説明

スキン・ディテール回路及び方法

【課題】ズーム位置がWIDE側でも肌色部分がぼけないように、使用するレンズに応じて、スキン・ディテールの度合いをズーム位置に連動させて補正し、安定した解像度を取得するスキン・ディテール回路及び方法を提供する。
【解決手段】ズームレンズ1及びプリズム2を通じて取得した光信号をR−CCD3,G−CCD4,B−CCD5で光電変換することによって、撮像信号を生成する。肌色成分抽出回路は、撮像信号処理回路6,7,8によって処理された撮像信号から肌色成分を抽出する。レンズ制御回路11は、ズームレンズ1のズーム位置に応じた信号を出力する。SKIN DTL利得制御回路12は、ズーム位置に応じた信号に基づいて、輪郭強調信号の利得を制御する。DTL信号作成回路10は、利得に基づいて輪郭強調信号を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズを有するテレビカメラなどにおいて輪郭強調された映像信号を出力するに際し、画面全体のディテール量(輪郭強調の度合い。以後、「DTL量」と称する。)を変更することなく肌色部分DTL量だけ減少させるスキン・ディテール回路及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビカメラでは、撮像して得られた映像信号に対して、輪郭強調信号を作成し、これらの信号を加算して出力する。これは、解像度を向上させることを目的としており、特に放送用テレビカメラでは周知の技術である。輪郭強調信号は、撮像素子から取得した映像信号に対して、撮像した物の輪郭成分を、微分操作などにより抽出して作成する。
【0003】
また、スキン・ディテールは、画面全体のDTL量を変更することなく肌色部分DTL量だけ減少させる機能である。これによって、人の顔の皺、黒子等が輪郭信号で強調される事態を回避し、更に滑らかな表現を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2582701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テレビカメラでは、撮影にズームレンズを使用する。ズーム位置がTELE側で人物のアップを撮っているときにはスキン・ディテール機能は有効であるが、WIDE側にあるときには肌色部分がぼけてしまい、解像度が劣化した画面となる。
【0005】
本発明の目的は、ズーム位置がWIDE側でも肌色部分がぼけないように、使用するレンズに応じて、スキン・ディテールの度合いをズーム位置に連動させて補正し、安定した解像度を取得するスキン・ディテール回路及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるスキン・ディテール回路は、
ズームレンズを通じて取得した光信号を固体撮像素子で光電変換することによって、撮像信号を生成し、肌色補正を伴う輪郭強調信号を前記撮像信号に加算することによって、画面全体のディテール量を変更することなく肌色部分のディテール量だけ減少させるスキン・ディテール回路であって、
前記撮像信号から肌色成分を抽出する抽出手段と、
前記ズームレンズのズーム位置に応じた信号を出力する信号出力手段と、
前記ズーム位置に応じた信号に基づいて、前記輪郭強調信号の利得を制御する利得制御手段と、
前記肌色成分及び前記利得に基づいて、前記輪郭強調信号を作成する輪郭強調信号作成手段とを具えることを特徴とする。
【0007】
本発明によるスキン・ディテール方法は、
ズームレンズを通じて取得した光信号を固体撮像素子で光電変換することによって、撮像信号を生成し、肌色補正を伴う輪郭強調信号を前記撮像信号に加算することによって、画面全体のディテール量を変更することなく肌色部分のディテール量だけ減少させるスキン・ディテール方法であって、
前記撮像信号から肌色成分を抽出する抽出ステップと、
前記ズームレンズのズーム位置に応じた信号を出力する信号出力ステップと、
前記ズーム位置に応じた信号に基づいて、前記輪郭強調信号の利得を制御する利得制御ステップと、
