説明

スイッチ装置およびこのスイッチ装置を用いた多光軸光電センサ

【課題】スイッチの配備に必要なスペースを削減し、設定作業を行うことを容易にし、操作が受け付けられたことや操作により設定された内容を、容易に確認できるようにする。
【解決手段】手指40により塞ぐことが可能な窓部35と発光素子31とにより構成された表示灯に特定の機能または動作を対応づける。窓部35からの反射光が入射する位置には受光素子32が設けられる。機体内部の制御部は、発光素子31の動作を制御しながら受光素子32の受光量のレベルを監視し、定められたしきい値を超える受光量が入力された受光素子32を対象に、しきい値を超える受光量の入力を受け付けている間の経過時間の長さを計測する。また計測値が所定の基準値に到達したことに応じて、計測対象の受光素子32に対応する表示灯が操作されたと判定し、操作された表示灯に対応する機能または動作を選択するとともに、操作された表示灯の発光素子32の表示態様を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に設けられるスイッチ装置、およびこのスイッチ装置が適用された多光軸光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の多光軸光電センサには、複数種の機能のそれぞれに対応するディップスイッチを設け、これらのスイッチにより、設置環境や使用目的に適した機能を選択するように設計されたものがある。
【0003】
図10は、このディップスイッチの設置例を、センサの筐体200の一部分の正面図および側面図により示す。多光軸光電センサの筐体200は幅狭であるため、一般に、図10に示すように、筐体200の端縁部に凹部203を設けて、凹部203内にディップスイッチ201を配置する。また、スイッチ201を水分や埃などから保護する必要があるため、凹部203を蓋部202により塞ぎ、設定を行うときのみ蓋部202を開放するようにしている。
【0004】
このほか、特許文献1に示すように、センサを構成する投光器や受光器に外部機器を接続し、外部機器で受け付けた操作に応じて、各機能の有効・無効を設定する場合もある。
【0005】
また、一般に、多光軸光電センサでは、投光器および受光器の適所に複数の表示灯を設け、これらの表示灯により、センサの設定状態や動作状態などを確認できるようにしている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−147533号公報
【特許文献2】特開2008−180649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多光軸光電センサにおいて物体の検出機能をできる限り向上するには、長手方向の広い範囲に光軸が設定されるようにする必要がある。しかし、図10の構成によると、ディップスイッチ201によって、長手方向に光軸を設定できないデッドスペースが生じ、物体の検出に支障が生じる可能性がある。また、設定の都度、蓋部202を開閉しなければならず、作業が繁雑になる。また蓋部202の固定が不十分であると、筐体200の内部に埃や水分などが侵入し、故障を招くおそれがある。
【0008】
外部機器を接続して設定を行う場合には、投光器や受光器の筐体にディップスイッチを設ける必要はなくなるが、外部機器を接続する作業に手間がかかる。また接続後の操作も煩雑になる傾向がある。
【0009】
本発明は上記の問題に着目し、スイッチを配備するのに必要なスペースを削減し、簡単な操作により設定作業を行うことができると共に、操作が受け付けられたことや、操作により設定された内容を、容易に確認できるようにすることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるスイッチ装置は、手指により塞ぐことが可能な大きさに形成された窓部と、この窓部の背後に設けられた発光素子とによる表示灯が少なくとも1つ設けられ、各表示灯にそれぞれ特定の機能または動作が対応づけられると共に、各表示灯に対し、前記発光素子からの光に対する窓部からの反射光を受光する受光素子が設けられる。さらに、発光素子の動作を制御しながら受光素子からの受光量信号を入力してその入力が示す受光量のレベルを監視する制御部が設けられる。
制御部は、所定のしきい値を超える受光量が入力された受光素子を対象に、しきい値を超える受光量の入力を受け付けている間の経過時間の長さを計測し、計測により得た計測値があらかじめ定めた基準値に到達したことに応じて、計測対象の受光素子に対応する表示灯が操作されたと判定して、操作された表示灯に対応する機能または動作を選択するとともに、操作された表示灯の発光素子による表示の態様を変更する。
