説明

スイッチ装置

【課題】個々のバラツキや温度変化等により操作部の位置とスイッチからの出力電圧値の関係に変化が生じても、確実に操作部の位置をクリック位置で検出することのできるスイッチ装置を提供する。
【解決手段】操作部10を備え該操作部の位置に応じた所定の出力をなす電気部品2と、電気部品2からの出力を基に操作部10に対する操作を検出する検出手段3とを有し、電気部品2は操作部10の操作に対しクリック感触を生じさせるクリック機構15を備え、クリック機構15は操作部10を所定位置において操作速度を変化させつつ遷移移動させることでクリック感触を生じさせるし、検出手段3は電気部品2からの出力変化量を検出し、出力変化量の大きさにより操作部10がクリック機構15により遷移移動された位置にあることを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品からのアナログ出力を基に、所定の操作位置になると、ONあるいはOFF信号を出力するスイッチ装置に関し、特にクリック機構を有するスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチ装置は、可動接点と固定接点の接離によりONあるいはOFFの切換信号を出力するタイプと、アナログ出力の所定の閾値を超えた場合にONあるいはOFFの切換信号を出力するタイプがある。そして該スイッチ装置には操作部が所定位置となったときにクリック感を生じさせるクリック機構を有する。
【0003】
該スイッチ装置をパワーウインドウ開閉用のスイッチ装置として用いた場合、該スイッチ装置は車両ドアの肘置き部などに配置され、操作部は中立位置から引き上げ方向と押し込み方向にそれぞれ揺動自在とされる。操作部を引き上げ方向に操作するとウインドウは上方、すなわち閉まる方向に移動し、押し込み方向に操作するとウインドウは下方、すなわち開く方向に移動する。
【0004】
スイッチ装置のクリック機構は、操作部を操作すると、引き上げ方向と押し込み方向のそれぞれについて、2段階のクリック感触が生じるように構成されており、スイッチ装置は、1段目のクリック位置ではマニュアル動作(操作の間だけ車両のウインドウが上下する)を指令し、2段目のクリック位置ではオート動作(操作後もウインドウの上下を継続する)を指令する。正しく指令を行うためには、スイッチ装置のクリック位置とONあるいはOFFの切換信号のタイミングを確実に同期させるようにする必要がある。
【0005】
そして、アナログ出力の所定の閾値を超えた場合にONあるいはOFFの切換信号を出力するタイプのスイッチ装置においては、操作部に連動して揺動する永久磁石と、この永久磁石の移動に伴う磁界の変化に応じて電気抵抗が変化する磁気抵抗素子とを備えた磁気検出方式が知られている。磁気検出方式によれば、可動接点と固定接点を接離させるスイッチ装置に比べて接点の摩耗や酸化あるいは塵埃等の付着に起因する信頼性の低下が防止できることとなる。
【0006】
この場合、操作部の操作位置が変化するのに伴って磁気抵抗素子からの出力が変化する。この出力値を検出手段で検出し所定の閾値を超えた場合に、操作部が所定量操作されたとみなしてON信号を出力するようにしている。また、該所定の閾値を超えた場合には操作者に所定量操作されたことを知らしめる為、該位置においてクリック感触を生じさせるようクリック機構を設けている。しかし、温度変化によって磁気抵抗素子からの出力電圧値は変化するし、また個々のスイッチ装置毎に仕上がりのバラツキがあった場合にも、操作部の位置と出力電圧値との関係が変化する。その場合には、ON信号の出力タイミングとクリック位置とがずれてしまうことがあった。そうなってしまうとON位置を操作者に知らしめる為に設けたクリック機構が、かえって操作者の混乱を招いてしまうという問題がある。
【0007】
この問題を解決するため、個々のスイッチ装置においてそれぞれ、操作部をクリック位置に実際に操作した時の出力電圧値を、メモリに記憶しておき、それを閾値として用いるものが知られている。これによれば、個々のバラツキについてはその違いを吸収することができる。このようなスイッチ装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】特開2005−19100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のスイッチ装置では、実際の使用の際に閾値となる出力電圧値を設定するものではないため、個々のバラツキを予め吸収することはできても、実際の使用時における特性の変化、すなわち温度変化による操作部の位置と出力電圧値との関係の変化には対応することができない。このため、操作部においてクリック位置と検出手段で操作部の位置を判別する位置とがずれて、スイッチ装置が信号を出力するタイミングとクリックが発生するタイミングを同期できないことがあった。