前記肌色成分及び前記利得に基づいて、前記輪郭強調信号を作成する輪郭強調信号作成ステップとを具えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ズームレンズを通じて取得した光信号を固体撮像素子で光電変換することによって、撮像信号を生成し、肌色補正を伴う輪郭強調信号を撮像信号に加算することによって、画面全体のディテール量を変更することなく肌色部分のディテール量だけ減少させるに際し、撮像信号から肌色成分を抽出し、ズームレンズのズーム位置に応じた信号を出力し、ズーム位置に応じた信号から輪郭強調信号の利得を制御し、肌色成分及び利得に基づいて輪郭強調信号を作成する。
【0009】
このようにズーム位置に応じた信号から輪郭強調信号の利得を制御することによって、ズーム位置がWIDE側でも肌色部分がぼけないように、使用するレンズに応じて、スキン・ディテールの度合いをズーム位置に連動させて補正し、安定した解像度を取得することができる。
【0010】
好適には、前記ズーム位置に応じた信号に基づいて利得補正係数を導出する。これによって、幅広いズーム位置による利得補正係数の算出が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明によるスキン・ディテール回路及び方法の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明によるスキン・ディテール回路の実施の形態を示す図である。このスキン・ディテール回路は、三板式のCCDカメラに適用したズーム連動型のものであり、ズームレンズ1と、プリズム2と、固体撮像素子のR−CCD3,G−CCD4,B−CCD5と、撮像信号処理回路6,7,8と、肌色成分抽出回路9と、輪郭強調(DTL)信号作成回路10と、レンズ制御回路11と、スキン・ディテール(SKIN DTL)利得制御回路12と、加算器13,14,15と、出力端子16,17,18とを具える。
【0012】
プリズム2は、ズームレンズ1からの光信号を3色(RGB)に分解する。撮像信号処理回路6,7,8は、例えば相関二重サンプリング回路を有し、R−CCD3,G−CCD4,B−CCD5からの出力から撮像信号を出力する。肌色成分抽出回路9は、取得した撮像信号から肌色成分を抽出し、肌色成分のときには輪郭強調を減じるように制御信号を出力する。
【0013】
DTL信号作成回路10は、微分操作などによりR,G及びB信号から輪郭強調信号を作成し、肌色成分抽出回路9からの制御信号及びSKIN DTL 利得制御回路12からの制御信号により、輪郭強調信号のDTL量(強調量)を減少させて出力する。
【0014】
レンズ制御回路11は、焦点合わせやズームのようなズームレンズ1の制御を行うとともに、ズーム信号の度合い(ズーム位置)に応じた値であるズームアンサー値を出力する。SKIN DTL利得制御回路12は、レンズ制御回路11からのズームアンサー値によりスキン・ディテール量の補正係数を算出し、DTL信号作成回路10に対する制御を行う。
【0015】
加算器13,14,15は、撮像信号処理回路6,7,8の出力に輪郭強調信号を加算する。出力端子16,17,18は、輪郭強調された映像信号を出力する。
【0016】
ここで、肌色補正を伴う輪郭強調信号の利得制御について説明する。各レンズに対して、ズーム位置を0〜100%としたとき、6.25%おきに16等分した17ポイントについて、スキン・ディテール量が最適となるように波形モニタで確認しながら補正係数を決定する。
【0017】
×15レンズのズーム位置100%(TELE端)を基準としてスキン・ディテールを効かせる。ズーム位置を6.25%おきにWIDE側に移動していき、各ズーム位置において、スキン・ディテール量が最適となるように倍率を決定する。
【0018】
WIDE側に移動するに従ってスキン・ディテールを効かせないようにするので、倍率は1より小さくなる。このようにして、ズーム位置0%〜100%で6.25%ごとの補正係数を決定する。
【0019】
×21、×24及び×70レンズについても同様の操作を行い、決定した結果を表1に示す。表1に示した結果を、ルックアップテーブルとしてメモリ素子に記憶しておく。この際にズームアンサー値も調べておく。
【0020】
【表1】

【0021】
ズーム位置に対する補正係数を、ルックアップテーブルから求める。ズーム位置が表1にない場合には、以下の演算式(1)から求める。
κ={Kw×(Zt−χ)+Kt×(χ―Zw)}/(Zt−Zw) (1)
この演算式(1)は、ズームアンサー値をχとしたとき、補正係数κを求める式であり、Kt,Kwをそれぞれ補正係数とし、Zt,Zwをそれぞれズームアンサー値とする。なお、Zw≦χ≦Ztとする(図2参照)。
