説明

スイッチ装置

【課題】低荷重の押圧操作で接点の導通を行う構成において、外部からの振動が加わった場合であっても誤作動を起こすことのないスイッチ装置を提供する。
【解決手段】可動部8と固定部9とは半導体材料であるシリコン部材で形成されており、可動部8が固定部9に接合されてスイッチ素子6を構成している。可動部8と固定部9とは同一形状、同一部材で形成されているため、単位重量も同一であり、外部から振動が加わって可動部8が振動した場合は、固定部9が可動部8と同期して振動することから、可動部8が固定部9に接触することを防止できる。つまり外部からの振動によって接点間が導通することはなく、スイッチ装置が誤作動することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部に対する押圧操作に応じて可動電極が固定電極に接触することにより導通するスイッチ素子を備えたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスイッチ装置において、低荷重の押圧操作で接点間の導通ができる低荷重操作用のスイッチ装置、例えばメンブレンスイッチに対する市場の必要性が高まっている。
従来のメンブレンスイッチは、シート状の可動電極と固定電極との間にスペーサーを挟んで所定間隙を設け、絶縁をとる構造をしており、使用者の可動電極に対する押圧操作により低荷重で接点間の導通を行うことができるものであった。尚、従来のメンブレンスイッチは一般的なものであり、先行技術文献の記載を省略する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなメンブレンスイッチは、低荷重で接点間の導通ができるように可動電極と固定電極との間に所定間隙を設けるようにしているため、メンブレンスイッチに対して外部から大きな振動が加わって可動電極が振動した場合は、可動接点が固定接点に接触することがあり、このような場合は接点が導通してしまい、誤作動が発生する虞があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、低荷重の押圧操作で接点の導通を行う構成において、外部からの振動が加わった場合であっても誤作動を起こすことのないスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のスイッチ装置は、上面に固定電極を有した固定部と、前記固定電極との間に所定間隙を存した状態で対向する突出部を有すると共に当該突出部の下面に可動電極を有した可動部とを備え、前記可動部に対する押圧操作に応じて前記可動電極が前記固定電極に接触することにより導通するスイッチ素子を備えたスイッチ装置において、前記固定部において前記可動部と対向する部位は、前記可動部と同一形状となるように下面に補助突出部を有して形成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
前記固定部及び前記可動部は、同一材料から形成されているのが望ましい(請求項2)。
前記固定部及び前記可動部は、半導体から形成されているのが望ましい(請求項3)。
【0007】
前記スイッチ素子はプリント基板に複数搭載され、前記プリント基板を保護シートで被覆することによりメンブレンスイッチとして構成されているようにしてもよい(請求項4)。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の手段によれば、固定部において可動部と対向する部位は、同形状となるように下面に補助突出部を有して形成されているので、外部から振動がスイッチ装置に加わって可動部が振動した場合は、固定部が可動部に同期して振動するようになる。これにより、可動接点が固定接点に接触して導通してしまうことはなく、誤作動を起こすことを防止できる。
【0009】
請求項2の手段によれば、固定部及び可動部の単位重量は同一であるので、可動部が振動した場合、固定部を可動部に確実に同期させて振動させることができる。
請求項3の手段によれば、固定部及び可動部を半導体の製造方法を用いて製作することができるので、微小なスイッチ素子を製作することが可能となる。
【0010】
請求項4の発明によれば、メンブレンスイッチとして構成することができるので、位置検出用のスイッチ装置を製作するのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例につき図面を参照して説明する。
図2には、本発明を自動車のカーナビゲーションの操作に用いられるスイッチ装置として使用した実施例を示している。このスイッチ装置1は、運転者が車両を運転しながら操作可能な位置に設置されるもので、スイッチ装置1に対する操作位置がカーナビゲーション2の表示器3にカーソル位置として表示されるようになっている。
【0012】
図2に示すように、スイッチ装置1は、ケース4内にプリント基板5(図1参照)を収納して構成されている。プリント基板5の表面には複数のスイッチ素子6がマトリックス状に実装されており、それらのスイッチ素子6を保護シート7で被膜することによりメンブレンスイッチとして構成されている。使用者は、スイッチ装置1の表面を軽くなぞり、決定したい箇所に来たときに、指をスイッチ装置1から離すこともしくはその部位を押して導通させることで決定操作が可能となる。
【0013】