【0009】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、個々のバラツキや温度変化等により操作部の位置と電気部品からの出力電圧値の関係に変化が生じても、確実にスイッチ装置が信号を出力するタイミングとクリックが発生するタイミングを同期可能なスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係るスイッチ装置は、操作部を備え該操作部の位置に応じた所定のアナログ信号を出力する電気部品と、該電気部品からの出力を基に操作部に対する操作を検出する検出手段とを有する電気部品において、
前記電気部品は前記操作部の操作に対し所定の位置でクリック感触を生じさせるクリック機構を備え、該クリック機構は前記操作部を前記所定位置において操作速度を変化させつつ遷移移動させ、
前記検出手段は前記電気部品からの出力変化量を検出し、該出力変化量の大きさにより前記操作部が前記クリック感触を生じさせる所定位置にあるとみなして所定の信号を出力することを特徴として構成されている。
【0011】
また、本発明に係るスイッチ装置は、前記検出手段は前記電気部品からの出力変化量が所定値以上の場合に、前記操作部が前記クリック感触を生じされる所定位置にあると見なして所定の信号を出力することを特徴として構成されている。
【0012】
さらに、本発明に係るスイッチ装置は、前記検出手段は動作を開始した初期状態における前記電気部品からの出力を検出し、該出力に応じた所定の信号を出力することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るスイッチ装置によれば、検出手段は電気部品からの出力変化量を検出し、出力変化量の大きさにより操作部がクリック機構により遷移移動される位置にあることを判別する。クリック位置においては操作部が遷移移動するが、これに伴い出力値の変化量が大きくなり、これを検知してスイッチ装置の信号を出力するので、スイッチ装置の個々のバラツキや、温度変化などによって操作部の位置に対する出力電圧値の特性に変化があっても、スイッチ装置が信号を出力するタイミングとクリックが発生するタイミングを同期可能とできる。
【0014】
また、本発明に係るスイッチ装置によれば、検出手段は電気部品からの出力変化量が所定値以上の場合に、操作部がクリック機構により遷移移動される所定位置にあることを判別することにより、閾値の設定により容易にスイッチ装置が信号を出力するタイミングとクリックが発生するタイミングを同期可能とできる。
【0015】
さらに、本発明に係るスイッチ装置によれば、検出手段は動作を開始した初期状態における電気部品からの出力を検出し、出力に応じた所定の信号を出力することにより、初期状態において適切な動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。本実施形態のスイッチ装置は、車両のパワーウインドウ開閉のために設けられる。図1には、本実施形態のスイッチ装置1を含む車両内のシステムのブロック図を示している。この図に示すように、パワーウインドウ開閉のための構成として車両内には、スイッチ装置1とウインドウ装置20とが設けられ、これらは通信路31を介して車両制御部30に接続されている。
【0017】
車両制御部30は、スイッチ装置1から所定の操作がなされた旨の信号を受信したら、ウインドウ装置20を動作させ、ウインドウ21を上下させる制御を行う。なお、通信路31はスイッチ装置1やウインドウ装置20以外にも、車両内の各種機器を接続しており、車両制御部30はこれら各種機器の制御も行う。
【0018】
スイッチ装置1は、使用者による操作がなされる電気部品2と、電気部品2における操作を検出する検出手段3とを有している。電気部品2から出力されるのはアナログ信号であるため、電気部品2と検出手段3の間には、A/D処理回路4が設けられ、電気部品2からの信号をデジタル信号に変換して検出手段3に出力するようにしている。
【0019】
電気部品2は、使用者が実際に操作をなす操作部10と、操作部10とは非接触であってその位置に応じた出力をなす磁気抵抗素子11とを有している。電気部品2からの出力は、磁気抵抗素子11からなされ、前述のようにその出力はA/D処理回路4を介して検出手段3に送られる。
【0020】
検出手段3には第1メモリ5と第2メモリ6が接続されている。第1メモリ5は、検出手段3によって読み書き自在なRAMからなり、電気部品2からの出力や検出した操作部10の状態を一時的に記憶する。第2メモリ6は、検出手段3からは読み込みのみが可能なROMからなり、初期状態における操作部10の状態を判別するためのデータが予め書き込まれている。