【0011】
上記の構成によれば、窓部が塞がれていない場合には、発光素子からの光の大半は窓部を通過して外部に出射されるので、窓部を明るく表示することができる。一方、窓部が手指などにより塞がれると、発光素子からの光が窓部を通過するのが妨げられ、窓部で反射して受光素子に入射する光の量が増加し、これにより、制御部にしきい値を超える受光量が入力されるようになる。ここで窓部が、一定の時間、塞がれると、表示灯に対する操作が行われたと判定され、操作された表示灯に対応する機能または動作が選択される。また、このとき操作された発光素子による表示の態様が、操作前とは異なるものに変化する。
【0012】
上記によれば、特定の機能または動作に対応づけられた表示灯に一定の時間触れることによって、この表示灯に対応づけられた機能または動作を選択することができる。また、この選択に応じて、発光素子の発光色を切り替えたり、点滅状態から点灯状態に切り替えるなど、表示の態様を変化させることによって、選択操作が受け付けられたことや、設定された内容を操作者に知らせることができる。よって、通常は表示灯として機能させながら、必要に応じて表示灯をスイッチとして働かせることができる。
【0013】
上記のスイッチ装置の好ましい態様では、少なくとも1つの表示灯に特定の機能が対応づけられる。また制御部は、特定の機能が対応づけられた表示灯が操作されたと判定したとき、この特定の機能を有効な状態から無効な状態に切り替える処理、または特定の機能を無効な状態から有効な状態に切り替える処理を実行する。
【0014】
上記の態様によれば、ユーザは、設定を変更したい機能が対応づけられている表示灯に一定の時間触れることによって、この機能を有効または無効に設定することができる。また、この表示灯の発光素子の表示の態様により、特定の機能が有効であるか、無効であるかを表すことができるので、切り替え操作の取り違えが生じるのを防止することができる。
【0015】
他の好ましい態様のスイッチ装置では、少なくとも1つの表示灯に複数の機能が対応づけられる。また制御部は、複数の機能が対応づけられた表示灯が操作されたと判定する都度、複数の機能を順に切り替えて設定するとともに、発光素子を、設定した機能毎に異なる態様で発光させる。
【0016】
上記の態様によれば、1つの表示灯に一定の時間触れる操作を繰り返すことにより、複数の機能を順に切り替えて設定することができる。また、切替の都度、発光色などの表示態様が変化するので、各機能と各態様との関係をユーザに明示しておけば、設定が取り違えられるのを防止することができる。
【0017】
なお、表示灯の操作により機能を選択する場合には、設定された機能による動作をすぐには実行せずに、他の表示灯の操作により選択を確定してから動作を開始するようにしてもよい。また、設定のときと同じ表示灯を、設定時より長く操作するなどの方法により、選択を確定するようにしてもよい。
【0018】
他の好ましい態様のスイッチ装置では、制御部は、光の視認が不可能な時間長さで発光素子を発光させる制御を、光の視認が可能な長さで発光素子を発光させることが可能な期間をおいて周期的に実行するとともに、受光素子から入力した受光量のレベルをしきい値と比較する処理を、光の視認が不可能な時間長さによる発光に同期するタイミングで実行する。このようにすれば、表示灯が消灯しているように見せかけながら、表示灯に対する操作を受け付けることが可能になる。
【0019】
上記の態様のより好ましい実施形態では、制御部は、少なくとも1つの表示灯に対し、この表示灯が操作されたと判定するまでの間、当該表示灯の発光素子に対して前記光の視認が不可能な時間長さで周期的に発光させる制御のみを実行し、当該表示灯が操作されたと判定したとき、発光素子に対し、光の視認が不可能な時間長さによる発光の間に、光の視認が可能な時間長さによる発光を実施させる。
【0020】
上記によれば、消灯しているように見える表示灯に一定の時間触れることにより、その表示灯に対応づけられた処理を選択すると、その選択に応じて表示灯を点灯状態または点滅状態に変化させることが可能になる。よってユーザは、操作が受け付けられたことを容易に確認することが可能になる。
【0021】
つぎに、本発明が適用される多光軸光電センサは、投光器と受光器との間に複数の光軸が設定され、投光器および受光器の少なくとも一方の筐体の長手方向に沿って複数の表示灯が並べて配備される。各表示灯は、手指により塞ぐことが可能な大きさの窓部と、筐体内の窓部に対向する位置に配備された発光素子とにより構成され、各表示灯にそれぞれ特定の機能または動作が対応づけられると共に、少なくとも1つの表示灯に対し、発光素子からの光に対する窓部からの反射光を受光する受光素子が設けられる。
