スイングドア自動開扉装置
【課題】従来のレーザセンサだけで障害物を検出していた発明では、表面に鏡面を有する障害物に対して、距離算出誤差が生じる可能性があった。これに対し本発明は、表面が鏡面である障害物に対しても、障害物までの距離検出精度の向上が可能なドア自動開扉装置を提供することを目的とする。
【解決手段】レーザとソナーの二つのセンサを組み合わせて用いて検出することで、高精度に、表面が鏡面となっている障害物にスイングドアが接触してしまうことを回避することができる。また、ソナーによる障害物検出結果を優先してスイングドアの開扉を決定することで、鏡面を有した障害物を障害物として検出した結果を必ず反映できるため、障害物への接触を避けることができる。
【解決手段】レーザとソナーの二つのセンサを組み合わせて用いて検出することで、高精度に、表面が鏡面となっている障害物にスイングドアが接触してしまうことを回避することができる。また、ソナーによる障害物検出結果を優先してスイングドアの開扉を決定することで、鏡面を有した障害物を障害物として検出した結果を必ず反映できるため、障害物への接触を避けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイングドアが障害物に接触しないように自動開扉する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているソナーによる障害物検出方法が知られている。特許文献1に開示の技術では、車両用ドアにソナーを設け、当該ソナーから発信される超音波により障害物の位置を検出している。そして、その結果に基づいてドアを開扉できる範囲を決定することで、障害物との干渉を防止するようにしている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているレーザによる障害物検出方法も知られている。特許文献2に開示の技術では、車両用ドアに設置されたレーザセンサによるレーザ光の送光・受光に基づいて、ドアの開扉方向に接触する可能性がある障害物があるか判定する。そして、この判定に基づいて当該ドアの開度を制限するドア開扉制御装置を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−336934号公報
【特許文献2】特開2010−228748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明を用いてドアの周囲の障害物を検出する場合、通常1つのソナーにて障害物を検知可能なエリアは必要な検出範囲に対して十分ではない。なぜならば、検知しなければならない範囲は、障害物がドアに干渉する可能性のある全部の範囲であるのに対して、1つのソナーの検知範囲は、ドアの大きさに比べて狭いからである。そうすると、特許文献1に記載の発明を用いてドア全体を障害物の干渉から避けるためには、1枚のドアのほぼ全面をカバーするために多数のソナーを設けることが必要になる。
【0006】
加えて、複数のソナーを設置したとしても、図1に示すように、隣接するソナー10の間隔が広い場合には、隣接するソナー10の間には、障害物を検出できない不感帯が生じてしまう。このような不感帯が生じてしまうと、この不感帯に障害物、特にポール等の細い物体が存在した場合には、障害物の存在を検出できずにドアが障害物に接触してしまうという問題もある。
【0007】
一方で、特許文献2に記載の装置は、1つのレーザセンサにより、車両ドアの全面に対して、車両ドアに接触する可能性がある障害物を検出することができる。加えて、レーザの入射角度が浅い場合、入射方向へのレーザの反射が少ない場合、レーザの反射率が低いような障害物である場合など、十分な反射レーザ光が受光できない場合でも、障害物への接触を回避できる。しかし、障害物の表面が鏡面となっている場合には、二次反射が生じるものの反射レーザ光の強度は比較的高い場合がある。二次反射した反射レーザ光に基づいて障害物までの距離を算出すると、二次反射に基づく誤差を含んでしまうという問題があった。
【0008】
この問題を図2を用いて具体的に説明する。メタリック塗装の車両など、検出すべき障害物の表面が鏡面であると、次のような問題が発生する。(問題点1)レーザセンサ9から照射され障害物にあたったレーザ光は、入射した方向へ反射せずに、入射角と等しい角度で入射方向とは別の方向に反射してしまう。さらに入射方向とは別の方向に反射したレーザ光が、地面などの二次反射物体に当たって二次反射を起こし、障害物で再度反射してレーザセンサで受光されることが考えられる。このように、一度のレーザ発光であってレーザ光が複数回反射してからレーザセンサに受光される場合、受光したレーザ光(すなわち反射光)に基づいて算出する距離は二次反射等により発生した誤差を含んでしまう。よって、算出された距離よりも近くに実際には障害物が存在する可能性がある。その結果、障害物の表面が鏡面である場合には、スイングドアが開扉される際に接触する可能性がある障害物であっても、接触する可能性のある障害物として検出されない可能性があった。(問題点2)問題点1では2次反射光がレーザセンサに反射してきた場合について説明したが、鏡面反射物体の種類によっては拡散反射成分が非常に弱い場合もある。そのような場合には非常に反射率の低い拡散性反射物体と同様に反射光がほとんど返ってこない場合もある。このような場合はレーザセンサのスキャン面内には障害物が存在しないと判定されてしまい、問題点1の場合と同様にドアが障害物に接触する可能性が生じる。この問題点2の場合には、前述の特許文献2の方法も考えられるが、特許文献2の方法では問題点1は解決できない。当然のことながら、問題点1、2を一度に解決できることが望まれる。
【0009】
本発明は、これらの点に鑑みてなされたものであり、センサ数を少なくすることができ、且つ、表面が鏡面である障害物であっても、スイングドアが開扉される際に障害物との接触を回避できるドア自動開扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両のスイングドアの回転軸の近傍において、当該ドアまたは当該ドアに装備されたドアミラーに設置され、前記ドアの表面に対し、前記ドアが開扉される方向にずれた平面を走査するようにレーザ光を送光するとともに、障害物によって反射された反射光を受光するレーザセンサと、前記ドアに設置され、前記ドアの開扉方向に音波を発信するとともに、障害物によって反射された音波を受信するソナーと、前記ソナーによる音波の受信結果に基づいて、前記ドアの開扉方向に前記ドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定するソナー判定部と、前記レーザセンサによるレーザ光の受光結果に基づいて、前記ドアの開扉方向に前記ドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定するレーザ判定部と、前記ソナー判定部によるソナー判定結果と前記レーザ判定部によるレーザ判定結果とに基づき、前記ドアの開度を制限する開度制限部とを備え、その開度制限部は、前記レーザ判定部による判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物は存在しないとの判定結果であっても、前記ソナー判定部の判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物が存在するとの判定結果であった場合には、前記ドアの開度を制限することを特徴とする。
【0011】
ソナーは音波を用いるため、レーザ光と異なり、鏡面であっても、鏡面ではない場合と同様に反射される。よって、ソナーでは、表面が鏡面の障害物であっても精度よく障害物を検出できる。そして、開度制限部における制御では、このソナーによる判定結果を優先させ、レーザ判定部による判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物は存在しないとの判定結果であっても、ソナー判定部の判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物が存在するとの判定結果であった場合には、ドアの開度を制限する。よって、表面が鏡面となっている障害物にスイングドアが接触してしまうことを回避することができる。また、表面が鏡面の物体までの距離算出精度は不十分である可能性があるものの、スイングドアが開扉される際のスイングドアの移動範囲のほぼ全部を検知範囲とするレーザセンサも用いてスイングドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定している。従って、ソナーは表面が鏡面である障害物を検出するために設置すればよく、表面が鏡面である障害物は、通常、メタリック塗装の他車両、店舗のガラス張りの外壁など、大きな物体である。従って、ソナーを多数備える必要はない。よって、センサ数を少なくすることができる。
【0012】
また、請求項2に記載したように、前記ソナーは、前記スイングドアにおいて、そのスイングドアの回転軸とは反対側の端部に設置され、前記スイングドアに設置されたドアミラーの車両外側端を通り車両側面に平行な鉛直平面と、前記スイングドアの前記回転軸とは反対側の端を通りスイングドアに直交する鉛直平面との交線上の点を検知範囲に含んでいることが好ましい。
【0013】
スイングドアが開扉する際に障害物に接触するのは、通常、スイングドアの回転軸とは反対側の端部である。請求項2の位置にソナーを備えれば、スイングドアが開扉される際に、スイングドアの回転軸とは反対側の端部の移動方向前方に存在する表面が鏡面である障害物を検出できるので、高精度に、表面が鏡面となっている障害物にスイングドアが接触してしまうことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術のソナーによる検出領域を示す図である。
