説明

スイング吸着によってガスの混合物から標的ガスを除去するための方法

本発明は、圧力スイング吸着プロセスおよび熱スイング吸着プロセスに工学的に構造化された吸着剤接触器を使用して、ガスの混合物から標的ガスを分離することに関する。好ましくは、接触器が工学的かつ実質的に平行なフローチャネルを含み、接触器の空洞細孔容積(フローチャネル分を除く)の20容量パーセント以下がメソ孔およびマクロ孔の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイング吸着プロセスユニットを用いてガスの混合物から標的ガスを分離することに関する。スイング吸着プロセスユニットの接触器は、複数のフローチャネルを有する工学的に構造化された吸着剤接触器であり、接触器の空洞細孔容積(フローチャネル分を除く)の20容量パーセント以下がメソ孔およびマクロ孔の範囲である。
【背景技術】
【0002】
ガスの分離は多くの業界で重要であり、一般に、混合ガス成分のうち相対的に吸着されにくいほうではなく、吸着されやすいほうの成分を優先的に吸着する吸着剤の表面に、ガスの混合物を流すことにより実現可能である。更に重要なガス分離法のひとつに、圧力スイング吸着(PSA)がある。PSAプロセスは、加圧下にある気体がミクロ多孔性吸着剤材料の細孔構造またはポリマー材料の自由体積に吸着されやすいことを利用したものである。圧力が高くなればなるほど、多くの気体が吸着される。圧力が低下すると、気体は放出即ち脱着される。気体が違えば吸着剤のミクロ孔または自由体積を満たす度合いも異なるため、混合状態のガスをPSAプロセスで分離できるのである。メタンよりも窒素で満たされやすいポリマー吸着剤またはミクロ多孔性吸着剤を充填した容器に、加圧下にて天然ガスなどの混合ガスを通すと、一部またはすべての窒素が収着媒床に残り、容器から出るガスのメタン濃度が高くなる。床が一杯まで窒素を吸着したら、圧力を下げて吸着された窒素を放出し、床を再生すればよい。こうして、次のサイクルで使える状態になる。
【0003】
もうひとつの重要なガス分離法に温度スイング吸着(TSA)がある。TSAプロセスも、加圧下にある気体がミクロ多孔性吸着剤材料の細孔構造またはポリマー材料の自由体積に吸着されやすいことを利用したものである。吸着剤の温度を上げると、気体は放出即ち脱着される。混合ガス中の1種または複数の成分を選択的に取り出す吸着剤と併用すれば、吸着剤床の温度を周期的に変動させることによって、TSAプロセスで混合状態にあるガスを分離することができる。
【0004】
PSA系用の吸着剤は通常、表面積が大きいという理由で選択される極めて多孔性の高い材料である。代表的な吸着剤としては、活性炭、シリカゲル、アルミナ、ゼオライトがあげられる。場合によっては、ポリマー材料を吸着剤材料として用いることも可能である。ミクロ多孔性材料の内面に吸着されるガスは、厚さが一分子分だけまたは最大で数分子分の層からなる場合もあるが、1グラムあたり数百平方メートルの表面積で吸着剤の重量のかなりの部分でガスを吸着できる。
【0005】
分子が違えば、吸着剤の細孔構造または空洞体積への吸着親和性も違う可能性がある。そのことから、異なる気体を吸着剤で選別するためのひとつの仕組みが得られる。ゼオライトや炭素モレキュラーシーブと呼ばれるいくつかのタイプの活性炭は、種類の異なる気体に親和性を持つことはもとより、自らのモレキュラーシーブ特性を活かして、いくつかの気体分子が自らの構造内に拡散しないようにする、或いはその拡散を遅らせることができる。これが、分子の大きさを基準にした選択的吸着の仕組みであり、通常は大きめの分子のほうが吸着されにくくなる。どちらの仕組みを使っても、吸着剤のミクロ孔構造を多成分混合ガスの1つまたは複数の種で選択的に満たすことができる。吸着剤のミクロ孔または空洞体積を選択的に満たす分子種を通常は「重質」成分と呼び、吸着剤のミクロ孔または空洞体積を選択的に満たさない分子種を通常は「軽質」成分と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,430,418号明細書
【特許文献2】米国特許第3,738,087号明細書
【特許文献3】米国特許第4,801,308号明細書
【特許文献4】米国特許第4,816,121号明細書
【特許文献5】米国特許第4,968,329号明細書
【特許文献6】米国特許第5,082,473号明細書
【特許文献7】米国特許第5,256,172号明細書
【特許文献8】米国特許第6,051,050号明細書
【特許文献9】米国特許第6,056,80号明細書
【特許文献10】米国特許第6,063,161号明細書
【特許文献11】米国特許第6,406,523号明細書
【特許文献12】米国特許第6,629,525号明細書
【特許文献13】米国特許第6,651,658号明細書
【特許文献14】米国特許第6,691,702号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第20060169142 Al号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第20060048648 Al号明細書
【特許文献17】国際公開第2006074343 A2号パンフレット
【特許文献18】国際公開第2006017940 Al号パンフレット
【特許文献19】国際公開第2005070518 Al号パンフレット
【特許文献20】国際公開第2005032694 Al号パンフレット
【特許文献21】米国特許出願公開第20040197596 A1号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第20050129952A1号明細書
【特許文献23】米国特許第6,436,171号明細書
【特許文献24】米国特許第6,284,021号明細書
【特許文献25】欧州特許出願公開第1413348 A1号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2006/0169142号明細書
【特許文献27】米国特許第6,607,584号明細書
【特許文献28】米国特許第7,049,259号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第20060169142 A1号明細書
【特許文献30】米国特許第7094275 B2号明細書
【特許文献31】カナダ特許出願2,306,311号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Reyesら著、「Frequency Modulation Methods for Diffusion and Adsorption Measurements in Porous Solids」、J.Phys.Chem.B.101、614〜622ページ、1997
【非特許文献2】J.Crank著、「The Mathematics of Diffusion」、第2版、Oxford University Press,Great Britain,1975
【非特許文献3】D.M.Ruthven著、「Principles of Adsorption and Adsorption Processes」、John Wiley,NY(1984)
【非特許文献4】J.KaergerおよびD.M.Ruthven著、「Diffusion in Zeolites and Other Microporous Solids」、John Wiley,NY(1992)
【非特許文献5】D.M.Ruthven & C.Thaeron,Performance of a Parallel Passage Absorbent Contactor,Separation and Purification Technology 12(1997)43〜60
【非特許文献6】Perry’s Chemical Engineers’ Handbook(第7版、コピーライトは1997年、McGraw−Hill、R.H.PerryおよびD.W.Green編)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多床式の系でのPSAプロセスについての初期の教示内容が、少なくとも4つの床を有する系について説明した特許文献1に記載されている。この特許文献1は、各床に、(1)床の製品(product)端からの製品排水の放出を伴う高めの圧力での吸着と、(2)その製品端からの空隙ガスを伴う中間圧力への並流減圧と、(3)低めの圧力への向流減圧と、(4)パージと、(5)再加圧と、を含む循環式PSA処理シーケンスについて説明したものである。並流減圧ステップで放出される空隙ガスは一般に、圧力を平衡させる目的で、低めの脱着圧でパージガスを床に提供するのに用いられる。また、3つの収着媒床を用いる従来のもうひとつのPSAプロセスが、特許文献2に開示されている。従来のPSAプロセスは一般に、主成分のうちの1つ(即ち軽質成分または重質成分)だけしか高純度で回収できず、完全な分離を行うことも、両方の成分を高回収量で分離することもできない。軽質成分は通常、回収係数が小さい。原料ガスを高めの圧力(即ち、500psigを超える圧力)で導入する場合に、通常は軽質成分の回収量が更に少なくなる。
【0009】
吸着量の多い「重質」精製成分の回収には、通常は別のステップ即ち、重質成分で床をすすいで、減圧前に床から軽質成分を取り除くステップが必要である。このすすぎのステップは従来技術において周知である。これらのプロセスに関連する問題として、以下の事項があげられる。(a)すすぎが完全で、軽質成分が床から完全に取り除かれていれば実質的に純粋な重質成分を得ることができるが、重質成分の吸着フロントが軽質成分に現れてしまい、後者を高純度で回収することができない。(b)軽質成分の置換が不完全だと、床での重質成分の典型的な濃度プロファイルが最適ではなくなり、そのため供給端で重質主成分を回収するために床を向流的に減圧すると、床に残ったままの軽質成分が極めて高速に供給端に到達してしまい、重質成分の純度が落ちる。従って、単一のPSAユニットで両方の主成分を高純度で得ることは、従来技術においては実用的ではない。
【0010】
時間ごとに供給される一定のガス流を処理するのに用いるのであれば、床で1サイクルを終えるまでのステップを高速に実施すればするほど、床を小さくすることが可能である。他にも、PSAプロセスでサイクルタイムを短くするための方法がいくつか考えられている。これらの方法では、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14に記載されているような回転弁技術を利用している。構造化吸着剤を有する平行チャネル(または平行通路)接触器を用いて、これらの高速サイクル圧力スイング吸着プロセスにおいて効率的な物質移動ができるようにする。構造化吸着剤を用いて平行通路接触器を構成する方法は、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20に開示されている。
【0011】
平行チャネル接触器では、ダクトまたは管を介した空洞状の経路または平行板間の空間で形成可能なフローチャネルの壁を、吸着剤で覆ってある。平行板を使って平行チャネルを形成する場合、平行チャネル内の空間にスペーサを設けてもよい。スペーサのない平行通路接触器の一例が特許文献21に記載されており、並びに、高密度吸着剤構造を有する平行通路接触器の一例が特許文献22に記載されている。いずれの場合も、平行チャネルを覆う吸着剤にメソ孔とマクロ孔が含まれる。
【0012】
メソ孔およびマクロ孔は、平行チャネル接触器または従来の充填床式接触器のいずれかで用いられる吸着剤の物質移動特性を改善するものとして、従来技術において周知である。従来の充填床式接触器でメソ孔やマクロ孔を存在させて物質移動特性を改善することが、過去に広く論じられている。たとえば、特許文献23および特許文献24を参照のこと。また、平行チャネル接触器でメソ孔やマクロ孔を存在させて物質移動特性を改善することについては、特許文献25に記載されている。その際、従来技術では、圧力スイング吸着サイクルを実施できるほど物質移動特性を良好なものとするには、吸着剤粒子または吸着剤の層に多数のメソ孔およびマクロ孔が必要であると教示されている。本発明者らは、選択的分離の場である吸着剤でミクロ孔構造を簡単に利用し、多量のメソ孔および/またはマクロ孔を使用せずに適切な物質移動特性を実現できることを、想定外に見いだした。
【0013】
従来技術には、新たな吸着剤材料、新たな平行チャネル接触器および改良された平行チャネル接触器、更には高速サイクルの改良されたPSA設備に関してさまざまな教示内容があるが、今日までのところそのいずれも、軽質成分の回収量をよくするという課題と、原料ガスが極めて高圧である場合の純度の問題に対する実現可能な解決策となっていない。天然ガスは高圧(500〜7000psi)で生産され、吸着プロセスではメタンが軽質成分として作用するため、これは重大な問題である。また、多くのガス田には、ガスを市場まで輸送する前にさまざまな度合いで除去すべき相当な濃度のHO、HS、CO、N、メルカプタンおよび/または重質炭化水素が含まれている。酸性ガスであるHSおよびCOについては、可能なかぎり天然ガスから除去することが好ましい。いずれの天然ガス分離でもメタンは貴重な成分であり、スイング吸着プロセスでは軽質成分として作用する。この軽質成分の回収量がわずかに増えるだけでも、プロセス経済の有意な改善につながる場合があり、望ましくない形で資源が失われるのを防ぐ役目も果たす。有害な不純物を除去する際に、メタンを80vol.%より多く、好ましくは90vol.%より多く回収できると望ましい。CO、HS、Nを天然ガスから除去するためのさまざまなプロセスが存在するが、この回収を、現在よりも低コストかつ高い炭化水素収率で、特に高いメタン収率で一層効率よく実施するプロセスおよび材料には、依然として需要がある。
【0014】
同様に、他の気体状原料ストリームについても、従来技術では、重質成分を豊富に含む「除外」ストリームで重質成分を多量に回収するための方法がいくつか説明されているが、軽質成分を豊富に含む生成物ストリームでの軽質成分での回収ほどの量は実現できない。この回収量は、原料の圧力が高くなればなるほど大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態では、標的ガス成分と第2のガス成分を含む混合ガスから前記標的ガス成分を除去するための方法であって、
a)前記混合ガスをスイング吸着ガス分離ユニットに送入し、ガス分離ユニットが、ガス流入口とガス流出口とを含む少なくとも1つの吸着剤接触器を含み、ガス流入口とガス流出口とが、空洞状の複数のフローチャネルによって流体連通状態にあり、空洞状のフローチャネルの表面が、前記第2のガス成分に対する前記標的ガス成分の選択性が5を超える吸着剤材料で構成され、接触器の空洞細孔容積の約20%未満が、直径約20オングストロームより大きく約1ミクロン未満の細孔であり、前記標的ガス成分の少なくとも一部が前記吸着剤材料に吸着されることで、前記標的ガス成分が減少した製品ストリームが得られ、
b)前記製品ストリームを回収し、
c)吸着されたガスを前記吸着剤材料から脱着させることで、前記標的ガス成分を豊富に含む廃ガスストリームを生成し、
d)前記廃ガスストリームを回収することを含む、方法が得られる。
【0016】
好ましい実施形態では、吸着剤材料が、ゼオライト、チタノシリケート、フェロシリケート、スタノシリケート、アルミノホスフェートモレキュラーシーブ(AlPO)、シリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブ(SAPO)および炭素モレキュラーシーブからなる群から選択される構造化吸着剤材料を含むものである。
【0017】
もうひとつの好ましい実施形態では、吸着剤材料が、Si対Al比約1:1から約1000:1の8員環ゼオライトを含むものである。更に好ましい実施形態では、8員環ゼオライトがDDRである。更に別の好ましい実施形態では、8員環ゼオライトがシグマ−1およびZSM−58から選択される。
【0018】
好ましい実施形態では、吸着剤接触器が、実質的に平行なフローチャネルが吸着剤構造に取り込まれた構造化(工学的)吸着剤を含む平行チャネル接触器である。
【0019】
もうひとつの実施形態では、平行接触器の空洞状のフローチャネルのチャネル幅が約5から約1000ミクロンである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のミクロ多孔性吸着剤から直接形成され、複数の平行チャネルを有する、本発明によるモノリス形の平行チャネル接触器の一実施形態を示す図である。
【図2】図1のモノリスの長手方向の軸に沿って切った横断面図である。
【図3】いくつかのメソ孔およびマクロ孔を埋めている間隙封止用物質とともに、吸着剤層の詳細な構造を示す、図2のモノリスの横断面図を拡大した図である。
【図4】吸着剤層がチャネル壁にコーティングされた被覆モノリスの形である、本発明の平行チャネル接触器の実施形態を示すもうひとつの図である。
【図5】空洞状のメソ孔およびミクロ孔の体積分率が約7%未満である、本発明の接触器の吸着剤層として作用するのに適したDDR膜の表面の電子顕微鏡写真である。
【図6】空洞状のメソ孔およびミクロ孔の体積分率が約7%未満である、本発明の接触器の吸着剤層として作用するのにも適したMFI膜の表面の電子顕微鏡写真である。
【図7】平行チャネル接触器がTSA用途向けの被覆モノリスの形であり、あらかじめ形成したモノリスのチャネル壁に吸着剤層がコーティングされた本発明の別の実施形態を示す。
【図8】中空糸アレイの形をした本発明による平行チャネル接触器を示す図である。
【図9】本発明によるものではあるが、TSA用途向けの中空糸接触器の形をした別の平行チャネル接触器を示す図である。
【図10】図9に示すようなものであるが、接触器の筐体の外面を透明にしたTSA向けの別の中空糸接触器を示す図である。点線は外面の縁を示すものである。
【図11】平行接触器がラミネートタイプのものである本発明の一実施形態を示す図である。
【図12】約20vol.%のCOと約80vol.%のCHとを含むストリームを処理するための好ましい5つのPSA/RCPSAプロセスの概略図である。
【図13】約2vol.%のNと約98vol.%のCHとを含むストリームを処理するための好ましい5つのPSA/RCPSAプロセスの概略図である。
【図14】本発明のPSAプロセスおよびターボエキスパンダーを利用している組込プロセスの概略図である。
【図15】本発明による吸着剤接触器のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を測定するための好ましい手法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、スイング吸着プロセスで使用するための吸着剤接触器に関するものである。この吸着剤接触器は、複数のフローチャネルを含み、自己の空洞細孔容積の20vol.%以下、好ましくは15vol.%以下、更に好ましくは10vol.%以下、最も好ましくは5vol.%以下が、メソ孔およびマクロ孔の大きさの範囲にある細孔である。「吸着剤接触器」という用語は、本明細書で使用する場合、構造化吸着剤接触器と非構造化吸着剤接触器の両方を含む。本発明の好ましい接触器は、熱スイング吸着(TSA)や、従来の圧力スイング吸着(PSA)および分圧スイングまたは置換パージ吸着(PPSA)技術をはじめとするさまざまなタイプの圧力スイング吸着プロセスに使用される、本明細書で「平行チャネル接触器」と呼ぶ一種の構造化吸着剤接触器である。これらのスイング吸着プロセスは高速サイクルで実施可能であり、その場合、高速サイクル熱スイング吸着(RCTSA)、高速サイクル圧力スイング吸着(RCPSA)、高速サイクル分圧スイングまたは置換パージ吸着(RCPPSA)技術と呼ばれる。スイング吸着プロセスという用語は、上記のプロセスの組み合わせを含めて、これらのプロセス(即ち、TSA、PSA、PPSA、RCTSA、RCPSA、RCPPSA)すべてを含むものと考えるべきものである。このようなプロセスでは、混合ガスと固体の吸着剤材料とを効率よく接触させる必要がある。また、本明細書に特に明記するか、或いは特定の「幾何学的形状」に言及している(これは構造化吸着剤接触器についてのみ適用される)場合、接触器の空隙率、分離成分および効率、動作条件、好ましい材料などであるがこれに限定されるものではない、本出願に記載の好ましい実施形態はすべて、本明細書に記載したような本発明の構造化吸着剤接触器と非構造化吸着剤接触器の両方に適用される点に注意されたい。
【0022】
吸着剤または他の活性材料が保持される固定面をはじめとして、平行チャネル接触器の構造は、吸着剤ビーズの入った容器または押出された吸着剤粒子など、従来からある既存のガス分離方法に比して大きな利点を提供するものである。「平行チャネル接触器」は、本明細書では、実質的に平行なフローチャネルを吸着剤構造に取り入れた、構造化(工学的)吸着剤を含む吸着剤接触器のサブセットとして定義される。これらのフローチャネルは、さまざまな手段で形成できるものであり、そのうちの多くを本明細書で説明している。また、吸着剤構造は、吸着剤材料だけでなく、本明細書にてなお一層詳細に説明する支持体材料、ヒートシンク材料、空隙低減成分などであるがこれに限定されるものではない要素を含むものであってもよい。
【0023】
スイング吸着プロセスはいずれも当業者間で周知であり、さまざまな標的ガスを多岐にわたる混合ガスから除去する目的で利用可能なものである。本発明を用いることで、混合ガスの軽質成分の回収率が大幅に高められる。本明細書で使用する場合、「軽質成分」とは、プロセスの吸着ステップで吸着剤によって優先的に取り出されない種または分子成分または成分を示す。逆に、本明細書で使用する場合、「重質成分」とは、プロセスの吸着ステップで吸着剤によって優先的に取り出される種または分子成分または成分である。本発明の接触器を使用したところ、スイング吸着プロセスでの軽質成分の総回収量が、プロセスに導入される軽質成分の含有量の約80vol.%を超え、一層好ましくは約85vol.%を超え、更に好ましくは約90vol.%を超え、最も好ましくは約95vol.%を超える場合があることが、想定外に見いだされた。軽質成分の回収量は、生成物ストリームにおける軽質成分の時平均モル流量を、原料ストリーム中の軽質成分の時平均モル流量で割った値で定義される。同様に、重質成分の回収量は、生成物ストリーム中の重質成分の時平均モル流量を、原料ストリーム中の重質成分の時平均モル流量で割った値で定義される。
【0024】
本発明の構造化吸着剤接触器は、空洞状のメソ孔およびマクロ孔を極めて低い体積分率で含有する。即ち、本発明の構造化床型吸着剤接触器は、自己の細孔容積の約20vol.%未満、好ましくは約15vol.%未満、一層好ましくは約10vol.%未満、最も好ましくは約5vol.%未満が、メソ孔およびマクロ孔の大きさの範囲にある空洞細孔である。メソ孔とは、IUPACの定義に基づけば、大きさが20〜500オングストロームの範囲の細孔である。マクロ孔については、本明細書において、大きさが500オングストロームを超え、なおかつ1ミクロン未満の細孔であると定義する。フローチャネルは大きさが1ミクロンよりも大きいため、マクロ孔の体積の一部であるとはみなされない。本発明者らのいう空洞細孔とは、間隙封止用物質が詰まっておらず、本質的に非選択的に、混合ガスの成分で埋めることが可能なメソ孔やマクロ孔の意味である。後述するような異なる試験方法を使用して、接触器の構造に応じて接触器での空洞細孔の体積分率を測定する。
【0025】
本明細書では、直径20オングストロームから10,000オングストローム(1ミクロン)の吸着剤の細孔容積を、吸着剤構造に関連するメソ孔およびマクロ孔を含む吸着剤材料で占められる接触器の総体積で割ったものとして、空洞細孔容積(単位はパーセントまたは容量パーセント)を定義する。工学用フローチャネルなどの「掃引体積」並びに、支持体材料、間隙封止用物質、サーマルマスなどを含むがこれに限定されるものではない非吸着剤材料で占められる体積は、吸着剤材料で占められる体積の量には含まれない。
【0026】
接触器の空洞状のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を判断するための好ましい試験を以下のように定義するが、この試験では、接触器に吸着される凝縮可能な蒸気の等温線を解析する。試験温度で蒸気圧が0.1トールよりも高い液体は、凝縮可能な蒸気を生成するのに使用可能な好適な材料である。20℃で、水、ヘキサン、トリメチルベンゼン(trimehtlybenzene)、トルエン、キシレン、イソオクタンは、凝縮可能な蒸気として使用可能な程度に蒸気圧が十分に高い。等温線の吸着枝(凝縮可能な蒸気の圧力を高めることで得られる)では、空のミクロ孔、メソ孔並びに、空のマクロ孔体積の大半が、毛管凝縮によって液体で満たされる。脱着枝では、液体で満たされたミクロ孔、メソ孔、マクロ孔の細孔が空になる。等温線の吸着枝と脱着枝との間にはヒステリシスがあることが周知である。吸着等温線の詳細な解析には、当業者間で周知のケルビン式をいくらか利用している。詳細な解析によって、構造化吸着剤におけるメソ孔およびマクロ孔の体積分率の値が得られる。以下の段落で述べる好ましい測定手法は、これらの原理に由来するものである。
【0027】
