説明

スキャナ用光源

【課題】簡単に製造することができるとともに、大型になることを回避したうえで照射領域の両端部の照度が照射領域の中間部に比べて小さくなることを抑制する。
【解決手段】スキャナ用光源は、全長に亘って直線状に延びる細長い有機EL素子13を備え、有機EL素子13は、透明電極19、有機EL層20及び対向電極21を備えている。そして、透明電極19と対向電極21との間に有機EL層20が設けられた有機EL素子を発光部27としている。発光部27はその全長が照射すべき領域の長さ以下である。透明電極19と対向電極21との間に電圧が印加された際、発光部27の両端部27aは中間部27bより輝度が高くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナ用光源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿に光を照射して原稿からの反射光をCCD等の光電変換素子(センサ)に取り込み、原稿画像を読み取るスキャナが知られている。そして、このようなスキャナに搭載されるスキャナ用光源は、LED(発光ダイオード)や冷陰極管を使用して、例えば、A4サイズの用紙の縦の長さで帯状の領域の照射を行っていた。
【0003】
また、その他に、スキャナ用光源として、多数のエレクトロルミネッセンス(以下、ELと記載する。)素子を用いたものが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載されたスキャナ用光源は、多数のEL素子を全て、EL素子の長手方向に並べて互いに近接に位置決めした状態で配置している。特許文献1に記載されたスキャナ用光源では、多数のEL素子が間隔を空けてEL素子の長手方向に並べて配置されることにより発光部分に切れ目ができている。そして、このスキャナ用光源では発光部分に切れ目ができることによる発光強度の低下を補償するため、各EL素子の両端部における幅を中間部よりも広く構成している。このように構成することで、スキャナ用光源では、EL素子の中間部より多くの光が各EL素子の両端部から出射するように構成されている。
【特許文献1】特開平9−27886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、スキャナ用光源としてLEDを使用する場合、LEDは点光源であるため多数のLEDを配置して構成するが、各LED間に間隔が存在するため原稿における照度が不均一になる。また、スキャナ用光源として線状光源である冷陰極管を使用する場合、冷陰極管の両端部の輝度が低いため、原稿に対する照度の均一性を向上させるには、冷陰極管の全長を原稿の照射領域より長くする必要があり、スキャナ用光源の大型化につながる。
【0005】
また、発光部を備える細長状のEL素子をスキャナ用光源とした場合、発光部の両端部より外側からは照射光が照射されない。そのため、発光部の全長が原稿に対する照射すべき領域と同じであると、原稿を照明する際に照射領域の両端部における照度は中間部における照度に比べて小さくなる。また、照射領域の両端部における照度が中間部における照度より小さくなることを抑制するために、発光部の全長を原稿に対する照射すべき領域の長さより長くした場合には、スキャナ用光源が大型になるという問題が生じる。
【0006】
特許文献1に記載されたスキャナ用光源では、多数のEL素子から構成されるため、その分だけEL素子を製造するのに手間がかかり、また、多数のEL素子に設けられた電極をそれぞれ電源と配線する際にも手間がかかる。
【0007】
また、特許文献1では、一つのEL素子が全長に亘って直線状に延びる領域の長さ以下となるように構成し、そのEL素子を用いて原稿を照射する点については開示されておらず、そのEL素子を用いた場合に照射領域の両端部の照度が照射領域の中間部における照度に比べて小さくなる問題についての記載もない。
【0008】
本発明は、簡単に製造することができるとともに、大型になることを回避したうえで照射領域の両端部の照度が照射領域の中間部の照度に比べて小さくなることを抑制できるスキャナ用光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、全長に亘って直線状に延びる細長いEL素子を備え、前記EL素子は、照射光を出射するとともに全長が照射すべき領域の長さ以下である発光部を備え、前記EL素子の長手方向において、前記発光部は両端部の輝度が中間部の輝度より高く構成されたことを要旨とする。
【0010】