【0022】
さらに、上記の多光軸光電センサには、発光素子の動作を制御しながら受光素子からの受光量信号を入力してその入力が示す受光量のレベルを監視する制御部が設けられる。この制御部は、所定のしきい値を超える受光量が入力された受光素子を対象に、しきい値を超える受光量の入力を受け付けている間の経過時間の長さを計測し、計測により得た計測値があらかじめ定めた基準値に到達したことに応じて、計測対象の受光素子に対応する表示灯が操作されたと判定して、操作された表示灯に対応する機能または動作を選択するとともに、操作された表示灯の発光素子による表示の態様を変更する。
【0023】
上記の構成によれば、筐体の長さ方向に沿って配置された複数の表示灯の中の1つに触れることによって、その表示灯に設定された機能または動作を選択することができる。よって、表示灯が配置される場所を利用して選択操作を受け付けることができるから、スイッチを配備するためのスペースを設ける必要がなくなり、長手方向に検出に関係のない無駄スペースが生じるのを回避することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、機能や動作の選択状態を表す表示灯に選択操作を受け付ける機能を一体化することにより、スイッチの配置に必要なスペースを削減することができる。また、発光素子や受光素子を保護する窓部を手指により塞ぐことにより選択操作を行うことができるから、操作に伴う外力によってスイッチが劣化するおそれがない。また、表示灯の操作に応じて、操作された表示灯の表示状態が変化するので、ユーザは、操作が受け付けられたことや、操作により選択された内容を容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用される多光軸光電センサの外観を示す斜視図である。
【図2】多光軸光電センサの電気構成を示すブロック図である。
【図3】受光器の前面の一部および内部構成を示す図である。
【図4】表示灯への操作を検出する原理を示す図である。
【図5】表示灯処理回路の構成を示すブロック図である。
【図6】発光素子に対する制御を示すタイミングチャートである。
【図7】表示灯への操作を検出する処理の概要を表すタイミングチャートである。
【図8】表示灯への操作の検出に関する処理手順を示すフローチャートである。
【図9】表示灯を用いてセンサに設定されている機能を変更する例を示す図である。
【図10】従来の多光軸光電センサにおけるディップスイッチの設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明が適用された多光軸光電センサの外観を示す。
この多光軸光電センサの投光器1および受光器2は、それぞれ長手形状の筐体100の内部に複数の光学ユニットが収容された構成のものである。投光器1側の光学ユニットには図2に示す発光素子10が設けられ、受光器2側の光学ユニットには図2に示す受光素子20が設けられる。図1および後記する図3,4,9では、光学ユニットを図示せず、その上部に設けられる投受光用のレンズ101,102のみを示している。
【0027】
各筐体100は、前面および両端面が開放された金属ケース104と、この金属ケース104の前面を塞ぐ樹脂パネル103(以下、「前面パネル103」という。)と、各端面を塞ぐ金属製のキャップ105,105とにより形成される。前面パネル103および各キャップ105,105は、図示しないゴムパッキンなどを介して金属ケース104に密着固定されており、これにより筐体100内は密封状態となる。また、図中、下方のキャップ105からは、各種の信号線をまとめたコード106が引き出され、コード106には、さらに延長用の第2のコード107が接続される。
【0028】
各光学ユニットは、それぞれのレンズ101,102を前面パネル103に対向させた状態にして、筐体100の長手方向に沿って整列するように配置される。また、投光器1側の光学ユニットと受光器2側の光学ユニットとが一対一の関係で対向する状態になるように、所定の間隔を隔てて対向配備される。これにより、投光器1と受光器2との間で光軸の位置や方向が合わせられた状態になって、各光軸による2次元の検知エリアSが設定される。
【0029】
さらに、投光器1および受光器2には、前面パネル103の一側縁に沿って複数の表示灯30(この実施例で5個とする。)が設けられる。この実施例の表示灯30は、センサに設定される機能や現在の動作状態などを表すほか、受光器2側の表示灯30は、各種機能を設定するためのスイッチとして機能する。
【0030】
図2は、上記の多光軸光電センサの電気構成を示す。