液体状の間隙封止用物質を接触器に使用しないのであれば、この段落で概説する手法を用いて、該当する接触器の空洞状のメソ孔およびマクロ孔の体積を測定する。この測定を接触器全体または接触器の代表的な部分について実施する。接触器の代表的な部分は、少なくとも接触器の断面全体を含み、質量が接触器質量の10%から100%である。更に、この測定で用いる接触器の質量については、50グラムよりも重くしておくべきである。好ましい手順を本明細書の図15に示す。図中、この手順の最初のステップでは、接触器1101または接触器の代表的な部分を、密閉可能な真空気密コンテナ1103内に配置し、コンテナを脱気する。チャンバ1103は、接触器1101の外面によって規定される体積が、チャンバの内容積の少なくとも50%であるように設計されている。真空気密コンテナには、圧力トランスデューサ1173と、トランスデューサに電力を供給し、生成された信号を送信するためのケーブル1171とが設けられている。この場合、0.01トールの精度で圧力を測定できるようにトランスデューサを選択する。このような測定に適したトランスデューサのひとつに、キャパシタンスマノメータがある。
【0028】
真空気密容器1103と、既知の量の凝縮可能な蒸気を容器に充填し、また容器を脱気するのに用いられるすべての設備を、等温室1191に配置する。等温室1191は30.00(±0.01)℃の温度に維持されている。ヘキサンを接触器に送入するのに用いられる各ステップの前後で、真空気密コンテナ1103と、容器1125および1141が、一定温度になるようにするために、0.01℃の分解能で測定できる熱電対1195、1197および1199を用いて、それぞれの温度をモニタリングする。熱電対での測定値の精度は通常0.2℃であるため、熱電対の測定値がわずかに異なることもある。重要なのは、各ヘキサン送入ステップの前と後で、熱電対1195、1197、1199の測定値が±0.01℃以内で一定に保たれることである。開始時には、系のすべての弁(1113、1127、1149、1151、1153、1165)が閉じている。弁を開く際にガスまたは配管が加熱されないように、これらの弁は(ソレノイドで動作するのではなく)空気で動作するものであると好ましい。測定開始前に、ヘキサン蒸気(30℃で凝縮可能な蒸気の一例として選択)を容器1103に充填するのに用いる設備に漏洩がないか検査しておく必要がある。これは、弁1127、1151、1153を開いて、真空ポンプ結合されたライン1119で容器1125および1141を脱気することで実現される。
【0029】
トランスデューサに電力を供給し、生成された信号を送信するためのケーブル1161を有するトランスデューサ1163と、トランスデューサに電力を供給し、生成された信号を送信するためのケーブル1145を有するトランスデューサ1143とを用いて、これらの容器の圧力を測定する。この場合、0.01トールの精度で圧力を測定できるようにトランスデューサを選択する。好適なトランスデューサはキャパシタンスマノメータである。トランスデューサ1163および1143の測定圧力が0.03トール未満になるように、容器1125および1141を脱気する。次に弁1127を閉じるが、トランスデューサ1163および1143で記録される圧力が3時間にわたって0.02トール分より上昇しなければ、この系を密閉状態であるとみなす。この時点で弁1153と1151を閉じ、弁1149を開けば、脱気された容器1141にライン1147経由でヘキサンが充填される。もともとライン1147は液体ヘキサンで充填されていた。リザーバ1141の充填を止めるには、弁1149を閉じる。
【0030】
次に、ヘキサン充填ステップで容器1141に混入することのある不純物ガスを除去するための手順を開始する。この場合、弁1127を開き、続いて弁1151を2分間開いて容器1141の減圧でヘキサンを沸騰させて、ガスを除去する。この脱気手順を5回繰り返すと、容器1141内のヘキサンを使用できるようになる。その時点で、弁1153が閉じた状態、弁1127は開いた状態なので、ライン1129が脱気される。続いて、弁1153を開いて容器1125を真空にする。次に、弁1113を開いて、チャンバ1103内で接触器または接触器1101の代表的な部品に吸着された分子を除去する。これによって、真空ポンプに結合されたライン1115でチャンバ1103を脱気できる。容器1103内の圧力が0.03トール未満になるまで脱気手順を継続する。この時点で、弁1113を閉じ、チャンバ内の圧力を1時間監視する。この時間内に、チャンバ内の圧力が0.02トール分より上昇した場合、脱気手順を繰り返す。脱気手順を11回以上繰り返さなければならない場合、接触器1101から分子を除去する別の手段を用いなければならない(接触器を加熱するなど)。吸着された分子を接触器から除去することに成功したら、弁1127および1153を閉じる。
【0031】
次に、弁1151を開いてライン1129がヘキサン蒸気で充填されるようにする。試験条件下で、これは187トール前後のヘキサン蒸気である。続いて弁1151を閉じ、弁1153を開いて、ライン内の蒸気が膨脹して容器1125に入るようにする。ライン1129と容器1125では体積が違うため、トランスデューサ1163で測定される圧力は5トール未満になる。次に、弁1153を閉じ、容器1125の圧力が5トール前後になるまで上記の充填手順を繰り返す。その時点で、弁1165を開いて接触器1101にヘキサン蒸気を送り込む。ガスが膨脹してチャンバ1103に入り、ヘキサン分子が接触器のミクロ孔に吸着されるため、容器1125の圧力が低下する。容器1125の圧力の低下が止まって安定した後、圧力を記録し、チャンバ1103に送入されたヘキサンのモル数を理想気体の法則で計算する。それには、容器1125とこれに関連する配管の内容積についての情報(事前に測定)が必要である。
【0032】
トランスデューサ1173で測定した圧力を用いて、容器1103に送入された(その内部の気体空間を充填するのに必要であろう)気体のモル数を、理想気体の法則で計算する。繰り返すが、計算にはチャンバ1103内の利用可能な気体空間についての情報が必要である。チャンバ1103の内容積は既知(事前に測定)であるから、容器1103の内容積から接触器の外容積を引き、これに接触器内のフローチャネルの体積を足して、利用可能な気体の体積を計算する。接触器の外容積またはフローチャネルの体積に関する情報の誤差は、空洞状のメソ孔およびマクロ孔の総体積の測定にそれほど大きく影響しない。接触器の外容積とフローチャネルの体積との差である量については、20%の精度で分かっていさえすればよい。
【0033】
よって、接触器で吸着された気体のモル数は、移動した気体のモル数と、容器1103の利用可能な気体空間および関連の配管を充填するのに必要な気体のモル数との差である。この送入ステップと、接触器1101に吸着された気体のモル数の評価が終わったら、弁1165を閉じ、容器1125にヘキサン蒸気を充填するのに最初に用いた手順を繰り返して、容器1125の圧力を更に5トール上昇させる。その後、更に多くの分子を接触器に吸着させるための送入ステップを繰り返す。送入ステップ終了時の容器1125の圧力が、圧力トランスデューサ1143の測定値の15%の±2.5トール以内になるまで、充填ステップと送入ステップを繰り返す。この範囲は、25.5から30.5トールの間であると想定される。この時点以降、この手順では接触器に吸着された別のモル数分のヘキサンがメソ孔およびマクロ孔を充填するとみなす。接触器を収容したチャンバ1103内の圧力が、トランスデューサ1143で測定した圧力の95%を超えるまで、充填ステップと送入ステップを継続する。
【0034】
充填ステップと送入ステップは、各充填ステップで容器1125の圧力が1トール分だけ上昇するように継続される。送入ステップ終了時にトランスデューサ1173で測定される圧力が、トランスデューサ1143で測定される圧力の98.5%を超えたら、充填ステップでの容器1125での昇圧を0.5トールまで落とす。送入ステップ終了時にトランスデューサ1173で測定される圧力が、トランスデューサ1143で測定される圧力の99.25%を超えたら、充填ステップでの容器1125での昇圧を0.05トールまで落とす。その後、送入ステップ終了時にトランスデューサ1173で測定される圧力が、トランスデューサ1143で測定される圧力の99.6%を超えるまで、充填ステップと送入ステップを継続する。実験終了時の圧力は186.4トール前後になると想定される。送入ステップ終了時にトランスデューサ1161が圧力トランスデューサ1143の測定値の15%の±2.5トール以内の範囲になった時点から送入ステップ終了時にトランスデューサ1173で測定される圧力がトランスデューサ1143で測定される圧力の99.6%を超えた時点で接触器によって吸着される総モル数は、接触器のメソ孔体積とマクロ孔体積に吸着されるヘキサンの総モル数である。よって、このモル数とヘキサンのモル体積とを掛ければ、接触器内における空洞状のメソ孔およびマクロ孔の体積が求められる。更に、この試験で得られた空洞状のメソ孔およびマクロ孔の体積を、上記にて定義したような吸着剤材料で占められる接触器の総体積で割れば、本明細書で使用する場合の体積分率で表される空洞細孔容積が得られる。接触器の空洞細孔容積は上述した試験手順で判断されるが、走査型電子顕微鏡法を用いて試料のメソ孔およびマクロ孔の相対体積を更に確認してもよい。走査型電子顕微鏡法を用いる場合、接触器の表面並びに断面を画像化する必要がある。
【0035】
接触器を構築するにあたって液体材料を間隙封止用物質として使用し、細孔が実質的に完全に液体で満たされた状態になる条件下で接触器を動作させる場合、接触器の空洞細孔容積を求めるのに上述したようなアッセイは必要ない。この接触器構成では、接触器のメソ孔およびマクロ孔は、液体が接触器の動作温度で凝縮可能であり、接触器に流入する原料が、流入口の温度および圧力にて液体の蒸気で完全に飽和されているかぎり、接触器は液体が満ちた状態に維持されることになる。この場合、全体が凝縮可能な蒸気で満たされるため、接触器に空洞状のメソ孔またはマクロ孔の体積はない。動作条件(即ち流入口の温度および圧力)下で接触器に流入する原料が液体の蒸気で部分的に飽和されているだけである場合、メソ孔またはマクロ孔の体積の一部が空洞状態のまま残る。飽和度は、流入するガスストリームにおける液体の蒸気の分圧と接触器の温度での液体の飽和蒸気圧との比(即ちP/Psat)である液体活性(aliquid)によって特徴付けられる。原料中の凝縮可能な液体の分圧が低下するにつれて、空洞状のメソ孔およびマクロ孔体積が大きくなる。動作条件下でのメソ孔およびマクロ孔の体積を判断するには、接触器を構築する際に用いる液体材料を乾燥させて接触器のメソ孔およびマクロ孔から除去する。接触器のメソ孔およびマクロ孔から液体を乾燥除去するには、密閉したコンテナ内で真空を作りながら接触器を加熱するか、Heなどの実質的に純粋なパージガスを接触器の表面に通しながら接触器を加熱すればよい。接触器のメソ孔およびマクロ孔から液体を除去したら、上述したアッセイ方法を実施することが可能である。このアッセイでは、接触器によって吸着されるガスの量を、吸着ステップ終了時のヘキサン圧力を飽和ヘキサン蒸気圧で割ったものであるヘキサン活性(ahexane)に対してプロットする。次に、ヘキサン活性がaliquidを超えた時点と実験終了時(即ち、送入ステップ終了時にトランスデューサ1173で測定される圧力がトランスデューサ1143で測定される圧力の99.6%を超えた時点)との間に吸着されるヘキサンのモルの累積数から、動作時に想定される空洞状のメソ孔およびマクロ孔の量を求める。繰り返すが、ヘキサンのモル体積を使って空洞状のメソ孔およびマクロ孔の実体積を計算する。その後、この試験で求めた空洞状のメソ孔およびマクロ孔の体積を接触器の上記にて定義したような吸着剤材料によって占められる総体積で割って、本明細書で使用するような体積分率で表される空洞細孔容積を求める。
【0036】
平衡制御スイング吸着プロセスでは、選択性の大半が吸着剤の平衡吸着特性によって得られるものであり、吸着剤のミクロ孔または自由体積における軽質生成物の競争吸着等温線は望まれない。速度論的に制御されたスイング吸着プロセスでは、選択性の大半が吸着剤の拡散特性によって得られるものであり、軽質種の吸着剤のミクロ孔および自由体積における輸送拡散係数は、これよりも重質の種の輸送拡散係数未満である。また、ミクロ多孔性吸着剤を用いる速度論的に制御されたスイング吸着プロセスでは、拡散選択性が、吸着剤のミクロ孔における拡散差または吸着剤を構成する結晶または粒子の選択的拡散表面耐性に起因するものであり得る。
【0037】
PSAという用語は、前に「従来の」または「高速サイクル」という表現が付かないかぎり、従来のPSA、RCPSAおよびPPSAをはじめとするあらゆる圧力スイング吸着プロセスを総称するものである旨は理解できよう。PSAプロセスでは、気体状混合物から除去されることになる、通常は汚染物質とみなされる1つまたは複数の成分に対して選択的または比較的選択的である固体収着媒の第1の床に、加圧下で1時間、気体状混合物を導く。選択的に吸着される成分を重質成分と呼び、床を通過する吸着の弱い成分を軽質成分と呼ぶ。2種類以上の汚染物質を同時に除去することも可能であるが、便宜上、選択的吸着で除去されることになる成分だけを扱い、これを汚染物質または重質成分と呼ぶ。
【0038】
特に明記しないかぎり、本明細書で使用する「選択性」という表現は、原料ストリームにおける成分のモル濃度と、特定の系動作条件および原料ストリーム組成でプロセスサイクルの吸着ステップにおいて特定の吸着剤に吸着される成分の総モル数のバイナリ(一対)比較に基づくものである。成分A、成分B並びに別の成分を含む原料の場合、成分Bよりも成分Aに対する「選択性」の高い吸着剤は、スイング吸着プロセスサイクルの吸着ステップの終了時に、
=(吸着剤におけるAの総モル数)/(原料におけるAのモル濃度)
の比が、
=(吸着剤におけるBの総モル数)/(原料におけるBのモル濃度)
の比よりも大きくなる。
式中、Uは「成分Aの吸着取込」であり、Uは「成分Bの吸着取込」である。
従って、成分Bに対する成分Aの選択性が1を超える吸着剤の場合、
選択性=U/U(式中、U>U
となる。
原料中の異なる成分の比較の中で、原料中でのモル濃度に対して吸着剤が取り出す総モル数の比が一番小さい成分が、そのスイング吸着プロセスで最も軽質の成分である。これは、吸着ステップで流出するストリームにおける最も軽質の成分のモル濃度が、原料における最も軽質の成分のモル濃度よりも高いことを意味する。本発明の吸着剤接触器では、第2の成分(成分Bなど)に対する第1の成分(成分Aなど)の選択性が少なくとも5であり、一層好ましくは、第2の成分に対する第1の成分の選択性が少なくとも10であり、最も好ましくは、第2の成分に対する第1の成分の選択性が少なくとも25である。
【0039】
成分の例に、分子窒素即ちNの分子或いは、二酸化炭素即ちCO、メタン即ちCHなどの化合物がある。本発明の好ましい実施形態では、吸着剤接触器の、CHに対するCOの選択性が少なくとも5であり、一層好ましくは、CHに対するCOの選択性が少なくとも10であり、最も好ましくは、CHに対するCOの選択性が少なくとも25である。本発明のもうひとつの好ましい実施形態では、吸着剤接触器の、CHに対するNの選択性が少なくとも5であり、一層好ましくは、CHに対するNの選択性が少なくとも10であり、最も好ましくは、CHに対するNの選択性が少なくとも25である。本発明の更に別の好ましい実施形態では、吸着剤接触器の、CHに対するHSの選択性が少なくとも5であり、一層好ましくは、CHに対するHSの選択性が少なくとも10であり、最も好ましくは、CHに対するHSの選択性が少なくとも25である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、吸着剤は、2種類以上のガス成分に対する「速度論的選択性」を有する。本明細書で使用する場合、「速度論的選択性」という用語は、2種類の種に対する単成分拡散係数D(単位はm/秒)の比として定義される。これらの単成分拡散係数は、所定の純粋なガス成分について所定の吸着剤で測定されるStefan−Maxwell輸送拡散係数としても知られている。従って、たとえば、成分Bに対する成分Aの特定の吸着剤の速度論的選択性は、D/Dと等しくなる。材料の単成分拡散係数については、吸着材料の技術分野で周知の試験で求めることが可能である。速度論的拡散係数を測定するための好ましい方法は、非特許文献1に記載されている周波数応答技術を用いるものである。速度論的に制御された分離では、第2の成分(成分Bなど)に対する第1の成分(成分Aなど)の選択された吸着剤の速度論的選択性(即ち、D/D)が5を超えると好ましく、一層好ましくは20を超え、なお一層好ましくは50を超える。
【0041】
本発明のもうひとつの好ましい実施形態では、吸着剤は、2種類以上のガス成分に対する「平衡選択性」を有する。本明細書で使用する場合、「平衡選択性」という用語は、吸着剤への単成分取込の勾配(単位はμモル/g)対特定の純粋な成分に対する特定の吸着剤についての取込等温線の線形部分の圧力(単位はトール)即ち「ヘンリーレジーム」に関して定義される。この線の勾配を本明細書ではヘンリー定数または「平衡取込勾配」または「H」と呼ぶ。「平衡選択性」は、特定の吸着剤に対する原料中の異なる成分のヘンリー定数のバイナリ(または一対)比較に関して定義される。このため、たとえば成分Bに比して成分Aに対する特定の吸着剤の平衡選択性は、H/Hとなる。平衡を制御した分離では、第2の成分(成分Bなど)に対する第1の成分(成分Aなど)の選択された吸着剤の平衡選択性(即ち、H/H)が5を超えると好ましく、一層好ましくは20を超え、なお一層好ましくは50を超える。
【0042】
PSAプロセスでは、第1の容器で第1の吸着床に気体状混合物を通し、床からは汚染物質即ち重質成分が減少した、軽質成分の多い生成物ストリームが流出する。この汚染物質即ち重質成分は、床に吸収されたまま残っている。あらかじめ定められた時間の経過後或いは、汚染物質または重質成分の破過が観察された場合、気体状混合物流を第2の容器の第2の吸着床に切り替えて精製を継続する。第2の床で吸着をおこなっている間に、吸着された汚染物質即ち重質成分を減圧によって第1の吸着床から除去する。いくつかの実施形態では、減圧時にガスを逆流させて、重質成分の脱着を補助する。容器内の圧力が下がるにつれて、すでに床に吸着されている重質成分が次第に重質成分の多い生成物ストリームに脱着される。脱着終了後、収着媒床を窒素などの不活性ガスストリームまたはプロセスガスの精製ストリームでパージしてもよい。温度が高めのパージガスストリームを用いると、パージを容易にできることもある。
【0043】
第1の床を再度吸着に利用できるように再生した後、気体状混合物流を第2の床から第1の床に切り替え、第2の床を再生する。合計サイクルタイムは、第1のサイクルで気体状混合物を最初に第1の床に導入してから、すぐ次のサイクルで気体状混合物を最初に第1の床に導入するまでの時間即ち、第1の床での再生1回分の長さである。床での吸着のサイクルタイムが床の脱着&パージサイクルのサイクルタイムよりも短い場合は、第2の容器に加えて、第3、第4、第5などの容器を使用することで、サイクルタイムを大きくすることができる。
【0044】
従来のPSAプロセスには、固有の欠点がいくつかある。たとえば、天然ガスなどの標的ガス含有ガスストリームから回収する必要のある同じ量の標的ガスを得る場合、RCPSAと比較して従来のPSAユニットは一般に、建造と操作により多くのコストがかかり、大きさの点でもかなり大型である。また、従来のPSAユニットは通常、サイクルタイムが1分よりも長く、一般に2分から4分を超える。これは、従来のPSAとこれに伴う設備構成に用いられる大きな床に成分を拡散させるのに必要な時間的な制約によるものである。これとは対照的に、RCPSAでは通常、合計サイクルタイムが1分未満である。RCPSAの合計サイクルタイムは、30秒未満のこともあり、好ましくは15秒未満、一層好ましくは10秒未満、なお一層好ましくは5秒未満、更に一層好ましくは1秒未満である。更に、高速サイクル圧力スイング吸着ユニットでは、モノリス、ラミネート、中空糸といった構造化材料などであるがこれに限定されるものではない、実質的に異なる収着媒を利用することができる。
【0045】
RCPSAでは、従来のPSAと比較してプロセスを大幅に強化することが可能(動作周波数および気体流速が高くなるなど)である。RCPSAでは一般に、ロータリーバルブ系を利用して、回転式吸着モジュールにガス流を導入する。この回転式吸着モジュールは、自らの動作サイクル終了時に吸着と脱着のステップで連続して循環利用される、別個の吸着剤床コンパートメントまたは「チューブ」を多数含む。回転式吸着モジュールは通常、そのいずれかの側で2つのシール板に保持された複数のチューブで構成される。この場合、シール板は別々のマニホールドで構成されるステータと接触している。流入口ガスは、RCPSAチューブに導入され、RCPSAチューブから出る処理後の精製生成物ガスとテイルガスが回転式吸着モジュールから離れる方向に導かれる。シール板とマニホールドを適切に配置することで、多数の個々のコンパートメントまたはチューブで、いつでも完全なサイクルの特徴的なステップを実施できる。これとは対照的に、従来のPSAでは、RCPSA吸着/脱着サイクルに必要な流れと圧力のばらつきを、1サイクルあたり数秒単位で少しずつ何度も増えて変化させることで、圧縮・弁開閉装置に発生する圧力と流量の揺れを取り除く。この形で、RCPSAモジュールは、各コンパートメントが適切な方向と圧力で連続してガス流路を通り、完全なRCPSAサイクルで圧力/流れ方向の漸増的なステップが実現されるように、回転している吸着モジュールによって取られる円形経路のまわりに角度をあけて配置された複数の弁開閉要素を含む。RCPSA技術の主な利点のひとつに、吸着剤材料をかなり効率的に利用するということがある。同じ量と品質の分離を実現するために、RCPSA技術で必要な吸着剤の量を従来のPSA技術で必要な量のわずか数分の一にすることができる。結果として、RCPSAに必要な設置面積、投資額、活性吸着剤の量は一般に、同量のガスを処理する従来のPSAユニットでの場合に比してかなり小さくなる。
【0046】
本発明は、床に気体または液体をパージして分子の脱着を助けるPPSA、RCPSAまたはハイブリッドPPSAまたはRCPPSAプロセスに使用できるものである。PPSAプロセスでは、接触器に気体または液体を通して、吸着ステップの間に取り込まれた分子を脱着させることで、吸着された種の脱着を実現する。使用できる気体の一例が蒸気である。ハイブリッドPPSAプロセスでは、熱スイングまたは圧力スイングを利用して接触器からの分子の脱着を実現し、脱着の一部をパージで実現する。
【0047】
天然ガスストリーム、特に高圧天然ガスストリームから不純物を除去するのに用いられるプロセスでは、軽質成分の回収量を改善することが特に重要である。「重質成分」とも呼ばれる不純物と、「軽質成分」とも呼ばれるメタンを豊富に含む生成物とを、天然ガスの処理における動作性の点で実用的な高い圧力で回収するのが望ましい。上述したように、本発明は、約50psigを上回る流入口圧、好ましくは約150psigを上回る流入口圧、一層好ましくは約450psigを上回る流入口圧、なお一層好ましくは約600psigを上回る流入口圧、最も好ましくは約1200psigを上回る流入口圧などの高い圧力で天然ガスを供給する場合ですら、約80vol.%を超え、一層好ましくは約85vol.%を超え、なお一層好ましくは約90vol.%を超え、最も好ましくは約95vol.%を超えるメタン回収量を得るのに使用可能なものである。本発明は、ガスストリームが最大約7000psigという例外的に高い流入口圧にある場合ですら利用可能である。地下のガス田から直接得た天然ガスストリーム(粗天然ガス)の組成は、ガス田ごとに異なる。粗天然ガスストリームをなす成分の非限定的な例としては、水、コンデンセート(高分子量の有機物質)、メタン、エタン、プロパン、ブタン、CO、N、He、HS、Hg、メルカプタンがあげられる。水とコンデンセートは一般に除去され、コンデンセートは石油精製所に送られる。住宅用燃料や業務用燃料の市場への販売用のパイプラインに導入可能なガスを製造するために、N、Hg、メルカプタン、酸性ガスであるCOおよびHSなどの汚染物質を許容可能な濃度まで除去しなければならない。濃度や不純物のタイプはガス田ごとに異なり、場合によっては、生成ガス中の分子の大半をなすこともある。たとえば、天然ガス田によっては、約0から90vol.%のCOを含まれることも珍しくなく、一般に約10vol.%から約70vol.%のCOが含まれる。
【0048】
また、本発明は、接触器に供給するガスの温度と圧力を調節することで、軽質成分の回収量を増やす方法を提供するものである。この方法は、低体積分率のメソ孔およびマクロ孔を有する接触器と併用することもできるし、このような接触器のない状態で使用することも可能なものである。うまく設計された、速度論的に制御されたスイング吸着プロセスの吸着ステップでは、ミクロ孔または自由体積における重質成分の量を、接触器内の局所気相濃度と平衡状態にある重質成分の吸着等温線から概算で求めることが可能である。うまく設計された平衡制御スイング吸着プロセスでは、ミクロ孔または自由体積における重質成分の量を、接触器内の局所気相濃度と平衡状態にある重質成分および軽質成分の競争吸着等温線から概算で求めることが可能である。これらの概算が可能なのは、うまく設計されたスイング吸着プロセスでは、接触器によって、接触器のミクロ孔または自由体積に吸着される相と気相との間に良好な物質移動特性が得られるからである。接触器のマクロ孔または自由体積における重質成分の到達可能な最大吸着量をqと呼ぶ(qの単位はミクロ多孔性またはポリマー材料のミリモル/mである)。圧力が低いとき、重質成分の吸着等温線は通常、ヘンリーの法則に従い、ミクロ多孔性またはポリマー材料に吸着される重質成分の量即ちqHeavyは、以下のとおりとなる。
Heavy=KHeavyHeavy (単位はミリモル/m
式中、KHeavyはヘンリー定数であり、PHeavyは重質成分の分圧である。ヘンリー定数即ちKHeavyは温度依存であり、通常は以下の式に応じて変動する。
【数1】