この発明では、発光部の全長を照射すべき領域の長さより長くしなくとも発光部の両端部の輝度を高くすることで、照射領域の両端部における照度が照射領域の中間部における照度に比べて小さくなることを抑制できる。
【0011】
また、細長い形状のEL素子から構成されるため、複数のEL素子が長手方向に並べられて構成されたスキャナ用光源を製造する場合に比べて製造に手間がかからない。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記EL素子は陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設けられたEL層と、前記陽極に電流を供給する給電部とを備え、前記陽極と接続するとともに前記給電部から前記陽極に供給される電流が流れる電流経路部が形成されており、前記給電部から前記陽極の両端部までの経路の抵抗値は前記給電部から前記陽極の中間部までの経路の抵抗値より小さいことを要旨とする。
【0012】
この発明では、給電部から陽極の両端部に流れる電流経路の抵抗値が給電部から陽極の中間部に流れる電流経路の抵抗値より小さくなるように調整することで、陽極の両端部に供給される電流量が中間部より多くなる。そして、陽極の両端部に供給される電流量が多くなれば、発光部の両端部の輝度を発光部の中間部の輝度より高くすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記EL素子は有機EL素子であることを要旨とする。
この発明では、直流低電圧で発光可能であり、同じ発光量で発光させる場合には無機EL素子より消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単に製造することができるとともに、大型になることを回避したうえで照射領域の両端部の照度が照射領域の中間部の照度に比べて小さくなることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。なお、図1及び図2は、有機EL素子の構成を模式的に示したものであり、図示の都合上、一部の寸法を誇張して分かり易くしているために、それぞれの部分の幅、長さ、厚さ等の寸法の比は実際の比と異なっている。
【0016】
図1(a)に示すように、スキャナ用光源11は、平面視長方形状に形成されたプリント回路基板12と、プリント回路基板12上に実装されている二つの有機EL素子13と、有機EL素子13の両端部をプリント回路基板12に固定する陽極用接続部材14a及び陰極用接続部材14bとから構成されている。
【0017】
プリント回路基板12には、有機EL素子13の両端部と対応するように陽極用端子15及び陰極用端子16が設けられている。陽極用端子15及び陰極用端子16は図示しない外部駆動回路と電気的に接続される。プリント回路基板12には、その短手方向の中央部に照射光の反射光が通過可能に構成された反射光通過部17が設けられている。反射光通過部17は、細長い矩形状の孔によって形成されるとともに、二つの有機EL素子13によって挟まれた箇所に位置している。
【0018】
有機EL素子13は、全長に亘って直線状に延びる細長い矩形状(帯状)に形成されている。図1(b)に示すように、有機EL素子13には、基板18上に、第一電極としての透明電極19、発光層としての有機EL層20、第二電極としての対向電極21が順に積層されている。そして、有機EL層20が水分(水蒸気)及び酸素の悪影響を受けないように、透明電極19、有機EL層20及び対向電極21は、保護膜22で被覆されている。有機EL素子13は、ボトムエミッションタイプに構成されることで光が基板18側から出射するとともに、基板18とは反対側の面がプリント回路基板12と対向するように実装されている。
【0019】
なお、基板18には可視光透過性を有するものが使用され、例えば、ガラス基板が使用される。透明電極19は陽極を構成するとともに、公知の透明な導電性材料(例えば、ITO(インジウム錫酸化物))で形成されている。有機EL層20は、公知の有機EL材料を用いて形成され、有機EL素子13の目的とする発光色に応じて構成されている。この実施形態では、白色発光を行うように構成されている。対向電極21は陰極を構成するとともに、公知の陰極材料、例えば、アルミニウムで形成されている。また、対向電極21は光反射性を有する。保護膜22は公知のパッシベーション膜、例えば、窒化ケイ素等のセラミック膜で構成されている。
【0020】