投光器1では、発光素子10としてLEDが使用され、受光器2では、受光素子20としてフォトダイオードが使用される。投光器1では、発光素子10毎に駆動回路11が設けられ、さらに光軸順次選択回路13、制御部14、通信回路15、入出力回路16、表示灯処理回路17などが設けられる。
各発光素子10は、それぞれ駆動回路11および光軸順次選択回路13を介して制御部14に接続される。
【0031】
受光器2には、受光素子20毎に増幅回路21およびアナログスイッチ22が設けられ、さらに、光軸順次選択回路23、制御部24、通信回路25、入出力回路26、表示灯処理回路27、増幅回路28a、フィルタ28b、A/D変換回路29などが設けられる。なお、各制御部14,24には、CPUやメモリが含まれる。
【0032】
投光器1および受光器2の光軸順次選択回路13,23は、各光軸を1つずつ順に有効にする。投光器1および受光器2の各制御部14,24は、通信回路15,25を介して相互に通信を行って、各光軸順次選択回路13,23の切り替え動作のタイミングを同期させる。また、投光器1側の制御部14は、この切り替えのタイミングに合わせて、点灯制御信号を出力することにより、上位の光軸から順に各発光素子10を点灯させる。
【0033】
受光器2の制御部24は、光軸順次選択回路23の切り替えにより各アナログスイッチ22を1つずつ順にオン状態にする。これにより、点灯した発光素子10に対応する受光素子20からの受光信号が増幅回路28aおよびフィルタ28bを介してA/D変換回路29に導かれてディジタル変換され、制御部24に入力される。制御部24は、入力された受光量をあらかじめ定めた入光しきい値と比較することにより、各光軸が入光状態であるか、遮光状態であるかを判別する。
【0034】
投光器1および受光器2の各入出力回路16,26には、それぞれセンサの動作モードを設定するための信号やリセット信号などを入力するための入力ポートが含まれる。また受光器2の入出力回路26には、制御信号を出力するための出力ポートが2つ含まれ、投光器1の入出力回路16にも補助出力用の出力ポートが設けられる。
【0035】
受光器2から出力される制御信号は、図示しない危険領域内の機械の電源供給路に組み込まれたリレーの動作を制御するためのものである。この実施例では、各光軸の投光・受光および入光状態の判別が一巡する都度、遮光された光軸があるか否かを判別し、全ての光軸で入光が検出されていると判別した場合には、制御信号をオン状態(ハイレベル)に設定する。一方、遮光された光軸があると判別した場合には、制御信号をオフ状態(ローレベル)に設定することにより、制御出力を停止する。これにより、機械への電源供給が停止し、機械の動作も停止状態となる。
【0036】
この実施例の多光軸光電センサには、上記の基本動作に付随して複数の機能が設けられており、各機能をユーザの設定操作に応じて有効または無効に設定することができる。たとえば、制御出力が停止した場合にその停止を解除して制御出力をオン状態に復帰させる機能として、遮光された光軸がなくなったことに応じて自動的に復帰する機能と、遮光された光軸がなくなった状態でリセット操作を受け付けたときに復帰する機能とが設けられ、これらの一方が選択される。また、制御対象のリレーからの信号を入力し、このリレーが正しく動いているかどうかを調べる機能や、異常の検出処理を定期的に実行する機能などを選択することもできる。
【0037】
これらの機能は、リレーや電源ラインに対する配線が条件を満たしていることを前提として、ユーザの設定操作に応じて選択される。この実施例では、有効にする機能を選択する操作を、受光器2側の表示灯30を用いて受け付けるようにしている。以下、表示灯30の構成や操作を受け付ける上で実施される処理について順を追って説明する。
【0038】
この実施例の投光器1および受光器2の前面パネル103は、透光板により構成される。各光学ユニットは、それぞれのレンズ101,102が前面パネル103の幅方向の中央部に対応するように配置され、その横手に、各表示灯30が配列される。
【0039】
図3(1)は、筐体100の前面を正面から見た状態を、図3(2)は、図3(1)に対応する範囲の筐体内部の構成を、それぞれ示す。また、図4は、図3(2)と同様の構成図により、表示灯30に対する操作の方法およびこの操作を検出する原理を示す。
なお、図3および図4では、受光器2の筐体100を、上部が右手に、下部が左手に位置するように横向きにして表している。
【0040】
この実施例の表示灯30は、前面パネル103に形成された窓部35と、筐体100の内部の窓部35に対応する位置に設けられた発光素子31とにより構成される。各窓部35は手指40により塞ぐことが可能な大きさに設定される。
