるように、パルス電圧の時間的な幅を小さくする制御が行なわれる。また、オペアンプ17により出力された差分電圧の値が所定の値(例えば0V)と等しいかあるいは小さくなった場合には、パルス電圧の時間的な幅を大きくする制御が行なわれる。このような制御により、電界効果トランジスタ11から出力されるそれぞれのパルス電圧の時間軸における積分値が同じになるように制御する。その結果として、スイッチング電源回路4の出力電圧が所望の値(例えば3V)に近似する直流電圧となるように制御する。
【0036】
このようなスイッチング電源回路4は、入力された電源電圧(1次電源電圧)を所定の電圧の電源電圧(2次電源電圧)にDC−AC−DC変換を行なうものであり、パーソナルコンピュータ,テレビジョン等の画像表示装置や携帯電話等の通信装置等の各種電子装置に用いることができる。スイッチング電源の制御方式は各種あるが、電圧制御方式のスイッチング回路部20(電界効果トランジスタ11)を用いた本例のスイッチング電源回路4は、電源電圧を高効率で変換できる点で好ましい。
【0037】
パルス幅制御回路部19は、発振回路18で発生したパルス信号の時間的な幅を制御することにより、所定の出力電圧が得られるようにスイッチング回路部20のオン時間を制御する役割を果たす。また、このパルス幅の値は、オペアンプやコンパレータ等の出力に応じて制御される。本例のスイッチング電源回路4のようにオペアンプ17を用いた場合には、デジタル出力を行なうコンパレータと比較して、アナログ値をパルス幅制御回路部19に出力することから、パルス幅制御回路部19はスイッチング回路部20である電界効果トランジスタ11から出力されるパルス電圧の時間的な幅の値をより連続値に近い値で制御できるので好ましい。
【0038】
スイッチング回路部20は、パルス幅制御回路部19により制御されたパルス幅に応じてオン/オフのスイッチングを行ない、増幅したパルス電圧を発生させる役割を担う。このスイッチング回路部20としては、例えば、バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタ11等が用いられる。特に、電界効果トランジスタ11は、構造が平面的であることにより作製や集積化が比較的容易であり、かつゲートの電圧によって出力のオン/オフを制御する電圧制御方式なので、電流値に左右されずに出力の制御(スイッチング制御)が可能である。従って、スイッチング回路部20に流れる電流を小さくして全体として動作時に消費する電力量を小さくすることができ、高効率なものとなるので好ましい。
【0039】
なお、スイッチング回路部20における所望の出力電圧に応じて、スイッチング回路部20により得られたパルス電圧をトランス(不図示)に流入させて変圧してもよい。例えば、トランスによって降圧させることにより、結果として整流回路部21により整流された直流電圧に含まれる非直流の脈動成分等を小さくすることができる。
【0040】
整流回路部21は、スイッチング回路部20からのパルス電圧を直流電圧に整流する役割を担う。この整流回路部21に用いられるダイオードとして用いているショットキーバリアダイオード12は、金属と半導体との接合によって生じるショットキー障壁を利用したものである。ここで、例えばPN接合ダイオードを用いた場合には、電圧印加の順方向から逆方向への切り替え時に、PN接合間の空乏層が拡大することにより生じる少数キャリアの再結合に時間がかかってしまうので、ショットキーバリアダイオード12を用いた場合の方が、スイッチングの切り替え速度が速く、高効率化できる点で好ましい。
【0041】
平滑回路部22は、整流回路部21で整流された直流電圧の中に含まれる非直流の脈動成分を、より直流電圧に近似した状態に平滑化して安定した出力直流電圧とする役割を担う。この平滑回路部22には、コンデンサやインダクタ部品等が組み込まれる。
【0042】
整流回路部21により整流された直流電圧は非直流の脈動成分を含んでおり、このような直流電圧が平滑回路部22に流入すると、平滑回路部22に組み込まれたインダクタ部品5において大きな交流磁界が発生して外部に漏れやすい。これに対し、本例のインダクタ部品5は、コイル全体を覆う磁性体が隙間なく密なものであることから、外部への磁気の漏れが大幅に抑制されるので、このようなスイッチング電源回路4に用いられるものとして有利である。
【0043】
なお、インダクタ部品5は平滑回路部22のみで使用するものに限られるものではなく、スイッチング電源回路4中のどの回路部に使用されていてもよいものである。
【0044】