【図2】従来技術のレーザによる反射の問題を示す図である。
【図3】実施形態のスイングドア自動開扉装置の全体構成を示すブロック図である。
【図4】レーザセンサ9における走査機構の一例を説明するための図である。
【図5】ソナー10の設置位置および検出領域10aを車両上方から示す図である。
【図6】ソナー10の設置位置および検出領域10aを車両側方から示す図である。
【図7】(A)は、ソナーの設置位置を示す図であり、(B)は、レーザセンサ9から出射されるレーザ光による走査面が、ドアが開扉されるときに、ドアと一定の角度を保って移動する様子を示した図である。
【図8】レーザセンサ9から出射されるレーザ光による走査角度範囲を説明するための図である。
【図9】障害物検出範囲データを用いて、障害物がドア30の可動範囲内に存在するか否かの判定例を説明するための説明図である。
【図10】スイングドア自動開扉制御処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図11】図10のメインルーチンにおけるレーザセンサ9による障害物検知処理の詳細を示すフローチャートである。
【図12】図10のメインルーチンにおけるソナー10による障害物検知処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図3は、本実施形態によるスイングドア自動開扉装置の全体構成を示すブロック図である。
【0016】
図3に示すように、スイングドア自動開閉装置は、主に、種々の制御処理を実行するECU1、各種のスイッチ6〜8やセンサ9〜11、及びスイングドア(以下、単にドアともいう)を開扉したり、閉扉したりするための開閉モータ12とラッチ解除モータ13から構成される。本実施形態では、ドアは、これら2種類のモータ12、13を用いて自動的に開閉され、また、これら2種類のモータ12、13はユーザのスイッチ操作により駆動される。
【0017】
なお、図3に示したのは、1枚のドアを自動開閉するための構成であり、本実施形態によるスイングドア自動開閉装置は、例えば運転席のドアのみなど、車両のいずれかのドアに対してのみ適用したり、運転席及び助手席のドアに対して適用したり、あるいは、車両の全部のスイングドアに対して適用したりすることが可能である。本実施形態によるスイングドア自動開閉装置を、複数枚のドアに対して適用する場合には、図3に示す構成が、複数枚のドア分だけ設けられる。
【0018】
図3における各種のスイッチ6〜8は車室内に設けられて、ユーザー(車両の乗員)によって操作されるもので、その内、開スイッチ6は、ドアを開扉させるために操作され、閉スイッチ7は、開扉されたドアを閉扉させるために操作され、停止スイッチ8は、開扉中或いは閉扉中のドアを停止させるために操作される。これらのスイッチ6〜8が操作されると、各々の操作信号がECU1に出力される。
【0019】
レーザセンサ9は、ドアを車両の車体側面に対して回転可能に支持する回転軸近傍においてそのドアとともに移動するように設けられるものであり、本実施形態では、図7(A)に示すように、ドアに取り付けられたドアミラー32の下部に設けられる。このレーザセンサ9は、レーザ光を発光する発光素子、発光素子が発光したレーザ光の照射方向を所定の平面内で変化させ、その平面をレーザ光により走査させる走査機構、障害物によって反射されたレーザ光を受光する受光素子、レーザ光の発光から受光までの経過時間から障害物までの距離を算出する制御回路などから構成される。レーザセンサ9は、障害物を検出すると、その障害物までの距離をECU1に出力する。
【0020】
レーザセンサ9における走査機構は、例えば図4に示されるように、レーザ光を反射させるミラー21、ミラー21を回転させるモータ20、レンズ24、及びレンズ25から構成される。ミラー21は、略柱状であって、その一端面に発光素子22が発生したレーザ光を反射する反射面が形成され、他端面に障害物によって反射されたレーザ光を受光素子23に向けて反射する反射面が形成されたものである。このミラー21を、モータ20によって両反射面を貫通する回転軸回りに回転させることにより、その回転軸を中心とする平面を走査するように、複数のレーザ光を出射することができる。なお、レンズ24は、レーザ光がビーム状または所定の広がり角となるように設計されたレンズである。レンズ25は受信光を集光するためのレンズである。レーザセンサ9の走査面及び走査範囲に関しては、後に詳細に説明する。
【0021】
なお、図4に示した走査機構は一例であって、その他の公知の構成を採用しても良い。例えば、ミラー及びそのミラーの駆動部を、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって半導体基板上に形成しても良い。また、ミラーとして、ポリゴンミラーを用いても良い。
【0022】
ソナー10は、図5のように、ドア30のドアミラー32とは反対側の端部(すなわち、このドア30の回転軸とは反対側の端部)に設置される。そして、このソナー10が障害物を検出する検出領域10aは、図5に示す交点40を含むようになっている。この交点40は、ドアミラー32の車両外側端を通り、車両側面を形成するドア30に平行な鉛直平面42と、ドア30の回転軸とは反対側の端を通りドア30に直交する鉛直平面44との交線上の点である。ドア30において一般的に障害物に一番接触しやすいのはドア30の回転軸とは反対側の端部(ドアの先端)である。よって、上記検出領域10aとすると、ドア30において最も障害物に接触しやすい部位に接触する障害物を検知することができる。なお、上記交点40を検出領域10aとできるような設置位置であって、さらに、ドアの先端にある取手付近にソナー10を設置することが意匠的に望ましい。
【0023】
さらに、上記検出領域10aとなるようにソナー10を設置する利点として、設置しなければならないソナー10の数を少なくできるという利点がある。表面に鏡面を有する障害物は、前述のように、たとえば、メタリック塗装の車体や店舗のガラス壁であり、これらは、比較的大きい障害物である。これらの障害物が、ドア30の開扉過程において、ドア30の先端に接触しないにもかかわらず、ドア30の先端以外の部分に接触することは考えにくい。したがって、表面が鏡面の障害物との接触を回避するためには、ドア30の先端が上記障害物と接触することを回避すれば十分であり、そのためには、図5のような検出領域10aを持つように、ソナー10を一つ設置すればよいことになる。
【0024】
なお、上記交点40は、ドア30の先端そのものではなく、ドア30の先端から、ドア30と鉛直平面42との間の隙間dだけ離隔した点である。この交点40を検出領域10aに含んでいても、ソナー10の検出領域10aは、隙間dに存在する障害物を検出できない可能性がある。つまり、隙間dはソナー10の不感帯となる可能性がある。しかし、表面が鏡面の障害物は、ドアよりも十分に大きいので、上記隙間dにこの障害物が存在するとは考えにくい。よって、隙間dがソナー10の不感帯となったとしても、表面が鏡面の障害物を検出することに関して影響しない。
【0025】
図6には、ソナー10の設置位置および検出領域10aを車両側方から示している。この図6においては、検出領域10aは楕円形状となっており、且つ、その長軸方向が水平方向になっている。なお、この図6の例には限定されず、検出領域10aの長軸方向が鉛直方向となるようにソナー10を設置してもよい。
【0026】
開度センサ11は、ドアの開度を検出し、検出した開度を示す開度検出信号を発生する。開度センサ11からの開度検出信号もECU1に入力される。
【0027】
ECU1は、上述したスイッチ6〜8の操作信号及び各センサ9〜11からの信号を受ける入力インターフェース(I/F)2、予め定められたプログラムに従って各種の演算処理を行なうCPU3、プログラムや後述する障害物検出範囲データを記憶する不揮発性メモリ4、及び開閉モータ12、ラッチ解除モータ13を駆動する駆動信号を出力するモータドライバ5などから構成されている。
【0028】
ここで、ドアを自動的に開閉する際の、開閉モータ12及びラッチ解除モータ13の動作について説明する。
【0029】
ラッチ解除モータ13は、ドアの内部に設置され、ドアを閉位置に保持する図示しないラッチ機構に作用して、当該ラッチ機構を解除するものである。これにより、ドアは開扉が可能な状態となる。
【0030】
開閉モータ12も、ドアの内部に設置され、図示しないドア開閉機構を駆動することによって、ドア11を設定開度(最大開度)まで開扉させたり、閉扉させたりするものである。ただし、そのドアの開扉中に、停止スイッチ8が操作されたり、ドアと接触する可能性がある障害物が検出されたときには、設定開度未満の開度であっても、開閉モータ12によるドアの開扉が停止される。この場合、ドアの開度は、開閉モータ12が停止した時点の開度に保持される。
【0031】
次に、レーザセンサ9から出射されるレーザ光による走査面及び走査角度範囲について、図7、図8に基づいて説明する。
【0032】
図7に示すように、ドアミラー32の下部に設けられたレーザセンサ9は、ドア30の表面に対し、ドア30が開扉される方向に所定角度φずれた平面(レーザセンサ9の走査面)を走査するようにレーザ光を出射する。
【0033】
このように、ドア30の表面に対して所定角度φずれた平面をレーザセンサ9の走査面とすることにより、図7に示すように、ドア30が開扉される間中、常に、ドアよりも所定角度φだけ先行した位置において、障害物を検出することができる。換言すれば、ドア30の表面に対して所定角度φずれた平面をレーザセンサ9の走査面とすることで、ドア30を開扉していく際に、ドア30と接触する可能性がある障害物を、ドア30に接触してしまう前に検出することが可能となる。しかも、図8を用いて次に説明するように、走査面内におけるレーザセンサ9の走査角度範囲はドア30の表面の範囲を完全に含んでいる。従って、ドア30を開扉していく際のドア30の可動範囲は、閉扉状態におけるドア30の極近傍を除き、全部、レーザセンサ9による障害物検出範囲に含まれる。