【0022】
例えば、ズーム位置に応じた信号として×21のレンズのズーム位置37.50%を得た場合、補正係数は0.568となり、SKIN DTL利得制御回路12は、DTL信号作成回路10に対して、肌色成分の輪郭強調信号(DTL量)の減少量を0.568倍して出力するように制御する。
【0023】
次に、ズーム位置が53.00%のときのように表1のズーム位置にない場合について説明する。ズーム位置53.00%がズーム位置50.00%とズーム位置56.25%との間にあることが、表1からわかる。したがって、χとしてズーム位置53.00%のズームアンサー値を使用し、Zwとしてズーム位置50.00%のズームアンサー値を使用し、Ztとして56.25%のズームアンサー値を使用し、Kwとしてズーム位置50.00%の補正係数を使用し、Ktとしてズーム位置56.25%の補正係数を使用して、演算式(1)により53.00%のズーム位置に対する補正係数を算出する。
【0024】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
例えば、ルックアップテーブルとして、表1に示すもの以外の任意のルックアップテーブルを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるスキン・ディテール回路の実施の形態を示す図である。
【図2】演算式(1)を説明するための図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ズームレンズ
2 プリズム
3 R−CCD
4 G−CCD
5 B−CCD
6,7,8 映像信号処理回路
9 肌色成分抽出回路
10 輪郭強調(DTL)信号作成回路
11 レンズ制御回路
12 スキン・ディテール(SKIN DTL)利得制御回路
13,14,15 加算器
16,17,18 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズームレンズを通じて取得した光信号を固体撮像素子で光電変換することによって、撮像信号を生成し、肌色補正を伴う輪郭強調信号を前記撮像信号に加算することによって、画面全体のディテール量を変更することなく肌色部分のディテール量だけ減少させるスキン・ディテール回路であって、
前記撮像信号から肌色成分を抽出する抽出手段と、
前記ズームレンズのズーム位置に応じた信号を出力する信号出力手段と、
前記ズーム位置に応じた信号に基づいて、前記輪郭強調信号の利得を制御する利得制御手段と、
前記肌色成分及び前記利得に基づいて、前記輪郭強調信号を作成する輪郭強調信号作成手段とを具えることを特徴とするスキン・ディテール回路。
【請求項2】
前記利得制御手段が、前記ズーム位置に応じた信号に基づいて利得補正係数を導出する利得補正係数導出手段を有することを特徴とする請求項1記載のスキン・ディテール回路。
【請求項3】
ズームレンズを通じて取得した光信号を固体撮像素子で光電変換することによって、撮像信号を生成し、肌色補正を伴う輪郭強調信号を前記撮像信号に加算することによって、画面全体のディテール量を変更することなく肌色部分のディテール量だけ減少させるスキン・ディテール方法であって、
前記撮像信号から肌色成分を抽出する抽出ステップと、
前記ズームレンズのズーム位置に応じた信号を出力する信号出力ステップと、
前記ズーム位置に応じた信号に基づいて、前記輪郭強調信号の利得を制御する利得制御ステップと、
前記肌色成分及び前記利得に基づいて、前記輪郭強調信号を作成する輪郭強調信号作成ステップとを具えることを特徴とするスキン・ディテール方法。
【請求項4】
前記利得制御ステップが、前記ズーム位置に応じた信号に基づいて利得補正係数を導出する利得補正係数導出ステップを有することを特徴とする請求項3記載のスキン・ディテール方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−86976(P2006−86976A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271655(P2004−271655)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000209751)池上通信機株式会社 (123)
【Fターム(参考)】