【0021】
ウインドウ装置20は、上下されるウインドウ21と、ウインドウ21を上下させるモータ22と、モータ22を所定の方向に駆動するモータ駆動回路23とを有して構成されている。モータ駆動回路23は、通信路31を介して接続された車両制御部30からの指令によってモータ22を動作させる。
【0022】
次に、電気部品2の詳細な構成について説明する。図2には電気部品2の分解斜視図を、図3には電気部品2の内部構造を表した説明図を、それぞれ示している。これら各図に示すように、電気部品2は、開口12aを有するケース12と、ケース12に揺動操作自在に取り付けられた操作部10と、操作部10の下部に固定され操作体10の回転軸と直交する平面に沿って移動する板状の永久磁石13と、磁気抵抗素子11が実装されてケース12の内部に設置されたプリント基板14と、操作部10の垂下筒部10b内に収納されたスプリング15aおよび球体15bとを有したクリック機構15を備えて概略構成されている。
【0023】
ケース12には開口12aを囲むように立壁16が一体成形されており、この立壁16の外壁面の2箇所に支軸12bが突設されている。また、ケース12には開口12a内に露出する略V字形状のクリック用カム面17が形成されており、操作部10の垂下筒部10b内で昇降可能な球体15bがスプリング15aに弾性付勢されてクリック用カム面17に常時弾接する。これらスプリング15aと球体15b及びクリック用カム面17によって、操作部10の操作に伴いクリック感触を生じるクリック機構15が構成されている。
【0024】
操作部10は、下面から下向きに垂下片10a及び垂下筒部10bが突出し、また両側壁には軸孔10cが穿設されている。この操作部10は、一対の軸孔10cにそれぞれ対応するケース12の支軸12bをスナップインさせることによって、開口12aを蓋閉するようにケース12に対し揺動可能に取付けられる。そして、非操作時にはスプリング15aに弾性付勢される球体15bがクリック用カム面17の谷部と係合し、操作部10は中立位置に保持される。
【0025】
操作部10は、スプリング15aの反力に抗する操作力を付与することによって、支軸12bを回動軸として両側に揺動させることができる。操作部10を中立姿勢から引き上げるように操作することで、一方側に揺動させることができ、操作部10を中立姿勢から押し込むように操作することで、他方側に揺動させることができる。
【0026】
また、操作部10が揺動すると垂下筒部10bが傾倒して球体15bがクリック用カム面17に沿って移動するようになっている。操作部10が両側に揺動自在となっているのに対応して、クリック用カム面17も谷部の両側に傾斜面が形成されている。クリック用カム面17には、両方の傾斜面にそれぞれ2つの平坦面が形成されており、操作部10を中立姿勢から一方側に揺動させると、球体15bが中間の平坦面に達することで一旦、クリック感触を生じ、さらに操作部10を一方側に揺動させると、揺動端部位置で球体15bが平坦面に達し、再びクリック感触を生じる。揺動させた操作部10から操作力を除去すると、スプリング15aの反力で球体15bがクリック用カム面17に沿って移動し、再び該カム面17の谷部と係合するため、操作部10は元の中立位置に自動復帰する。
【0027】
このように、クリック機構15によって操作部10の操作に伴って2段階のクリック感触を生じさせることができる。クリック感触は、スプリング15aで付勢された球体15bとクリック用カム面17との係脱によって生じるが、クリック位置において操作部10は、球体15bが傾斜面に沿って谷部に移動することから操作速度が急速に大きくなって、遷移的な移動、すなわち操作部の位置が、瞬間的に(実際には短時間)変わることとなる。
【0028】
図4には、操作部10を実際に人がパワーウインドウの操作をするのと同じ状態、すなわち操作部10を上下から挟み込んで操作するのではなく、指先を操作部10の表面に触れて押し込み操作あるいは引き上げ操作した際における操作時間と出力電圧値の関係を表した図を示している。この図では、操作部10を中立位置から一方側に揺動させ、クリック感触を2段階生じさせた上で、手を離して再び操作部10を中立姿勢に復帰させるまでを表しており、図中左から右に向かって時間が経過している。
【0029】