【0034】
図8は、前述の走査面内におけるレーザセンサ9による走査角度範囲を説明するための図である。図7(B)に示すように、レーザセンサ9の走査角度範囲は、レーザセンサ9の設置位置(ドアミラー32の下部)から閉扉状態において車両前方に向かう方向が開始位置(走査角度0°)に設定されている。これにより、ドア30において、レーザセンサ9の設置位置から車両前方の範囲に存在する部分に接触する可能性がある障害物も検出可能となる。
【0035】
レーザセンサ9からのレーザ光は、上述した開始位置から、図8に示す時計回りに所定のステップ角度θxで繰り返し出射される。そして、例えばレーザセンサ9から上空に向かってほぼ真上に伸びる角度(図8の例では、走査角度約260°)が終了位置として設定される。これにより、レーザ光の出射の開始位置から終了位置までの範囲すなわちレーザセンサ9の走査角度範囲は、図8に示す角度範囲となる。
【0036】
従って、上述した走査面及び走査角度範囲を、レーザ光で走査することにより、単一のレーザセンサ9にて、ドア30のほぼ全面に対して、ドア30と接触する可能性がある障害物を検出することが可能となる。
【0037】
ここで、レーザセンサ9が、図8に示す走査角度範囲をレーザ光で走査したとき、レーザ光はドア30以外の車体部分、地面、或いはドア30と接触する可能性が無い障害物によって反射され、その反射光がレーザセンサ9によって受光される場合がある。これらの障害物はドア30の可動範囲外に存在するので、これらの障害物が検出されても、ドア30の開度を制限する必要はない。
【0038】
この点に関して、本実施形態では、レーザセンサ9によって障害物が検出された場合、その障害物がドア30の可動範囲に存在するか、可動範囲外に存在するかを正確に判定するために、予め不揮発性メモリ4に障害物検出範囲データを記憶させている。この障害物検出範囲データとは、レーザセンサ9の設置位置からレーザ光の各々の走査角度θにおける、ドア30の端部までの距離データ(設定距離L)からなるものである。
【0039】
ECU1は、レーザセンサ9に対してレーザ光を出射する走査角度を指示する。レーザセンサ9がその指示された走査角度でレーザ光を出射したとき、障害物等からの反射光を受光すると、障害物までの距離Xを算出し、ECU1に出力する。ECU1は、レーザセンサ9が出射したレーザ光の走査角度θに基づき、記憶している障害物検出範囲データから、対応するドア30の端部までの設定距離Lを抽出する。そして、レーザセンサ9によって実際に検出された障害物までの距離Xと、抽出された設定距離Lとを比較する。この比較により、実際の距離Xが設定距離Lよりも短ければ、障害物はドア30の可動範囲内に存在し、ドア30と接触する可能性があると判断することができる。一方、実際の距離Xが設定距離Lよりも長ければ、障害物はドア30の可動範囲外に存在し、ドア30を開扉する際、なんら影響を及ぼすものではないと判断することができる。
【0040】
上述した障害物検出範囲データを用いて、障害物がドア30の可動範囲内に存在するか否か判定した一例が、図9に示されている。図9には、例えば走査角度θ1〜θ3において、障害物までの距離X1〜X3が算出され、その距離X1〜X3と、それぞれの走査角度θ1〜θ3に対して記憶されている設定距離L1〜L3とを比較した例を示している。この設定距離L1〜L3は、図8に示すように、レーザセンサ9の設置位置から、各々のレーザ光の走査角度θ1〜θ3におけるドア30の端部までの距離である。
【0041】
図9の例では、走査角度θ1、θ3において検出された障害物までの距離X1、X3は、設定距離L1,L3よりも長い。その結果、走査角度θ1、θ3においては、ドア30に接触する可能性がある障害物は存在しないと判定される。一方、走査角度θ2において検出された障害物までの距離X2は、設定距離L2よりも短い。このため、走査角度θ2において、ドア30に接触する可能性がある障害物が存在すると判定される。
【0042】
以上のように、レーザセンサ9により、ドア30に接触する可能性がある障害物を検出することに加えて、本実施形態のスイングドア自動開閉装置は、ソナー10によっても、ドア30に接触する可能性がある障害物を検出する。レーザセンサ9による障害物検出、および、ソナー10による障害物検出は、いずれも、スイングドア自動開扉制御処理中に行う。
【0043】
次に、本実施形態におけるスイングドア自動開扉制御処理について、図10及び図11、図12のフローチャートに従って説明する。図10のフローチャートは、スイングドア自動開扉制御処理のメインルーチンを示しており、図11はメインルーチンにおけるレーザセンサ9による障害物検知処理(S130)の詳細を、図12はメインルーチンにおけるソナー10による障害物検知処理の詳細を示している。また、これらはECU1において実行される。
【0044】
図10のフローチャートのステップS100では、車両のユーザによって開スイッチ6がオンされたか否かを判定する。開スイッチ6がオンされたと判定された場合には、ステップS110の処理に進み、図示しないが、車速を計測する車速センサからの車速信号が、車速=0を示しているか否かを判定する。つまり、ステップS110では、車両が停車している状態であるか否かを判定している。
【0045】
ステップS110において車速=0と判定された場合には、ステップS120に進み、モータドライバ5から開閉モータ12及びラッチ解除モータ13に駆動信号を出力して、ドアの開扉を開始させる。このステップS120の処理により、その後は、一定の速度でドア30が開扉されていくことになる。続くステップS130では、ソナー10とレーザセンサ9によってドア30と接触する可能性がある障害物を検知する。この障害物検知処理には、レーザセンサ9とソナー10それぞれによる障害物検知処理を含む。その詳細については、後に図11、図12の詳細で説明する。
【0046】
ステップS140では、ドア30の開度が、ドア30を自動開扉する際の設定(最大)開度になったか否かを、開度センサ11の開度検出信号に基づいて判定する。このステップS140の判定処理において、ドア30の開度が設定開度になったと判定されると、ステップS180の処理に進む。一方、ドア30の開度がまだ設定開度に達していないと判定されると、ステップS150の処理に進む。
【0047】
ステップS150では、ソナー10の検知結果に基づいて、ドア30に接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定する。このステップS150の判定処理において、障害物が存在すると判定されたときには、ステップS170へ進む。一方で、障害物が存在しないと判定された場合には、ステップS160へ進む。
【0048】
ステップS160では、レーザセンサ9の検知結果に基づいて、ステップS150と同様、ドア30に接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定する。このステップS160の判定処理において、障害物が存在すると判定されたときには、ステップS170へ進む。一方で、障害物が存在しないと判定された場合には、ステップS130へ戻る。
【0049】
このようなステップS130からステップS160までの処理を繰り返し実行することにより、ドア30が設定開度まで開扉されていく間中、ドア30に対する障害物の検知が継続して実行される。
【0050】
そして、ステップS150の判定処理で障害物が存在すると判定された場合には、直接、ステップS180を実行する。一方、ステップS160の判定処理で、障害物が存在すると判定された場合にはステップS170を実行する。この、ステップS170は、障害物を検出した後で実行するものであるが、当初は開閉モータ12の駆動を継続する。しかし、障害物を検知した時点のドア30の開度から、ドア30の表面とレーザ光による走査平面との距離に応じた角度だけドア30を開扉させた時点で、ドア30の開度を制限する。すなわち、所定角度φ未満に設定された一定角度だけドア30の開度を大きくしてからドア30の開扉動作を停止する。これにより、ドアが障害物に接触しない範囲で、極力、ドアを大きく開くことができるので、車両ユーザの利便性を向上できる。
【0051】
ただし、ドア30の開扉直後であって、実質的にドア30が閉じられているときに、障害物が検出されたときには、単にラッチ解除モータ13によってラッチ機構を解除するに留め(ドアは半ドア状態となる)、それ以上、ドア30の開度を増加させないことが好ましい。
【0052】
ドア30が実質的に閉じられているとき、すなわち、レーザセンサ9が障害物の検知を開始した直後に、障害物が検出された場合、ドア30とその障害物との正確な距離を求めることができないためである。ただし、ドアが全く開扉動作を行わないとドアの故障と間違われる虞があるため、ラッチ解除モータ13によってラッチ機構を解除することが好ましい。なお、ソナー判定結果が障害物ありであった場合にも、レーザ判定結果が障害物ありであった場合と同様に、障害物に接触しない範囲で、ドア開度を増加させてもよい。この場合には、ソナー10によって測定した障害物までの距離に基づいて、増加させるドア開度を決定することになる。
【0053】
ステップS180では、開閉モータ12の駆動を停止することにより、ドア30の開扉を停止させ、ドア30の開度を保持する。
【0054】
次に、図11のフローチャートに従い、レーザセンサ9による障害物検知処理について説明する。まず、ステップS200では、CPU3が不揮発性メモリ4からレーザによる障害物検出範囲データLnを読み込む。続くステップS210では、走査角度θnを走査角度範囲の開始位置に相当する値(0°)に設定する。ステップS220では、走査角度θnが、レーザ光の走査角度範囲の終了位置に相当する上限角度に達したか否かを判定する。このステップS220の判定処理において、上限角度に達したと判定された場合には、ステップS230において、走査角度θnを、レーザ光の走査角度範囲の開始位置に対応する値(0°)にリセットする。