式中、Kは頻度因子であり、ΔHは吸着熱(単位はジュール/モル)である。
【0049】
速度論的スイング吸着プロセスまたは平衡制御スイング吸着プロセスのいずれかの選択性と回収量を改善するには、吸着ステップの終わりに、原料を接触器に導入する場所付近でのミクロ孔または自由体積における重質成分の吸着量が、0.15qを超え、好ましくは0.3qを超え、なお一層好ましくは0.6qを超えるように、流入口の温度と圧力を選択する必要がある。この要件は、流入口圧の下限と流入口温度の上限を定めるものである。吸着剤のミクロ孔または自由体積における重質成分の吸着量が増えると、接触器に選択的に吸着される材料の量が増え、脱着ステップで選択的に放出可能な材料の量も増える。これらの増加によって、メソ孔およびマクロ孔に非選択的に吸着される軽質成分の損失が低減される。ただし、この範囲を大きく超えて吸着量が増えると、軽質成分の回収量は減少する。これは、圧力の上昇に伴って吸着等温線の勾配が小さくなりやすいからである。軽質成分の回収量を最大限にするには、原料を接触器に導入する場所付近で、以下の式が満たされるように重質成分の吸着等温線の勾配が十分に大きいことが好ましい。
【数2】

式中、α=1/50、一層好ましくはα=1/25、なお一層好ましくはα=1/8である。この不等式は、流入口圧の上限と流入口温度の下限を定めるものである。その際、これらの要件は、軽質成分の回収量が最適になる原料の圧力と温度のウィンドウ(即ち最大値と最小値)を規定するものである。通常、スイング吸着プロセスは、実用的な動作ウィンドウ内の最低圧力で動作させるのが好ましい。原料の圧力が低下すると、接触器のメソ孔およびマクロ孔における分子の濃度も低下する。メソ孔およびマクロ孔に非選択的に吸着される分子の濃度が低くなればなるほど、スイング吸着プロセスにおける軽質成分の損失も小さくなる。
【0050】
このウィンドウは、天然ガスを分離するにあたって特に重要である。天然ガスは通常、1,500から7,000psiの圧力で生成されるためである。通常、原料のこのような圧力は高すぎて、スイング吸着分離で軽質成分として作用するメタンの最適な回収ウィンドウにはおさまらない。単純な膨脹ノズルを使えば原料の圧力を下げることが可能であるが、この技術ではエネルギが無駄になる。また、ガス膨脹のエネルギを回収するターボエキスパンダーを用いて天然ガスを事前に調整することで、ほとんどの重質成分(CO、N、HS、HO、重質炭化水素、メルカプタンなど)の分離に最適な軽質成分回収ウィンドウに到達することが可能である。その上で、ガス膨脹から回収したエネルギを発電に利用してもよく、分離した酸性ガス成分(COまたはHSなど)を地中に廃棄できるように、これらの成分を再圧縮しやすくする目的で使ってもよい。COおよびHSの廃棄/貯留に適した地盤としては、圧入した酸性ガス成分の大幅な損失を防ぐシール層を上部に有する帯水層、油層、ガス貯留層、枯渇油層および枯渇ガス貯留層があげられる。一般に、このようなタイプの地盤に圧入するには、分離後のCOおよびHSを2,000psiよりも高い圧力まで再圧縮する必要があり、5,000psiよりも高い圧力まで再圧縮しなければならないことも多い。よって、ターボエキスパンダーから回収したエネルギを再圧縮に再利用できるようにすることが重要なのである。また、同じ量の動力を得るのに必要なコストも、ガス燃焼タービンよりターボエキスパンダーのほうが小さくてすむ。天然ガスを最適なメタン回収ウィンドウに調整するのに用いられるガス膨脹から、ターボエキスパンダーを使ってエネルギを捕捉することは、それ自体が経済的に好都合である。ターボエキスパンダーを用いるのであれば、軸連接型の発電装置または軸連接型のコンプレッサのいずれかでエネルギを回収することが可能である。メタンの回収量が最大になる動作ウィンドウに達するには、ターボエキスパンダーから出てくるガスをスイング吸着プロセスに導入する前に熱交換器に通すと都合がよいこともある。生成物は等エントロピー膨脹で回収されるため、ターボエキスパンダーから出てくるガスが冷たすぎて最適な回収ウィンドウに入らないこともある。スイング吸着プロセスに入る前にガスの温度が上昇するように、一般に熱交換器を稼働させる。スイング吸着がPSAプロセスまたはRCPSAプロセスである場合に、これらの事項は特に重要である。
【0051】
スイング吸着プロセスで天然ガスからCOを除去する用途では、速度論的選択性を有する特定クラスの8員環ゼオライト材料を用いて吸着剤を生成すると好ましい。このクラスの8員環ゼオライト材料の速度論的選択性によって、メタンの輸送を妨害しつつCOをすみやかにゼオライト結晶に移動できるため、COとメタンの混合物からCOを選択的に分離することが可能である。天然ガスからCOを除去する場合、この特定クラスの8員環ゼオライト材料のSi/Al比は約1:1から約1000:1であり、好ましくは約10:1から約500:1、更に約50:1から約300:1である。本明細書で使用する場合、Si/Alという表現は、ゼオライト構造のシリカ対アルミナのモル比として定義される点に注意されたい。本明細書で使用するのに適した好ましいクラスの8員環ゼオライトを用いると、COとメタンの単成分拡散係数の比(即ちDCO2/DCH4)が10より大きく、好ましくは約50より大きく、一層好ましくは約100より大きく、なお一層好ましくは200より大きくなるような方法で、COが8員環ウィンドウを介して内部の細孔構造に到達することができる。単成分拡散係数は、吸着等温線のヘンリーの法則のレジームで純粋なガスについて測定される輸送拡散係数とみなされる。ヘンリーの法則のレジームでは、ゼオライトにおける分子の吸着量は少なく、このレジームでFickianの拡散係数とStephan−Maxwellの拡散係数はほぼ等しい。特例の収着質に対する多孔性結晶材料の拡散率は、その拡散時定数D/rに対して都合よく測定される。式中、DはFickian拡散係数(m/秒)であり、値「r」は拡散距離を示す晶子の半径(m)である。結晶の大きさと幾何学的形状が均一ではない状況では、「r」は対応の分布を代表する平均半径を示す。時定数および拡散係数を測定するためのひとつの方法に、非特許文献2に記載されている方法を用いて、標準吸着動力学を解析することがある(即ち、重量測定取込)。時定数および拡散係数を測定するためのもうひとつの方法に、非特許文献3および非特許文献4に記載されている方法を用いて、ゼロ長クロマトグラフィデータを解析することがある。時定数および拡散係数を測定するための好ましい方法のひとつに、非特許文献1に記載された周波数応答技術を用いる手法がある。天然ガスからCOを除去するためのスイング吸着プロセスで使用するのに好ましいクラスの材料における8員環ゼオライトの一例に、ゼオライトDDRがある。別の好ましい8員環ゼオライトに、DDRと同形の骨格構造のゼオライトであるシグマ−1およびZSM−58がある。100℃未満の温度で、COの単成分拡散係数はメタンの単成分拡散係数の100倍よりも大きいことが見いだされている。最大約300℃の温度での拡散係数の実測活性化エネルギから、COの拡散係数を計算したところ、メタンの拡散係数の5倍よりも大きい。天然ガスからCOを除去するスイング吸着プロセスの防汚性が、このクラスの8員環ゼオライト材料によって得られるもうひとつの利点である。
【0052】
多くの場合、天然ガスまたは石油生産に関連するガスからは、窒素も除去する必要がある。これは、生成ガスの窒素濃度が高い(>2vol.%)ことが理由の場合もあれば、天然ガスの液化に窒素の除去が必要であることが理由の場合もある。また、メタンや炭化水素生成物を燃料として利用できるように、LNGの製造時に発生するフラッシュガスから窒素を分離すると都合がよいこともある。もうひとつの用途に、メタンや炭化水素生成物を回収または燃料として利用できるように、LNGボイルオフからガスを精製することがある。回収時、メタンや炭化水素を再度液化して、LNG船に戻すと都合がよいこともある。これらの用途ではいずれも、窒素含有ガスから窒素を選択的に吸着して、高回収量で精製メタン生成物を得ることが望ましい。メタンからの窒素分離に合った相応の平衡選択性または速度論的選択性を有するモレキュラーシーブ収着媒は極めてわずかしかない。天然ガスからNを分離する場合、速度論的選択性を有するクラスの8員環ゼオライト材料を用いて吸着剤を生成すると好ましい。このクラスの8員環材料の速度論的選択性によって、メタンの輸送を妨害しつつNをすみやかにゼオライト結晶に移動できるため、Nとメタンの混合物からNを選択的に分離することが可能である。天然ガスからNを除去する場合、この特定クラスの8員環ゼオライト材料のSi/Al比も約1:1から約1000:1であり、好ましくは約10:1から約500:1、更に約50:1から約300:1である。本明細書で使用するのに適した好ましいクラスの8員環ゼオライトを用いると、Nとメタンの単成分拡散係数の比(即ちDN2/DCH4)が5より大きく、好ましくは約20より大きく、一層好ましくは約50より大きく、なお一層好ましくは100より大きくなるような方法で、Nが8員環ウィンドウを介して内部の細孔構造に到達することができる。天然ガスからNを除去する際のスイング吸着プロセスの防汚性が、このクラスの8員環ゼオライト材料によって得られるもうひとつの利点である。
【0053】
これ以外の場合では、HSを約0.001vol.%から約70vol.%の量で含み得る天然ガスからHSも除去すると望ましい。この場合、速度論的選択性を有するスタノシリケート並びに上述したクラスの8員環ゼオライトを用いて吸着剤を生成すると都合がよいことがある。このクラスの8員環材料の速度論的選択性によって、メタンの輸送を妨害しつつHSをすみやかにゼオライト結晶に移動できるため、HSとメタンの混合物からHSを選択的に分離することが可能である。天然ガスからHSを除去する場合、この特定クラスの8員環ゼオライト材料のSi/Al比は約1:1から約1000:1であり、好ましくは約10:1から約500:1、更に約50:1から約300:1である。本明細書で使用するのに適した好ましいクラスの8員環ゼオライトを用いると、HSとメタンの単成分拡散係数の比(即ちDH2S/DCH4)が5より大きく、好ましくは約20より大きく、一層好ましくは約50より大きく、なお一層好ましくは100より大きくなるような方法で、HSが8員環ウィンドウを介して内部の細孔構造に到達することができる。シグマ−1およびZSM−58などのDDR骨格ゼオライトも、天然ガスからHSを除去するのに適している。用途によっては、HSをppmレベルまたはsub−ppmレベルまで除去する必要がある。こうした大規模なHSの除去を実現するには、PPSAプロセスまたはRCPPSAプロセスを使うと都合がよいことがある。
【0054】
天然ガスまたは石油生産に関連するガスから、上記にて定義したような重質炭化水素を除去しなければならないことがある。天然ガスをパイプラインで輸送する前の露点調整のために、或いは液化前に天然ガスを調整する目的で、重質炭化水素の除去が必要なこともある。それ以外の場合では、COおよび窒素を用いる原油増進回収(EOR)圧入での生成ガスから重質炭化水素を回収すると都合がよいことがある。更に他の場合には、いくつかのタイプの石油生産で油層に戻される関連のガスから重質炭化水素を回収すると都合がよいことがある。重質炭化水素の除去が望ましい多くの場合、ガスが1,000psiを超える圧力になることがあり、場合によってはガス圧が5,000psigを超える可能性もあり、更に約7,000psigを超えることもある。これらの用途では、細孔の大きさが約5から約20オングストロームのゼオライトで生成した吸着剤を用いると都合がよい。この大きさの範囲にある細孔を有するゼオライトの非限定的な例として、MFI、フォージャサイト、MCM−41、ベータゼオライトがあげられる。吸着剤の過剰な汚染を防ぐには、重質炭化水素を除去するための本発明のプロセスの実施形態で用いられるゼオライトのSi/Al比が、約20から約1000であると好ましく、好ましくは約200から約1000である。
【0055】
場合によっては、メルカプタンを含む状態の天然ガスが生産されることもあるため、吸着プロセスを使ってその分離を補助すると好都合である。天然ガスを精製するために開発されたいくつかのプロセスに、メルカプタンや天然ガスに見られる成分を含むストリームが存在する。本発明の接触器を用いて、天然ガスまたは天然ガス成分からメルカプタンをより一層選択的に分離し、貴重な成分(メタンなど)の回収量を高めることも可能である。これらの用途では、細孔の大きさが約5から約20オングストロームのゼオライトで生成した吸着剤を用いると都合がよい。この大きさの範囲にある細孔を有するゼオライトの非限定的な例として、MFI、フォージャサイト、MCM−41、ベータゼオライトがあげられる。これらの用途では、ゼオライトのSi/Al比は約1から約1000であればよい。
【0056】
低メソおよびマクロ多孔性吸着剤は、軽質成分生成物の回収量を改善するために平衡制御スイング吸着プロセスと速度論的に制御されたスイング吸着プロセスの両方に使用可能な本発明の接触器の不可欠な構成要素である。従来技術の吸着剤接触器は、相当な数のメソ孔やマクロ孔を含む。吸着ステップ終了時、非選択的であるメソ孔およびマクロ孔に、相当な量の軽質成分が含まれることになる。メソ孔およびマクロ孔への移動が非選択的であることが、その原因である。これは、高圧RCPSA、PSA、TSAおよびPPSAプロセスで特に重要な問題である。吸着ステップ終了時に、メソ孔およびマクロ孔の隙間における分子数が、吸着剤のミクロ孔に選択的に吸着される分子数に匹敵する可能性があるためである。脱着ステップでは、メソ孔およびマクロ孔に含まれる軽質成分の大半が、望ましくない形で重質成分の生成物ストリームに混じって失われる。これらの軽質分子自体、軽質生成物で望まれるようには回収されない。結果として、貴重な軽質生成物が大幅に失われてしまうことになりかねない。本発明の吸着剤接触器は、空洞状のメソ孔およびマクロ孔の隙間の体積分率を減らすことで、軽質生成物の回収量を大幅に改善可能なものである。
【0057】
本発明の一実施形態では、空洞状の平行フローチャネルの壁が吸着剤で構成される。吸着剤は、好ましくは重質成分を選択的に吸着するミクロ多孔性吸着剤またはポリマーである。ミクロ多孔性吸着剤の非限定的な例としては、8員環ゼオライト、チタノシリケート、フェロシリケート、スタノシリケート、アルミノホスフェート(AlPO)、シリカアルミノホスフェート(SAPO)および炭素モレキュラーシーブがあげられる。他の好ましい実施形態では、吸着剤材料は、チタノシリケートおよびスタノシリケートからなる群から選択されるミクロ多孔性吸着剤で構成される。更に他の好ましい実施形態では、吸着剤材料は、アルミノホスフェート(AlPO)、シリカアルミノホスフェート(SAPO)および炭素モレキュラーシーブからなる群から選択されるミクロ多孔性吸着剤で構成される。好ましいのは、CO、N、HS除去用のゼオライトであり、HSの除去用にはスタノシリケートが更に好ましい。他の好ましい実施形態では、吸着剤材料は、MFI、フォージャサイト、MCM−41、およびベータゼオライトからなる群から選択されるゼオライトで構成される。選択的吸着剤として使用可能なポリマーの非限定的な例としては、ポリイミド、ポリスルホン、アミン官能化ポリマーなどの官能化ポリマーがあげられる。
【0058】
本発明の吸着剤接触器は、圧力スイング吸着プロセスの吸着ステップと脱着ステップの両方での接触器の吸着剤の加熱および冷却の制御を補助するサーマルマス(伝熱)材料を任意に含むものであってもよい。吸着時の加熱は、吸着剤に入る分子の吸着熱によって生じる。任意のサーマルマス材料は、脱着ステップでの接触器の冷却制御も補助するものである。このサーマルマスについては、接触器のフローチャネルに組み込んでもよく、吸着剤自体に組み込んでもよく、フローチャネルの壁の一部として組み込んでもよい。吸着剤に組み込む場合、吸着剤層全体に分散する固体材料であってもよく、吸着剤内の層として含まれるものであってもよい。フローチャネルの壁の一部として組み込む場合、吸着剤を壁に蒸着または形成する。本発明を実施するにあたり、サーマルマス材料としては、好適な材料を用いることが可能である。このような材料の非限定的な例として、金属、セラミック、ポリマーがあげられる。好ましい金属の非限定的な例として、鋼、銅、アルミニウム合金があげられる。好ましいセラミックの非限定的な例として、シリカ、アルミナ、ジルコニアがあげられる。本発明を実施するにあたって使用可能な好ましいポリマーの一例にポリイミドがある。吸着ステップの間に温度の上昇を制限する度合いに応じて、使用するサーマルマス材料の量は、接触器のミクロ多孔性吸着剤の質量の約0から約25倍の範囲であればよい。
【0059】
接触器におけるサーマルマスの量の好ましい範囲は、接触器のミクロ多孔性吸着剤の質量の約0から5倍である。サーマルマス材料の量の一層好ましい範囲は、ミクロ多孔性吸着剤材料の質量の約0から2倍であり、最も好ましくは接触器のミクロ多孔性材料の質量の約0から1倍である。好ましい実施形態では、有効量のサーマルマスを接触器に組み込む。サーマルマスの有効量とは、吸着ステップの際に吸着剤の温度上昇を約100℃未満までに維持できるだけの量である。好ましい実施形態では、接触器に組み込むサーマルマスの量は、吸着ステップの際に吸着剤の温度上昇を約50℃未満までに、一層好ましくは約10℃未満までに維持できるだけの量である。
