スクランブル解除装置
【課題】 特定の(例えば視聴中の)番組については特定の(例えば視聴中の)番組の遅延よりも小さくする。1枚のCASカードで、より多くの複数の番組のデスクランブル鍵を得る。
【解決手段】 第1の発明は、特定の(視聴中の)番組については視聴中でない番組よりも遅延量を少なくしスクランブルされたESパケットを遅延させずに、視聴中でない番組についてはスクランブルされたESパケットを最大で400ms遅延させ、最大で2000msという周期をフルに利用してCASカードでの復号処理を実行させる。また、第2の発明はスクランブルされたESパケットを400ms遅延させることにより、2000msという周期をフルに利用してCASカードでの復号処理を実行させる。
【解決手段】 第1の発明は、特定の(視聴中の)番組については視聴中でない番組よりも遅延量を少なくしスクランブルされたESパケットを遅延させずに、視聴中でない番組についてはスクランブルされたESパケットを最大で400ms遅延させ、最大で2000msという周期をフルに利用してCASカードでの復号処理を実行させる。また、第2の発明はスクランブルされたESパケットを400ms遅延させることにより、2000msという周期をフルに利用してCASカードでの復号処理を実行させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスポートストリームを受信する受信装置に関し、特にコンテンツにスクランブルが掛けられている複数のトランスポートストリームのスクランブルを解除するスクランブル解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ES(Elementary Stream)を遅延させ、1枚のICカードにて同時に複数の番組のスクランブル解除を行うスクランブル解除装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−080142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のスクランブル解除装置においては、特定の(例えば視聴中の)番組については他の(視聴中でない)番組よりも遅延量を少なくしスクランブルされたESパケットを遅延させずに、特定の(例えば視聴中の)番組の遅延を他の番組よりも小さくしつつ、CASカードの1枚当りの処理できるTSの数をより多くすることができないという問題があった。
【0004】
また、従来のスクランブル解除装置においては、遅延可能な時間をフルに利用して、CASカードの1枚当りの処理できるTSの数を最大限にすることができないという問題があった。
【0005】
この発明は、特定の(例えば視聴中の)番組については特定の(例えば視聴中の)番組の遅延よりも小さくできるスクランブル解除装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、この発明は、1枚のCASカードで、より多くの複数の番組のデスクランブル鍵を得ることができるスクランブル解除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明においては、スクランブル処理されたトランスポートストリームからES(Elementary Stream)を分離するES分離手段と、スクランブル処理されたトランスポートストリームからECM(Entitlement Control Message)を分離するECM分離手段と、このECM分離手段により分離されたECMを保持するECM保持手段と、前記ESを、入力された鍵を用いてスクランブル解除するデスクランブラを備えた受信手段を複数備え、前記スクランブル処理されたトランスポートストリームの内、特定のトランスポートストリームである番組のECMを、遅延量0または所定の時間だけ遅延させる第1の遅延手段と、前記複数の内、前記特定のトランスポートストリームである番組以外のECMを、前記所定の時間よりも長い時間遅延させる第2の遅延手段と、前記複数の受信部内の前記複数のECM保持手段が保持しているECMを出力する順番を調停し、この調停した順番にて前記ECMを出力する調停部と、前記第1または第2の遅延手段からの前記ECMが入力され、前記ECMに対応する前記ESのスクランブルを解除するための鍵を、前記ECMに対応する前記デスクランブラへ出力する鍵発生部とを備えたことを特徴とするスクランブル解除装置を提供する。
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明においては、スクランブル処理されたトランスポートストリームからES(Elementary Stream)を分離するES分離手段と、スクランブル処理されたトランスポートストリームからECM(Entitlement Control Message)を分離するECM分離手段と、このECM分離手段により分離されたECMを保持するECM保持手段と、前記ESを、入力された鍵を用いてスクランブル解除するデスクランブラを備えた受信手段を複数備え、前記複数のECM分離手段により得られた複数のECMを、次の同一スクランブル鍵利用期間に対する鍵情報を含むECMが必ず伝送される時間だけ遅延させる第1の遅延手段と、前記複数の受信部内の前記複数のECM保持手段が保持しているECMを出力する順番を調停し、この調停した順番にて前記ECMを出力する調停部と、前記第1または第2の遅延手段からの前記ECMが入力され、前記ECMに対応する前記ESのスクランブルを解除するための鍵を、前記ECMに対応する前記デスクランブラへ出力する鍵発生部とを備えたことを特徴とするスクランブル解除装置を提供する。
【0009】
なお、装置に係る本発明は方法に係る発明としても成立し、方法に係る本発明は装置に係る発明としても成立する。
また、装置または方法に係る本発明は、コンピュータに当該発明に相当する手順を実行させるための(或いはコンピュータを当該発明に相当する手段として機能させるための、或いはコンピュータに当該発明に相当する機能を実現させるための)プログラムとしても成立し、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体としても成立する。
【発明の効果】
【0010】
この第1の発明は、特定の(例えば視聴中の)番組については特定の(例えば視聴中の)番組の遅延よりも小さくすることができる。また、この第2の発明は、1枚のCASカードで、より多くの複数の番組のデスクランブル鍵を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明におけるスクランブル解除装置の例として、デジタル放送受信装置の構成を説明するための図である。このデジタル放送受信装置は、同時に複数(n)のトランスポートストリーム(TS:Transport Stream)を受信するよう構成されている。なお、この図1は機能ブロック図であり、必ずしも各ブロックがそれぞれのハードウェアが存在していなければならないというものではなく、例えば1つのデスクランブラで複数のデスクランブラの役割を時分割で処理するよう構成しても良いもものである。
【0012】
図1において、TS多重分離部(以下、TSデマルチプレクサと記す)101aには、図示しないチューナ等によって受信されたトランスポートストリームが入力される。TSデマルチプレクサ101aは、入力されたトランスポートストリーム(TS:Transport Stream)から、ES(Elementary Stream)、フラグ、ECM(Entitlement Control Message)を分離する。TSデマルチプレクサ101aは、この分離したESを遅延部102aへ出力し、フラグおよびECMをラッチ104aへ出力する。
【0013】
なお、デジタル放送の番組配列情報は、ARIB(電波産業会) STD−B10(デジタル放送に使用する番組配列情報)にて規格化されており、ECMについては、ARIB STD−B25(デジタル放送における限定受信方式)にて規格化されている。
【0014】
遅延部102aは、TSデマルチプレクサ101aから入力されたESを後述する時間だけ遅延した後にデスクランブラ103aへ出力する。
デスクランブラ103aは、鍵レジスタ107から供給されたデスクランブルするための鍵を用いて映像や音声をデスクランブルし、このデスクランブルした信号を後段に続く例えばMPEG2デコーダ等へ出力する。
【0015】
ラッチ104aは、TSデマルチプレクサ101aからフラグおよびECMが供給され、フラグに基づくタイミングでECMをラッチし、このラッチした値を調停部105へ出力する。
【0016】
TSデマルチプレクサ101a,遅延部102a,デスクランブラ103a,ラッチ104aの処理と同様に残りのn−1本のトランスポートストリームについての処理が、TSデマルチプレクサ101b,…,101n、遅延部102b,…,102n、デスクランブラ103b,…,103n、ラッチ104b,…,104nにより処理され、複数(n)のトランスポートストリームに対する信号処理が同時に平行して処理される。