【0055】
ステップS240では、レーザセンサ9に対して、設定された走査角度θnにおいてレーザ光を出射するように指示する。レーザセンサ9は、出射したレーザ光に対する反射光を受光した場合、レーザ光の受発光時間差に基づいて、障害物までの距離Xnを算出する。なお、レーザセンサ9は所定の規定時間内にレーザ光の反射光を受光しない場合、∞(無限大)に相当する距離Xnを出力する。
【0056】
ステップS250では、レーザセンサ9から入力された障害物までの距離Xnとレーザによる障害物検出範囲データLnとの大小関係を判定する。このステップS250の判定処理において、障害物までの距離Xnがレーザによる障害物検出範囲データLnよりも大きいと判定すると、障害物はドア30の可動範囲内に存在しないとみなせるので、ステップS260の処理に進む。
【0057】
ステップS260では、出射したレーザ光の走査角度θが、所定の判定角度エリア(例えば走査角度90°〜150°のエリア)に属し、かつレーザセンサ9から入力された距離Xnが∞(無限大)であるか否かを判定する。
【0058】
ステップS260において、Noと判定された場合には、ステップS270の処理に進み、走査角度θnを所定のステップ角θxだけ増加することにより、走査角度θnを更新する。そして、ステップS220の処理に戻り、更新された走査角度θn又はリセットされた走査角度θnでレーザセンサ9からレーザ光を出射させる。
【0059】
一方、ステップS260において、Yesと判定されると、ステップS280に進んで、ドア30に接触する可能性がある障害物が存在すると判定する。このステップS280における処理がなされると、図10のメインルーチンにおけるステップS160の判定処理において、障害物ありと判定されるようになる。
【0060】
なお、図11のフローチャートに示す障害物検知処理においては、ドア30が開扉されている間、障害物が検知されない限り、ステップS220からステップS270までの処理が繰り返し行なわれる。そして、その障害物検知処理の繰り返し処理と並列的に、メインルーチンのステップS120からS150までの処理も繰り返し実行される。
【0061】
次に、図12のフローチャートに従い、ソナー10による障害物検知処理について説明する。まず、ステップS300では、ソナー10に対して、音波を発信するように指示する。ソナー10は、発信したソナーに対する反射を検出した場合、ソナーの発信から受信までの時間差に基づいて、障害物までの距離Yを算出する。なお、ソナー10は所定の規定時間内にソナーの反射を検出しない場合、∞(無限大)に相当する距離Yを出力する。
【0062】
ステップS310では、ソナー10から入力された障害物までの距離Yと、障害物有りと判定する予め設定された判定距離Xとの大小関係を判定する。上記判定距離Xは、たとえば、ソナー10かドア30に垂直に、図5に破線で示すドア30の開扉範囲の外周面とソナー10との間の最短距離に設定される。このステップS310の判定処理において、Noつまり障害物までの距離Yが判定距離Xよりも大きいと判定すると、障害物はドア30の可動範囲内に存在しないとみなせるので、図12の処理を終了する(エンド)。
【0063】
一方、ステップS310において、Yesつまり障害物までの距離Yが判定距離Xと等しいかそれよりも小さいと判定されると、ステップS320に進んで、ドア30に接触する可能性がある障害物が存在すると判定する。このステップS320における処理がなされると、図10のメインルーチンにおけるステップS150の判定処理において、障害物ありと判定されるようになる。
【0064】
なお、図12のフローチャートに示すソナー10による障害物検知処理も、ドア30が開扉されている間、障害物が検知されない限り、繰り返し行なわれる。そして、ソナー10による障害物検知処理の繰り返し処理と並列的に(時分割に)、メインルーチンのステップS120からS160までの処理も繰り返し実行される。
【0065】
以上のように、レーザセンサ9とソナー10の二つのセンサを組み合わせて用いて検出することで、表面に鏡面を有する障害物も検出することができる。つまり、表面が鏡面であっても検出精度の低下がないソナー10による障害物検出結果を優先してスイングドア30の開扉を決定することで、レーザセンサ9ではその距離を正しく算出できない可能性がある鏡面を有した障害物にスイングドア30が接触してしまうことを避けることができる。
【0066】
また、本実施形態では、検出領域10aが図5に示す領域となるようにソナー10を設置しているので、ソナー10を一つのみとしつつ、表面が鏡面の障害物にスイングドア30が接触してしまうことをほとんど防止できる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0068】
例えば、本実施形態では、図10では、ソナー10の判定結果を参照した後にレーザセンサ9の判定結果を参照するフローとなっているが、最終的にソナー10とレーザセンサ9の両方の判定結果を参照し、且つ、両判定結果のうちソナー10による障害物判定結果を優先的に利用してドアの開度を制御するならば、特に参照する順番は必須ではない。
【0069】
その他、上述した実施形態では、走査角度範囲をレーザ光で走査させることにより、ドア30のほぼ全面に対して、接触する可能性がある障害物を検知できるようにした。しかし、通常、ドア30の上部にはウィンドウが設けられており、車両のユーザはウィンドウを介して車両の側方を容易に目視することができる。また、レーザセンサ9は、ドア30の回転軸近傍に設けられるため、そのレーザセンサ9の設置位置よりも車両前方に位置するドア部分は僅かであるとともに、ドアが開扉されるときの移動距離も小さい。
【0070】
このため、ドアのウィンドウが設けられた範囲や、レーザセンサ9の設置位置よりも車両前方のドア部分の範囲において、レーザセンサ9によって障害物を検知する必要性は相対的に低い。従って、図9に示す走査角度範囲、すなわち、レーザセンサ9の設置位置の真下方向を走査角度範囲の開始位置とし、ウィンドウよりも下方のドア部分の上端位置付近を走査角度範囲の終了位置としても良い。このようなレーザ光の走査角度範囲によっても、車両のユーザにとって死角となりやすい、ウィンドウ下方のドア部分に対する障害物は漏れなく検知することができる。さらに、このようにレーザ光の走査角度範囲を狭めることにより、消費電力を低減することができるとともに、障害物検出の応答性が向上し、障害物検出精度を高めることができる。
【0071】
また、レーザセンサ9からのレーザ光が、ドア30の表面に対し、ドア30が開扉される方向に所定角度φずれた平面を走査するものであった。しかしながら、ドアミラーにおけるレーザセンサ9の設置位置が、ドア表面に対して十分に離れている場合、レーザセンサ9からのレーザ光は、ドア30の表面と平行な平面を走査するようにして良い。すなわち、所定角度φは0°であっても良い。
【0072】
また、ソナーを複数設置すると、より広範囲において表面に鏡面を有する障害物を検出することができる。その場合は、少なくとも一つのソナーが上述した交点を検出するように設置することが好ましい。
【0073】
また、レーザセンサ9がドアミラーの下部に設けられたが、レーザセンサ9は、ドア本体に設けても良い。さらに、レーザセンサ9は、ドアミラーをドア30に固定する支持軸内に設置しても良い。これにより、レーザセンサ9をドアミラーの下部に設置する場合に比較して、意匠性を向上することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 ECU、 6 開スイッチ、 7 閉スイッチ、 8 停止スイッチ、 9 レーザセンサ、 10 ソナー、 10a ソナーの検出範囲、 11 開度センサ、 12 開閉モータ、 13 ラッチ解除モータ、 30 ドア、 32 ドアミラー、 40 交点、 42 鉛直平面、 44 鉛直平面
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイングドアが障害物に接触しないように自動開扉する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているソナーによる障害物検出方法が知られている。特許文献1に開示の技術では、車両用ドアにソナーを設け、当該ソナーから発信される超音波により障害物の位置を検出している。そして、その結果に基づいてドアを開扉できる範囲を決定することで、障害物との干渉を防止するようにしている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているレーザによる障害物検出方法も知られている。特許文献2に開示の技術では、車両用ドアに設置されたレーザセンサによるレーザ光の送光・受光に基づいて、ドアの開扉方向に接触する可能性がある障害物があるか判定する。そして、この判定に基づいて当該ドアの開度を制限するドア開扉制御装置を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−336934号公報
【特許文献2】特開2010−228748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明を用いてドアの周囲の障害物を検出する場合、通常1つのソナーにて障害物を検知可能なエリアは必要な検出範囲に対して十分ではない。なぜならば、検知しなければならない範囲は、障害物がドアに干渉する可能性のある全部の範囲であるのに対して、1つのソナーの検知範囲は、ドアの大きさに比べて狭いからである。そうすると、特許文献1に記載の発明を用いてドア全体を障害物の干渉から避けるためには、1枚のドアのほぼ全面をカバーするために多数のソナーを設けることが必要になる。