図2(a)に示すように、透明電極19、有機EL層20、対向電極21は、それぞれ基板18の全長に亘って直線状に延びるように形成されるとともに、有機EL層20は透明電極19と面積が略同じ大きさになるように形成されている。また、対向電極21は透明電極19と短絡するのを防ぐために、有機EL層20よりも面積が小さくなるように形成されている。
【0021】
そして、透明電極19と対向電極21との間に有機EL層20が設けられた有機EL素子13を発光部27としている。発光部27は有機EL素子13の長手方向に沿って延びるとともに、その全長は予め想定されているサイズの原稿を読み取る際に照射すべきである領域の長さと同じとなるように形成されている。また、発光部27はその全長が反射光通過部17(図1(a)参照)の長さと同じに形成されている。
【0022】
透明電極19の長手方向の両端に位置する辺の外側には、それぞれ給電部としての端子部23が形成されている。端子部23は、透明電極19と同一部材で形成されるとともに、接続部24を介して透明電極19と一体に形成されている。
【0023】
接続部24は、透明電極19の長辺全体に接続され、かつ対向電極21より外側となる領域に形成されるとともに、透明電極19の長手方向に沿って延びている。接続部24は、その幅及び高さが一定に形成されている。なお、「接続部24の幅」とは、有機EL素子13の短手方向に沿って延びている接続部24の長さを意味する。そして、接続部24及び端子部23上には、端子部23の接続部24側の辺及び接続部24の透明電極19側の長辺に沿って連続して延びる補助電極25が形成されている。
【0024】
補助電極25は、透明電極19より体積抵抗率が低い材料で形成され、この実施形態では対向電極21と同じ材料で形成されている。補助電極25は、その高さが一定で、透明電極19の両端部(発光部27の両端部27a)と対応する部位が幅広部25aとして形成されている。幅広部25aは、その幅が幅広部25aの間の部位、すなわち、透明電極19の中間部と対応する部位より大きく形成されるとともに、幅広部25aの幅方向における断面積は、補助電極25のうち透明電極19の中間部と対応する部位の幅方向における断面積より大きくなっている。なお、接続部24及び補助電極25は保護膜22によって被覆されるとともに、端子部23から透明電極19に供給される電流が流れる電流経路部として構成されている。そして、端子部23と端子部26との間に直流駆動電圧が印加された際には、補助電極25の方が接続部24より電流が流れやすいため、端子部23から供給された電流は主に補助電極25から接続部24を通って透明電極19に流れ込む経路を通り、接続部24から透明電極19に流れ込む経路を通る電流は僅かである。
【0025】
図2(a)及び(b)に示すように、対向電極21の長手方向の両端に位置する辺の外側であって、基板18上には端子部26が形成されている。端子部26は、対向電極21の一部が有機EL層20の外側にまで延出した電極延出端部21aと接続されるとともに、透明電極19及び端子部23と同一材料で形成されている。
【0026】
また、図2(a)に示すように、有機EL素子13の第1端部側(図2における右側端部)における端子部23,26は、有機EL素子13の長手方向(図2(a)で示す矢印Y1の方向)と直交する方向において互いに離間した状態で並んでいる。また、有機EL素子13の第2端部側(図2における左側端部)における端子部23,26は、有機EL素子13の長手方向と直交する方向において互いに離間した状態で並んでいる。なお、図2(a)は保護膜22を省略して、対向電極21側から有機EL素子13を見た模式図である。
【0027】
図1(a)に示すように、陽極用接続部材14a及び陰極用接続部材14bは配線部を有するフレキシブルプリント基板から構成されている。陽極用接続部材14aは、図示しないACF(異方性導電フィルム)を介して端子部23と陽極用端子15とを電気的に接続している。陰極用接続部材14bは、図示しないACF(異方性導電フィルム)を介して端子部26と陰極用端子16とを電気的に接続している。
【0028】
次に、前記のように構成されたスキャナ用光源11をスキャナの照明装置に搭載した場合の作用を説明する。
図3に示すように、スキャナ28は、原稿等が載置されるガラス板29を備えており、ガラス板29の下方に設けられた照明装置30と、照明装置30から照射されてガラス板29上に載置された原稿Pで反射された光を受光するセンサ31とを備えている。照明装置30及びセンサ31は、図示しない移動手段によって副走査方向(図3における紙面と垂直方向)に移動(走査)可能に構成されている。スキャナ28は動作を開始すると、照明装置30から出射される照射光で原稿Pの読み取り領域(照射領域)を照射し、原稿で反射される光をセンサ31で受光し、反射される光の強弱によって、原稿Pの読み取り領域(照射領域)の情報を読み取る。そして、スキャナ28は照明装置30とセンサ31とを一体的にガラス板29に沿って副走査方向に走査することにより、原稿Pの全体を読み取る。