【0017】
調停部105は、n本のトランスポートストリームに対するECMが入力され、これらECMを鍵発生手段としてのCASカード106へ供給し、映像や音声をデスクランブルするための鍵をCASカード106から得てトランスポートストリームに対応付けて鍵レジスタ107へ記憶させる。ラッチ104aから供給されたECMを解いた鍵はデスクランブラ103a用の鍵、ラッチ104nから供給されたECMを解いた鍵はデスクランブラ103n用の鍵として保持させる。
【0018】
また、調停部105は、どのストリームのECMをCASカード106へ供給する順番を調停する。この調停方法については、後で詳しく説明することとする。
CASカード106は、調停部105から入力されたECMを解き、解いた映像や音声をデスクランブルするための鍵を調停部105へ返す。
鍵レジスタ107は、ラッチ104aから供給されたECMを解いた鍵はデスクランブラ103a用の鍵、ラッチ104nから供給されたECMを解いた鍵はデスクランブラ103n用の鍵として保持する。
【0019】
符号データ復号部110は、デスクランブル化されたESが入力され、この符号化されているESを復号し、この復号した映像・音声信号を図示しないディスプレイやスピーカーへ出力する。なお、この符号データ復号部110は、番組を記録媒体に記録する場合には必ずしも必要ではない。
【0020】
図2は、図1の一つのTSデマルチプレクサ101の構成を更に詳細に説明するための図である。
なお、TSデマルチプレクサ101に入力されるTSは、放送に限らず、DVD(Digital Versatile Disk)やHDD(Hard Disk Drive)などの記録メディアや、IP網やLAN等のネットワークからのTSであってもよい。
【0021】
受信された放送のTSは、スクランブルが掛けられており、正しく画像や音声をデコード表示するためには、デスクランブル鍵を用いてデスクランブルする必要がある。
【0022】
入力端251から入力されたTSは、PIDフィルタ201,フラグ検出部202,PIDフィルタ211,PIDフィルタ213,PIDフィルタ215へ供給される。
【0023】
PIDフィルタ201は、所望の番組のES(Elementary Stream)を抽出し、出力端252を介して遅延部102へ出力する。
フラグ検出部202は、TSヘッダ中のスクランブルフラグの変化を検出し、この検出したタイミング信号を遅延部203へ出力する。
遅延部203は、フラグ検出部202から入力されたフラグを所定の時間だけ遅延させた後、出力端253を介してラッチ104へ出力する。
PIDフィルタ211は、入力端251から入力されたTSから、PAT情報を含むパケットのPIDを持つパケットを抽出し、この抽出したPAT情報を含むパケットのペイロード部分をセクションフィルタ212へ出力する。
【0024】
セクションフィルタ212は、PIDフィルタ211から入力されたPAT情報を含むパケットのペイロード部分からPAT(Program Association Table)を抽出し、このPATから抽出したPMTのPID値をPIDフィルタ213へ設定する。
【0025】
PIDフィルタ213は、入力端251から入力されたTSからPMT情報を持つパケットのPIDを持つパケットを抽出し、この抽出したPMT情報を持つパケットのペイロード部分をセクションフィルタ214へ出力する。
【0026】
セクションフィルタ214は、PIDフィルタ213から入力されたPMT情報を持つパケットのペイロード部分からPMT(Program Map Table)を抽出し、このPMTから抽出したECMのをPID値をPIDフィルタ215へ設定する。
【0027】
PIDフィルタ215は、入力端251から入力されたTSからECM情報のPIDを持つパケットを抽出し、この抽出したECM情報のパケットのペイロード部分をセクションフィルタ216へ出力する。
【0028】
セクションフィルタ216は、PIDフィルタ213から入力されたECM情報のパケットのペイロード部分からECM(Entitlement Control Message)を抽出し、この抽出したECMを、出力端253を介してラッチ104へ出力する。
【0029】
本発明の処理を説明する先に、図8乃至図12を用いて、本発明が関係する日本のデジタル放送のスクランブル部について詳細に説明する。
図8乃至図12は、日本のデジタル放送の規格を説明するための図である。
デスクランブルのための鍵データは、ECMというセクション形式のデータでビデオや音声と同一TS中に多重されて送られる。図8および図9は、このセクション形式のデータで送られるECMを説明するための図である。ECMセクションは、8ByteのECMセクションヘッダと、ECM本体と、セクションCECとから構成されている。
【0030】
デジタル放送受信装置の調停部105がECMをコマンドと共にCASカード106へ送信すると、CASカード106は応答として鍵を返す。図10は、ECMをと共にCASカード106へ送信するコマンドを説明するための図である。ECMデータの前にコマンドを付加して伝送する必要がある。
【0031】
図12は、同一ECM送出期間と、同一スクランブル鍵利用期間とのタイミングを示す図である。
図12に示す通り、同一ECM送出期間(ECM更新周期)、即ちT1+T2の長さは、T1+T2>2000[ms]であり、最短では2000[ms]近く(例えば2001[ms]等)となり、この約2秒間同一鍵でのスクランブルが行われる。
【0032】
また、図12に示す通り、1600[ms]<T1、および0<T2という限定で規格化されていることから、変更された鍵が送信されてから、T1の期間である1600[ms](2000[ms]−400[ms])以内に、次の同一スクランブル鍵利用期間に対する鍵情報を含むECMが必ず伝送されることを示している。
【0033】
なお、TSのスクランブル鍵の変更タイミングは、TSヘッダに含まれるフラグで示される。
図12に 1600[ms]<T1 と記載されている通り、連続して正常にデスクランブルすることができるためには、ECMを受信してからデスクランブル鍵を得ることに所用していい時間は1600[ms]以内である。
【0034】
図11は、ノンスクランブル状態からスクランブル状態への切り替わりに置けるタイムチャートを示す図である。
次に、図3を用いて本発明のスクランブル解除装置の例としてのデジタル放送受信装置の動作の説明を続ける。
図1を用いて説明した通り、デジタル放送受信装置は、同時に複数(n)のTSを受信する。このn本全てのTSにスクランブルが掛けられている場合、n本のTSのデスクランブルをする必要がある。
【0035】
即ち、上記日本のデジタル放送規格に合わせて、デジタル放送受信装置は、ECMを受信してから1600[ms]以内にn個の鍵を得られるように動作する必要がある。
【0036】
日本のデジタル放送で用いられている低速インターフェースとしてのCASカード106の通信にはシリアル通信が用いられている。
また、TSからのECMの取り出し、CASカード106へのコマンド伝送はソフトウェアでの制御で実装されることが多く、時間Tk0を要する。また、CASカード106の内部での処理に時間を要する。
【0037】
また、CASカード106からの鍵を受信してデスクランブラに設定するために時間Tk1を要する。
今、これらTk0とTk1の合計時間をTk2とする(Tk2=Tk0+Tk1)。
CASカード106の内部処理がいかに高速化したとしても、ECMの復号にはTk2以上の時間を要する。
仮にn本全てのTSのスクランブル鍵更新タイミングが同一だった場合、n個のECMを同時にCASカード106に送信したいところではあるが、CASカード106が処理できるコマンドは同時には1つのため、調停部105の調停の元、順番にECMをCASカード106に送り込む必要がある。一つの鍵処理にTk2の時間を要すので、n個の鍵処理にはTk2×nの時間を要すこととなる。よって、正しくn本全てのTSのデスクランブルを行うためには、Tk2×n<1600[ms]という条件を満たす必要がある。
【0038】
デスクランブル鍵の更新周期は、図12を用いて説明した通り最短で2000[ms]と規定されているので、スクランブルの掛かったパケットのタイミングを遅延させることでTk2×nの上限を1600[ms]から2000[ms]へ引き上げることが理論上可能である。
【0039】
図1の例では遅延部102によって、スクランブルの掛かったパケットのタイミングを遅延させている。
もし、Tk2が一定ならば、nを増加させることができ、CASカード106の1枚当りの処理できるTSの数をより多くすることが可能となる効果を得ることができる。ひいては多番組同時受信可能な受信機としてCASカード106を複数枚使用する必要を避けることができ、この結果受信機のコストダウンや、カード発行や受信手続きの手間を省くことなどが期待できる。
【0040】
次に、図3を用いて、上記スクランブルの掛かったパケットのタイミングを遅延させたときの動作について詳細に説明する。