【0006】
加えて、複数のソナーを設置したとしても、図1に示すように、隣接するソナー10の間隔が広い場合には、隣接するソナー10の間には、障害物を検出できない不感帯が生じてしまう。このような不感帯が生じてしまうと、この不感帯に障害物、特にポール等の細い物体が存在した場合には、障害物の存在を検出できずにドアが障害物に接触してしまうという問題もある。
【0007】
一方で、特許文献2に記載の装置は、1つのレーザセンサにより、車両ドアの全面に対して、車両ドアに接触する可能性がある障害物を検出することができる。加えて、レーザの入射角度が浅い場合、入射方向へのレーザの反射が少ない場合、レーザの反射率が低いような障害物である場合など、十分な反射レーザ光が受光できない場合でも、障害物への接触を回避できる。しかし、障害物の表面が鏡面となっている場合には、二次反射が生じるものの反射レーザ光の強度は比較的高い場合がある。二次反射した反射レーザ光に基づいて障害物までの距離を算出すると、二次反射に基づく誤差を含んでしまうという問題があった。
【0008】
この問題を図2を用いて具体的に説明する。メタリック塗装の車両など、検出すべき障害物の表面が鏡面であると、次のような問題が発生する。(問題点1)レーザセンサ9から照射され障害物にあたったレーザ光は、入射した方向へ反射せずに、入射角と等しい角度で入射方向とは別の方向に反射してしまう。さらに入射方向とは別の方向に反射したレーザ光が、地面などの二次反射物体に当たって二次反射を起こし、障害物で再度反射してレーザセンサで受光されることが考えられる。このように、一度のレーザ発光であってレーザ光が複数回反射してからレーザセンサに受光される場合、受光したレーザ光(すなわち反射光)に基づいて算出する距離は二次反射等により発生した誤差を含んでしまう。よって、算出された距離よりも近くに実際には障害物が存在する可能性がある。その結果、障害物の表面が鏡面である場合には、スイングドアが開扉される際に接触する可能性がある障害物であっても、接触する可能性のある障害物として検出されない可能性があった。(問題点2)問題点1では2次反射光がレーザセンサに反射してきた場合について説明したが、鏡面反射物体の種類によっては拡散反射成分が非常に弱い場合もある。そのような場合には非常に反射率の低い拡散性反射物体と同様に反射光がほとんど返ってこない場合もある。このような場合はレーザセンサのスキャン面内には障害物が存在しないと判定されてしまい、問題点1の場合と同様にドアが障害物に接触する可能性が生じる。この問題点2の場合には、前述の特許文献2の方法も考えられるが、特許文献2の方法では問題点1は解決できない。当然のことながら、問題点1、2を一度に解決できることが望まれる。
【0009】
本発明は、これらの点に鑑みてなされたものであり、センサ数を少なくすることができ、且つ、表面が鏡面である障害物であっても、スイングドアが開扉される際に障害物との接触を回避できるドア自動開扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両のスイングドアの回転軸の近傍において、当該ドアまたは当該ドアに装備されたドアミラーに設置され、前記ドアの表面に対し、前記ドアが開扉される方向にずれた平面を走査するようにレーザ光を送光するとともに、障害物によって反射された反射光を受光するレーザセンサと、前記ドアに設置され、前記ドアの開扉方向に音波を発信するとともに、障害物によって反射された音波を受信するソナーと、前記ソナーによる音波の受信結果に基づいて、前記ドアの開扉方向に前記ドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定するソナー判定部と、前記レーザセンサによるレーザ光の受光結果に基づいて、前記ドアの開扉方向に前記ドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定するレーザ判定部と、前記ソナー判定部によるソナー判定結果と前記レーザ判定部によるレーザ判定結果とに基づき、前記ドアの開度を制限する開度制限部とを備え、その開度制限部は、前記レーザ判定部による判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物は存在しないとの判定結果であっても、前記ソナー判定部の判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物が存在するとの判定結果であった場合には、前記ドアの開度を制限することを特徴とする。
【0011】
ソナーは音波を用いるため、レーザ光と異なり、鏡面であっても、鏡面ではない場合と同様に反射される。よって、ソナーでは、表面が鏡面の障害物であっても精度よく障害物を検出できる。そして、開度制限部における制御では、このソナーによる判定結果を優先させ、レーザ判定部による判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物は存在しないとの判定結果であっても、ソナー判定部の判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物が存在するとの判定結果であった場合には、ドアの開度を制限する。よって、表面が鏡面となっている障害物にスイングドアが接触してしまうことを回避することができる。また、表面が鏡面の物体までの距離算出精度は不十分である可能性があるものの、スイングドアが開扉される際のスイングドアの移動範囲のほぼ全部を検知範囲とするレーザセンサも用いてスイングドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定している。従って、ソナーは表面が鏡面である障害物を検出するために設置すればよく、表面が鏡面である障害物は、通常、メタリック塗装の他車両、店舗のガラス張りの外壁など、大きな物体である。従って、ソナーを多数備える必要はない。よって、センサ数を少なくすることができる。
【0012】
また、請求項2に記載したように、前記ソナーは、前記スイングドアにおいて、そのスイングドアの回転軸とは反対側の端部に設置され、前記スイングドアに設置されたドアミラーの車両外側端を通り車両側面に平行な鉛直平面と、前記スイングドアの前記回転軸とは反対側の端を通りスイングドアに直交する鉛直平面との交線上の点を検知範囲に含んでいることが好ましい。
【0013】
スイングドアが開扉する際に障害物に接触するのは、通常、スイングドアの回転軸とは反対側の端部である。請求項2の位置にソナーを備えれば、スイングドアが開扉される際に、スイングドアの回転軸とは反対側の端部の移動方向前方に存在する表面が鏡面である障害物を検出できるので、高精度に、表面が鏡面となっている障害物にスイングドアが接触してしまうことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術のソナーによる検出領域を示す図である。
【図2】従来技術のレーザによる反射の問題を示す図である。
【図3】実施形態のスイングドア自動開扉装置の全体構成を示すブロック図である。
【図4】レーザセンサ9における走査機構の一例を説明するための図である。
【図5】ソナー10の設置位置および検出領域10aを車両上方から示す図である。
【図6】ソナー10の設置位置および検出領域10aを車両側方から示す図である。
【図7】(A)は、ソナーの設置位置を示す図であり、(B)は、レーザセンサ9から出射されるレーザ光による走査面が、ドアが開扉されるときに、ドアと一定の角度を保って移動する様子を示した図である。
【図8】レーザセンサ9から出射されるレーザ光による走査角度範囲を説明するための図である。
【図9】障害物検出範囲データを用いて、障害物がドア30の可動範囲内に存在するか否かの判定例を説明するための説明図である。
【図10】スイングドア自動開扉制御処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図11】図10のメインルーチンにおけるレーザセンサ9による障害物検知処理の詳細を示すフローチャートである。
【図12】図10のメインルーチンにおけるソナー10による障害物検知処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図3は、本実施形態によるスイングドア自動開扉装置の全体構成を示すブロック図である。
【0016】
図3に示すように、スイングドア自動開閉装置は、主に、種々の制御処理を実行するECU1、各種のスイッチ6〜8やセンサ9〜11、及びスイングドア(以下、単にドアともいう)を開扉したり、閉扉したりするための開閉モータ12とラッチ解除モータ13から構成される。本実施形態では、ドアは、これら2種類のモータ12、13を用いて自動的に開閉され、また、これら2種類のモータ12、13はユーザのスイッチ操作により駆動される。
【0017】
なお、図3に示したのは、1枚のドアを自動開閉するための構成であり、本実施形態によるスイングドア自動開閉装置は、例えば運転席のドアのみなど、車両のいずれかのドアに対してのみ適用したり、運転席及び助手席のドアに対して適用したり、あるいは、車両の全部のスイングドアに対して適用したりすることが可能である。本実施形態によるスイングドア自動開閉装置を、複数枚のドアに対して適用する場合には、図3に示す構成が、複数枚のドア分だけ設けられる。
【0018】
図3における各種のスイッチ6〜8は車室内に設けられて、ユーザー(車両の乗員)によって操作されるもので、その内、開スイッチ6は、ドアを開扉させるために操作され、閉スイッチ7は、開扉されたドアを閉扉させるために操作され、停止スイッチ8は、開扉中或いは閉扉中のドアを停止させるために操作される。これらのスイッチ6〜8が操作されると、各々の操作信号がECU1に出力される。