【0060】
空洞状のメソ孔およびマクロ孔の体積は、間隙封止用物質で満たされておらず、非選択的であるため、基本的に混合ガスのあらゆる成分で埋められるすべてのメソ孔およびマクロ孔の体積分率を含む。本発明を実施するにあたって使用可能な間隙封止用物質の非限定的な例として、空洞状のメソ孔およびマクロ孔の隙間を満たすことができるが、依然として分子を選択的吸着剤のミクロ孔に輸送できるポリマー、ミクロ多孔性材料、固体炭化水素、液体があげられる。間隙封止用物質がポリマーまたは液体である場合、間隙封止用物質の分子の大きさが、吸着剤のミクロ孔に大幅に侵入しないような十分な大きさで、なおかつメソ孔およびマクロ孔を満たせないほどは大きくないのが好ましい。固体の間隙封止用物質を使用する場合、固体の粒度は吸着剤の選択的ミクロ孔よりも大きいが、メソ孔およびマクロ孔よりは小さい。間隙封止用物質自体、吸着剤中に含まれることがあるミクロ孔を相当に塞ぐまたは満たすことなく、メソ孔およびマクロ孔におさまることが可能なものである。
【0061】
間隙封止用物質は、吸着剤の空洞状のメソ孔およびマクロ孔の体積分率が上述した要件を満たす程度に、吸着剤の空洞状のメソ孔およびマクロ孔を埋める。間隙封止用物質として使用可能なポリマーの非限定的な例には、ポリイミド、ポリスルホン、シリコーンゴムがある。間隙封止用物質として使用可能な液体の非限定的な例には、アミン、1,3,5トリメチルベンゼンなどの芳香族、ヘプタメチルノナンなどの飽和分枝炭化水素並びに、炭素数が約5から約60の範囲の液体炭化水素がある。液体の間隙封止用物質を使用する場合、原料ガスを液体の間隙封止用物質で飽和またはほぼ飽和させておくと都合がよい。固体の間隙封止用物質の非限定的な例として、ワックスなどの炭化水素、炭素数が10〜1000の範囲の炭化水素があげられる。本発明を実施するにあたって使用可能なミクロ多孔性材料の非限定的な例としては、細孔の大きさが本発明の選択的構造化吸着剤の細孔よりも大きいミクロ多孔性炭素およびゼオライトがあげられる。間隙封止用物質を用いて生成される吸着剤の一例に、実質的にすべての空隙が液体で満たされるように液体が充填されたゼオライト粒子間の間隙に約30%のメソ孔およびマクロ孔体積を有するシリカまたはアルミナ結合ゼオライト層がある(即ち、層で得られるマクロ多孔度およびメソ多孔度全体が約20%未満である)。場合によっては、間隙封止用物質が連続したネットワークを形成し、吸着剤はミクロ多孔性材料が間隙封止用物質に埋設された複合体構造である。このような構造の非限定的な例に、ポリマーが連続したゼオライト/ポリマー複合体があり、この複合体は空洞状のメソまたはマクロ孔が約20体積%未満である。
【0062】
また、マクロ孔を埋めるメソ多孔性材料を用いて吸着剤を形成し、全体としての空隙即ち空洞体積を減らすことも可能である。このような構造の一例に、得られるメソ孔およびマクロ孔体積が約20%未満になるようにメソ多孔性ゾルゲルが充填される、約30体積%のマクロ孔を有する吸着剤がある。
【0063】
「フローチャネル」または「ガスフローチャネル」とも呼ばれることのあるチャネルは、接触器内でのガスの流動を可能にする経路である。通常、フローチャネルは、表面積が比較的大きくて流体抵抗は比較的低い。フローチャネルの長さは、少なくとも流体速度と表面積対チャネル体積比の関数である物質移動ゾーンを提供できるだけの長さでなければならない。チャネルは、好ましくはチャネルでの圧力の低下を最小限にするよう構成される。多くの実施形態において、接触器の第1の端でチャネルに入る流体流部分は、第2の端を出て合流するまでは第1の端で別のチャネルに入る他のいかなる流体部分とも連通しない。実質的にすべてのチャネルが完全に利用されるようにして、なおかつ物質移動ゾーンが実質的に等しく含まれるようにするには、チャネルの均一性が重要である。余分なチャネルの不整合があると、生産性とガス純度の両方に影響する。あるフローチャネルが隣接する別のフローチャネルよりも大きいと、早すぎる段階で生成物の破過が生じて、これが生成物ガスの純度を許容できない純度レベルまで低下させてしまうことがある。更に、1分あたり約50サイクル(cpm)よりも高いサイクル周波数で動作する装置には、1分あたりで低めのサイクルで動作する装置と比較して、なお一層のフローチャネル均一性と圧力低下の少なさが必要とされる。更に、床で圧力の低下が起こりすぎると、およそ100cpmを超えるなどの高いサイクル周波数を実現しにくくなる。
【0064】
本発明の平行チャネル接触器の寸法と幾何学的形状は、スイング吸着プロセス設備で使用するのに適したどのような寸法または幾何学的形状であってもよい。幾何学的形状の非限定的な例として、モノリスの一端から他端まで延在する実質的に平行なチャネルを複数本有する、さまざまな形状のモノリス;複数の管状部材;シート間にスペーサを挟んだ状態または挟まない状態での吸着剤シートからなる積層;多層スパイラルロール、中空糸の束並びに実質的に平行な固体繊維の束があげられる。これらの幾何学的形状に吸着剤をコーティングしてもよく、多くの場合、吸着剤材料と好適なバインダから形状を直接に形成してもよい。吸着剤/バインダから直接形成される幾何学的形状の一例として、ゼオライト/ポリマー複合体をモノリスに押出成形したものがある。吸着剤から直接に形成される幾何学的形状のもうひとつの例として、ゼオライト/ポリマー複合体製の押出中空糸または紡糸中空糸がある。吸着剤をコーティングした幾何学的形状の一例に、ゼオライト膜などのミクロ多孔性低メソ孔吸着剤膜をコーティングした薄くて平らな鋼シートがある。直接に形成される吸着剤層またはコーティングされた吸着剤層は、それ自体を複数の層または同一または異なる吸着剤材料に構造化可能である。多層吸着剤シート構造が、本明細書に援用する特許文献26に教示されている。
【0065】
フローチャネルの寸法は、フローチャネルに沿った圧力の低下を考慮して計算で求めることが可能なものである。フローチャネルのチャネル幅は、約5から約1,000ミクロンであると好ましく、好ましくは約50から約250ミクロンである。本明細書で使用する場合、フローチャネルの「チャネル幅」は、流路に対して垂直な角度から見てフローチャネルの最も短い部分を通る線の長さとして定義される。たとえば、フローチャネルの横断面が円形である場合、チャネル幅は円の内径である。しかしながら、チャネル幅の横断面が長方形の場合、フローギャップは長方形の長い2本の辺に垂直でこれらの辺を結ぶ線の距離(即ち長方形の短い辺の長さ)である。また、フローチャネルは、どのような断面構成であってもよいことに注意されたい。好ましい実施形態は、フローチャネルの断面構成が円形、長方形または正方形のものである。しかしながら、楕円形、長円形、三角形またはさまざまな多角形の形状などであるが、これに限定されるものではない、どのような幾何学的断面構成を用いてもよい。他の好ましい実施形態では、吸着剤接触器における吸着剤体積とフローチャネル体積の比が、約0.5:1から約100:1であり、一層好ましくは約1:1から約50:1である。
【0066】
RCPSAの用途によっては、吸着剤シートを積層する際にフローチャネルも形成する。一般に、RCPSA用途向けの吸着剤ラミネートでは、フローチャネルの長さが約0.5センチメートルから約10メートルであり、より一般にはフローチャネルの長さが約10cmから約1メートルで、チャネル幅は約50から約250ミクロンである。チャネルには、スペーサまたはスペーサとして機能するメッシュを配置してもよい。積層吸着剤の場合、吸着剤ラミネート間の分離を画定する構造または材料であるスペーサを用いることが可能である。本発明で使用可能なタイプのスペーサの非限定的な例として、寸法的に正確な:プラスチックメッシュ、金属メッシュ、ガラスメッシュまたはカーボンメッシュ;プラスチック膜または金属箔;プラスチック、金属、ガラス、セラミックまたはカーボンのファイバおよび撚糸;セラミックピラー;プラスチック、ガラス、セラミックまたは金属の球または円板;またはこれらの組み合わせで構成されるものがあげられる。吸着剤ラミネートは、最大で少なくとも約150cpmのPSAサイクル周波数で動作する装置で用いられてきた。フローチャネルの長さがサイクル速度と相関していることもある。サイクル速度が低い(約20から約40cpmなど)場合、フローチャネルの長さを1メートルまたはそれよりも長くすることが可能であり、最大約10メートルでも可能である。サイクル速度が40cpmを超えると、フローチャネルの長さは一般に短くなり、約10cmから約1メートルの範囲で変わることがある。ゆっくりとしたサイクルのPSAプロセスで長いフローチャネルを用いることが可能である。高速サイクルのTSAプロセスは高速サイクルのPSAプロセスよりも遅くなりがちであり、長いフローチャネルをTSAプロセスと併用することも可能である。
【0067】
スイング吸着プロセスの全体としての吸着速度は、フローチャネルから吸着剤への物質移動速度で特徴付けられる。吸着剤の体積の大半をプロセスで利用するには、除去対象となる種(即ち重質成分)の物質移動速度が十分に高いことが望ましい。吸着剤は重質成分を選択的にガスストリームから除去するため、吸着剤層の使い方が非効率的であると、軽質成分の回収量が減少および/または軽質生成物ストリームの純度が低下する可能性がある。本発明を用いれば、ミクロ多孔性の範囲になる吸着剤の体積の大半が、重質成分の吸着と脱着で効率的に用いられる形で、メソ多孔性およびマクロ多孔性を低体積分率で有する吸着剤を形成することができる。これをするためのひとつの方法に、実質的に均一な厚さの吸着剤を用いることがある。この場合の吸着剤層の厚さは、重質成分の物質移動係数と、プロセスの吸着ステップおよび脱着ステップの時間とによって設定される。厚さの均一性については、吸着剤の厚さの測定値またはそれを製造する方法から評価可能である。吸着剤の均一性が、その厚さの標準偏差が平均厚の約25%未満であるようなものになると好ましい。一層好ましくは、吸着剤の厚さの標準偏差が平均厚の約15%未満である。吸着剤厚の標準偏差が平均厚の約5%未満であるとなお一層好ましい。
【0068】
これらの物質移動速度定数の計算は当業者間で周知であり、標準的な試験データから当業者によって導かれる。本明細書に援用する非特許文献5に、吸着剤の厚さ、チャネル幅、プロセスのサイクルタイムが物質移動にどのように影響するかについての多くの局面が明確に示されている。また、同じく本明細書に援用する、Moreauらに付与された特許文献27に、従来のPSAで用いる特定の吸着剤と試験標準組成物について、これらの移動速度と関連の係数とを計算するための詳細が記載されている。
【0069】
吸着剤の各点で計算した重質成分の輸送の時定数τが吸着剤層での物質移動の性能指数である。厚さがx方向で、y方向とz方向がシートの面内にある平面状の吸着剤シートの場合、重質成分の時定数τは、
τ[x,y,z]=最小[Lpath/Dpath] (単位は秒)
であり、式中、Dpathはフィードチャネルから点(x,y,z)までの経路に沿った重質成分の平均輸送拡散係数であり、Lpathは経路に沿った距離である。フィードチャネルから吸着剤の各点(x,y,z)までの軌道または経路には多くの可能性がある。時定数は、フィードチャネルから吸着剤の(x,y,z)点までに可能なすべての経路に沿って考えられる時定数(Lpath/Dpath)の最小値である。これには、メソ孔およびマクロ孔を通る経路も含まれる。吸着剤に固体材料がある場合(熱管理のために含まれていることがあるものなど)、そこでの輸送は起こらず、そこでの(x,y,z)点を計算に含めない。各種の輸送拡散係数は、それぞれの種の単成分Stefan−Maxwell拡散係数であるとみなされる。経路Dpathに沿った平均輸送拡散係数は、経路に沿った線形平均化拡散係数である。経路を特徴付ける拡散係数を得るには線形平均化で十分である。重質成分に多くの種が含まれる場合、拡散係数Dpathも組成的に平均化される。拡散係数は温度に左右され、圧力にも左右されることがある。拡散係数の変化の範囲内で、サイクルの間に生じる温度と圧力の変化について拡散係数を平均化する必要がある。吸着剤を効率的にするには、高密度固体ではない吸着剤の点(または体積)の少なくとも半分の時定数がプロセスのサイクルタイム未満になるように吸着剤層の平均厚を選択すると好ましい。一層好ましくは、高密度固体ではない吸着剤の点(または体積)の少なくとも75%の時定数がプロセスのサイクルタイム未満になるように吸着剤層の平均厚を選択する。なお一層好ましくは、高密度固体ではない吸着剤の点(または体積)の少なくとも75%の時定数がプロセスのサイクルタイムの約25%未満になるように吸着剤層の平均厚を選択する。
【0070】
本発明を応用して、合成ガスからの分子種の分離を改善することができる。合成ガスは、炭化水素の水蒸気改質、炭化水素の熱部分酸化および接触部分酸化、従来技術において周知の他の多くのプロセスおよび組み合わせをはじめとする多岐にわたる方法で製造可能なものである。合成ガスは、燃料や化学分野での多くの用途に用いられており、ガス化複合発電(IGCC)などの発電用途にも用いられている。これらの用途ではいずれも、プロセスに必要な合成ガスの厳密な組成についての仕様がある。製造時、合成ガスには少なくともCOおよびHが含まれる。ガス中の他の分子成分として、CH、CO、HS、HOおよびNが含まれる可能性もある。ガス中の少量(または微量)成分としては、炭化水素、NHおよびNOxがあげられる。ほぼすべての用途で、使用できるようになる前にHSの大半を合成ガスから除去しなければならず、多くの用途ではCOの多くも除去できると望ましい。合成ガスを化学合成プロセスの原材料として利用する用途では、通常はH/CO比をプロセスに最適な値に調整できると望ましい。特定の燃料用途では、水性ガスシフト反応を利用して合成ガスをほぼ完全にHとCOにシフトし、このような用途の多くではCOを除去できると望ましい。
【0071】
本発明は、合成ガスからの貴重な分子成分の回収量を増やすための方法を提供するものである。ほとんどの用途では、貴重な成分はCOおよびHである。複数の種を合成ガスから除去する場合、それぞれ特定の成分の除去に合わせて最適化した個々の接触器を使用すればよい。本発明は、高速のサイクル動作と、結果として小さな設備とを可能にする、接触器の圧力を高速に変化させる手段を提供するものであるため、複数の接触器を用いることが可能なのである。或いは、いくつかの異なる吸着剤を単一の接触器に組み込んでもよい。これによって、単一の接触器でいくつかの種を選択的に除去する手段が得られる。
【0072】
分離後の酸性ガス(HSおよび/またはCOなど)を高めの圧力で回収すると望ましい場合がある。高めの圧力での酸性ガスの回収は、たとえばCOの貯留を予定しているときに望ましいことがある。これらの例では、温度スイング(TSA)による吸着のほうが圧力スイングよりも望ましいことがある。本発明は、大幅な熱の損失を伴わず、ヒートアップやクールダウンの時間が長くなったり吸着質が希釈されたりすることもない状態で、接触器の温度を高速に変化させる手段を提供するものである。温度スイング吸着は、固定型平行チャネル接触器とこれに関連する弁を用いて、或いは、Ljungstrom式熱交換器の手法に従う回転式の平行チャネル接触器によって、実施可能なものである。
【0073】
小型の熱交換構造の片面に吸着剤がある平行チャネル接触器を用いると、高速のTSAサイクル動作が容易になる。吸着用材料および脱着用材料とは切り離されたチャネルで加熱と冷却がなされる。この構成では、吸着ステップの際に熱波を生成して接触器を移動させ、吸着される成分を更にうまく分離できるようにすることが可能である。場合によっては、クロマトグラフ的な分離を実現できる(キャリアガスからの希釈なし)。このタイプの平行チャネル接触器配置は極めてエネルギ効率的になり得る。スイング吸着プロセスに用いられる熱エネルギは、容易に回収して再利用可能である。エネルギ効率がゆえに、更に大きな度合いの熱スイングを利用することができる。
【0074】
本明細書の図面を参照すれば、本発明の接触器をより一層よく理解できる。本明細書の図1は、ミクロ多孔性吸着剤とバインダから直接形成され、複数の平行フローチャネルを有する、本発明によるモノリス形の平行チャネル接触器を示す図である。押出プロセスを用いれば多岐にわたるモノリス形状を直接形成することが可能である。本明細書の図1に、円柱形のモノリス1の一例を概略的に示す。円柱形のモノリス1は複数の平行フローチャネル3を含む。ひとつの接触器に含まれるチャネルのチャネル幅がすべて実質的に同じ大きさであれば、フローチャネル3のチャネル幅を約5から約1,000ミクロン、好ましくは約50から約250ミクロンにすることができる。チャネルは、円形、正方形、三角形、六角形を含むがこれに限定されるものではない、さまざまな形状に形成可能である。チャネル間の隙間には吸着剤5が詰まっている。図示のように、チャネル3がモノリスの体積の約25%を占め、吸着剤5はモノリスの体積の約75%を占めている。モノリスの体積の約50%から約98%を吸着剤5にすることが可能である。吸着剤5とチャネル構造の体積分率から、以下のようにして吸着剤の有効厚を定義できる。
【数3】