図3に遅延処理を示す。
図3(a)は、PMTを示す図である。
図3(b)は、図3(a)のPMTから得られたECMを示す図である。この図3(b)において、“X”で記載してある部分はECMを得られるかは不定な期間であり、空白の白色部分はECMを得られる期間である。図3(b)の符号302の期間に送られたECMは、次の符号303の期間のESに用いられることとなる。
【0041】
図3(c)は、図3(a)を抽出した元のTSから、図2のPIDフィルタ201から得たスクランブルの掛かったESパケット(TSヘッダは取ったもの)を示す図であり、パケットを遅延処理しなかった場合(遅延時間=0)の信号を示す図である。
【0042】
図3(c’)は、図3(c)のESパケットを100[ms]遅延させてデスクランブル処理を行う場合の信号のタイミングを示す図である。
図3(c’’)は、図3(c)のESパケットを400[ms]遅延させてデスクランブル処理を行う場合の信号のタイミングを示す図である。
Tk2の下限は、CASカード106の通信速度とECMや鍵のデータ長から求められる。今、このTk2の下限を仮に100[ms]とする。とすれば、図3(c’)に示す通りスクランブルの掛かったパケットを100[ms]遅延させてデスクランブル処理を行っても問題ないはずである。このため例えば、図3(c’)に示す通り、ECM処理に対してスクランブルの掛かったパケットをD1=100[ms]遅延させてデスクランブル処理をさせた場合の処理について問題がないか検討することとする。
【0043】
鍵更新の直後にECMが更新されたとしても、新しい鍵を得るためには、仮にTk2の下限とした100[ms]は必要なので、スクランブルの掛かったパケットより新しい鍵が出てきてしまうことはない。逆に、ECMが次のスクランブル鍵になる1600[ms]前に送られてきた場合は、スクランブルされたパケットを100[ms]遅延しているために、新しい鍵を得るまでに所用する時間Tk2の上限は1600[ms]+100[ms]=1700[ms]まで増加させることができる。
【0044】
よって、スクランブルの掛かったパケットを100[ms]遅延させてデスクランブル処理を行っても処理のタイミング的には破綻等の問題は発生しない。
更に、図3(c’’)に示す通り、鍵の更新タイミングから、D2=400[ms]後にECM処理を開始するようにECM処理部を構成し、スクランブルされたパケットを400[ms]遅延させてデスクランブル処理することで、Tk2の上限を2000[ms]まで増加させることができる。また、スクランブルの掛かったパケットを400[ms]遅延させてデスクランブル処理を行っても処理のタイミング的には破綻等の問題は発生しない。
【0045】
この図3(c’’)において遅延させるD2=400[ms]という値は、図12の運用規定で規定されている、T1+T2=2000[ms]およびT1<1600[ms]という条件から、必ず次の期間のECMが送信されるまでの期間の値であり、2000[ms]−1600[ms]=400[ms]というようにして得られた値である。
【0046】
図3では1つのTS(番組)について遅延させたときの処理タイミングについて説明したが、実際には図1に示す通り複数のTSにての動作が可能である。
また、図1の符号101の入力は独立したTSであってもよく、また複数番組を含む同一TSを複数の101に供給してもよい。この場合、各101の一部は互いに回路を共用することができる。
【0047】
次に、図4を用いて、複数のTSを処理したときの動作について詳細に説明する。
図4に遅延処理を示す。
図4(a)は、PMTを示す図である。
図4(b1)は、図4(a)のPMTから得られたECMを示す図である。
図4(c1)は、図4(a)を抽出した元のTSから、図2のPIDフィルタ201から得たスクランブルの掛かったESを示す図であり、パケットを400[ms]遅延させてデスクランブル処理を行う場合の信号のタイミングを示す図である。ここで400[ms]遅延させている理由は、図3(c’’)を用いて先に説明した通り、図12の運用規定で規定されている、T1+T2=2000[ms]およびT1<1600[ms]という条件から、必ず次の期間のECMが送信されるまでの期間の値であり、2000[ms]−1600[ms]=400[ms]というようにして得られた値である。
【0048】
この図4(b1)および図4(c1)のデータを番組1とする。
図4(b2)は、図4(a)を抽出したTSとは別のTSから得られたECMを示す図である。
図4(c2)は、前記別のTSから、図2のPIDフィルタ201から得たスクランブルの掛かったESを示す図であり、パケットを400[ms]遅延させてデスクランブル処理を行う場合の信号のタイミングを示す図である。
【0049】
この図4(b2)および図4(c2)のデータを番組2とする。
ここでは説明を簡易にするため、番組2から番組n(図4(bn)および図4(cn))までのn−1番組分のデータが存在しているものとして以下説明を続ける。
次に、図5を用いて、調停部105による調停動作について詳細に説明する。
図5は、調停部105による調停の優先順位を示すフローチャートである。
ステップS501:初めに、調停部105は、番組1のECMを得ていたらステップS502の処理へ移り、得ていない場合にはステップS503の処理へ移る。
ステップS502:調停部105は、番組1のECMをCASカード106で解いた後、ステップS503へ移る。
ステップS503:調停部105は、番組2のECMを得ていたらステップS504の処理へ移り、得ていない場合にはステップS505の処理へ移る。
ステップS504:調停部105は、番組2のECMをCASカード106で解いた後、ステップS505へ移る。
ステップS505:調停部105は、番組nのECMを得ていたらステップS506の処理へ移り、得ていない場合にはステップS507の処理へ移る。
ステップS506:調停部105は、番組nのECMをCASカード106で解いた後、ステップS501へ移る。
上記したステップS501からステップS506を繰り返すことにより、各番組のECMをCASカード106へ順次送り、ECMをデスクランブルする。
次に、図4および図5を用いて、ECMのデスクランブルにおける調停部105の調停動作の例を説明する。
図4に示した例では、まず初めに符号305のタイミングで番組1のECMを得る(ステップS501のYes)ので、符号305のタイミングで番組1のECMがCASカード106で解かれる(ステップS502)。
【0050】
次に、符号310のタイミングで番組2,…,nの複数のECMを得る。調停部105は、図4に示す通り、番組2,…,nのECMという順番にてECMをCASカード106へ送り、順にECMを解く。
【0051】
以上説明したとおり、本発明によれば、スクランブルされたESパケットを400[ms]遅延させることにより、スクランブルの掛かったパケットのタイミングを遅延させることでECMからデスクランブル鍵を得るまでの処理にかけていい時間の上限を1600[ms]から2000[ms]へ引き上げたので、2000[ms]という周期をフルに利用してCASカードでの復号処理を実行させることができる。もし、Tk2が一定ならば、nを増加させることができ、CASカード106の1枚当りの処理できるTSの数をより多くすることができるという効果を得ることができる。
【0052】
ひいては多番組同時受信可能な受信機としてCASカード106を複数枚使用する必要を避けることができ、この結果受信機のコストダウンや、カード発行や受信手続きの手間を省くことなどが期待できる。
【0053】
なお、上記説明ではCASカードは1枚でのメリットについて説明したが、CASカードを複数枚使うときに本発明を適用し、更により多くのTSを処理するようにしても良い。このようにしても、先の例と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、図4を図6、図5を図7に変えた点が異なるので、この変更した部分についてのみ説明をする。
スクランブルさせたパケットを遅延させると、視聴する時間が遅れることになる。これは、最も鍵処理に時間が掛かる場合を想定してパケット遅延時間を設定したためであった。複数受信する受信機でも、視聴する番組は1つで、後は記録するだけという場合もある。
【0055】
特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)については、遅延時間を他のTS(例えば、番組記録するTS)に対して遅延時間を短くし(或いは遅延させずに)デスクランブル処理を行い、更に、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)のECMを、他のTS(例えば、番組記録するTS)のECMより優先的にCASカードに送信するなど優先的に処理するものである。
【0056】
次に、図7を用いて、調停部105による調停動作について詳細に説明する。
図7は、調停部105による調停の優先順位を示すフローチャートである。