【0041】
また、各発光素子31には、それぞれ受光素子32が対にして設けられる。具体的には図3(2)に示すように、発光素子31および受光素子32は、各窓部35に1つずつ割り当てられるようにして、筐体100の内部の基板36に搭載される。
発光素子31は、複数の色彩での発光が可能なチップ型のLEDであって、割り当てられた窓部35に向かって光を照射する。受光素子32はフォトダイオードであって、発光素子31から照射された光Lに対する窓部35からの反射光L1が入射する位置に配備される。
【0042】
なお、同じ窓部35に対応づけられた発光素子31と受光素子32との間には所定高さの遮蔽部材33が設けられる。また、異なる窓部35に対応する発光素子31と受光素子32との間には、基板36から前面パネル103までの全範囲を遮蔽する壁部34が設けられる。さらに、図3(1)に示すように、前面パネル103の各窓部35が配列される範囲37は、遮光性のある塗料により帯状に着色される。
【0043】
また、図3(2)および図4には示していないが、図中の奥行き方向には光学ユニットが位置することになる。ただし、発光素子10や受光素子20は、光学ユニットの外郭を構成するケース体に取り囲まれているため、これらの素子10,20が表示灯300の発光素子31や受光素子32と干渉することはない。
【0044】
なお、発光素子31と受光素子32との間の遮蔽部33は必ずしも必要ではなく、たとえば、発光素子31からの光を筒状の導光部材によりある程度の高さまで導くようにしてもよい。
【0045】
上記の構成によれば、各受光素子32には、同じ窓部35に割り当てられた発光素子31からの光Lに対する窓部35からの反射光L1のみが入射するが、通常は、発光素子31からの光の大半は窓部35を通過するので、受光素子32の受光量はごくわずかとなる。
しかしながら、図4に示すように、窓部35が手指40により塞がれて、光の通過が妨げられると、通過できない光が窓部35で反射して反射光L1が増加するため、受光素子32の受光量も増加する。この実施例では、受光素子32の受光量を監視することによって、表示灯30への操作が行われたか否かを判別するようにしている。
【0046】
図5は、図2に示した表示灯処理回路27の詳細な構成を示す。ただし、ここに示す回路は、1つの表示灯30に対応するものである。実際の表示灯処理回路27には、表示灯30毎に、図示と同様の回路が設けられて、各回路が制御部24に並列に接続されている。
【0047】
図5によれば、表示灯処理回路27には、発光素子31および受光素子32のほか、LED駆動回路37、増幅回路38、コンパレータ39などが含まれる。制御部24は、LED駆動回路37に駆動パルスを与えて発光素子31を発光させる。一方、受光素子32からの受光量信号は、増幅回路38により増幅された後に、コンパレータ39に入力される。
【0048】
コンパレータ39は、受光量信号のレベルが設定されたしきい値を超えたときにオン状態(ハイレベル)となる信号を出力する。制御部14,24は、このコンパレータ39からの信号を、表示灯30への操作状態を示す検知信号として入力し、操作の有無や操作が継続した時間の長さを判別する。
【0049】
つぎに図6は、制御部14,24が発光素子31に対して実行する制御をタイミングチャートにより示す。
この実施例では、図6(1)に示すように、発光素子31を点灯する場合には、長短2種類の駆動パルスを交互に出力する。以下、短い方の駆動パルスを「短パルス」といい、長い方の駆動パルスを「長パルス」という。短パルスは、人の目では発光していることを認識できない長さ(たとえば2〜3マイクロ秒)に設定され、長パルスには、発光していることを識別できる長さ(たとえば10〜20ミリ秒)が設定される。各パルスの間の間隔は、短パルスの幅とほぼ同じに設定されるので、安定して発光している状態を提示することができる。
【0050】
また、この実施例では、発光素子31を消灯状態に設定する場合にも、点灯状態と同様の時間間隔で短パルスを出力する(図6(2))。このようにすれば、目では確認できない短時間の発光が長い休止時間をおいて繰り返されるので、発光素子31が消灯しているように見せかけることができる。
【0051】
発光素子31を点滅状態にする場合にも、短パルスについては、他の状態と同様の時間間隔で出力する。一方、長パルスについて、出力と休止とを2周期おきに切り替える(図6(3))。
【0052】
受光器2の制御部24では、上記のルールに基づき各発光素子31の動作を制御しながら、短パルスに同期するタイミングでコンパレータ39から入力された検知信号を検出し、表示灯30への操作の有無を判別する。
【0053】