また、本例のスイッチング電源回路4におけるインダクタ部品5は、図2に縦断面図で示す一例のように、磁性体層6とコイルパターン7とが交互に積層されている積層型インダクタ部品5aであることが好ましい。この場合には、コイルを構成するコイルパターン7を覆っている磁性体層6が緻密な磁性体粒子の焼結体等から成り、磁性体層6間にも隙間がないことから、コイルパターン7で生じた磁気が積層型インダクタ部品5aの外部へより漏れにくくなるので、積層型インダクタ部品5aにおける磁気に対するシールド効果をさらに向上させることができ、スイッチング電源回路4におけるシールド構造をさらに簡略化したりすることができる。
【0045】
次に、本発明の撮像モジュールについて図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0046】
図3は、本発明の撮像モジュールの実施の形態の一例を示す斜視図であり、図4は本発明の撮像モジュールにおける全体回路の実施の形態の一例を示すブロック回路図である。
【0047】
図3に示す本例の撮像モジュール1は、撮像素子2と、撮像素子2により出力された電気信号から画像信号を形成する画像処理回路3と、撮像素子2および画像処理回路3にそれぞれ電源電圧を供給する、コイルを有するインダクタ部品5が組み込まれている電源回路4とを具備している撮像モジュール1である。そして、このインダクタ部品5は、内部のコイルの全体が磁性体で被覆されている。
【0048】
このような構成の撮像モジュール1により、従来のコイルが巻回されたドラムコアをシールドコアで覆っている構成のインダクタ部品が組み込まれている場合に比べて、インダクタ部品5にはドラムコアとシールドコアの内面との間の空間に相当する空間がないこと、およびドラムコアとシールドコアとの接合部の隙間に相当する外部へ磁気が漏れる部分がないことから、コイルの全体を覆う磁性体が隙間なく密なものであるので、その結果、コイルで生じた磁気がインダクタ部品5の外部へ漏れるのを大幅に抑制することができる。従って、撮像モジュール1の内部はもとより外部に磁気が漏れるのを大幅に抑制することができ、磁気に対するシールド効果を向上させることができる。本例のインダクタ部品5のコイルから撮像モジュール1の内部への磁気漏れが低減されることにより、例えば、画像処理回路3は、磁気の影響を受けなくなるので、誘導電流等による誤作動を生じなくなる。結果として、画像処理回路3は、ノイズが低減され安定した画像を供給することができる。また、本例のインダクタ部品5のコイルから撮像モジュール1の外部への磁気漏れが低減されることにより、本発明の撮像モジュール1が、例えば、車載用として用いられた場合、他の車載部品が磁気の影響を受けることによって生じる、他の車載部品の誤作動を抑制することができる。
【0049】
また、インダクタ部品5から外部への磁気の漏れを大幅に抑制できると、従来の撮像モジュールにおいて用いられていた別体のシールドケースが必要なくなり、シールド構造を簡略化したりシールドケースをなくしたりできるので、部品点数を減少させることができるとともに、撮像モジュール1の小型化を進めることができる。また、シールド構造を簡略化でき、別体のシールドケースを取り付ける必要がなくなれば、撮像モジュール1の製造工程数を低減させることができ、製造効率を高めることができるとともに、製造コストを低減させることが可能になる。
【0050】
撮像モジュール1は、基本的な構成として、撮像素子2と、画像処理回路3と、電源回路4と、インダクタ部品5とを具備するものである。なお、図4において、6はEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)を示している。EPROM6は、電気的に消去および書き込みが可能な固定記憶装置の1種であり、例えば、画像処理回路3において処理された画像データを一時的に保存する機能を有する。また、図示していないが、このEPROM6の保存データを取り出して、メモリカード等への記録あるいはLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)等の表示装置への表示等が行なわれる。また、7は画像信号増幅器であり、画像信号の歪みを除去して所定の増幅率で増幅して出力する。
【0051】
このような撮像モジュール1は、例えば車載用として用いられるものであり、車両が走行する道路上の白線の撮像あるいは車両を運転する運転手の死角を撮像する機能を有し、必要に応じて自動車の走行の制御を行なうエレクトロニック・コントロール・ユニット(ECU)により動作が制御される。なお、撮像モジュール1から出力された画像信号は、ECUによって画像表示信号に変換され、例えば運転席の前方に設置されたLCD等の画像表示装置(ディスプレイ)に表示されることとなる。
【0052】