ステップS701:初めに、調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMを得ていたらステップS702の処理へ移り、得ていない場合にはステップS703の処理へ移る。
【0057】
ステップS702:調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMをCASカード106で解いた後、ステップS703へ移る。
【0058】
ステップS703:調停部105は、他のTS(例えば、番組記録するTS)である番組2のECMを得ていたらステップS704の処理へ移り、得ていない場合にはステップS705の処理へ移る。
【0059】
ステップS704:調停部105は、他のTS(例えば、番組記録するTS)である番組2のECMをCASカード106で解いた後、ステップS705へ移る。
ステップS705:調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMを得ていたらステップS706の処理へ移り、得ていない場合にはステップS707の処理へ移る。
【0060】
ステップS706:調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMをCASカード106で解いた後、ステップS707へ移る。
【0061】
ステップS707:調停部105は、他のTS(例えば、番組記録するTS)である番組3のECMを得ていたらステップS708の処理へ移り、得ていない場合にはステップS709の処理へ移る。
【0062】
ステップS708:調停部105は、他のTS(例えば、番組記録するTS)である番組3のECMをCASカード106で解いた後、ステップS709へ移る。
ステップS709:調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMを得ていたらステップS710の処理へ移り、得ていない場合にはステップS711の処理へ移る。
【0063】
ステップS710:調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMをCASカード106で解いた後、ステップS711へ移る。
【0064】
これをn−1番組まで順次繰り返す。
ステップS711:調停部105は、番組nのECMを得ていたらステップS706の処理へ移り、得ていない場合にはステップS707の処理へ移る。
ステップS712:調停部105は、番組nのECMをCASカード106で解いた後、ステップS701へ移る。
このように、各番組のECMをCASカード106へ順次送り、ECMをデスクランブルするときに、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMを優先して処理する。
【0065】
こうすることで、視聴する番組の遅延時間を少なくしながらも、1枚のCASカードでより多くの番組を処理することが可能になる。
なお、上記した例では、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMを2回に1回処理することにより優先していたが、本発明はこれに限定されず、3回に1回必ず処理するよう優先しても良いし、2回連続して処理するよう優先してもよい。
【0066】
以上説明したとおり、本発明によれば、特定の(視聴中の)番組については視聴中でない番組よりも遅延量を少なくしスクランブルされたESパケットを遅延させずに、視聴中でない番組についてはスクランブルされたESパケットを最大で400[ms]遅延させ、最大で2000[ms]という周期をフルに利用してCASカードでの復号処理を実行させるようにしたので、視聴する番組の遅延を最小限にしつつ、CASカード106の1枚当りの処理できるTSの数をより多くすることができるという効果を得ることができる。
【0067】
ひいては多番組同時受信可能な受信機としてCASカード106を複数枚使用する必要を避けることができ、この結果受信機のコストダウンや、カード発行や受信手続きの手間を省くことなどが期待できる。
【0068】
なお、上記説明ではCASカードは1枚でのメリットについて説明したが、CASカードを複数枚使うときに本発明を適用し、更により多くのTSを処理するようにしても良い。このようにしても、先の例と同様の効果を得ることができる。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明におけるスクランブル解除装置の例として、デジタル放送受信装置の構成を説明するための図。
【図2】一つのTSデマルチプレクサ101の構成を更に詳細に説明するための図。
【図3】本発明のスクランブル解除装置の例としてのデジタル放送受信装置の動作の説明するための信号のタイムチャートを示す図。
【図4】本発明のスクランブル解除装置の例としてのデジタル放送受信装置の動作の説明するための信号のタイムチャートを示す図。
【図5】調停部による調停動作を説明するためのフローチャート。
【図6】本発明のスクランブル解除装置の例としてのデジタル放送受信装置の動作の説明するための信号のタイムチャートを示す図。
【図7】調停部による調停動作を説明するためのフローチャート。
【図8】ARIB STD−B25「デジタル放送におけるアクセス制御方式」5.0版 3.2.3.2 ECMセクションの構造 内の表3−1 ECMセクション構造を示す図。
【図9】ARIB STD−B25「デジタル放送におけるアクセス制御方式」5.0版 3.2.3.1 ECMの基本構成 内の図3−4 ECMセクションの構成を示す図。
【図10】ARIB STD−B25「デジタル放送におけるアクセス制御方式」5.0版 4.3.3.3 コマンド/レスポンスの詳細 内の表4−11 ECM受信コマンドを示す図。
【図11】ARIB TR−B14「地上デジタルテレビジョン放送運用規定」3.3版 4.10.4.1 スクランブルの開始を示す図。
【図12】ARIB TR−B14「地上デジタルテレビジョン放送運用規定」3.3版 4.10.5.3 ECMの更新とスクランブル鍵の変更を示す図。
【符号の説明】
【0071】
101a〜101n…TS多重分離部(TSデマルチプレクサ)、
102a〜102n…遅延部、
103a〜103n…デスクランブラ、
104a〜104n…ラッチ、
105…調停部、
106…CASカード、
107…鍵レジスタ、
110…符号データ復号部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスポートストリームを受信する受信装置に関し、特にコンテンツにスクランブルが掛けられている複数のトランスポートストリームのスクランブルを解除するスクランブル解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ES(Elementary Stream)を遅延させ、1枚のICカードにて同時に複数の番組のスクランブル解除を行うスクランブル解除装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−080142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のスクランブル解除装置においては、特定の(例えば視聴中の)番組については他の(視聴中でない)番組よりも遅延量を少なくしスクランブルされたESパケットを遅延させずに、特定の(例えば視聴中の)番組の遅延を他の番組よりも小さくしつつ、CASカードの1枚当りの処理できるTSの数をより多くすることができないという問題があった。
【0004】
また、従来のスクランブル解除装置においては、遅延可能な時間をフルに利用して、CASカードの1枚当りの処理できるTSの数を最大限にすることができないという問題があった。
【0005】
この発明は、特定の(例えば視聴中の)番組については特定の(例えば視聴中の)番組の遅延よりも小さくできるスクランブル解除装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、この発明は、1枚のCASカードで、より多くの複数の番組のデスクランブル鍵を得ることができるスクランブル解除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明においては、スクランブル処理されたトランスポートストリームからES(Elementary Stream)を分離するES分離手段と、スクランブル処理されたトランスポートストリームからECM(Entitlement Control Message)を分離するECM分離手段と、このECM分離手段により分離されたECMを保持するECM保持手段と、前記ESを、入力された鍵を用いてスクランブル解除するデスクランブラを備えた受信手段を複数備え、前記スクランブル処理されたトランスポートストリームの内、特定のトランスポートストリームである番組のECMを、遅延量0または所定の時間だけ遅延させる第1の遅延手段と、前記複数の内、前記特定のトランスポートストリームである番組以外のECMを、前記所定の時間よりも長い時間遅延させる第2の遅延手段と、前記複数の受信部内の前記複数のECM保持手段が保持しているECMを出力する順番を調停し、この調停した順番にて前記ECMを出力する調停部と、前記第1または第2の遅延手段からの前記ECMが入力され、前記ECMに対応する前記ESのスクランブルを解除するための鍵を、前記ECMに対応する前記デスクランブラへ出力する鍵発生部とを備えたことを特徴とするスクランブル解除装置を提供する。