図7では、発光素子31に消灯時の制御を行う場合を例に、操作に応じた検知信号の変化と、その変化に応じて実行される処理との関係を示している。
この図の(1)(2)(4)に示すように、窓部35を塞ぐ操作が行われていない場合には、短パルスに応じて発光素子31が発光しても、検知信号はオン状態にはならず、操作が行われている間の短パルスに対応する検知信号のみがオン状態となる。
【0054】
受光器2の制御部24は、図7の(2)(3)に示すように、短パルスを出力したタイミングに応じて検知信号の状態を検出する。また、検知信号がオフからオンに変化したことを検出すると、図7の(5)に示すように、計時処理を開始し、検知信号のオン状態が続く間の経過時間を計測する。なお、この計時処理は、オン状態の検知信号を検出した回数を計数し、その計数値を短パルスの周期に基づき時間長さに換算することにより行われる。
発光素子31を点灯状態や点滅状態で動作させる場合にも、上記の例と同様に、短パルスを出力したタイミングに合わせて検知信号の状態を検出し、表示灯30が操作されているかどうかを判断する。
【0055】
図8は、表示灯30への操作を検出する処理の具体的な手順を示す。
受光器2の制御部24は、各表示灯30に対し、それぞれ図6に示した3通りの制御のいずれかを実行しながら、短パルスの出力に同期するタイミングで検知信号の状態を検出しており、これらの処理に並列して図8に示す処理を実行する。この処理では、オン状態の検知信号が見つかるまで待機し(ST1)、いずれかの検知信号がオン状態になったことに応じて、その検知信号に着目し、計時処理を開始する(ST2)。
【0056】
以下では、着目中の検知信号のオン状態が維持されていることを確認しながら計時を続ける(ST3,4)。検知信号のオン状態が続く間に計時時間が所定の基準値(たとえば1.5秒)に達し(ST3,4が「YES」)、さらにそこからt秒(たとえば1秒)以内に着目中の検知信号がオフ状態になった場合(ST8が「NO」でST5が「YES」)には、着目中の検知信号に対応する表示灯30が操作されたと判定し(ST6)、表示灯30の表示態様を変更する(ST7)。
【0057】
上記の計時時間が基準値に達する前にオン状態の検知信号がオフ状態になった場合(ST3が「NO」)には、ST9に進んで計時時間をリセットし、ST1に戻る。また、計時時間が基準値に達するまで検知信号のオン状態が維持された場合でも、その後のt秒以内に検知信号がオフ状態にならなかった場合(ST5が「NO」でST8が「YES」)には、計時時間をリセットし(ST9)、しかる後にST1に戻る。
【0058】
なお、図7に示すように、実際の操作の開始や終了のタイミングは短パルスからはずれて生じる可能性が多いので、ST4およびST8における比較処理では、計時時間にある程度の誤差を設定して比較を行うのが望ましい。
【0059】
上記によれば、窓部35が一時的に塞がれたり、反対に、窓部35が塞がれた状態が(基準値+t)秒より長く続いた場合には、表示灯30が操作されたとは判断されず、(基準値+t)秒以内の時間で窓部35が塞られた場合に、表示灯30への操作が行われたと判断することができる。このようにすることにより、表示灯30に対してユーザが意図的に行った操作を安定して検出することが可能になる。
【0060】
なおST7では、少なくとも操作された表示灯30の発光素子31の発光状態を変更すればよいが、次に示す具体例のように、操作された表示灯30以外の表示灯30も含めて各発光素子31の発光状態を切り替えてもよい。また、この表示態様の変更では、点灯の有無を切り替える処理のみでなく、発光素子31の発光色を切り替える処理を実施する。
【0061】
図9は、表示灯30の操作を受け付けて、多光軸光電センサに設定する機能を切り替える処理の具体例を示す。
この例では、5つの表示灯30のうちの4個を、それぞれ30A,30B,30C,30Dとして示す。表示灯30B,30C,30Dはそれぞれセンサの特定の機能(ここでは、機能1,機能2,機能3と示すが、実際には、各表示灯30B,30C,30Dの下には具体的な機能の名称等が印刷されている。)の表示および設定に使用され、表示灯30Aは、設定処理の開始や終了を指示する操作を受け付ける目的で使用される。なお、図示していないもう1つの表示灯30も、表示灯30B〜30Dと同様に、特定の機能に対応づけることができるが、これに限らず、他の選択を行う目的で使用することもできる。
【0062】
この例では、有効な機能を緑色で表し、無効な機能を橙色で表すとともに、設定作業の進行に合わせて、各表示灯30A〜30Dによる表示状態を切り替えるようにしている。図9では、各種表示状態をパターン化して表すとともに、図中の右下の枠内に、各パターンに対応する表示状態を示す。