撮像素子2は、レンズを通して入射した被写体の光信号を電気信号としての画像信号に変換するCCDイメージセンサ素子,CMOSイメージセンサ素子等の半導体イメージセンサ素子である。この撮像素子2は、入射光に応じた電荷を生じさせ、各受光素子(各画素)において蓄積した電荷を順次読み出すことにより、撮像対象の画像信号を生成する。
【0053】
画像処理回路3は、画像信号に対して例えばホワイトバランス調整や補間処理等の一般的な各種処理を実行する。この画像処理回路3は、処理後の画像信号を、例えばRGB(Red Green Blue)等のカラー画像信号として画像表示装置に出力する。
【0054】
電源回路4は、入力された電源電圧(1次電源電圧)を所定の電圧の電源電圧(2次電源電圧)にDC−AC−DC変換して、撮像素子2や画像処理回路3に対して供給するものであり、コンデンサ,抵抗素子,インダクタ部品等の複数の電子部品で構成されている。このとき、電源電圧の制御方式は、電流のオン/オフを繰り返すことにより実効値としての電流および電圧出力を制御するチョッパ制御,パルス変調により出力を制御するスイッチング制御,シリーズレギュレータ等のいずれであってもよい。
【0055】
本例の撮像モジュール1における電源回路4の一例は、図1に示すスイッチング電源回路4の一例と同じである。この電源回路4は、前述のようにパルス信号を供給する役割を果たす発振回路18と、この例においてはPWM制御回路であり、スイッチング回路部20としての電界効果トランジスタ11に入力するパルス信号の時間的な幅を制御する役割を果たすパルス幅制御回路部19と、ゲート電圧に相当する、パルス幅制御回路部19からの時間的な幅を制御されたパルス信号によりオン/オフのスイッチング動作を行なうことにより増幅されたパルス電圧を発生させるスイッチング回路部20として機能する電界効果トランジスタ11と、スイッチング動作により発生したスイッチング回路部20からのパルス電圧を整流する整流回路部21として機能するショットキーバリアダイオード12と、整流回路部21で整流された直流電圧を平滑化する平滑回路部22として機能するインダクタ部品5および出力側のコンデンサ13と、スイッチング電源回路4に入力された1次電源の電圧に含まれるノイズを除去する機能を有する入力側のコンデンサ14と、オペアンプ17における出力電圧の入力電圧に対する増幅率を設定する分圧抵抗として機能する2つの抵抗素子15,16と、フィードバックされたスイッチング電源回路4の出力電圧と基準電圧との差分の電圧を増幅し、PWM制御回路19に出力する機能を有するオペアンプ17とを有する。
【0056】
そして、スイッチング電源回路4の出力電圧が所望の電圧値(例えば3V)よりも小さい場合には、パルス幅制御回路部19からのパルス信号の時間的な幅を大きくし、スイッチング電源回路4の出力電圧が所望の電圧値(例えば3V)と等しいかあるいは大きい場合には、パルス幅制御回路部19からのパルス信号の時間的な幅を小さくする。これによって、スイッチング回路部20である電界効果トランジスタ11から出力されるそれぞれのパルス電圧の時間軸における積分値が同じになるように制御し、スイッチング電源回路4の出力電圧が安定化するように制御を行なう。
【0057】
なお、本例の電源回路4は、前述したスイッチング電源回路4と同様に、整流回路部21であるショットキーバリアダイオード12、平滑回路部22であるインダクタ部品5およびコンデンサ13の前段までがスイッチング電源として機能するものであり、スイッチング回路部20である電界効果トランジスタ11のオン/オフのスイッチング動作によって矩形状のパルス電圧を発生するため、平滑回路部22のインダクタ部品5から大きな交流磁界が発生して外部に漏れやすいものである。これに対し、本例のインダクタ部品5は、内部のコイル全体を覆う磁性体が隙間なく密なものであることから、外部への磁気の漏れが抑制されるので、このようなスイッチング電源に組み込まれるものとして有効である。
【0058】
前述したスイッチング電源回路4あるいは撮像モジュール1の電源回路4に用いられるインダクタ部品5は、例えば、両端に鍔部が形成されたドラムコアにコイル巻線を巻回し、その周囲を磁性体または磁性体を含む樹脂等をコイル巻線に密着させた状態で、隙間なくモールドして封止することにより形成される。
【0059】
このようなインダクタ部品5を作製する場合に、ドラムコアおよびコイルを磁性体を含む樹脂によってモールドして封止するためには、このドラムコアおよびコイルを磁性体を含む液状の樹脂中にディップするディッピング、あるいはドラムコアおよびコイルをモールド金型内に設置した後に磁性体を含む液状の樹脂を注入して硬化させる射出成形等の方法を採用するとよい。
【0060】