【0075】
本明細書の図1に示すモノリスの場合、吸着剤の有効厚はフィードチャネルの直径の約1.5倍である。チャネルの直径が約50から約250ミクロンの範囲にある場合、吸着剤層の厚さは、接触器全体が吸着剤で構成されているのでなければ、約25から約2,500ミクロンの範囲であると好ましい。直径50ミクロンのチャネルの場合、吸着剤層の厚さの好ましい範囲は約25から約300ミクロンであり、より一層好ましい範囲は約50から約250ミクロンである。図2は、長手方向の軸に沿って切った断面図であり、壁面がすべて吸着剤5とバインダとの組み合わせで形成されたフィードチャネル3がモノリスの長さ方向に延在した状態を示している。図2のフィードチャネル3と吸着剤層5の小さな断面を拡大した概略図を本明細書の図3に示す。この吸着剤層は、ミクロ多孔性吸着剤またはポリマー粒子7と、ヒートシンクとして機能する固体粒子(サーマルマス)9と、間隙封止用物質13と、空洞状のメソ孔およびミクロ孔11とからなる。図示のように、ミクロ多孔性吸着剤またはポリマー粒子7が吸着剤層の体積の約60%を占め、サーマルマス9の粒子が体積の約5%を占めている。この組成で、空隙率(フローチャネル)はミクロ多孔性吸着剤またはポリマー粒子が占める体積の約55%である。ミクロ多孔性吸着剤5またはポリマー粒子7の体積は、吸着剤層の体積の約25%から吸着剤層の体積の約98%の範囲であればよい。実用上、熱の制御に用いられる固体粒子9の体積分率は、吸着剤層の体積の約0%から約75%、好ましくは約5%から約75%、一層好ましくは約10%から約60%の範囲になる。間隙封止用物質13は、吸着剤層5における空洞状のメソ孔およびマクロ孔11の体積分率が約20%未満になるように、粒子間に残った所望の量の隙間または空隙を埋めるものである。
【0076】
運動分離(主に拡散制御)を利用したガス分離プロセスに上記のモノリスを用いる場合、ミクロ多孔性吸着剤またはポリマー粒子7が実質的に同じ大きさであると都合がよい。速度論的に制御したプロセスでは、個々のミクロ多孔性吸着剤またはポリマー粒子7の体積の標準偏差が平均粒子体積の100%未満であると好ましい。より一層好ましい実施形態では、個々のミクロ多孔性吸着剤またはポリマー粒子7の体積の標準偏差が平均粒子体積の50%未満である。ゼオライト吸着剤については、粒子の合成に用いる方法で粒度分布を制御することが可能である。また、重力沈降カラムなどの方法を用いて、あらかじめ合成したミクロ多孔性吸着剤粒子を大きさごとに分けることも可能である。大きさが均一のミクロ多孔性吸着剤またはポリマー粒子を、平衡を制御した分離で使用すると好都合なこともある。
【0077】
構造化ミクロ多孔性吸着剤からモノリスを直接形成可能な方法にはいくつかある。たとえば、ミクロ多孔性吸着剤がゼオライトである場合、有効量の固体バインダと、ゼオライトおよび吸着剤と、固体熱制御粒子と、ポリマーとを含有する水性混合物を押し出して、モノリスを作製することができる。固体バインダは、ゼオライトと固体熱制御粒子とを結合するのに用いられるコロイドサイズのシリカまたはアルミナであればよい。固体バインダの有効量は一般に、混合物に用いられるゼオライトと固体熱制御粒子の体積の約0.5から約50%の範囲である。必要があれば、水熱合成技術を用いて後処理ステップでシリカバインダ材料をゼオライトに変換してもよく、その際、常に最終的なモノリスに存在するとはかぎらない。任意に、この混合物にポリマーを加えてレオロジーを制御するとともに、未完成の押出成形品の強度を得るようにしてもよい。押出後のモノリスを窯で焼いて硬化させ(窯では水分が蒸発してポリマーは燃え尽きる)、これによって所望の組成のモノリスが得られる。モノリスの硬化後、吸着剤層5には約20から約40vol.%のメソ孔およびマクロ孔がある。真空含浸など以後のステップで、あらかじめ定められた量の細孔を上述したような間隙封止用物質13で埋めることも可能である。
【0078】
ミクロ多孔性吸着剤からモノリスを直接形成可能なもうひとつの方法に、ポリマーとミクロ多孔性吸着剤の混合物を押し出すことがある。押出プロセスで用いるのに好ましいミクロ多孔性吸着剤は、炭素モレキュラーシーブとゼオライトである。押出プロセスに適したポリマーの非限定的な例として、溶媒を加えなくても押出可能な、エポキシ、熱可塑性プラスチック並びに、シリコーンゴムなどの硬化可能なポリマーがあげられる。これらのポリマーを押出プロセスに用いる場合、得られる生成物は、吸着剤層におけるメソ孔およびマクロ孔の体積分率が低いものであると好ましい。
【0079】
本明細書の図4は、あらかじめ形成したモノリスのフローチャネルの壁面に吸着剤層をコーティングした被覆モノリスの形での本発明の平行チャネル接触器101を示す図である。この図の平行チャネル接触器では、押出プロセスを使って、任意の好適な非吸着剤固体材料からモノリスを形成する。この非吸着剤固体材料は、好ましくは鋼などの金属、菫青石などのセラミックまたは炭素材料である。「非吸着剤固体材料」という語によって、本発明者らは、平行チャネル接触器用の選択的吸着剤として使用しない固体材料を指している。セラミックまたは金属の釉或いはゾルゲルコーティング119は、好ましくは、モノリスのチャネル壁を効果的に気密化するのに有効な量と厚さで適用される。このような釉については、従来の好適な手段を用いてチャネル壁にスラリーをコーティングした後、モノリスを窯で焼いて適用すればよい。
【0080】
もうひとつ、ゾルゲルをチャネル壁に塗布した上で、コーティングの密度を高める条件下で焼く方法もある。真空および圧力含浸技術を使用して、釉またはゾルゲルをチャネル壁に適用することも可能である。この場合、釉またはゾルゲルがモノリス117の細孔構造の中に浸透する。いずれの場合も、チャネルを流れる気体がモノリス本体に容易に入ってしまわないように、釉によってチャネル壁を気密化する。次に、気密化したチャネルの壁に吸着剤層105を均一に適用する。吸着剤層105によってチャネルの開口または穴が小さくなるため、スイング吸着プロセスに用いられるフローチャネル103は、コーティングの内側に残った空洞状のチャネルである。これらのフローチャネル103では、チャネル幅を上記にて定義したようにすることが可能である。吸着剤層105については、任意の好適な方法でフローチャネルの壁面にコーティングまたは層として適用可能である。このような方法の非限定的な例として、スラリーコーティング、スリップコーティング、水熱合成法による成膜、水熱コーティングによる転換、水熱成長などの流体相コーティング技術があげられる。非水熱コーティング技術を用いるのであれば、コーティング溶液には、少なくともミクロ多孔性吸着剤またはポリマー粒子、ポリビニルアルコールなどの増粘剤、伝熱(サーマルマス)固体、任意にバインダを含む必要がある。ただし、モノリス101の本体自体が分離プロセスサイクルの異なるステップで蓄熱と放熱を繰り返して伝熱固体として作用できるため、伝熱固体が必要ないこともある。この場合、熱は吸着剤層105を介してモノリス101本体まで拡散する。ポリビニルアルコールなどの増粘剤を使用するのであれば、この増粘剤は窯でコーティングを硬化させる際に燃え尽きてしまうのが普通である。窯焼コーティングの機械強度を高めるために、コロイダルシリカまたはアルミナなどのバインダを用いると都合がよいこともある。メソ孔またはマクロ孔は一般に、硬化後のコーティング体積の約20から約40%を占める。これに間隙封止用物質を有効量で適用して吸着剤層を使用できる状態にする。本発明者らのいうところの間隙封止用物質の有効量とは、得られるコーティングが、その細孔容積の約20%未満を空洞状のメソ孔およびマクロ孔に含む形で、メソ孔およびマクロ孔を十分に埋めるのに必要な量のことである。
【0081】
水熱合成法による成膜方法を用いるのであれば、使用するコーティング技術は、ゼオライト膜を調製する方法と極めて似たものになり得る。ゼオライト層を成長させるための方法の一例が、本明細書に援用する特許文献28に教示されている。水熱合成で支持体上に成長させたゼオライト層には、メソ孔およびマクロ孔の大きさの亀裂や粒子境界が生じることが多い。これらの細孔の体積は膜厚の約10体積%未満であることが多く、亀裂と亀裂の間に特徴的な距離即ち幅があることも多い。よって、間隙封止用物質を必要とせずに、成膜直後の膜を吸着剤層として直接利用できることもある。成膜直後のゼオライト膜における亀裂および粒子境界の例を、高解像度の走査型電子顕微鏡写真である本明細書の図5および図6に示す。図5のゼオライト膜は、DDRと同形である骨格構造を有するシグマ−1ゼオライトからなる。この膜は厚さ約25マイクロメートルで、幅約100から約300オングストロームの亀裂151がある。亀裂は、膜の表面で容易に目視確認できるものである。図6のゼオライト膜は、支持体上でコロイド状のZSM−5種結晶を用いて厚さ0.5マイクロメートル前後の第1のコーティング層をコーティングし、種結晶で覆った支持体を水熱合成溶液に入れて生成されたMFI膜である。水熱合成ステップでは、コロイド状のZSM−5種結晶が、厚さ約15マイクロメートルのMFI膜の成長の核になった。堆積膜のSi/Al比は約100よりも大きかった。大きさが数百オングストロームの亀裂153と、MFIゼオライト結晶間の隙間155が、顕微鏡写真で明らかである。亀裂および隙間以外にも、結晶間に粒子境界がある。これらの粒子境界は、亀裂構造とつながって、膜の奥のほうにあるゼオライト結晶に分子を運びやすくする。粒子境界の多くは寸法がミクロ孔の範囲であり、いくつかは寸法がメソ孔の範囲である図5および図6の顕微鏡写真から、空洞状のメソ孔およびマクロ孔が膜の表面で体積の極めてわずかな量を埋めていることは自明である。これらの膜の断面画像で、空洞状のメソ孔およびマクロ孔が実際に膜の体積の約7%未満を埋めていることが確認された。
【0082】
本明細書の図7は、TSA用途向けの被覆モノリス201形の本発明の平行チャネル接触器を示す図である。この接触器では、非吸着剤材料からなるあらかじめ形成されたモノリスのチャネルに、吸着剤層がコーティングされている。TSAプロセスまたはRCTSAプロセスを実施する場合、吸着剤の加熱および冷却に使用可能な複数の経路または別々のチャネルが接触器に含まれると好ましい。TSAプロセスまたはRCTSAプロセスでは、吸着剤が熱交換器のチューブ壁にコーティングされた、シェルチューブ型熱交換器と類似の構成で平行チャネル接触器を構成することが可能である。この図では、押出プロセスを用いて、鋼などの金属または菫青石などのセラミック或いは炭素を含む好適な非吸着剤材料からモノリスを形成する。セラミックまたは金属の釉またはゾルゲルコーティング219を塗布して、モノリスのチャネル壁を気密化する。上述したように、このような釉を塗布するには、チャネル壁をスラリーコーティングした後に、焼いて硬化させればよい。ゾルゲルをチャネル壁に塗布した上で、コーティングを高密度化する条件下で焼くことも可能である。上述したように、真空および圧力含浸技術を用いて釉またはゾルゲルを塗布することも可能である。この場合、釉またはゾルゲルがモノリス217の細孔構造に浸透する。いずれの場合も、チャネルを流れる気体がモノリス本体に容易に入ってしまわないように、釉によってチャネル壁を気密化する。また、チャネル壁の気密化前にモノリス217の細孔構造に固体材料を含浸させると望ましいこともある。TSA動作用に、チャネルの行を交互にその両端215で封止する。モノリスの反対側の端で、これらの同じチャネルの行を同じく封止する。チャネル215の封止された行に流れが到達できるように、モノリスには両端に細溝(223および225)が開けられている。モノリスの両端並びにモノリスの中間部221に、封止面219が設けられている。動作時には、チャネルの端並びにモノリスの中間部を封止する方法で、モノリスをモジュールに装着する。チャネルの端を封止するには、金属溶接、ゴムまたはカーボンなどの材料での密閉、無機セメントおよびエポキシなどの接着剤の使用をはじめとして、好適な技術のうちどれを用いてもよい。モジュールについては、加熱または冷却用の流体を細溝223から流入させて細溝225から出すことで、この流体が両端215でチャネルを流れるように構成される。加熱冷却用流体には、モジュールの端側が開いているチャネルを流れる流体との間で熱交換が起こる。モノリスをこのように改変することで、モノリスが熱交換器に変換される。熱交換器を製造または構成可能な方法が他にも多くあることは理解できよう。このような他の方法の非限定的な例として、シェルチューブ型熱交換器、繊維膜熱交換器、印刷回路熱交換器があげられるが、いずれも従来技術において周知である。熱交換器の一方の側で吸着剤層を低体積分率のメソ孔およびマクロ孔で被覆することで、これを本発明に従って用いることが可能である。その際、この例はメソ孔およびマクロ孔を低体積分率で有する吸着剤層を用いて熱交換器をどのようにしてTSAに適したモジュールに変換できるかを示すものである。
【0083】
フィードチャネル203は、チャネル幅が約5から約1,000ミクロン、好ましくは約50から約250ミクロンであればよい。チャネル幅203が50から約250ミクロンの範囲にある場合、吸着剤層205の厚さは約25から約2,500ミクロンの範囲にあると好ましい。直径50ミクロンのフィードチャネル幅203の場合、吸着剤層の厚さの好ましい範囲は25から300ミクロンであり、一層好ましい範囲は50から250ミクロンである。上述した手法を用いて、吸着剤層をモノリスにコーティングすることが可能である。
【0084】
本明細書の図8は、マトリクス材料331に埋設された中空糸からなる実質的に平行なアレイの形の本発明による平行チャネル接触器の概略である。従来のスピニングプロセスと押出プロセスを用いて、多岐にわたる中空糸を直接に形成可能である。図8の接触器は、中空糸301のアレイから形成される。繊維の穴303をフローチャネルとして利用する。これらのフローチャネル303は、上述したようにチャネル幅が約5から約1,000ミクロンであればよく、好ましくは約50から約250ミクロンである。また、上述したように、繊維の壁面は吸着剤層305を含む。チャネル幅303が50から約250ミクロンの範囲にある場合、吸着剤層305の厚さは約25から2,500ミクロンの範囲にあると好ましい。
【0085】
従来技術において周知のさまざまな異なる方法を利用して、吸着剤層305を繊維内に生成することが可能である。たとえば、メソ多孔度の低い中空のポリマー繊維を押出成形することができる。スピニング技術によっては、サーマルアニーリング、ポリマーコーティング、エポキシコーティングまたは間隙封止用物質の充填などの後処理で除去可能なメソ孔およびマクロ孔のある中空糸の生成に使用できるものもある。ポリマーと吸着剤との複合材である中空糸は、スピニングと押出の両方のプロセスで形成可能である。これらのプロセスでは、ポリマー、吸着剤粒子、そして多くの場合は溶媒を含有するドープから繊維を形成することが多い。場合によっては、吸着剤粒子の表面を官能化して、ポリマーマトリクスと吸着剤粒子との間の接着性を高める。メソ孔およびマクロ孔の体積分率が高すぎる場合、サーマルアニーリングを用いる事後処理或いは、有効量のメソ孔およびマクロ孔に間隙封止用物質を充填することで、この体積分率を下げることができる。
【0086】
また、押出によってゼオライトの中空糸を生成することも可能である。これらのプロセスでは、ゼオライトを、低分子量ポリビニルアルコールなどのポリマーまたはオリゴマーの増粘剤と混合する。任意に、水、アルコールまたは液体炭化水素などの溶媒をドープに加えてもよい。また、このドープに添加可能なコロイダルシリカまたはコロイド状アルミナなどのバインダ材料の使用も任意である。アルミナまたはアルミニウムなどの固体粒子をドープに加えることも可能である。その上で、ドープを押し出し、最終的なセラミック体を生成する未熟な状態を作る。この未熟な状態の繊維を窯に入れて焼けば、ゼオライトと、任意にバインダおよび固体粒子とからなる最終繊維が形成される。或いは、未熟な状態の繊維を水熱合成リアクタに入れて、ゼオライトと、任意にバインダおよび固体サーマルマス粒子とからなる最終繊維を生成することも可能である。ゼオライト繊維を生成するためのもうひとつの方法に、焼成ステップで燃え尽きる固体ポリマー繊維にゼオライトコーティングを水熱的に成長させることがある。いずれの場合も、以後のステップで間隙封止用物質を充填することで繊維のメソ多孔度およびマクロ多孔度を標的範囲まで落とすことが可能である。
【0087】
繊維を実質的に平行なアレイに形成して本発明の接触器を形成することが可能である。これを実行するためのひとつの方法に、繊維を長さ方向全体にマトリクス材料325で囲む埋設またはポッティングプロセスを用いることがある。図8のアレイを可視化するために、マトリクス材料の端351を埋設された中空糸の束の面321に沿って透明にしてある。多くの場合、繊維の外側に拡散障壁315として機能する材料をコーティングすると都合がよいことがある。拡散障壁として機能し得る材料の非限定的な例として、スパッタリング蒸着した金属およびセラミック膜、蒸着金属およびセラミック膜、化学気相成長法で形成した金属およびセラミック膜、ポリマーと固体(クレーなど)の被覆複合体、拡散係数の低いポリマーのコーティングがあげられる。拡散障壁として作用するには、コーティングの有効拡散係数が吸着剤層の平均拡散係数の約1/10未満である必要があり、好ましくは吸着剤層の平均拡散係数の約1/1000である。拡散障壁を用いると、フィードチャネル内の気体がフィードチャネルおよび吸着剤層に効果的に取り込まれる。これによって、繊維のまわりに支持用のマトリクスを用いる必要性がなくなり、接触器の質量を減らすとともに、場合によってはプロセスのサイクルタイムを短縮することができる(即ち高速サイクル動作)。
【0088】
本明細書で用いるのに適したもうひとつの製造方法に、中空のガラス繊維、中空のシリカ繊維または中空のポリマー繊維などのあらかじめ製造した繊維の内側に吸着剤をコーティングすることがある。上述したコーティング方法を用いて、あらかじめ製造した繊維の内側に吸着剤層を形成することができる。あらかじめ製造した繊維がガラスまたはシリカ製である場合、最終生成物は拡散障壁315に内蔵される形になる。
【0089】