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明においては、スクランブル処理されたトランスポートストリームからES(Elementary Stream)を分離するES分離手段と、スクランブル処理されたトランスポートストリームからECM(Entitlement Control Message)を分離するECM分離手段と、このECM分離手段により分離されたECMを保持するECM保持手段と、前記ESを、入力された鍵を用いてスクランブル解除するデスクランブラを備えた受信手段を複数備え、前記複数のECM分離手段により得られた複数のECMを、次の同一スクランブル鍵利用期間に対する鍵情報を含むECMが必ず伝送される時間だけ遅延させる第1の遅延手段と、前記複数の受信部内の前記複数のECM保持手段が保持しているECMを出力する順番を調停し、この調停した順番にて前記ECMを出力する調停部と、前記第1または第2の遅延手段からの前記ECMが入力され、前記ECMに対応する前記ESのスクランブルを解除するための鍵を、前記ECMに対応する前記デスクランブラへ出力する鍵発生部とを備えたことを特徴とするスクランブル解除装置を提供する。
【0009】
なお、装置に係る本発明は方法に係る発明としても成立し、方法に係る本発明は装置に係る発明としても成立する。
また、装置または方法に係る本発明は、コンピュータに当該発明に相当する手順を実行させるための(或いはコンピュータを当該発明に相当する手段として機能させるための、或いはコンピュータに当該発明に相当する機能を実現させるための)プログラムとしても成立し、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体としても成立する。
【発明の効果】
【0010】
この第1の発明は、特定の(例えば視聴中の)番組については特定の(例えば視聴中の)番組の遅延よりも小さくすることができる。また、この第2の発明は、1枚のCASカードで、より多くの複数の番組のデスクランブル鍵を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明におけるスクランブル解除装置の例として、デジタル放送受信装置の構成を説明するための図である。このデジタル放送受信装置は、同時に複数(n)のトランスポートストリーム(TS:Transport Stream)を受信するよう構成されている。なお、この図1は機能ブロック図であり、必ずしも各ブロックがそれぞれのハードウェアが存在していなければならないというものではなく、例えば1つのデスクランブラで複数のデスクランブラの役割を時分割で処理するよう構成しても良いもものである。
【0012】
図1において、TS多重分離部(以下、TSデマルチプレクサと記す)101aには、図示しないチューナ等によって受信されたトランスポートストリームが入力される。TSデマルチプレクサ101aは、入力されたトランスポートストリーム(TS:Transport Stream)から、ES(Elementary Stream)、フラグ、ECM(Entitlement Control Message)を分離する。TSデマルチプレクサ101aは、この分離したESを遅延部102aへ出力し、フラグおよびECMをラッチ104aへ出力する。
【0013】
なお、デジタル放送の番組配列情報は、ARIB(電波産業会) STD−B10(デジタル放送に使用する番組配列情報)にて規格化されており、ECMについては、ARIB STD−B25(デジタル放送における限定受信方式)にて規格化されている。
【0014】
遅延部102aは、TSデマルチプレクサ101aから入力されたESを後述する時間だけ遅延した後にデスクランブラ103aへ出力する。
デスクランブラ103aは、鍵レジスタ107から供給されたデスクランブルするための鍵を用いて映像や音声をデスクランブルし、このデスクランブルした信号を後段に続く例えばMPEG2デコーダ等へ出力する。
【0015】
ラッチ104aは、TSデマルチプレクサ101aからフラグおよびECMが供給され、フラグに基づくタイミングでECMをラッチし、このラッチした値を調停部105へ出力する。
【0016】
TSデマルチプレクサ101a,遅延部102a,デスクランブラ103a,ラッチ104aの処理と同様に残りのn−1本のトランスポートストリームについての処理が、TSデマルチプレクサ101b,…,101n、遅延部102b,…,102n、デスクランブラ103b,…,103n、ラッチ104b,…,104nにより処理され、複数(n)のトランスポートストリームに対する信号処理が同時に平行して処理される。
【0017】
調停部105は、n本のトランスポートストリームに対するECMが入力され、これらECMを鍵発生手段としてのCASカード106へ供給し、映像や音声をデスクランブルするための鍵をCASカード106から得てトランスポートストリームに対応付けて鍵レジスタ107へ記憶させる。ラッチ104aから供給されたECMを解いた鍵はデスクランブラ103a用の鍵、ラッチ104nから供給されたECMを解いた鍵はデスクランブラ103n用の鍵として保持させる。
【0018】
また、調停部105は、どのストリームのECMをCASカード106へ供給する順番を調停する。この調停方法については、後で詳しく説明することとする。
CASカード106は、調停部105から入力されたECMを解き、解いた映像や音声をデスクランブルするための鍵を調停部105へ返す。
鍵レジスタ107は、ラッチ104aから供給されたECMを解いた鍵はデスクランブラ103a用の鍵、ラッチ104nから供給されたECMを解いた鍵はデスクランブラ103n用の鍵として保持する。
【0019】
符号データ復号部110は、デスクランブル化されたESが入力され、この符号化されているESを復号し、この復号した映像・音声信号を図示しないディスプレイやスピーカーへ出力する。なお、この符号データ復号部110は、番組を記録媒体に記録する場合には必ずしも必要ではない。
【0020】
図2は、図1の一つのTSデマルチプレクサ101の構成を更に詳細に説明するための図である。
なお、TSデマルチプレクサ101に入力されるTSは、放送に限らず、DVD(Digital Versatile Disk)やHDD(Hard Disk Drive)などの記録メディアや、IP網やLAN等のネットワークからのTSであってもよい。
【0021】
受信された放送のTSは、スクランブルが掛けられており、正しく画像や音声をデコード表示するためには、デスクランブル鍵を用いてデスクランブルする必要がある。
【0022】
入力端251から入力されたTSは、PIDフィルタ201,フラグ検出部202,PIDフィルタ211,PIDフィルタ213,PIDフィルタ215へ供給される。
【0023】
PIDフィルタ201は、所望の番組のES(Elementary Stream)を抽出し、出力端252を介して遅延部102へ出力する。
フラグ検出部202は、TSヘッダ中のスクランブルフラグの変化を検出し、この検出したタイミング信号を遅延部203へ出力する。
遅延部203は、フラグ検出部202から入力されたフラグを所定の時間だけ遅延させた後、出力端253を介してラッチ104へ出力する。
PIDフィルタ211は、入力端251から入力されたTSから、PAT情報を含むパケットのPIDを持つパケットを抽出し、この抽出したPAT情報を含むパケットのペイロード部分をセクションフィルタ212へ出力する。
【0024】
セクションフィルタ212は、PIDフィルタ211から入力されたPAT情報を含むパケットのペイロード部分からPAT(Program Association Table)を抽出し、このPATから抽出したPMTのPID値をPIDフィルタ213へ設定する。
【0025】
PIDフィルタ213は、入力端251から入力されたTSからPMT情報を持つパケットのPIDを持つパケットを抽出し、この抽出したPMT情報を持つパケットのペイロード部分をセクションフィルタ214へ出力する。
【0026】
セクションフィルタ214は、PIDフィルタ213から入力されたPMT情報を持つパケットのペイロード部分からPMT(Program Map Table)を抽出し、このPMTから抽出したECMのをPID値をPIDフィルタ215へ設定する。
【0027】
PIDフィルタ215は、入力端251から入力されたTSからECM情報のPIDを持つパケットを抽出し、この抽出したECM情報のパケットのペイロード部分をセクションフィルタ216へ出力する。