時間0において、操作部10は中立位置にあり、それに対応した出力電圧値が電気部品2から出力されている。時間が進むのに伴って操作部10は一方側に揺動操作され、時間t1付近において1段目のクリック位置まで移動する。時間0から操作部10が1段目のクリック位置に移動するまでは、出力電圧値はほとんど変化しない。これに対し、1段目のクリック位置に移動した時間t1付近においては、出力電圧値が短い時間内で大きく変化する。これは、前述のように操作部10がクリック位置において操作速度が急速に大きくなり、遷移的に移動し、これに伴って操作部10と一体的に動作する永久磁石13も遷移的に移動することによって生じている。
【0030】
さらに時間が進むのに伴って操作部10は一方側に揺動操作され、時間t2付近において2段目のクリック位置まで移動する。時間t1付近で操作部10が遷移的に移動した後、2段目のクリック位置に移動するまでは、出力電圧値はほとんど変化しない。これに対し、2段目のクリック位置に移動した時間t2付近においては、1段目のクリック時と同様、出力電圧値が短い時間内で大きく変化する。
【0031】
2段目のクリック位置において、時間t3で操作部10から手を離すと、操作部10は中立位置に向かって自動復帰するように動作する。この際にも、2段目のクリック位置と1段目のクリック位置において、それぞれ出力電圧値が短い時間内で大きく変化し、操作部10が中立位置に戻ると出力電圧値は時間0と同じ値となる。
【0032】
図5には、図4において出力電圧値を該出力電圧値の変化量とした図を示している。この図に示すように、操作部10が遷移的に移動するクリック感触を生じる時間において出力電圧値が大きく変化するため、当該時間で出力電圧値の変化量が極めて大きくなる。スイッチ装置1の検出手段3は、電気部品2からの出力電圧値の変化量を検出し、この変化量の絶対値が所定の閾値以上となった場合に、時間当たりの変化量が所定の値以上になったと判断し、操作部10がクリック位置に操作されたとみなして信号を出力する。なお、傾けた角度と変化特性は一般的な永久磁石と磁気抵抗を用いた磁気式の可変抵抗器と同じく正弦波の出力となっている。また、該閾値は、実際の製品のデータを取得し、その結果から設定する。
【0033】
図6には、検出手段3におけるフローチャートを示している。車両のエンジンが始動することにより、フローが開始される(S1)。検出手段3は、まず第1メモリ5の内容を初期化する(S2)。具体的には、電気部品2からの出力電圧値であるVa0とVa1を0とし、操作部10の位置情報を中立位置を表す0とする。
【0034】
ここで、Vaは、電気部品2から取得した出力電圧値を示し、十分に短い所定の時間間隔でデータが取得される。Va1はVaのうちの直近のものであり、Va0は1ステップ前のもの、すなわちVa1の測定の前の測定時間において取得したデータである。すなわち、これらは異なる時間に取得された出力電圧値であって、出力電圧値の変化量を算出するために用いられる。また、操作部10の位置情報は、中立位置が0、1段目のクリック位置まで押し込まれた位置が−1、2段目のクリック位置まで押し込まれた位置が−2、1段目のクリック位置まで引き上げられた位置が1、2段目のクリック位置まで引き上げられた位置が2とされる。
【0035】
次に、検出手段3は電気部品2からの出力電圧値を取得し(S3)、当該出力電圧値をVa1として第1メモリ5に記憶させる(S4)。続いて、検出手段3は第2メモリ6から2つの数値(offL、offH)を読み出し、Va1と大きさを比較する。offLとoffHは、図4に示すように操作部10が中立位置にあるときの電気部品2からの出力電圧値よりもわずかに低い値及び高い値であり、ここでは初期状態において操作部10が操作されている状態であるか否かを判別するために用いられる。
【0036】
Va1がoffLよりも大きく、かつoffHよりも小さい場合、操作部10は中立位置にあるものとしてS6以下のステップに進む。一方、Va1がoffLより小さく、あるいはoffHよりも大きい場合には、操作部10がいずれかの方向に操作された状態であるものとして、S5−1以下のステップを行う。
【0037】
Va1がoffHより大きい場合(S5−1)、操作部10は引き上げられた状態であるものと判別され、検出手段3は操作部10の位置情報を1として車両制御部30に送信する(S5−2)。この場合、操作部10が1段目のクリック位置か2段目のクリック位置かは判別しておらず、いずれであっても1段目のクリック位置に相当する位置情報を送信する。当該位置情報を受信した車両制御部30は、ウインドウ装置20に対してウインドウ21を上げる方向のマニュアル動作を指令する。操作部10を引き上げる操作は、ウインドウ21を閉じる方向の操作であり、ここでマニュアル動作のみが行われることにより、エンジンを始動させた際に意図せず操作がなされていた場合であっても、指などが窓と窓枠との間に挟み込まれるのを防止することができ、よって、安全性を考慮した適切な動作を行わせることが可能となる。
【0038】