繊維に拡散障壁がない場合、メソ孔およびマクロ孔を低体積分率で有する吸着剤がマトリクス材料に含まれていると都合がよい。この場合、隣接する繊維間の距離が約5繊維径未満、好ましくは約1.5繊維径未満になるように繊維同士を近接させると都合がよい。繊維の外面に拡散障壁がある場合、繊維束の端351および353だけをマトリクス材料に埋設すると都合がよいことがある。この場合、マトリクス材料だけで繊維を支えなければならず、材料を実質的な気体流が通ることはない。これは、ポリマー、金属またはセラミックまたはこれらの組み合わせで構成できるものである。マトリクスは非多孔性であると好ましく、マトリクス材料に吸着剤を持つという要件を緩和または排除することが可能である。繊維を長さ方向全体にポッティングまたは埋設する場合に比して、繊維間の間隔についての要件もそれほど重要ではなくなり得る。従来技術において周知の好適な方法で、繊維束の端にマトリクス材料を選択的に適用可能である。このような方法の非限定的な例として、ポッティング、埋設、鋳造、電気めっきまたは無電解めっきプロセスがあげられる。繊維の端が詰まるのを防ぐために、マトリクスの適用後に容易に除去できる材料を繊維の端に詰めておいてもよい。容易に除去できる材料の非限定的な例としては、マトリクス材料の適用後に選択的に溶解またはエッチング除去可能なポリマー、金属、塩および無機物があげられる。研削、機械加工、研磨の方法を用いて繊維の端を開くようにしてもよい。繊維の端をポッティングまたは埋設するための他の方法は、中空糸膜モジュールの形成で用いたものと同様である。繊維束の端をマトリクス材料でポッティングする場合、原料ガスの大半が繊維の穴を流れるように接触器を、PSA、RCPSA、RCPPSAまたはPPSAの動作モジュールに配置すると都合がよい。流れが確実に繊維の穴を通るようにするためのひとつの方法に、端351および353のマトリクス材料と、PSA、RCPSA、RCPPSAまたはPPSAモジュールの内側との間に、繊維状のパッキン即ちインラム(inram)を配置することがある。もうひとつの方法として、接触器の端を圧力スイング吸着モジュールの内側に結合することがあげられる。
【0090】
本明細書の図9および図10は、TSAプロセス向けの中空糸接触器の形をした本発明による平行チャネル接触器を示す図であり、吸着剤層405が繊維の壁の一部を含み、中央にフィードチャネル403が設けられている。図10では、接触器401の筐体の外面を透明にしてあり、点線だけが外面の縁を示している。この例で用いる中空糸には、外面に拡散障壁415があり、本明細書の図4で説明した技術を用いて製造可能である。繊維束の端はマトリクス材料417にポッティングまたは埋設されている。このポッティングしたアレイを管状の筐体401の中に封止する。管状の筐体401の端に封止面419が設けられている。筐体の中間部には封止面421も設けられている。管状の筐体の端付近では壁に細溝423および425が開けられており、加熱冷却用の流体が流れるようになっている。
【0091】
動作時には、チャネルの端とモノリスの中間部を封止する方法で、管状の筐体をTSAモジュールまたはRCTSAモジュールに装着する。好適な封止技術のうち、どれを用いてもよい。本発明を実施するにあたって使用可能な封止技術の非限定的な例として、金属溶接、ゴムまたはカーボンなどの材料での密閉、無機セメントおよびエポキシなどの接着剤の使用があげられる。このモジュールについては、加熱または冷却用の流体を細溝423から流入させて細溝425から出すことで、この流体が中空の管状の筐体401の中を流れるように構成可能である。加熱冷却用流体には、モジュールの端側が開いている中空糸を流れる流体との間で熱交換が起こる。このような封止状態で、中空糸からなる平行なアレイを含む管状の筐体401が、TSAプロセスで使用するのに適した熱交換器になる。この繊維には、メソ孔およびマクロ孔を低体積分率で含む吸着剤層405がある。
【0092】
本明細書の図11は、吸着剤材料を含む積層シートから平行チャネルを形成した、本発明による平行チャネル接触器を示す図である。PSA、RCPSA、PPSAまたはRCPPSAプロセスには、ラミネート、シートのラミネートまたは波状シートのラミネートを使用することが可能である。シートのラミネートは従来技術において周知であり、本明細書に援用する特許文献29並びに特許文献30に開示されている。積層された幾何学的構造または幾何学的構造の構成要素に吸着剤をコーティングする場合、どのような好適な液相コーティング技術で吸着剤を塗布してもよい。本発明を実施するにあたって使用可能な液相コーティング技術の非限定的な例として、スラリーコーティング、ディップコーティング、スリップコーティング、スピンコーティング、水熱合成法による成膜および水熱成長があげられる。ラミネートから幾何学的構造を形成する場合、このラミネートは、本発明の吸着剤をコーティング可能であればどのような材料で作られたものであってもよい。コーティングは、材料の積層前におこなってもよく、積層後におこなってもよい。これらのいずれの場合も、接触器の幾何学的形状として用いられる材料に吸着剤をコーティングする。このような材料の非限定的な例として、ガラス繊維、微粉砕ガラス繊維、ガラス繊維クロス、ファイバーグラス、ファイバーグラススクリム、セラミック繊維、金属製の織金網、エキスパンドメタル、エンボスメタル、表面処理材料(表面処理金属を含む)、金属箔、金属メッシュ、カーボンファイバ、セルロース材料、ポリマー材料、中空糸、金属箔、熱交換表面およびこれらの材料の組み合わせがあげられる。コーティングを施した支持体には一般に、退行する2つの主面があり、これらの表面のうちの一方または両方に吸着剤材料をコーティングすることが可能である。コーティングを施した支持体が中空糸からなる場合、繊維周囲にコーティングが延在する。更に、支持用のシートは、あらかじめ大きさを定めた別個のシートであってもよく、材料の連続シートから作製してもよい。支持体と塗布済みの吸着剤または他の材料(乾燥剤、触媒など)とを加えた厚さは一般に、約10マイクロメートルから約2000マイクロメートルの範囲であり、より一層一般には約150マイクロメートルから約300マイクロメートルの範囲である。
【0093】
金属製メッシュの支持体は、PSA、RCPSA、PPSAまたはRCPPSAサイクルを「等温化」して、断熱性の高い条件下で実施するときにプロセスを劣化させる温度のばらつきを小さくする、高熱容量かつ高電導度の望ましい熱特性を提供できるものである。また、金属箔であれば、厚さ寸法を高精度に制御して製造される。金属箔は、特に限定することなく、アルミニウム、鋼、ニッケル、ステンレス鋼またはこれらの合金からなるものであってもよい。従って、必要とされる優れた接着状態で厚さを正確に制御した薄い吸着剤層のある金属箔をコーティングする方法に需要がある。これを実現するためのひとつの方法が水熱合成によるものである。使用するコーティング手順には、上述したようなゼオライト膜を作製する方法と極めて類似したものを用いることが可能である。支持体上に水熱合成で成長させたゼオライト層には、メソ孔およびミクロ孔である亀裂が生じることがある。これらの亀裂の例は、本明細書の図5および図6に示してある。これらの細孔の体積は、膜厚の約10体積%未満であることが多く、亀裂間に特徴的な距離があることも多い。厚い膜コーティングのある金属箔をコーティングするもうひとつの方法に、スリップキャスティングまたはドクターブレード法がある。あらかじめ製造したゼオライト粒子、バインダ(コロイダルシリカまたはアルミナなど)、ポリマー様ポリビニルアルコールなどの増粘剤からなる水性スラリーをたとえば金属箔などの上に流し込み、これを焼いてポリマーを除去するとともにバインダとゼオライトを硬化させる。これで、焼いた後の生成物は、一般に約30から約40体積%の空隙を含む、金属箔上の結合ゼオライト膜となる。好適な吸着剤層を作製するには、以後のステップで結合ゼオライト膜をポリマーでコーティングするか、結合ゼオライト膜の空隙に液体を導入して、空隙を埋めるようにする。ポリマーまたは液体で空隙を埋めた後の最終生成物は、本発明による低メソ多孔度およびマクロ多孔度の要件を満たす吸着剤層である。
【0094】
金属箔にあらかじめ製造したゼオライト結晶またはミクロ多孔性粒子をコーティングするためのもうひとつの方法に、電気泳動析出(EPD)がある。EPDは、厚さが均一な高品質のコーティングを金属製の支持体に適用するための技術である。この方法を用いれば、導電性の支持体に有機および無機の微粒子コーティングを適用することができる。このとき、本明細書に援用するBowie Keeferらの既存の特許文献31(発明の名称「Adsorbent Laminate Structure(吸着剤ラミネート構造)」)に記載されている方法を用いるなどの方法で、あらかじめ製造したゼオライトまたはミクロ多孔性粒子を含むスラリー組成物を電気泳動的に硬質の支持体材料に適用すればよい。
【0095】
接触器の幾何学的形状によっては、コロイド状のバインダ材料を用いて吸着剤を層のチャネル表面に適用するか、或いは吸着剤にコロイド状のバインダを加えたもので幾何学的形状全体を構成し、その全体に複数の平行チャネルを含むことが必要になる。コロイド状のバインダを用いる場合、コロイド状材料に何を選択するかは使用する特定の吸着剤に左右される。バインダとして機能できるおよび/またはゲルを形成するコロイド状材料が好ましい。このようなコロイド状材料としては、限定することなく、コロイダルシリカベースのバインダ、コロイド状アルミナ、コロイド状ジルコニア、コロイド状材料の混合物があげられる。「コロイダルシリカ」とは、粒度が約1から約100ナノメートルの範囲にある不連続の非晶質二酸化ケイ素粒子の安定した分散を示す。アルミナでの表面改質などによって、好適なコロイダルシリカ材料を表面改質してもよい。本明細書で使用するのに適した別のタイプのコロイド状バインダとして、水和ケイ酸マグネシウムアルミニウムであるパリゴルスカイト(アタパルジャイトとしても知られる)などのクレー材料があげられる。また、無機バインダは不活性であってもよい。しかしながら、ゼオライトは不活性材料との自己結合性が低いため、ゼオライト吸着剤と併用するクレーなどの特定の無機バインダについては、in−situでカオリンバインダからゼオライトに変換してもよい。これらの結合構造では、コロイド状粒子間の空隙がメソ孔を形成し、吸着剤粒子間の空隙がメソ孔および/またはマクロ孔を形成する。吸収剤が本発明の空洞細孔容積の要件を満たすように、これらの結合層では間隙封止用物質を適用してメソとマクロ孔の大半を埋めるようにしてもよい。積層構造で活性炭微粒子の結合に用いる有機バインダについては、熱分解させて有用な炭素系吸着剤を形成してもよい。
【0096】
本明細書の図11は、好ましくはステンレス鋼などの耐食性の金属で製造した平らな金属箔509の両面各々に、好ましくはDDRを含むミクロ多孔性吸着剤膜505を水熱的に成長させた、本発明の一実施形態による組立分解図を示している。吸着剤膜505を有する別々の金属箔509を製造して、平行チャネル接触器501を形成する。チャネル幅503があらかじめ定められた大きさになるように、接触器の製造時に適当な大きさのスペーサを金属箔間に挟んでもよい。好ましくは、シート間に実質的に等しい間隔を保つスペーサで、フィードチャネル503の体積の約半分を埋めるようにする。
【0097】
金属箔509の熱容量によって、プロセスの温度偏位(thermal excursion)が制限される。吸着剤でCOを吸着する場合、吸着熱の量だけ熱が放出される。これによって吸着剤膜が温められ、膜が温まるにつれて、その温度が金属箔の温度よりも高くなり、熱が金属箔に拡散してそこに蓄えられる。吸着剤からのCOの脱着は吸熱プロセスであり、吸着熱と等しい量の熱を供給しなければならない。COが脱着されると、膜の温度は金属箔の温度よりも低くなり、金属箔に蓄えられた熱が膜に移動する。吸着剤膜の温度偏位は、実施例1に記載した接触器の寸法とプロセスでは±10℃未満である。
【0098】
吸着剤膜は、個々の吸着剤結晶、メソ孔(粒子境界を含む)、マクロ孔で構成される。この例では、膜の結晶は実質的に同じ大きさである。膜の空洞体積の大半は、特徴的な幅が約200オングストロームのメソ多孔性の亀裂で構成される。これらのメソ多孔性亀裂は、膜全体に実質的に等しく分散されている。メソ孔およびマクロ孔の総体積は、吸着剤膜の総体積の約5vol.%である。
【0099】
例示目的で示したものであり、本発明を限定するものとして解釈されるものではない以下の実施例を参照することで、本発明について一層よく理解することができる。
【実施例】
【0100】
実施例1
本明細書の図11で説明したラミネートシートの平行チャネル接触器を使用して、5つの異なるステップのPSA/RCPSAサイクルを実施し、CO約20vol.%とCH約80vol.%とを含む生成物ストリームを生成する。PSA/RCPSAサイクルのメタンの総回収量を計算したところ、約95vol.%である。本明細書の図12は、本発明において使用するのに適した好ましいPSA/RCPSAサイクルにおける5種類のステップの概略図である。第1のステップ611では、平行チャネル接触器PSA/RCPSAサイクルを高圧の生成物ガス687で加圧する。この加圧によって、平行チャネル接触器内の圧力が上昇し、CO約20vol.%とCH約80vol.%とを含む精製生成物が接触器に充填される。第2のステップ621では、高圧である51気圧(atm)の原料ガス671を平行チャネル接触器に通す。このステップ621で、流れている原料ガス671からDDR吸着剤層でCOを吸着する。精製生成物625は接触器の端から流出する。原料ガス671は、濃度フロントが接触器を進む際に生成物625が平行チャネル接触器から出るような速度で流れる。このフロントよりも前では、ガスの組成は生成物625の組成に近い。フロントよりも後ろでは、ガスの組成は原料671の組成に近い。このフロントが完全に接触器の端を破過する前に、第2のステップ621を停止する。このステップが中断される前に接触器から出る原料の量によって、ある程度生成物の純度が決まる。
【0101】
この時点で、接触器のチャネルに捕捉された原料ガスで接触器をパージするように機能するサイクルの第3のステップ631が開始される。第3のステップ631は、ある意味で、接触器の分圧置換パージとしても作用する。接触器の頂部と底部で弁を開く。CO富化加圧ストリーム633がモジュールの頂部に流入し、構造化平行チャネル接触器のフローチャネル503に元々含まれていた気体が流出する639。モジュールの頂部に供給されるガス633は、原料の圧力(51atm)よりもわずかに高い圧力まで圧縮675された、後のステップ4および5で生成されるCO富化ガスである。接触器の頂部を介して供給されるガスの組成は、97.5vol.%のCOと2.5vol.%のCHとを含むCO除外ストリーム681の組成と実質的に等しい。接触器の底部を出るガスの組成は、原料ガス671の組成(70vol.%のCOと30vol.%のCH)のほうに近い。
【0102】
フローチャネル内のガスがモジュール633に入るガスストリームに置き換わると、組成フロントがモジュールの頂部から底部に移動する。このフロントがモジュールの底部を破過する前または破過した直後に、第3のステップ631を停止して第4のステップ641を開始する。第4のステップ641では、接触器の圧力を中間圧力まで下げ、COの一部を再圧縮用に回収する。この例で説明する設計では、中間圧力は約22atmである。第4のステップにおいて、CO富化ストリーム649が約22atmの圧力でモジュールを出る。このストリームは2つのストリーム679および681に分かれる。ストリーム679はコンプレッサ675に供給され、ストリーム681は約22atmの圧力でプロセスから除外される。プロセスの第3のステップ631で接触器のすすぎに用いられたストリーム633は、コンプレッサ675から出るガスストリーム679で構成される。接触器の圧力が約22atm.の流出口圧力に向かって低下すると、ストリーム679および681の流れも減少する。これらのストリームの流れが初期値の4分の1前後まで低下したら、ステップ4を停止してステップ5を開始する。プロセスの第5のステップ651では、モジュール圧が約5atm.まで低下し、CO富化ストリームが回収される685。任意に、ストリーム圧を約22atmまで上昇させるコンプレッサ677に上記のストリーム685を供給してもよい。続いて、このストリームをストリーム681と合流させ、CO富化ストリーム683は約22気圧の圧力でプロセスから除外される。
【0103】
プロセスの動作並びにCOを回収する圧力を改善するには、一連の均圧ステップで接触器の圧力を下げる多段階プロセスを利用して、第5のステップ651でガスを回収してもよい。これらの均圧ステップからのガスについては、個々のガスストリームとして回収して再圧縮することが可能である。2つの均圧ステップがある例では、CO富化ガスの一部を約12気圧の圧力で回収し、残りを約5気圧で回収する。
【0104】
また、一連の均圧ステップを用いてステップ4 641でモジュールの圧力を下げることも可能である。繰り返すが、各均圧ステップを用いて、ストリーム683でプロセスから除外可能か、再圧縮されてストリーム633を形成可能なガスストリームを形成することが可能である。均圧ステップを用いるのであれば、CO除外ストリームを捕捉する圧力が最大になるように、これを設計すると都合がよい。
【0105】
平行チャネル接触器の性能の予測に用いるモデリングでは、周知の重量取込方法、PVT(圧力、体積、温度)方法、DDR膜における単成分ガス輸送データの解析を用いて測定したCOおよびCHの等温線を利用する。統計的な等温線の形状がCOおよびCHの単成分等温線を最もよく表していることを見いだした。COとCHの実測等温線に最も合うものが、DDRゼオライト骨格の1ケージあたりそれぞれ6分子と5分子の飽和容量になる。これらの値は、COでは5ミリモル/グラム(DDR)の最大吸着量に相当し、CHでは4.16ミリモル/グラム(DDR)に相当する。これらの飽和容量は、最大可能吸着量が液体密度で細孔を満たすCOおよびCHに相当する物理的な予測と一致する。ラングミュア等温線のヘンリー定数に類似した単一のパラメータKで、統計的な等温線の形状が得られる。モデリングに用いられるK値は以下のとおりである。
【数4】