ドラムコアを形成する磁性体としては、例えばNi−Zn系フェライト焼結体,フェライト,パーマロイ,純鉄等の種々の磁性体を用いればよいが、透磁率が高く、飽和磁束密度が高く、かつ成形性に優れており、廉価な磁性体であることが好ましい。
【0061】
また、ドラムコアおよびコイルをモールドして封止する際に使用する樹脂としては、Ni−Zn系フェライト焼結体等の磁性体またはフェライトやパーマロイ等の磁性体の粉末をエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂に混合した磁性体複合樹脂を用いることができる。
【0062】
また、従来のように樹脂のみでモールド封止する場合と比較して、磁性体複合樹脂をドラムコアおよびコイルのモールド封止に用いることによって、コイル全体を覆う磁性体が隙間がなく密なものにすることができるので、コイルで生じた磁気がインダクタ部品5の外部へ漏れるのを防ぐことができ、撮像モジュール1における磁気に対するシールド効果を向上させることができる。
【0063】
ここで、従来のように樹脂のみでモールド封止する場合と比較して、インダクタ部品5からの磁気の漏れを少なくするためには、平均粒径が0.1〜30μm程度の磁性体の粒子を85〜95体積%程度あるいはそれ以上含有させた磁性体複合樹脂を、コイルの周囲に0.1〜1mm程度あるいはそれ以上の厚さで設けることが好ましい。磁性体複合樹脂における磁性体の粒子の平均粒径を0.1〜30μm程度とすることにより、コイルを覆う磁性体の粒子の局所的な凝集を防ぐとともに、磁性体の粒子の間の隙間を、磁気の漏れが抑えられるように小さくすることができる。また、磁性体複合樹脂における磁性体の粒子の含有率を85〜95体積%程度あるいはそれ以上とし、コイルの周囲に0.1〜1mm程度あるいはそれ以上の厚さができるように設けることにより、コイルからインダクタ部品5の外部へ磁気が通り抜ける隙間が磁性体の粒子の間に生じないようにして、コイルを覆う磁性体の粒子を密な状態とすることができる。
【0064】
また、コイルの全体が磁性体で被覆されているインダクタ部品5としては、ドラムコアおよびコイルが磁性体中に埋設された構成のものであってもよい。
【0065】
なお、磁性体または磁性体を含む樹脂等が、コイル巻線の表面全体に密着するように、このコイル巻線を覆う構成を採用することにより、コイル巻線と磁性体または磁性体を含む樹脂等との間に空間が存在しなくなるので、コイル巻線から発生する磁気が外部へ漏出するのを大幅に抑制することができる。
【0066】
また、本例の撮像モジュール1におけるインダクタ部品5は、図2に縦断面図で示す一例のように、磁性体層6とコイルパターン7とが交互に積層されている積層型インダクタ部品5aであるのが好ましい。この場合には、コイルパターン7を覆っている磁性体層6が緻密な磁性体粒子の焼結体等から成り、磁性体層6間にも隙間がないことから、コイルパターン7で生じた磁気が積層型インダクタ部品5aの外部へより漏れにくくなり、撮像モジュール1における磁気に対するシールド効果がさらに向上する。
【0067】
この積層型インダクタ部品5aは、積層構造の磁性体層6中において、複数のコイルパターン7が螺旋状に周回してそれらの始端と終端とがそれぞれ接続され、両端の層のコイルパターン7がそれぞれ外部電極端子等に接続されている電子部品である。
【0068】
このような積層型インダクタ部品5aの製造方法の一例を以下に示す。
【0069】
まず、磁性体層6となる磁性体を含むセラミックグリーンシートを以下のようにして作製する。磁性体として酸化第二鉄(Fe),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),酸化銅(CuO)等を所定の比率で秤量した原料をボールミルに投入し、湿式調合を行なう。これにより、磁性体材料としてフェライトの混合物を得る。
【0070】
次に、得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を仮焼する。これにより、フェライトの仮焼粉末を得る。
【0071】
次に、得られた仮焼粉末をボールミルによって湿式粉砕した後、乾燥してから解砕し、フェライトセラミック粉末を得る。
【0072】
次に、このフェライトセラミック粉末に対して結合剤,可塑剤,湿潤材および分散剤を加えてボールミルによって混合を行ない、その後、減圧処理により脱泡を行なう。これにより、セラミックスラリーを得る。
【0073】
次に、得られたセラミックスラリーをリップコータまたはマルチコータを用いてシート状に成形して乾燥させ、所望の厚みのセラミックグリーンシートを作製する。
【0074】