【0019】
レーザセンサ9は、ドアを車両の車体側面に対して回転可能に支持する回転軸近傍においてそのドアとともに移動するように設けられるものであり、本実施形態では、図7(A)に示すように、ドアに取り付けられたドアミラー32の下部に設けられる。このレーザセンサ9は、レーザ光を発光する発光素子、発光素子が発光したレーザ光の照射方向を所定の平面内で変化させ、その平面をレーザ光により走査させる走査機構、障害物によって反射されたレーザ光を受光する受光素子、レーザ光の発光から受光までの経過時間から障害物までの距離を算出する制御回路などから構成される。レーザセンサ9は、障害物を検出すると、その障害物までの距離をECU1に出力する。
【0020】
レーザセンサ9における走査機構は、例えば図4に示されるように、レーザ光を反射させるミラー21、ミラー21を回転させるモータ20、レンズ24、及びレンズ25から構成される。ミラー21は、略柱状であって、その一端面に発光素子22が発生したレーザ光を反射する反射面が形成され、他端面に障害物によって反射されたレーザ光を受光素子23に向けて反射する反射面が形成されたものである。このミラー21を、モータ20によって両反射面を貫通する回転軸回りに回転させることにより、その回転軸を中心とする平面を走査するように、複数のレーザ光を出射することができる。なお、レンズ24は、レーザ光がビーム状または所定の広がり角となるように設計されたレンズである。レンズ25は受信光を集光するためのレンズである。レーザセンサ9の走査面及び走査範囲に関しては、後に詳細に説明する。
【0021】
なお、図4に示した走査機構は一例であって、その他の公知の構成を採用しても良い。例えば、ミラー及びそのミラーの駆動部を、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって半導体基板上に形成しても良い。また、ミラーとして、ポリゴンミラーを用いても良い。
【0022】
ソナー10は、図5のように、ドア30のドアミラー32とは反対側の端部(すなわち、このドア30の回転軸とは反対側の端部)に設置される。そして、このソナー10が障害物を検出する検出領域10aは、図5に示す交点40を含むようになっている。この交点40は、ドアミラー32の車両外側端を通り、車両側面を形成するドア30に平行な鉛直平面42と、ドア30の回転軸とは反対側の端を通りドア30に直交する鉛直平面44との交線上の点である。ドア30において一般的に障害物に一番接触しやすいのはドア30の回転軸とは反対側の端部(ドアの先端)である。よって、上記検出領域10aとすると、ドア30において最も障害物に接触しやすい部位に接触する障害物を検知することができる。なお、上記交点40を検出領域10aとできるような設置位置であって、さらに、ドアの先端にある取手付近にソナー10を設置することが意匠的に望ましい。
【0023】
さらに、上記検出領域10aとなるようにソナー10を設置する利点として、設置しなければならないソナー10の数を少なくできるという利点がある。表面に鏡面を有する障害物は、前述のように、たとえば、メタリック塗装の車体や店舗のガラス壁であり、これらは、比較的大きい障害物である。これらの障害物が、ドア30の開扉過程において、ドア30の先端に接触しないにもかかわらず、ドア30の先端以外の部分に接触することは考えにくい。したがって、表面が鏡面の障害物との接触を回避するためには、ドア30の先端が上記障害物と接触することを回避すれば十分であり、そのためには、図5のような検出領域10aを持つように、ソナー10を一つ設置すればよいことになる。
【0024】
なお、上記交点40は、ドア30の先端そのものではなく、ドア30の先端から、ドア30と鉛直平面42との間の隙間dだけ離隔した点である。この交点40を検出領域10aに含んでいても、ソナー10の検出領域10aは、隙間dに存在する障害物を検出できない可能性がある。つまり、隙間dはソナー10の不感帯となる可能性がある。しかし、表面が鏡面の障害物は、ドアよりも十分に大きいので、上記隙間dにこの障害物が存在するとは考えにくい。よって、隙間dがソナー10の不感帯となったとしても、表面が鏡面の障害物を検出することに関して影響しない。
【0025】
図6には、ソナー10の設置位置および検出領域10aを車両側方から示している。この図6においては、検出領域10aは楕円形状となっており、且つ、その長軸方向が水平方向になっている。なお、この図6の例には限定されず、検出領域10aの長軸方向が鉛直方向となるようにソナー10を設置してもよい。
【0026】
開度センサ11は、ドアの開度を検出し、検出した開度を示す開度検出信号を発生する。開度センサ11からの開度検出信号もECU1に入力される。
【0027】
ECU1は、上述したスイッチ6〜8の操作信号及び各センサ9〜11からの信号を受ける入力インターフェース(I/F)2、予め定められたプログラムに従って各種の演算処理を行なうCPU3、プログラムや後述する障害物検出範囲データを記憶する不揮発性メモリ4、及び開閉モータ12、ラッチ解除モータ13を駆動する駆動信号を出力するモータドライバ5などから構成されている。
【0028】
ここで、ドアを自動的に開閉する際の、開閉モータ12及びラッチ解除モータ13の動作について説明する。
【0029】
ラッチ解除モータ13は、ドアの内部に設置され、ドアを閉位置に保持する図示しないラッチ機構に作用して、当該ラッチ機構を解除するものである。これにより、ドアは開扉が可能な状態となる。
【0030】
開閉モータ12も、ドアの内部に設置され、図示しないドア開閉機構を駆動することによって、ドア11を設定開度(最大開度)まで開扉させたり、閉扉させたりするものである。ただし、そのドアの開扉中に、停止スイッチ8が操作されたり、ドアと接触する可能性がある障害物が検出されたときには、設定開度未満の開度であっても、開閉モータ12によるドアの開扉が停止される。この場合、ドアの開度は、開閉モータ12が停止した時点の開度に保持される。
【0031】
次に、レーザセンサ9から出射されるレーザ光による走査面及び走査角度範囲について、図7、図8に基づいて説明する。
【0032】
図7に示すように、ドアミラー32の下部に設けられたレーザセンサ9は、ドア30の表面に対し、ドア30が開扉される方向に所定角度φずれた平面(レーザセンサ9の走査面)を走査するようにレーザ光を出射する。
【0033】
このように、ドア30の表面に対して所定角度φずれた平面をレーザセンサ9の走査面とすることにより、図7に示すように、ドア30が開扉される間中、常に、ドアよりも所定角度φだけ先行した位置において、障害物を検出することができる。換言すれば、ドア30の表面に対して所定角度φずれた平面をレーザセンサ9の走査面とすることで、ドア30を開扉していく際に、ドア30と接触する可能性がある障害物を、ドア30に接触してしまう前に検出することが可能となる。しかも、図8を用いて次に説明するように、走査面内におけるレーザセンサ9の走査角度範囲はドア30の表面の範囲を完全に含んでいる。従って、ドア30を開扉していく際のドア30の可動範囲は、閉扉状態におけるドア30の極近傍を除き、全部、レーザセンサ9による障害物検出範囲に含まれる。
【0034】
図8は、前述の走査面内におけるレーザセンサ9による走査角度範囲を説明するための図である。図7(B)に示すように、レーザセンサ9の走査角度範囲は、レーザセンサ9の設置位置(ドアミラー32の下部)から閉扉状態において車両前方に向かう方向が開始位置(走査角度0°)に設定されている。これにより、ドア30において、レーザセンサ9の設置位置から車両前方の範囲に存在する部分に接触する可能性がある障害物も検出可能となる。
【0035】
レーザセンサ9からのレーザ光は、上述した開始位置から、図8に示す時計回りに所定のステップ角度θxで繰り返し出射される。そして、例えばレーザセンサ9から上空に向かってほぼ真上に伸びる角度(図8の例では、走査角度約260°)が終了位置として設定される。これにより、レーザ光の出射の開始位置から終了位置までの範囲すなわちレーザセンサ9の走査角度範囲は、図8に示す角度範囲となる。
【0036】
従って、上述した走査面及び走査角度範囲を、レーザ光で走査することにより、単一のレーザセンサ9にて、ドア30のほぼ全面に対して、ドア30と接触する可能性がある障害物を検出することが可能となる。
【0037】
ここで、レーザセンサ9が、図8に示す走査角度範囲をレーザ光で走査したとき、レーザ光はドア30以外の車体部分、地面、或いはドア30と接触する可能性が無い障害物によって反射され、その反射光がレーザセンサ9によって受光される場合がある。これらの障害物はドア30の可動範囲外に存在するので、これらの障害物が検出されても、ドア30の開度を制限する必要はない。
【0038】
この点に関して、本実施形態では、レーザセンサ9によって障害物が検出された場合、その障害物がドア30の可動範囲に存在するか、可動範囲外に存在するかを正確に判定するために、予め不揮発性メモリ4に障害物検出範囲データを記憶させている。この障害物検出範囲データとは、レーザセンサ9の設置位置からレーザ光の各々の走査角度θにおける、ドア30の端部までの距離データ(設定距離L)からなるものである。
【0039】
ECU1は、レーザセンサ9に対してレーザ光を出射する走査角度を指示する。レーザセンサ9がその指示された走査角度でレーザ光を出射したとき、障害物等からの反射光を受光すると、障害物までの距離Xを算出し、ECU1に出力する。ECU1は、レーザセンサ9が出射したレーザ光の走査角度θに基づき、記憶している障害物検出範囲データから、対応するドア30の端部までの設定距離Lを抽出する。そして、レーザセンサ9によって実際に検出された障害物までの距離Xと、抽出された設定距離Lとを比較する。この比較により、実際の距離Xが設定距離Lよりも短ければ、障害物はドア30の可動範囲内に存在し、ドア30と接触する可能性があると判断することができる。一方、実際の距離Xが設定距離Lよりも長ければ、障害物はドア30の可動範囲外に存在し、ドア30を開扉する際、なんら影響を及ぼすものではないと判断することができる。