式中、Rはモル気体定数、Tはケルビン温度である。
【0106】
広範囲にわたる条件(飽和容量吸着量の約50%未満)で、統計的な等温線とラングミュア等温線の形状は極めて似通っている。この例で取り上げるプロセスの単純なモデリングでは、統計的な等温線の代わりに等価なラングミュア等温線を用いることが可能である。競争吸着作用のモデリングには、単成分の統計的な等温線から周知の手法で競争吸着等温線を導くことが可能である。
【0107】
本明細書のモデリングで用いるCOおよびCHの単成分Stefan−Maxwell輸送拡散係数は以下のとおりとした。
【数5】

式中、Rはモル気体定数、Tはケルビン温度である。
【0108】
これらの輸送パラメータを特定の温度で評価すると、COとCHの拡散係数には大きな差があり、等温線のほうは差が小さいことが分かる。COとCHの50/50モル混合物から、等温線はCO吸着をわずかに好み(favor)し、DDR結晶へのCOの拡散輸送を劇的に好む。吸着ステップ621およびパージ置換ステップ631のタイムスケールを制御することで、この拡散係数の差を利用してプロセスの選択性を改善することが可能である。これらのタイムステップを制御することで、これらの分子の拡散率の差を利用するCOとCHの運動分離を実現できる。COを天然ガスから除去するのに好ましいクラスの8員環ゼオライトでは、COとCH拡散係数の差が大きくなる。この例は、COおよびCHの運動分離を達成するようチューニング可能な特定のRCPSAサイクルを示すものであるが、他のスイング吸着サイクルも可能である。特定の材料が運動分離を生成する能力の評価に使用できるパラメータに、分離対象となる成分での拡散係数の比があり、拡散係数は意図したプロセスの温度および圧力で評価される。
【数6】

【0109】
COとメタンとを分離する場合、κの値が動作温度で10を上回るように材料を選択すると好ましい。一層好ましくは、κの値が動作温度で25を上回るように材料を選択する。一層好ましくは、κの値が動作温度で50を上回るように材料を選択する。
【0110】
COを天然ガスから除去するのに好ましいクラスの8員環ゼオライト材料の固有の速度論的選択性を利用するために、接触器を形成している結晶が実質的に同じ大きさでなければならない。大きさが大幅に異なると、吸着ステップ621において実質的にCHで満たされてしまうものが生じ、脱着ステップ651でのメタンの損失が大きくなる。従って、プロセスでのメタンの回収量を増やすには、吸着剤層505を形成しているDDR膜における個々の晶子の体積の標準偏差(図11参照)が平均晶子の体積の100%未満であるのが好ましい。一層好ましい実施形態では、吸着剤層505を形成しているDDR膜における晶子の体積の標準偏差が平均晶子の体積の50%未満である。最も好ましい実施形態では、吸着剤層505を形成しているDDR膜における晶子の体積の標準偏差が平均晶子の体積の10%未満である。この例で説明するPSAサイクルのモデル化には、最も好ましい実施形態を選択した。
【0111】
このタイプの吸着剤を用いると、吸着剤の平均結晶サイズによってステップ621および631の時間が設定される。DDRに吸着されるCOには、フィードチャネル503の気体状のCOと平衡状態になるだけの時間があるが、メタンには平衡状態になるだけの時間がないようにタイムステップを選択すると好ましい。接触器内のガスに対して高速拡散経路を有する単一のDDR結晶内で(表面濃度の変化後に)COが平衡に90%近づくための時間は次のとおりである。
【数7】

式中、rは平均DDR結晶半径であり、DCO2は動作温度でのCOの拡散係数である。ステップ621および631の時間が0.5τ90から10τ90の範囲内にあると好ましく、ステップ621および631の時間が1τ90から5τ90の範囲内にあると一層好ましい。モデリングのために、ステップ621および631に1.5τ90のタイムステップを選択した。これで、タイムステップの数値が結晶サイズによって設定される。平均DDR結晶サイズが約0.005μmから約100μmの範囲内にあると好ましい。平均DDR結晶サイズが約0.5μmから約50μmの範囲内にあると一層好ましく、平均DDR結晶サイズが約1μmから約10μmの範囲内にあると最も好ましい。モデリングには、平均DDR結晶サイズ1μmを使用した。
【0112】
吸着剤層に出入りする分子輸送のいくつかの異なる処理を開発し、異なるモデリング概算の結果を比較した。最も厳密な処理では、プロセスのタイムステップごとにフィードチャネルに沿ったすべての点でDDRゼオライト層に出入りする、時間依存性の多成分基礎輸送方程式の解を得た。このモデルの場合、200オングストロームの間隔をあけてチャネルの側面に沿って設けられた複数のフィンとしてDDR膜を理想化した。これらの200オングストロームの間隔によって形成されるメソ孔は、吸着剤層の体積の5%を占めていた。500,000個の点を包含する格子では、この幾何学について時間依存性の基礎輸送方程式の解を得た。プロセスモデリングのブローダウンステップ651では、3つの均圧ステップを用いた。15気圧、10気圧、5気圧での均圧を採用した。吸着ステップでの温度偏位が10℃であることが求められた。精製生成物ストリーム625におけるメタンのモル流量とプロセスに入る原料ストリーム671におけるメタンのモル流量との比として、メタン回収量を計算した。最も厳密な輸送処理を用いるモデルでは、メタン回収量が96%であった。ストリーム681および685の分子を回収したときの平均圧は12.5気圧であることが明らかになった。
【0113】
このモデリング手法では、PSAプロセスのモデル化に従来用いられている線形駆動力(LDF)モデルよりもかなり厳密な解が得られる。最も厳密な解についての情報を利用して、当業者がメタン回収量の計算に容易に利用できる、更に単純なモデルを構築した。吸着ステップ621では、吸着剤層をなすDDR結晶のフィードチャネルにおけるCOとCHの平衡を単純なモデルで別々に処理する。原料温度よりも10℃高い温度でプロセス671に入ってくる気体状の原料とDDRに吸着されるCOとが完全に平衡状態になったら、DDR結晶に吸着されるCOの量は想定される量の80%であるとみなされる。原料温度よりも10℃高い温度でプロセス671に入ってくる気体状の原料とDDRに吸着されるCHとが完全に平衡状態になったら、DDR結晶に吸着されるCHの量は想定される量の1%である。単純なモデルでは、吸着ステップ621終了時にラミネートにてメソ孔およびマクロ孔を満たしているガスは回収されない。単純なモデルでは、ステップ631で用いられるCOパージによって、フィードチャネルに残っているすべてのメタンがストリーム639に送られる。これらの概算値を用いて、プロセスからのメタン回収量を95%と予測する。これは正確なモデルとかなり一致し、このモデルは、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔体積を変化させることによる影響を当業者が評価するための単純な方法となる。
【0114】
任意に、CO除外ストリーム683を貯留する場合、原料のCO分圧の1/10を超える圧力でCOを捕捉するのが好ましい。一層好ましい実施形態では、COを捕捉する際の圧力が原料のCO分圧の4分の1を超える。
【0115】
実施例2
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を5%から10%に上げること以外は、実施例1と同じプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が、95%(実施例1)から92%に落ちることが見いだされている。
【0116】
実施例3
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を5%から15%に上げること以外は、実施例1と同じプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が、95%(実施例1)から88%に落ちることが見いだされている。
【0117】
実施例4
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を5%から20%に上げること以外は、実施例1と同じプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が、95%(実施例1)から85%に落ちることが見いだされている。
【0118】
実施例5
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を5%から25%に上げること以外は、実施例1と同じプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が、95%(実施例1)から81%に落ちることが見いだされている。
【0119】
実施例6
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を5%から30%に上げること以外は、実施例1と同じプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が95%(実施例1)から77%に落ちることが見いだされている。
【0120】
実施例7
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を5%から35%に上げること以外は、実施例1と同じプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が、95%(実施例1)から73%に落ちることが見いだされている。
【0121】
実施例8
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を5%から2.5%に下げること以外は、実施例1と同じプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が95%(実施例1)から97%に上がることが見いだされている。
【0122】
実施例9
原料の仕様を一定に保ち、生成物ストリーム625におけるメタンの純度をCH80%/CO20%からCH90%/CO10%に高めること以外は、実施例1と同じプロセスを繰り返す。これは、ステップ621および631を止める前に原料の流量と組成フロントの破過を可能にする度合いを変えることでなされる。吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率5%で、メタンの予測回収量は94%である。
【0123】
実施例10
原料の仕様を一定に保ち、生成物ストリーム625におけるメタンの純度をCH80%/CO20%からCH90%/CO10%に高めること以外は、実施例1のプロセスに従う。これは、ステップ621および631を止める前に原料の流量と組成フロントの破過を可能にする度合いを変えることでなされる。吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率10%で、メタンの予測回収量は90%である。
【0124】
実施例11
この実施例は、N含有天然ガスストリームから比較的高圧の生成物を生成し、メタン回収量の多い分離プロセスに、本発明による平行接触器を使用することについて示すものである。天然ガスを処理するにあたり、除去すべきNの量は、ガス田での濃度とガスを市場に運ぶ方法(即ち、液化天然ガス対パイプライン)に左右される。この実施例では、N以外に少量(<5%)の不純物(たとえばHOおよび汞化合物)を含有する天然ガスストリームを考慮する。これらの不純物については、最初の処理ステップで従来の分離手法を用いて除去する。本発明の平行接触器に供給されるガスストリームはCHが70%とNが30%の組成である。流入するガスストリームを、圧力100気圧、温度50℃で接触器に供給する。
【0125】
接触器は、上述したタイプの積層された平らなシートで構成されるものであり、本実施例で使用するタイプのシート概略図を本明細書の図11に示す。上述した方法を用いて、Si/Al比が100を上回る厚さ50μmのDDR膜505を厚さ100μmの平らな金属箔509(たとえばステンレス鋼)の両面各々に水熱的に成長させる。このDDR膜505を有する金属箔509をまとめて積層501し、平行チャネル接触器を形成する。積層時、チャネル幅503が50μmになるように、金属箔間にスペーサを配置する。フィードチャネル503の体積のほぼ半分が、シート同士を実質的に等しく50μmずつ離すスペーサで埋まることになる。
【0126】
金属箔509の熱容量によって、プロセスの温度偏位が制限される。DDRでNを吸着する場合、吸着熱の量だけ熱が放出される。これによってDDR膜が温められる。DDR膜は金属箔よりも高い温度まで温められ、熱が金属箔に拡散してそこに蓄えられる。DDRからのNの脱着は吸熱プロセスであり、吸着熱と等しい量の熱を供給しなければならない。Nが脱着されると、DDR膜の温度は金属箔の温度よりも低くなり、箔に蓄えられた熱がDDR膜に移動する。この実施例に記載した接触器の寸法とプロセスでは、DDR膜の温度偏位は±5℃未満であると想定される。Nの吸着熱が(COに比して)小さいため、この昇温は上記実施例1で説明した場合よりも少ない。
【0127】
DDR膜は、個々のDDR結晶、メソ孔(粒子境界を含む)、マクロ孔で構成される。この実施例では、DDR膜の結晶は実質的に同じ大きさである。膜の空洞体積の大半は、特徴的な幅が200オングストロームのメソ多孔性亀裂で構成される。これらのメソ多孔性亀裂は、膜全体に実質的に等しく分散されている。メソ孔およびマクロ孔の総体積は、DDR膜での総体積の2.5%である。
【0128】
この平行チャネル接触器を使用して、5つの異なるステップのPSA/RCPSAサイクルを実施し、2%のNと98%のCHとを含む生成物ストリームを生成する。PSA/RCPSAサイクルのメタンの総回収量を計算したところ、91%である。本明細書の図13に、PSA/RCPSAサイクルにおける5つの異なるステップの概略図を示す。第1のステップ711では、平行チャネル接触器PSA/RCPSAサイクルを高圧の生成物ガス787で加圧する。この加圧によって、平行チャネル接触器内の圧力が上昇し、2%のNと98%のCHとを含む精製生成物が接触器に充填される。第2のステップ721では、高圧である100atmの原料ガス771を接触器に通す。このステップ721で、流れている原料ガス771からDDR吸着剤層でNを除去する。精製生成物725は接触器の端から流出する。原料ガス771は、濃度フロントが接触器を進む際に生成物725が接触器から出るような速度で流れる。このフロントよりも前では、ガスの組成は生成物725の組成に近い。フロントよりも後ろでは、ガスの組成は原料771の組成に近い。このフロントが完全に接触器の端を破過する前に、第2のステップ721を停止する。このステップが中断される前に接触器から出る原料の量によって、ある程度生成物の純度が決まる。
【0129】
この時点で、接触器のチャネルに捕捉された原料ガスで接触器をパージするように機能するサイクルの第3のステップ731が開始される。また、第3のステップ731は、ある意味で、接触器の分圧置換パージとしても作用する。接触器の頂部と底部で弁を開く。N富化加圧ストリーム733がモジュールの頂部に流入し、構造化平行チャネル接触器の(本明細書の図11の)フローチャネル503に元々含まれていた気体が流出する739。モジュールの頂部に供給されるガス733は、原料の圧力(100atm)よりもわずかに高い圧力まで圧縮775された、後のステップ(4および5)で生成されるN富化ガスである。接触器の頂部を介して供給されるガスの組成は、ほぼN除外ストリーム781の組成である。接触器の底部を出るガスの組成は、原料ガス771の組成(30%のNと70%のCH)のほうに近い。
【0130】
フィードチャネル内のガスがモジュール733に入るガスストリームに置き換わると、組成フロントがモジュールの頂部から底部に移動する。このフロントがモジュールの底部を破過する前または破過した直後に、第3のステップ731を停止して第4のステップ741を開始する。第4のステップ741では、接触器の圧力を中間圧力まで下げ、Nの一部を再圧縮用に回収する。この例で説明する設計では、中間圧力は30atmである。第4のステップにおいて、N富化ストリーム749が30atmの圧力でモジュールを出る。このストリームは2つのストリーム779および781に分かれる。ストリーム779のガスはコンプレッサ775に供給され、ストリーム781のガスは30atmの圧力でプロセスから除外される。このプロセスを最適化するにあたり、ストリーム781に流れ込むガスの量を最小限に抑えるステップ741の圧力を選択する。プロセスの第3のステップ731で接触器のすすぎに用いられたストリーム733は、コンプレッサ775から出るガスストリーム779で構成される。接触器の圧力が30atmの流出口圧力に向かって低下すると、ストリーム779および781のフローも減少する。これらのストリームのフローが初期値の4分の1前後まで低下したら、第4のステップを停止して第5のステップを開始する。プロセス751の第5のステップでは、モジュール圧が1.2atmまで低下し、N富化ストリームが回収される785。
【0131】
プロセスの動作並びにNを回収する圧力を改善するには、一連の均圧ステップで接触器の圧力を下げる多段階プロセスを利用して、第5のステップ751でガスを回収してもよい。2つの均圧ステップがある例では、N富化ガスの一部を12気圧の圧力で回収し、残りを1.2気圧で回収する。
【0132】
また、一連の均圧ステップを用いてステップ4 741でモジュールの圧力を下げることも可能である。繰り返すが、各均圧ステップを用いて、ストリーム783でプロセスから除外可能か、再圧縮されてストリーム733を形成可能なガスストリームを形成することが可能である。均圧ステップを用いるのであれば、N除外ストリームを捕捉する圧力が最大になるように、これを設計すると都合がよい。
【0133】
接触器の性能の予測に用いるモデリングでは、周知の重量取込方法、PVT(圧力、体積、温度)方法、DDR膜における単成分輸送データの解析を用いて測定したNおよびCHの等温線を利用した。統計的な等温線の形状がNおよびCHの単成分等温線を最もよく表していることを見いだした。NとCHの実測等温線に最も合うものが、DDRゼオライト骨格の1ケージあたり5分子の飽和容量になる。これらの値は、最大吸着量4.17ミリモル/グラム(DDR)に相当する。これらの飽和容量は、最大可能吸着量が液体密度で細孔を満たすNおよびCHに相当する物理的な予測と一致する。ラングミュア等温線のヘンリー定数に類似した単一のパラメータKで、統計的な等温線の形状が得られる。モデリングに用いられるK値は以下のとおりである。
【数8】