次に、得られた複数のセラミックグリーンシートの所定の位置に、複数の層間接続用のビアホールを設ける。層間接続用のビアホールは、セラミックグリーンシートの所定の位置にレーザビーム加工あるいはパンチング加工等を用いて貫通孔を形成し、この貫通孔に銀(Ag),銅(Cu),金(Au)またはこれらの合金等の導電性ペーストを印刷等の方法により充填することによって形成される。
【0075】
次に、ビアホールを設けたセラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷法あるいはフォトリソグラフィ法により、導電性ペーストによるコイルパターン7をそれぞれ塗布して形成する。また、内部に埋設されたコイルの外部への引出し部として、コイルパターン7に引出し部を付加し、その引出し部が積層体の端部に露出するようにセラミックグリーンシートを用意する。コイルパターン7となる導電性ペーストの金属粉末は、Ag,Cu,Auまたはこれらの合金等からなる。なお、複数のコイルパターン7は、セラミックグリーンシートに設けた層間接続用のビアホールを介してそれぞれの始端と終端とが接続されて互いに電気的に直列に接続され、全体として螺旋状のコイルを形成する。こうして形成されたコイルの軸は、セラミックグリーンシートの積層方向である。
【0076】
次に、これら複数枚のセラミックグリーンシートを積層圧着して、未焼成のセラミック積層体を形成する。この際、積層順序としては、まず下側のカバーシートとなる、コイルパターン7が印刷されていない複数枚のセラミックグリーンシート、その上に最下層としてコイルパターン7の引出し部が端部に露出しているセラミックグリーンシート、その上にコイル本体を構成するコイルパターン7が印刷された複数枚のセラミックグリーンシート、その上に最上層としてコイルパターン7の引出し部が端部に露出しているセラミックグリーンシート、最後に上側のカバーシートとなる、コイルパターン7が印刷されていない複数枚のセラミックグリーンシートの順である。
【0077】
次に、得られたセラミック積層体を、多数個取りで形成した場合には内部のコイルパターン7の配置に合わせてカットして個々のセラミック積層体チップを切り出し、この未焼成のセラミック積層体チップを焼成して本体部の積層体を得る。この積層体における端部に、コイルパターン7の引出し部に接続される外部電極を形成するために、導電性ペーストを塗布して焼き付けることによって、積層型インダクタ部品5aとなる。
【0078】
この積層型インダクタ部品5aは、矩形状のパルス電圧を発生するスイッチング電源に好適に組み込まれるものとして、コイルパターン7の厚みが30〜100μm程度と、従来の電子回路に使用されていた積層型インダクタ部品におけるコイルパターンの厚みに対して1.5倍以上の厚みを有するものであることが好ましい。コイルパターン7の厚みをこの範囲内とすることにより、コイルパターン7の電気抵抗が小さくなって矩形状のパルス電圧を電源回路4に必要な大電圧で流すことができ、また、コイルパターン7と磁性体層6との間に隙間が生じることも効果的に抑えることができる。
【0079】
このような積層型インダクタ部品5aを電源回路4に組み込む際に回路基板上に配置する場合には、コイルパターン7が回路基板の上面に平行になる(コイルの軸方向が回路基板の上面に垂直になる)ように積層型インダクタ部品5aを回路基板に実装し、グランドパターンを回路基板の下面に積層型インダクタ部品5aに対向するように少なくとも積層型インダクタ部品5aをカバーする大きさで配置する構造とすることが好ましい。
【0080】
この場合には、例えばコイルパターン7が回路基板の上面に垂直になる(コイルの軸方向が回路基板の上面に平行になる)ように積層型インダクタ部品5aを回路基板に実装した場合に比べて、コイルで生じて積層体の外部へ漏れ出た磁気が対向するグランドパターンによって大幅に遮られるので、積層型インダクタ部品5aの外部へ漏れて周囲に広がるのを効果的に防ぐことができ、撮像モジュール1におけるシールド効果をさらに向上させることが可能になる。
【実施例】
【0081】
図1に、本例の撮像モジュール1に用いられる電源回路4の一例の基本的構成のブロック回路図を示す。
【0082】