【0040】
上述した障害物検出範囲データを用いて、障害物がドア30の可動範囲内に存在するか否か判定した一例が、図9に示されている。図9には、例えば走査角度θ1〜θ3において、障害物までの距離X1〜X3が算出され、その距離X1〜X3と、それぞれの走査角度θ1〜θ3に対して記憶されている設定距離L1〜L3とを比較した例を示している。この設定距離L1〜L3は、図8に示すように、レーザセンサ9の設置位置から、各々のレーザ光の走査角度θ1〜θ3におけるドア30の端部までの距離である。
【0041】
図9の例では、走査角度θ1、θ3において検出された障害物までの距離X1、X3は、設定距離L1,L3よりも長い。その結果、走査角度θ1、θ3においては、ドア30に接触する可能性がある障害物は存在しないと判定される。一方、走査角度θ2において検出された障害物までの距離X2は、設定距離L2よりも短い。このため、走査角度θ2において、ドア30に接触する可能性がある障害物が存在すると判定される。
【0042】
以上のように、レーザセンサ9により、ドア30に接触する可能性がある障害物を検出することに加えて、本実施形態のスイングドア自動開閉装置は、ソナー10によっても、ドア30に接触する可能性がある障害物を検出する。レーザセンサ9による障害物検出、および、ソナー10による障害物検出は、いずれも、スイングドア自動開扉制御処理中に行う。
【0043】
次に、本実施形態におけるスイングドア自動開扉制御処理について、図10及び図11、図12のフローチャートに従って説明する。図10のフローチャートは、スイングドア自動開扉制御処理のメインルーチンを示しており、図11はメインルーチンにおけるレーザセンサ9による障害物検知処理(S130)の詳細を、図12はメインルーチンにおけるソナー10による障害物検知処理の詳細を示している。また、これらはECU1において実行される。
【0044】
図10のフローチャートのステップS100では、車両のユーザによって開スイッチ6がオンされたか否かを判定する。開スイッチ6がオンされたと判定された場合には、ステップS110の処理に進み、図示しないが、車速を計測する車速センサからの車速信号が、車速=0を示しているか否かを判定する。つまり、ステップS110では、車両が停車している状態であるか否かを判定している。
【0045】
ステップS110において車速=0と判定された場合には、ステップS120に進み、モータドライバ5から開閉モータ12及びラッチ解除モータ13に駆動信号を出力して、ドアの開扉を開始させる。このステップS120の処理により、その後は、一定の速度でドア30が開扉されていくことになる。続くステップS130では、ソナー10とレーザセンサ9によってドア30と接触する可能性がある障害物を検知する。この障害物検知処理には、レーザセンサ9とソナー10それぞれによる障害物検知処理を含む。その詳細については、後に図11、図12の詳細で説明する。
【0046】
ステップS140では、ドア30の開度が、ドア30を自動開扉する際の設定(最大)開度になったか否かを、開度センサ11の開度検出信号に基づいて判定する。このステップS140の判定処理において、ドア30の開度が設定開度になったと判定されると、ステップS180の処理に進む。一方、ドア30の開度がまだ設定開度に達していないと判定されると、ステップS150の処理に進む。
【0047】
ステップS150では、ソナー10の検知結果に基づいて、ドア30に接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定する。このステップS150の判定処理において、障害物が存在すると判定されたときには、ステップS170へ進む。一方で、障害物が存在しないと判定された場合には、ステップS160へ進む。
【0048】
ステップS160では、レーザセンサ9の検知結果に基づいて、ステップS150と同様、ドア30に接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定する。このステップS160の判定処理において、障害物が存在すると判定されたときには、ステップS170へ進む。一方で、障害物が存在しないと判定された場合には、ステップS130へ戻る。
【0049】
このようなステップS130からステップS160までの処理を繰り返し実行することにより、ドア30が設定開度まで開扉されていく間中、ドア30に対する障害物の検知が継続して実行される。
【0050】
そして、ステップS150の判定処理で障害物が存在すると判定された場合には、直接、ステップS180を実行する。一方、ステップS160の判定処理で、障害物が存在すると判定された場合にはステップS170を実行する。この、ステップS170は、障害物を検出した後で実行するものであるが、当初は開閉モータ12の駆動を継続する。しかし、障害物を検知した時点のドア30の開度から、ドア30の表面とレーザ光による走査平面との距離に応じた角度だけドア30を開扉させた時点で、ドア30の開度を制限する。すなわち、所定角度φ未満に設定された一定角度だけドア30の開度を大きくしてからドア30の開扉動作を停止する。これにより、ドアが障害物に接触しない範囲で、極力、ドアを大きく開くことができるので、車両ユーザの利便性を向上できる。
【0051】
ただし、ドア30の開扉直後であって、実質的にドア30が閉じられているときに、障害物が検出されたときには、単にラッチ解除モータ13によってラッチ機構を解除するに留め(ドアは半ドア状態となる)、それ以上、ドア30の開度を増加させないことが好ましい。
【0052】
ドア30が実質的に閉じられているとき、すなわち、レーザセンサ9が障害物の検知を開始した直後に、障害物が検出された場合、ドア30とその障害物との正確な距離を求めることができないためである。ただし、ドアが全く開扉動作を行わないとドアの故障と間違われる虞があるため、ラッチ解除モータ13によってラッチ機構を解除することが好ましい。なお、ソナー判定結果が障害物ありであった場合にも、レーザ判定結果が障害物ありであった場合と同様に、障害物に接触しない範囲で、ドア開度を増加させてもよい。この場合には、ソナー10によって測定した障害物までの距離に基づいて、増加させるドア開度を決定することになる。
【0053】
ステップS180では、開閉モータ12の駆動を停止することにより、ドア30の開扉を停止させ、ドア30の開度を保持する。
【0054】
次に、図11のフローチャートに従い、レーザセンサ9による障害物検知処理について説明する。まず、ステップS200では、CPU3が不揮発性メモリ4からレーザによる障害物検出範囲データLnを読み込む。続くステップS210では、走査角度θnを走査角度範囲の開始位置に相当する値(0°)に設定する。ステップS220では、走査角度θnが、レーザ光の走査角度範囲の終了位置に相当する上限角度に達したか否かを判定する。このステップS220の判定処理において、上限角度に達したと判定された場合には、ステップS230において、走査角度θnを、レーザ光の走査角度範囲の開始位置に対応する値(0°)にリセットする。
【0055】
ステップS240では、レーザセンサ9に対して、設定された走査角度θnにおいてレーザ光を出射するように指示する。レーザセンサ9は、出射したレーザ光に対する反射光を受光した場合、レーザ光の受発光時間差に基づいて、障害物までの距離Xnを算出する。なお、レーザセンサ9は所定の規定時間内にレーザ光の反射光を受光しない場合、∞(無限大)に相当する距離Xnを出力する。
【0056】
ステップS250では、レーザセンサ9から入力された障害物までの距離Xnとレーザによる障害物検出範囲データLnとの大小関係を判定する。このステップS250の判定処理において、障害物までの距離Xnがレーザによる障害物検出範囲データLnよりも大きいと判定すると、障害物はドア30の可動範囲内に存在しないとみなせるので、ステップS260の処理に進む。
【0057】
ステップS260では、出射したレーザ光の走査角度θが、所定の判定角度エリア(例えば走査角度90°〜150°のエリア)に属し、かつレーザセンサ9から入力された距離Xnが∞(無限大)であるか否かを判定する。
【0058】
ステップS260において、Noと判定された場合には、ステップS270の処理に進み、走査角度θnを所定のステップ角θxだけ増加することにより、走査角度θnを更新する。そして、ステップS220の処理に戻り、更新された走査角度θn又はリセットされた走査角度θnでレーザセンサ9からレーザ光を出射させる。
【0059】
一方、ステップS260において、Yesと判定されると、ステップS280に進んで、ドア30に接触する可能性がある障害物が存在すると判定する。このステップS280における処理がなされると、図10のメインルーチンにおけるステップS160の判定処理において、障害物ありと判定されるようになる。
【0060】
なお、図11のフローチャートに示す障害物検知処理においては、ドア30が開扉されている間、障害物が検知されない限り、ステップS220からステップS270までの処理が繰り返し行なわれる。そして、その障害物検知処理の繰り返し処理と並列的に、メインルーチンのステップS120からS150までの処理も繰り返し実行される。
【0061】
次に、図12のフローチャートに従い、ソナー10による障害物検知処理について説明する。まず、ステップS300では、ソナー10に対して、音波を発信するように指示する。ソナー10は、発信したソナーに対する反射を検出した場合、ソナーの発信から受信までの時間差に基づいて、障害物までの距離Yを算出する。なお、ソナー10は所定の規定時間内にソナーの反射を検出しない場合、∞(無限大)に相当する距離Yを出力する。