【0028】
セクションフィルタ216は、PIDフィルタ213から入力されたECM情報のパケットのペイロード部分からECM(Entitlement Control Message)を抽出し、この抽出したECMを、出力端253を介してラッチ104へ出力する。
【0029】
本発明の処理を説明する先に、図8乃至図12を用いて、本発明が関係する日本のデジタル放送のスクランブル部について詳細に説明する。
図8乃至図12は、日本のデジタル放送の規格を説明するための図である。
デスクランブルのための鍵データは、ECMというセクション形式のデータでビデオや音声と同一TS中に多重されて送られる。図8および図9は、このセクション形式のデータで送られるECMを説明するための図である。ECMセクションは、8ByteのECMセクションヘッダと、ECM本体と、セクションCECとから構成されている。
【0030】
デジタル放送受信装置の調停部105がECMをコマンドと共にCASカード106へ送信すると、CASカード106は応答として鍵を返す。図10は、ECMをと共にCASカード106へ送信するコマンドを説明するための図である。ECMデータの前にコマンドを付加して伝送する必要がある。
【0031】
図12は、同一ECM送出期間と、同一スクランブル鍵利用期間とのタイミングを示す図である。
図12に示す通り、同一ECM送出期間(ECM更新周期)、即ちT1+T2の長さは、T1+T2>2000[ms]であり、最短では2000[ms]近く(例えば2001[ms]等)となり、この約2秒間同一鍵でのスクランブルが行われる。
【0032】
また、図12に示す通り、1600[ms]<T1、および0<T2という限定で規格化されていることから、変更された鍵が送信されてから、T1の期間である1600[ms](2000[ms]−400[ms])以内に、次の同一スクランブル鍵利用期間に対する鍵情報を含むECMが必ず伝送されることを示している。
【0033】
なお、TSのスクランブル鍵の変更タイミングは、TSヘッダに含まれるフラグで示される。
図12に 1600[ms]<T1 と記載されている通り、連続して正常にデスクランブルすることができるためには、ECMを受信してからデスクランブル鍵を得ることに所用していい時間は1600[ms]以内である。
【0034】
図11は、ノンスクランブル状態からスクランブル状態への切り替わりに置けるタイムチャートを示す図である。
次に、図3を用いて本発明のスクランブル解除装置の例としてのデジタル放送受信装置の動作の説明を続ける。
図1を用いて説明した通り、デジタル放送受信装置は、同時に複数(n)のTSを受信する。このn本全てのTSにスクランブルが掛けられている場合、n本のTSのデスクランブルをする必要がある。
【0035】
即ち、上記日本のデジタル放送規格に合わせて、デジタル放送受信装置は、ECMを受信してから1600[ms]以内にn個の鍵を得られるように動作する必要がある。
【0036】
日本のデジタル放送で用いられている低速インターフェースとしてのCASカード106の通信にはシリアル通信が用いられている。
また、TSからのECMの取り出し、CASカード106へのコマンド伝送はソフトウェアでの制御で実装されることが多く、時間Tk0を要する。また、CASカード106の内部での処理に時間を要する。
【0037】
また、CASカード106からの鍵を受信してデスクランブラに設定するために時間Tk1を要する。
今、これらTk0とTk1の合計時間をTk2とする(Tk2=Tk0+Tk1)。
CASカード106の内部処理がいかに高速化したとしても、ECMの復号にはTk2以上の時間を要する。
仮にn本全てのTSのスクランブル鍵更新タイミングが同一だった場合、n個のECMを同時にCASカード106に送信したいところではあるが、CASカード106が処理できるコマンドは同時には1つのため、調停部105の調停の元、順番にECMをCASカード106に送り込む必要がある。一つの鍵処理にTk2の時間を要すので、n個の鍵処理にはTk2×nの時間を要すこととなる。よって、正しくn本全てのTSのデスクランブルを行うためには、Tk2×n<1600[ms]という条件を満たす必要がある。
【0038】
デスクランブル鍵の更新周期は、図12を用いて説明した通り最短で2000[ms]と規定されているので、スクランブルの掛かったパケットのタイミングを遅延させることでTk2×nの上限を1600[ms]から2000[ms]へ引き上げることが理論上可能である。
【0039】
図1の例では遅延部102によって、スクランブルの掛かったパケットのタイミングを遅延させている。
もし、Tk2が一定ならば、nを増加させることができ、CASカード106の1枚当りの処理できるTSの数をより多くすることが可能となる効果を得ることができる。ひいては多番組同時受信可能な受信機としてCASカード106を複数枚使用する必要を避けることができ、この結果受信機のコストダウンや、カード発行や受信手続きの手間を省くことなどが期待できる。
【0040】
次に、図3を用いて、上記スクランブルの掛かったパケットのタイミングを遅延させたときの動作について詳細に説明する。
図3に遅延処理を示す。
図3(a)は、PMTを示す図である。
図3(b)は、図3(a)のPMTから得られたECMを示す図である。この図3(b)において、“X”で記載してある部分はECMを得られるかは不定な期間であり、空白の白色部分はECMを得られる期間である。図3(b)の符号302の期間に送られたECMは、次の符号303の期間のESに用いられることとなる。
【0041】
図3(c)は、図3(a)を抽出した元のTSから、図2のPIDフィルタ201から得たスクランブルの掛かったESパケット(TSヘッダは取ったもの)を示す図であり、パケットを遅延処理しなかった場合(遅延時間=0)の信号を示す図である。
【0042】
図3(c’)は、図3(c)のESパケットを100[ms]遅延させてデスクランブル処理を行う場合の信号のタイミングを示す図である。
図3(c’’)は、図3(c)のESパケットを400[ms]遅延させてデスクランブル処理を行う場合の信号のタイミングを示す図である。
Tk2の下限は、CASカード106の通信速度とECMや鍵のデータ長から求められる。今、このTk2の下限を仮に100[ms]とする。とすれば、図3(c’)に示す通りスクランブルの掛かったパケットを100[ms]遅延させてデスクランブル処理を行っても問題ないはずである。このため例えば、図3(c’)に示す通り、ECM処理に対してスクランブルの掛かったパケットをD1=100[ms]遅延させてデスクランブル処理をさせた場合の処理について問題がないか検討することとする。
【0043】
鍵更新の直後にECMが更新されたとしても、新しい鍵を得るためには、仮にTk2の下限とした100[ms]は必要なので、スクランブルの掛かったパケットより新しい鍵が出てきてしまうことはない。逆に、ECMが次のスクランブル鍵になる1600[ms]前に送られてきた場合は、スクランブルされたパケットを100[ms]遅延しているために、新しい鍵を得るまでに所用する時間Tk2の上限は1600[ms]+100[ms]=1700[ms]まで増加させることができる。
【0044】
よって、スクランブルの掛かったパケットを100[ms]遅延させてデスクランブル処理を行っても処理のタイミング的には破綻等の問題は発生しない。
更に、図3(c’’)に示す通り、鍵の更新タイミングから、D2=400[ms]後にECM処理を開始するようにECM処理部を構成し、スクランブルされたパケットを400[ms]遅延させてデスクランブル処理することで、Tk2の上限を2000[ms]まで増加させることができる。また、スクランブルの掛かったパケットを400[ms]遅延させてデスクランブル処理を行っても処理のタイミング的には破綻等の問題は発生しない。
【0045】
この図3(c’’)において遅延させるD2=400[ms]という値は、図12の運用規定で規定されている、T1+T2=2000[ms]およびT1<1600[ms]という条件から、必ず次の期間のECMが送信されるまでの期間の値であり、2000[ms]−1600[ms]=400[ms]というようにして得られた値である。
【0046】
図3では1つのTS(番組)について遅延させたときの処理タイミングについて説明したが、実際には図1に示す通り複数のTSにての動作が可能である。
また、図1の符号101の入力は独立したTSであってもよく、また複数番組を含む同一TSを複数の101に供給してもよい。この場合、各101の一部は互いに回路を共用することができる。
【0047】
次に、図4を用いて、複数のTSを処理したときの動作について詳細に説明する。
図4に遅延処理を示す。
図4(a)は、PMTを示す図である。
図4(b1)は、図4(a)のPMTから得られたECMを示す図である。