【0029】
スキャナ28が動作して照明装置30から照射光を出射する時、スキャナ用光源11には、外部駆動回路から接続部材14a,14bを介して端子部23と端子部26との間に電圧が印加される。端子部23と端子部26との間に電圧が印加されると、有機EL素子13の両側に位置する端子部23から電流経路部としての補助電極25及び接続部24を介して透明電極19、有機EL層20、対向電極21へと電流が流れる。この時、読み取り領域(照射領域)の中間部X1に対する照明は、発光部27の中間部及び発光部27の中間部の両側から出射された照射光によって行われる。また、読み取り領域(照射領域)の両端部X2に対する照明は、発光部27の両端部27a及び発光部27の両端部27aより内側から出射された照射光によって行われる。
【0030】
ここで、端子部23に供給された電流は、主に補助電極25から接続部24を通って透明電極19に供給される。そして、補助電極25の幅広部25aは中間部より幅広であるため、端子部23から補助電極25の両端部及び接続部24を通って透明電極19に供給される電流の経路の抵抗値は、端子部23から補助電極25の中間部及び接続部24を通って透明電極19に供給される電流の経路の抵抗値より小さく設定されている。すなわち、電流は端子部23から補助電極25の幅広部25a及び接続部24を通って透明電極19に至る経路を流れ易いため、透明電極19の両端部には多くの電流が供給される。そのため、有機EL素子13の長手方向において、発光部27の両端部27aにおける輝度は発光部27の中間部27bにおける輝度より高くなり、読み取り領域(照射領域)の両端部X2における照度は、読み取り領域(照射領域)の中間部X1の照度と同じになり、原稿Pに対する照度が不均一になることを抑制できる。したがって、センサ31は読み取り領域(照射領域)で反射された光の強弱を支障なく検知することができる。
【0031】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)有機EL素子13は、全長に亘って直線状に延びる細長い矩形状に形成されている。そして、有機EL素子13の発光部27は全長が照射すべき領域の長さと同じであり、透明電極19と対向電極21との間に直流駆動電圧が印加された際、有機EL素子13の長手方向において、発光部27の両端部27aの輝度は、発光部27の中間部27bの輝度より高くなる。したがって、発光部27の全長を照射すべき領域の長さより長くしなくとも、読み取り領域(照射領域)の両端部X2の照度が読み取り領域(照射領域)の中間部X1に比べて小さくなることを抑制でき、スキャナ28の読み取りに支障が生じることを抑制できる。
【0032】
(2)スキャナ用光源11は細長い形状の有機EL素子13を備えている。したがって、多数のEL素子を一直線状に並べて光源を構成する場合に比べて製造に手間がかからない。
【0033】
(3)給電部としての端子部23から透明電極19の両端部までを流れる電流の経路の抵抗値は、端子部23から透明電極19の中間部までを流れる電流の経路の抵抗値より小さい。したがって、透明電極19の両端部に供給される電流量が多くなることで、発光部27の両端部27aの輝度を発光部27の中間部27bの輝度より高くすることができる。
【0034】
(4)スキャナ用光源11には有機EL素子13が用いられている。したがって、直流低電圧で発光可能であり、同じ発光量で発光させる場合に無機EL素子より消費電力を低減することができる。
【0035】
(5)細長い矩形状の有機EL素子13に有機EL素子13の両側に位置する端子部23から電流が供給される。したがって、有機EL素子13の片側から電流を供給する場合に比べて発光部27の両端部27aを等しい輝度にすることが容易にできる。
【0036】
(6)有機EL層20は白色発光を行うように構成されている。したがって、センサ31としてカラーセンサを使用すれば、カラーの画像情報を取り込むことができる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態を図4にしたがって説明する。なお、第2実施形態は有機EL素子の構成が第1実施形態と異なっており、第1実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0037】