【0063】
図9(1)は、設定変更前の表示状態を示すもので、有効に設定された機能2に対応する各表示灯30Cに緑色が点灯し、他の表示灯30A,30B,30Dが消灯状態となっている。
【0064】
図9(2)は、表示灯30Aに対し、設定の開始を指示する操作が行われている状態を示す。この操作が受け付けられると、各表示灯30A〜30Bによる表示は図9(3)に示すものに変更される。この表示は、現在の設定状態を示すもので、有効に設定されている機能2に対応する表示灯30Cに緑色が点滅し、無効に設定されている機能1,3に対応する表示灯30B,30Dに橙色が点滅する。また、表示灯30Aも緑色が点滅する状態となる。
【0065】
図9(4)は、表示灯30Bに対し、対応する機能1を無効から有効に切り替える操作が行われている状態を示す。この操作が受け付けられると、図9(5)に示すように、操作された表示灯30Bは、橙色が点滅する状態から緑色が点滅する状態に変化する。
【0066】
つぎに図9(6)は、表示灯30Cに対し、対応する機能2を有効から無効に切り替える操作が行われている状態を示す。この操作が受け付けられると、図9(7)に示すように、操作された表示灯30Bは、緑色が点滅する状態から橙色が点滅する状態に変化する。
【0067】
図9(8)は、表示灯30Aに対し、設定の終了を指示する操作が行われている状態を示す。この操作が受け付けられると、図9(9)に示すように、各表示灯30A〜30Dの点滅表示は終了し、新たに有効にされた機能1に対応する表示灯30Bに緑色が点灯する。また、無効になった機能2に対応する表示部30Cは消灯状態に設定され、その他の表示灯30A,30Dも同様に、消灯状態に設定される。
【0068】
上記の例によれば、各種機能の有効/無効を示す表示灯30に対する操作により、現在表示されている設定を容易に切り替えることができる。また、操作後の表示灯30の表示が、変更された設定を示すものに変更されるので、操作が受け付けられたことや、変更された設定の内容を容易に確認することができる。また、特定の機能の設定状態を示す表示灯30にその設定を切り替えるスイッチの機能をもたせることにより、設定の対象の取り違えが生じるのを防止することができる。また、スイッチを配備する場所を確保したり、保護用のカバーを取り付けるなどの必要もなく、構成を簡単にできる。
【0069】
また、この実施例では、前面パネル103に形成された窓部35に手指40を触れることによって、実行する処理を選択することができるので、機械的なスイッチの場合のような操作に伴う外力によって劣化が生じることもない。なお、表示灯30を設ける位置は筐体100の前面に限らず、たとえば、金属ケース104の側面の適所に設けることも可能である。
【0070】
つぎに、各種機能を設定するためのアルゴリズムは、図9の例に限定されるものではない。たとえば、機能1を無効から有効に切り替える場合であれば、対応する表示灯30Bが操作されたときに有効状態を仮設定して、表示灯30Bに緑色を点滅させた後に、同じ表示灯30Bが再度操作されたことに応じて、有効状態を確定し、表示灯30Bの表示を緑色の点灯状態に切り替えてもよい。また、この場合には、誤判定を防止するために、2回目の操作において窓部35を塞ぐ時間を1回目より長く設定したり、1回目の操作と2回目の操作との間の時間間隔に条件を設けるなどするとよい。
【0071】
また、上記の実施例では、1つの表示灯30に特定の一機能を対応づけたが、これに限らず、1つの表示灯30に2〜3個の機能を対応づけて、表示灯30が操作される都度、設定する機能を切り替えることもできる。また、この場合には、切り替えられた機能によって表示灯に異なる色彩を表示するようにすれば、切り替えられた機能が取り違えられるのを防止することができる。
【0072】
また、上記の実施例においては、投光器1側の表示灯30は、センサの動作状態を表示するなどの目的に使用されるため、スイッチの機能は設定されていないが、これに限らず、投光器1にも図3および図5の構成を導入して、各表示灯30を、特定の機能や動作を選択するスイッチとして機能させることもできる。
【0073】
上記のとおり、スイッチの機能を備えた表示灯30によれば、簡単な構成でユーザの操作を安定して検出することができ、しかも、操作を受け付けた後の表示状態の変化により、操作を受け付けたことを明確に報知することができる。したがって、多光軸光電センサに限らず、他の電子機器にも、上記実施例と同様の構成の表示灯を導入することができる。
【0074】
他の電子機器に導入する場合には、表示灯は複数に限らず、必要に応じて表示灯の数を調整することができる。また、他の電子機器でも、図9の表示灯30Aのように、何らかの動作の開始や終了を指示するスイッチとして、表示灯を機能させることもできる。