図4(c1)は、図4(a)を抽出した元のTSから、図2のPIDフィルタ201から得たスクランブルの掛かったESを示す図であり、パケットを400[ms]遅延させてデスクランブル処理を行う場合の信号のタイミングを示す図である。ここで400[ms]遅延させている理由は、図3(c’’)を用いて先に説明した通り、図12の運用規定で規定されている、T1+T2=2000[ms]およびT1<1600[ms]という条件から、必ず次の期間のECMが送信されるまでの期間の値であり、2000[ms]−1600[ms]=400[ms]というようにして得られた値である。
【0048】
この図4(b1)および図4(c1)のデータを番組1とする。
図4(b2)は、図4(a)を抽出したTSとは別のTSから得られたECMを示す図である。
図4(c2)は、前記別のTSから、図2のPIDフィルタ201から得たスクランブルの掛かったESを示す図であり、パケットを400[ms]遅延させてデスクランブル処理を行う場合の信号のタイミングを示す図である。
【0049】
この図4(b2)および図4(c2)のデータを番組2とする。
ここでは説明を簡易にするため、番組2から番組n(図4(bn)および図4(cn))までのn−1番組分のデータが存在しているものとして以下説明を続ける。
次に、図5を用いて、調停部105による調停動作について詳細に説明する。
図5は、調停部105による調停の優先順位を示すフローチャートである。
ステップS501:初めに、調停部105は、番組1のECMを得ていたらステップS502の処理へ移り、得ていない場合にはステップS503の処理へ移る。
ステップS502:調停部105は、番組1のECMをCASカード106で解いた後、ステップS503へ移る。
ステップS503:調停部105は、番組2のECMを得ていたらステップS504の処理へ移り、得ていない場合にはステップS505の処理へ移る。
ステップS504:調停部105は、番組2のECMをCASカード106で解いた後、ステップS505へ移る。
ステップS505:調停部105は、番組nのECMを得ていたらステップS506の処理へ移り、得ていない場合にはステップS507の処理へ移る。
ステップS506:調停部105は、番組nのECMをCASカード106で解いた後、ステップS501へ移る。
上記したステップS501からステップS506を繰り返すことにより、各番組のECMをCASカード106へ順次送り、ECMをデスクランブルする。
次に、図4および図5を用いて、ECMのデスクランブルにおける調停部105の調停動作の例を説明する。
図4に示した例では、まず初めに符号305のタイミングで番組1のECMを得る(ステップS501のYes)ので、符号305のタイミングで番組1のECMがCASカード106で解かれる(ステップS502)。
【0050】
次に、符号310のタイミングで番組2,…,nの複数のECMを得る。調停部105は、図4に示す通り、番組2,…,nのECMという順番にてECMをCASカード106へ送り、順にECMを解く。
【0051】
以上説明したとおり、本発明によれば、スクランブルされたESパケットを400[ms]遅延させることにより、スクランブルの掛かったパケットのタイミングを遅延させることでECMからデスクランブル鍵を得るまでの処理にかけていい時間の上限を1600[ms]から2000[ms]へ引き上げたので、2000[ms]という周期をフルに利用してCASカードでの復号処理を実行させることができる。もし、Tk2が一定ならば、nを増加させることができ、CASカード106の1枚当りの処理できるTSの数をより多くすることができるという効果を得ることができる。
【0052】
ひいては多番組同時受信可能な受信機としてCASカード106を複数枚使用する必要を避けることができ、この結果受信機のコストダウンや、カード発行や受信手続きの手間を省くことなどが期待できる。
【0053】
なお、上記説明ではCASカードは1枚でのメリットについて説明したが、CASカードを複数枚使うときに本発明を適用し、更により多くのTSを処理するようにしても良い。このようにしても、先の例と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、図4を図6、図5を図7に変えた点が異なるので、この変更した部分についてのみ説明をする。
スクランブルさせたパケットを遅延させると、視聴する時間が遅れることになる。これは、最も鍵処理に時間が掛かる場合を想定してパケット遅延時間を設定したためであった。複数受信する受信機でも、視聴する番組は1つで、後は記録するだけという場合もある。
【0055】
特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)については、遅延時間を他のTS(例えば、番組記録するTS)に対して遅延時間を短くし(或いは遅延させずに)デスクランブル処理を行い、更に、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)のECMを、他のTS(例えば、番組記録するTS)のECMより優先的にCASカードに送信するなど優先的に処理するものである。
【0056】
次に、図7を用いて、調停部105による調停動作について詳細に説明する。
図7は、調停部105による調停の優先順位を示すフローチャートである。
ステップS701:初めに、調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMを得ていたらステップS702の処理へ移り、得ていない場合にはステップS703の処理へ移る。
【0057】
ステップS702:調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMをCASカード106で解いた後、ステップS703へ移る。
【0058】
ステップS703:調停部105は、他のTS(例えば、番組記録するTS)である番組2のECMを得ていたらステップS704の処理へ移り、得ていない場合にはステップS705の処理へ移る。
【0059】
ステップS704:調停部105は、他のTS(例えば、番組記録するTS)である番組2のECMをCASカード106で解いた後、ステップS705へ移る。
ステップS705:調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMを得ていたらステップS706の処理へ移り、得ていない場合にはステップS707の処理へ移る。
【0060】
ステップS706:調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMをCASカード106で解いた後、ステップS707へ移る。
【0061】
ステップS707:調停部105は、他のTS(例えば、番組記録するTS)である番組3のECMを得ていたらステップS708の処理へ移り、得ていない場合にはステップS709の処理へ移る。
【0062】
ステップS708:調停部105は、他のTS(例えば、番組記録するTS)である番組3のECMをCASカード106で解いた後、ステップS709へ移る。
ステップS709:調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMを得ていたらステップS710の処理へ移り、得ていない場合にはステップS711の処理へ移る。
【0063】
ステップS710:調停部105は、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMをCASカード106で解いた後、ステップS711へ移る。
【0064】
これをn−1番組まで順次繰り返す。
ステップS711:調停部105は、番組nのECMを得ていたらステップS706の処理へ移り、得ていない場合にはステップS707の処理へ移る。
ステップS712:調停部105は、番組nのECMをCASカード106で解いた後、ステップS701へ移る。
このように、各番組のECMをCASカード106へ順次送り、ECMをデスクランブルするときに、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMを優先して処理する。
【0065】
こうすることで、視聴する番組の遅延時間を少なくしながらも、1枚のCASカードでより多くの番組を処理することが可能になる。
なお、上記した例では、特定のTS(例えば、視聴中の番組のTS)である番組1のECMを2回に1回処理することにより優先していたが、本発明はこれに限定されず、3回に1回必ず処理するよう優先しても良いし、2回連続して処理するよう優先してもよい。
【0066】
以上説明したとおり、本発明によれば、特定の(視聴中の)番組については視聴中でない番組よりも遅延量を少なくしスクランブルされたESパケットを遅延させずに、視聴中でない番組についてはスクランブルされたESパケットを最大で400[ms]遅延させ、最大で2000[ms]という周期をフルに利用してCASカードでの復号処理を実行させるようにしたので、視聴する番組の遅延を最小限にしつつ、CASカード106の1枚当りの処理できるTSの数をより多くすることができるという効果を得ることができる。
【0067】