図4(a)に示すように、有機EL素子32は、基板18上に第一電極としての透明電極19と、有機EL層20と、第二電極としての対向電極21とが順に積層されるとともに、透明電極19と対向電極21との間に有機EL層20が設けられた有機EL素子を発光部27としている。また、有機EL素子32の片側の端部(図4(a)における右側の端部)のみに、透明電極19と電気的に接続する給電部としての端子部23と、対向電極21と電気的に接続する端子部26とが設けられている。透明電極19のうち反射光通過部17から遠い側で、対向電極21より外側となる領域に、端子部23から透明電極19に供給される電流の経路となる接続部24が設けられている。そして、接続部24上及び端子部23上の一部には補助電極33が設けられている。補助電極33は、透明電極19の長手方向に沿って一直線状に延びるとともに一定の幅に形成されている。
【0038】
図4(a)及び(b)に示すように、透明電極19と補助電極33との間には、有機EL層20側の一部であって、透明電極19の中間部全体と対応するように高抵抗部34が設けられている。なお、高抵抗部34は透明電極19の両端部と対応する部位には存在していない。
【0039】
図4(a)に示すように、高抵抗部34は、有機EL素子13の長手方向に沿って延びるとともにその幅が一定に形成されている。高抵抗部34には透明電極19よりも体積抵抗率の高い材料が用いられ、この実施形態では、有機EL層20が用いられている。有機EL層20と高抵抗部34とが同じ材料の場合、有機EL層20と高抵抗部34とが連続するように形成することができる。なお、図4(a)は保護膜を省略し対向電極21側から有機EL素子32を見た模式図である。
【0040】
ここで、電流経路部は、接続部24、高抵抗部34、及び補助電極25によって構成され、端子部23から供給された電流は主に補助電極25、接続部24を通って透明電極19に流れ込む経路を通り、補助電極25、高抵抗部34、接続部24を通って透明電極19に流れ込む経路を通る電流は僅かである。そして、補助電極33のうち透明電極19の両端部と対応する部位では、高抵抗部34が設けられていない分だけ透明電極19の中間部と対応する部位より体積が大きくなっている。したがって、端子部23から透明電極19の両端部までの経路の抵抗値は、端子部23から透明電極19の中間部までの経路の抵抗値より小さくなる。このため、端子部23と端子部26との間に直流駆動電圧を印加した際、透明電極19の両端部には透明電極19の中間部に比べて電流が流れ易いため、発光部27の両端部27aにおける輝度は、発光部27の中間部27bの輝度より高くなる。
【0041】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(7)高抵抗部34は透明電極19の中間部全体と対応する部位に設けられている。補助電極33のうち透明電極19の両端部と対応する部位では、透明電極19の中間部と対応する部位より高抵抗部34が設けられていない分だけ体積が大きくなっている。したがって、端子部23から透明電極19の両端部までの経路の抵抗値は端子部23から透明電極19の中間部までの経路の抵抗値より小さく、発光部27の両端部27aの輝度は発光部27の中間部27bの輝度より高くなる。
【0042】
(8)高抵抗部34は有機EL層20と同じ材料で形成されている。したがって、有機EL素子32製造時において、高抵抗部34と有機EL層20とを同時に形成することができ、有機EL素子32製造時における工数を減らすことができる。
【0043】
実施の形態は、前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 第1実施形態において、端子部23,26は、有機EL素子13の長手方向両端部に限らずどの部分に設けてもよい。例えば、端子部23,26を有機EL素子13の長手方向中間部に設けてもよい。この場合、発光部27の輝度分布が中間部27bに比べて両端部27aで高くなるように構成するために、補助電極25の幅広部25aの幅と補助電極25の中間部の幅との差がより大きくなるように補助電極25の幅広部25aの幅を大きくしてもよい。
【0044】
○ 第2実施形態において、透明電極19の中間部と対応する部位に高抵抗部34を設けるのならば、補助電極33に沿って不連続な高抵抗部34を設けてもよい。高抵抗部34を不連続に構成しても、補助電極33のうち、透明電極19の両端部と対応する部位は透明電極19の中間部と対応する部位より体積が大きく形成される。したがって、端子部23から透明電極19の両端部までの経路の抵抗値を、端子部23から透明電極19の中間部までの経路の抵抗値より小さくすることができる。