図3はスイッチ素子6の分解斜視図を示し、図4はスイッチ素子6の斜視図を示している。これらの図3及び図4において、スイッチ素子6は可動部8と固定部9とから構成されている。可動部8と固定部9は半導体であるシリコン部材で形成され、半導体製造で用いられるエッチング(ウエットやドライ)により形成されており、外形寸法は約1mm平方である。
【0014】
可動部8は、扁平矩形状をなしており、矩形状の窓部10が形成されている。この窓部10を横断するように梁部11が橋架されており、その梁部11の下面中央部に突出部12が図示下方を指向して突出形成されている(図1参照)。梁部11は、使用者による低荷重の押圧操作に応じて弾性変形可能な形状に形成されている。突出部12は、下方向に突出した四角錘形状をなしている。突出部12の下面は、導電率の良い金素材で鍍金が施してあり、可動電極13となっている。
【0015】
尚、本実施例の説明で使用する上下方向とは、使用者がスイッチ装置1を使用する際に指で押圧する押圧方向を下、その反対方向を上として考えるものである。
固定部9は、上述した可動部8よりも横方向に延長部14が突出した扁平矩形状に形成されている。ここで、固定部9において可動部8に対向する部位(延長部14以外の部位)は、可動部8と同一形状に形成されている。つまり、固定部9には、可動部8の窓部10に対応して補助窓部15が形成され、可動部8の梁部11に対応して補助梁部16が補助窓部15を横断するように形成され、可動部8の突出部12に対応して補助突出部17が補助梁部16の下面中央部に形成されている。
【0016】
固定部9の上面には一対の導電膜18が、例えば半導体製造で用いられるCVD法により形成されている。導電膜18は、固定部9において梁部11の上面中央部には一対の固定電極18aが所定間隙を存して形成されていると共に、延長部14の上面には一対の端子18bが形成されており、それらの固定電極18aと端子18bとが導電パターン18cでそれぞれ接続されて構成されている。
【0017】
可動部8は、固定部9の表面に接合されて、図3のスイッチ装置1の斜視図に示すように構成されている。
図1は、図4のスイッチ装置1のA−A´面の断面図を表している。この図1に示すように、固定電極18aは、使用者が可動部8に押圧操作を加えた際に、可動部8の可動電極13が両方の固定電極18aに接触して導通させる位置に形成されている。
【0018】
固定部9の端子18bは、ワイヤボンディグ19によりプリント基板5の所定の導電パターンに接続されている。この導電パターンは、スイッチ素子6のオン状態で当該スイッチ素子6の可動電極13及び固定電極18aを通じて検出信号を外部に出力するように設定されている。従って、スイッチ素子6がオンしたときは、スイッチ装置1から検出信号が外部に出力されるので、その検出信号を検出することにより何れのスイッチ素子6がオンしたか、換言すれば、スイッチ装置1における何れの部位がタッチ操作されたかを検出することができる。
【0019】
尚、ワイヤボンディグ19は、使用者による保護シート7に対する押圧操作時に損傷しないように図示しない保護手段により機械的に保護されている。
カーナビゲーション2は、表示器3にその時点で操作可能な動作に対応したボタンを表示すると共に、スイッチ装置1からの信号に基づいて表示器3に表示しているカーソルがボタンに位置したときは当該ボタンを選択表示(例えば反転表示、点滅表示)するようになっている。また、このようなボタンの表示状態でスイッチ装置1に対するタッチ操作が解除されたことを検出したときは、選択しているボタンが最終的に選択されたと判断して当該ボタンに対応した所定動作を実行するようになっている。
【0020】
次に、上記構成の作用について図5を参照しながら説明する。カーナビゲーション2を動作させると、表示器3にはその時点で操作可能な動作に対応したボタンが表示される。
車両の運転者は、スイッチ装置1の表面をなぞる感覚でスイッチ装置1の表面に対して指による低荷重の押圧操作を行う。すると、指で低荷重の押圧操作が行われた部位に位置するスイッチ素子6の可動部8が図5に示すように下方に弾性変形するので、可動部8の突出部12の下面に設けられた可動接点が固定部9の梁部11に設けられた固定電極18aに接触する。これにより、固定電極18a間が可動電極13により導通するので、そのスイッチ素子6がオンしたことを示す検出信号がカーナビゲーション2に出力される。この場合、使用者によるタッチ操作に応じて複数のスイッチ素子6がオンしたときは、複数のスイッチ素子6がオンしたことを示す検出信号がカーナビゲーション2に出力される。
【0021】
カーナビゲーション2は、1個のスイッチ素子6がオンしたことを検出したときは、オンしているスイッチ素子6の位置に対応した位置に表示器3に表示しているカーソルを移動する。また、複数のスイッチ素子6がオンしているときは、それらのスイッチ素子6の中心位置にカーソルを移動する。従って、運転者がスイッチ装置1に対するタッチ操作位置を移動したときは、それに伴った表示器3に表示されているカーソル位置が移動することになる。このとき、表示器3に表示しているボタンにカーソルが位置したときは、そのボタンを選択表示することにより当該ボタンが選択されていることを示す。
【0022】