ひいては多番組同時受信可能な受信機としてCASカード106を複数枚使用する必要を避けることができ、この結果受信機のコストダウンや、カード発行や受信手続きの手間を省くことなどが期待できる。
【0068】
なお、上記説明ではCASカードは1枚でのメリットについて説明したが、CASカードを複数枚使うときに本発明を適用し、更により多くのTSを処理するようにしても良い。このようにしても、先の例と同様の効果を得ることができる。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明におけるスクランブル解除装置の例として、デジタル放送受信装置の構成を説明するための図。
【図2】一つのTSデマルチプレクサ101の構成を更に詳細に説明するための図。
【図3】本発明のスクランブル解除装置の例としてのデジタル放送受信装置の動作の説明するための信号のタイムチャートを示す図。
【図4】本発明のスクランブル解除装置の例としてのデジタル放送受信装置の動作の説明するための信号のタイムチャートを示す図。
【図5】調停部による調停動作を説明するためのフローチャート。
【図6】本発明のスクランブル解除装置の例としてのデジタル放送受信装置の動作の説明するための信号のタイムチャートを示す図。
【図7】調停部による調停動作を説明するためのフローチャート。
【図8】ARIB STD−B25「デジタル放送におけるアクセス制御方式」5.0版 3.2.3.2 ECMセクションの構造 内の表3−1 ECMセクション構造を示す図。
【図9】ARIB STD−B25「デジタル放送におけるアクセス制御方式」5.0版 3.2.3.1 ECMの基本構成 内の図3−4 ECMセクションの構成を示す図。
【図10】ARIB STD−B25「デジタル放送におけるアクセス制御方式」5.0版 4.3.3.3 コマンド/レスポンスの詳細 内の表4−11 ECM受信コマンドを示す図。
【図11】ARIB TR−B14「地上デジタルテレビジョン放送運用規定」3.3版 4.10.4.1 スクランブルの開始を示す図。
【図12】ARIB TR−B14「地上デジタルテレビジョン放送運用規定」3.3版 4.10.5.3 ECMの更新とスクランブル鍵の変更を示す図。
【符号の説明】
【0071】
101a〜101n…TS多重分離部(TSデマルチプレクサ)、
102a〜102n…遅延部、
103a〜103n…デスクランブラ、
104a〜104n…ラッチ、
105…調停部、
106…CASカード、
107…鍵レジスタ、
110…符号データ復号部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクランブル処理されたトランスポートストリームからES(Elementary Stream)を分離するES分離手段と、
スクランブル処理されたトランスポートストリームからECM(Entitlement Control Message)を分離するECM分離手段と、
このECM分離手段により分離されたECMを保持するECM保持手段と、
前記ESを、入力された鍵を用いてスクランブル解除するデスクランブラを備えた受信手段を複数備え、
前記スクランブル処理されたトランスポートストリームの内、特定のトランスポートストリームである番組のECMを、遅延量0または所定の時間だけ遅延させる第1の遅延手段と、
前記複数の内、前記特定のトランスポートストリームである番組以外のECMを、前記所定の時間よりも長い時間遅延させる第2の遅延手段と、
前記複数の受信部内の前記複数のECM保持手段が保持しているECMを出力する順番を調停し、この調停した順番にて前記ECMを出力する調停部と、
前記第1または第2の遅延手段からの前記ECMが入力され、前記ECMに対応する前記ESのスクランブルを解除するための鍵を、前記ECMに対応する前記デスクランブラへ出力する鍵発生部とを備えたことを特徴とするスクランブル解除装置。
【請求項2】
前記調停部は、前記特定のトランスポートストリームである番組のECMを、他のECMよりも優先して前記鍵発生部へ出力することを特徴とする請求項1記載のスクランブル解除装置。
【請求項3】
前記特定のトランスポートストリームである番組は、視聴中の番組であることを特徴とする請求項1または2記載のスクランブル解除装置。
【請求項4】
更に、前記ESの符号データを復号する復号手段と、この復号手段が復号した信号を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のスクランブル解除装置。
【請求項5】
スクランブル処理されたトランスポートストリームからES(Elementary Stream)を分離するES分離手段と、
スクランブル処理されたトランスポートストリームからECM(Entitlement Control Message)を分離するECM分離手段と、
このECM分離手段により分離されたECMを保持するECM保持手段と、
前記ESを、入力された鍵を用いてスクランブル解除するデスクランブラを備えた受信手段を複数備え、
前記複数のECM分離手段により得られた複数のECMを、次の同一スクランブル鍵利用期間に対する鍵情報を含むECMが必ず伝送される時間だけ遅延させる第1の遅延手段と、
前記複数の受信部内の前記複数のECM保持手段が保持しているECMを出力する順番を調停し、この調停した順番にて前記ECMを出力する調停部と、
前記第1または第2の遅延手段からの前記ECMが入力され、前記ECMに対応する前記ESのスクランブルを解除するための鍵を、前記ECMに対応する前記デスクランブラへ出力する鍵発生部とを備えたことを特徴とするスクランブル解除装置。
【請求項1】
スクランブル処理されたトランスポートストリームからES(Elementary Stream)を分離するES分離手段と、
スクランブル処理されたトランスポートストリームからECM(Entitlement Control Message)を分離するECM分離手段と、
このECM分離手段により分離されたECMを保持するECM保持手段と、
前記ESを、入力された鍵を用いてスクランブル解除するデスクランブラを備えた受信手段を複数備え、
前記スクランブル処理されたトランスポートストリームの内、特定のトランスポートストリームである番組のECMを、遅延量0または所定の時間だけ遅延させる第1の遅延手段と、
前記複数の内、前記特定のトランスポートストリームである番組以外のECMを、前記所定の時間よりも長い時間遅延させる第2の遅延手段と、
前記複数の受信部内の前記複数のECM保持手段が保持しているECMを出力する順番を調停し、この調停した順番にて前記ECMを出力する調停部と、
前記第1または第2の遅延手段からの前記ECMが入力され、前記ECMに対応する前記ESのスクランブルを解除するための鍵を、前記ECMに対応する前記デスクランブラへ出力する鍵発生部とを備えたことを特徴とするスクランブル解除装置。
【請求項2】
前記調停部は、前記特定のトランスポートストリームである番組のECMを、他のECMよりも優先して前記鍵発生部へ出力することを特徴とする請求項1記載のスクランブル解除装置。
【請求項3】
前記特定のトランスポートストリームである番組は、視聴中の番組であることを特徴とする請求項1または2記載のスクランブル解除装置。
【請求項4】
更に、前記ESの符号データを復号する復号手段と、この復号手段が復号した信号を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のスクランブル解除装置。
【請求項5】
スクランブル処理されたトランスポートストリームからES(Elementary Stream)を分離するES分離手段と、
スクランブル処理されたトランスポートストリームからECM(Entitlement Control Message)を分離するECM分離手段と、
このECM分離手段により分離されたECMを保持するECM保持手段と、
前記ESを、入力された鍵を用いてスクランブル解除するデスクランブラを備えた受信手段を複数備え、
前記複数のECM分離手段により得られた複数のECMを、次の同一スクランブル鍵利用期間に対する鍵情報を含むECMが必ず伝送される時間だけ遅延させる第1の遅延手段と、
前記複数の受信部内の前記複数のECM保持手段が保持しているECMを出力する順番を調停し、この調停した順番にて前記ECMを出力する調停部と、
前記第1または第2の遅延手段からの前記ECMが入力され、前記ECMに対応する前記ESのスクランブルを解除するための鍵を、前記ECMに対応する前記デスクランブラへ出力する鍵発生部とを備えたことを特徴とするスクランブル解除装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−212588(P2009−212588A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50949(P2008−50949)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]