式中、Rはモル気体定数、Tはケルビン温度である。
【0134】
広範囲にわたる条件で、統計的な等温線とラングミュア等温線の形状は極めて似通っている。この例で取り上げるプロセスの単純なモデリングでは、統計的な等温線の代わりに等価なラングミュア等温線を用いることが可能である。競争吸着作用のモデリングには、単成分の統計的な等温線から周知の手法で競争吸着等温線を導くことが可能である。
【0135】
モデリングで用いるNおよびCHの単成分Stefan−Maxwell輸送拡散係数は以下のとおりとした。
【数9】

式中、Rはモル気体定数、Tはケルビン温度である。
【0136】
これらの輸送パラメータを特定の温度で評価すると、NとCHの拡散係数には大きな差があり、等温線のほうは差が小さいことが分かる。NとCHの50/50モル混合物から、等温線はCH吸着をわずかに好むが、DDR結晶へのNの拡散輸送を劇的に好む。吸着ステップ721およびパージ置換ステップ731のタイムスケールを制御することで、この拡散係数の差を利用してプロセスの選択性を改善することが可能である。これらのタイムステップを制御することで、これらの分子の拡散率の差を利用するNとCHの運動分離を実現できる。Nを天然ガスから除去するのに好ましいクラスの8員環ゼオライトでは、NとCH拡散係数の差が大きくなる。この例は、NおよびCHの運動分離を達成するようチューニング可能な特定のRCPSAサイクルを示すものであるが、他のスイング吸着サイクルも可能である。特定の材料が運動分離を生成する能力の評価に使用できるパラメータに、成分ごとの単成分拡散係数の比がある。この比は、意図したプロセスの温度で評価される。
【数10】

何通りかの異なる温度での窒素およびメタン分離用のDDRのκ値を以下の表にあげておく。
【0137】
【表1】

【0138】
を天然ガスから除去するのに好ましいクラスの8員環ゼオライト材料では、κN2/CH4が温度の関数である。このκN2/CH4の値が動作温度で5を上回るように材料を選択すると好ましい。一層好ましくは、κN2/CH4の値が動作温度で20を上回るように材料を選択する。なお一層好ましくは、κN2/CH4の値が動作温度で50を上回るように材料を選択する。
【0139】
を天然ガスから除去するのに好ましいクラスの8員環ゼオライト材料の固有の速度論的選択性を利用するために、接触器を形成している結晶が実質的に同じ大きさでなければならない。大きさが大幅に異なると、吸着ステップ721において実質的にCHで満たされてしまうものが生じ、脱着ステップ751でのメタンの損失が大きくなる。プロセスでのメタンの回収量を増やすには、吸着剤層505を形成しているDDR膜における個々の晶子の体積の標準偏差が平均晶子の体積の100%未満であるのが好ましい。一層好ましい実施形態では、吸着剤層505を形成しているDDR膜における晶子の体積の標準偏差が平均晶子の体積の50%未満である。最も好ましい実施形態では、吸着剤層505を形成しているDDR膜における晶子の体積の標準偏差が平均晶子の体積の10%未満である。この例で説明するPSAサイクルのモデル化には、最も好ましい実施形態を選択した。
【0140】
このタイプの吸着剤を用いると、吸着剤の平均結晶サイズによってステップ721および731の時間が設定される。DDRに吸着されるNには、フィードチャネル503の気体状のNと平衡状態になるだけの時間があるが、CHには平衡状態になるだけの時間がないようにタイムステップを選択すると好ましい。接触器内のガスに対して高速拡散経路を有する単一のDDR結晶内で(表面濃度の変化後に)NまたはCHが平衡に90%近づくための時間は次のとおりである。
【数11】

式中、rは平均DDR結晶半径であり、
【数12】

は動作温度での
およびCHの拡散係数である。外部の物質移動制限がなければ、晶子の異なる大きさについての平衡時間を以下の表のとおりである。
【0141】
【表2】

【0142】
では、ステップ721および731の時間が0.5τ90から10τ90の範囲内にあると好ましく、ステップ721および731の時間が1τ90から5τ90の範囲内にあると一層好ましい。モデリングのために、ステップ721および731に1.5τ90のタイムステップを選択した。これで、タイムステップの数値が結晶サイズによって設定される。平均DDR結晶サイズが0.005μmから100μmの範囲内にあると好ましい。平均DDR結晶サイズが0.5μmから50μmの範囲内にあると一層好ましく、平均DDR結晶サイズが1μmから10μmの範囲内にあると最も好ましい。モデリングには、平均DDR結晶サイズ5μmを使用した。
【0143】
上述したものと類似の単純化したモデリング手法を利用した。吸着ステップ721では、吸着剤層をなすDDR結晶でフィードチャネルにおけるNとCHの平衡を単純なモデルで別々に処理する。原料温度よりも10℃高い温度でプロセス771に入ってくる気体状の原料とDDRに吸着されるNとが完全に平衡状態になったら、DDR結晶に吸着されるNの量は想定される量の80%であるとみなされる。原料温度よりも10℃高い温度でプロセス771に入ってくる気体状の原料とDDRに吸着されるCHとが完全に平衡状態になったら、DDR結晶に吸着されるCHの量は想定される量の1%である。単純なモデルでは、吸着ステップ721終了時にラミネートにてメソ孔およびマクロ孔を満たしているガスは回収されない。また、単純なモデルでは、ステップ731で用いられるNパージによって、フィードチャネルに残っているすべてのメタンがストリーム739に送られる。これらの概算値を用いて、プロセスからのメタン回収量を91%と予測する。これは正確なモデルとかなり一致し、このモデルは、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔体積を変化させることによる影響を当業者が評価するための単純な方法となる。
【0144】
実施例12
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を2.5%から5%に上げること以外は、実施例11のプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が91%(実施例11)から90%に下がることが見いだされている。
【0145】
実施例13
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を2.5%から15%に上げること以外は、実施例11のプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が91%(実施例11)から84%に下がることが見いだされている。
【0146】
実施例14
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を2.5%から20%に上げること以外は、実施例11のプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が91%(実施例11)から81%に下がることが見いだされている。
【0147】
実施例15
原料と生成物の仕様を一定に保ち、吸着剤のメソ孔およびマクロ孔の体積分率を2.5%から25%に上げること以外は、実施例11のプロセスを繰り返す。メタンの予測回収量が91%(実施例11)から78%に下がることが見いだされている。
【0148】
実施例16
この実施例は、ターボエキスパンダーを使用して、メタンの回収量が最適になるウィンドウでPSAを動作可能なようにサワーガス(即ち、HSおよびCO含有天然ガス)を調整することを示すものである。本明細書の図14は、ターボエキスパンダーを用いて、PSA装置で分離されるサワーガスの圧力および温度を設定するプロセススキームを示す。温度100℃で圧力1,500psiのサワーガスストリーム811をガス田から生産し、プロセスに供給する。ストリームのCO含有量は66モル%であり、HS濃度は2モル%である。飽和蒸気圧で水が存在し、重質炭化水素の濃度は2モル%である。重質炭化水素は、炭素数が36と大きいワックス状の種をごくわずかな量で含有する。このストリーム811では、COが速度論的に制御されたPSAプロセスで除去されることになる重質成分の大半をなしている。速度論的に制御されたPSAの吸着剤としてDDRゼオライトを用いるのであれば、ストリーム811のCO分圧からのDDRゼオライトでの吸着量が0.6qを超え、CO等温線の勾配は以下のとおりとなろう。
【数13】

式中、KCO2はCOのヘンリー定数、qはDDRのCOに対する飽和吸着量である。
【0149】
このストリームを一層好ましい動作ウィンドウに持っていくには、ストリーム圧を500psiまで下げるターボエキスパンダー821にストリームを通す。好ましい実施形態では、ターボエキスパンダー821は、放射状に流入するよう設計されている。このプロセスで用いるのに適した放射状流入型タービン設計は、非特許文献6に記載されている。ほぼ等エントロピーでの膨脹時、ガスの温度が大幅に下がり、露点が変化して温度が下がることで、ガスストリームから液体が出てくることもある。放射状流入型タービン設計は、ガスストリームから出てくる液体がターボエキスパンダーの動作の邪魔にならないように動作可能なものである。この例では、ターボエキスパンダーで生成される動力を軸831によって発電装置823に連結する。別の実施形態では、ターボエキスパンダー軸からの動力を発電装置ではなくコンプレッサに連結する。
【0150】
ストリームをターボエキスパンダー821に通す前に、これを任意にプロセス813に送り、粒子またはワックスの一部或いは任意に、重質炭化水素、HSおよび/または水の一部を除去してもよい。ターボエキスパンダーから出てくるストリーム837の絶対温度は、原料ストリーム811のおよそ30%未満であり、ガスと液滴の混合物を含む。次に、ストリーム837を、少なくとも液滴をストリームから除去するプロセスブロック839に送る。液滴の除去は、コアレッシングフィルタ、沈降ドラム、静的遠心分離、電気集塵をはじめとするさまざまな方法で実現可能である。プロセスブロック839は、ストリーム837の温度を上昇させるための設備も含む。プロセスブロック839内でストリームを加熱するための手段には、充填床型熱交換器を含めて、非特許文献6に記載されている多くの種類をはじめとして、シェルチューブ型熱交換器並びに他のタイプの熱交換器などの熱交換器があげられる。或いは、ストリーム837を別途生成した高温のガスストリーム835と混合してもよい。プロセスブロック839に熱交換器を使用する場合、ストリーム881、891、895またはこれらの何らかの組み合わせから、マルチパス熱交換器を用いて熱を抽出すると好ましい。任意に、プロセスブロック839で使用する熱交換器が、任意のストリーム835から熱を抽出できるものであってもよい。一実施形態では、炭化水素と空気または高酸素空気とを燃焼させてストリーム835を生成する。もうひとつの実施形態では、作動流体またはガスと高温の燃焼生成物との間の熱交換によってストリーム835を生成する。ストリーム837の温度を上げて液滴を除去すること以外に、プロセスブロック839は、任意に、重質炭化水素、水蒸気またはHSを気相から除去するようにも構成可能である。この例では、プロセスブロック839を構成して、液滴を除去するとともにストリーム837を90℃の温度まで加熱する。
【0151】
プロセスブロック839からのストリーム871の物理組成は、速度論的に制御されたPSAの吸着剤としてDDRゼオライトを使用する場合に、ストリーム871のCO分圧からのDDRゼオライトでの吸着量が0.5qを超え、CO等温線の勾配が以下のとおりとなるようなものである。
【数14】

式中、KCO2は90℃でのCOのヘンリー定数、qはDDRのCOに対する飽和吸着量である。
【0152】
この動作条件は、ストリーム811ではなく速度論的に制御されたPSAプロセスでのメタンの高回収量に対して一層望ましい範囲にある。PSAユニット841を使用してCOの大半とわずかなHSをストリーム871から除去する。好ましい実施形態では、PSAユニット841は、メソ孔およびマクロ孔の空洞体積分率が10%未満の吸着剤を有する平行チャネル接触器を含む。好ましい実施形態では、接触器のミクロ多孔性吸着剤が8員環ゼオライトであり、PSAユニット841は速度論的に制御されたモードで動作するRCPSAユニットである。好ましい実施形態では、PSAユニット841に供給されるメタンおよび重質炭化水素が90%を超える量でメタン濃縮ストリーム815中に回収される。なお一層好ましい実施形態では、PSAユニット841に供給されるメタンおよび重質炭化水素の95%を超える量がメタン濃縮ストリーム815中に回収される。この例では、メタン濃縮ストリーム815中のメタン対COのモル比が9:1を上回る。最終用途に応じて、メタン濃縮ストリーム815を更に処理または精製して他のプロセスに送ってもよい。PSA841からの高COストリーム881を任意のプロセスブロック851に送って水蒸気を除去することが可能である。
【0153】
任意のプロセスブロック851には、プロセスブロック839の熱交換器に熱を供給する目的で使用される熱交換器の片側を含むことも可能である。ストリーム881中のCOは、最終的にはコンプレッサ829に送られる。コンプレッサ829は、好ましくはターボエキスパンダー821から回収したエネルギで駆動される。この例では、発電装置823によって生成されるエネルギを送電線825経由で送り、833を介してコンプレッサ829と軸連結されたモータ827に動力を与えるようになっている。別の実施形態で上述したように、コンプレッサ829はターボエキスパンダー821と軸連結可能なものである。圧縮作業がゆえに、コンプレッサ829から出るストリーム891の温度はストリーム881の温度よりも高い。CO廃棄/貯留に必要な圧力まで更に圧縮する前に、このストリーム891を冷却すると都合がよいことがある。冷却については、プロセスブロック839の熱交換器に熱を提供する目的で用いられる熱交換器の片側を含む任意のプロセスブロック883で実現可能である。必要があれば、混合ガスの腐食性を下げるためのグリコール脱水ユニットなどの設備をプロセスブロック883に含むことも可能である。CO富化ガスストリーム893の圧力をCO廃棄/貯留に必要なレベルまで高めるために、最終コンプレッサ897を設けておく。CO廃棄/貯留或いは原油増進回収のために、CO富化圧縮ガスストリーム895を地盤に圧入する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的ガス成分および第2のガス成分を含む混合ガスから、前記標的ガス成分を除去する方法であって、
a)前記混合ガスをスイング吸着ガス分離ユニットに送入する工程であって、
前記ガス分離ユニットが、ガス流入口およびガス流出口を含む少なくとも1つの吸着剤接触器を含み、
前記ガス流入口とガス流出口が、空洞状の複数のフローチャネルによって流体連通状態にあり、
前記空洞状のフローチャネルの表面が、前記第2のガス成分に対する前記標的ガス成分の選択性が5を超える吸着剤材料で構成され、
前記接触器の空洞細孔容積の20%未満が、直径20オングストロームより大きく1ミクロン未満の細孔であり、
前記標的ガス成分の少なくとも一部が前記吸着剤材料に吸着されることで、前記標的ガス成分が減少した製品ストリームが得られる工程、
b)前記製品ストリームを回収する工程、
c)吸着されたガスを前記吸着剤材料から脱着させることで、前記標的ガス成分を豊富に含む廃ガスストリームを生成する工程、および
d)前記廃ガスストリームを回収する工程
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記混合ガスが、CO、Hおよび少なくとも1種の他のガス成分を含有する合成ガスであり、
前記少なくとも1種の他のガス成分が、CO、HS、CHおよびNからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的ガスが、CO、HS、Nからなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着剤材料が、ゼオライト、チタノシリケート、フェロシリケート、スタノシリケート、アルミノホスフェートモレキュラーシーブ(AlPO)、シリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブ(SAPO)および炭素モレキュラーシーブからなる群から選択される構造化吸着剤材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤材料が、Si対Al比が1:1から1000:1の8員環ゼオライトを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記8員環ゼオライトが、DDRであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記8員環ゼオライトが、シグマ−1およびZSM−58からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記吸着剤材料が、MFI、フォージャサイト、MCM−41およびベータゼオライトからなる群から選択されるゼオライトを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記吸着剤接触器が、第2の吸着剤材料を含む第2の吸着ゾーンと流体接触している、第1の吸着剤材料を含む第1の吸着ゾーンを含み、
前記第1の吸着剤材料の組成が、前記第2の吸着剤材料の組成とは異なることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の吸着剤材料の、前記混合ガスの前記第2のガス成分に対する前記標的ガス成分の選択性が5より大きく、
前記第2の吸着剤材料の、前記第2のガス成分に対する第3のガス成分の選択性が5より大きく、
前記第2の吸着剤材料は、前記第1の吸着剤材料よりも前記第3のガス成分に対する吸着取込率が高いことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記標的ガス成分がCOであり、前記第2のガス成分がCHであり、前記第3のガス成分がHSであることを特徴とする請求項9〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記標的ガス成分がNであり、前記第2のガス成分がCHであり、前記第3のガス成分がHSであることを特徴とする請求項9〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記吸着剤接触器の空洞細孔容積の15%未満が、直径20オングストロームより大きく1ミクロン未満の細孔であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記吸着剤接触器が、前記吸着剤材料よりも熱吸着能の高いサーマルマス材料を有効量で含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記吸着剤接触器がメソ孔とマクロ孔の両方を含み、
少なくともいくつかの前記メソ孔およびマクロ孔が、前記吸着剤材料の前記メソ孔に侵入できる程度に十分小さいが、ミクロ孔に侵入するには大きすぎる有効サイズの間隙封止用物質で埋められていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記間隙封止用物質が、ポリマー、ミクロ多孔性材料、固体炭化水素および液体からなる群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記吸着剤接触器が、平行チャネル接触器であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記標的ガス成分がHSであり、前記吸着剤材料がスタノシリケートを含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記吸着剤接触器が、第2の吸着剤材料を含む第2の吸着ゾーンと流体接触している、第1の吸着剤材料を含む第1の吸着ゾーンを含み、
前記第1の吸着剤材料の組成が、前記第2の吸着剤材料の組成とは異なることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第1の吸着剤材料の、前記混合ガスの前記第2のガス成分に対する前記標的ガス成分の選択性が5より大きく、
前記第2の吸着剤材料の、前記第2のガス成分に対する第3のガス成分の選択性が5より大きく、
前記第2の吸着剤材料は、前記第1の吸着剤材料よりも前記第3のガス成分に対する吸着取込率が高いことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記標的ガス成分がCOであり、前記第2のガス成分がCHであり、前記第3のガス成分がHSであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記標的ガス成分がNであり、前記第2のガス成分がCHであり、前記第3のガス成分がHSであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記平行チャネル接触器が、
a)ミクロ多孔性吸着剤を含むモノリス、
b)非吸着剤材料から形成されるが、チャネルがミクロ多孔性吸着剤と整列配置されているモノリス、
c)ミクロ多孔性吸着剤を含む中空糸のアレイ、
d)共にミクロ多孔性吸着剤を含む上面と下面を有する積層シート
からなる群から選択される形態であることを特徴とする請求項17〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記空洞状のフローチャネルのチャネル幅が、5から1000ミクロンであることを特徴とする請求項17〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記吸着剤の体積と、前記空洞状のフローチャネルの体積の比が、0.5:1から100:1であることを特徴とする請求項17〜24のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−527750(P2010−527750A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508386(P2010−508386)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/006067
【国際公開番号】WO2008/143820
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】