【0045】
○ 第2実施形態において高抵抗部34を形成する材料は有機EL層20と同じ材料である場合に限らず、体積抵抗率が透明電極19よりも高い材料であればよい。なお、高抵抗部34を形成する材料が有機EL層20でない場合は、高抵抗部34と有機EL層20とは別々に形成される。また、体積抵抗率が透明電極19よりも高い材料からなる高抵抗部34を用いる代わりに絶縁体を用いてもよい。
【0046】
○ 第2実施形態において、高抵抗部34と有機EL層20とは連続していなくともよく、有機EL層20と高抵抗部34との間に所定の間隔を空けて形成してもよい。
○ 発光部27の両端部27aにおける輝度を発光部27の中間部27bにおける輝度より高くする方法を変更してもよい。例えば、透明電極19の中間部と、透明電極19の両端部とにそれぞれ別々の端子部を設け、外部駆動回路が各端子部に別々に電流を供給できるように外部駆動回路と端子部とを電気的に接続する。そして、外部駆動回路から透明電極19の両端部に供給する電流量を透明電極19の中間部に供給する電流量より多くすることで発光部27の両端部27aにおける輝度を高くしてもよい。また、外部駆動回路から出力する電流量は一定にしたうえで各端子部と外部駆動回路とを電気的に接続する経路上に抵抗を設け、透明電極19の両端部に供給される電流の経路上には、透明電極19の中間部に供給される電流の経路上に設けられた抵抗より小さい抵抗を設けてもよい。このように構成すれば、透明電極19の両端部に供給される電流量は、透明電極19の中間部に供給される電流量より多くなるため、発光部27の両端部27aにおける輝度を発光部27の中間部27bにおける輝度より高くすることができる。
【0047】
○ 発光部27の中間部27bにおいて密な複数の非発光部を設けて、発光部27の両端部27aにおける輝度を発光部27の中間部27bにおける輝度より高くしてもよい。なお、非発光部は、当該部分に第一電極としての透明電極19を設けないことで形成される。非発光部は、有機EL素子13を外部から眺めた際に、非発光部が肉眼で確認できない程度の大きさにすることが好ましい。なお、非発光部は透明電極19を設けない部分を形成することで構成する以外にも、有機EL層20を設けない部分を形成しても、対向電極21を設けない部分を形成しても、電極と有機EL層20との間に絶縁物を設けても構成することができる。
【0048】
○ 接続部24の幅、長さ、厚さの3要素のうち少なくとも一つの要素を変更してもよい。例えば、接続部24の幅を変えずに長さ及び厚さを変更してもよいし、長さを変えずに幅及び厚さを変更してもよいし、厚さを変えずに幅及び長さを変更してもよい。あるいは幅、長さ、厚さの全ての要素を変更したりしてもよい。なお、「接続部24の長さ」とは、接続部の幅方向と直交する方向の接続部の長さを意味する。
【0049】
○ 接続部24は透明電極19の長辺全体と接続しなくともよい。例えば、接続部24に透明電極19側の長辺から透明電極19の短手方向に沿って延びるスリットを複数形成して、接続部24が透明電極19の長手方向において透明電極19の長辺と断続的に接続するように構成してもよい。
【0050】
○ 第1及び第2の実施形態では、全長が照射すべき領域の長さと同じになるように発光部27が形成されていたが、これに限らず、全長が照射すべき領域の長さよりも短く形成されていてもよい。この場合、原稿Pと発光部27との間隔を、発光部27から出射される光が原稿Pを照明可能な広さになる程度空けることが好ましい。
【0051】
○ 透明電極19を形成する材料は、ITOに限らず、対向電極21よりも体積抵抗率の高い材料で電気伝導性を有する材料であればよい。例えば、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ZnO(酸化亜鉛)、酸化スズ等の金属酸化物を用いてもよい。
【0052】
○ 対向電極21を形成する材料は、アルミニウムに限らない。例えば、金、銀、銅、クロム等の金属やこれらの合金を用いてもよい。
○ 対向電極21は可視光に対する反射性を有していなくてもよい。
【0053】
○ 補助電極25を形成する材料はアルミニウムである場合に限らず、電気伝導性を有しており、体積抵抗率が接続部24より低い材料であればよい。