Va1がoffLより小さい場合(S5−3)、操作部10は押し込まれた状態であるものと判別され、検出手段3は操作部10の位置情報を−2として車両制御部30に送信する(S5−4)。この場合も、操作部10が1段目のクリック位置か2段目のクリック位置かは判別しておらず、いずれであっても2段目のクリック位置に相当する位置情報を送信する。当該位置情報を受信した車両制御部30は、ウインドウ装置20に対してウインドウ21を下げる方向のオート動作を指令する。
【0039】
S5において操作部10が中立位置にあると判別された場合、検出手段3はVa0をVa1の値とした上で(S6)、電気部品2からの出力電圧値を取得し(S7)、当該出力電圧値をVa1として第1メモリ5に記憶させる(S8)。続いて検出手段3はVa1−Va0を算出し(S9)、算出された値が第2メモリ6に予め記憶された閾値より大きいか否かを判別する(S10)。S10においては、Va1−Va0がthmより小さいか否かを判別する。thmは負の値を有する閾値であり、Va1−Va0がthmより小さい場合には、出力電圧値の変化量が、操作部10の押し下げられる方向に大きいこと、すなわち操作部10が下がる方向に移動していずれかのクリック位置にあるとみなすことができる。
【0040】
したがって、S10においてVa1−Va0がthmより小さい場合には、検出手段3は第1メモリ5に記憶された操作部10の位置情報から1減算し、該減算した結果を第1メモリ5に記憶させると共に車両制御部30に送信する(S11)。例えば、S10以前の位置情報が0、すなわち操作部10が中立位置であった場合には、S11で位置情報は−1となり、操作部10は押し込む方向に1段目のクリック位置にあるとみなすことができる。
【0041】
S11で位置情報を算出、送信したら、検出手段3はVa0をVa1の値とした上で(S12)、電気部品2からの出力電圧値を取得し(S13)、当該出力電圧値をVa1として第1メモリ5に記憶させる(S14)。続いて検出手段3はVa1−Va0を算出し(S15)、再びVa1−Va0をthmと比較する(S16)。そして、Va1−Va0がthmよりも大きくなるまでS12からS16を繰り返す。
【0042】
出力電圧値の変化量は、図5に示すように操作部10のクリック位置においてパルス状に大きく変化する。S12からS16のステップにより、Va1−Va0が図5に示すパルス内にある間は、操作部10の位置情報が変化しないようにしている。
【0043】
S10においてVa1−Va0がthmより大きかった場合には、Va1−Va0がthpより大きいか否かを判別する(S17)。thpは、正の値を有する閾値であり、Va1−Va0がthpより大きい場合には、出力電圧値の変化量が、操作部10の引き上げられる方向に大きいこと、すなわち操作部10が上がる方向に移動していずれかのクリック位置にあるとみなすことができる。
【0044】
したがって、S17においてVa1−Va0がthpより大きい場合には、検出手段3は第1メモリ5に記憶された操作部10の位置情報の位置情報に1加算し、該加算した結果を第1メモリ5に記憶させると共に車両制御部30に送信する(S18)。例えば、S17以前の位置情報が1、すなわち操作部10が引き上げる方向に1段目のクリック位置にあった場合には、S18で位置情報は2となり、操作部10は引き上げる方向に2段目のクリック位置にあるとみなすことができる。
【0045】
以下、S19〜S23のステップは、S12〜S16のステップと同様の動作からなり、Va1−Va0が図5に示すパルス内にある間において、操作部10の位置情報が変化しないようにしている。
【0046】
また、S10とS17において、Va1−Va0がthmより大きく、かつthpより小さい場合には、操作部10はクリック位置に到達していないものとして、S7のステップに戻る。また、S16やS23のステップの後も、S7のステップに戻り、S7以下のステップを繰り返す。
【0047】
このように、電気部品2からの出力電圧値の変化量の大きさに応じて所定の信号を出力することとしたので、スイッチ装置1の個々のバラツキや、温度変化などによって操作部10の位置に対する出力電圧値の特性に変化があっても、信号を出力するタイミングとクリック感触が生ずるタイミングを同期させることができる。
【0048】
一方で、電気部品2からの出力電圧値の変化量の大きさに応じて所定の信号を出力する場合には、直近の状態に対する相対的な位置変化しか検出できないので、S5のステップで示したように、動作を開始した初期状態における操作部10の位置は、電気部品2からの出力電圧値そのものを用いて判別するようにしている。これによって、より確実に操作部10の位置を判別することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態では、操作部10の引き上げる方向と押し込む方向についてそれぞれ2段階のクリック位置が設定されているが、それぞれ1段階のクリック位置の設定であってもよい。