図1に示した電源回路4は、前述のように、パルス信号を供給する役割を果たす発振回路18と、この例においてはPWM制御回路であり、スイッチング回路部20として機能する電界効果トランジスタ11に入力するパルス信号の時間的な幅を制御する役割を担うパルス幅制御回路部19と、ゲート電圧に相当する、パルス幅制御回路部19からの時間的な幅を制御されたパルス信号によりオン/オフのスイッチング動作によりパルス電圧を発生させるスイッチング回路部20として機能する電界効果トランジスタ11と、スイッチング動作によりスイッチング回路部20から発生したパルス電圧を整流する整流回路部21として機能するショットキーバリアダイオード12と、整流回路部21で整流された直流電圧を平滑化する平滑回路部22として機能するインダクタ部品5および出力側のコンデンサ13と、スイッチング電源回路4に入力された1次電源の電圧に含まれるノイズを除去する機能を有する入力側のコンデンサ14と、オペアンプ17における出力電圧の入力電圧に対する増幅率を設定する分圧抵抗として機能する2つの抵抗素子15,16と、フィードバックされたスイッチング電源回路4の出力電圧と基準電圧との差分の電圧を増幅し、パルス幅制御回路部(PWM制御回路)19に出力する機能を有するオペアンプ17とを有する。
【0083】
ここで、インダクタ部品5としての積層型インダクタ部品5aを以下のようにして作製した。
【0084】
まず、前述のようにして作製した酸化第二鉄(Fe),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),酸化銅(CuO)等を含むセラミックグリーンシートに、銀(Ag)粒子を含む導電性ペーストを印刷することにより、コイルパターン7を形成した。
【0085】
次に、前述のようにして未焼成のセラミック積層体を形成した。この際の積層順序としては、まず下側のカバーシートとなる、コイルパターン7が印刷されていない10枚の個々の厚みが50μmのセラミックグリーンシート、その上に最下層のセラミックグリーンシートとして、コイルパターン7の引出し部が端部に露出している厚みが40μmのセラミックグリーンシート、その上にコイルパターン7が印刷された50枚の個々の厚みが40μmのセラミックグリーンシート、その上に最上層のセラミックグリーンシートとして、コイルパターン7の引出し部が端部に露出している厚みが40μmのセラミックグリーンシート、最後に上側のカバーシートとなる、コイルパターン7が印刷されていない10枚の個々の厚みが50μmのセラミックグリーンシートの順とした。
【0086】
次に、得られたセラミック積層体を、多数個取りの状態から内部のコイルパターン7の配置に合わせてカットして個々のセラミック積層体チップを切り出し、この未焼成のセラミック積層体チップを焼成して、この端面にコイルパターン7の引出し部に接続される外部電極として銀(Ag)粒子を含む導電性ペーストを塗布し、焼き付けて、実施例の積層型インダクタ部品5aを作製した。
【0087】
この積層型インダクタ部品5aの寸法は、幅を3.5mm、奥行きを3.5mm、積層方向の高さ(厚み)を1.8mmとし、コイルパターン7の内側の直径を2.5mmとした。また、コイルパターン7の環状部(コイル本体部)の幅は50μmとし、厚みは60μmとした。
【0088】
さらに、比較例である従来の構成のインダクタ部品として、ドラムコアをシールドコアの内側空間に挿入して、ドラムコアの一部をシールドコアに取り付けることにより作製されたインダクタ部品を用意した。
【0089】
この比較例のインダクタ部品におけるドラムコアおよびシールドコアの材質は、実施例と同様に、酸化第二鉄(Fe),酸化亜鉛(ZnO),酸化ニッケル(NiO),酸化銅(CuO)等からなる磁性体の焼結体とした。このドラムコアの上鍔と下鍔との間の巻軸にコイルが巻回されているものである。
【0090】
ドラムコアの寸法は、上鍔および下鍔のそれぞれの直径を3.5mm、上鍔および下鍔のそれぞれの厚みを0.5mm、巻芯部の直径を2.5mmとし、全体の高さを1.8mmとした。また、シールドコアの外形寸法は、幅を3.5mm、奥行きを3.5mmとし、高さを1.8mmとした。
【0091】
また、実施例の積層型インダクタ部品5aおよび比較例のインダクタ部品のインダクタンス値は、両方ともに10μHとした。
【0092】
そして、実施例の積層型インダクタ部品5aおよび比較例のインダクタ部品を用いた撮像モジュールをそれぞれ作製した。なお、比較例のインダクタ部品を用いた撮像モジュールにおいても、インダクタ部品以外の回路部品は全て実施例の積層型インダクタ部品5aを用いた撮像モジュールと同様のものとした。
【0093】
これら実施例および比較例のインダクタ部品が用いられた電源回路を有する撮像モジュールについて、それぞれ電源回路に150mAの定格電流を入力し、撮像モジュールから漏れる磁気を磁気センサーによって計測した。
【0094】
その測定結果を図5および図6に示す。なお、図5は比較例の測定結果を、図6は本実施例の測定結果を示すグラフであり、それぞれグラフの横軸は周波数(単位:MHz)を、縦軸は撮像モジュールの外部に漏れた磁気レベルの電力換算値(単位:dBm)を表し、実線が測定結果を示す。
【0095】