運転者は、スイッチ装置1に対するタッチ操作により表示器3に表示されている所望のボタンが選択表示されたときは、スイッチ装置1に対するタッチ操作を解除する。これにより、スイッチ装置1から指を離した位置で、その位置のスイッチ素子6が最後にオフするので、カーナビゲーション2は、最後にオフしたスイッチ素子6の位置で決定操作が行われたと判断する。この場合、スイッチ素子6がオンする場合と同様に、複数のスイッチ素子6が同時にオフしたときは、その中心位置で決定操作が行われたと判断する。
【0023】
カーナビゲーション2は、上述のようにボタンが選択表示した状態で決定操作が行われたときは、その時点で選択表示されているボタンに応じた動作を実行する。
ところで、本実施例のスイッチ装置1は車両に搭載されていることから、車両の走行状態では、スイッチ装置1に対して外部から大きな振動が加わる。スイッチ装置1が図1に示すように図示上方が上方向を指向するように設置されている場合は、車両の上下方向の振動はスイッチ装置1に対して図1に示す上下方向に加わる。このため、可動部8が振動し、可動部8と固定部9との間の所定間隙の寸法が変動し、可動接点が固定接点に接触してしまう虞がある。
【0024】
しかしながら、本実施例では、固定部9において可動部8と対向する部位は、当該可動部8と同一形状となるように下面に補助突出部17を有して形成されているので、スイッチ装置1が振動することにより可動部8が振動した場合は、固定部9は可動部8に同期して振動するようになる。これにより、可動部8と固定部9との間の所定間隙の寸法が変動してしまうことを防止できるので、可動部8が振動するにしても固定部9に接触することを防止できる。
【0025】
このような本実施例によれば、スイッチ装置1の固定部9において可動部8と対向する部位は、当該可動部8と同一形状に形成されているので、外部から振動が加わることにより可動部8が振動した場合は、固定部9が可動部8に同期して振動するようになる。従って、可動接点と固定接点とは、所定間隙を存した状態を維持しながら振動することになるので、可動電極13が固定電極18aに接触して導通してしまうことを防止でき、スイッチ装置1が誤作動することを防止できる。
【0026】
しかも、可動部8と固定部9とを半導体材料のシリコン部材から形成するようにしたので、両者の単位重量(固有振動数)が同一となり、固定部9が可動部8に同期して振動するのに有効に作用する。また、このようにシリコン部材を材料とすることにより半導体の製造方法を用いて製作することが可能となるので、固定部9を可動部8と同一形状となるように極めて精密に形成することができる。
【0027】
本発明は、上記しかつ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
可動部8を囲うように脚部が形成されるとしたが、可動部8を支持することができればよく、可動部8を片持ちで支持するように脚部が形成されていてもよい。
突出部12は可動部8の梁部11の下面中央部に形成されるとしたが、可動電極13の接触により固定電極18aが導通状態にすることができる位置にあれば何れの部位でもよい。
【0028】
可動部8及び固定部9の部材は、シリコン部材に限定されるものではなく、弾性可能な材料であれば、ゴム部材でも樹脂部材でもよい。
可動部8と固定部9は同一部材で形成されるとしたが、外部からの振動が加わったときに同期して振動すればよく、異なる材料であっても単位重量(固有振動数)が同一であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例を示すスイッチ素子の縦断側面図
【図2】スイッチ装置の斜視図
【図3】スイッチ素子の分解斜視図
【図4】スイッチ素子の斜視図
【図5】スイッチ素子の作動状態で示す図1相当図
【符号の説明】
【0030】
図面中、8は可動部、9は固定部、12は突出部、13は可動電極、17は補助突出部、18aは固定電極を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に固定電極を有した固定部と、前記固定電極との間に所定間隙を存した状態で対向する突出部を有すると共に当該突出部の下面に可動電極を有した可動部とを備え、前記可動部に対する押圧操作に応じて前記可動電極が前記固定電極に接触することにより導通するスイッチ素子を備えたスイッチ装置において、
前記固定部において前記可動部と対向する部位は、前記可動部と同一形状となるように下面に補助突出部を有して形成されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記固定部及び前記可動部は、同一材料から形成されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記固定部及び前記可動部は、半導体から形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記スイッチ素子はプリント基板に複数搭載され、
前記プリント基板を保護シートで被覆することによりメンブレンスイッチとして構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−335364(P2007−335364A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168763(P2006−168763)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】