【0050】
また、出力電圧値の変化量を算出するために、直近に検出した出力電圧値との差分を求めるようにしているが、直近の2以上の複数の出力電圧値を第1メモリ5に記憶しておき、これら2以上の複数の出力電圧値の平均値と取得した出力電圧値との差分を求めるようにしてもよい。この場合には、ノイズによる影響を軽減できるという効果がある。また、本実施形態においては所定の時間間隔でデータを取得しデータだけを比較することで時間あたりの変化量を検出しているが、時間も測定して時間当たりの変化量を検出しても良いし、磁気抵抗素子の出力を微分回路に入力して変化量を求め、これが所定の閾置を越えたか判断する等その他、出力電圧値の変化量は様々な方法で算出することができる。
【0051】
また、本実施形態においては電気部品2として永久磁石と磁気抵抗素子を用いたが、抵抗体と摺動子を用いた可変抵抗器でも良い。また、本実施形態においてはスプリング15aと球体15b及び略V字形状の傾斜面を有するクリック用カム面17によって、クリック機構15を形成したが、板バネに突起を設け、これをクリック用のカム面に落ち込むようにしても良い。又、傾斜面はカム面に必ずしも形成する必要はなく、これに落ち込む凸側に設けても良い。すなわち凹凸係合してクリック感触を生じさせるクリック機構においてはどちらか一方に傾斜面が形成されていれば良い。また、磁石の吸引によってクリック感触を発生するものの場合は、その部分において急激に操作部材の速度が変わるので該形態にも適用できる。更には操作部材の移動方向の速度を急激に変えるものだけではなく、クリック位置において、永久磁石と磁気抵抗素子の距離が変わって出力が変わるものであっても適用できる。要はクリック機構によって出力値が急激に変わるものであれば適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態のスイッチ装置を含む車両内のシステムのブロック図である。
【図2】電気部品の分解斜視図である。
【図3】電気部品の内部構造を表した説明図である。
【図4】操作部を操作した際における操作時間と出力電圧値の関係を表した図である。
【図5】図4において出力電圧値を該出力電圧値の変化量とした図である。
【図6】検出手段におけるフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 スイッチ装置
2 電気部品
3 検出手段
4 A/D処理回路
5 第1メモリ
6 第2メモリ
10 操作部
11 磁気抵抗素子
12 ケース
13 永久磁石
14 プリント基板
15 クリック機構
15a スプリング
15b 球体
16 立壁
17 クリック用カム面
20 ウインドウ装置
21 ウインドウ
22 モータ
23 モータ駆動回路
30 車両制御部
31 通信路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部を備え該操作部の位置に応じた所定のアナログ信号を出力する電気部品と、該電気部品からの出力を基に操作部に対する操作を検出する検出手段とを有する電気部品において、
前記電気部品は前記操作部の操作に対し所定の位置でクリック感触を生じさせるクリック機構を備え、該クリック機構は前記操作部を前記所定位置において操作速度を変化させつつ遷移移動させ、
前記検出手段は前記電気部品からの出力変化量を検出し、該出力変化量の大きさにより前記操作部が前記クリック感触を生じさせる所定位置にあるとみなして所定の信号を出力することを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記検出手段は前記電気部品からの出力変化量が所定値以上の場合に、前記操作部が前記クリック感触を生じされる所定位置にあると見なして所定の信号を出力することを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記検出手段は動作を開始した初期状態における前記電気部品からの出力を検出し、該出力に応じた所定の信号を出力することを特徴とする請求項1または2記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−212023(P2009−212023A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55730(P2008−55730)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】