図5および図6に示す結果より、撮像モジュールの外部に漏れた磁気の最大値は、比較例の撮像モジュールにおいては−46.67dBmであり、これに対して実施例の撮像モジュールにおいては−79.10dBmであった。
【0096】
この結果より、本発明の実施例の撮像モジュールは、電源回路にコイルの全体が磁性体で被覆されているインダクタ部品を組み込んでいることから、比較例の撮像モジュールに比べて、撮像モジュールにおけるシールド効果を向上させることが可能であることが分かる。また、図5および図6のグラフ全体を比較しても、本発明の実施例の撮像モジュールは、比較例の撮像モジュールに比べて外部に漏れた磁気レベルの電力換算値が低下しており、シールド効果が向上していることが分かる。
【0097】
なお、本発明は以上の実施の形態の例および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施しても何ら差し支えない。また、本発明の撮像モジュール1におけるインダクタ部品5は、コイルの全体が磁性体で被覆されているものであり、外部への磁気の漏れを抑制することができるので、電源回路としてスイッチング電源を有する他の電子回路モジュール等にも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明のスイッチング電源回路(撮像モジュールの電源回路)の実施の形態の一例を示す基本的構成のブロック回路図である。
【図2】図1における電源回路におけるインダクタ部品としての積層型インダクタ部品の一例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の撮像モジュールの実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の撮像モジュールにおける全体回路の実施の形態の一例を示すブロック回路図である。
【図5】比較例の撮像モジュールについて磁気の漏れを測定した測定結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例の撮像モジュールについて磁気の漏れを測定した測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0099】
1:撮像モジュール
2:撮像素子
3:画像処理回路
4:スイッチング電源回路(電源回路)
5:インダクタ部品
5a:積層型インダクタ部品
6:磁性体層
7:コイルパターン
19:パルス幅制御回路部(PWM制御回路)
20:スイッチング回路部
21:整流回路部
22:平滑回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを有するインダクタ部品が組み込まれているスイッチング電源回路であって、前記インダクタ部品は、前記コイルの全体が磁性体で被覆されていることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
パルス幅制御回路部と、
該パルス幅制御回路部により制御されたパルス幅に応じたパルス電圧を発生させるスイッチング回路部と、
前記パルス電圧を直流電圧に整流する整流回路部と、
前記直流電圧を平滑化して出力直流電圧とする、前記インダクタ部品が組み込まれている平滑回路部と
を具備していることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項3】
前記インダクタ部品は、磁性体層とコイルパターンとが交互に積層されている積層型インダクタ部品であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチング電源回路。
【請求項4】
撮像素子と、
該撮像素子により出力された電気信号から画像信号を形成する画像処理回路と、
前記撮像素子および前記画像処理回路にそれぞれ電源電圧を供給する、コイルを有するインダクタ部品が組み込まれている電源回路と
を具備している撮像モジュールであって、
前記インダクタ部品は、前記コイルの全体が磁性体で被覆されていることを特徴とする撮像モジュール。
【請求項5】
前記インダクタ部品は、磁性体層とコイルパターンとが交互に積層されている積層型インダクタ部品であることを特徴とする請求項4に記載の撮像モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−154591(P2010−154591A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326978(P2008−326978)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】