【符号の説明】
【0075】
1 投光器
2 受光器
14,24 制御部
17,27 表示灯処理回路
30 表示灯
31 発光素子
32 受光素子
35 窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手指により塞ぐことが可能な大きさに形成された窓部と、この窓部の背後に設けられた発光素子とによる表示灯が少なくとも1つ設けられ、各表示灯にそれぞれ特定の機能または動作が対応づけられると共に、各表示灯に対し、前記発光素子からの光に対する窓部からの反射光を受光する受光素子が設けられ、
前記発光素子の動作を制御しながら受光素子からの受光量信号を入力してその入力が示す受光量のレベルを監視する制御部をさらに具備し、
前記制御部は、所定のしきい値を超える受光量が入力された受光素子を対象に、しきい値を超える受光量の入力を受け付けている間の経過時間の長さを計測し、前記計測により得た計測値があらかじめ定めた基準値に到達したことに応じて、計測対象の受光素子に対応する表示灯が操作されたと判定して、操作された表示灯に対応する機能または動作を選択するとともに、操作された表示灯の発光素子による表示の態様を変更する、
スイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたスイッチ装置において、
少なくとも1つの表示灯に特定の機能が対応づけられており、
前記制御部は、前記特定の機能が対応づけられた表示灯が操作されたと判定したとき、この特定の機能を有効な状態から無効な状態に切り替える処理、または特定の機能を無効な状態から有効な状態に切り替える処理を実行する、スイッチ装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたスイッチ装置において、
少なくとも1つの表示灯に複数の機能が対応づけられており、
前記制御部は、前記複数の機能が対応づけられた表示灯が操作されたと判定する都度、前記複数の機能を順に切り替えて設定するとともに、前記発光素子を、設定した機能毎に異なる態様で発光させる、請求項1に記載されたスイッチ装置。
【請求項4】
前記制御部は、光の視認が不可能な時間長さで前記発光素子を発光させる制御を、光の視認が可能な長さで発光素子を発光させることが可能な期間をおいて周期的に実行するとともに、受光素子から入力した受光量のレベルを前記しきい値と比較する処理を、前記光の視認が不可能な時間長さによる発光に同期するタイミングで実行する、請求項1に記載されたスイッチ装置。
【請求項5】
前記制御部は、少なくとも1つの表示灯に対し、この表示灯が操作されたと判定するまでの間、当該表示灯の発光素子に対して前記光の視認が不可能な時間長さで周期的に発光させる制御のみを実行し、当該表示灯が操作されたと判定したとき、前記発光素子に対し、前記光の視認が不可能な時間長さによる発光の間に、光の視認が可能な時間長さによる発光を実施させる、請求項4に記載されたスイッチ装置。
【請求項6】
投光器と受光器との間に複数の光軸が設定され、投光器および受光器の少なくとも一方の筐体の長手方向に沿って複数の表示灯が並べて配備される多光軸光電センサにおいて、
各表示灯は、手指により塞ぐことが可能な大きさの窓部と、筐体内の窓部に対向する位置に配備された発光素子とにより構成され、各表示灯にそれぞれ特定の機能または動作が対応づけられると共に、少なくとも1つの表示灯に対し、前記発光素子からの光に対する窓部からの反射光を受光する受光素子が設けられ、
前記発光素子の動作を制御しながら受光素子からの受光量信号を入力してその入力が示す受光量のレベルを監視する制御部がさらに設けられ、
前記制御部は、所定のしきい値を超える受光量が入力された受光素子を対象に、しきい値を超える受光量の入力を受け付けている間の経過時間の長さを計測し、前記計測により得た計測値があらかじめ定めた基準値に到達したことに応じて、計測対象の受光素子に対応する表示灯が操作されたと判定して、操作された表示灯に対応する機能または動作を選択するとともに、操作された表示灯の発光素子による表示の態様を変更する、ことを特徴とする多光軸光電センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−66798(P2011−66798A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217354(P2009−217354)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】