【0062】
ステップS310では、ソナー10から入力された障害物までの距離Yと、障害物有りと判定する予め設定された判定距離Xとの大小関係を判定する。上記判定距離Xは、たとえば、ソナー10かドア30に垂直に、図5に破線で示すドア30の開扉範囲の外周面とソナー10との間の最短距離に設定される。このステップS310の判定処理において、Noつまり障害物までの距離Yが判定距離Xよりも大きいと判定すると、障害物はドア30の可動範囲内に存在しないとみなせるので、図12の処理を終了する(エンド)。
【0063】
一方、ステップS310において、Yesつまり障害物までの距離Yが判定距離Xと等しいかそれよりも小さいと判定されると、ステップS320に進んで、ドア30に接触する可能性がある障害物が存在すると判定する。このステップS320における処理がなされると、図10のメインルーチンにおけるステップS150の判定処理において、障害物ありと判定されるようになる。
【0064】
なお、図12のフローチャートに示すソナー10による障害物検知処理も、ドア30が開扉されている間、障害物が検知されない限り、繰り返し行なわれる。そして、ソナー10による障害物検知処理の繰り返し処理と並列的に(時分割に)、メインルーチンのステップS120からS160までの処理も繰り返し実行される。
【0065】
以上のように、レーザセンサ9とソナー10の二つのセンサを組み合わせて用いて検出することで、表面に鏡面を有する障害物も検出することができる。つまり、表面が鏡面であっても検出精度の低下がないソナー10による障害物検出結果を優先してスイングドア30の開扉を決定することで、レーザセンサ9ではその距離を正しく算出できない可能性がある鏡面を有した障害物にスイングドア30が接触してしまうことを避けることができる。
【0066】
また、本実施形態では、検出領域10aが図5に示す領域となるようにソナー10を設置しているので、ソナー10を一つのみとしつつ、表面が鏡面の障害物にスイングドア30が接触してしまうことをほとんど防止できる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0068】
例えば、本実施形態では、図10では、ソナー10の判定結果を参照した後にレーザセンサ9の判定結果を参照するフローとなっているが、最終的にソナー10とレーザセンサ9の両方の判定結果を参照し、且つ、両判定結果のうちソナー10による障害物判定結果を優先的に利用してドアの開度を制御するならば、特に参照する順番は必須ではない。
【0069】
その他、上述した実施形態では、走査角度範囲をレーザ光で走査させることにより、ドア30のほぼ全面に対して、接触する可能性がある障害物を検知できるようにした。しかし、通常、ドア30の上部にはウィンドウが設けられており、車両のユーザはウィンドウを介して車両の側方を容易に目視することができる。また、レーザセンサ9は、ドア30の回転軸近傍に設けられるため、そのレーザセンサ9の設置位置よりも車両前方に位置するドア部分は僅かであるとともに、ドアが開扉されるときの移動距離も小さい。
【0070】
このため、ドアのウィンドウが設けられた範囲や、レーザセンサ9の設置位置よりも車両前方のドア部分の範囲において、レーザセンサ9によって障害物を検知する必要性は相対的に低い。従って、図9に示す走査角度範囲、すなわち、レーザセンサ9の設置位置の真下方向を走査角度範囲の開始位置とし、ウィンドウよりも下方のドア部分の上端位置付近を走査角度範囲の終了位置としても良い。このようなレーザ光の走査角度範囲によっても、車両のユーザにとって死角となりやすい、ウィンドウ下方のドア部分に対する障害物は漏れなく検知することができる。さらに、このようにレーザ光の走査角度範囲を狭めることにより、消費電力を低減することができるとともに、障害物検出の応答性が向上し、障害物検出精度を高めることができる。
【0071】
また、レーザセンサ9からのレーザ光が、ドア30の表面に対し、ドア30が開扉される方向に所定角度φずれた平面を走査するものであった。しかしながら、ドアミラーにおけるレーザセンサ9の設置位置が、ドア表面に対して十分に離れている場合、レーザセンサ9からのレーザ光は、ドア30の表面と平行な平面を走査するようにして良い。すなわち、所定角度φは0°であっても良い。
【0072】
また、ソナーを複数設置すると、より広範囲において表面に鏡面を有する障害物を検出することができる。その場合は、少なくとも一つのソナーが上述した交点を検出するように設置することが好ましい。
【0073】
また、レーザセンサ9がドアミラーの下部に設けられたが、レーザセンサ9は、ドア本体に設けても良い。さらに、レーザセンサ9は、ドアミラーをドア30に固定する支持軸内に設置しても良い。これにより、レーザセンサ9をドアミラーの下部に設置する場合に比較して、意匠性を向上することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 ECU、 6 開スイッチ、 7 閉スイッチ、 8 停止スイッチ、 9 レーザセンサ、 10 ソナー、 10a ソナーの検出範囲、 11 開度センサ、 12 開閉モータ、 13 ラッチ解除モータ、 30 ドア、 32 ドアミラー、 40 交点、 42 鉛直平面、 44 鉛直平面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスイングドアの回転軸の近傍において、当該ドアまたは当該ドアに装備されたドアミラーに設置され、前記ドアの表面に対し、前記ドアが開扉される方向にずれた平面を走査するようにレーザ光を送光するとともに、障害物によって反射された反射光を受光するレーザセンサと、
前記ドアに設置され、前記ドアの開扉方向に音波を発信するとともに、障害物によって反射された音波を受信するソナーと、
前記ソナーによる音波の受信結果に基づいて、前記ドアの開扉方向に前記ドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定するソナー判定部と、
前記レーザセンサによるレーザ光の受光結果に基づいて、前記ドアの開扉方向に前記ドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定するレーザ判定部と、
前記ソナー判定部によるソナー判定結果と前記レーザ判定部によるレーザ判定結果とに基づき、前記ドアの開度を制限する開度制限部とを備え、
その開度制限部は、前記レーザ判定部による判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物は存在しないとの判定結果であっても、前記ソナー判定部の判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物が存在するとの判定結果であった場合には、前記ドアの開度を制限することを特徴とするドア自動開扉装置。
【請求項2】
前記ソナーは、
前記スイングドアにおいて、そのスイングドアの回転軸とは反対側の端部に設置され、
前記スイングドアに設置されたドアミラーの車両外側端を通り車両側面に平行な鉛直平面と、前記スイングドアの前記回転軸とは反対側の端を通りスイングドアに直交する鉛直平面との交線上の点を検知範囲に含んでいることを特徴とする請求項1記載のドア自動開扉装置。
【請求項1】
車両のスイングドアの回転軸の近傍において、当該ドアまたは当該ドアに装備されたドアミラーに設置され、前記ドアの表面に対し、前記ドアが開扉される方向にずれた平面を走査するようにレーザ光を送光するとともに、障害物によって反射された反射光を受光するレーザセンサと、
前記ドアに設置され、前記ドアの開扉方向に音波を発信するとともに、障害物によって反射された音波を受信するソナーと、
前記ソナーによる音波の受信結果に基づいて、前記ドアの開扉方向に前記ドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定するソナー判定部と、
前記レーザセンサによるレーザ光の受光結果に基づいて、前記ドアの開扉方向に前記ドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定するレーザ判定部と、
前記ソナー判定部によるソナー判定結果と前記レーザ判定部によるレーザ判定結果とに基づき、前記ドアの開度を制限する開度制限部とを備え、
その開度制限部は、前記レーザ判定部による判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物は存在しないとの判定結果であっても、前記ソナー判定部の判定結果が、ドアに接触する可能性がある障害物が存在するとの判定結果であった場合には、前記ドアの開度を制限することを特徴とするドア自動開扉装置。
【請求項2】
前記ソナーは、
前記スイングドアにおいて、そのスイングドアの回転軸とは反対側の端部に設置され、
前記スイングドアに設置されたドアミラーの車両外側端を通り車両側面に平行な鉛直平面と、前記スイングドアの前記回転軸とは反対側の端を通りスイングドアに直交する鉛直平面との交線上の点を検知範囲に含んでいることを特徴とする請求項1記載のドア自動開扉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−10384(P2013−10384A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143170(P2011−143170)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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