○ 接続部24は透明電極19と同じ材料で形成されている場合に限らず、電気伝導性を有しており、補助電極25に用いられるような金属材料よりも体積抵抗率の高い材料であればよい。例えば、透明電極19にITOを用いた場合、接続部24にIZO、ZnO、酸化スズ等を用いてもよい。
【0054】
○ 接続部24上に設けられた補助電極25を省略してもよい。
○ 有機EL層20は、白色発光をする構成に限らず、赤色、緑色、青色、黄色などの単色光、もしくはそれらを組み合わせて発光する構成であってもよい。
【0055】
○ 透明電極19、有機EL層20、対向電極21、パッシベーション膜等は、それぞれ公知の薄膜形成法を使用して形成される。
○ 基板18はガラス基板を使用する構成に限らない。有機EL素子がボトムエミッション型の場合は、基板18が透明であればよく、アクリル樹脂等の透明樹脂を使用してもよい。
【0056】
○ 有機EL素子はボトムエミッション型の構成に限らず、トップエミッション型の構成であってもよい。例えば、有機EL素子がトップエミッション型の場合は、シリコン基板や金属基板等の不透明な基板を使用してもよい。トップエミッション型の場合に透明な基板を使用した場合は、例えば、基板上に反射部材を設ける。
【0057】
○ スキャナ用光源11が備える有機EL素子13の数を変更してもよい。例えば、プリント回路基板12上に実装する有機EL素子13の数を一つにしてもよい。この場合、反射光通過部17を省略し、スキャナ用光源11が読み取り領域(照射領域)で反射された光の通路上に位置しないようにスキャナ用光源11を配置するとよい。また、プリント回路基板12上に有機EL素子13を三つ以上実装して、複数の有機EL素子13を短手方向に沿って並列してもよい。
【0058】
○ 有機EL素子が実装されるプリント回路基板12を省略し、有機EL素子13だけからなるスキャナ用光源11を照明装置30に搭載してもよい。
○ EL素子は、有機EL素子に限らず、無機EL素子に適用してもよい。
【0059】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
○ 前記発光部は、前記照射すべき領域の両端部における照度が前記照射すべき領域の中間部における照度と等しくなる照射光を出射可能に構成されている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたスキャナ用光源。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は第1実施形態におけるスキャナ用光源の概略平面図、(b)は(a)のA−A線拡大模式断面図。
【図2】(a)は有機EL素子の模式平面図、(b)はB−B線部分断面図。
【図3】スキャナの部分模式図。
【図4】(a)は第2実施形態における有機EL素子の模式平面図、(b)は(a)のC−C線部分断面図。
【符号の説明】
【0061】
11…スキャナ用光源、13,32…EL素子としての有機EL素子、19…陽極としての透明電極、20…EL層としての有機EL層、21…陰極としての対向電極、23…給電部としての端子部、24…接続部、25,33…補助電極、27…発光部、27a…端部、27b…中間部、28…スキャナ、34…高抵抗部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全長に亘って直線状に延びる細長いEL素子を備え、
前記EL素子は、照射光を出射するとともに全長が照射すべき領域の長さ以下である発光部を備え、
前記EL素子の長手方向において、前記発光部は両端部の輝度が中間部の輝度より高く構成されたスキャナ用光源。
【請求項2】
前記EL素子は陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設けられたEL層と、前記陽極に電流を供給する給電部とを備え、
前記陽極と接続するとともに前記給電部から前記陽極に供給される電流が流れる電流経路部が形成されており、前記給電部から前記陽極の両端部までの経路の抵抗値は前記給電部から前記陽極の中間部までの経路の抵抗値より小さい請求項1に記載のスキャナ用光源。
【請求項3】
前記EL素子は有機EL素子である請求項1又は請求項2に記載のスキャナ用光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−258317(P2008−258317A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97479(P2007−97479)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】